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シナリオ詳細

<鉄と血と>戦地への道先案内

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 鉄帝における闘争は、最終局面へと辿り着いた。
 各勢力が持てる戦力の全てを注ぎ込み、決戦へと向かう。
 それは帝都と帝位を鉄帝国の民のもとに奪還しうる最後の戦い『帝都決戦』に到る道でもある。
 帝都『スチールグラード』に各勢力は殴り込みをかけ、新皇帝派達が迎え撃つ。
 激しい戦いが巻き起こる中、スチールグラード外郭も例外ではない。
 巻き起こるのは、大規模な衝突戦。
 すでに三月に入っているというのに、未だ雪原が広がる中、多くの者達が戦っている。
 それはイレギュラーズも例外ではない。
 スチールグラード外郭の、とある場所。
 鉄帝軍人が外郭から内部へと進行するためのルートのひとつを、魔物や新皇帝派の兵士たちが守るように集まっている。
 そこを切り崩し、鉄帝軍人を出来る限り無傷で内部へと向かわせるのが、イレギュラーズに依頼された内容だった。
 すでにスチールグラードの内部へは、鉄帝地下道を利用し進攻を開始しているが、それと連動するように外部からも食い破るためにイレギュラーズの力が求められたのだ。
 だからこそ、依頼を受けたアナタ達は、魔物と新皇帝派の兵士たちを前に戦闘準備を終わらせていた。
 アナタ達の後方には、スチールグラードの内部へと向かう鉄帝軍人の一団が待機している。
 敵をアナタ達が蹴散らしてくれれば、戦力を浪費せずにスチールグラードの内部へと突入し戦うことが出来るだろう。
 鉄帝軍人としては、本命の戦いはスチールグラードの内部に突入してからのことなので、可能な限りここでは戦力を浪費したくは無いようだが、ある程度の後方支援はしてくれるようだ。
 また、万が一イレギュラーズが壊滅するような被害を受けそうになれば、全面的に助けてくれるだろうが、依頼としては完遂とはいかない。
 出来る限り鉄帝軍人は戦いに参加させず、敵を食い破らなければならないのだ。
 依頼の達成条件を改めて思い浮かべていると、戦術を考える頭のない魔物達が考え無しに突っ込んでくる。
 その後方では、新皇帝派の兵士たちが、魔物達を壁にするような配置で戦闘準備を終わらせていた。
 すでに戦いは始まっている。
 依頼を遂行するために、アナタ達は歩を進めた。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回は、鉄帝での決戦に関連するシナリオのひとつになっています。

以下が詳細になります。

●成功条件
 立ち塞がる敵を殲滅し、後方からついてくる鉄帝軍人達を可能な限り消耗させない。

●状況
 戦闘が始まっている状況からスタートします。
 以下の流れで進みます。

1 魔物が突進してくる。
  基本、真っ直ぐに突進してきます。
  魔物同士で、多少連携っぽい動きを取ることもありますが
  基本は、てんでバラバラに好き勝手に攻撃してきます。

2 魔物を壁にして新皇帝派の兵士たちが攻撃してくる。
  新皇帝派の兵士たちは魔物を操れるわけではないので
  連携などを取ることはありませんが、魔物と戦闘中で動きが止まった際に
  魔物ごと纏めて攻撃してくる、などを新皇帝派の兵士はしてきます。

3 魔物と新皇帝派の兵士を殲滅後、鉄帝軍人を送り出す。
  鉄帝軍人はスチールグラードの内部に向け進攻し
  PC達は依頼完了となり帰還します。

●戦場
 見渡す限り雪で覆われた雪原で戦うことになります。
 多少雪で足を取られることはありますが、戦闘時に重大な支障は出ません。
 戦闘開始時は、敵とPC達との距離は100m程度離れた状況で始まります。
 その状況で、最初に魔物が突っ込んで来ます。

●敵

魔物
以下の種類の魔物が出ます。

ギルバディア×?
大型のクマ型の魔物。
凄まじい突進能力があり邪魔な木々は軽く薙ぎ倒す程の性能があります。
また、敵を吹き飛ばす様な一撃を宿している事もある模様です。

ヘァズ・フィラン×?
一言でいうとカラスの様な存在ですが、非常に他者に対して攻撃的です。
空を飛行し、弱者と思わしき者を集団で嬲ります。
反応、機動力、EXAに優れ、牙には毒もある模様です。

グルゥイグダロス×?
巨大な狼のような姿の怪物です。
俊敏にして獰猛。
その爪や牙をマトモに受ければ『出血』は免れないでしょう。

新皇帝派の兵士×?
遠距離と近距離が半々の割合です。
戦闘の序盤は、魔物を壁にして攻撃してきます。
魔物の数が大きく減る、あるいはPCとの距離が縮まると
直接的に攻撃してきます。

魔物と新皇帝派の兵士の数は、ご参加いただいた皆さまの
レベル帯などを考慮に入れて変動します。
ただし、あくまでも難易度NORMALの範囲の数になります。

魔物と新皇帝派の兵士は連携しているわけではなく
特に新皇帝派の兵士は魔物を、使い捨ての壁ぐらいにしか思っていません。
なので、PCと纏めて攻撃するぐらいのことはしてきます。

●味方NPC
 鉄帝軍人の一団。
 後方からの援護射撃や回復などを行ってくれます。
 彼らの本命は、スチールグラード外郭の先での戦闘ですので
 シナリオ内での戦闘には本格参加はしません。
 ただしPCが壊滅状態(失敗)に陥れば全面的に戦闘に参加します。
 あくまでも壊滅状態になったらですので、そこまで行かなければ問題は無いです。
 援護射撃や回復程度の協力は、成功判定に影響しません。
 むしろ事前に指示を出して、効率的に動いて貰うようにした方が有効です。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

説明は以上になります。
それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります

  • <鉄と血と>戦地への道先案内完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月21日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

リプレイ

 雪原に立ち塞がる新時代英雄隊と魔物たち。
 向かい来る敵を前に、『毒亜竜脅し』カナメ(p3p007960)は楽しげに声を上げた。
「あは、いるいるー♪」
 多くの敵を前に笑みを浮かべていた。
「たっくさん揃えちゃってよっぽど邪魔したいみたいだね。そりゃそうだよね、信じてるものの為に戦ってるのはお互い様だもんねー」
 戦闘で刻まれる痛みを予感し、期待に笑みは深まる。
(魔物、大きくて痛そうだなぁ……何から味わって行こうか、うぇへへ……♡)
 被虐の愉悦に浸りながらも、戦いに余念はない。
 ファミリアーの鳥を飛ばし上空から敵の配置を確認。
「魔物はバラバラだけど、後ろの新時代英雄隊は隊列組んでるね。魔物を壁にするつもりかな?」
 これを聞いて、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は、注意を促すように言った。
「敵もバカじゃないというか……厄介なことで」
 配置を確認し、戦術を共有するように続けて言った。
「見た感じきっちり連帯していると言う訳でもないようだし、それならその陣形を逆手に取ろう!」
 これに賛同するように、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)も口を開く。
「魔物を引き付けて貰えれば、そこを纏めて叩けます」
「その役は引き受けた!」
 豪快な声で応えるように言ったのは、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。
「任せろ! 数は随分と多いが、烏合の衆だ! 確実に抑えてみせる!」
 タンクとして卓越した力量を誇るゴリョウならば、それも可能だろう。それに――
「考えがある」
 敵の動きを利用した戦術をゴリョウは提案する。
 これに『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が賛同するように返した。
「後ろでしたり顔の連中に、策士策に溺れるという言葉を思い知らせてやろう、ってことだな。相手は所詮、数を頼みにした有象無象。いけると思う」
 錬の言葉に同意するように、『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)も口を開く。
「敵の頭数は相当多いようだけれど、この程度ならいくら居たところで大して変わりはないでしょうね」
 明らかに統率の取れてない魔物の群れに視線を向けながら続ける。
「新時代英雄隊は魔物を操れているわけではないみたいだし、私はゴリョウさんの策に乗らせて貰おうと思う」
 敵が動き出す中、素早く戦術の摺合せを終わらせ戦闘準備を完了させると、魔物が動き出す。
 戦局を考えられない魔物達は、考え無しに向かって来た。
 後方で動き出す新時代英雄隊。
 敵の動きに対応するため、イレギュラーズと後方の鉄帝軍人達は隊列を調整。
 戦意が高まっていく中、鉄帝軍人の士気を上げるべく、『荒くれ共の統率者』ジェイク・夜乃(p3p001103)は高らかに声を響かせた。
「この戦は我らの勝利!」
 軍人を纏め上げ統率を取るべく、声を上げる。
「見ろ! あの様な魔物を引き釣り出した時点で、自軍の弱さを語っているようではないか!」
 向かってくる魔物の群れの後ろで、隠れるように動く新時代英雄隊を指し示しながら続ける。
「新皇帝派など恐るるに足らず! 真の鉄帝軍人の実力を見せてやれ!」
 檄を飛ばすジェイクに、軍人達は応えた。
 ビリビリと空気を震わせるような声を上げ、先陣を切るイレギュラーズを全力で援護するべく武器を取る。
 戦意を高める中、この場の勝利だけでなく、鉄帝の未来のため『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)も前に出る。
(弱肉強食を認める今の鉄帝を、このままにしておけない)
 それは誰かの笑顔のための想い。
(弱者が許されない弱肉強食な鉄帝だったら、赤ん坊は大抵は戦えないからアウト。医者とかも医療知識や技術の研鑽で鍛える暇が無いからアウト。残った強者も寿命や病気で全滅……そんな鉄帝は嫌だ)
 それは演じてきた嘘を、本物へと変えようとする強い意志に支えられた願い。
(俺は大切な誰か、家族や友と笑って暮らせる鉄帝の方がいい!)
 今この場の勝利だけでなく、その先の未来を掴むため。
 鉄帝で繰り広げられている多くの戦いの内のひとつが、始められた。

●勝利を!
 襲い来る魔物達。
 迎え撃つべく真っ先に戦火を切ったのはジェイクだった。
「撃ち方始め!」
 魔物の動きに合わせ、檄を飛ばし戦意を上げた鉄帝軍人に指示を出す。
 応じる軍人の動きは素早く的確だ。
 狙いは魔物の群れの両端。
 魔物の動きを誘導するように狙撃を重ね、群れの分散を防ぐ。
 それでも魔物は考え無しに突っ込んで来る。ある程度距離が縮まった所で――
(戦争のプロたる俺様が本物の戦争を教えてやる!)
 ジェイクは、仲間の戦術に繋げるため戦場を駆ける。
(戦争は数だが、統率が取れていなければ烏合の衆でしかない)
 魔物の動きを把握し、弱所と思われる場所へと素早く動く。
(大規模な衝突戦だからこそ付け入る隙がある。ただ数が多ければいいってものじゃないからな)
 狙いをつけたのは、大型のクマ型魔物。
 動きながら狙撃。
 魔弾は空を翔ける狼の如く、魔物の喉に食らいつく。
 痛みで狂ったように吼える魔物。
(それでいい)
 ジェイクの狙いは必殺では無く、仲間の策への繋ぎ。
 あえて魔物の狂騒を煽る様に攻撃を重ねていった。

 魔物の動きが乱れる。
 それをさらに加速させるように、錬が動いた。

「さぁて、鉄帝の職人らしく敵の屍で道を舗装してやろうじゃないか」
 錬は式符を通じ五行の理に応じ魔力を循環させ、術式を発動した。
(まずは、進攻を押し留める)
 狙いは突破力に物を言わせ距離を詰めようとする敵。
(ゴリョウも含め手練れのタンクがいるから問題はなかろうが、万が一にも後衛にまで抜けて来れないよう、敵が抜けないように迎え撃つ)
 鴉型の魔物が術式範囲に侵入してくると同時に、五行の理に則った陣を開く。
 火気が顕現し、魔物を炎で包む。
 雄たけびを上げ魔物は墜落。
 転げまわっていると炎は消え、代わりに金気が相生効果により発生。
 無数の金属片が魔物に突き刺さった。
 仲間がやられ、僅かだが魔物の動きが鈍る。
 そこに錬は追撃。
(動きが止まった今が好機!)
 式符に魔力を注ぎ、魔鏡を仮想鍛造。
 虚像の鏡像は魔物の群れを抑えるように空に浮かぶと、暗黒の雫を滴り落とし魔物達の運を凶で塗り潰した。

 連携してイレギュラーズは動く。

「さて、呪いの歌をご鑑賞あれ!」
 連続攻撃で魔物の動きが鈍った所に、アリアは魔力を乗せた歌を戦場に響かせる。
 玲瓏たる歌声は、美しくも底冷えのする呪いの旋律となって魔物の体に染み込んでいく。
 途端、深い海に引きずり込むような絶望が魔物達を襲い、何体かは狂乱したかのように暴れていた。
(やっぱり、連携が取れてるわけじゃないね)
 混乱する魔物と、それを制御できていない新時代英雄隊。
(それならその陣形を逆手に取らせて貰うよ!)
 さらに敵の混乱を促すように、アリアは混沌に揺蕩う根源的な力を汚れた泥に変え、魔物目掛け放つ。
 運命を漆黒に塗り替える泥は、魔物達の足を絡めとり動きをさらに鈍らせた。
(この調子でいけば、攻防共に堤を崩す蟻の穴くらいにはなりうる!)
 確実に敵を殲滅するべく、アリアは仲間との連携を強く意識し攻撃を重ねていった。

 連携して動くイレギュラーズの攻撃に、魔物は進攻を押し留められる。
 後方の新時代英雄隊は、魔物が固まり過ぎているせいで壁として利用することも出来ない。
 明らかに想定外で動きが鈍い。
 そこにオリーブが容赦なく攻撃を叩き込む。

(流石に魔物をある程度減らさなければ危険ですね)
 魔物の群れを末端から削る様に、急所を狙い撃ち続ける。
 脳天を、あるいは心臓を貫かれ崩れ落ちる魔物達。
 だが中には、その状態ですら突っ込んで来るモノがいる。
 断末魔の雄たけびを上げ突進してくる魔物に、けれどオリーブに焦りや恐怖は欠片も無い。
 クロスボウからロングソードに持ち替え、突進してくる魔物の間合いを崩すように逆に踏み込み一閃。
 狼型の魔物の頭部を、叩き潰すような勢いで斬り飛ばした。
 そこに雄たけびが響く。
 見れば、熊型の魔物が突進してくる。
(好都合ですね)
 オリーブとしては望む所だ。
(アレは面倒を起こしかねない。こちらの誘導の邪魔になる前に優先的に潰す)
 どこまでも冷静に、距離が開いている間はクロスボウの連射で削り、距離が詰まればロングソードで連続斬撃。
 多少手間は掛かりながらも刻み殺すと、即座に他の魔物への掃射を続けた。

 仲間がやられ、魔物は雄たけびを上げながら狂ったように突進してくる。
 狂騒に侵された魔物達。
 そこに笑みを浮かべ、カナメが突進していく。

「あは、カナを壊したいの?」
 殺戮の戦場で浮かべるのは、恐怖では無く愉悦の笑顔。
 構えは受け。
 襲い掛かる魔物の爪を、あるいは牙を。
 避けることなく身に刻み、華散らす鮮血。
 流れる血は自身の、そしてカウンターで刻んだ魔物の物。
 痛みを抱き、カナは声を上げる。
「なぁーんだ♪ 結局見た目だけのか弱い動物と、隠れてないと何もできないザコばっかりなんだね!」
 自分を殺し切れない魔物達と、魔物を壁にして攻撃を重ねる新時代英雄隊を挑発しながら前線で舞い踊るように駆けていく。
「そんなのでカナ達に勝つなんて、ちょっとは身の程わきまえた方がいいんじゃなーい?☆」
 叩きつけられる挑発に、返答とばかりに無数の攻撃が叩き返され傷が増える。だが――
「うぇへへ、いいよ……もっと、もっと殺す気でカナにその牙と爪を向けてちょうだい♡」
 怒りや恐怖ではなく歓喜を浮かべ敵の攻撃を引き出し動きを誘導していった。

 イレギュラーズの攻勢で、確実に魔物の動きは誘導されていく。
 それを加速するため、ウェールは敵の取りこぼしを防ぐように動く。

(この高さなら狙える)
 飛行で視点を高くし、戦場を俯瞰するように見渡したウェールは、群れを成す鴉型の魔物に照準をつける。
 カードの束、狼札に魔力を込めると、ウェールの周囲を狼札が舞う。
 指示を待つ兵のように展開準備が終わった狼札を解放するべく、ウェールは発動式を流し込んだ。
 途端、無数の札は変容。
 弓に、あるいは銃へと変化し、豪雨の如き勢いで矢弾を一斉に放ち、蹂躙する勢いで魔物を撃ち落していく。
 鴉型の魔物の群れの一角が落ちる。
 だが敵の数は多く、ウェールを避けるようにして後方の鉄帝軍人へと向かおうとした。だが――
(させるか)
 敵の動きに応じ、ウェールも素早く射撃ポイントを移動する。
(軍人さん達が狙われないようにしないと。それにゴリョウさんの作戦の邪魔にもなりかねない。確実に引きつけないと)
 自分では無く誰かのために、自らの奥底に抱く憤怒に形を与え使役する。
(怒りを向けるなら、俺に向けろ)
 自身に抱いている憤怒を伝染させるように、魔力で作り出した怒りを抱かせるウィルスを空気経由で感染させる。
 ウィルスに触れた魔物達は憤怒に感染。
 湧き上がる怒りをぶつけるべくウェールへと飛翔する。
(それでいい)
「掛かって来い!」
 仲間を守り状況を有利にするべく、ウェールは魔物の群れを引き付けた。

 魔物の勢いは削られ、同時に動きは誘導されていく。
 その中心で、ゴリョウは鉄壁とも言えるタンクの冴えを見せていた。

「ぶはははッ! こんくらいじゃあまだまだこの豚は抜けねぇぜ!」
 突進してくる無数の魔物に、真正面からゴリョウは立ち塞がる。
「どうした! 魔物の影に隠れてちまちま撃つのが英雄か!」
 微動だにせず魔物の暴威を受け止めながら、後方の新時代英雄隊へ叩きつけるような大声をぶつけた。
 一見して余裕のあるように見え、だがしかし傷は確実に刻まれている。
 けれどゴリョウは平然と、不動であるかのように見せていた。
 それはある種の賭け。
(今ここが! ふんばりどころだ!)
 精神と肉体を共に奮い立たせ、新時代英雄隊に誘いを掛け――勝機へと繋げた。
 新時代英雄隊の複数が、ゴリョウに向け照準を合わせる。
 当然のように、射線には魔物の群れが入るがお構いなしだ。
(好し! 来い!)
 仲間が繋げてくれた策を実行しようと、ゴリョウは準備に入る。
 だが、敵の中にも冷静な者がいた。
「待て! これは――」
 リーダー格らしい人物が大声を上げ、ゴリョウへ向けた一斉掃射を止めようとしたが――
(させない)
 初手から最大限に自身を強化し、さらに加速装置で機動力を引き上げていたルチアが、新時代英雄隊に単身で突っ込む。
「新手が――!」
 あえて気付かせるため派手に音を立てながら近付いたルチアに、敵リーダー格は有能さゆえに気づき、部下に迎撃させようと声を上げてしまう。
 けれどそれは悪手。
 ゴリョウへの一斉掃射を止める事も出来ず、疾風の勢いで距離を詰めるルチアを止めるには間に合わない。
「怒りの日よ――」
 預言の聖句を切っ掛けに、ルチアは神の裁きの如き雷を降り注ぐ。
 雷霆が打ち鳴らす轟音と共に、天から地へと走る雷の鉄槌が新時代英雄隊を撃ち据えた。
 雷撃で体を焼かれた新時代英雄隊は、当然のようにルチアに怒りを向ける。
 それを受けながら、ルチアは全力で味方陣地に帰還。
 前線で魔物を引き付けているゴリョウやカナメの近くに移動すると、癒しの技を使い回復した。
 傷付いたゴリョウやカナメが癒され、新時代英雄隊から見れば明らかな脅威に見える。
 しかも今、魔物に囲まれ動けないようにも見え、好機であるようにも思えた。
 だからこそ、新時代英雄隊は魔物ごとゴリョウ達を撃ち殺そうと一斉掃射し――強烈なカウンターを受けることになる。
「喝ァッ!!!」
 魔物達も新時代英雄隊の一斉掃射に巻き込まれたことを確認し、ゴリョウは裂帛の気合と共に魔物をぶち上げる。
 身を焼く黒い衝撃波と共に吹っ飛ばされた魔物達は、新時代英雄隊の隊列にまで突っ込み、そのまま大暴れを始めた。
「操れねぇ時点で片手落ち、せめて自分らは攻撃しねぇように躾けるべきだったなぁ!」
 策を成就したゴリョウは、それを最大限に生かすべく仲間に声を掛ける。
「ここが攻め時だ!」

 応えるように仲間も動く。

(取りこぼしが無いようにしないと)
 ルチアは飛翔する鴉型魔物を中心に雷を降らせ打ち落としながら、適宜仲間を癒していく。
「傷は癒すから心配しないで」
 力付けるように声を掛け、戦場を駆けまわっていった。他の場所では――
「攻撃対象を切り替えろ! 新時代英雄隊を撃て!」
 ジェイクが鉄帝軍人を指揮し、新時代英雄隊を追詰める。
 一斉掃射と共に、魔物からの攻撃も受け混乱する新時代英雄隊は、なんとかして魔物をイレギュラーズ達の方に向けようとしたが――
(これで、どうだ!)
 錬がドリームシアターを使い、雪原の幻影で魔物達からイレギュラーズ達の姿を隠し、魔物達は新時代英雄隊に集中して襲い掛かり続けた。
 混乱する新時代英雄隊。それを増幅するように――
「後ろだ! 後ろにもイレギュラーズが! 雪に紛れて……うわああ!」
 アリアがギフトを使い撹乱。
 さらに混乱する新時代英雄隊。乱戦になった所で――
(まとめて削るとしましょう)
 オリーブは魔物ごと連続掃射し次々仕留めていった。
 敵は大崩れ。
 あとは個別の強力な個体が暴れているが――
「あは、もっともっと来て♡」
 悦びを感じながらカナメが積極的に切り結ぶ。
 ついには敵はガタガタになり、死なば諸共とばかりに突っ込んで来ようとするモノもいたが――
(家族や友と笑って暮らせる鉄帝を取り戻すために、絶対に止める!)
 ウェールは硬い決意と共に雷の如く速い一撃を繰り出し、確実に仕留めていった。

 多少の時間は掛かったが、全ての敵を殲滅する。

「助かった。礼を言う」
 激戦の地に向かう鉄帝軍人達は礼を告げ、応えるイレギュラーズ。
「気になさらずに。ここでの無理は安いものです。どうか御武運を」
 オリーブが労うように言葉を掛け――
「道は作ったぞ! さあ、行って来い!」
 ジェイクは高らかに勝鬨をあげ送り出す。
「俺らの仕事はここまでだ! 存分にやっつけてきな!」
 ゴリョウは軍人達の背を叩き激励し――
「道は舗装したけど、決して死なない様に。誉は生にあり、忘れないでね!」
 アリアは生還を願い言葉を贈る。
 他のイレギュラーズも同様に声を掛けたあと、軍人達は激戦地へと向かった。
 その背を見送ったあと――
「さて、私も決戦の場に赴きますか」
 さらなる戦いの場へと向かうアリアと同じように、新たなる目的地へと向かって行くのだった。

成否

成功

MVP

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
皆さまのお蔭で、鉄帝の軍人は余力を持ったまま激戦地へと向かうことが出来ました。
見事戦果を上げたようですが、皆さまのお蔭と軍人達は礼を言っているようです。

それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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