シナリオ詳細
<ネメセイアの鐘>我らの神よ――今日も幸福を与え給え
オープニング
●
――美しい都市だ。少なくとも、表面上は。
アドラステイア。その都市は天義東部に位置している。
下層はスラム街の様な面もあったが、上層に行くにつれ裕福かつ美しい街並みへと変貌していくこの都市は……どこか歪さを秘めている事を感じさせようか。かつて生じた強欲冠位における事件を契機として発足されたこの都市は――
しかし、遂に侵されざるべき上層へと不心得共の手が届かんとしている。
「――イレギュラーズが来るぞ。知っているか?」
「当然。逃げないの?」
「どこへだ。中層は騎士団によって制圧されているというのに」
その気配を感じ得る者達がいた。
アドラステイア上層部の一角にある教会で話し合っている影は二つ――片方は『ドクター』と呼ばれる若い男であり、もう一人はアドラステイアに協力的な姿勢を見せている組織『新世界』に属するルゥ・ノイールだ。翼を携えし彼女の気配は希薄であり、注意して見なければ其処にいる事すら忘れてしまいそうである。
それは彼女が隠形に特化しているが故にこそ。
暗殺、証拠抹殺……裏に携わる彼女は――【暗闇(オプスキュリテ)】という名すら持つか。
一方で『ドクター』の方はアドラステイアでは珍しい大人側の人間だ。下層では子供達の治療をするが故にこそ『ドクター』と呼ばれ親しまれていたのだが……しかしそれは子供達に優しいから、と言う訳ではない。
「それに――私はどうせ外では裁かれる人間だ。
闇医者の様な事をして各地を渡り歩いていたからな。
仮にアドラステイアが沈む船であろうと、逃げる先はない」
そう。彼は人を癒す事が、ではなく手術するのが好きなのだ――
より厳密には腹を捌く事が、と言っても良い。
特に汚れていない子供達の腹は最高だ。美しい程に綺麗で、見ていて惚れ惚れとする。洗脳した子供達が大勢を占め、戦闘要員としても駆り出されるアドラステイアは彼にとって天職の様な地であった事だろう。
「そ。なら僕も似たようなものだよ。ボスがどっかいかないなら、僕も残るだけだ」
「殺人鬼が結構な事だ」
「そうさ。僕はボスが望むなら、殺人鬼でも死神にでもなるよ」
……ルゥ・ノイールは元々海洋に住む、それなりに裕福な子であった。
しかし旅人(ウォーカー)に騙され没落し――挙句の果てには家族も全て失った。路頭に迷っていたルゥを拾ったのが新世界のボス……メビウスという男性であり、彼への忠誠心は計り知れない。
ボスがアドラステイアと行動を共にするのなら僕も付いていく。
ボスが此処に残るのであれば僕も付いていく。
ボスが望むのなら――なんだってやってみせる。
「ドクター! 外に不審な連中が……! 聖獣様と一緒に教会の警備を固めます!」
「そうか。頼んだぞ」
と、その時だ。扉を開けてやってきたのは――子供の一人。
『オンネリネンの子供たち』と呼ばれる傭兵部隊に属していた者だ。
その傭兵部隊の本拠は中層にあり――現時点では本部は壊滅したと言っていい。だからこそ上層に退避してきたのはその残党だ……ただし、彼らの意思は未だアドラステイアに染まっている。
アドラステイアは僕達の家だ、と。
強く、強く掛かっている暗示――洗脳と言っていい程の――が、彼らの根底にある。
彼らは守るだろう。そう、文字通りに『命』を賭してでも……この地を。
「……しかし。酷い匂いだ此処は」
「んっ――確かに。上層は街並みは綺麗だけど厭な気配がしてるね」
そして子供が駆けだしていけ、ば。ドクターにルゥは窓を見据える。
そこから見える景色はやはり綺麗だ。美しく整った街並みが――広がっている。
だけれども、臭い。
どこか焦げ臭い・生臭い・気分が悪くなるような気配が充満しているのだ……
今はまだ無視できる程度ではあるが、なんとなし段々強くなっている気配がしている。
子供達は『きっとファルマコン様の加護だ!』などと喜んでいるが。
「……ファルマコンの加護、か。間違いでもないのかもしれんがな」
しかしドクターは何ぞや、妖しげな術か何かが張り巡らされていると気付くものだ。
「盲目と言うのは、なんとも嘆かわしいものだ。ま、どうでもいいが」
「とりあえず迎撃するなら僕も行くよ。真正面から戦うよりも、潜んだ方がやりやすい」
「勝手にしろ。私は奥の方で聖獣共と共に防衛線でも築こうか……」
ともあれ。なんにせよやる事は変わらぬと、ルゥはその気配をより希薄にするものだ。
暗殺、搦め手、罠。数多を用いてイレギュラーズを迎撃せしめよう――
「あぁ、その前に」
「んっ?」
「聖獣共を連れて行くか? 駒にはなるだろう」
刹那。ドクターが指差したのは――聖獣と呼ばれし存在、だ。
ソレは一言で言えば魔物の類である。
アドラステイアでは聖なる存在として認知されているようだ、が……しかし。その実態はある意味魔物よりも更に酷い――ソレの正体は『イコル』という特殊な代物によって魔へと変じた元人間である。
イコルの製造所を担っていた実験区画フォルトゥーナは壊滅し、それによって流通には大打撃を受けている。故に聖獣の数は段々と減少しているが……
「まだいたんだ。聖獣」
「ああ――流石に以前ほどの数は無いが、な。しかしどうも……
『聖盃』なる儀が行われているらしい。
ファルマコンの血を用いた儀式で、純血を注げばソレもまた聖獣へと至る」
「ふぅん」
ドクターは『聖盃』という儀式の説明を成すも――ルゥは興味なさげだ。
……ファルマコン。元々は架空の『新たな神』であった筈の存在。
此処に来てファルマコンの存在が――露わとなってきている。
ソレが意味する事は、一体なにか。
「興味はないのか」
「何に?」
「こんなモノを作り出すファルマコンの正体だ」
「興味ない」
「そうか」
「そっちは興味があるの?」
「ない。なんとなく『誰』なのかの見当は付いてるぐらいだ」
ドクターは眼鏡の位置を指先で調整し――再度外を見据える。
外は雪が降っている。何事もなければ、純白の美しい景色と言えるかもしれない、が。
厭な気配は段々と強くなりつつあった。
我らの神よ――今日も幸福を与え給え。
それでも、あぁ。
今日もアドラステイアでは――神を称える唄が響いている。
- <ネメセイアの鐘>我らの神よ――今日も幸福を与え給え完了
- GM名茶零四
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年12月17日 22時20分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●
どこか遠くで――鐘が鳴っている気がする。
それは何を告げる鐘の音色なのか。福音か、それとも……
「なんにせよ彼等にとって此処は楽園なのかもしれないわね。
……どういう場所なのか理解する前に連れて来られたからこそ」
一瞬だけ天を見上げたのは『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)だ。アドラステイアの鐘の音を聞きながら――彼女は同時に優れた感覚を張り巡らせて周囲の索敵を行う。
息遣い。足音。
数多の気配がそこかしこより感じられれば、これから成すに足る一手をどこに投ずるべきか推察出来るが故に。
――目標は教会内の指揮戦力の撃破。
彼らが打ち倒されれば子供達が主体のこの地区の防衛網は瓦解するだろうから、と。
「じゃあ行きましょうかねヒィロ。精々彼らの目に付く様に暴れてやりましょう」
「うんうん! 子供達を利用して矢面に立たせる神とか正義とかなんて、ぶっ潰してやるんだ!」
同時。教会の外で動くのは『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)に『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)達もだ。彼女達もアンナと同じく、外で敵を『誘導』する為に事を成さんとしている――敵の警戒網を横から殴る様に往こうか。
「上層だけ裕福なこの街並み、天義のダメな部分濃縮還元100%って都市だわー
聖なるかな、正なるかな。ハハッ――声のデカい正義って大概こうよね」
然らば美咲は横目に見据えたアドラステイアの街並みに失笑の感情を抱くもの。
下層はあれだけ酷かったというのに、一部の者が住まうこの地のなんと綺麗な事か。
あぁ――歪にして愚の顕現。
――先往くヒィロの作りし流れに乗る様に美咲も続く。教会外で派手に撃を紡ぐヒィロへと注目が集まれば、ヒィロは周囲を俯瞰する様な視点を迅速に巡らせるものだ。どこから敵が集まってきているか。どこに敵の姿が潜んでいるか見据えんとし。
「敵だ――! 皆、戦闘配置に付け――!!」
「この状況でもまだ必死に守ろうとするだなんて……
狂信に駆り立てるっていうのは本当に厄介ね……」
「精神的にも物理的にもきな臭くなってきてますね――なんていう所でしょうか」
さすれば周囲でイレギュラーズが発見された、という声が張り上げられるものである。各所より接近してくる気配があれば『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)や『ネクロフィリア』物部・ねねこ(p3p007217)にとっては狙い通りだと思うものだが……
しかし上層にまで追い詰められておきながら未だ忠誠、いや狂信の中にあるとは。
彼らの脳髄はどこまでも染め上げられてしまっているのだろう。
上層に漂う異質な『臭い』も『気配』も――疑問に思わぬ程に。
「流石にこれ以上好き勝手させない為にも、着実に制圧していきたい所ね」
故に彼女らも動く。イリスは前面へと出でながら、周辺の地形状況を把握せんとし――どこで彼らを迎え撃つか、或いはこちらから各個撃破出来る様な接触点はないかと戦略的に判断せんと思考を巡らせよう。
そしてねねこは、周辺にまで響き渡る様な大声を響かせる。
自らの存在を誇示する様に。スピーカーが如き反響はどこまでもどこまでも響いて――
さすれば。外でけたたましく誘導を行うその騒動の間隙を突く様に教会内へと至る者達がいた。
「……よし。あっちは上手い事誘き寄せてくれているみたいだな。
今の内に本命を狙わせてもらおう。こっからは速度も大事だ」
「そうね! よーしおねーさんに任せて! ドクターくんの居場所まで一気に行くわよ!」
自らの気配を絶ちながら赴くは『竜剣』シラス(p3p004421)に『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)だ。二人の足音はまるで無であるかの様に消え失せている――外での誘導が激しい事も相まって、内部へと侵入した微かな気配など誰が気付こうか。
更にガイアドニスは内部の警戒に当たっている者がいないかと優れし聴覚も頼りに。
シラスは壁の先に誰ぞがいないかと透視の術も巡らせれば索敵も行えるものだ。
「アドラステイア……ここに来るのも久しぶりだねぇ。
下層も中層も乗り越えられた訳だけど……上層がいよいよ正念場、かな」
「……しかし、いざ来てみるとやはり嫌な気配も相まって張りぼての美しさという感じがするよ。街並みは綺麗なのに、ね。歪さをどこかに感じる――薄皮一枚下には『何か』がある様な感じだ」
同様に気配を殺しながら往くのは『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)に『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)もである。隠密さを優先しながら敵の目を掻い潜らんとしつつ……張り巡らせる思考はアドラステイアに蔓延する気配の事。
暫く見ぬ内に妙な気質が蔓延っているようだ――
或いは、元々潜んでいた要素が表層化した、という訳だろうか?
……いずれにせよこの大一番、負けられないとヴェルグリーズは思考するものだ。
「一刻も早くドクターの下へ辿り着かないとね。さて、どちらに進むべきか」
「うんうん、きっとこっちだわ! 奥に籠ってるなら防備が厚い所にいる筈だしね!」
自ら達の侵入した痕跡を素早く隠蔽しつつ、彼は視線も巡らせる。
外部での気配は除外していいだろう。内部の奥深くにいる筈だからと――故にガイアドニスの捜索がドクターの所在方向を導き出すもの。教会内の構造や、人が移動した痕跡を目敏く見つけ出す彼女より数多の情報が齎される。
進み続けるイレギュラーズ達。今の所、内部侵入側は発見されておらず順調と言えた。
「……ドクター。今度こそ、お前に終焉を齎してやれそうだぜ」
故に。『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)はかつて出逢った事のあるドクターへと、言の葉を紡ぐ。医者として奴めは許せない――己も、復讐や殺しに手を出した時点で。魂に血を浴びた時点で真っ当な医者とは言えない、が。
それでも。我欲を満たす腐れ外道を見逃す程堕ちてはいない。
(――これはエゴだ)
誰も罰を与えぬならば、俺が断罪する──
確かなる決意を胸に、彼女は進もう。
今はまだ、滾り往く感情を奥底に秘めながら。
●
「子供はこんなとこでおいたしてないで、家に帰ってお母さんのお手伝いでもしてなよ!
お外でそんなチャンバラごっこばっかりしてないでさ!」
「此処こそが僕達の家だ! お前達こそ出ていけ――!!」
「やれやれ。分からず屋には、ちょっと思い知って貰うとしましょうかね。これも躾だわ」
内部の侵入が上手く行っているのは『外』に人数を割いたが故でもある。
半端な人数であれば引き寄せる事の出来る数が少なかったであろう。であれば内部への強襲を企んでいるのでは、と看破される可能性もあったかもしれない……しかしイレギュラーズの半数を用いた陽動は誰しもの目に留まり、そして多くの子供達や聖獣を誘導で来ていた。
迎撃の為に赴いた子供達の目をヒィロが挑発と共に引き付ける。
さすれば子供達はあの女を許すなと攻撃を加えるものだが――しかしヒィロの超速は撃を遥かに超えようか。自らに施した加護もあらば誰も付いてなど往けぬ。
が、例外たるは美咲か。連携する動きは滑らかな程に。
子供達がいれば彼らの身を薙ぐ様に――斬撃を描こう。
可能であればその武器を狙おうか。『殺し』はこの場において、危険である様だから。
「イレギュラーズよ! 子供達、悪い大人達から助けにきたわ。
貴方達は悪夢から目覚めるべきなのよ……これ以上、戦う必要なんてないの!
必要以上に痛い目にあいたくなかったら早めに転がっておきなさい!」
「煩い、悪魔の使いめ! アドラステイアは僕達が守るんだ!!」
次いでアンナもまた、別方向からやってきた者がいれば名乗り上げる様に紡ごうか。
説得出来るとは初めから思っていない。無論、説得出来たのであればそれが最上であるが……これで武器を捨てる様ならば、きっとこの場にはいないだろう。故に彼らの注目を集められれば十分――
聖獣も同時に訪れれば油断は出来ないが、しかしアンナは彼らの撃を捌きながら立ち回る。敵が十分に集まれば一斉掃射……一閃した剣より振るわれる先は、主に聖獣共を中心に巻き込んで。
『ゴ、ガアア、アッ……!!』
「動きが鈍ったね――よし、この先に反撃しやすそうな地点があるから、そこで戦おう」
「聖獣達も結構集まってきているみたいですからね……此処からが本番です!」
直後。言を紡いだのはイリスにねねこだ。
周辺状況を的確に判断したイリスは皆を導く様に、戦いやすい地点へ赴かんとする――未だ聖獣や子供達は派手に動いたイレギュラーズの下へ順々に集まっている段階であり暴れやすい地点へ移動する事も可能であろう、と。
ねねこは同時に皆へと精神回復爆弾を投じる。練達の技術を取り込んだソレは皆に齎される負を打ち消し、同時に戦う活力をも与えようか……戦いは正にこれからだ。誘導自体は上手く行っているが、しかし。それは逆に言えば大量の敵が彼女らの下へ訪れんとしているという事でもある。
数の上では不利。刹那でも気を抜けば、逆に崩れる事にもなりかねない。
故に万全を整えよう――
そして教会内では引き続き侵入が進められていた。
敵の目を掻い潜りながら少しずつ、少しずつ……と。
「ふふん。おねーさんの手、いや目に掛かればこんなの訳ないのだわ……!」
その中でもガイアドニスの動きは数多の技術によって目覚ましかった。
罠が無いかと警戒も行い、扉や通路に隠蔽や迷彩が施されていようとも見破ってみせる。
破ればその破った痕跡自体も消してしまおうか――
気掛かりなのは、情報にあったルゥ・ノイールという者の存在だが。
「まだ中に潜んでるかしら、それとも外の子達に向かってるかしら……注意は必要ね!」
「あぁ。だが、注意し過ぎて歩みを緩めたらそれも本末転倒だからな。
ドクターの所にも急ぎたい所だ。外の連中も孤立無援はキツイだろうしな」
彼女がどこから至るか。分からないが、彼女が仕込んだ罠がないかとレイチェルは警戒はしようか。ルゥの抱く旅人への憎悪……なんとしても潰しに来る筈だろうから、と。
同時にレイチェルは内部に残る敵がいないかも探る。幸いにして――というよりも外での多くの誘導が上手く行っている――からか、今の所こちらに気付く者はいないようだ。万が一の時は死角より強襲し、不意打ちから喉でも潰して大声を立てられぬ様に……とも考えていたが、ドクター接敵前に不要な身晒しが無かったのは安堵するべき事だろうか。
――進む。シルキィが優れし感覚を周囲に張り巡らせ、シラスも引き続き壁を透視しながら。ヴェルグリーズは罠が仕込まれていないか合わせて警戒も行いつつ、教会内を進んでいく。
奥に進めば進む程に、なんぞや荘厳なりし気を感じもしようか。
それはファルマコンを祀る教会の深部であるからか。
この先にドクターもいるのだろうと思い――さすれば。
「……いたねぇドクターだよ。周りには流石に聖獣もいるねぇ」
「アレはもう流石にどうしようもなさそうだね。一気に行くしかない、か」
シルキィの嗅覚が、イレギュラーズ以外の存在を感じ取るものだった。
虫の嗅覚も結構馬鹿にならないよぉ? と紡ぐ先に見えたのは――ドクターの影。
聖獣達を更に集めんと指示を出している様である。外のは陽動だから引き戻せと……そんな声も聞こえてくるが、冷静に状況を見ているのだろうかとヴェルグリーズは思考するものである。
ドクターの周りには聖獣の影も見えようか。
流石にあの護衛共の目を掻い潜るのまでは無理そうだ――ならば。
「他人の腹をかっ捌くのが趣味なだけのクソ野郎が――医者を名乗るんじゃねえよ」
シラスが先陣を切る様に往くものだ。
聖獣の護衛は予測された事。ならば、逆にそれを狙って崩す事を念頭に置いて。
彼の一撃が飛来する――それは着弾点より発せられし衝撃の渦。
敵陣乱す一撃をもってしてドクターへの道筋を紡ぐのだ。
「なに。もうイレギュラーズ共が来たというのか……! 外の警備はどうした!」
「無駄だよぉ。今度こそ決着をつけさせてもらうからねぇ」
続け様にシルキィもドクターを中心に一撃齎そうか。彼女が形成するは糸の奔流――
それは一条の流星の様に。仇名す者達へと降り注ぐ、星の雫。
直撃一閃。シラスにより乱れた陣形へと撃ちこまれる極大たる一撃が炸裂すれ、ば。更にレイチェルにヴェルグリーズ、そしてガイアドニスも場へと踏み込むものである。
「ドクター。罰の時だ――大人しく受け入れな」
「これ以上不幸な子供たちを作らせる訳にはいかない。その我欲、此処までだ」
レイチェルが振るう魔術は運命を捻じ曲げる概念が如く。
光輝く槍が何もかもを撃ち抜くが如く――射出される。
そして態勢が崩れた聖獣がいれば、ヴェルグリーズが剣の側面にて平打ちしようか。
それは不殺の意思。可能であれば聖獣達もまだ、殺すべきではないと。
何より外と違って、そこまで数に差があるという訳ではない――
故に鋼の塊が道を切り拓かんと紡がれる。
「チィ……幾つか久しい顔も見るものだ。
やはりイレギュラーズというのはこれだから……厄介極まりない」
であればドクターは一度舌打ちしながら治癒術を振るわんとするもの。
時間だ。時間を稼げば、きっと数で有利な外の者らが援軍に訪れるだろうと見込んで。
今。戦いは佳境へ――突入せんとしていた。
●
さて。外では敵戦力が集結しつつあり激戦が生じ。
内部ではドクターへの強襲と応戦が生じる中――
では敵の中核戦力たるもう一人、ルゥは一体どこにいるのか。
――彼女の目は『外』の方に向いていた。
もしも外部にて陽動を請け負う者らの数が少なければ、彼女は勘付いて内部側で強襲の態勢を整えていたかもしれない。しかし一騎当千たるイレギュラーズが五人も外にいれば、外からの正面攻略も戦力的に十分に在り得るかと思考し――なにより。
「……見つけた」
因縁ありしねねこも外にいれば、彼女はそのまま外の面々を屠らんと動くものであった。
殺す。全員殺す。全てはボスの為に……そして自らに渦巻く、感情の吐き捨て先として……
彼女は闇より出でる。
微かな物陰すら、闇の者たる彼女にとっては活用出来るモノ。更には多くの者が集結しつつある状況下であれば尚にルゥの気配は希薄となろう――その刃をもってして、一人ずつその首を貰い受けん。
一歩。二歩。喧噪の狭間を縫ってルゥの刃がイレギュラーズへと至る――!
「やっぱり来ましたね」
「でも無駄だよ! ボクにはそんなの通じないもんね!」
が。ねねこにヒィロは途端に『そちら』へと振り向くものだ。
分かっていた。いずれどこかで至るのは。特にねねこは比較的狙われやすいと――故にずっとずっと警戒していたのだ。勿論、彼女も暗殺を得手とする者であれば警戒していても万全とは言えないだろう……もしかすればその注意をも上回る力があったかもしれない。
されどヒィロの齎した反撃の加護たる号令がルゥの一撃への対応を可能とする。
カウンターとして動くのだ。その刃の軌跡を捉え、彼女へ一撃穿つ――!
「くっ――! おのれ……!!」
「美咲さんには指一本触れさせない! ボクが相手だ!」
「奇襲しやすいと思った? 残念でした――こっちが用意してあげたのよ」
特にヒィロは獣種としての特性もあって奇襲対策は万全であった。
物理的な攻撃を弾く障壁をも己に課し、美咲の動きに合わせて守護の構え。続け様に美咲はルゥへと『虹色の瞳』を向けようか。事象を知覚しうる資格の世界が彼女を逃がさず――斬撃一閃。
迎撃する。ヒィロと連携して追い詰める様に――さすれば
「貴女に狙われ続けると、おちおち『夜遊び』も出来ませんしねー
ここいらでしっかりと捕まえさせてもらいますよ!」
「出来るならやってみろ……旅人如きが……!」
ねねこも更なる追撃を齎すものだ。聖獣を巻き込む形で、ねねこ人形を突っ走らせる。
直後、炸裂。いい加減、狙われるのもそろそろ勘弁してほしいんですからとねねこは紡ぐ……まぁ。彼女の言う『夜遊び』とは些か意味合いが特殊なのだが……まぁそれはともあれ。
ルゥの瞳に殺意が宿る。深く、滾る様な殺意だ。
一発仕損じたからと言ってなんなのだ。
此処には子供達や聖獣など、数多の戦力が存在している。
有利なのは此方だと――押し包む様に包囲していくのだ。
さすれば如何に躱す力に優れた者がいようとも、段々と躱しづらくなってくる。
「流石に数が多いわね。でも、それでも此処で退く訳にはいかないのよ」
「包囲した程度で終わらせられる思ってるなら――大間違いだね」
が。数の不利があろうとも戦い続けられていたのはアンナやイリスの奮闘もあってこそ。
移動の必要がなくなればアンナは、もう一人の自分の可能性を纏いて、自己の限界を超える様な動きを見せようか――そして遠方には再び斉射する如く斬撃を投じ、自らの懐へと牙と共に向かって来た聖獣には終焉刻む一撃を。
イリスは再びルゥが物陰に潜めぬ様に、自らの身より光を齎す。
そうして近場の影を潰しながら――特に子供達の余力を奪わんと、不殺の一撃を此処に。
「う、うぐぁ!!」
「ちょっと大人しくしててもらおうかな。さぁ、こっちはまだまだ戦えるけれど――続けるかな?」
首筋に一閃。さすれば子供の意識が途絶えようか。
彼女の奮戦は他者を導く星が如く。士気を与え、その動きを鋭敏化もさせよう――
そして子供達を無力化。一人、また一人と確実に敵戦力を無力化していくのだ。
数の不利は堅牢なる身で耐え続ける。アンナやヒィロが特に敵の注目を集め、抜けてくる個体はイリスが抑え、周囲を俯瞰する視点と共に美咲が的確に攻撃を加え――そして傷はねねこが治癒すれば数の差は真実、埋めるが如しだ。
敵の中で特に警戒すべきルゥの刃は聖獣達よりも鋭く、心臓を抉り込むかのように来る為に未だ注意は必要だが……されど初手を防げたのは大きかった。どこに潜んでいるか、どこから来るかも分からない――それが『暗殺者』としての特性にして大きな武器なのだ。
「まだだ……! この程度で勝ったつもり……!?」
歯がゆい。ルゥは己が奇襲を潰されて――奥歯を噛みしめる。
こんなのじゃボスの役に立てない。ボス。ボスの為に。ああ――死ね!
憤怒の一閃。聖獣達と共にイレギュラーズを崩さんと、襲い掛かってこようか。
それはもう暗殺者としての戦い方ではない。
殉教者が如く、だ。皮肉にも、まるで彼女もアドラステイアの空気に染まるが如く――
「似た者同士だね! でも、そんなんじゃやられないよ――!」
「行くわよヒィロ。此処からが踏みとどまるべき時間なんだから……!」
猛攻。ここで崩れるか、それとも耐えきれるかという正念場にてヒィロに美咲は立ち回る。
美咲が紡ぐは破滅の魔眼。全身全霊をもってして殲滅せんと――往く!
そんな彼女をヒィロは護衛しながら敵の一撃を受け流さんとするのだ。
直撃を避けんとする。立っていればいい。
相手が全て倒れるまで、美咲さんを護るんだ!
「くそ! こんな不心得共なんかに……!」
「大人しくしなさい――あぁ、恨んでくれて構わないわ。
貴方達をこの場で納得させる事なんて、きっと出来ないでしょうし。
生きてさえもらえればそれで良い。こんなこと言う権利はないけど……」
同時。アンナは子供の一人をまた叩き伏せながら――紡ぐものだ。
道理を外れた場所なんて、元から長続きする筈がない。
いつか沈む船に乗り続けるなんて……あってはならないのだ。
例え。貴方達がそれに気付かずに乗り続ける事を望んだとしても。
「それでも、貴方達の命の使い処は」
――こんな場所であってはならないから。
直後。襲い掛かってくる聖獣を弾き飛ばしたのは――イリスだ。
自らの武器に纏った大いなる神聖が邪悪を討つ。
『ガアアアアッ――!!』
「――あと、もう少し、かな」
同時に紡いでいるのは節制が一撃。自らの気を循環せしめる術が彼女の一撃を更に深く、深く。
そして倒した聖獣は、後でになりそうだが――ヒィロは馬車に運搬する事を思考していた。殺すしかないとしても、上層以外の場所で殺してやれば……『嫌な気配』に取り込まれる事はないだろう、と。
……此処では生かしておいて別の場所で殺すののは、ボク達の都合でしかないけれ、ど。
(その時は、ボクはその行為から逃げないよ)
残酷なことから目を逸らさない。
傲慢さを綺麗な言葉で誤魔化す大人にはならない……!
奥歯を噛みしめ、ヒィロは今はただ――押し寄せてくる敵意に抗い続けて。
「今死ぬか、後で死ぬかだけだよ。
貴方たちを余計に苦しめた私を、思い切り恨んで逝くといい」
同時。美咲も聖獣へと思考を紡いでいた。
彼女もまた言い訳はしない。死をもってしか救えないのであれば、私はそうすると。
――負であっても、それはひとのこころだろうから。
互いの撃が交差する。聖獣とルゥと、イレギュラーズ達の攻防はどこまでも苛烈に。
さすれば攻撃の集中点へとイリスが割り込み、味方を多く庇おうか。
ここで正念場。ここが乗り越える時だと思考して――さすれば。
「あぁ、どうして死なない?」
ルゥが言の葉を紡ぐ。闇に潜めぬ暗殺者はそれでも、刃を振るう事しか知らぬ。
「ボスの為に死んでよ。旅人なんて――害しかないんだから!」
「そーもいきませんね。
死体が増えるのはいつもだったら結構な事なんですが……今回は事情があるので」
てへ。と、ねねこは人間も聖獣も一応、一応不殺の心と共に対応するものだ。
今回はどうにもやばいみたいなので、可能な限り死を少なくせんと。
死にそうな人には後で応急処置もしようか――あぁ。
「ルウさんの望みは、叶いませんよ」
「ええ――終わりよ。この街も、そして貴方も、ね」
刹那。アンナの一撃がルゥを襲う。闇に潜めず、光の下へと引き摺り出された者へと。
崩落する運命が『暗闇(オプスキュリテ)』へと降り注ぎ。
ルゥの意識が――闇へと途絶えた。
そして。内部の方でも戦闘は激化していた。
ドクターが治癒の力を振るいて聖獣らを支援する。
彼の治癒能力が周辺を覆えば秒ごとに傷が治癒されていく……のだが。
「間に合わせねぇよ」
そんな程度、ブチ破ってみせるとシラスは猛攻を加えてやるものだ。
リジェネ? そんな悠長な回復で追いつくとでも思ってるのか――?
元より、それを上回る一撃を紡いでやればいいだけの話なのだ。いやそもそも。
「法外な程の力じゃねぇからな……悪いがドクター。
アンタの医者としての力は妨げさせてもらうぜ」
「クッ。だが……私もその手に対応すればいいだけの話だ……!」
レイチェルが齎す、運命を歪曲させる力が――彼の力を阻害する。
傷を治癒させないのだ。奴の回復を封じ、聖獣を排除すればドクターそのものの単独戦闘力ではとてもイレギュラーズを防ぎきれないだろう。尤も、治癒役として優れているドクターの手に掛かれば、致命たる力自体を排する事も出来るだろう――
ただし。それにはリジェネの力とは別にドクターの一手が必要だ。
奴の動きを縛る意味でも、レイチェルの一撃の意味は大きかった。
(……しかし、死が救いであり。死を糧にする神とは、な……怨むぜ)
同時。レイチェルが巡らせる思考は――アドラステイアの『神』に対してか。
医者は人を生かすものだ。死を拒絶し、生を求めて足掻く存在。
……だというのに此処の神は、死をこそ求めるのだという。
ああ。なんたる不条理。なんたる認めがたい存在――
(――俺は、救いを優先する)
だからこそレイチェルは決して死の気配を認めはしない。
戦いの最中においても医者としての流儀を振舞おう。目の前の聖獣はどうだ? 出血量は? 負傷具合は? 呼吸は荒いか? 限界が近いのか? 未だ余力はあるのか――?
腐っても医者であればこそ、己は信じる。
自らの目を、経験を、技量を。
ドクター、お前に出来ない事を、俺はする。
「左右から攻め立てろ! イレギュラーズを自由に動かすな!」
「そーはいかないわ! 皆をどうにかしたいなら、おねーさんを超えてみせなさーい!!」
であればドクターは聖獣達に指示をだし、効率的にイレギュラーズに攻撃を加えんとする――が。その動きに立ちはだかったのがガイアドニスであった。ルゥくんが近くにいない――もしかしたら外の方に向かったのかもと――なんとなし勘付いていたガイアドニスは、五感の全てを眼前に集中。
味方に放たれんとする攻撃から庇う盾となろうか。
さすれば彼女は崩れない。外に比べて聖獣の戦力が薄い事もあってか、正に堅牢なる存在だ。そして。
「ドクター。欲望の儘に行動するのなら――報いを受けてもらおうか」
「此処で終わらせてもらうよ。どうしても、ね」
ガイアドニスが止めれば、ドクターへ直接攻撃を届かせんとするのがヴェルグリーズにシルキィである。シルキィが、今度は敵のみを払う光をもってして道を作らんとすれば――ヴェルグリーズが跳躍。
刹那に距離を詰めて数多の斬撃を紡ごうか。
聖獣よりも指揮を執るドクターが倒れればここでの戦闘は終わったも同然だ。
攻撃手として往くヴェルグリーズの一撃に容赦はない。
一刻も早く彼を倒さんと――振るうものである。
「報い? 報いだと? 誰も彼もこの世は自らのエゴによって生きているだけだろう。
私は子供達の腹を捌けども無為に殺したことはない――私は悪なのか?」
「その子供達を治し、再び戦線に向かわせ、重体を期待する心は少なくとも清らかではないだろう」
然らばドクターも抵抗するものだ。治癒術を振るいて聖獣達を援護しながら、なんとかヴェルグリーズの猛攻を凌がんとする――ドクターは確かに人を治しているのかもしれないが、しかし。やはりヴェルグリーズにとっては認めがたい。
ドクターの心には何もない。肉の塊を捌く欲しか。
「……ドクター。貴方がどう思っているにせよ、子供たちの命を救ってきたことが間違いだなんて思わない。それに、わたし達が正しいなんて思わない。でも、こんな考えも押し付けなんだから……わたしはわたしのエゴで、貴方達と戦うよぉ」
或いは……と、言うはシルキィだ。
結果だけで言えばドクターの行いは悪ではないかもしれない。彼の治療によって救われた者がいるのも事実なのだから――その果てには、またファルマコンの為の戦いが待っているとしても。
だけど放っておけないんだ。
この街も。子供達も。そしてドクターの行いも。
だから。
「――いくよぉ」
シルキィは紡ぐ。全霊の力――蚕の魔導を。
両手から顕現した魔力の糸が純白となりて襲い掛かる。
生命力の循環を断つ力を宿した一撃はドクターの動きを奪いて――
「くっ……! こんな程度で、追われるか! 私はまだ……!」
「いや。もう態勢を立て直させたりなんかしねぇ。終わりだ……どうせ、な。お前も俺も罰が当たるンだよ、必ず。だったら俺がお前を地獄に引き摺り落としてやる」
「そーね! 諦めも大事、ってやつなのよ! か弱いドクターさん!」
然らばドクターは糸から抜け出さんと魔力を己も収束させようか。
糸を切りて抜け出すのだと……しかし、レイチェルにガイアドニスの一撃が舞い込んだ。
古の儀式魔術を形とし魔を封滅する破邪の結界を――此処に。レイチェルがかの魔術をドクターの『手』へと叩き込めば、ガイアドニスが繰り出すのは貫きの意思。動き鈍りしドクターでは斯様な攻勢を凌げるだけの力はなく……
「医者の不養生って知ってるか?
もうちょい、自分の在り方にも気を使ってれば――マシな結末もあったろうにな」
そして。トドメとばかりに――連続的に動いたシラスは追い打ちの一閃を紡ごう。
無駄なき跳躍。速度の儘に振るわれるソレは天を裂く雷光の如し。
――撃ち抜く。ドクターの治癒術が新たに形成される前に。
全ての意識を暗転させてやろう。
「う、うわあああ! ドクター! ドクタ――!!」
「子供達か――アレも、とりあえずは気絶させておいた方がいいだろうな。
聖獣に関しちゃ……放っておくわけにもいかねえのが実情だが、な!」
さすれば防衛の一手を担っていた子供が一人、騒ぐものだ。
大人がいなくなりて混乱に駆られたか――まぁ。子供達は気絶させればいいとして……問題は聖獣の方だ。魔物たる身である聖獣に関しては、気絶のラインが些か難しい……故にシラスは覚悟をもって聖獣へと近付こうか。
介錯ってやつだぜ――苦しむよりも、解放される祝福を此処に。
「ドクター君も無力化できたわね! よし、となると……やっぱり後は外の方かしら!」
「此処に集まった戦力を見るに――やはり外の方が厳しい状況かな。急ごう」
「そうだねぇ……私達が向かえば、数の上でも犠牲は防げるかも」
そして内部戦力を鎮圧出来れば、ガイアドニスは元来た道を振り返るものだ。ヴェルグリーズは外の方に戦力が集中している事と……未だ戦闘が継続している気配を感じ取りシルキィも同意する。
外へ急ごうと――数が整えば不殺の為の余力が生まれ犠牲者を少なくできるかもしれない。
「だが、嫌な臭いは晴れねぇな……」
と。刹那、レイチェルは紡ぐものだ。
周囲に蔓延る『嫌な臭い』は未だ続いている、と。
アドラステイア。その上層に至りて、最もこの街の深淵に近づいているのかもしれなかった……
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ。
アドラステイアの上層での戦いの果てにあるのは――さて。
ありがとうございました。
GMコメント
●依頼達成条件
『ドクター』『ルゥ・ノイール』の撃破・撃退
●フィールド
アドラステイア上層部です。一見すると普通の都市で、美しい街並みです……が。どこか焦げ臭い・生臭い・気分が悪くなるような匂いが蔓延しています。
これはファルマコンの力の様です。
『此処(上層)で死亡した人間を贄(養分)として摂取する』効果が存在しています。
皆さんに担当して頂く戦場は、上層の一角に存在する教会です。
この教会は医療施設としても機能していた地の様です。
それなりの広さを持ち、周辺を『オンネリネンの子供たち』や『聖獣』によって警護されています。しかしそれらの警備戦力はいずれも残党な類であり(詳細は後述します)広い教会の警護に十全と言える様な数ではありません。
皆さんはシナリオ開始時、まだ発見されていない状態で教会周辺に潜んでいますので、そのまま隠れ潜みながら内部に進む事も出来るかもしれません。或いは誰かが囮となって騒ぎを起こせば他の面々が進む助けにもなるでしょう。
後述するドクターは教会の中枢域にて一部の警備戦力と共にいます。
ルゥ・ノイールの位置は不明で在り、どこかに潜んで皆さんを奇襲せんとしてくる事でしょう。
天候としては雪が降っていますが、主戦場は教会内部になると思いますので天候による影響はほとんどないでしょう。
●敵戦力(撃破・撃退目標)
・『ルゥ・ノイール』
新興組織【新世界】で【暗闇(オプスキュリテ)】の名を持つ者。
過去、旅人により何もかもを失ったようで酷く彼らを恨んでいます。新世界の一員として、暗殺・証拠抹殺・仲間への連絡を担当しています。旅人への恨みから磨かれた技術は鋭く、その一刺しは急所に至れば甚大なダメージを与える事でしょう。
以前アドラステイアのシナリオ『信仰者達の山狩り』で登場した人物ですが、必ずしも読んでおく必要はありません。
・『ドクター』
アドラステイアでは数少ない大人側の人物であり『ドクター』とも呼ばれている若い男です。子供達の治癒などを担当しているのですが――それは汚れていない子供の手術こそが『趣味』であるからで、子供達への情などによるものではないようです。
医療、医術に優れた人物の様で治癒系統のスキルを所持している様です。また毎ターン開始時、R2範囲内に存在する味方のHPを回復するリジェネ的な魔術をも有しています。これは以前よりも強化されている様です。
これは『ドクター』の特殊なパッシヴ扱いの様です。致命などで効果を防ぐ事は可能です。
直接的な戦闘能力は決して高くない様です。治癒・支援が主でしょう。
常に自らを聖獣などに守らせています。
以前アドラステイアで行われた作戦『<ディダスカリアの門>Medice, cura te ipsum.』で登場した人物ですが、必ずしも読んでおく必要はありません。
●敵戦力(防衛戦力)
・『オンネリネンの子供たち』残党×10
アドラステイアの傭兵部隊です。戦闘員は子供たちのみで構成されています。
中層に本部があったのですが、イレギュラーズ達の攻撃により壊滅状態に陥った為に、此処にいるのは残党になります。ただ戦闘訓練を受けている為、子供とは言えそれなり程度の戦闘力を宿しています。
剣や銃を持ち、皆さんに抗ってくる事でしょう。
彼らは洗脳されています。未だ『アドラステイアは家族たちの家』と、強く認識している事でしょう。その為、言葉だけで留まる様な事はないと思われます――
多くの者達はイレギュラーズの攻撃に備え、教会周辺を警戒しています。
ただ、教会自体が広いので結構散らばっている様です。
教会内部に敵がいると判明すれば、慌てて教会内部に戻って来ることでしょう。
・『聖獣』×20
魔物の一種です。ですがアドラステイアでは(特に子供達を中心に)聖なる存在だと教えられています。虎に翼が生えたかのような個体がこの場には多い様です――
聖獣は、実は人間に『イコル』を長期あるいは過剰摂取した際に聖獣となるので元人間です。聖銃士には秘匿されています。イコル製造を担っていた実験区画フォルトゥーナの消滅により数は減っている様で、この場には残存を掻き集めている様です。
ほとんど使い捨ての様に動かされます。
残念ながら助ける手段はないでしょう――撃破してあげてください。
多くの聖獣はイレギュラーズの攻撃に備え、教会周辺を警戒しています。
ただ、教会自体が広いので結構散らばっている様です。
教会内部に敵がいると判明すれば、教会内部に戻って来ることでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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