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シナリオ詳細

<カマルへの道程>晶 怒 洗 熊(キ レ ス ギ ア ッ ラ イ)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●晶竜の作り方(非公式)
 晶竜(キレスアッライル)――それは、なにものかによって作られた、いびつな生命のパッチワークである。
 紅血晶の埋め込まれたキマイラ、とでもいおうか。その名の通り、時に竜すら(見た目は)模倣する、恐るべき怪物である。
 さて、ここに一人の男がいる。名を、ドクター・ガイウスと名乗る男だ。元は獣種なのだろうか、縞々のしっぽがちょっとかわいいが、いい年をしたおっさんでもある。
 彼は晶竜を作り上げる手段の一つを知っていて、それと同時に、吸血鬼でもあった。『烙印』を受けて変貌した、『吸血鬼(ヴァンピーア)』である。ちなみに、イレギュラーズたちが遭遇した、大元の晶竜は、とある何者かによって作られたものの廃棄品であるため、ガイウスが作る晶竜は、廃棄品の模造品……とでもいうべきものではあった。とはいえ、強力なものに違いはない。元の晶竜が廃棄品とはいえ恐るべき力を秘めていたように、彼の作るガイウス版晶竜とでもいうべき存在もまた、強力なそれに間違いはなかった。
 ではここで、ガイウス版晶竜の作り方を説明しよう。これはこのシナリオのみで通じる、いわばネタ的な作り方なので、このシナリオで知った作り方を別のシリアスなシナリオで教えても「何言ってんだオメェ」って言われてしまうので、ここだけの話にしてください。
 ガイウス版晶竜の作り方は簡単である。
 以下のものを入れて混ぜればいいのです。
 紅血晶。
 あらいぐま。
 素敵な性癖の薄い本たくさん。
 これだけで完成します。
 ですが、ドクター・ガイウスはとんでもないものを混ぜちゃったの!

 N T R の 薄 い 本 ――。

 そう、今回の実験で使われたあらいぐまは、純愛過激派だったのです――。

●おおあばれアライグマ
「変なアライグマが暴れています」
 と、ファーリナ(p3n000013)が言う。
 場所は古都カーマルーマ。調査を続けるイレギュラーズたちの前に立ちはだかったのは、なんと巨大で変なアライグマ。その体の彼方此方を水晶のような物質でコーティングし、
「NTRは殺す! 百合の間に挟まる男も殺す! 無理やり系も殺す! 純愛だけが至高!」
 と叫びまわり、あちこちを破壊しているらしいのです。
 これには、イレギュラーズたち――そしてあなたもたいそう困った顔をしていた。なにせ、意味が分からないのである。晶竜(キレスアッライル)は、確かに強力な敵であり、その見た目から、おそらく九段のアライグマも、晶竜の一種であることは予想できた。
 が。そもそも晶竜は自我を持っていないはずだし、喋ったりしたりはしないはずだ。
 となると、これは何なのか――。
「そこでご説明しましょう」
 と、見知らぬおじさんが言った。
「私はドクター・ガイウス。敵です。吸血鬼です」
 そうなんだ、とあなたはうなづいた。
「今はちょっとこちらも困っているので、呉越同舟というか、困ったところで善悪を超えた共闘というか――そういう感じだと思ってください。
 さておき、あの晶怒洗熊(キレスギアッライ)は私の最高傑作です」
「あなたが作ったのですか?」
 そう尋ねる仲間に、ガイウスは得意げにうなづいた。
「勿論!」
「うーん、殺そう」
 そういって刃物を構える仲間を、あなたはなだめた。情報を聴ききってから殺した方が手間が省けていいだろう。
「まぁ、お待ちください。キレスギアッライは純愛過激派のアライグマをベースに作ってしまったため、純愛以外の性癖を認めないのです。
 たとえば、くっころ女騎士。これは純愛ではないのでダメです。
 NTR。BSS。それから、コンプラに違反するので「むりやりみたいなやつ」とぼやかしますがそういうの。
 あとバッドエンドとか、バウムクーヘンエンドとか、そういうのも受け付けません。
 催眠……もなんか無理やり感ありますね。ダメです。」
「純愛過激派って難儀ですね」
 仲間が肩を落として言うのへ、ガイウスはうんうんとうなづいた。
「やはり性癖は広く持たねばなりません。まぁ、苦手なものを無理やり食えというのはもちろん違いますが、強制したり、あのように暴れて排斥したりするのは違うというか。みんな違ってみんないい。仲良く共生できる界隈でいてほしいですね」
「さておき」
 ファーリナが言った。
「それが分かったからなんなんですか?」
「つまり、これを見せつけることで、キレスギアッライさんにすごいデバフがかかるのです。やる気をなくしたり、泣いたり、脳が爆発したりします。
 それに、くっころ騎士の化身とか、BSSの化身みたいな人たくさんいるでしょ? ローレットには」
 そういうのへ、ファーリナはうなづいた。
「いるかもしれない……」
「というわけで、そういう皆さんを囮にしたり、純愛アライグマを煽るような性癖の薄い本をぶつけたりして、キレスギアッライを弱体化してやっつけてほしいのです。
 私はそのあと、この研究データを持ちかえって完璧なキレスギアッライを作って世界を支配します」
「よし、こいつも殺そう」
 仲間がそういうので、あなたはゆっくりとうなづいた。
 とにかく――。
 キル・ゼム・オールである!

GMコメント

 お世話になっております。二次元なら大体のものはいただけるタイプのアライグマです。
 純愛過激派も大変だな。

●成功条件
 『晶怒洗熊(キレスギアッライ)』とドクター・ガイウスを倒す

●●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●特殊判定『烙印』
 当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●状況
 なんか純愛過激派のアライグマが現れました。大変です。倒しましょう。
 とはいえ、腐っても『晶怒洗熊(キレスギアッライ)』は晶竜の一種。非常に強力です。
 ですが、手はあります。純愛過激派のアライグマ、『晶怒洗熊(キレスギアッライ)』は、純愛過激派です。
 くっころ女騎士とか、NTRとか、BSSとか、バッドエンドとか、バウムクーヘンエンドとか、百合の間に挟まる男とか、とにかく純愛以外が全部だめなのです。
 みなさんは、くっころ女騎士の格好をしたり、NTR寸劇とか百合の間に挟まる男寸劇とかをしたり、そういう薄い本をていやー、ってキレスギアッライにぶつけることで、奴を弱体化させることができるのです!
 というか、純愛の薄い本をぶつけたり、純愛寸劇とかしても隙を見せて弱体化するのでなんでもありです。好きな性癖を開示してください!
 やりましょう! やらないと洗井さんはすごく厳しくVHみたいな判定をします! やってください! もう! そういうのじゃんじゃんやって! キレスギアッライを弱体化させましょう!
 ドクター・ガイウスはなんかていやーってすれば倒せます。一応ダメージには気を付けてください。烙印つきます。
 作戦結構エリアは砂漠のど真ん中。あなたたちを阻むものは何もありません。存分に性癖寸劇してください。

●エネミーデータ
 『晶怒洗熊(キレスギアッライ)』 ×1
 すっごいつよい晶竜です。その性能は、小学生が考えたオリジナルTCGカードみたいなスキルと性能を持っています。。
 まともに戦うと大変めんどくさいですが、皆さんには純愛以外の性癖という武器があります!
 バッドエンドとか、BSSとか、NTRとか、百合の間に挟まる男の真似をするとかして、とにかくキレスギアッライをすごい弱体化させれば余裕で勝てるはずです!
 もうこの際、純愛系の寸劇とか薄い本とかぶつけても弱体化するものとします!!!!
 もうお分かりですね? このシナリオはそういうシナリオです!
 とにかく薄い本を投げつけたり、実際にくっころ女騎士のふりをしたりしてキレスギアッライを弱体化させてください! お願いします!


 ドクター・ガイウス ×1
  キレスギアッライを作った吸血鬼です。キレスギアッライが手に負えなくなったので、皆さんに押し付けに来ました。
  ていやーすれば倒せますので、キレスギアッライを何とかした後に軽くていやーしてください。
  一応烙印を付与してきますのでご注意ください。こんなシナリオで烙印欲しい?

 以上となります。
 それではみなさんの性癖をお願いします。

  • <カマルへの道程>晶 怒 洗 熊(キ レ ス ギ ア ッ ラ イ)完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
鏡禍・A・水月(p3p008354)
夜鏡
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

リプレイ

「ッスー……なんで呼ばれたの俺?」

●←が出るよりも早く、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は不満の意を示した。
 砂漠での出来事である。眼前には、なんか変なアライグマが訳の分からないことを叫びながら暴れている。
 そのアライグマは晶竜で、キレスギアッライである。訳が分からなかったが、どうも、こう、『純愛以外の性癖』をぶつけると死ぬらしい。訳が分からない。
「なんで? 呼ばれたの? 俺?」
 もう一度、ゴリョウがそう尋ねる――ドクター・ガイウス(すべての元凶)は、「えっ」と意外そうな顔をした。
「私は、ローレットの性癖の化身をお呼びしたつもりです。
 姫騎士である、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)さん。
 姫騎士である、『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)さん。
 姫騎士である、ゴリョウ・クートンさん。
 そして、『憧れのお姉ちゃんで、僕が先に好きだったのに、知らない男の人と結婚して「お姉ちゃん、ちゃんと幸せになるからね」って僕の大好きな笑顔で幸せそうにそういってバウムクーヘンをくれそうな女ランキング第一位』である『おねえちゃん……』リア・クォーツ(p3p004937)さん……」
「あんたその変なの称号で付与するんじゃないわよ!?」
 リアががーって吠えるのへ続いて、ゴリョウもがーって吠えた。
「俺は姫騎士じゃないだろう!? どう見ても!!」
「そ、それだったら、私最近そういうタイプじゃないんですよ! アルバム見るとちょっと否定できませんけど!」
 シフォリィもがーって叫ぶ。アルテミアがうんうんとうなづいた。
「なんでこう変な特性を持った相手の対処に呼び出されるのかしらね私……」
 受け入れていた。さておき。
「なんにしても……えーと、演じればいいのよね? 純愛以外の性癖を。
 それなら簡単だわ! なんたって、周りに適任者が沢山居る……つまり、私は被害担当ではない!!
 ふふ、これは勝ったわね!」
 ぐっ、とガッツポーズするアルテミア。そういうことを言うから被害を被るのになぁ、とみんなが思いつつ、でも口には出さなかった。
「純愛以外、か。マリアはよくわからないものだ」
 ふむ、と『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)がうなづく。手には『そういう本』が握られている。万能人造精霊『しゅぺちゃん』に手渡された資料である。
「しゅぺちゃんは、なんでも、知っているな。
 なるほど。こういうのを真似ればよいのか」
 そのまま、あまり表情を変えず、きゅん、と口元に手をやって。
「こんにちは。マリアです。本当はエクスマリアっていうんだけど、縮めてマリア。
 お隣に住んでるムサシお兄ちゃんも可愛いっていってくれるの」
「自分でありますか……」
 『『新』騎兵隊員』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が、むむ、と唸った。
「いや、まぁ、良いのでありますが。ちなみにそれってどういう……百合の間に挟まる男? いや、どういう? 挟まる? え?
 百合とか関係なく、交際している人物の邪魔をしたら、それは普通に嫌な人なのでは?」
 至極真っ当なことを言うムサシに、マリアはふるふると頭を振った。
「そう言うのが性癖の人物も、いるらしい」
「そ、そうでありますか……なるほど……自分の性癖などはまだまだということを思い知らされる気持ちでありますね……」
「まぁ、刺されるタイプのキャラだとは思いますが……」
 『君の盾』水月・鏡禍(p3p008354)が苦笑する。
「とはいえ、そういう……汚したい、というのでしょうかね。こう、『めちゃくちゃになる(リバージョンコンプライアンス)』みたいなのも好きな方もいますから、間に挟まるのが性癖の方もいるのでしょう。確かに、触手とか……苦手な方は苦手かもしれませんからね」
「触手って、あれでしょう? 大変ですよね」
 うんうんとシフォリィがうなづいた。
「とても……大変……!」
「わ、リアルに触手に襲われるタイプの姫騎士だぁ……」
 鏡禍が目を丸くした。ゴリョウが肩を落とす。
「姫騎士ってのは大変だな。俺は姫騎士じゃないが」
「……成程、あらいぐまだから不潔なのは好まない、と。
 ははあ……「プレイヤーにダイレクトアタックできる」と言われて相手プレイヤーを物理で殴るタイプだな?」
 そう、ドクター・ガイウスから受け取った設定資料とかを読みながら、『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が唸る。
「ところで、なぜこのような晶竜を作ったんだ?」
 そう尋ねるのへ、ガイウスは笑った。
「クッソ面白そうだったので」
「うーん、殺そう」
 アーマデルがほほ笑んだ。
「まぁ、そいつは最終的に殺すのだけれど」
 リアが言う。
「誰から先に逝く?」
「誤字か?」
 ゴリョウが尋ねるのへ、リアは肩をすくめた。
「似た様なものでしょう? 尊厳とか」
「とはいえ、これで一人一人、とやっていくのも面倒よ」
 アルテミアが言った。
「一人一人やっていったら、必然的に私の番が来て被害にあいそうだし。
 此処はいっせいに取り掛かりましょう?」
「うーん、自己保身」
 エクスマリアが嘆息する。
「とはいえ、一斉に、はいい案だと思う。余計に混乱させられるだろう」
「では、一気に行きましょう。簡単に打ち合わせをして」
 ムサシが台本を手にそういうので、シフォリィがうなづいた。
「そうですね。では、バーリトゥード性癖という感じで行きましょう」
「わけのわからない文字列ですね!」
 鏡禍がやけっぱちに笑った。
「いやぁ、楽しみです、皆さん、どうぞよろしくお願いします!」
 そう、ドクター・ガイウスが笑うのへ、アーマデルも笑った。
「覚悟しておけよ」
 まぁ、最終的にガイウスもていやーするのである。

●バーリトゥード性癖
 こんにちは。マリアです。本当はエクスマリアっていうんだけど、縮めてマリア。
 お隣に住んでるムサシお兄ちゃんも可愛いっていってくれるの。(二回目)
 今日はそのムサシお兄ちゃんに、マリアの、小さい頃からずっと続いてるこの気持ちを伝えようと思って、あとをおいかけていたんだけど……。
「ねぇねぇw 君達可愛いねw 今時間空いちゃってる系?w 暇なら俺らとちょっと遊んでかない?w」
 そういって、コンカフェの百合のお客さんに声をかけていたの!
「ねぇ、君たち結構仲良いけどさ、『百合』とかそういうのなんでしょ? 女の子同士で仲いいっていうやつw」
 ああ、そうやって、チャラい感じで界隈の逆鱗に触れるような真似を!
「じゃさ、その仲良いトコに俺混ぜてよw 俺、女の子侍らせるってやつやってみたかったんだよねw モテまくり勝ちまくりっていうかw」
 どうして! どうしてイメージが一昔前の怪しい広告なのムサシお兄ちゃん!
「大丈夫大丈夫w 俺、結構テクいしさw 百人斬り〜ってやつも目指しちゃったりしてるしw」
 どうして! どうしてそんなにチャラいお兄さんに造詣が深いの!?
「えw もしかして彼氏か彼女いて操とか立てちゃってる系?w 大丈夫だってw 一回だけなら誤差誤差w バレやしないってw それにお互いにたのしいならオッケーオッケーw」
 手から落ちるのは、手作りのクッキーとラブレター。あとムサシおにいちゃんの評判。はらりと零れ落ちる、マリアの涙――(目薬)。
 そっか、そうだよね。ムサシお兄ちゃんはマリアより大人だもん、同じくらい大人の女の人のほうが、いいよね……ぐすん。

 さて、一方で『演技とはいえ女の人に手を出したら恋人に怒られるから』というわけで、攻撃に参加できない人もいた。鏡禍である。
「うう、どうしたら……!」
 攻撃には参加できない。しかし、それはそれとして恋人を怒らせるのはまずい。どうしたら。さて、どうしたら……!?
「そ、そうだ! こんなこともあろうかと(?)持ってきておいた、この薄い本を!」
 ばっ、とカバンから取り出したのは、そう! 『恋人に似た赤髪ポニーテールの女の子がちょっとへっちな目に遭っちゃう同人誌(複数冊)』である!!
「この中でも選りすぐりの成人指定かつ触手ものばかりを持ってきました!
 無理やり服を破かれたり溶かされたり、時にはそのまま取り込まれるやつですよ
 純愛とは当然程遠いので弱らせることができるはずです!」
 ぐっ、とガッツポーズ。ふーん、そういうのが好きなんだ……。
「それは別の依頼じゃないですか! とにかくこれをくらえー!」
 ぴゅん、と空を飛ぶ、うすいほんたち! パラパラとページがめくれ、ここでは言えないようなシーンが白日の下にさらされる!
「うわーーーっ! 目が! 目が!」
 たまらず目をふさぐキレスギアッライ! 効果は抜群である!
「信じられない……こんなシチュエーションの本を読んで喜んでいるなんて!」
「そう言うこと言うと炎上しますよ!? 性癖は幅広く持ってください! それでもアライグマですか!!」
 もう一度本を投げた刹那、エクスマリアと目が合った。
 いつもの表情だった。
 演技ではなく。
 素で、虚無の表情を浮かべていた。
 エクスマリアは、ぽふ、とその薄い本を拾い上げると、鏡禍のもとへとぽとぽと歩いて行って、手渡した。
「ほどほどにな」
「あ、はい」
 鏡禍がそれを受け取った。
 また投げた。

 さて、視点をまた攻撃に戻そう――ここはバニーさんがいる店内。さっきチャラ男=セルブライトがチャラチャラしていたお店である。
「あたしはリア・クォーツ。
 清く正しく敬虔で家族想いな心優しいただの姉よ。
 父さんが再婚して新しい家族ができたのだけど、その時に歳の近い弟もできたの。

 弟の名前は洗井。
 ちょっと変わった奴だけど、いつも笑顔で好きな事に一生懸命で、あたしは姉として彼の事を応援しているわ。
 自分の夢を叶えるためにりばーじょんって組織で無意味な棒をぐるぐる回し続けるお仕事で毎日頑張っている、あたし自慢の弟よ。

 あたしの家は貧乏だけど、家族一丸となって洗井の夢を応援している。
 だから、あたしも少しでも力になろうと思って、親友のHOMURAの紹介でいいお仕事を紹介してもらったの。
 バニースーツを着てちょっと接客するお仕事は、ちょっと恥ずかしいけど……。
 でも、これも大切な弟の洗井の為だもの! 頑張って働かないと!
 えへへ、洗井も喜んでくれるかな……?」
「導入が完璧すぎる……」
 ゴリョウが唖然とする。完璧すぎて削れなかった。
「いや、えーっと、こほん」
 咳払い一つ。
「ぶへっへっ、こいつぁ可愛い兎ちゃんじゃねぇか!
 溢れそうな双丘、そそるような腰つき、網ストから溢れ出しそうなみっちりと身の詰まった肉付きの良い下半身!
 こんなむちむちボディで敬虔名乗るなんて各方面に失礼だよね! 責任もって付き合ってもらおうか!」
 そう、粗野なオークである! 今日の姫騎士は姫騎士ではなくて、粗野なオークをやってくれたのだ! 本当にありがとうございます。助かります。
「は? 誰が肉付き良くて下半身が太いって??
 ……すぞ」
「ちょっと待て! 演技! 演技!」
 ゴリョウが慌てるのへ、リアがコホン、と咳払い。
「そうね。えーと……そ、そんな、困りますお客様……。
 そんなチャラムーブしたら1週間くらい奥さんに口を利いてもらえ無さそうなのに、あたしの腰に手を回して抱き寄せるなんて……」
「演技---ッ! これ、演技だからな!?
 地面に頭擦り付けて嫁さんに土下座謝罪するオークとか見る羽目になるぞいいのか!?」
 虚空に叫ぶゴリョウ。
「く、くそ! このままじゃ一方的に圧されるだけだ!
 へ、へーい! 弟の洗井クン見ってるー?
 これから君の大事なお姉ちゃんとイチャイチャ(可能な限り丁重に濁した表現)しちゃいまーす!」
 と、金銀蓮花の炯眼でチャラくにらむゴリョウ! 期せずして、似合う感じの使い方をされてしまった……こんな目的で作ったわけじゃないのに……。
「うわーーん! お姉ちゃんが! お姉ちゃんが変な男にーーーっ!」
 暴れだすキレスギアッライ! 効果は抜群である!
「よし! いい感じに畳みかけるわよ!」
 リアがぐっ、とガッツポーズをしつつ、ゴリョウが隣で複雑な表情をしている。
「いい感じですね。これは今回の烙印はリアさんに決定かなー」
 にこにことガイウスが言うので、リアはにっこりと笑った。
「……すぞ」
「まぁ、倒すんだけどな、最終的に……」
 ゴリョウは冷汗をかきつつ、攻撃に付き合ってもらったお礼に、何か美味しいものでも作ってあげなきゃな、と真面目に考えていた。

●追撃の性癖
 崖の上で――。
 車いすに乗ったシフォリィは、静かにつぶやく。
「……彼には申し訳ないことをしちゃったな、急にフッてしまって。
 本当だったら最後まで私は貴方のそばにいたかったけど……でも、置いて逝ってしまう私を引きずるよりは、嫌いになって新しい恋を探してほしいもの。これでいいの」
 シフォリィは不治の病だった――それ故に、恋人であるキレスギアッライには、自分を忘れて新しい恋を始めてほしかった。
 だから、少し強引に、別れた。さみしかったけれど、それでも――。
 彼が、幸せになってくれるなら――。
「……もうどうやらダメみたいね、ふふ、最後は一人寂しく、か」
 体から、力が抜ける。もう、最後の時が近づいていた――その時。駆け寄ってくる、大きな影。
「キレスギアッライ……!」
 シフォリィが、思わず声を上げた。
「……えっ、なんで、なんで貴方がここに……! なんで私なんか追っかけて……!」
 愛しているからに決まっているじゃないか!
「……愛しているから、それだけの理由で? ……ばか、私、もうすぐいなくなっちゃうのに……」
 愛している……最後の瞬間まで、ううん、その先も、ずっと……!
「……ごめんね、私も本当は愛してたよ……最後に、看取られる幸せを貰ってごめんね、いつまでも、大好き」
 がくり。シフォリィの体が、くずおれる。力が、命が、その体から失われていく――。
 シフォリィ? シフォリィ! シフォリィ――!
 キレスギアッライの慟哭が、いつまでも、いつまでも響いていた――。
「オニイチャンナカナイデ」
 そう、弟が言う。そう、弟だ。弟がいたのだ。この悲しみは、弟のアーマデルで癒すしかない。
「オニイチャンドウシテソンナニオクチガオオキイノ?」
「お兄ちゃんはなんでも食べちゃうからだよ」
「オニイチャンジュンアイッテナニ?」
「人が生きていくうえで最も大切な栄養だよ」
「オニイチャンミテルダケデイイノ?」
「そんな……お兄ちゃんだってほんとは手を出したいよ……」
「お兄ちゃんそれは引く」
 素に戻った。こほん、と咳払い。
「オニイチャンゴホンヨンデ」
「おお、いいよ、アーマデル。なんだい?
 えーと、『恋人に似た赤髪ポニーテールの女の子がちょっとへっちな目に遭っちゃう同人誌』……あーーーー! 脳が!!!」
 ぼがん、と頭が爆発するキレスギアッライ!
「いつも読んでる同人誌にそういうリアクションされるの、狙った通りなんですけどなんかムカつきますね……!」
 鏡禍がちょっとむっとした。
「ふふ、ここまで待機していればもう大丈夫。皆充分被害を担当したわけで、後はやっつけるだけのターンよね!」
 ばぁっ、とポーズを決める、アルテミア!
「そう、ここからは一方的に攻撃するターン……だけど、なぜか敵の攻撃は激しく!
 攻撃を捌いているうちに、服はなぜかあられもない感じに破けてしまい!
 くっ! こんな卑劣な攻撃を的確にしてくるなんてっ! 変態っ!!
 でも、この程度の辱めを受けたとしても、まだ私の心は屈しないわ!」
「オニイチャン、アレハナニヲシテイルノ?」
 アーマデルが尋ねるのへ、ムサシはうなづいた。
「あれこそ、生粋の姫騎士ムーブでありますよ……!」
「なるほど。余人にはまねできない」
 エクスマリアが感心した。一方、なんかキレスギアッライの攻撃で、拘束されてしまうアルテミア!
「み、身動きがっ!
 くっ、殺しなさい!! このまま好き勝手に辱しめられるくらいなら、死んだ方がマシよっ!!」
「うわーーーっ! 僕が! 僕が! 『めちゃくちゃにする系のシチュ(リバージョンコンプライアンス)』の役にーーーっ!!」
 そう、そのストレスは、キレスギアッライには耐えられなかった! 限界値を突破!
「グワーーーーッ!!!」
 悲鳴! そして爆発四散! キレスギアッライは、自分がそういう役を演じてしまったことに耐えられなかったのだ――。
「やっぱり、あいつ、百合の間に放り込んだら自壊したんじゃないか?」
 アーマデルがそういう。
「今は一寸そう思う」
 ゴリョウもうなづいた。
「いや、お見事です皆さん!」
 ドクター・ガイウスがのこのこと走ってやってきた!
「さすが、性癖のデパート、ローレットのイレギュラーズさん達! あのキレスギアッライを撃破するとは、まさにお見事!
 では、私はこの研究結果を持ち帰って最強の晶竜を作って世界を支配しますので――」
「あ、そう?」
 リアが笑った。
「じゃ、これお土産にもらっていって。皆も、いろいろ、あるわよね?」
「はい、もちろん」
 鏡禍が笑った。
「へぇ、なんでしょう! 楽しみですね!」
 ドクター・ガイウスも笑った。

 それから、皆でガイウスが動かなくなるまで攻撃を叩き込み続けました。
 めでたしめでたし。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 めでたしめでたし。

●運営による追記
※リア・クォーツ(p3p004937)さんは『烙印』状態となりました。(ステータスシートの反映には別途行われます)
※特殊判定『烙印』
 時間経過によって何らかの状態変化に移行する事が見込まれるキャラクター状態です。
 現時点で判明しているのは、
 ・傷口から溢れる血は花弁に変化している
 ・涙は水晶に変化する
 ・吸血衝動を有する
 ・身体のどこかに薔薇などの花の烙印が浮かび上がる。
 またこの状態は徐々に顕現または強くなる事が推測されています

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