シナリオ詳細
<咬首六天>虐殺のラプソディー
オープニング
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鉄帝国内におけるイレギュラーズの活躍と名声は日々高まっている。
彼らの存在こそが、平穏を望む者にとっては正に希望となっているだろう――
――が。だからこそイレギュラーズを狙う者達はいるものである。
鉄帝西部ペテロブルッグ地方。
先日、帝政派が制圧した鉄道都市ボーデクトンよりは些か東の地域にある村で響くのは――悲鳴と絶叫だ。
「追い詰めろ。追い詰めた上で――殺せ。だがすぐには殺すなよ。いいな、時間をかけるんだ」
それを成しているのは新皇帝派組織『アラクラン』の者。
より正確には、彼らが配下たる天衝種に指示を出して村を襲っている所だ――
まるでそれは恐怖を煽る様に。そして皆に憎悪を燃え盛らせる様に。
ただでは殺さぬ。ただでは死なせぬ、と。
意思が聞こえるかの如く……ゆっくりと村に死を広げつつあった。
「ひぃ! や、やめろ……! 入って来るな、ァ、アアアア!!」
「よせ! この村には金品なんてないぞ! な、なにが目的で……うああああ!!」
家の扉が破られる。激しき破砕音が響いたと思えば――直後には悲鳴と何かの咀嚼音。
此処に至っている天衝種はギルバディアと呼ばれる大型のクマの様な魔物だ。連中は直線的な動きに優れている……例えば一瞬の隙をついて逃げようとしても、見つかればすぐさまに背後より追いつかれてしまうだろう。
最早絶望だ。絶望しかない。
――しかし。アラクランの者達は、はたして何が目的なのか。
村民を虐殺しえた所で彼らが得るモノはあるのか。
……その答えは一つ。これは只の陽動なのだ。
「イレギュラーズの姿は見えたか?」
「いやまだだ――帝政派の勢力圏も近い。放ってはおかない筈だがな」
「まぁいい。来ないなら来ないで連中は『民を見捨てた』と喧伝してやるだけだ。
帝政派の軍勢が近付いた場合は逃げるぞ。天衝種を突っ込ませて、な」
彼らにとって真なる目的はただ一つ。
目障りなイレギュラーズを誘き寄せ、連中をこそ――殺す事。
希望を潰すには、希望を誘き寄せる事が一番の近道だと、彼らは思考したのだ……
さぁどうするイレギュラーズよ。民の絶叫が――まだまだ必要か?
●
「大変です……! 近隣の村で、新皇帝派が虐殺を行っていると斥候より連絡がありました――! 見捨てる訳には行きません、至急救援を行わねばなりません……!」
鉄道都市ボーデクトン。先日、帝政派により奪回された都市に滞在していたイレギュラーズに急報が齎された。新皇帝派の虐殺を感知した、と……軍勢を整えている暇はない。イレギュラーズの様な少数精鋭に向かってほしいと、依頼が訪れたのだ。
「残念ながら夜間ですので、敵の戦力は不透明です……斥候によると暴れている天衝種と、それを率いているらしき者達は確認されたのですが――まだ潜んでいないとも限りません」
「……村民はまだ無事なんだよな? なにか違和感があるな。まるで、誘われてるみたいだ」
「その可能性は十分にあるかと、しかし――」
「分かってる。なんとかしてみよう」
帝政派の軍人の話を聞くに、なんともイレギュラーズが誘われている様な狙いも見えるのだ、が。だからと言って村民を見捨てる選択肢はない。懸念すべきは敵の戦力が不明な所か……民の救出も念頭に置きながら、なんとかなるか……?
「斥候に出ていた者達も救出に志願していますので、彼らは皆さんと共に随行させます。
決して多くはない数ですが……なんとか、民の救出をお願い申し上げます……!
他部隊の構築と救援も急がせますので……!」
「ああ――さて。どう動いたものか、な」
敵に狙いがあるのかもしれない。待ち伏せている敵が、いるかもしれない。
――だが。全て承知の上で、彼らは往くのだろう。
悪意など。誰かを捻じ伏せんとする力など。
それを上回る力で――未来を抉じ開ければいいのだから!
- <咬首六天>虐殺のラプソディー完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月12日 00時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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誘い込まれているかもしれない。あぁそんな事は分かっている――
だけど、そうだとしても。
「関係ない。罪もない人たちを傷つける奴らを絶対に許さない。
――どんな罠だろうとまとめて撃ち抜くだけだよ」
「あぁ上等ってもんじゃねぇか。新皇帝派のクズをこっちから探す手間が、むしろ省けるってもんだ――罠があろうが全部食い破ってぶっ潰す!」
退く理由などどこにもなく。全て踏み潰し攻略せんと、むしろ戦意在りしは『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)や『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)だ。村へと駆けつけるべく迅速に移動していれば――見えてきた。
件の村だ。殺意と悲鳴の気配が、此処からでも感じ得る……!
「まったく、ボク達だけを罠に嵌めるってのならともかく関係ない人たちを巻き込むのは頂けないなぁ……これ以上被害を拡大させる訳にもいかない。まだ間に合う人達だけでも――助けるとしよう」
「まずは天衝種達の司令塔を片付けるでござるよ!
アラクランめ――お主達には相応の覚悟をして貰うでござる。
自らが何を成したのか。その所業と罪の重さ、身をもって知るが良かろう……!」
故に。『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)に『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)らも一気に攻勢を仕掛けようか。だが、周囲に兵が潜んでいないか索敵も忘れない――オニキスやラムダは周囲を俯瞰する様な視点を張り巡らせようか。救いを求める声がないかオニキスは飛行しつつ感じ取り、ラムダは己が優れし感覚によって状況把握に努める。
更に咲耶は聴覚の機能を最大限に集中させ、接近しうるモノがないか警戒。
いつ何時に敵の罠……伏兵が至っても問題ない様に。
その上で撃を仕掛けよう。
まずは住民らの救助が最優先だ。その為に邪魔立てする敵を退けん――ッ!
「さぁこっちだよ熊共! 狙うならオイラを狙え――! 相手をするよ!」
「地道な活動が実を結ぶといえば聞こえはいいが。『八つ当たり』はいい迷惑だ。
精々思い知ってもらうとしようか。彼らが我々を呼び寄せてしまった事の――意味を」
その為に動くのは『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)だ。彼は特に熊の天衝種達を引き付けんと立ち回る――無辜の人々が襲われているならば放っておけない! アラクランの好きになんて、させるもんかッ――! 更に『暴食の黒』恋屍・愛無(p3p007296)も続けざまに熊の対処へと赴く。
まずは住民の安全確保が最優先。広き視点を抱きながら自らがどこへ、どう動くのが適切かと――思案を巡らせつつ、熊共をチャロロと同じく引き付けようか。
「わぁ、ぁ……! なんだ!? ま、また新皇帝派……!?」
「安心しな! イレギュラーズが助けに来たぜ!
まだ外に出るなよ――連中をぶっ倒してやるからな!」
さすれば住民達がイレギュラーズの到来に気付くものである。彼らを安堵させる為にもルカは大声を張り上げつつ、敵へと一撃一閃。それは新皇帝派の狙いであるイレギュラーズが来ているぞと……軍人共に教えてやる狙いもあろうか。
連中は許さない。必ず叩きのめしてやる――
斯様な怒りを抱いているのは『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)も同様であった。私達を誘い出す為だけに――こんな事を?
(……情けない。直接向かってくる気概もないんですか……)
侮蔑。軽蔑。憤り。数多の感情が彼女の内を巡っていようか。
たかが村娘だった女一人、正面から踏みにじれないと……? 尤も、今の私は『死血の魔女』
貴方達の行為を踏みにじる、悪意そのもの。
「――思い知っていただきましょう。貴方達が一体何をしてしまったかを」
彼女は往く。自らに魔力を循環させうる術を施しつつ。
チャロロの引き付けた個体共を――熱砂の嵐を顕現せしめて襲うのだ。
「どうしてひと同士で争うですか? アラクランの人には、村民の叫びが聞こえないですか?」
そして『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は……悲しかった。
ひとはあたたかいもの。
ひとはやさしいもの。
名は、ねこたちが感じたそれらの気持ちが形になって生まれた。
――それなのに。『ひと』が『ひと』を傷つけている。
どうして? なぜ? 生きる為に生き物は争う事がある、でもでも。
「メイたちを誘き寄せるために酷いことをしたのなら、許しちゃだめなのです!
メイも――許さないのです! かなしいのは、いけない事なんです!」
これはきっと違うのだと、メイは確信していた。
見過ごせない。見過ごしてはいけない――争い。
夜でも通る目を巡らせつつ彼女もまた、介入しよう。
もうこれ以上犠牲を出させないために。あたたかな明日を――取り戻す為に。
●
「よし。イレギュラーズ共だな――天衝種共を差し向けろ! 此処で仕留める!」
熊型の個体と相対するイレギュラーズ陣営。
ソレらを確認すればアラクランの軍人達は即座に指示を飛ばすものだ――
待機させていた烏の天衝種を呼び寄せるのである。
包囲の形を成さんと。如何なイレギュラーズと言えど不利な形に持ち込めば……
「伏兵がいるんだろ? お前達の行動は読めている。早期の投降を進めるがね。
――空からの強襲か。此方がその可能性を全く考慮していないとでも?」
「まんまと罠に嵌めたのでござろうが、しかしお主達の踏み抜いたものは拙者達の逆鱗――その意味をこれから存分に理解されるが良かろう。理解した頃には、全てが手遅れやもしれぬが!」
しかし承知の上で至っていたイレギュラーズ達に動揺はない。至る烏の気配を愛無は感じ取れば他の者にも情報伝達しようか――尤も。距離がある故に半分ハッタリでもあるが、しかし策を見破られていたという動揺が敵に走ればそれだけでも良しと。
紡ぐは咆哮もだ。空へとも向けるソレは烏達を捉えようか。
自らに攻勢を集中させれば反撃の一手へと繋げる為に――そして咲耶は軍人らを狙わんとしようか。天衝種達の司令塔を片付ければ、敵の戦線も崩れよう。故に殺人剣の心得たる斬撃を振るう――
「好き勝手してくれたな。タダで帰れるなんて思うんじゃねえぜ。
数をちっとぐらい揃えれば勝てると踏んだか――? あめぇんだよ!!」
「空からも襲ってくるから気を付けるようにね。ま、撃ち落としてみせるが」
次いでルカも姿見せた軍人らを強襲する様に狙い澄ますものだ。
俺らをおびき出す為に関係ねえやつを巻き込んで――覚悟は出来てんだろうな?
ルカは薙ぎ払う様に膂力を込める。その剣先全てで薙ぐ様に――
さすれば烏達が襲い掛かっても来る、が。ソレはラムダも対処の一手を放つ。
天に向けられるは10の光球。炸裂すれば数多が灼熱の渦に巻き込まれようか。味方をも巻き込む可能性がある故に気軽には撃てないが……しかし、隙あらば軍人達にも叩き込もうと機会を窺いて。
「メイたちは村の人を助けるためにここに来たです。手伝ってほしいの」
「みんなを今の内逃がすんだ! 敵はオイラ達に任せて!」
「お任せくださいッ!!」
そしてメイにチャロロは共に至っていた帝政派軍人へと指示を。
彼らには民の避難と守護を担当してもらうとしよう。メイは同時に治癒の術を振るい、チャロロや愛無など多く敵を引き付けている者達の身を癒さんとする。さすれば元々防に優れていたチャロロは正に鉄壁へ至るものだ。
万全なる状態で彼はそのまま熊の顔面を打ち抜こうか。機械の盾が壮絶なる衝撃を齎す。
連中も反撃として爪を振るってくるものだが――先述の通りチャロロは鉄壁。
一撃二撃もらおうとも一切揺るがぬ。
ああ全く、こんな所まで虐殺しに来るだなんて――
「新皇帝派の連中は根性曲がってるよ! 叩き直してやる――ッ!」
「ええ……ええ。彼らの思惑に乗ってあげた上で、全てを乗り越えましょう」
闘志漲るチャロロ。続いてマリエッタも、引き続き多数の敵を狙おうか。
熊も烏も捻じ伏せんとするが如く。熱砂の嵐は万物を巻き込もう。
相手の狙いは分かっているのだから、あえてソレに乗ってやる。本来であれば敵の狙いなど躱すなり、その上を取るのが最善なのだろうが……しかし。連中の驕り高ぶった思惑など粉砕してやりたいから。
そして何より――人々を必ず救う為、その矢面に立つ為にも彼女は奮戦する。
「――私は人々を救うと誓います。ええ、誓って、此処に来たのですから」
もしも。連中が村人を狙い始めれば身を挺してでも庇うつもりだ。
誰一人犠牲になどさせない――彼らを新皇帝派の悪意に飲み込ませてたまるか!
「チィ……何をしている! 数では此方が上だ、押し込め!!」
「そうはいかないよ。罠を張ればもう勝ったと思っていたのかな――目算が甘いね」
さすればイレギュラーズ達の想像を絶する抵抗に、新皇帝派が苛立つものだ。熊や烏の天衝種に更なる指示を出し攻勢を強めんとする……が。そこへ至るのがオニキスの射撃である。魔術弾頭を装填した彼女の一撃は追尾機能が宿り、敵を正確に穿つのだ。
空より至る烏を。ああ複数で襲い掛かって来ていれば糸をもってして纏めて薙いでもいい――軍人共に射線が通れば軍人を、迫撃砲の一手を打ち込んでもやろうか。彼女の射撃は千変万化の如くであり状況に応じて幾重にも攻勢が変化。
どんな状況にでも対応してみせよう。あぁ――
「逃がさないよ。此処で仕留めてみせる」
罪もない人達を傷つけた報いを、痛みを知るがいい。
――彼女は撃ち抜く。敵の仕掛けた罠も思惑も、全て。
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「わぁああ! 烏が!!」
「大丈夫、大丈夫なのですよ。痛いのも怖いのも、もうないないですよ。
ほーら、痛いの痛いの、とんでけーなのです! 大丈夫!」
戦局は、全体としてはイレギュラーズが押し始めていた。烏の援軍はそれなりの数がおり、一時はイレギュラーズ側は数の上では押されていた――しかし個体としての性能はそこまででもなかったのと、何よりイレギュラーズ側には強い意思と攻勢が宿っていたからか、彼らは数の差を押しのけつつあったのだ。
幾体かは帝政派軍人らが守護している方面にも襲い掛かって来ていたが、メイが即座にカバーするものだ。怪我をしている村の人に声を掛け精神的にも支えるのである。メイも勿論、避難誘導がんばるのです!
「未だ村人を襲おうとするなんて、どこまで性根が腐っているのでしょうかね……」
然らばマリエッタは奥歯を噛みしめる様に声を零すものだ。大丈夫。この悪意を受けて……報復に走る魔女の心も私は抱えて見せますから。意思と共に彼女は渾身の魔力を紡ぎあげるものである。
それは神滅の血鎌。彼女の出し得る全身全霊。
――投じる先は軍人共、か。確実に彼らを刈り取らんとすれば。
「咎人に情状酌量余地はなし……もうちょっと叩きのめしても丁度いいぐらいだよね?
まぁアレだよ因果応報……報いは受けないとね? ちゃーんとさ」
「言ったよな、タダで帰れると思うなってな。逃げようたってもう遅いぜ」
「く、くそ――!」
更にラムダとルカも彼らを追い詰めようか。卓越した威力をラムダが。そして熟練された技量を宿すルカの攻勢を止められる程、新皇帝派は強くなかったのである。熊や烏を呼び戻さんとするものだが、しかし其方も手一杯。
――俺の前でふざけた真似をしやがったテメェらには、もう明日は来ねえ。
明日の朝日を浴びるのは、俺達や無辜の民だけでいいんだ。
「くたばれええええええええ!!」
紡ぐはまるでラサの嵐が如き攻勢。
黒犬が如き剣を振るう。力任せに、しかし己が膂力の全てを込めて。
それは暴風の化身の様にも見えようか――
一閃、二閃。押し込みて、しかし止まらない。紅き嵐はどこまでも続かんばかりだ。斯様なルカから逃れんとすればラムダが斬り捨てる。ゼロ距離から放たれる至高の一閃には神秘なる魔力も混ざっており……緋の花弁が散る様は、命をも絶つ光景、か。
「ボク達を誘い出すためだけの事でこれだけのことをやらかしたんだ犠牲になった人たちの無念……思い知ったかい? 後悔があるのなら、来世で悔やむ事だね――尤も。君達に来世があるかは知らないけれど」
「投降しろ。不満があるなら聞きはする。今は国内で争っている暇はない」
然らば愛無はまだ生き残っている軍人達へと言を紡ぐものだ。尤も、手は止めないが。
――どんな英雄も奇跡も出会えなければ何も意味もない。己の不幸を他者に委ねるな。
――お前らが堕ちたのは全てお前達の弱さのせいだ。その弱さを他者に委ねるな。
――如何なる事情があるとしても。如何なる過去があったとしても蹂躙して良い道理はない。
「お前達も鉄帝の兵ならば尚更な」
「煩い――! 俺達は新皇帝の下で、成り上がるんだ――ッ!」
「あんな皇帝様が政治に興味があるとでも?」
止まらぬならば、どうでもいい。自らの未来は自らの責で辿るがいい。
――さて。しかし軍人達ばかりに構っている訳にはいかない。
直接的に村や村民に害を成している天衝種も止めねばならぬのだ。
愛無はそちらの戦線へと視線を向けようか、さすれば。
「ここで逃せば他の場所で同じことが繰り返される。そんなことは絶対させない。
人々を苦しめるお前達の企みは、私たちが必ず叩き潰す――
だから、覚悟してもらうよ。誰かを害し続ける限り、お前達は許されない」
「生まれてきた命に罪はござらぬが、人に害をなすならば生かしてはおけぬ。
森に帰る事もせぬのならば……やむなしッ!
その怒り、我らの手によって全て残らず鎮めてくれよう。天誅!」
オニキスは天衝種諸共、軍人達を始末せんとするものだ。
怒り狂う様に動く天衝種達。その一体の命を絶たんと咲耶は闇夜に紛れながら切り裂け、ば。全力たる一撃をオニキスは紡がんとする。通る射線。烏達が邪魔せんとしてきても、関係ない。全て貫き――砕く!
砲身4基展開。ジェネレーター接続。魔力回路全基同調。
アハトアハト照準合わせ。クアドラプルバースト――発射(フォイア)!
――紡がれる軌跡は超越の威力と共に飛来せん。
盾? 知らぬ知らぬ吹き飛べッ!
誰一人として逃がしはしない。だって!
「わざわざこんなことしといて許されると思うな!
逃がしはしないよ……! 自分達が何をしたのか、思いしれ!!」
「おのれ――! イレギュラーズ如きがあああ!!」
チャロロも怒っているから。自身の内に憤怒の感情が――あるから。
これだけの犠牲を出しておいて許せるわけないよ。
せめて最後に、痛みだけでも知るといい。
もう残っている天衝種達も少ない。お前達を庇う存在なんて――いないんだ。
覚悟しろ。
「これが――皆の怒りだぁ!!」
振るう一撃。
それが残っていた新皇帝派軍人の意識を――奪い去るのであった。
●
……戦いは終わった。だけれども、村に残った爪痕は消えはしない。
「残った村民だけでも、帝政派の勢力圏内に避難させないとな」
「うむ――せめてこの場でできる簡単な治療や家屋の復旧はしておこうか。
彼らがいずれ戻って来た時、多少はマシな形であった方がいいだろう」
故にルカは村民らの避難を進めんと思考し、愛無は負傷者の治療や、家屋の修復をせんと些かの手を裂くものだ。この戦いもいつまでもは続くまい……いつかは必ず、新皇帝派と決着を付ける時はあるのだから。
「逃げ遅れた人とかは、もういませんかね? メイ、ちょっとみてくるのです!」
「あぁ、犠牲になった人も集めておくか……放置もしておけねーしな。
……せめて手向けの花でもあればよかったんだが」
然らばメイは万が一がないかと、村を見て回るものだ。同時にチャロロは、遺体となってしまった者達を集め……簡単だが埋葬ぐらいはしておこうか。そして静かに……手を合わせるものである。
仇は討った。せめて安らかに……と。
「住民らを移送できる準備が整ったでござる。
彼等を帝政派に送り届けるでござるよ――
……まだまだ寒いでござるが、いつまで続くのであろうか」
であれば、最後に咲耶は呟くものだ。
この戦いは、そして冬はいつまで続くのであろうか、と。
あぁ――また雪が降ろうとしていた。
寒い時期は、もう少しばかり続きそうであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――お待たせしました。
依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ。
GMコメント
●依頼達成条件
敵勢力の撃退。
可能な限りの村民の救出。
●敵戦力
・『アラクラン』メンバー×4人
新皇帝派組織アラクランの者達です。
天衝種に指示を出し、鉄帝の民を効率的に追い詰めんとしています。
戦闘能力としては剣を携えた接近戦型が二人。
銃と魔術を操る後衛型が二人の様です。
HPが減り始めると、状況に応じて撤退する動きを見せる事があります。本依頼は敵勢力を撃退出来ればいいので撤退を追撃して仕留めてもいいですが、逃がしてもソレ自体は成否に影響しません。
・天衝種『ギルバディア(狂紅熊)』×6体
新皇帝派に従う魔物です。大型のクマの様な姿をしており、素早い突進などを行い獲物を追い詰めんとします――また、シナリオ開始段階では鉄帝の民を優先して狙う傾向がある様です。イレギュラーズが本格的に介入した後の動きは不明です。
・天衝種『ヘアズ・フィラン(黒天烏)』×?体
新皇帝派に従う魔物です。こちらはカラスの様な飛行型の個体です。
反応や機動力に優れる反面、全体的な戦闘力はギルバディアよりも劣ります。
シナリオ開始当初はどこか近くで潜んで待機している様です。
イレギュラーズの参戦が確認された後に、皆さんを包囲する様に出てくる事でしょう。
●味方戦力
・帝政派軍人×5名
周辺の斥候に出ていた軍人達です。皆さんと共に戦います。
軍人として標準的な能力を宿しています。銃剣を所持しており、近遠どちらでも戦えることでしょう。基本的には天衝種の撃退や、民の護衛などを目指しますが、他に何か指示があればその通りに動いてくれる事でしょう。
●救出対象
・鉄帝の民×10人
新皇帝派に襲われている民です。村の中で逃げまどっています。
大人達が優先的に狙われたのか、残っているのは子供が多い様です……
彼らも犠牲になる前に、なんとか救助してあげてください!
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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