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シナリオ詳細

<アルマスク攻勢>雪上の高機動戦闘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●虚妄の英雄
「なぁるほどねぇ! ベイレックス! お前の言う通りだ!」
 と、軍服を着た男がそう言った。胸に輝く徽章は、左官クラスの隊長格か。何にしても、新皇帝派に与する男であることは間違いなく――そしてこの『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)・機械化部隊』の一部隊を率いる隊長であることもまた、間違いのない事実であった。
「お前の言う通りだったぜ! このクソみたいな山間の僻地に、虎の子のスノーモービルを用意し赴任した! 凍えて死にそうになったが……」
 そういう男……パダック少佐は、嬉し気に笑みを浮かべていた。それに頷いたのは、ベイレックスと呼ばれた副官の老齢の男だ。
「ビンゴだ! えぇ、ベイレックス。お前の観察眼は見事ってもんだ!
 見ろ! うようよ反皇帝派のアホどもが集まってくる――」
「ええ。付近で反皇帝派の連中が何やらやっていたのは覚えているでしょう? 不凍港やらルベンやらで動いていた」
「ああ!」
「奴らが次に動くとなれば……この辺りでしょうよ。ほら、この辺りは鉄道やら街道やらで繋がってくる。そうなると、奴らが国を切り崩すっていうんだったら、この辺りで安定をとりたいわけですよ」
「なぁるほどねぇ! つまり、物流だの人流だのを確保したいわけだ。アルマスクを奴らがとれば、ノイスハウゼンやらルベンやらと繋がる。そうなれば奴らにとっては万々歳――いいねぇ、だから、こうなる!」
「ええ。次の稼ぎ場は、アルマスク!」
 ふほほ、と老齢の男が笑う。彼は……というより、『彼ら』は賞金稼ぎ上がりだった。その鼻は『金と闘争の匂い』を嗅ぎ付け、的確に『部隊』をその場に送り込んでいた。彼らは賞金稼ぎ上がりだったからこそ、『今の鉄帝で一番稼げそうな場所』、つまり新皇帝派についた悪党どもでもあった。
「この糞見てぇな僻地に赴任して、辺りの新皇帝派(アホンダラ)どもを配下において――ああ、魔種もいたか? まぁ、いい。とにかく街の奴らからも冬の蓄えを奪い取ってよぉ! まぁ、それはそれで楽しかったが、ついに『収穫祭』の日が来たわけだなぁ!」
 パダック少佐は下卑た笑いを浮かべていた。周りの新皇帝派を配下において、と言った通り――パダック少佐、およびその機械化部隊は、このアルマスクの街の新皇帝派部隊を率いる、いわば『ボス』である。前述したとおりにアルマスクの街を『乗っ取った』彼らは傍若無人に振る舞い、街の民を虐げ続けた。しかしそれは副産物に過ぎない。アルマスクが大規模な戦場になることで、集まった反皇帝派の軍人……そしてローレット・イレギュラーズ達を殺害し、その恩賞をもらおうというのが、彼らの目的に違いなかった。
 そしてこの日――独立島アーカーシュのメンバーが攻撃を仕掛けたその日。それはパダック少佐にとっての街にまった『収穫祭』の日で間違いなかったのだ。
「なぁるほどねぇ! よし、野郎ども、スチームを吹かせ! この機動部隊なら、奴らに有利に立ち回れるだろうぜ!
 遊撃部隊って奴だ! しっかりお国に恩を売って稼ごうじゃないか!」
 おう! と、部隊員たちから声が上がる。同時に、ばう、ばう、と蒸気があちこちから吹きあがった。彼らは蒸気式スノーモービルに乗っていた。機械化部隊、と彼らが呼ばれる理由はこれだ。発掘兵器を利用した大きな武力と機動力を持つ。今回はスノーモービルを利用した遊撃部隊という選択をとったようだ。柔軟に戦法を変えられるのも、彼らの強みであった――。
「大ボス様が動き回るってのも、奴らにとってはやりづらいだろうぜ!
 ま、一番危険なのも俺達だ。が、俺達にとっちゃ、命なんてのは紙切れみたいなもんだ!
 稼げ! 稼げ! 命ある限り!
 死ね! 死ね! 稼げなくなったら終わりだ!
 雑魚は殺して金に換えろ! 善心は捨てて種銭にしろ!
 行くぜ! 金の亡者ども! 死んだら地獄で会おう!!」

●機械化部隊迎撃
「いや、街の大ボスが外で暴れまわってるんっスか……」
 で、遊撃には遊撃を、っすスね」
 キャナル・リルガール(p3p008601)は、ガスパーの用意したスノーモービルのエンジンを起動させながら、そう言った。
 山間都市アルマスク。その攻略作戦を実行した独立島アーカーシュのメンバーは、ワイヴァーンとスノーモービルを用いての強襲作戦を実行する。
 機動力を最大限に利用した、拠点制圧による電撃戦――だが、その最中で、此方と同様に機動力を駆使し遊撃を行う敵部隊の存在が発覚した。
 蒸気式スノーモービルを用いた、新皇帝派の軍人たち。『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』に属する者たち。ついでに、このアルマスクを現状仕切る『パダック少佐』の部隊であると知れたわけだが、とにかく彼らによる妨害・遊撃は、アーカーシュ兵士たちの頭を悩ませていた。
 そこで、キャナルの冒頭のセリフに戻る。遊撃には遊撃を……スノーモービルによる高機動はこちらも同様だ。故に、此方も高機動に物を言わせての攻撃作戦をとる。
 無視するわけにもいかない。放っておいてはこちらにも多大な損害が出るだろうし、何より相手はアルマスクを長年苦しめてきた悪党の頭だ。ここで討伐しなければ、作戦の成功とはいかないだろう……。
「ひぇえ、速度には速度をぶつけんだよ、という奴ですか~。
 対消滅とかしません?」
 ぼう、と白い蒸気をあげるスノーモービルを確認しながら、水天宮 妙見子(p3p010644)が声をあげる。作戦はシンプルだ。スノーモービルを利用して敵の機動力に追従し、一気に殲滅!
「シンプルだが、なるほど。事故には気をつけないとな?」
 天之空・ミーナ(p3p005003)が冗談めかして言うのへ、妙見子が再び「ひええ」と声をあげた。
「気休めに思われるかもしれませんが、皆さんならやれますよ。この暴れ馬どもも制御できるはずです」
 スノーモービルの整備兵がそういうのへ、キャナルは頷いた。
「EAMDのお墨付きっスからね!」
 スノーモービルを用意したのは、前述したとおりにEAMDのガスパーだ。性能も安全性もお墨付きと思ってもらって問題ない。
「さて、では始めるか。振り落とされるなよ?」
 ミーナがそういうのへ、仲間達は頷いた。果たしてエンジンを吹かせば、雪煙をあげて、雪原をスノーモービルが爆走する。
 やがてアルマスクの雪原の中に、此方と同様に、雪煙をあげてばく進する一団が見えた。
「間違いありませんね、敵発見です!」
 妙見子が声をあげた通り、それは敵部隊に間違いない! 速度を上げて、敵部隊との接敵を図る!
 果たして、戦端がひらかれるまで、残り僅か――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 アルマスク攻略作戦です!

●成功条件
 すべての敵の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 山間都市アルマスクを攻略作戦中、厄介な敵の一団が現れました。新時代英雄隊・機械化部隊をにして、アルマスクを牛耳る新皇帝派のトップになります。。
 彼らは発掘兵器のスノーモービルを使い、遊撃的に街の内部で暴れまわっています。彼らを放置していては、攻撃中の他の部隊が襲われ、損害が発生する可能性が存在するのです。
 とはいえ、高機動のスノーモービルを持っているのは、敵だけではありません。むしろこちらこそその作戦の得手。敵に高機動戦闘の何たるかを教えてやりましょう。
 本シナリオでは、スノーモービルに乗っている状態で、敵と戦います。スキルなどが無くても問題なく騎乗し、戦うことができるものとします。もちろん、スキルを持っていればさらに有利に行動できるはずです。
 戦闘エリアはアルマスク近辺の雪上になっており、特に戦闘ペナルティなどは発生しません。
 
●エネミーデータ
 パダック少佐 ×1
  新皇帝派の軍人にして、アルマスクを牛耳る『ボス』です。
  元々賞金稼ぎのようでしたが、その腕を売り込んで今の地位についたようです。
  強力なバズーカ砲を用いた、遠距離攻撃を得手としています。強烈な範囲砲撃や、火炎系列のBS、足止めも食らうでしょう。
  敵の最大火力です。肉薄することで、リスクは高まりますが、敵の得手を封じることができるかもしれません。

 ベイレックス副官 ×1
  新皇帝派閥の軍人です。元々賞金稼ぎでした。
  異常に鼻の利く人物で、戦場の有利不利や金の匂いを嗅ぎ付けるのに聡いです。
  マシンガンを用いた強力な遠距離攻撃を使用します。また、彼が存在する限り、すべての敵のパラメータが若干上昇します。
  味方へのバフスキルも使用してきます。裏方のような存在ですが、それ故にさっさと倒して敵の本領を発揮させない作戦も有効です。

 新時代英雄隊兵 ×20
  新時代英雄隊の兵士です。元々隊長たちの部下で、抜群の連携攻撃を行ってきます。
  ハンドガンを利用した、近距離攻撃を多用してきます。
  戦闘能力では上記の二人に劣りますが、数の多さと、連携攻撃に注意してください。


●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <アルマスク攻勢>雪上の高機動戦闘完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
キャナル・リルガール(p3p008601)
EAMD職員
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
島風型駆逐艦 一番艦 島風(p3p010746)
島風の伝令

リプレイ

●雪上の高機動戦闘
 白煙が、雪上の大地を駆ける。
 白煙――それは蒸気の白であり、巻き上げられた雪の白でもある。
 雪上を走る、複数の影。方や、八機の英雄たち。方や、22機の悪漢ども。
 数という点において、戦力差は歴然としていた。が、その数的有利を容易に打ち破るほどの『実力』があった――もちろん、実力がある、と思っているのは、悪漢どもも同じなのであるが。
「へいへいへい、来たな、来たな!」
 アルマスクを仕切る悪漢たち。その『ボス』である、パダック少佐が愉快気に笑った。
「今度は先までの雑魚どもじゃないぜ! 賞金首! ローレット・イレギュラーズだ!
 なぁるほどねぇ、奴らも発掘兵器(スノーモービル)を持ってきたか!」
「そのようで。速度に対抗するのは速度でしょうからな」
 ベイレックス副官がそううなづいた。
「ですが、操作と戦法には、こちらに一日の長がありましょう。
 なに、いつも通り、翻弄して稼いでやればいい!」
「ボス! やっちまいましょうぜ!」
 部下たちが声を上げる。下品な声であったが、しかし自分たちの戦法に自信を持っている声であった。自分たちの命を対価に金を稼ぐ無頼漢の、ある種の自信と実力を感じさせられた。
「おう! ここが分水嶺ってやつだ!
 イレギュラーズどもをやれ! それで大金を稼いで帰還と行こう!」

 そんな男たちの声が、風に乗って聞こえる。
「随分と安く見られたものだ」
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が嘆息した。アクセルレバーを、ぐん、と押し込むと、機体が加速する。
「よし、こちらの機体も素直なものだ。さすがのEAMDといったところか?」
「ふふん! 発掘兵器の利用ならお任せ、っスよ!」
 『EAMD職員』キャナル・リルガール(p3p008601)は得意げに、そして嬉しそうに言って見せた。アーカーシュチームの装備しているスノーモービルは、EAMDという発掘兵器を運用する研究チームによって用意されたものだ。キャナルもそのEAMDの職員であるから、その成果が出ているということは我が事のようにうれしい。
「あっちの運用も大したもんっスけど、うちらに比べればまだまだ、っス!」
「同意 速度倍 更に倍 v」
 ピースサインなどして見せるのは、『島風の伝令』島風型駆逐艦 一番艦 島風(p3p010746)だ。当初は騎乗に渋面していたものの、慣れてしまえばさすがの島風といったところか、速度制御はお手の物だろう。
「島風 追従 不能
 速きこと島風の如し v」
「わわ、あんまり突っ込んじゃだめですよ~!?」
 『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)が、島風へとそう声を上げた。すっかりと華麗にスノーモービルを操るさまは、さすがといったところか。島風に追いつきつつ、
「あっちのボスを抑えるのは、妙見子と錬様ですからね~!
 というわけで、突撃はこちらにお任せを!
 あ、あとノア様も、よろしくお願いしますね!」
 そういう妙見子へ、『誘惑者』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)は静かにうなづいた。
「ええ、任せて頂戴?」
 スノーモービルの白のボディ、それと同様の白のボディースーツのノアは、まさに白原に走る雪花の具現のようでもある。その体には、ほのかに水色の燐光が伴い、白と水の二つの色が、美しい軌跡を描いている。
「アシストはするわ。パダック少佐、だったかしら。そっちに突っ込んで」
「後ろの方は任せてくれよな!
 俺は正義の味方なんて柄じゃないが、ああいうやつらを放っておけないって気持ちは一緒だ!」
 『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)が、ちょこん、とスノーモービルの上に乗りながら言う。当然、スノーモービルもカーバンクルでも操作できる特別製である。
「敵の数は多い。こっちは、あの取り巻きどもをまとめてぶっ飛ばしてやるさ!」
「やるなら、あの副官って人からだよね?」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がそういう。
「情報通りなら、あの人が『頭脳』なんだ。きっと、部隊指揮とかのメインをやってるはず!」
「ああいう縁の下の力持ちみたいなのが一番厄介だからな」
 『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)がうなづいた。
「向こうはすっかり、こっちの首を取る気でいるみたいだが――いいさ、こちらの首はたやすく取れたりはしないってことをおしてやろう。
 いこうか、皆。アクセルを踏むことを恐れるな! 全力でぶつかる!」
 ミーナの言葉に、仲間たちはうなづいた。アクセルを押し込めば、スノーモービルが一段と蒸気の吠え声を上げて、ぐん、と体にGがかかる。
「振り切る 突撃 rd」
 レディ、と声を上げる島風。それを合図にしたように、仲間たちのスノーモービルは最高速度に達した!
 go、とは誰が言った言葉か。いずれにしてもそれは両軍の吐き出す白の煙とエンジンの吠え越えの中に消えて、しかし行け、という言葉は舞台の開幕ベルのように確かに誰しもの言葉に響き、そして戦いの舞台の幕を開ける言葉となっていた――!

●衝突!
「島風 追従 不能 v」
 もう一度、「私には追い付けない」そう告げる島風。その言葉通り、島風は誰よりも速く、誰よりも疾く、走った!
「なんだ、あいつは!?」
 敵兵士の一人が叫ぶ。
「ロケットみたいだ! 何つう速度しやがる!」
「否 例えるなら、『島風の如し』!」
 声を上げ、島風が『魚雷』を射出する。水を走るそれではない。宙を走る魚雷だ! 放たれた魚雷が、敵兵士の操るスノーモービルの直前に突き刺さった! どぅぉん、と強烈な、腹に響くような音を立てて爆発! スノーモービルが転倒し、敵兵士が座席から放り出される! そのままたたきつけられた兵士がダウン!
「おいおいおい! 鉄砲玉みたいなのがいるじゃねぇか! 副官! どうしようかなぁ!?」
 パダックが叫ぶのへ、副官がうなづく。
「足の速いやつは追い込むに限りますなぁ。
 野郎ども、タイマンは避けろ! 複数人でねらい、確実に射線に追い込め!」
『応!』
 兵士たちが、副官のことばに応じた。追い込むように、島風を狙う兵士たち。島風がぐいん、と車体をひねり、ハンドガンからの射撃を回避する。
「援護 要請 v」
 島風の言葉に、うなづいたのはミーナだ。
「わかってる! 汝は生者――すなわち罪ありき、だ!」
 それは死神の権能が一つ。背部の赤の羽から漏れ出る光が、まるで伸びる手のように、あたりの兵士たちの体をつかんだ。それは概念であったが、神秘的なダメージももちろん持ち合わせている。赤の光がつかむのは、魂だ。原罪。生きるが故の罪。そういったものを想起させ、固定させ、その罪を罰する。
「う、おおっ!?」
 その狂気と罪悪感に耐えられるものはいない。すぐに狂気に飲まれるだろう。ハンドル操作を誤った兵士がスノーモービルから投げ出されてダウンする。その転がったスノーモービルにぶつかった別の兵士のスノーモービルがまた吹っ飛ばされ、連鎖的な損害をもたらした。
「なるほどねぇ! 俺たちみたいな糞野郎にはよくきくだろうぜ!」
 パダック少佐が笑った。
「流れ星のように駆け抜ける……前に、倒すべき敵をぶちのめす! いっけぇ!」
 ヨゾラが駆ける。ぐわぉん、と強烈なエンジン音とともに、副官に追走。
「裏方や補助、善人や味方なら評価できたのに……まぁ屑ならぶちのめすだけなんだけど!」
「悪党にもそういう人物が必要でしてな!」
 副官がマシンガンを打ち鳴らす。ヨゾラはくっ、とハンドルをひねり、スノーモービルの車体を横滑りさせた。眼前を走っていく、マシンガンの球を確認しながら、ヨゾラが手にした魔術書を展開する。その書物の一ページから漏れ出た泥が、混沌の濁流と化して、副官を襲った。
「ケイオスタイド……なるほど、大した術師ですな!」
 歯噛みしつつ、副官はスノーモービルのアクセルをふかした。突然の加速に車体が暴れだし、ウィリー状態に移行する。そのまま小高い丘を駆けあがれば、スノーモービルが大ジャンプをして、混沌の泥を回避して見せた。
「私もただの裏方ではなくてねぇ!」
「だよね! でも、こっちも一人じゃないんだ!」
 ヨゾラが声を上げる――副官の逃げた先には、カーバンクル、ライの姿があった。
「すばしっこいやつは誘い込んで足を止めろ、ってのは、さっきお前が言ったよな!」
 ヨゾラは、ライの攻撃範囲に副官を追い込んだのだ! ライの額から、雷の鎖が解き放たれる!
「何人で来たってまとめて蹴散らしてやるぞ、伊達にカーバンクルやってないんでな!」
 ばぢん、と雷鎖が副官のスノーモービルをたたいた。ばぐん、と音を立てて、小爆発を起こすスノーモービル!
「ちぃ! やる!」
 副官が舌打ちをしつつ、身構えた。ぐぅぉぅん! 強烈な音は、雷鎖が再びスノーモービルをたたいた音だ! 副官が周りを見れば、ライのチェインライトニングの一撃に巻き込まれ、数名の兵士が吹っ飛ばされているのが見える。副官、そして少佐とその部隊は、確かに優秀なメンバーだった。だが、それゆえの驕りはなかっただろうか。実力があったが故の、驕りだ。それは明確な『慢心』になり、イレギュラーズという真の英雄に対して、正しき危機察知ができなかったか……?
「噂以上ということか、ローレット!」
 叫ぶ副官! ずどん、と着地し、煙を上げるスノーモービルを走らせる。そのままマシンガンでイレギュラーズたちを銃撃――その弾丸の雨の中、キャナルが真っ向から突撃する!
「残念! 腕も! 機械も! こっちが上っスよ!」
 短機関銃を構えるキャナル――ずだだだだっ、と音を立てて、銃弾が吐き出される! スノーモービルに、次々と銃弾が直撃――ばぐん、ばん、と小爆発が巻き起こるのを、副官は確認していた。
「ちっ……! 人生最期のギャンブルになったか……!」
 あくまで、命は種銭。そういった価値観が漏れ出るようだった。スノーモービルが爆発炎上する! 副官が吹き飛ばされたのを、キャナルは肩越しに確認した。ずざぁ、と雪上を滑らせて、キャナルはスノーモービルを停止させる。
「……まだ生きてるとは。ある意味運がいいっスね」
 わずかに動く副官の体を確認し、キャナルは再びスノーモービルを走らせた――。

●雪上の決着
「なぁるほどねぇ!」
 パダック少佐が叫ぶ。追従する、妙見子と錬!
「やられたか、副官! 分け前が増えたなぁ。香典は弾んどくぜ!」
「どうやらつくづく、お前たちとは価値観が合わなさそうだ」
 錬が声を上げた。
「命を掛け金に金を稼ぐ、か。
 わざわざ矯正してやるつもりはないが、気に入らないな!」
 放つ、式符。それは回転する斧を生み出して、少佐を狙った。少佐がバズーカを使って、斧を狙う――放たれた弾頭が爆風を巻き起こして、斧を、そして少佐自身を軽く吹き飛ばした。
「ちっ、近距離じゃこのバズーカも宝の持ち腐れか!」
 少佐はバズーカをスノーモービルに括り付けると、そのまま近接戦闘用の短銃を抜き放つ。
「少佐様! 先に行きたいのでしたらこの妙見子を倒してから行くのですね!」
 それを妙見子が制した。少佐が舌打ちを一つ、
「あんまりしつこいと嫌われるぜ、胸のでかいねぇちゃんよ!」
「うっわ、そういうのきっしょいですよ!」
 ドン引きした様子を見せつつ、妙見子が鉄扇を振るう。ヴァイス&ヴァーチュの力を帯びた衝撃波が宙を走り、少佐のスノーモービルの外装を切り裂いた!
「おいおいおい、高いんだぜこいつは!」
「その割には、整備もろくにしていないようだな」
 錬が言う。
「整備士のいない機械というのは、可哀そうなものだと思わないか?」
「命と同じさ! すり減らしていって、使えなくなったら死ねばいい!」
「つくづく、価値観の合わないやつだ!」
 錬が再度、斧を振るった。がぎり、と音を立てて、スノーモービルの外装を切り裂いた。じじ、と蒸気が噴き出す。
「ちぃ……!」
 少佐が舌打ちをしつつ、短銃を撃った。錬のスノーモービルに着弾する。これ以上のダメージを避けるべく、錬がわずかに速度を落とした。その隙間を縫って、ノアが飛び出した!
「禁断機構、稼働……ここに具現化するのは貴方達にとって最悪の可能性」
 その光を体にまとい。
「奇跡機構、稼働……私達が掴むのはこの街の平和への可能性」
 その速度を体にのせて。
「今から貴方達にとっては最悪の、私達にとっては最高の時間をお送りするわ!」
 飛ぶ――その結末を手につかむために!
「『死ね! 死ね! 稼げなくなったら終わりだ!』本当にそうね、パダック少佐サマ?
 ……地獄への片道切符、奢ってあげるから乗って行きなさい」
 構える、ビームバズーカ! 放たれる、光撃の、一撃! 光の帯は一直線に、雪上を切り裂く! 光の帯が、雪を巻き上げて、パウダーのようにまき散らした。少佐が、思いっきりブレーキを握った。つんのめる様に、スノーモービルが停止する――だが、遅い! 強烈な閃光は少佐の体を飲み込む!
「ちぃ……!」
 舌打ち一つ、パダックはスノーモービルから飛び降りた。爆散する、スノーモービル! その爆風に体をもて遊ばれながら、少佐は何とか立ち上がった……短銃を構える刹那、妙見子がとびかかる!
「これで仕舞です、少佐様!」
 鉄扇が、少佐の体をたたいた。がふ、と息を吐いて、少佐が雪の中に倒れ伏す。
「賭ける先を間違えましたね? ってやつです」
 妙見子がそういうのへ、錬がうなづいた。
「戦術は確かなものだった。正しいことに、それを使えていればな」
 あるいは、有用な味方となりえただろうか……。
「考えても仕方のないことですね。さぁ、まだ敵は残っています。油断せず、討伐しましょう!」
「そうね……この街を、解放するためにも」
 ノアがうなづく。果たして戦いは、いましばらく続くのであった。

「少佐がやられたのか!?」
 兵士の一人が声を上げる。イレギュラーズたちの奮闘により、敵の数はすでに大幅に減じていた。指揮を担当していた副官、そして戦力の中枢で会った少佐を失った兵士たちは、もはや烏合の衆であった。それでも戦闘を継続したのは、彼らの賞金稼ぎとしての欲とか、自信とか、そういったものが理由であっただろうか。判断を誤ったといえばその通りだが、しかしそれを選ぶことしか、その時の彼らにできなかったことは事実だ。何より。
「まぁ、いいさ! こっちの数が減れば、取り分は増えるってな!」
 心の底から、彼らは命をベットして金を稼ぐ、賞金稼ぎで会ったのだ。有用であったため軍に所属したが、それでも、性根では、アウトローであった。
「賞金稼ぎなのか軍なのか、よくわからん奴らだ!」
 ミーナが叫び、スノーモービルの上で希望の剣を抜き放った。白の空を移すように、剣が輝く。兵士とすれ違いざまに、一閃。斬撃が、スノーモービルを割いていた。
「くそおおおっ!」
 兵士が叫び、飛び出す。同時、スノーモービルが爆散した。ミーナは華麗なテクニックでスノーモービルを回転させると、別の兵士に向けて進撃する。
「は、はやい……!」
 兵士が叫ぶ。ミーナは剣を、敵兵士のスノーモービルのエンジンに突き刺した。すぐに抜き放ってアクセルをおしこみ、離脱する。敵兵士のスノーモービルが爆散するのを背後に確認し、
「残りは少ないはずだ! このまま一気に押す!」
 叫ぶ。
「了解 島風 疾走 v」
 島風が高機動を見せつつ、魚雷を撃ち放った。同時、ライが額から雷の鎖を撃ち放つ!
「まとめて吹っ飛ばす!」
 ライの叫び。魚雷と、雷の鎖が、中空で接触して、巨大な爆発を巻き起こした。兵士たちがスノーモービルごと吹き飛ばされる。ずざぁ、と音を立てて、イレギュラーズたちのスノーモービルが雪上に停止した。あちこちで黒煙を上げる、敵方のスノーモービルの姿を見て、キャナルはわずかに顔御しかめた。
「……敵対しているとはいえ、発掘兵器を無下に扱うのは心苦しいっスね」
「そうだね。あのスノーモービルに罪はないからね……」
 ヨゾラが静かにそういった。悪しき戦いに使われたスノーモービルたち。その無念さは、いかほどのものだろうか。
「回収して、修理してあげたいね」
「そうっスね。もっといい感じに改造してあげてもいいっスよね」
 キャナルがほほ笑んだ。幸い、完全に破壊されたスノーモービルは少ない。回収して、直してやることはできただろう。
「生き残ってる兵士は、捕まえておこうか」
 錬がそういった。島風がうなづく。
「捕虜 確保 v」
 きゅ、とロープで兵士を縛り上げる島風。
「これで、アルマスクも解放されるのか……?」
 ライが言うのへ、ミーナがうなづく。
「ひとまず、兵士たちの頭は抑えた。ほかの戦場の仲間たちの結果にもよるだろうが――」
「きっと、うまくいきますよ~!」
 妙見子がそういう。それは祈りのようでもあったが、仲間たちへの信頼でもあった。
 アルマスクをめぐる、戦いの一端。
 それは、イレギュラーズたちの勝利という結果をもたらした。
 雪上の死闘を制したイレギュラーズたちの熱を冷ますように、雪を伴った風が吹く。
 ほほを冷やすその雪風に身をゆだねるイレギュラーズたちであった――。

成否

成功

MVP

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、パダック少佐らの撃破に成功。
 アルマスクにて大きな戦果を挙げています!

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