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シナリオ詳細

<帰らずの森>匙先の命

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――覇竜に存在する亜竜集落フリアノン。
 その地は覇竜領域という危険域の中に在りながらも……比較的安全が確保されている地であった。亜竜などの襲撃が他と比べれば少ないのだ。覇竜領域には全域に魔物などの類が溢れており、人が住める領域など築くのは容易くない。
 が。近頃些か事情が変わってきていた。
 亜竜の襲撃が活発化しているのだ。
 それは――ピュニシオンの森と呼ばれる地への調査が入ってから、である。

「七罪冠位の一角のベルゼーって人をご存じですか? その人はピュニシオンの森の奥にいるんじゃないか、って推測されてるんですけどね。で、イレギュラーズの皆さんに森の調査依頼が入ってるんですが……それで現地の生物を刺激してしまったのかもしれません」

 語るはリリファ・ローレンツだ。事の発端は『里おじさま』とも亜竜種からは慕われていたベルゼー・グラトニオスにあると……仔細は省くが、彼が冠位魔種で在る事が亜竜集落の皆にも判明したのである。
 彼が――今まで多くの事件を引き起こしてきた七罪の一角であるのなら、いずれ亜竜集落にも大いなる影が訪れるかもしれない。
 その前に彼の行方を追わんと……して、しかし『帰らずの森』とも称されるピュニシオンの森に人が立ち入れば、多かれ少なかれ刺激をしてしまうものだ。静寂の森に、人が踏み込んできたのならば……
「フリアノンやペイト、ウェスタにも時折亜竜などが襲来する事があるみたいですよ」
「――なるほどな。つまり、ソレを退治するのも重要だ、と」
「はい! 森に人手ばかり向けて、集落が傷ついたらどうしようもありませんからね。それで皆さんには今回、集落の周辺警備についてもらってですね、敵が見えたら退治を……って、ん? 空に何か見えません?」
 と、その時だ。フリアノンの周辺を警備しましょう、とローレットのイレギュラーズの皆を連れながら案内していたリリファが何かに気付く――空に何か影が見える、と。いやちょっと待て、まさかアレは――!
「わ、わわわわー! 早速出てきましたよ、亜竜です! ワイバーンです!!」
「……なんてタイミングだ。しかも結構数が多くないか?
 こんなに襲来するものなのか?」
「そ、それは分かりませんが、彼らが進む先はまっすぐフリアノンですよ!
 行かせる訳には行きません! すぐに迎撃準備を……って地上からも敵が!?」
 早速に敵だ。あれは亜竜の一種、ベインドという種。
 ……に加えて、地上からまた別の亜竜も確認された――こちらはどうも空を飛ばず地上を駆けるように進んできているようだ。偶然だろうか? 二種もの亜竜が同時に襲来するなど……
 ともあれこのまま連中を進ませる訳にはいかない。
 この先にはフリアノンがあるのだ――到達させれば少なからず被害も出よう。
 その前に押し止める!
「びえ~! うう、泣いてたら月原さんにからかわれちゃいます!
 うおー! ここは亜竜をしっかり倒して、自慢してやりますよー!」
 敵の数は多い。が、どうにも空の亜竜と、地の亜竜は連携している訳ではなさそうだ。
 上手く誘導なり出来れば連中を相争わせる事も出来るかもしれない。
 面倒な状況だが、守備も疎かには出来ぬのだ――
 やる気満々のリリファと共に事態を打開するべく全力を尽くしてみようか!


 ――ほっほっほ。よいか、亜竜共。貴様らは集落へと往け。
 ――なるべく人に害を成すのだ。連中が森へと踏み入って来て面倒でな。
 ――分かるな? 我は面倒だ。我を動かさせるでないぞ?

 ――でなくばお主らを喰ろうてしまうからな? ほっほっほ。

GMコメント

●依頼達成条件
 敵勢力の撃退。集落に可能な限り近づけさせない事。

●フィールド
 亜竜集落フリアノンのすぐ近くです。
 時刻は昼。晴天ですので視界に問題はないでしょう。
 周囲は岩肌の地形です。障害物などは左程ない為、戦いやすくはあるでしょう。亜竜たちが来るまでやや時間があるので、付与などを万全にして迎撃する準備を整える暇はありそうです。

●敵戦力
●『亜竜』ベインド×8体
 空を飛翔する亜竜です。反応や機動力に優れており、空から強襲する様に爪で襲い掛かってきます。また時折火炎のブレス(物中範、【火炎系列】のBSアリ)を吐く事もあるようです。ログードリアと共に襲来しますが、連携している訳ではないです。ログードリアに攻撃する事もあるでしょう。
 何かを恐れ、必死になっている様な気がします……

●『亜竜』ログードリア×8体
 亜竜の分類ではありますが空を飛ぶのは得意ではない種らしく、もっぱら地上を走行します。ベインドよりも巨体かつ堅牢な身を宿しており、接近戦に優れるようです。奴の突撃には【飛】の効果が発動する事もあるかもしれません。
 また時折、毒のブレス(物中単、【毒系列】BSアリ)を吐く事もある様です。
 ベインドと共に襲来しますが連携している訳ではないです。
 ベインドとは争う事もあるでしょう。
 何かを恐れ、必死になっている様な気がします……

●味方戦力
●リリファ・ローレンツ
 近頃噂のピュニシオンの森を調べに……来たのですが丁度そのタイミングで亜竜集落防衛の依頼も入り、周囲を警戒していたら亜竜が来たので慌てて迎撃準備整え中です。接近戦型で、皆さんと共に戦います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <帰らずの森>匙先の命完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋
劉・紫琳(p3p010462)
未来を背負う者

リプレイ


 迫る亜竜。その群れの姿が段々と近付いてきている――
 未だ少し距離はある様だが時間の問題だろう、だから。
「ぴえ~! また茶太郎が私のポニテを~~!」
「駄目だぞ、茶太郎。リリファに迷惑だろう。ほら、ごめんなさいしなさい」
「わふ? わん!」
「ふゆ! 茶太郎のもふもふ毛が! もふもふ極楽が~!」
「やれやれ……とにかく竜種では無いが、相手の数は多い様だな。
 集落も近い。あちらに向かわせる事だけは避けねばなるまいな、尽力しよう」
 今の内に戦闘の準備を……と思っていたリリファの背後からトコトコ近付いたのは『騎士の矜持』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の有するポメラニアン茶太郎であった。ポニテをいつもの如く齧ろうとするが故に、ご主人様に怒られる。
 頭を擦りつけてスリスリ。ごめんね。いいよ。仲直り!
 微笑ましい光景だが、ゆっくりとしている訳ではない。配置に付いているのだ。ベネディクトはリリファも共に連れて空舞うベインド側へ相対せんと今の内に整えて。
「リリファさん、テンションの上下がはげしいですね……
 ま、ともあれそうですね、亜竜の爪や翼膜を持ち帰れば屹度驚きますよ。
 戦利品は良いお土産なのです。あっと言わせてみせましょう」
「ですよねアッシュさん、一緒に頑張りましょう! えいえいおー!」
 『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)もリリファに声を掛けておこうか。彼女はベネディクトとは別の亜竜……地を往くログードリア側へ赴かんとしているのだから。
 岩陰に伏せる。鈍重ながら、しかし巨体の重さの響きが地を伝って接近を知らせようか。
「フリアノンってこんなに亜竜の群れが押し寄せるとかよくあるのにゃ!?
 ……って、そんなわけないと思うのにゃ。聞いた事もないのにゃ。
 これは何か感じるにゃ……異常事態を引き起こしてる『何か』があるんだにゃ……!」
「おいおい。こんな数が来るなんて冗談じゃねぇぞ……!
 集落に辿り着いたらどんだけの被害になるんだよ!
 行かせる訳にはいかねぇ。ここで食い止めるぞ!」
 続けて見据えるは『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)に『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)だ。亜竜の大進撃……突如たる事態に二人共ややキナ臭さを感じているものの人々の暮らしを守る為にも――此処を通す訳にはいかない!
 故に二人は駆ける。狙うのは地上の亜竜、ログードリアだ。
 ちぐさは距離のある内にタイミングを合わせて土葬の術を詠唱。
 連中の疾走に合わせて――叩き潰さんと一撃放つ。
 更に風牙はファミリアーの狸を時に余裕がある内から走らせていた。少し離れた場所の岩の上に配置し戦場全体の状況を把握する為に、だ。視覚を共有し敵がどの辺りまで来ていて、どう展開しているのか見定める――
 そして。
「行くぞ皆、連中に叩き込めッ!」
「こんな毒の吐息を零す者達を里に入れるわけにはいきません。
 なんとしても此処で食い止め、お帰り願うとしましょう」
 風牙が動き出す。それは皆をまるで導くかのように。
 風牙の動きに呼応するのは先のちぐさやアッシュ、そして『劉の書架守』劉・紫琳(p3p010462)もだ。ログードリアへと全員で一斉攻撃。アッシュの糸繰が彼らの足を留めんとし、紫琳が穿つは重力の力を宿した一弾。
 連中の進撃を食い止めんとする――更には風牙の跳躍の導きに反応したのはログードリア側だけではない。
「派手に始まったな。こっちも、あの空の連中を堕としておくとするか」
 空舞うベインドへ対処の手を進ませる『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)もそうだ。引っ張られる様にライの行動も迅速化し、ベインド側へと攻勢を仕掛ける……放たれたのは雷撃だ。ライの収束させた魔力が雷を帯び、放つ先は。
「別々の亜竜の群れがはかったように同時に襲い掛かってくるなんて、なんて不幸な偶然なんだー……これ絶対黒幕がいるよね。臭うよ。この辺りにはいなさそうだけど――暗躍の臭いが」
「森と集落の両対応……と言ってる間に、こんなに沢山の亜竜が来るなんて。これが一部界隈で有名な『話の途中だがワイバーンだ!』ってやつね。私も誰が彼らをけしかけてきたのか気になるけれど――まずは落ち着いて迎撃していきましょ」
 『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が引き寄せた者達を中心に、である。傍にはヒィロと行動を共にする『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)の姿もあるが――ライの雷撃は敵のみを穿つが故に問題は無い。
 偶然とは恐ろしいなー、なんて。明らかに裏を感じ、棒読み状態のヒィロはともあれ眼前の亜竜らの対処へと立ち回る。連中が炎の吐息を撒き散らしてくるが、しかし。ヒィロは愉悦が如き感情の色を見せようか。
 ――効かぬ。物理に依存する撃など。
「ヘイヘイベインドぶるってるー! そんな遠くにいないでかかってこい! おっくびょーもの~♪」
「さて……ヒィロならあんな程度、ものともしないでしょうけれど……流石に数は多いわね。対処は急がないと」
 そのままヒィロは連中に怒気を満たらせつつ駆けまわり。美咲は直後に連中の翼を穿つ掃射を投じようか――機動力を殺すのだ。彼女が呟いた通り、亜竜の数は多い。恐らく人間が邪魔してくればそれらの排除を優先する筈だが……強引に突破せんと試みる輩が出る前に趨勢を決めておきたい所だ、と。
 戦う。如何なる裏が在ろうとも、何一つ目的を――成させぬ為に!


 ベインド側へと攻勢を仕掛けるイレギュラーズの中には、当然としてベネディクトの姿もあった。リリファは先の茶太郎と共に行動を行っている。茶太郎は(犬掻きで)空を飛べるポメだ。リリファを背に乗せベインドへの攻勢の助力となろうか。
「ベインド。中々の機動力だな……しかし狙いは──此処だ……!」
 そしてベネディクト自体は遠方より彼らを解き穿つ。
 ――それは必滅の槍。天より注がせる黒き牙が彼らの中枢に炸裂するのだ。
 亜竜らを弾き飛ばすが如き衝撃が襲い掛かり――更には。
「炎を撒き散らしてきやがるな……! 油断するなよ、呑み込まれたら厄介そうだ!」
「アハハ! 勿論だよ、でもこの炎があるからこそ……敵も巻き込みやすい、ってね!」
 ライも引き続き雷撃をもってして敵へと撃を放っていこうか。敵がヒィロに引き付けられている間に少しでもダメージを叩き込んでおかんと思考する……同時に彼は味方の被害が大きくなっていないかも同時に確認。
 場合によっては治癒術をいつでも紡げるようにと。
 まぁ、当のヒィロは別格の速度の持ち主だ。
 まるで彼女独りの独演が如き戦場。加えて物理を遮断しうる術もあれば彼女の芯に当てるのは容易ではない。少なくとも今の所ヒィロが危機に陥る状況ではなさそうだ。故に彼女はベインド達をそのまま『運んで』往く。
 ――ログードリアの群れへと突っ込ませるために!
「いいわよヒィロ。零れてるのは任せて、一匹たりとも逃しはしないわ……!」
 とは言え流石に数が多ければ、彼女に怒りをもって突っ込んでいく個体ばかりではない。
 だからこそそう言った者達は美咲が始末をつけていくものだ――
 彼女の動きに絶好の連携を挟む形で。すり抜けを阻み切断の概念を亜竜へと!
「うっし! ベインドが突っ込んでくるぞ――皆、巻き込まれない様には注意な!」
「合点にゃ! んにゃ――! フリアノンには進ませないにゃ!
 猫……じゃなくて猫又の怖さ、思い知るのにゃ!
 猫又はとっても恐ろしいんだにゃ、んにゃにゃー!」
 さすればログードリアの対処に当たっていた風牙にちぐさがベインドの接近に気付こう。
 使い魔のぽんぽこ狸により周辺情報を得ていた風牙は素早く気付き、皆に警告。突撃してくるログードリアの衝突をなんとか受け止め凌ぎつつ――同時に返しの一撃で連中を吹き飛ばしてやろうか。ちぐさも術が途絶えぬ様に常に詠唱を行いて、撃を叩き込んでいた、が。
 ベインドらのブレスがログードリアへと直撃すれば位置取りを再確認。
 乱戦の気配だからと。おぉログードリア達も怒りてベインドへ、ブレスを紡ごうか――
「鈍重であるが故にこそ彼らは簡単に回避……とはいかなさそうですね。
 中々堅牢な様ですので、脱落させるにはもう少し攻勢を重ねる必要がありそうですが」
「そうですね。まだまだ数も健在……それにしてもどこから来ているのでしょうか。
 ピュニシオンの森の探索が始まってからのこの動き……まさか……?」
 次いでアッシュは地を這う雷撃を一閃。ログードリア達を呑み込み、足止めを試みようか。
 十分に足が鈍れば血の報いを与えん――
 宙に描く魔法陣が災厄を顕現せしめよう。赫く煌めく無数の光の礫が敵を穿つのだ。
 更には紫琳もその動きに続く。凶悪なブレスが吹き乱れる光景を見れば……ますますこんな連中を里にいれる訳にはいかぬと。故に、絶大なる集中をの果てに彼らの身へと射撃を行わん――
 彼らの動きをより深く、深く縛っていく。
 傷つきて足を転ばせる個体がいれば間髪入れずに追撃の一手も放とう。
 顎を狙いて狙撃。連中の視界が上を向きベインドを見据え、彼らに矛先が向かう様に。
 ……それにしてもやはり気になるものだ。彼らが一体どこからやって来たのか。
 そして『どうして』やって来たのか。
 胸騒ぎがする。森の調査が行われんとしている機会と同時期なのは――
「ガ、ァアア――!」
「とっ。やはりというべきか、中々しぶといですね」
 刹那。思考を妨げるが如くログードリアの反撃が紡がれるものだ。
 彼らより感じ得るは、こちらの敵意というよりも……
 恐怖の感情?
 生じる疑問も、微かにあるものであった。


「……不思議な感じです。亜竜達からはどこか妙な気配を感じえます。
 此れは怒りや飢餓感による暴走では、ないような。
 まるで何かから逃げて……いや、恐れている?」
「単純に俺達を襲っている訳では無い……何か理由があるのか?
 何者かに命じられたか、或いは脅されたか……」
 亜竜らが入り乱れ混戦となる状況の中――敵の反撃を捌きつつアッシュにベネディクトは思考を巡らせるものだ。戦況は、初めこそ亜竜の数の多さに足止めを主体とした動きに全力を尽くさねばならなかったが……互いを争わせる事が出来始めてからはやや余裕が生じていた。
 連中がまずは人間をと狙い定めたのもあるが、しかし。
 そうやって冷静に再度観察してみれば――今回の亜竜達は違和感がある。
 彼らは必死だ。そうでなければ何かまずいかのように。
 そういえば先日、ベネディクトは似たような状況に出会った事があった……とある竜種に脅され、イレギュラーズ達に襲い掛かって来た亜竜達がいた依頼を。そうだ、どこか類似点がある気がする……まさか?
「んむむ、集落を狙ってくるのも森を調査させる余力をなくさせる為にゃ?
 熊みたいにエサがなくて此処に来たって訳でもなさそうだしにゃ……まさか例えばメテオスラークみたいなすごい格上の相手に指示されて、とか……にゃ? そんなにしてまで調べられたくない事が、あの森にはあるのかにゃ……!?」
「臭うが、しかし何があったとしても――こっちも人の被害を出す訳にはいかないんだ。手加減する余裕はない……すまないな。退かないのなら、こっちも止める事に全力を尽くさせてもらうだけだ……!」
「空も陸も、吐息を撒き散らす存在は不要です。
 種族の異なる亜竜が同時に来たとしても……同じことですね」
 然らばちぐさも亜竜達の様子に想いを巡らせようか。一体誰が裏にいるのかは分からないが、亜竜をも従える事が出来る存在と言えば――竜種しか思いつかない。イヤな予感がするものだ……あちらが本気でこちらの妨害に来ているというのか……!?
 だが如何なる事情が存在していても見逃してやることは出来ないと、ライは魔術を紡ぐ。
 亜竜は動物というよりも魔物。人と意志を交わす事はあるまい。
 止めねばならぬのだ――紫琳も引き金を絞り上げる。
 一手でも敵の攻勢を止める為に。一手でも敵の足を留める為に。
 ベネディクトも体力が削れ始めている個体へと斬撃一閃。アッシュも畳みかける様に動きを封ずる撃を放ちて数を着実に減らさんとしていこうか。今だ戦場では亜竜らの牙や爪、ブレスの応酬も激しいが、油断や慢心せぬ様にちぐさは遠方より術を放つ――
 さすれば段々とベインドの方の数が先に減少し始めようか。
 乱戦が生じ、多くの亜竜を纏めて巻き込むことが出来るようになれば、堅牢なログードリアよりもベインドが先に耐えきれない者が出始めるのは当然であった。であれば……
「一度崩れ始めれば、もう脆いものよ。ヒィロ――後はいつも通り決めましょ」
「うんうん! 美咲さん、行こッ!」
 好機と見た美咲にヒィロの攻勢が強まるものである。
 元より一番警戒すべきなのは里にすり抜ける奴がいるかいないかだったのだ。引き寄せが上手く行けば後は火力を集中させるのみ……! 美咲による掃射、虹色の瞳による広域斬撃が度重なればログードリアも含めて体力を削り続けて往く。
 同時。ヒィロは彼女の一撃をより深く刻まさせる為にもアシストするものだ。
 あふれ出る闘志で敵を威圧。勿論、斯様に動いていれば四方八方から敵の攻撃が集中するものだが……あぁ。『悪くない』。だってこんなのさ。スラムにいた頃、戯れに『普通の子』から投げられる石を受けるしかなかった惨めなボクを思い出して……
「今生きてるんだって実感と、怒りと殺る気が込み上げてきて――
 サイコーにハイになれるんだよね!!」
 アハッ。
 彼女の口端に笑みの色が灯る。
 こんな程度で倒れるものか。こんな程度で落ちてやるものか――
 気概でそもそも圧倒しているのだ。
 何かに怯えているだけの亜竜と全霊を注ぐイレギュラーズとではそもそもが!
「よし、押し込めてるな――このまま行こうぜ。やる事はどこまでも一緒だ。
 一匹たりともここから先には通さねぇ……! 傷つけさせるもんかよ集落の人達を!」
「守り切りましょうね! あともうちょっとですよ……えいや――!」
 そして常に戦場を監視していた風牙は敵を逃すまいと陣形を崩さぬよう、声を張り上げる。一匹たりとも突破させぬと、縫い付けるように速度と共に斬撃を繰り出せば――ロクに移動も出来まいよ。続け様にキリッとした目の茶太郎に乗るリリファが空より敵を強襲。
 風牙に宿りし結人の力が皆を繋ぐのだ――
 無論亜竜側の反撃もある。彼らの撒き散らすブレスが至れば蝕む様な痛みもあろう。
 だが、その亜竜同士の相争いもあらば全ての攻勢がイレギュラーズ達にだけ投じられるわけではない……その間隙を突いてベインドを叩き落とし、グロードリアの巨体を打ち倒していた。
 特に多数を纏めて相手しうる美咲の広域斬撃やアッシュ、ライの一撃は大きく貢献していたと言えよう――多数の亜竜。やはり数を減らせねば苦戦は免れぬから……そうしていればやがて少なくなった亜竜らが撤退せんとする動きを見せる。
 命の危機となれば逃げださんとするのも無理なきものか。
 無理な追撃はしない。里に行かせない事こそが目的なのだから――しかし。
「ふぅ。ひとまずはなんとかなったが……亜竜達が逃げるのは、あっちの方か」
「使い魔に後を追わせてみましょう――連帯するとは考えづらい二種の亜竜の同時襲撃はやはり気になります……どうも、逃げる方角からしてピュニシオンの森方向のように窺えますね」
「ふむ……やはりこれはメッセージ。此れ以上は踏み入るな……とでも云うことでしょうか。あの森には余程隠したいものがあるのか、其れとも……何にせよ、わたし達を遠ざけたい事情がある様に思えます。これで終わりではないのでしょうね」
 吐息零すライ。次いで紫琳はファミリアーの使い魔を放ちて、亜竜の逃げる先を追わんとするものだ。優れた三感をもってして彼らの後を追い、情報収集。やはり逃げる先は、やはりライも思った通りピュニシオンの森方面か……
 彼らに襲撃をさせるよう仕向けた何者かがいるのなら、やはり森の調査妨害だろうかと思考を巡らせる。アッシュも同意見だ――あの亜竜種達に含まれていた恐怖の感情の根源は『そうしたい』者による脅迫が指示があったのだろう、と。
「でもひとまずはこれで、無事フリアノンを守れたかな?
 そしたら次はボク達が乗り込む番――だよね?」
「そうね。攻撃されてばっかりなんて訳にもいかない。
 ――近い内に森そのものに出向いてみたいものだわ」
 然らばヒィロに美咲は、互いの負傷を確認しながら――視線を彼方に向けるものだ。
 ピュニシオンの森。前人未踏とされる覇竜領域の奥を。
「俺達は彼らからすれば招かざる客なのだろう。出来ればフリアノンなどに被害が及ばない様にしたい所だが……彼方側の思惑がまだ読めんな。何か良い手があれば良いのだが、やはり森の奥へと進まねば――解決しないのだろうかな」
 であれば『頑張ったな』と茶太郎を撫でるベネディクトも思考を巡らせよう。
 亜竜の襲撃。覇竜領域を渦巻く不穏。
 これらの根源はきっと――あの森の奥にあるのだろう、と。

成否

成功

MVP

美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 集落に被害が到達する前に亜竜を追い払う事に成功しました……! 数は多かったですが、注意の引き寄せや同士討ちを誘えたのが大きかったですね。今回の事態はやはり、森の方にあるのでしょうか……

 ともあれ、ありがとうございました!

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