シナリオ詳細
<鉄と血と>倒せよ、何を、仇敵を
オープニング
●どこかの話
おいおい、なんだその無様は。よくもまあ俺の前へ顔が出せたもんだな、グラリオット。
はあ? 力がほしい? 今度こそ役目を果たしてみせる?
……まあいいだろう。お望み通り権能を分けてやる。
期待はしてねえ。せいぜい暴れまわってこい。おまえが死のうが生き延びようが、俺の知ったこっちゃねえ。
●思い出はいつだってこの胸で燃えている
フライパンは鉄製がいいと、母はよく言っていた。
そのとおりだと、心底思う。底の深いフライパンは、鍋にも蒸し器にもなるし、何でも作れる。わたしはアリョーナ。革命派人民軍補給部隊。調理を担当している。前線で戦う兵士たちへ、あたたかな糧食を作るのだ。食事は士気にかかわる。わたしは、わたしにできることをしよう。あの憎き新皇帝、バルナバスを倒すために。わたしにできることを、精一杯。
護身用にと、銃は一応習ったけれど、しょせん付け焼き刃。足手まといにしかならない。だけど、料理の腕をかわれ、こうして補給部隊に居る。幸いにも、海洋王国から送られた物資によって、わたしは優しい味の家庭料理を、兵士たちへ存分にふるまうことができる。
あの日、イレギュラーズたちに助けられてから、わたしは変わった。ぼんやりしていた頭がしゃっきりし、味を感じなかった舌は鋭敏になった。自分の足で、立てるようになった。わたしはわたしの戦いをしよう。何十人分もの料理を作り、彼らの英気を養おう。
その日も、わたしは在庫の管理をしながら、首都までの行軍を共にしていた。行軍は順調だった。朝食を取った兵士たちは元気いっぱいで、ずんずん先へ進んでいく。わたしは馬車に揺られながら、彼らを頼もしく感じていた。
状況が変わったのはその時だった。
「なんだこいつは!」
前方から悲鳴が聞こえる。銃が鳴り響く。わたしは見てしまった。青黒い、塊を。それは蛇を団子状に丸めたように見えた。それは頭部の代わりに人間の生首をぶら下げていた。生首の口が動く。
「……アリョーナ」
聞き慣れた声が耳朶を打つ。
父さんの声だ。母さんの声だ。エフセエヴィチさんの声だ。
「アアリョオオオオオオナアアアアアア!!!」
咆哮をあげて、それは突進してきた。
「みんな逃げて! あれは魔種よ! 勝ち目なんかない、逃げて!」
わたしは必死になって叫んだ。すぐに伝達が行われ、部隊は後退した。しかし魔種は見た目に反した素早さで襲い来る。呼び声が響く。体が重くなっていく。
「つかまって! とにかく逃げるのよ!」
わたしは御者に頼んで馬車を走らせた。部隊が半壊したと聞いたのは、その晩のことだった。
●少女からの依頼
「魔種グラリオットが現れたの。そのせいで、また新たな犠牲者が出てしまった」
アリョーナと名乗った少女は憔悴しているようだった。心が痛むのだろう。チャーミングな青い瞳が伏せられている。かつて彼女は、グラリオットなる魔種によって両親を奪われ、革命派難民キャンプへ逃れるも、再度襲撃を受けた。イレギュラーズの活躍が無ければ、とうに死んでいただろう。
「グラリオットは、以前はミミズ団子のような姿をしていたけれど、わたしが再びまみえた時は、青黒い蛇を固めたような姿をしていたわ。きっとパワーアップしているのよ」
アリョーナは、きっと顔を上げた。決意が彼女の瞳にあった。
「グラリオットは強い。力だけでなく、精神にまで干渉してくる。そんな戦場へあなたたちを送り出すわたしは、死神なのかも。地獄へ、落ちるかもしれないね」
だけど、と彼女は炎を吐いた。
「同じ落ちるなら、後悔せずに落ちたい。魔種グラリオットを倒して! わたしの両親の、そしてわたしを家族と呼んで暖かく迎えてくれた人たちの、かたきを討って!」
アリョーナは後ろに並べられていたなにかを覆うカバーを、勢いよく取り払った。姿を表したのは魔導バイク。低空ではあるが飛行能力を有し、荒れた道も難なく走破できるすぐれものだ。
「グラリオットは窮地へ陥るとバラバラになって逃げ出すと聞いたわ。前回はそれで取り逃がしたって報告だった。でも、このバイクを使えばグラリオットに肉薄できる」
わたしにできるのはこのくらいしかない、と、彼女は青い瞳へ苦渋を浮かべた。
「……わたしには力がない。あの魔種へ対抗できるだけの力がない。けれど、イレギュラーズなら。あなたたちならきっと、勝てると信じているの」
お願い……。消え入るような声が、あなたへ届く。
あなたは、アリョーナを安心させるように、力強くうなずいた。
- <鉄と血と>倒せよ、何を、仇敵をLv:30以上完了
- GM名赤白みどり
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月21日 22時07分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC1人)参加者一覧(10人)
リプレイ
●誰の記憶に残ることもなく
イレギュラーズは思い出した。アリョーナという少女の、暗い炎燃え盛る瞳を。
「地獄へ、落ちるかもしれないね」そううそぶいた彼女の、悲しいまでの決意を。
とつぜん奪われた日常を、やっと立ち上がれた矢先の悲劇を、大切にしていた仲間をまたも失ったつらさを。ゆえにイレギュラーズは往く。魔導バイクに乗ったまま、一行は疾駆する。
アクセルを回すと、魔導バイクは応えてエンジンをふかす。騒音。しかし耳障りではない。これから戦場へ赴くのだ。魔導バイクのエンジン音は、まるで勇者を鼓舞するかのようだった。
アリョーナのそれもまた憤怒、そしてこれからはじまるのは、憤怒の冠位をしりぞける前座。そう、ただの、敗残兵の後始末だ。けれどもイレギュラーズが向かうに理由は余りある。なぜなら相手が魔種だからだ。魔種、混沌の崩壊を加速させる存在。その力は冠位の影響を受けて日増しに強くなり、血なまぐさい事件の背後には必ず彼彼女らの影がある。
なんといっても、原罪の呼び声。これが曲者だ。魔種によってさまざまな形態を持つその声は、並の純種(ニンゲン)が聞いたなら欲望を刺激され、反転してしまう。強く勇気あるイレギュラーズでさえそうなのだ。ただのニンゲンに、抗う術はない。
「グラリオット……」
『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)は唇を撫でる。
「この世界で……私が成すべきこと……それは……」
ミザリィ本人には、いまだ見えないでいる。だけれど、今すべきことはわかった。あの愚か者を、手助けしてやることだ。しゃんと立てと怒鳴りつけ、おびえるなと号令を発することだ。
「ふふ、贔屓をしようなどと、私もヤキが回ったものです。……ですが、無茶をすると聞いて、放ってはおけない。ふふふ、これもまた、私の成すべきことなのやもしれませんね」
同じ存在として、同じ物語として、交わらぬ道を歩いていたミザリィと『Stargazer』ファニー(p3p010255)が、今、運命の特異点ですれちがう。
「濃香せよ、濃紅せよ、止まれと叫ぶ赤は、慰めのいらぬ紅となれ。往け往け往け、一挙一動一投足に至るまで。効果的に、効率的に、一切の無駄なく勝利を叫べ」
ソリッド・シナジーの加護をかけられたファニーは、小さく口笛を吹いた。
「heh、THX」
「礼には及びません。あなたはあなたの成すべきことをなさい。ふん……死んだら許しませんから」
「スケルトンだぜ、俺様はよ。最も死に近く、最も遠い、それが俺様だ」
ギフトの恩寵でニンゲンにしか見えない姿となっても、ファニーの本質は変わらない。彼は楽しげに笑い、まるで戦の恐怖などないかのように振る舞う。実際にその通りなのだろう。短期間で、しかし、深い修行を積んだ彼の指先は、今日も冴え渡っている。
いつもより厚いグローブを付けた彼の指では、秘密が光っている。イレギュラーズ達は防寒着を着込み、寒さ対策をしていた。動体視力が命のファニーは、雪山用のゴーグルでもって、両眼を守る。それでもなお寒風が体を蝕んでいく。
「このていどで、俺様たちを止められると思うなよ」
ファニーは不敵に笑い、アクセルを全開にする。
その横で魔導バイクとともに空を渡っていくのは、『闇之雲』武器商人(p3p001107)だ。
「親愛なる隣人、骸骨のコ。備えは万全かい?」
「そういうオレの夜はどうなんだ?」
「何も問題はないね」
「いつもどおりってことか」
「そう、いつもどおりさ。何処へ投げ込まれようと、何処へ投げ出されようと、我(アタシ)はいつだって、いつもどおりさ」
武器商人はバイクに腰を下ろしているだけだ。バイクのほうが勝手に進路変更をし、出力をあげている。武器商人はすわっているだけでいい。そのモノが持つ莫大な魔力ゆえに、魔導バイクを意識だけで操ることなど、赤子の手をひねるに等しい。
びっしりと術が施された魔術礼装は、襟元と裾にファーが見える。妖精印の林檎ジュースは、寒冷地仕様のあったかホット仕様、それをゆっくり味わうさまは、これからピクニックにでも出かけるかのような気安さ。
隣を並走するのは、見よ、彼こそが「冬」の権能を持つ、文字どおりの【冬将軍】ジェド・マロース。凍える吹雪は彼の配下。ならばこれを退けることも、可能であろう。ジェドは顔をしかめた。
「……我が春の呼び声が聞こえるであろうか」
「なァんだい、マロースの旦那。臆病風に吹かれたかい?」
武器商人の軽口に、ジェドは真面目な顔つきのまま首を振った。
「そのようなことになれば、我が凍てつく怒りが絶対零度となろう。この手で魔種の首を落としたくなる」
「ヒヒ、そいつは重畳。手間が省ける」
「我が春は我が愛の化身。我が恩寵すら彼女の前では意味をなさぬ。穢す者あらば、我は臥薪嘗胆しようとも、この世の果てまで追いつめてくれよう」
「うんうん、ノロケもここまでくれば爽快だ。その調子でたのむよ、マロースの旦那」
「べつにノロケてなどおらぬ」
ジェドは至極当然のことを言ったまでだがという態度で、武器商人へ返事をする。あらためて前を向いたジェドは、厳しい顔をした。
「魔種が民を脅かしている以上は、それは侵略である。フローズヴィトニルの影響は強力であれど、我とて『冬』のグリムアザース。しりぞけ寒波よ。黙れよ吹きすさぶ風よ。道を開け、イレギュラーズの背中を押せ」
イレギュラーズの周囲から寒さが取り除かれる。冬将軍である彼の恩恵は大きかった。そんな彼をも味方につける、武器商人という存在へも、今一度刮目すべきであろう。冬をも武器とするそのモノへ。春をも一目置くそのモノへ。
『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)がまだ残る寒風に思案げな顔。
(この寒さはフローズヴィトニルの影響。なら、私の存在が功をなすはず)
オデットは歌うように声を上げた。傍らを走る子狼が反応してオデットを見上げる。
「頼んでもいい? フローズヴィトニル。カケラの私のお願いを、お友達の私のお願いを、聞いてくれる? お願いよ、フローズヴィトニル、ほんの少しだけでいいの、私たちからそっぽをむいて」
子狼の遠吠えが響く。寒さが、あきらかにやわらいだ。寒波がフローズヴィトニルによるものだというオデットの思慮は当たっていた。オデットは勢い込んで先へ走り出る。先頭を走っているのは、『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)だ。オデットはフルールへ話しかけた。
「だいぶ楽になったかしら?」
「ええ、ええ、ここまで事前対策がなされれば、十全というものです。油断? そんなものはハナから存在しません。存在させません、ええ、この私が」
フルールの蜜のように甘く、美しい声は、まるで春を告げる鳥を思い起こさせる。乙女はいつだって、場を華やがせるのだ。その乙女は、終末へのカウントダウンをしずかに見守っている。
(グラリオット、あなたもまた分岐点のひとつ。気ままなる運命の流れを、この戦いで私達の支配下に置く)
フルールは優雅にほほえみ、前傾姿勢を取る。
引き裂かれた風が、耳元で吠えている。それを聞いていた『暴食の黒』恋屍・愛無(p3p007296)の全身が、にちりと波打った。戦いの前の、準備運動のようなものだ。防寒装備、過酷耐性、そしてジェドとオデットの援護、それらはイレギュラーズを寒さから守ってくれている。
地球外ばーがーをぺろりと食べ終えた愛無は、戦場を広く見渡した。広域俯瞰にひっかかった、醜悪な姿を、つい目に留めてしまう。
「グラリオットめ……。待ち受けているつもりか、それで」
荒野に陣取る大蛇の塊。頭の代わりにニンゲンの頭部をぶらさげた姿は、愛無の見知ったものだ。すこしばかり姿形は違うが、異質故に本質を見抜く愛無は、それが前回戦ったグラリオットと、同一存在であると断定した。愛無は魔導バイクをすこしばかり『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)へ近づけ、声をかける。独り言のリズムで。
「あの時は逃げられた」
「そう、だ。逃げられた。」
エクスマリアも独り言の調子で答える。ぽつり、ぽつり、言葉が積み重なっていく。
「もしも二度も逃したならば……」
「それは、ない。」
「断言するんだな」
「当然、だ。二度はない。魔種ごときに、二度など、許さない。」
エクスマリアもまた防寒具を着込んでいる。だが彼女を突き動かすのは、鉄帝の誇る防寒着ではない。そこに宿る意思であり、魂であり、叫びだった。
「相手が相手、だから、な。」
ちらと愛無を見たエクスマリアが、またぽつりとつぶやく。口調は平然。平常通り。けれどその無表情の奥に、湧き上がる怒りを、愛無は見て取った。エクスマリアを突き動かしているのは、熱く滾らせているのは、魔種への激しい憤怒だ。彼女の罰とでも呼ぶべき宿業。だが、それこそが彼女をこの戦場へ呼んだ。
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は自ら志願して、この戦へ馳せ参じた。いとしき人のためである。理由は唯一つであり、それで充分だ。
「出し惜しみはしない。私の持つ力すべてをかけて、グラリオットを討つ!」
真剣な表情で魔導バイクを操る。すべてはいとしき人の喜びのために、その笑顔のために。信仰にもちかしい愛情は、寒波が付け入る隙がないほどに、マリアの中で燃えている。
大切な存在のために戦うのは、『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)も同じだった。ただ、そのひとは、もう、いない。思い出とすこしのリグレットが、アルテミアの戦う理由だ。仲春守を握りしめると、ざわつく心がおだやかになっていく。矢のように鋭く、アルテミアは走る。
「……グラリオットは大切な人の声を真似るのでしたっけ」
「そう聞いている」
『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が答える。魔導バイクを並んで走らせ、アルテミアと沙耶は会話を続けた。
「……許せないわね、そんなこと。人の心を、何だと思っているのかしら」
「まったくだ。魔種に同情など……必要ない」
沙耶はまっすぐ前を向いたままだ。オーロラの髪飾りが、美しくきらめいた。生き延びてみせる。この戦いでも。そして、弔うのだ。道半ばで断ち切られた人々の人生を。その怨念を。沙耶は見てきた。凍りついた死体の山を。
それがたった一体の魔種によるものだという事実に戦慄し、そして奮起したのだ。たかが一体、されど一体、倒せば必ずや、この国の混乱の種をひとつ、消滅させることができるだろう。そして、未来の悲劇を、食い止めることができるだろう。
「……とはいえ、前回の件もあるうえに、より強力になっているとも聞いた。余裕綽々というわけにはいかないな」
「だいじょーぶよ、おねーさんが居るわ!」
沙耶の声に、『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)が胸を張って叫ぶ。視界に入るのは青黒い蛇の塊。異形。ぞろりとそれが起き上がり、鎌首をもたげる。喜怒哀楽、いくつもの生首がひきつった表情を浮かべている。……浮かべさせられている。死者を冒涜する魔種、けれどガイアドニスは微笑を消さない。
「おねーさんが来たからには、なんだってうまくいくのよ。いつだって希望を胸に。傷ついても、また立ちあがる強さをこの脚に。おねーさんはいつだって、そうしてきたのだわ!」
魔導バイクのエンジン音。景気づけにクラクションを鳴らし、ガイアドニスは明るく呼ばわる。
「さあ、行くわよみんな? 用意はいいわよね? おねーさんといっしょに、ぶちかましちゃいましょう!」
●何処に軌跡を残すこともなく
……アアアリョオオオオオナアアアアアア……。
呼び声が鳴り響いた。ずしんと体が重くなる。ここまで想定内。ガイアドニスは高らかに歌い上げる。
「アリョーナちゃんはおねーさん達へベットしたわ。おねーさんたちは、それに答える義務がある! おねーさんもおねーさん自身の速度にオールインよっ!」
ガイアドニスは賭けた。その一瞬へ賭けた。仲間のために、アリョーナのために、死していった名もなき人々のために、極限まで高めた反応速度でもって戦場へ殴り込んだ。その賭けは……。
「いけええええっ!」
成功した。
ガイアドニスの読みどおりだった。グラリオットはガイアドニスほどの神速を持っていなかった。
(引き寄せタイミングと足止め付与が同時ではないなら、そこにラグがあるのだわ! おねーさんの神鳴る速さでもって、味方を支援するのだわ!)
連鎖行動。言うまでもなく、ガイアドニスのあとに続く特殊行動だ。彼女の反応速度を持って、イレギュラーズは動いた。固い絆で結ばれた者同士が起こせるアクション。それが、グラリオットの誤算だった。魔種は慢心し、あなどっていたのだ。イレギュラーズたちの研鑽を。戦いの中で育まれる友愛を。思いが重なるのは、一瞬の出来事なのかもしれない。だが共に強敵へ立ち向かった思い出は、依頼映像といっしょにいつまでも残る。
ガソリンプリンの残りかすを頬から拭い去り、ガイアドニスは「貫く意思」を起動した。
「グラリオット、君の敵はおねーさんなのだわ! このきゅーきょくボディを狙わないなんて、嘘なのだわ!」
至近に入らないギリギリのところで立ち回り、ガイアドニスは、コマンダーガードへ登録された戦闘動作マクロを、ボディへインストールする。グラリオットが目をむく。その目めがけて、追撃する。
ぱかーん!
景気のいい音を立てて、大蛇の頭が空高くふっとぶ。頭蓋骨を割られた頭部が、痛みに悶えている。
「グラリオット……今度は、逃さない。醜悪なケダモノは、一匹残らず、土に還す、ぞ。」
エクスマリアが続く。
「マリアは鉄の始祖、そしてソロモンの仔。王の名はいまだ遠けれども、権能を宿す身ならば、辞書にある『不可能』は破り捨てて、くれる。」
号令、味方の足止めが解除されていく。だがまだ足りない、あと一歩。
号令。エクスマリアは素早くクェーサーアナライズを二度掛けした。皆の失調が回復する。グラリオットはもがいている。引き寄せようとしたのだろう。けれどそれはエクスマリアにより、見事に阻止された。
「行け、続け。好機を逃す、な。」
「heh、承ってやるよ。……楽に死ねると思うなよ、グラリオットォ!」
幕が上がる。ご都合主義なデウスエクスマキナが現れる。それはファニーの姿をしていた。重なったシルエットが、ひとつになる。
「いざ、倒せよ、何を、仇敵を!」
腕を大きく振り上げ、鋏模様のアルミ栞が挟まっている本を開く。現れたは白紙。それでいい、それがいい。彼は完璧だ。彼は成し遂げた。
白紙のページが波打ち、鞭のようにしなってグラリオットを叩きのめす。秘孔を突かれたグラリオットは大きく体勢を崩した。魔種が体勢を立て直す前に、フルールが割り込む、。
魔種がわめきたてる。
「アアアアリョオオオオオオオナアアアア!」
「アアリョオオオオオナアアアアアアアア!」
対して響くは鳥の歌声。フルールはグラリオットの口真似をし、にいと笑ってみせる。邪悪なほどに可憐、怯えるほどに無垢。
「さて、グラリオットは久しぶりですね。風貌がまた変わったようですが、強化されたとはいえ、本質は変わらないもの、結局は……」
こがねの五線譜がフルールの周りへ張り巡らされる。さんざめくそれはルーンシールド。物理を無効化してのける究極の防壁。
「……救われないのですよね。もっと、きちんとお話できればよかったのですが」
彼女の言は同情からではない。ただすなおに、乙女は考えるのだ。なぜグラリオットと自分たちは手を取り合えないのか、なぜ、なぜ、なぜ? 夕暮れの橙が、深海の紺碧が、魔へ反転したニンゲンを見据える。
(私は魔種を許容したい)
善も悪も、なにもかもとろけて原始の海へ帰れば、争いはなくなるのでしょうか? 乙女は思考する。乙女は疑問を抱く。乙女は、行動する。
燃えるフィニクスの姿をとり、グラリオットへ向けて接近。グラリオットの全身から、無数の蛇が現れ射程内に入った獲物をくらわんとする。だがしがし、悪あがきにすぎなかった。フルールが考えに考え抜いた結果のとおり、魔種のそれは、物理攻撃だったのだ。五線譜に弾かれていく蛇ども。一筋たりとも彼女へ傷をつけることはかなわない。
「ああ怖いですね。怖い怖い。でも私は近接のほうが強いのですよ?」
紅の蕀を生成したフルールは、それでもってグラリオットの巨体を縛り付ける。紅いくさすぎかずらの威力によって、魔種はもがきくるしみ、黒い血を滂沱のごとくこぼす。
「これが私の最大火力。グラリオット、あなたへのせめてもの手向けです。散りなさい。私がそうと決めたら、そうなるのです」
紅を越えていく、真の焔を灯していく。長大な一振りの剣と化した、星のような蒼を、無造作に一振り。
ぞりり。
肉がえぐれ、焼け付く悪臭。たちこめるそれへ、フルールはかすかに眉をしかめた。魔種は大きくうごめき、威嚇音を発した。なおも余裕がある証だ。
「これがグラリオット、か……恐るべき相手だな」
沙耶は正直な感想を述べた。常に真っ直ぐな彼女は、常に真実をその瞳へ映す。
「けれども、前に私がその被害にあった者達の葬式をしてやった時に誓ったからな……必ずグラリオットを倒して仇を討つ、と」
凍り付けよ、この間合で。距離も時間も、いまや沙耶にとって脅威ではない。すべてを従えるかのような威厳で、魔種の威圧に対抗する。
「ああ、あの言葉、口先だけでないことを証明してやらなければ。弱者を踏みにじったグラリオットを、到底許せるはずもないからな」
沙耶がグラリオットへ向けてつっこむ。決意のままに。
空が穿たれた。沙耶の動きに空気も音も置いていかれたのだ。すさまじい慣性を破壊力に変えて、沙耶は神すら斬る一撃を放つ。悲鳴があがる。血しぶきが飛ぶ。
「アリョオオオナアアッ! アアアアアリョオオナアアアアア!」
「よくもまあ、そこまで執着できるものだ。君、本当は憤怒ではなくて、色欲か何かではないのか?」
「どっちでもいいわ。……こいつがあの大惨事を引き起こした元凶なわけね」
オデットは勇将の力を宿した。輝かんばかりの翼が、より美しくなる。そは再来。神話の再演。
「グラリオットを倒さなきゃ、埋葬した人たちもきっと眠れないわ。安らかな眠りのためにも、ふたたび同じことを起こさせないためにも、ここで終わらせるわよ!」
オデットは妖精を集める。小さな光が、彼女の周りに集い、複雑な陣を練り上げる。
「我は災厄の化身となる。五つの頭に王冠をいただき、四象の力もて汝を呪わん。かつてないほどの未曾有を、我は願う。恋い慕う。四象、その権能を、世界のためでなく我のために使役せよ!」
妖精たちが四象の化身となる。そしてフローズヴィトニルのカケラである子狼へ憑依した。大いなる神の姿を借りて、立派な体躯を持つ狼が突撃する。グラリオットは衝撃を受けて傾いた。狼の攻撃はそれだけでは終わらない、数々の不調を、食らいついた牙から魔種へ流し込んでいく。
「悪いね」
武器商人はいつもどおりの、気安さをこめてグラリオットへ語りかけた。
「キミに恨みはないが。親愛なる隣人がキミの死を特に強くお望みだ」
菫紫の魔眼は、月のように静かで、冷たい。
「苦しそうだね、キミ。あァ、真名を呼んではあげないよ。わざわざそんなことをしてあげるほど、我(アタシ)はのんきでもなければ、キミを見くびっているわけでもないからね」
残念にも引き寄せられた仲間の代わりに、武器商人は盾となる。己が身を投げ出し、かばう。無数の蛇が武器商人へ食らいつく。とてつもない衝撃に体はきしむ。それがなんだというのか。すべては布石。勝利への道標。
「むかしむかしのトモダチに、吟遊詩人のコがいたのさァ。そのコが言うことにはね、勝てないならば『勝てば』いいってさ」
底力をあげた武器商人は、小さく喉を鳴らした。苦痛、ああ、なつかしい感覚だ。これを思い出して、ずいぶんになる。混沌肯定の影響で、ずいぶんと脆弱になったものだ。しかし。
(痛みすら心地いいんだから、本当にこの世界は、いとおしいねぇ……)
なにもかもすべてを肯定して、強欲なソレは慈愛の笑みを浮かべる。
マリアが地を蹴った。空を飛ぶ、高く高く、自由が彼女の翼だった。
「憤怒の魔種……グラリオット……。厄介な相手だけれど、この戦いで打倒してみせる!」
雲が切れた。太陽を背に、マリアは虎となる。静電気を帯びた肢体が、艶やかに光る。
「敵は一人。されど強大な相手だ。全力で駆ける!」
電磁反発装甲を召喚。続けて神への切り札を展開。異能のそれは、対神攻性鎧。破壊神と対等以上に戦った、かつてのマリアの力。防御を整えきると、マリアは腹の底から叫んだ。
「最初から全力全開でいく! 極天式を見せてやる!」
自在に空を飛び回っていたマリアが、片足を折り、蹴りの姿勢になる。そしてそのまま……。
「異能物質化武装、完了! 雷速必中! 我が雷撃の極致を受けてみろ! 緋雷絶華!」
グラリオットへ空中から三回転してキック。響き渡る衝撃は、魔種を内から崩していく。大技を決める多大な精神力を、マリアの追撃が削り取っていく。必ず中たると書いて、必中と読む。マリアのそれは、必ず殺すと書いて、まるで必殺技であるかのような威力だった。かつての己へ近づいた反動に、口の端から血が溢れる。だからどうした。あの人を想えば、このていど、かすり傷だ。
マリアの闘志は衰えない。アルテミアの闘志も、また、折れたりはしなかった。
「至近へ入ればカウンター……相性は最悪。それがなんだというの。仕掛けてくるとわかっているなら、いくらでも方法はあるものよ」
この手に栄光を。亡き人々へ捧ぐ祈りを。息を乱さずグラリオットを打ち据え、アルテミアは決意を新たにする。
「アリョーナさんの、二度も大切な人達を蹂躙された自身の無力さと、魔種への怒りは相当なものでしょう。その憤怒の炎は、たしかに受け取ったわ」
淡い青の瀟洒な短剣は、主へ応えた。魔除けの宝石が、雲間からさした陽の光を受けて、ふたつとない輝石となる。
高らかなるかな、鍔鳴り。
怒りを植えつけられたグラリオットが総攻撃を開始する。10秒ごとに飛んでくる攻撃は、武器商人が時にかばい、時にアルテミア自身が片手でさばく。彼女は皆が攻撃し、脆くなった部位を狙う。共闘の醍醐味はそこにあると信じて。
「アリョーナさんのためにも、必ず討ち取って、仇は取ってあげる!」
短く空気を吸い、姿勢を低くする。残像が質量を伴いグラリオットへ叩きつけられる、しかしてその動きは千手観音を思わせる神々しさ。
「残念ね、グラリオット。あなたはタフみたいだけど、私も似たようなものよ。私は運命を支配する、塔の魔女にして、澱の魔女。誰も私を止められない! 長引くほどに、私が有利よ!」
戦いの中で研ぎ澄まされていく刃。アルテミアの動きは洗練されていく、踊っているかのように、優雅に。速く、さらに速く。
「制圧というのは……」
愛無は低空飛行のまま魔導バイクを静止させていた。攻撃の精度を保つために。その行為は、グラリオットを睥睨しているかのようだ。
「……継続し拠点を維持しなければならないのではないのか? 冠位というのは随分と寛大なのだな。お前のようなのを、生かしておくのだから」
愛無は擬態能力を開放する。限界まで高めた混沌親和性を感じながら。
愛無はエキスパートだった。なんの? 騎士道精神の体現だった。広域俯瞰を得意とした。闇の帳に隠れることができた。そして、大喰らいで、鉄の胃袋を持ち、感情を封印することに長けていた。なにより、エネミースキャンの熟練の使い手だった。
引き寄せをくらい、至近距離へ入った愛無は、己の自動反撃能力が魔種へ蓄積されていくのを「視た」。音もなくその場を離脱し、仲間へ告げる。
「あと一撃で逃走を開始する様子だ。爆散するぞ。カウンターには引き続き気をつけろ。だが恐れることはない。武器商人君、準備はいいか?」
「もちろんだよ、恋屍」
うなりをあげて、魔力が武器商人へ集まっていく。最大限の中の最大を、この一撃で決める。瀕死にさせる。愛無は冷めた目のまま続けた。
「見飽きた顔だ。疾く殲滅しよう」
「同感だねぇ」
黒い鮮血がほとばしる。呼び出されたソウルが、魔種を貫く。グラリオットをめちゃくちゃにしていく。
「アアアアアアアアリョオオオオオオオナアアアアアアア!」
魔種が、爆散した。肉が飛び散り、グラリオットは壮絶な最後を晒したかのように見えた。けれども、愛無と武器商人の目は、しっかと四匹の大蛇を見据えていた。
(東西南北、それぞれへ逃げ出したよ)
武器商人のハイテレパスは、ぐちゃぐちゃな戦場のなかでも明朗に響き渡る。
「四班に分かれて叩くぞ。やるならば徹底的にだ」
愛無は、魔導バイクのエンジンを入れた。
●何の成果もあげられないまま
武器商人がバイクをスタートさせた。片手をかるくハンドルへ置き、もう片方の繊手へ、名もなきソウルを呼び寄せ、魔力塊を作る。その身は満身創痍、に、見える。けれど、これこそが武器商人の権能。不死性。死を超越するモノ。生と死の境界でこそ、武器商人の真価は発揮される。
ソウルストライクが大蛇へ打ち込まれる。おとなしく攻撃を食らった分、存分に復讐してのける。大蛇は苦しみぬくも、なおも逃げようとしている。
「かわいらしいことだねぇ。そうだね、たしかに逃げ切ればキミの勝ちだ。……できればだけどね」
ふいに脳裏へ声が響いた。切なさに満ちた哀願だった。それは大事な小鳥の声をしていた。
『……た…すけて…紫、月……たす…け…。』
「は?」
武器商人の顔から一切の表情が失せた。心奪われるわけがない。作りものの、まがいものの、目の前のそれの声に。視えぬモノを視る武器商人の魔眼は醜い大蛇である真実の姿を映しつづけている。苦行に慣れたその身にとって、付け焼き刃の哀願には、怒りすら感じた。
「誰の許可を得て、その声を使っている」
湧き上がる怒りにまかせて、放つ、放つ、名もなき人々の復讐の遺志を。かつてグラリオットに食い殺された、哀れな魂の憎悪を。
「逃げられると思ったか」
一切の情け容赦のない、無色透明な声音。真実のみを告げる、断罪の鐘の音。恍惚の中、大きな傷を受け、ぼろぼろの大蛇のあぎとが動く。アルテミアは、はっと顔をあげた。
『どうして……ねえ……アル、テミ、ア……ど……して……』
「エルメリア……」
聞こえたのは自分の声。いや、それによく似た違う声。いまは亡き比翼の面影。豊穣の地で失った、最愛の妹。左目がうずく。魂に刻まれた『残滓』が、嘆きの声を上げたのを感じた。
「わかっているわ、エルメリア……。ふふ、愚かね、グラリオット」
もう二度と耳にすることのないはずの声が、頭蓋で反響している。心地よい破滅へ誘っている。しかして、アルテミアはそれを拒否した。燃え上がる。変わってしまった左目に怒りが灯る。
「お前のような存在が、あの子の声で、名を口にするなッ!!」
あらゆる憐憫が焼き払われた。アルテミアの身を焦がす双炎の蒼と紅。妹の遺した力が、アルテミア自身を強くする。
「あの子を穢すな! あの子を否定するな! あの子は最後まで……最後まで……!」
言葉にならない思いに、アルテミアは涙をこぼす。それは悲しみからくるものではない。神聖を冒涜した背教徒へ向けられるものだ。
「恋の焔に焼き切れろッ!!!」
大きく振りかぶった。次の刹那、大蛇の首が飛ぶ。アルテミアはそれでも許しきれず、黒い煤になっていく大蛇を何度も刺し貫いた。
「ここまで来て逃がすものか! 覚悟したまえ!」
凛とした声が大蛇の背へあたる。逃げていく大蛇は、まるでおびえきった兎のようだ。マリアはけっして許さない。マリアはけっして諦めない。
『……おゆるし……くださいまし……マリ、ア……おゆるしを……』
「くっ!」
かなたからの哀願を受け、矛先が鈍る。
「ぐう……許さない、ぞ……グラリオット。だいたい、私の好きな人は……そんなふうに私を呼ばないんだ……!」
一度鈍った矛先を整えるのは大変だった。ふるえる手で狙いを定める。
「これで、終わり……だ……! 報いを受けろ!」
渾身の一撃は、だがしかし、大蛇を仕留めきれなかった。
「おのれ……!」
マリアのなか、相反する感情が揺れている。あの大切な人を思わせるものを逃がしてやりたい。絶対に許さない、よくも好きな人を侮辱してくれたな。
「ぐううううっ!」
慟哭するマリア。引き裂かれた想いに苦悶する。
「問題ない、マリア君のおかげで体力も気力も削りきれた、感謝する」
愛無が走り抜ける。至近距離に入った愛無を、大蛇の最後のあがきが襲う。それへ反撃しながら、愛無は確実に殺すべく、慎重に急所を見極める。
「……お前が先に死ねば其れでいい。オーダーはシンプル、『殺せ』。だからそうする。僕は傭兵。金の重みが命の重みだ」
『い……や……愛、無……いや……いや……』
愛無は、哀願を鼻で笑い飛ばした。
「本質は追い込まれた時にこそ現れる。力に溺れ、弱者を蹂躙しようと追い込まれれば許しを請い、逃げ惑う。それがお前の本質なのだろうな。魔種と成り果てても変わらぬ性よ。この国は、さぞ生きにくかったろう。お前のような『弱者』には」
愛無は笑っている。笑みを浮かべている。それは真似ではなく、本心からの、侮蔑と決別の笑みだ。
「『腹の中』は存外住みやすいかもしれないぞ。蛇も蚯蚓も暗がりを好むだろう? 冥途の土産に教えてやる。僕の想い人は死に瀕して命乞いなどと『可愛い事』はしないのだ。ゆえに惹かれる。ゆえに愛おしい。……死の間際までと願われた僕に、哀願など笑止千万」
愛無は、片手をギロチンの刃に変えた。そして捕食する。
「疾く死ね」
それが大蛇の終幕を彩る声だった。
「ここまでだ、グラリオット! お前が殺した者達の怨み、存分に受け止めるがいい」
沙耶は完璧に、大蛇の行く先へ回り込んでみせた。
大蛇が咆哮をあげて突進してくる。そのなかに沙耶は、ありえない声を聞いた。
『……どいて……おねが……沙、耶……』
「……やめろ!」
全身を滝のような汗がつたっていく。沙耶は肩で息をしながら、誘惑へ抵抗する。
「……お前を倒しても、人命は戻ってこないのだ。……せめて安らかに眠ってくれることを、祈る、そのために、ここへ、来た……あうっ!」
逡巡と慟哭が沙耶の心へ芽生えていた。それは魂を侵食し、沙耶の精神を乗っ取ろうとする。沙耶は全力で心を引き締めた。
「こんな、ところで、最後のつめで……! 情けない姿など、故人の前に、さらせるものか!」
必死になって入れた斬神空波が、最後のところでかする。
「くびを……くびを、置いていけ……おのれ……逃げるなあ!」
くるしまぎれの攻撃をしかける。鱗を叩いたそこから、黒い血が吹き出す。
「おつかれでしょう、下がってもだいじょうぶ。私たちがグラリオットへ、引導を渡します」
フルールの声が一滴の清涼剤となって、沙耶の荒ぶる精神を落ち着かせる。
「さてさて?」
フルールはいたずらをおもいついたこどものように、人差し指を口元に当て、小首をかしげてみせた。まるで内緒話でもするかのように。
「ほら、情けない声で鳴きなさいな、泣きなさいな、哭きなさいな。かまいませんよ。その程度には、猶予をあげます。あなたを最後まで理解したいから」
大蛇は逃げていく。地べたを這いずり回り、一直線にフルールと、後続のファニーから距離を取ろうとする。
ふたりは大蛇を追いかけていく。フルールはあえて攻撃しなかった。徐々に、徐々に距離を詰めていく。
『……ああ……あ……フ、ルール……ふる、ぅる……ゆるし……』
「それでおしまいですか?」
フルールは興味なさそうに返答した。
「もっとこう、なにか、すごいことをしてくるかと思ってましたら、二番煎じもいいところです。乙女を騙すのなら、もうすこしおつむを使ってくださいね。本人の姿がない限り、私は声なんかに靡きません」
だって気配がないもの。と、フルールは再度頭を傾けた。
「甘くひそやかに、秘密と背徳とこれ以上ない愛情の味を。あなたは知らないのでしょう。だから、うわっつらだけ、だから、声真似だけ。……まぁ本物の声だとしても、放置プレイも、なかなか楽しそうだけどね♪」
爽やかに笑って、断言、断罪。
「グラリオット、なぜそこまで執着するのです? 魔種になってまで? アリョーナをどうしたいのですか?」
答えはない。そんな余裕は、大蛇に残されていない。
「私は魔種だからと敵視することはありません。魔種にならざるを得なかった人や、魔種になることで平穏を得た人だっているからです。でも、グラリオットは違う。だからこそ、憐れと思っても容赦はしない」
フルールは一気に速度をあげ、魔導バイクごと大蛇へ強襲した。直前で宙返りをし、激突してもうもうと煙を吐くバイクの残骸を瞳に遺したまま、中空で静止する。
「ぶちこんであげます。私へ残された力を、ええ、死出の旅路は、きっと、華やか。私が飾り立ててあげます」
蒼炎が舞い散る。まことの焔が、まことの輝きをもって、大蛇の胴を切断する。
なおもあがき続ける大蛇に、ファニーが追いつく。
「星よ、星よ――」
燃えて、盛る。最高潮のフィナーレが待っている。愛しい愛しい家族や同胞の仇を、討ってほしいと願った少女。祈りは夜空の星へ届き、そして降り注ぐのだ。ファニーの心へ、流星群となって飛び込んだのだ。限界まで集中したファニーには、大蛇の動きはのろく見えた。しかしてそこへ、声が……。声が、届く。
『……なん……でだよ……ファ、ニー……みのがして……くれよ……』
「Making fun of me、ってとこだぜ、グラリオット。花丸をくれてやるよ、逆にな」
星が光る。ファニーの指先で。ああ、あれは金星の光だ。宵闇を招く最初の星だ。呪われた亡霊の星だ。
「オレの愛するものたちは自己犠牲の塊みたいな馬鹿が多くてな、命乞いなんて死んだってしねぇんだよ。一度ならず二度までも。ああ、耳障りだ。とっとと死ね……」
きらきらひかる。ほしがひかる。焦点を大蛇へ合わせたまま。
「……せっかくアリョーナが元気になったんだ。あんな苦痛を二度も三度も味合わせてたまるかってんだ! 同じ悲劇は、繰り返させない!」
言い放った、その言葉どおり、星が降る。突き抜ける。大蛇が聞き苦しく泣きわめいている。
「グラリオット! おまえの物語をここでBAD ENDにしてやる!」
あらたな断末魔が、白紙のページに刻まれた。
●お前はそこで朽ちていけ
(3匹やっつけたよぅ、あとは任せたとも)
武器商人のハイテレパスを通じて状況を把握したオデットは、妖精たちの声援を耳にして、気合を入れ直した。
「よぉっし、こいつで最後! フローズヴィトニル! 妖精さん! 私に力を貸して!」
木漏れ日の妖精が魔導バイクで荒野を駆ける。
「グラリオット! 往生際が悪いわよ!」
大蛇は懸命に逃げ回っている。もうあとがないのだ。自分で最後なのだ。倒されてしまえば、再起はかなわない。恨み言だけを遺して、消えていくしかない。そんなのはごめんだった。悪あがきでもなんでもいい、すがれる力はここにしかない。
『……オ、デット……勘弁……してくれよ……たのむ……から……』
オデットは顔を伏せた。その肩が揺れている。
「くくっ、ふふふふっ、あはははっ」
場違いなほどの明るい笑い声。オデットはかわいそうなものを見る目で大蛇をとらえた。
「あのねぇグラリオット、その声で命乞いなんかして、馬鹿ねぇ。……貴方が命乞いをしてこないのはよく知ってるのよ? そのくらいは、貴方のこと、わかってるつもりよ、珠」
はにかむような笑みを見せ、オデットは終焉を呼ぶ。この馬鹿げた舞台へ幕を下ろすために。
「それにね、貴方が望むなら、その命を終わらせてあげたいぐらいよ。……だってずっと愛してるのだから」
届かない言葉だからこそ、心を込めて、オデットは謳う。太陽の恵みを集めた水晶のリボンが、主へ呼応して輝きを増していく。
「愛って痛いのよ。私はそれを知っているの。馬鹿ねぇ、本当に、お馬鹿さんよね」
オデットのやわらな視線が一転して、鋭く凍りつく。
「愛する人の望みを叶えてあげるのが、恋する乙女の役目でしょ? そう思わない? グラリオット!」
一閃、魔導バイクは衝突せんばかり。すれ違いざまに、オデットは、思いの丈を大蛇へ打ち込む。やさしくあたたかいはずの小さな太陽が、大蛇の体を灼いていく。
「最後に太陽の光をあげる。フローズヴィトニルのせいで寒いばかりだったこの国の、最後のぬくもりをあなたへあげる。いい思い出になるでしょ? バイバイ、グラリオット」
灼熱に焼かれながら、グラリオットのカケラは闇雲に動き回った。その身を押しつぶす大質量が、天からやってくる。
「痛みを、くれてやる。マリアにも、慈悲はある。懺悔して、苦しんで、のたうちまわる、権利を、やる。」
エクスマリアはさらにアイゼン・シュテルンを唱えた。名状しがたいそれが、大蛇の反撃など無視するかのように、ただただまっすぐに、ひたすらに圧倒的に、踏みにじっていく。
『ああああ……あああ……エク、ス、マリア……えくす、まりあ……あああ……』
「いい加減に、しろ。」
鉄面皮の向こうに、怒気が透けているのを、ガイアドニスは見た。
「一度ならず、二度までも。マリアの中に、踏み入るなどと。憤怒の魔種というのは、逆鱗に触れるのも随分と、得意らしい、な……!」
潰れていく、大蛇が、比較にならない暴力の前に、為す術もなく。短くなったしっぽが、黒い血を吐き出しながら、ひらべったくなる。太かった胴は、もはや見る影もない。それでも、なおも、大蛇は前進する。そこにしか自分の行く先はないのだと信じて。
ガイアドニスが魔導バイクから大地へ降り立った。
「グラリオット……。どうしてこうなったのか、わかる?」
『あがあああ、おおおごおおおおお……』
「アリョーナちゃんの執念が、今度は君を追いかけたのだわ。地獄の果てへ、追いつめたのだわ」
『……がいあどにすがいあどにすたすけてがいあどにすがいあどにすたすけてがいあどにすがいあどにす……』
ガイアドニスはきょとんとしている。
『……いあどにすたすけてがいあどにすがいあどにすたすけてがいあどにすがいあどにすたすけてがいあどに……』
「あらあらまあまあ、懐かしい声がいっぱいね! ふふ、うふふふ!」
ゆるりと笑んだガイアドニス。火照った頬を両手で押さえる。けれど、目が笑っていない。
「ところで、ええ。どうして、命乞いなんてしているのかしら? だってもうみんな死んでいるのに」
『……あどにすがいあどにすたすけてがいあどにすがいあどに……』
「おねーさんの儚く小さな愛しき星々。その真似をするというのなら、君も儚くならないといけないのだわ。死になさいな。死になさいな。ニンゲンさんの儚さは、誰よりもおねーさんが知ってるのだわ」
ガイアドニスは、そのつま先を、大蛇の頭部へ置いた。そのうえで、ゆるゆると語りかける。
「愛はさだめ、さだめは死。おねーさんより脆いのなら。愛してあげるわ?」
ぱきゃ。
頭骨が砕ける音。大蛇は動かなくなった。
冠位の威光を借り、肥え太っていた魔種グラリオットの、みすぼらしい最後だった。
「せつないわ、さみしいわ。おねーさんより、ずっとずっと脆かった、かわいそうなナニカ」
ガイアドニスの髪を、静かな風が揺らしていく。
●さよなら、ばいばい、またあした
「決して逃さない。絶対に、叩き潰す。そう、約束した、な。」
エクスマリアはアリョーナへ声をかけた。亡くなった兵士の墓地へ、ひとり花をたむけつづける少女へ。
「約束は、果たした、ぞ。グラリオットは、消滅した。」
アリョーナがふりかえる。その瞳には涙が宿っている。地獄へと送り出した、イレギュラーズ皆が、帰ってきてくれた。その喜びと、感動とが、しずくとなって少女の頬を転がり落ちた。
「もう私は、何も失わなくていいのね……」
「そう、だ。あとはその手で、掴み取る。それだけ、だ。」
短くなったエクスマリアの髪が、風もないのにさらさら揺れた。
「フローズヴィトニルのカケラも、妖精さんたちも、助力してくれたわ。それに、あなたの魔導バイクも、役に立ったわよ」
オデットがやさしく声をかける。少女は泣いていた。チャーミングな青い瞳が、安堵に溶けていく。
「こう、ね。ヤなやつだったけど、だからこそ、忘れちゃってもいいんじゃない? もうあなたの人生は、魔種に脅かされたりなんかしないわ。妖精さんがそう言っているの。いたずら大好きな子ばっかりだけど、こういう時の妖精さんはね、信じていいのよ」
「……うん。うん。ありがとう、ありがとう、オデットさんたち」
アリョーナは足元へ花束を置くと、しゃくりあげだした。
フルールが歩み寄り、肩へ手を置く。
「アリョーナ、グラリオットは仇でしょう。殺したいほどに憎悪しているでしょう」
「……うん」
「だけど、死んでしまったらただの憐れな人よ。『ザマァ』と思ってはいけないとは言わないけど、グラリオットの境遇も憐れだと思いなさい」
アリョーナはすんと鼻をすすり、フルールと視線をあわせた。フルールはおごそかに言の葉を綴る。
「憎しみを育ててはいけません。彼は死して贖罪を果たした。苦しいのはわかります。それでも、前を向くために暗い思いを育ててはいけません。『悪い人はもう死んだ』のです。でないと、あなたが光を掴めなくなりますよ?」
「わかったわ……」
「本当に、なつかしい声をいっぱい聞いたわ。おねーさんには、ちーっとも効かなかったけどね。……アリョーナちゃんはまだ、顔をあげることができるのね。おねーさんはそれがとーっても、うれしいわ」
ガイアドニスが顔を綻ばせる。290cmもの身長があるガイアドニスだが、そうすると身長差のもたらす威圧感など、どこかへ吹き飛んでしまう。アリョーナはつられたようにかすかに笑った。
アルテミアが進み出た。心臓をつかむように、ぎゅっと握った拳を胸に当てている。
「つらい思いをさせたわね。もう、あいつは燃え尽きた。私がそうしたの。最後まで、見届けてやったわ。アリョーナさん。この国を嫌いにならないでね? どうか、まっすぐに進んでいってね。まだまだ寒波が激しいけれど、まだまだ春は遠いのかもしれないけれど、それでも、トンネルに終わりは、必ず来るのだから」
「ありがとう、私の身まで案じてくれて」
アリョーナが汚れたハンカチを取り出したので、アルテミアは自分のまっしろで清潔なそれをあげた。
「とりあえず鼻をかみなさいな」
「え、でも、これ……」
「いいの」
きっと、あの子がここに立っていたら、こうしていただろうし。そこまでは言わず、アルテミアはにっこりと笑ってみせる。遠慮なくハンカチを使うアリョーナの姿が、いまはほほえましい。
「我(アタシ)は最初アレに怨みなどなかったけれど、すこしばかり、腹は立てたね。やれやれというやつだよ」
武器商人はティッシュともう一枚のハンカチを袖から取り出し、少女へ与えた。恐縮している様子のアリョーナの頭を、ぽんぽんたたく。
「子どもが遠慮なんかするもんじゃない。いい子でいるって疲れるだろぅ? 我(アタシ)の前では、どう振る舞ってもいいんだよ」
「ふふ、そういうわけにもいかないわ。恩人さん」
アリョーナは泣き笑いのまま、武器商人へお礼を言った。愛無が首をひねる。
「恩人というほどでもないかな。僕は傭兵だ。金の分だけ働いた。それだけだ」
「それでも愛無さんたちは、わたしにとって、恩人だわ。わたしにできないことをやってくれた。大切な扉を開いてくれた。覚えておくわ。グラリオットのことは忘れても、あなたたちのことは、絶対、忘れてなんかあげないんだから」
「そこまで口が回るなら、心配はいらないな」
アリョーナがふきだした。ころころと笑う少女は、年相応で、だからこそ乗り越えた修羅場の重さがうかがいしれる。
「少しは、役に立てただろうか?」
「もちろんよマリアさん。戦ってくれて、ありがとう。天国のみんなもきっと、すっきりした気持ちでいるわ」
「そうか。願わくば、世界が平和でありますように……いや、その未来を確定せしめるのが、私たちのやるべきことかな」
マリアの言に、アリョーナは深くうなずいた。
「人民軍が戦っている。わたしはわたしの戦いができなかった。だけど、マリアさんたちが代わりにやってくれたから、うれしい」
沙耶が照れくさそうに頬をかく。
「まあ、すこしばかり、窮地に陥ってしまったが、結果良ければすべてよしだ。アリョーナ、君は生きてくれ、生き抜いてくれ。そしてささやかでもいいから、たしかな幸せをつかんでくれ。それが私の希望になり、北辰になる」
「ええ、わかってるわ。今度は、わたしの番ね」
「そうだぜ、アリョーナ。生きることは戦いだ。幸せとは勝ち取るもんだ。……頼んだぜ? 俺たちが繋いだ願いを、ろうそくみたいに消しちまわないでくれよ?」
アリョーナは、はっきりと笑みを浮かべた。すでに涙の痕はぬぐわれている。他でもない、彼女自身の手で。
「うん、ファニーさん。心配してくれて、ありがとう。わたしの戦いを、始めるわ。笑って、泣いて、怒ったり悲しんだり、楽しんだり、喜んだり……そんな日々を、精一杯生きていくわ」
「May God protect you、さよならは終わりじゃない。始まりなんだ。アリョーナ、そこのところ、忘れないでくれ」
「もちろんよ」
アリョーナは両手を広げた。ぽっかりと空いた雲間から、天使の梯子がおりている。大役をつとめたイレギュラーズたちを、祝福するかのように。
「さよならは終わりじゃない、いい言葉ね。そして人生はつづくの。わたし、きっと明日になったら、つまらないことで、ぶうぶう言うわ。あさってになったら、箸が転がったって大笑いするわ。……ありがとう。あなたたちが勝ち取ってくれた未来を、わたしは生きていきます」
あなたは気づいた。簡素な墓碑へ寄り添うように、力強く大地から芽吹いた、一輪の花が揺れていることに。その白さが心にしみいっていく。あなたはたしかに、春の足音を聞いた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
おつかれさまでしたー!
グラリオット討伐完了です! 成功! びくとりー!
MVPは作戦の要であったあなたへ。
お付き合いありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。
GMコメント
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
みどりです。グラリオットとの決戦です。
もし取り逃がすことがあれば、もはやこれを討つことはかなわないでしょう。
やること
1)魔種グラリオットを全滅させる
失敗条件
1)グラリオットに逃げられる
●エネミー
魔種グラリオット 属性は憤怒 役割は制圧
先端に人間の生首がついている大蛇が、からまりあったような姿をしています。大きさはだいたい8m。前回よりも肥え太っています。
HPAPはずば抜けて高いものの、防技・抵抗・回避、どれも低いです。ただし、反応・機動力、そしてEXAがかなり高いです。しかしながら、戦闘中は基本的に定位置から動きません。
至近距離へ入ると即座に【防無】【必殺】の乗った特大ダメージを与えてきます。この攻撃は魔種の手番に関係なく発生します。
また、触腕(見た目は大蛇なんですが、リプでは触腕と表記)を振るって【ブレイク】【攻勢BS回復大】が乗った範の物理攻撃を近~超遠へ仕掛けてきます。
●エネミーガジェット
引き寄せ
【足止】系列のBSが「付与されている」PCを、魔種の至近距離へ移動させます。この行動は1Tに一度だけです。特大ダメージを覚悟しておいてください。
かなたからの哀願
大切な人の声で魔種があなたの名前を呼び、命乞いをしてきます。まともに聞いてしまうと、命中と反応へ-50、物神攻撃力へ-300もの重篤な永続ペナルティがかかります。
強い意志がなくては、魔種へ手心を加える誘惑から逃れられないでしょう。精神干渉なので、心情プレで抵抗へ補正がかかります。
PCがこの攻撃を受けた時に発生する判定なので、会話・声掛けなどの通常の発音は判定に引っかかりません。
呼び声
戦場全域へ呼び声が鳴り響いており、毎ターン開始時に【足止】系列のBS付与判定があります。この判定は非常に強力です。
逃亡
魔種のHPが3割を切ると、団子状態だったのがほどけて、4匹の大蛇となり、バラバラに逃亡します。失敗条件へ直結しますのでご注意ください。
●戦場
街道沿いの荒野です。フローズヴィトニルの影響で、機動・FBを除く各ステータスへ-20程度のペナルティがかかります。このペナルティは、プレイングである程度緩和することができます。
●魔導バイク
騎乗すると、機動力へ+5、回避へ+10の補正、地上3m以内の飛行能力を得ます。戦場へ用意されており、いつでも乗り降りが可能です。
●EX・サポート参加 開放しておきます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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