PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<晶惑のアル・イスラー>炎の記憶と白い粉

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●復讐は泥炭の下にあり
 燃える業火のような夢だった。
 銃声が鳴り響き、父の頭が吹き飛ぶ光景。
 まるでスイカを砕くようにあっけなく爆ぜて、灰色の髪と紅い瞳の、美しい顔立ちで知られた父の上顎から先が無くなった。
 肉と血の塊となって板間に崩れるそれに、白い長髪の母がすがりついて叫ぶ。父の名を呼び肩を揺するのは、目覚めることを期待してではないだろう。
 再びの銃声がして、母の背から血が吹き上がる。
 父へ被さるように倒れた母が、呻きながら……目だけを、こちらに動かした。
 声にはない、視線だけが訴える。
 そこから出てはだめよ。隠れているの。息を潜めて、生き延びて。あなただけは。
 少女は――幼きパドラは両手で口を覆い悲鳴を押し殺し、流れる涙をそのままにした。
 もはや動かなくなった父と母を見下ろす、長身の男の影。男は、黒く淀んだ力の波動を立ち上らせていた。
 燃える業火のような――夢だった。

「――ッ」
 息を吸い込み、目を覚ます。
 鳥のさえずる朝のこと。一糸まとわぬパドラはゆっくりと身体を起こし、背伸びをする。
 また同じ夢だ。幼き頃に見た、両親の死。
 視線を向ければ、壁には白い帽子とコートが掛かっている。その隣にはホルスターに入った銀の大口径拳銃(ハンドキャノン)。
 彼女の名は、パドラ。
 幼くして故郷を失い、狼たちに育てられた女。

●アンガラカを辿れ
 傭兵団『凶(マガキ)』。ハウザー・ヤークを頭目とするラサでも五指にはいるその傭兵団はその多くが獣種である。頭目からして狼男めいており、虎やら豹やらマングースやら、毛皮と牙をむき出しにした様相の者も数多い。
 そんなむさくるしいやら獣臭いやらな傭兵団に引き取られ育てられたパドラに任されたのは、昨今頻発し始めたという幻想種拉致事件。そしてその裏で流通している『アンガラカ』なる粉であった。
「アンガラカの出所はまだ掴めてないの?」
 ビール瓶を片手に、開放的なバーカウンターによりかかるパドラ。その開放感たるや青空の真下であり、カウンターと酒瓶の並ぶ棚以外は棚を雨からまもる天布くらいしかないという有様である。
 そういう場所に似合ってか、パドラの服装もえらく開放的である。水着のごとき布面積の服の上から防弾コートを纏い、日よけのウェスタンハットを被るさまは銀の輝きにも似て、扱う大型拳銃の銀色も相まって彼女は『シルバーバレット』の異名で呼ばれていた。
「怪しそうなヤツはいるんだがなあ」
 対するは熊型の獣種。黒い毛皮と熊そのものといった顔にアロハシャツを纏った、存在が冗談のような男だ。マガキの使う情報屋のひとりで、名をヘンリーという。
 パドラが栓を抜いたビール瓶をカウンターにスライドさせると、ヘンリーはそれをキャッチして一口あおった。
「あんたらがローレットと一緒に押さえた幻想種の拉致グループどもがいくつかいただろ。連中から手がかりを集めて、売り払ってる先を特定できた。収容施設だ。そこから探ってみるってのはどうだ?」
 ヘンリーは露店の主人がアクセサリーを売るような調子で情報を提示し、パドラはコートのポケットから硬貨を数枚出してテーブルに置いた。
 それを確認して、ヘンリーは硬貨を自らのシャツのポケットへとしまう。
「ラーガ・カンパニーを知ってるか?」
「最近台頭してきた商人だね」
 こくんと頷き、ビールをもう一口あおるヘンリー。
「そうだ。いくつもの企業を買収してデカくなってる。噂じゃ汚い手も使ってるらしいが、証拠を掴んだヤツが次々消されてるんで俺らも手を出しづれえ相手でな。
 そのラーガが扱う流通倉庫がこのオアシス街にある」
 ヘンリーがポケットから取り出したメモには手書きの地図があった。メモの端が渇いた血で汚れていることに気付いたが、パドラは何も言わずにそれを受け取る。
「拉致られた幻想種はそこへ荷物に偽装して運び込まれ、別ルートで金が受け渡されるって仕組みになってるらしい。周囲の警戒は厳重で、外から攻め込むにゃあヤバすぎる。
 あんたんとこの傭兵団を動かすって手もなくはないが……」
「大きく動けば相手にもバレる、と」
「そういうこっった」
 じゃあどうするの、とパドラが目で訴えかけるが、ヘンリーは答えない。情報を売るのが彼の仕事であり、情報をどう扱うかは彼の領分ではないからだ。
「ま、いいわ。カラクリが分かってるなら、手はありそうだし。情報を流してくれる?」
 パドラが追加で硬貨をテーブルに置いたので、ヘンリーが目をぎょっと見開く。
「おいおい……マジか」
「マジ」
 パドラはビール瓶の残った中身を飲み干すと、カウンターにそれを置いてバーを離れた。

●潜入作戦。そして、大暴れ。
「というわけで、幻想種(ハーモニア)になってみようと思うんだけど」
 パドラは白く尖ったつけ耳を装着して、耳の横でてをひらひらと振って見せた。
 ローレットの面々が集まるラサのバーにて、イレギュラーズたちはある提案を受けたのだった。
「ラーガの流通倉庫に忍び込んで、捕らえられてる幻想種たちを助け出す。これが今回の依頼内容。
 でも、正面から挑んでも戦力的に厳しいし、大勢の意識を失った幻想種を守りながら抱えて連れ出すなんて無理でしょ? だから、幻想種を売り渡す悪徳商人になりすまして潜入するってわけ」
 私は幻想種の役ね、とパドラはつけ耳を指さす。彼女のどこか幻想的な白い肌は確かにハーモニアに似ている。もしかしたらそちらの血が入っているのかもしれないと思えるほどに。
「中に潜入したら、幻想種たちをトラックに詰め込んで脱出……なんだけど、その前に中がどうなってるのか調べたいよね」
 情報屋でも流通倉庫の場所を特定することまでしかできなかったのだ。内部の情報はかなり貴重だろう。そもそも、『なぜ幻想種を集めているのか』が分かっていないのだから。
「第一目標は幻想種の救出。第二の目標は内部の調査。それ以上は深追いしないつもり。オーケー?」
 パドラはそれから依頼金となる硬貨をいれた革袋をテーブルへと置いて見せた。

GMコメント

 ラーガという悪徳商人の流通倉庫へ忍び込み、幻想種たちを救出します。
 そのためには幻想種とそれを拉致してきた盗賊に扮して内部へ潜入する必要があるようです。

●潜入
 皆さんは幻想種と盗賊に扮して内部へと侵入します。
 物資輸送用のコンテナ馬車で倉庫内へ入り、内部で引き渡しをすることになっていますが、引き渡す相手をその場で始末してコンテナに隠し、その後内部を探索して捕らえられている幻想種たちを救出することになるでしょう。

 捕らえられている幻想種は『アンガラカ』によって意識を奪われているはずなので、抱えてコンテナへ運び込むかぼうっとしている彼女たちを引っ張って連れて行くことになる筈です。そのため、最中での戦闘は極力避けたほうがよいでしょう。
 また、事務所等に忍び込み(あるいは常駐している人間を始末し)資料を盗みだしたりしてもよいでしょう。どんな敵に遭遇するかはわからないので、充分に用心してください。

 救出が完了したらコンテナ馬車で思い切り撤退します。
 外周を守っている傭兵たちを攻撃して多少の突破口を開いたらそこから突っ切る形になるでしょう。

●アンガラカ
 小瓶にはいった白い粉で、これには意識をぼんやりとさせたり気絶させたりする作用があります。
 幻想種の拉致を容易にするためのアイテムで、また拉致した後倉庫などに隠しておくにも役立つアイテムです。
 ザントマン事件で用いられた「眠りの砂」に似ていますが、眠りの砂は青、アンガラカは白という違いがあります。

●味方NPC
・パドラ
 今回の作戦に同行するNPCです。大型拳銃を扱うガンナーで、結構な武闘派です。
 凶に所属する傭兵です。幼い頃に両親を何者かに殺され、凶に引き取られ育てられた娘のようです。少女のようなやや幼さの残る外見ですがしっかり成人しています。
 むさくるしい獣だらけの環境で育ったせいか、ぶさかわ系のぬいぐるみなど可愛いものにめがないようです。本人はクールぶって隠していますが結構バレバレです。
 実力派の凶で育っただけあって戦闘力はそれなりにあるので、戦闘面では肩を並べて戦っていけるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <晶惑のアル・イスラー>炎の記憶と白い粉完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月06日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
イスナーン(p3p008498)
不可視の
夢野 幸潮(p3p010573)
敗れた幻想の担い手
トール=アシェンプテル(p3p010816)
男の矜持

リプレイ

●銀よ、雨と降れ
 リボルバー弾倉を開く。一度親指をひっかけてくるりと回して具合を確かめると、ポケットから出した銀色の弾丸を一つずつ丁寧に滑り込ませていく。
 一つずつ、カチンと小気味よい音を立てて統べるたび、パドラの表情は落ち着いたものへと変わっていく。視界が広く、世界がクリアに、そして呼吸は深く落ち着いたものへと。
 これ自体が、彼女のルーティーンなのであった。
「パドラさん、また一緒に頑張りましょうね」
 己の鏡を目の細かい布で丁寧に拭いながら、『鏡地獄の』水月・鏡禍(p3p008354)が顔をあげる。
「……うん。また一緒になれたね」
 パドラの表情は少しばかり暗い物があったが、唇の端はちょっとだけあがっていた。
「今回潜入するラーガ・カンパニーが、拉致された幻想種の販売先だったんですよね」
「そうなるね」
「幻想種を買い取って、どうするつもりだったんでしょうか」
「それは……わからない。まだね」
 落ち着いた様子のパドラの一方で、『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が腕組みをして馬車の御者席によりかかっていた。
「変装道具の具合はどうだ? クマの」
 そう声をかけてきた凶(マガキ)の傭兵のひとり、ヴェルドという犬系の獣種であった。黒い毛皮に覆われ上半身をむき出しにする様子は訓練された警察犬の獰猛さと冷静さを思わせる。
 彼にクマとよばれたのは、ラサのごろつきめいた風貌に変装させられた『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)である。
「軍服とは別の意味で落ち着かんな……」
「ハッハ、落ち着かれちゃ困るんだがな!」
 口をあけて笑うヴェルド。
「ま、うまくやってくれ。幻想種からの被害届は増える一方だ。浚われた連中が無事なら、早いとこ家に帰してやりたい」
「そうだな……」
「幻想種に味を占めて仲間に手を出されてはたまらん。先に芽は摘ませてもらう」
 こちらはこちらで、禍々しい鎧に憑依した『戮神・第四席』ウォリア(p3p001789)が腕組みをしてヘルメットスリットの奥で炎をぼんやりと光らせた。まるで目が発光しているかのような恐ろしさが、彼の風貌をより威圧的なものへと変えている。
「豊穣で果てたアレもだが、どうもこういう事柄には気に障るモノが出回るな。アンガラカ、といったか?」
 ウォリアは変装の一環として、拉致グループたちの間に出回っていたアンガラカの小瓶をひとつ渡されていた。白い粉の入った瓶は、いわく人の意識を奪うという。
「製法はわかっていないのか」
「さっぱりだ。アンタらならわかるんじゃあねえのか?」
 ヴェルドの問いかけに、ウォリアは首を振る。残念ながらと言い添えて。

 パドラが馬車の幕をめくると、『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)が昏い目をしてうつむいていた。
 とても話しかけられる雰囲気ではなかったが、あえて『不可視の』イスナーン(p3p008498)が声をかける。それまでそこにいたと気付かないほど気配を消していた彼が、馬車の端にフッと存在感を表し手をかざす。
「どうも最近ラサで奴隷目的の事件が多いですね。そして同時期に発生した紅血晶による騒動といい偶然かそれとも関連性があるのか気になる所ではありますが……そういえば、浚われた幻想種は『ザントマン事件』同様奴隷として販売されているのでしょうか?」
「どうでしょう。売り手は兎も角、買い手がつかないとは思いますが……」
 微妙な間を置いて、エルシアがそんな風に答える。
 それこそザントマン事件の折りに幻想種奴隷を扱っていた者たちへの風当たりは強くなった。中には立場を追われた者もあり、その一部が幻想に流れ奴隷の売りはけを狙うなどの事件もおきたほどだ。
 エルシアが小声で『燃えてしまえばいいのに』と呟いたことで、イスナーンが何かを察してすいっと目をそらす。
 そうしていると、変装を終えエルフ耳をつけた『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)が馬車へと乗り込んでくる。
 振り返るパドラ。
「お疲れ様。準備は済んだ?」
「はい。つけ耳ってすごいですね。触ってみないと偽物だってわかりませんでした」
 長い髪をかきあげることで耳を見せるトール。継ぎ目の部分を丁寧に化粧で隠す腕はかなりのもので、それを担当していたのはポーニーポーニーという犬系獣種の女だった。ポメラニアンめいたもふもふした頭の彼女はメイクと変装のスペシャリストであるらしい。
「こんだけしっかり付き合ってくれるとアタシも仕事のしがいがあるってもんだよ。ウチのボスはこういうやり方にゃ疎いからね」
 マガキのボスことハウザーは、確かに潜入したり変装したりといったこととは無縁そうである。
「ありがと、ポーニーポーニー。他のメンバーは?」
 パドラが聞くと、ポーニーポーニーは顎で馬車の脇をしめした。
 『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が手にした万年筆をくるくると回し、シートになにやら書き込んでいる。
 羊が何頭、内メスが何頭。といったような内容だが、拉致グループから尋問したことで得た暗号を書き込んでいるのである。暗号と言っても、幻想種を羊と言い換える程度のささやかなものだが。
「私は先に行って潜入しておく。検問があるかはわからないが、途中で止められないにこしたことはないだろう?」
「うん。ありがと。……気をつけてね」
 単独潜入のリスクは言うまでもない。パドラの言葉に、幸潮はひらひらと手を振ってから自分の書いた書類を『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)へとパスした。
 バンダナで顔を半分覆った風牙の要望はラサの盗賊を思わせ、なんとなくだが仲間のローレットの誰かを思わせた。参考にしやすい仲間が身近にいたのかもしれない。
「グヘヘ……上玉をもってきやしたぜ。まあ見てってくだせえよグヘヘ」
 練習する台詞は最初こそぎこちなかったものの、何度かやるうちにサマになっていく。
 ぼろい衣装もあいまって、疑うのも難しいまでに仕上がりつつある。
「フウ……にしても、本当にムカつくよな。オレは人を物のように扱うやつが大嫌いなんだ!」
 やっと演技をやめた風牙が毒気尽くと、『彼岸花の弱点』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)が『わかるよ』と頷いてみせた。
「罪のない幻想種達をさらって、怪しげな粉で意識を混濁させるとはね…随分いい趣味をしているじゃないか。殺される覚悟は十二分にあるんだろうね」
 彼の変装は完璧だった。ごろつきというよりも、奴隷売買で財を成したインテリヤクザの風貌に近い。ラサでは割とありふれた、しかし犯罪の臭いがスーツに染み付いた風情の変装だ。細かいところに工夫が効いている。
 特に工夫されているのは、彼の背負ったケースに愛銃『彼岸花』がしっかりと収められているところだ。武装していることを隠しもしない有様は、キッチリとしたスーツと裏腹に彼の危険さを見た者に焼き付けることだろう。
 そういった意味では、上品な服に身を包み愛用の大型ライフルを担いだ『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)もかなりのものだ。
 日よけで顔を隠しているが、スナイパーの放つ刺すような殺意や、ただものではない空気が悪徳商人やその護衛を思わせる。
 ここまでで計11人。ヴェルドとポーニーポーニーに見送られ、馬車はラーガ・カンパニーの建物へと向かったのだった。


「よぉ、ちょーっと荷物ん中見せてもらうぜ〜? ……ヨシ! 通れ!」
 見るからに雑なチェックをして馬車を通す施設スタッフ。よく見れば幸潮だ。先んじて施設に潜入していたらしい。
 役目自体は怪しい荷物が運び込まれていないかチェックすることだが、そもそもが『怪しい荷物』を目的としているせいで有名無実化したチェック機構である。
 幸潮は幕で覆われた馬車の荷台に頭を突っ込んで内部を見ると、袖の下に忍ばせていたメモをトールへと手渡した。この先『積み下ろし』を担当するスタッフの人数とおおまかな戦力をメモしたもののようだ。
 黙ってこくんと頷き、それをスカートの裏へと隠すトール。
 馬車が大きなシャッターを開き入っていく様子を眺めながら、幸潮は両手をツナギのポケットへと入れた。
「これで最後か。今日は仕事が長かったな」
 検問所と呼ぶには粗末すぎる小屋の中でドーナツを囓っていたスタッフが帳面に「羊」と書きながらぼやく。そして、幸潮を見た。
「……そういえば、お前誰だっけ」
「おいおい酷いな。俺だよ俺」
「ああ……」
 返しつつもピンときてない様子で、しかしスタッフは気にとめずに二個目のドーナツに手を伸ばす。

 暗い。しかしどこか遠くで誰かの悲鳴が聞こえた気がする。
 天幕に覆われた馬車の中では、外の様子はわからない。トール、エルシア、鏡禍、パドラの四人はいつ覗き込まれてもいいように身を縮めるような姿勢で座っている。
 やがて、馬車はとまった。
「そこで止まってろ。お前らは動かなくていい」
 馬車の外。エイヴァンとウォリアの操作する馬車がとまると、男が近づいてくる。
 護衛として歩いていたラダとリーディアが反射的にライフルに手を伸ばすが、近づいてきた男はやめるように手をかざし懐から小瓶を取り出した。
「羊を連れていく。ここから先は立ち入り禁止でな」
「へえ、それは残念ですね。見せてはもらえないのですか?」
 イスナーンがわざとらしい様子で肩をすくめると、男はフンと鼻を鳴らして馬車の幕をめくる。
 ヒッと怯えたような悲鳴が聞こえ、それが演技だとわかっていても風牙はつい眉根を寄せてしまった。
 が、我慢する必要はどうやらもうないらしい。
「なにす――ぐわ!?」
 男が馬車内に引っ張り込まれ、そして何人かの殴りつける音とサイレンサー越しの銃声。
 浚ってきた幻想種たちが抵抗したのだと考えた周囲の男達が集まり武器をとり、ラダとリーディアが『協力します』といってライフルを構えた。
 そして、二人の銃口が馬車へ向かう男達の後頭部で止まった。

「さて、こんなものか」
 エイヴァンが手を払い、男達の死体を馬車へと放り込んでいく。
「演技とはいえ異性の前で奇声を上げるの、普通に恥ずかしいですからね!?」
 エルシアが咳払いをして、もうやりませんよとばかりに馬車からそっぽをむく。なにげにこの中では変装の必要が無い唯一の幻想種であったこともあり、彼女の演技にだいぶ頼ったフシがあったのだ。
 一方でウォリアが見回すと、風牙がやはりまだ嫌そうな顔をしていた。
 きっと幻想種たちのことが気になるのだろう。
「すぐに探しに行ける。そう気を急くな」
「分かってる。ま、嫌な演技をしなくてよくなったのは、スッキリしたかな」
 肩に手を置き、ごきりと首をならす風牙。ぼろい外套も脱ぎ捨て髪を整えると、馬車の中へ放り込んだ。
「それじゃあ、ここからはどうする? 纏まって動く?」
 パドラの声に、それぞれが反応した。
 まず反応したのは風牙だ。
「オレは単独で探索したい。スキルがそれ向きだしな。イスナーンはどうする?」
「それでもいいですが、見つけた資料が多かった時にこまりますね。誰か検索が得意な肩は?」
「それなら私がやるよ」
 イスナーンが顔を見回すと、リーディアがライフルを肩に担いだ状態で歩み寄る。そして、ラダへと振り返った。
「探知能力が欲しい。ラダ、一緒にどうかな?」
「いいだろう」
 ラダも歩み寄り、イスナーン、リーディア、ラダというチームができあがる。
 エイヴァンとウォリアが隣り合い、それぞれを見やる。
「なら、俺たちで組むか」
「スキルの相性も良いだろうな。戦闘になったとき、もう一人欲しいが……」
「では、私が」
 エルシアが小さく手を上げ、二人の間にそっと立つ。確かに彼女なら丁度良く抜けたスキルを補えそうだ。
「なら、私達は残った所を調べようか」
 パドラが鏡禍とトールに視線を向ける。二人はそれぞれ頷いた。
「ファミリアーは合計で二つまでですから、それぞれで連絡を取り合いましょう。あまり頻繁に使うと怪しまれるので、重要なタイミングの時だけということで」
「強い敵戦力にぶつかる可能性もあるので、できればあまり離れずに探索しましょうか」
 というわけで
 風牙単独チーム
 イスナーン、リーディア、ラダチーム
 エイヴァン、ウォリア、エルシアチーム
 パドラ、鏡禍、トールチーム
 そして既に潜入している幸潮。
 この五チームで施設内の探索が行われることとなったのだった。

●SOS
 さしものエルシアとて眉根を寄せる光景であった。
 全体的に『冷たくなった』部屋の中。助けを求める者も、こちらを敵視する者もない。色々な意味で冷たい部屋は鉄のにおいと赤茶けた色に満ちていた。
 第一印象は錆。第二の印象は、死体。第三の印象は……。
「手術室、ですか」
 エルシアは赤茶けた部屋へと入り、地面が防水性の石タイルで占められていることに気付く。壁には床を洗浄するためのホースが繋げられ、中央の台には人間を固定するためのベルトがついている。どれも赤茶け、それが乾ききった血であると気付かされた。赤みがつよいのは、まだ渇いて間もないためだろう。
「病院……てわけじゃあないよな」
 エイヴァンが棚を開いて並んでいる道具を確かめる。並ぶ瓶には小難しい名前が書かれていたが、医療技術のあるエイヴァンにはそれらが何を示しているか想像がついた。
「臓器摘出。それと、保管か」
「……なんだと」
 ウォリアが忌々しいものを聞くように振り返る。臓腑のない身なれど、あるいはそれ故にか、人間が臓器を奪われることの重大さと、それを必要とする人間の多さを知っている。
 運び込んだ人間を生きたまま解剖し、臓器を取り出し『パッケージ』して販売する。そういう部屋であるようだ。よりによってそれが幻想種であるというのが悪趣味なのだが……。
「噂には聞いたことがある。長命の幻想種の臓器は臓器移植患者に人気だと、な」
「臓腑を取り出し移すのですか? その患者は同じ幻想種なのですか?」
「いや、そういうわけじゃない。金持ちの貴族や商人だ。海洋にもそういう商売をやらかすヤツはいるからな……。患者側は、愛する家族にいい臓器を、それも順番待ちをすっ飛ばして手に入れられるなら大金を払うというわけだ」
「人助けセンサーに対して一向に反応がないのは、皆殺されているからではないだろうな?」
 そうウォリアが考えるのも無理はない。が、エルシアがその考えを否定した。
「アンガラカを用いて意識を奪っているためでしょう。もし臓器の摘出が目的なら運び込む数が多すぎます。それこそ順番待ちがおきるでしょうから」
 摘出してから何ヶ月もたったのでは鮮度が落ちる。物凄く雑に言えば臓器が死ぬのだ。ゆえに生きたままとっておく必要があるだろう。
「しかし、解せんな。このためだけにこんな施設をわざわざ用意するのか? それだけが目的とは思えん」
 ウォリアの指摘は、やはりというべきか正しかった。それを今まさに、別のチームが証明しつつある。

 気配を消して進み、ナイフを抜く。椅子にもたれかかり煙草を吸う男の首にナイフを立てると、そのまま素早く引いた。
 吹き上がる血が『資料』にかかってしまわぬように後ろ向きに引き倒し、自らにもかからぬよう歩み出る。
「見事な手際だ」
「できればこちらにはかけないでほしかったけれどね」
 スッと部屋の外にひくことで血しぶきがかかることをさけたラダとリーディアが、念のためにとライフルに手をかけつつ部屋の中を覗き込む。
 中に入ってみると、そこには帳面が棚にぎっしり埋まっている光景があった。
「外の警戒はしておく。任せてもいいか」
 ラダがリーディアに目配せすると、リーディアがOKとハンドサインを出して部屋の中へと入っていく。ラダを部屋の外に残して。
 一方でイスナーンは本を開き、未知のものがないか資料をあさっている。
「売り買いに関する資料……のようですね。しかし数が多い。全て調べていれば日が暮れますよ」
「その必要はないよ」
 リーディアはファイルのひとつをぱらぱらと捲ると、棚のあちこちから一冊ずつファイルを抜いてその中からもページの一部を抜き取っていく。
「要点さえおさえれば動きは読めるからね。たとえばコレだ」
 リーディアが翳して見せたのは、ある商人に対して奴隷を販売した記録である。
 奴隷売買は今時かなり厳しい目で見られる商売だが、存在しないわけではない。奴隷という制度自体そう珍しくないためである。
 だが幻想種を浚って奴隷にするというのは、『ザントマン事件』で深緑からの強い批判を受け、それに傭商連合が事実上賛同したことでほぼ壊滅したはずである。
 イスナーンと、外で警戒していたラダがそれぞれ資料に目を向ける。
「ラーガ・カンパニーはわざわざ幻想種奴隷売買を?」
「そう、『わざわざ』。けど目的は金ではないね。明らかに利益が出ていないし、なにより件数が少ない。添え書きを見ると……ほら、『フィッシュオン』と書いてある」
 これは撒き餌。あるいはスケープゴートだ。本当の商売を隠すため、傭兵たちの目を引きつけつつ、余計な商人を切り離すためのもの。
 では本命は何か。リーディアが翳したもう一つの資料がそれだ。
「『アンガラカ』の仕入れ記録。そして、対価として払っているのは金じゃない。幻想種そのもの。ということは……?」
 問いかけられ、イスナーンとラダが顔を見合わせる。
 浚った幻想種はどこかへと生きたまま送り込んでいる。そしてその相手こそが、『アンガラカ』の仕入れ先であるということだ。

 単独で物質透過を使い、施設内を探索する風牙。
 風牙が見つけたのは小さな部屋であった。
 部屋といっても、ベッドもなければテーブルもない、どころか壁紙すらないまっさらな部屋。そこに何人もの幻想種が座り込み、ぼうっと遠くを見つめている。おそらくアンガラカによって意識を奪われているのだろう。寝かせないのは、この方が管理が楽だからだ。
 そのうちの一人が、ぼんやりとした表情ながらもまわりをきょろきょろと見回していた。
「おい、大丈夫か? 意識はあるか?」
「いし、き……あ、あ」
 幼い少女である。年齢にして十代半ばといったところだろうか。
 彼女は震える手を頭にやって、そしてがしがしとかきむしる。
「おね、おねえちゃ、おねえちゃんが、ば、ばらばらに、どろどろに、なって」
「お姉ちゃん……?」
 そこ、と指をさす。風牙の後ろで扉が開き、咄嗟に振り向けばそこには血の膜に包まれた人型の怪物が立っていた。まるで人間をひっくり返したような有様に、風牙は思わず声を上げる。
「『晶人(キレスドゥムヤ)』――!」
 紅血晶を有したものの末路のひとつ。晶獣との違いは、紅血晶が体内に入り込んでしまったこと。
 つまり。
「ラーガの野郎……無理矢理紅血晶を呑み込ませて晶人を作ったのか!」
 風牙は武器を構え、そして晶人へと挑みかかった。仲間へのコールを行いながら。

 風牙からのコールを受けたトールは、しかしすぐには動けない。
 なぜなら決定的な場面にでくわしてしまったためである。
「オラ、歩けゴミ共」
 清潔そうな服を着た幻想種の女性を蹴りつけ、サングラスをつけた金髪の男が無理矢理に歩かせている。
 歩く先には、奇妙な魔術的装置があった。
「あれは……ラーガ?」
 仲間にしか聞こえないような小さな声で、パドラが声を出した。
 大体の察しはつく。幻想種を魔術的装置の中へと入れようとしているのだ。それがどのような結果を招くかはわからないが、少なくともマッサージチェアのようなお気楽な品ではないはずだ。
「中に入れさせちゃだめ。止めるよ!」
「わ、わかりました!」
 パドラが物陰から飛び出すのと、トールが仲間へコールを行うのは同時だった。
 元来、(幸潮は別として)風牙と他のメンバーだけで分けて行動する予定だったためファミリアーを交換するだけの予定だったが、チームを多く分けたことでより工夫して他のチームへ連絡がいくようにしていたのである。
 輝剣『プリンセス・シンデレラ』を手に取り、オーロラの刀身を出現させるトール。
「そこを動かないでください!」
「言うとおりにしなくても、自由にはさせませんけど――!」
 鏡禍がトールたちに先んじて前へ出ると、自らの妖気を手鏡から放出した。
 マントをかざし魔術的な防御をはかるラーガ。腰から金色のフリントロックピストルを抜くと、それを防御ごしに構えた。
 パドラが銀の大口径リボルバービストルを構えるのとほぼ同時。
 が、その瞬間パドラの血紅の瞳が大きく開かれる。

 それは燃える業火のような記憶だった。
 頭を撃ち抜かれた父。腹を撃ち抜かれた母。
 それを蹴飛ばし、けらけらと笑う……それは、金髪にサングラスの、『今目の前にいる男』。
「おっと、おめーの目と髪、覚えがあるぜ。俺様の商売を邪魔したゴミ屑ヤローだ。ガキがいたのか? 知らなかったぜ」
 記憶の中と同じように、ケラケラと笑ってみせるラーガ。
 彼は道化師のようにおどけた姿勢をとると、口をとがらせてみせた。
「なんだよそのツラ、『何でパパとママが死んじゃったのー?』てツラだぜ。教えてやるよ、あいつらはあの辺じゃ金のある商人だった。俺様は金が欲しかった。だからぶっ殺して奪った。単純だろー? 俺様ってシンプルだよなー。
 あのときの女はケッサクだったぜえ? 『アナター! アナター!』て泣きわめいてよ。かわいそーになー」
 パドラの瞳に怒りの炎がポッと灯ったのを、トールと鏡禍は確信した。
「ま、連中の財産と組織は俺様がユーコーに活用してやったから、安心してオヤスミー?」
 ヒューウと口笛を吹いてみせるあからさまな挑発に、パドラが走り出そうとした――その時。
「下がって、罠です!」
 鏡禍は透視能力を発動させ、その罠を看破した。
 大きな木箱の中に膝を折った状態で入っていた、晶人たちに。
 バガンと木箱を内側から壊して飛び出した晶人たち。
 ウアアと唸る晶人は晶人たちへと襲いかかってきた。
 障壁を展開すると、それをバンと叩いて打ち破ろうとする。ラーガはそんな鏡禍を見つめると、黄金のピストルで障壁を射撃した。
「ぐっ……!?」
 パリンと鏡が割れるような衝撃と音が走り、鏡禍が吹き飛ばされる。
「鏡禍!」
「集まって、仲間が来るまで耐えるんです!」
 パドラとトールは身を寄せ、迫る晶人へと攻撃する。
 特にトールは輝剣『プリンセス・シンデレラ』のオーロラ刀身を小刻みに突くように放つことで晶人の脚や腕を破壊。その場に転倒させ接近を防ぎにかかる。
 そうしている間にラーガは壁に備え付けられた非常ベルらしきものを打ち鳴らしていた。
 周囲から次々にスタッフたちが駆けつける。
 が、駆けつけたのは敵ばかりではない。
「待たせたな!」
「任せろ」
 エイヴァンが斧砲『白狂濤』で結人をなぎ払い、ウォリアが凄まじい突進をかけて纏めて吹き飛ばす。イルカルラと呼ばれた戮神の奥義にて、『神滅剣アヴァドン・リ・ヲン』を荒れ狂う炎の刀身をもって残る晶人を切り裂いたのだ。
 盾を構えて防御にまわり、振り向くエイヴァン。
「無事か?」
「なんとか……ね」
 パドラが額の汗を拭って振り返ると、エルシアが鏡禍を助け起こしているところだった。
「敵が集まっています。ここを脱出したほうがいいでしょう。風牙さんが見つけたという例の――」
 とその途端、ラダとリーディアによる発砲音が通路から聞こえた。
 駆けつけた敵に的確なヘッドショットを打ち込む二人の銃撃である。
 イスナーンが風牙と共にその後ろに続いている。幸潮の姿もそこにはあった。
 いや、それだけではない。彼らが腕に縄をつける形で引っ張ってきた幻想種たちも一緒だ。
 形勢は逆転した……と言って良い。そしてだからこそ、リーディアはライフルを突きつけ問いかけた。
「仲間から情報は聞いたよ。何故、こんなことを?」
 同じくライフルを突きつけるラダ。
「パドラの両親を殺し。臓器売買に晶人化。あげくに怪しげな魔術装置。一体何が目的――」
「だーかーらああああああああああああああ!」
 ラーガは舌を出して叫ぶと、両手を開いてドンと地面を踏みならした。
「金だよ金! 金をブチ稼ぎまくってブチ成り上がって、ファレンのやろーをブチ抜いてナンバーワンの商人様になりてーのよ。
 臓器を売りますと、ハイ金が儲かる! 晶人を箱詰めして売りますと、ハイ金になる。でもってこの――」
 幻想種の女性。その長い髪を掴んで引き寄せ、自分の盾にした。アンガラカを使われているのだろう。幻想種女性はぼうっと虚ろな目をしている。
「五体満足で病気もしねえ元気なヤツは、そこへいく。でどうなる? わかるよな。ハイ金になる」
 魔術装置を指さし、ラーガは幻想種の女性からパッと手を離した。
「けどま、ここも潮時ってやつだな。俺様は損切りも得意なんでね。
 こんなもんが欲しけりゃくれてやるぜ。おらよっ!」
 ラーガは奇妙な魔術装置に押し込めようとしていた幻想種の背を蹴るとパドラたちの方へと飛ばした。
 反射的にキャッチすることで攻撃が止まる。その隙に、ラーガは魔術装置の中へと滑り込んだ。
 奇妙な音をたて、彼の姿がかき消える。
「あれは、どこかへ転移した?」
 最初に気付いたのはイスナーンだった。未知の魔術装置がなんであるかを、漠然と察したようだ。
 一歩踏み出そうとしたパドラの腕を、トールが掴む。
「パドラさん……」
 首を横に振る。風牙もパドラの肩を叩き、強い声で呼びかけた。
「今は捕らわれてる幻想種を助け出すのが先決だ。行くぞ!」

●ドライブ
 行きはよいが帰りはこわい。
 ラダの操縦する馬車は酷い暴れ方をしながら施設のゲートを蹴り飛ばす。
 ラーガ・カンパニーの施設から出た馬車を、馬にのった施設の傭兵たちが追いかけてくるのが見えた。
「しつこいな」
 ラダは片手でライフルを翳し、リーディアも馬車の中からライフルを構えた。
「全員倒す必要はないよ。追いつかれなければ」
「オーケー。この子たちには指一本触れさせない」
 パドラが幻想種の少女の頭を優しくひとなですると、銃を追っ手の馬へと向けた。
 三人の発砲が馬を派手に転倒させる。
 一方で、盗んだ馬を操るトールが後ろに乗せた幸潮に声をかけた。
「攻撃に集中してください! 馬の操縦はなんとか!」
「ん、まかせた」
 幸潮が『物語閉帳』の術を放つ一方、エイヴァンとウォリアはそれぞれもまた盗んだ馬で並走しながら斧や剣で次々と傭兵たちを切り倒していく。
 斧についた血を振り払い、エイヴァンが叫んだ。
「これで最後だ! 振り切るぞ!」
 加速をかけるエイヴァンたち。
 激しく揺れる馬車の中で、風牙とエルシア、そして鏡禍はそれぞれ抜き出された資料を腕に抱えていた。助け出した幻想種たちも一緒だ。
「ラーガ……幻想種の臓器を売買し、人を晶人に変え、そして怪しげな魔術装置で幻想種をどこかに販売していた……」
「『アンガラカ』も、あの魔術装置の向こうから調達していたんでしょうか」
「おそらくは、そうでしょうね。この方々を安全な場所に送り届けたら、次の行動に移りましょう」
 ラーガという悪党を、このまま野放しにはしておけない。
 それでいいですね? とエルシアが呼びかけると、冷静さを取り戻したらしいパドラがため息をついた。
「うん。いいよ……ラーガは、必ず殺す。浚われた皆も助け出す。それが……」
 帽子を目深に被った彼女の頬には、滴が伝ったように見えた。
「私が生き残った、理由だと思うから」

成否

成功

MVP

リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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