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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>Permixtis omnibus coloribus facit nigrum

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鬼の末裔と色使い
 時は戦国嵐の時代。バルナバス新皇帝即位における鉄帝国の混乱は無数の派閥の群雄割拠を生んだのである。
 かくして北辰連合(ポラリス・ユニオン)に属する形で新皇帝派及びノーザンキングスからの攻撃を凌ぎ続けることになった特殊な元ヴィーザル系部族、『鳳自治区』もまた戦乱に晒されている。
「おいチョット待て。僕も鬼楽側なのか? いくらひとまとめになったっつっても、他にイ奴いるだろーよ」
 大剣を地に突き立てるようにささえ、軍帽から流れる長い紫髪を指でいじる篠崎 升麻(p3p008630)。
「仕方在るまい。敵の情報が確かなら、貴様等『篠崎家』も無関係とは言えん」
 首をこきりと鳴らし、どこか尊大な態度で言う小刀祢・剣斗(p3p007699)。
 彼は証拠でも示すかのように、懐から依頼書のスクロールを取り出して見せた。

 『鳳自治区鬼楽にて暴徒発生』。
 これだけならば、昨今は季節の虫と同じくらいの頻度で見かける事件である。
 しかし気になるのはその内容であった。
 暴徒を名乗る集団は『色』の魔術を行使し、専門家である篠崎升麻の調べによれば篠崎家に伝わるはずの術式が使われていたと判明した。
「言っとくが僕はかんけーねえぞ。まだ領地は持ってないとはいえ仲間の領地を襲うようなバカなまねはしねー」
「当然、分かっているよ。君がそんな愚かなヤツだなんて、誰も思っていやしない」
 時任 零時(p3p007579)はキセルをくわえ、煙をゆっくりと吸い込む。
 そしてため息のように吐き出して、遠くを見る目をした。
「怪しいとすれば『技術部』の連中だろうね。鳳王を倒したことで解体したし、技術顧問も死んだ。けれど、同時に喪失してしまった技術がいくつもある。
 見たことはなかったかい? 伎庸を占領していた兵士の中に、『色使い』がいたことを」
「…………」
 升麻はチッと舌打ちをした。
 同時に、伊佐波 コウ(p3p007521)が目を伏せる。
 『黄泉軍計画 技術顧問』無黒木 楓。彼は死別した姉を取り戻すため禁断の屍術に手を染めた。しかしそれは鳳王によって彼の技術と才能を大量のアンデッド兵士を作り出す計画に利用されただけであり、彼は決して姉に再会することなどできなかったのだ。
 コウもまた、そんな計画のためにあてがわれた人形にすぎない。しかし、今感じている気持ちは、抱く願いは、そして湧き上がる怒りは本物だ。
「黄泉軍計画に副案があった……ということか」
「遺伝によるところの覆い『色使い』を量産することで強力な兵を生み出すと?」
 魔術に関して、剣斗の里――つまり鬼楽はひとつ秀でていた。
 戦争をいつまでも続けたい鳳王と、死を吸い永遠の若さを得たい鏡の魔女による、仕組まれた戦争。
 両者の望むものはより過激な戦いであり、より過剰な兵力だ。かの『鏡の魔女』が一枚噛んでいたとしても不思議ではない。なにせ、アンデッドを鳳圏側に大量運用させるより、強化人間を大量運用させたほうが『死を吸う』というタスクを満たしやすいのだ。
 腕組みをして首をかしげる零時。
「しかし、残党がいると仮定してどうやって補給を受けた? 技術部は既に解体されているし、鳳圏も鬼楽もそういった部門は全て排除した筈だよね」
「それを調べるために我々が呼ばれたのだろうよ」
 剣斗はマントを靡かせるかのように上着を風にはためかせると、西の大地を睨んだ。
「襲撃は定期的に行われている。次にやってきた連中を倒し、捕らえ、情報を絞り出す。準備しておけ」

GMコメント

 いよいよ始まりました鉄帝編ストーリー鳳圏サイド。
 勿論、鬼楽・伎庸も包括してのストーリーとなっております。
 今回の事件はかつての伎庸奪還作戦の折にチラッと見たけどそれ以降なぜか姿を見せなかった『色使い』にまつわる事件。
 鳳圏の篠崎家でしか伝わっていなかった『色使い』が量産されるという事態の裏には、おそらくなにかしら組織的な動きが関係しているはず。
 次の襲撃にて彼らを倒し、捕らえましょう。

●ロケーション:鬼楽領
 一度帝国に吸収されたうえで小刀祢・剣斗に割譲、管理させている領地です。
 国家はローレットに手を出さないお約束のため実質的な独立地であり、現在は北辰連合に属するカタチになっています。
 ここへ定期的に『色使い』にる襲撃が起こり、物資の略奪が行われていました。
 ギリギリ迎撃はできているのですが、できているからこそ次はもっと大きな戦力を用意してくるでしょう。
 以下はちょっとメタになりますが次の襲撃直前にファミリアーかなんかで偵察して得た情報を含んでいます。

●エネミー
・『色使い(正式名称不明)』
 真っ黒な制服に身を包んだ一団で、腕に紫の腕章を付けています。
 よぉーく見ると胸に何かの紋章がついているのですが、倒したりつかまえたりすればあとでじっくり調べられるでしょう。
 彼らは『色』の魔術を行使し鳥や花といった形をなした色のエネルギー体を生み出しレンジを問わない攻撃や自らの強化、自己回復といった隙の無い戦闘を行います。

・天衝種(アンチ・ヘイヴン)
 ヘイトクルー(人間型)や飛行タイプなどのモンスターが随伴しています。
 おそらく前回の襲撃失敗に対しての追加兵力なのだと思いますが、追加兵力が天衝種って時点で滅茶苦茶怪しいです。
 また、モンスターは通常種に対して鎧や武器を追加装備させたEXタイプが混ざっており戦闘面で結構厄介になりそうです。
●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>Permixtis omnibus coloribus facit nigrum完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
伊佐波 コウ(p3p007521)
不完不死
時任 零時(p3p007579)
老兵は死せず
小刀祢・剣斗(p3p007699)
新時代の鬼
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
篠崎 升麻(p3p008630)
童心万華

リプレイ

●色なき色使い
「おいおい。一体、どこの誰がこんな事を続けてやがる……?」
 『童心万華』篠崎 升麻(p3p008630)はいらついた様子で大剣の柄をコツンと叩いた。
 地面に深く突き刺さったそれは、まるで墓石のごとく自立している。その柄を改めて握り、片手で一気に引き抜いた。
 彼(あるいは彼女)の腕力もさることながら、全身を一瞬覆った紫色の力がこの怪力をもたらしていることは想像に難くない。
 升麻にとって『篠崎家』自体に執着はない。彼らが何かしらの陰謀によって死ぬより酷い目にあったとて、笑ってざまあと言えるやもしれぬ。だが『姉』だけは別だ。
 自分を庇い、命を繋いでくれた姉は升麻とって家族であり、『篠崎』の名を汚したくない充分な理由になりえた。
「実に、困ったものだね」
 ありもしない壁によりかかり、腕組みをしてこの12月に半ズボンを見せつけるというなかなか冒涜的な格好をした『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が、流し目で振り返った。男女問わず目を奪われてしまうような膝であり、そして顔立ちである。
「ボクのところでも同じような奴らが出たらしい。ボクが扱う技の一部と似ているとかで、ボクの関与を疑われてまあ面倒で」
「…………」
「いや、ボクじゃねえよ?」
 升麻の疑わしげな視線にNOを返すセレマ。
「だが興味はあるね。兵を強化するなら普通やるべきは一般的な魔術や武器をもたせることだ。ボクの収める鬼楽領地でもそうしているしね」
 セレマは鬼楽でも英雄として知られる。そんな彼が指導し教育した兵は精強だった。仮にそうでなくても、特別にデメリットを要するような武器や魔術を与える必要はない。たとえば『悪魔との契約』のような。
 しかし例外はある。悪魔が目の前にいて、アサルトライフルや炎の魔術書よりも用意かつ大量に力が手に入る場合だ。
「『あの男』の残した研究にそれだけの価値があったと……?」
 『不完不死』伊佐波 コウ(p3p007521)はライフルを地に突き立てるように持ち、鋭く目を光らせる。
「随分と厄介なものだな。だが奴も多少なり関係しているのであれば到底無視は出来ん。
 自治区に住む者たちを守る為にも自分も介入させてもらうぞ!」
「『アラクラン』だの、『黒百合の夜明け団』だの胡散臭い連中がどうにも暗躍しているからねぇ。そういったものが絡んでいる可能性もあるしねえ……ま、我(アタシ)に胡散臭いと言われりゃあ世話ないか。ヒヒヒ!」
 一方で、相変わらずの様子で笑う『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
 セレマにしろ武器商人にしろ、一般人とはとても言えないような集団がこうして集まってくるあたり、鬼楽はそうとうにヤバイ土地と言えるだろう。
 こんな場所を襲ってくるのはよほど追い詰められた(食い詰めた)人間か、よほど自分に自信があるか、あるいはヤバイ人間にこそ興味があるかのいずれかだ。
 そしてヤバイヤツの筆頭であるところの『新時代の鬼』小刀祢・剣斗(p3p007699)はギラギラとした笑みを浮かべて腕組みをした。
「全く……我らが鬼楽の地で悪しき暗躍を行う不届き者達が居るなど言語道断!
 巫女王様からこの地を任されている者の一人としてその様な連中は一掃してくれよう!
 それに色使いが『鏡の魔女』の力を多少なりとも受けているのなら捨て置けん。身内としてな。
 ともかく! 此度の襲撃、「愛」と「勇気」と「正義」で持って鎮圧してくれよう!」

「天衝種といえば新皇帝派であるなぁ……」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)はぼんやりとそんなことを呟いた。
 昨今の情勢を見るに、天衝種を使役してブイブイ言わせるやつがいるとしたらそれは大抵がバルナバスの支配を受けた新皇帝派勢力である。逆に言うと、そうでない勢力が天衝種を飼い慣らした事例を見たことはない、はずだ。
「やはり今回も『それ』がらみか」
「鉄帝での動乱の余波で、鬼楽が不安定になったのを見て残党が挙兵した、というところかしら? でもそれにしては……ですわよね」
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が最初に想像したのは鳳圏の動乱の裏にあった勢力の残党が新皇帝派に加わったという構図である。
 しかし、あの戦いの最後になって敵側に居たのは鳳王と鏡の魔女。それ以外はトバリが持ち出したものと同種のアンデッド系魔術による屍兵ばかりだった。
 人間側の勢力は殆ど味方だったし、実際今もそれぞれの領内で生活しているはずである。
 鳳圏技術部の連中はそれ以前に全滅した……とみていいはずのだ。
「この場合、人間が残って拾われたと考えるより『技術だけが残った』と考えるほうが自然かもしれないね。
 あの部署は解体されたし、技術も封印されたはずだ。よしんば持ち出されたとするなら。持ち出した誰かがいないとおかしい」
 やれやれといった様子で『特異運命座標』時任 零時(p3p007579)が肩をおろす。
「もうゴタゴタはおこってほしくなかったんだけど。実際に起こっているなら解決していかないとね」
 いずれにせよ、戦って捕まえるほかなかろう。零時は肩をぐるぐると回し、再び戦場に立つことにしたのだった。まだまだ隠居はできそうにない、と。

●翼なき身なれば
 鳳自治区鬼楽系領地。そこを襲った推定『色使い』たちの襲撃方法はいつも決まっていた。ゆえに対策も容易に立ったのだが、その方法というのが大きく分けて三つだ。
 第一段階。二台の改造ジープにトレーラーを接続したものを運転し、領地のバリケードを強引に突破する。
 第二段階。ジープに乗った推定『色使い』が展開すると同時にトレーラーに乗せていたモンスターを解放。モンスターが暴れている間に物資倉庫までジープで乗り付け、周囲に威嚇攻撃を続けながら物資を持ち出す。
 第三段階。モンスターを捨て駒にし、空になったトレーラーに領地の物資を積み込んで撤退する。領地の防衛戦力はモンスターの撃破に手間取り、追跡の余裕を失う。
 なかなか手際がいいが、毎回モンスターを捨て駒にするので効率は悪いはずだ。物資を奪ったといっても相当数のモンスターと引き替えにするには少なすぎる量である。
 つまりは、彼らが物資を得ることではなく、領地から物資を失わせることが主目的だととらえるべきなのだ。生産能力に対する攻撃、なのである。
 ゆえに対策は簡単。
「自分達が『バリケード』になればいい」
 コウはライフルを射撃姿勢で構え、その隣では武器商人が両手を腰の後ろでくんで悠々と立っている。
 暫くまっていればジープが土煙をあげて迫ってくるのが見えた。
「さあ――」
「はじまるねぇ」
 コウによる射撃は当たらない。ジープの装甲に弾かれるか土をはねるかだ。
 武器商人のほうはあえてなにもせず、待ちの姿勢をみせている。
 相手はこちらを威嚇するつもりなのか、アクセルを踏み込んだらしく速度をあげた。
 そして――二人を撥ねた。
「なっ――!」
 速度をあげて迫れば慌ててよけると思ったのだろう。予想をはずされ焦った表情を見せる『色使い』たち。
 使っているような軍用のジープだ。人をひとり撥ねたくらいでこわれたりはしないが――。
「乗っている人間はどうだろうねぇ――ヒヒヒ!」
 回転し宙にほうりだされながら、武器商人はやっと言葉と――そして術を発した。
 影響下に入れば意識を持って行かれるような術だ。
 なんとかレジストした色使いたちはジープのブレーキを踏み、素早く展開。纏めて攻撃されてはたまらないからだろう。散開しつつトレーラーに乗せていたモンスターを解放しはじめた。
「おいおい。『色』の魔術って言うから楽しみにしていたのに、そんなんじゃあ子供のお遊びじゃあないか。蒐集のしがいも無いな。ヒヒヒヒヒ!」
 術中に落ちた色使いの攻撃を正面から受け、無限に復活を続ける武器商人。
 これを打破するのはただただ面倒だと判断してか、あるいは直接的な邪魔にならないなら排除を後回しにすべきと判断してか、色使いの一人がモンスターと周囲に指示を出した。
「指揮官か。連携されているな」
 コウは援護射撃を行いながら味方の盾になれるように移動。先ほど撥ねられたというのにまるで何事もなかったかのように立ち上がり、戦闘に加わるようすは敵からすればなかなかの脅威だろう。
「おや? 今日はよく『属性』が被る日だ」
 セレマはなにごとかぼやくように言うと、色使いのひとりに向けて微笑みをぶつけた。
 そう、『ぶつけた』と表現するにふさわしい心理的衝撃をもって、色使いの意識を自らに引き寄せたのである。
「ところで彼ら、【必殺】系の攻撃手段は持っているかな?」
「少なくとも僕にはねえな」
 升麻が剣を担ぎ走り出す。セレマは『ならよさそうだ』とこともなげにいいながら、色使いのコンバットナイフを自らの胸でうけた。深々と突き刺さるナイフ。血が広がりこぼれ落ちる……その寸前に、血がまるで巻き戻し映像のようにセレマのなかへと戻っていく。
「一生そいつと遊んでな!」
 升麻はギラリと笑うと『金糸雀』の色術を発動させた。
 剣に宿った金糸雀の色が、振り抜くその衝撃によって羽ばたくように飛んでいく。
 散開した色使いたちのうち数名がそれに巻き込まれ、何人かは吹き飛んでいく。
 ヘイトクルーや飛行型のモンスターに命令を出し升麻を襲わせつつ、黒い色術をナイフに纏わせて放ってくる。
 それらの攻撃を受けるのはコウたちの役目だ。
「先輩様方にゃぁ、まだまだ及ばねーが。だからと言って、モドキ如きにやられる僕じゃねぇんだよ!」
 升麻は笑い、第二の術を発動させる。
 一方で、百合子は色使いの一人へと急接近を書けた。
(色が云々は分からぬが、吾も花を背負えるし鳥と共に歌う事も出来るぞ。
 つまり大体似たようなものであろう。
 であるならば、吾の速度にもついてこれるはず!)
 豪速で繰り出された百合子の拳――を、相手は黒い百合の花が散る色術によって減速。花びらを纏うことで身体に色を宿らせ、百合子の拳を片手でキャッチした。
「……ほう」
 直後繰り出される蹴りを百合子は舞う蝶と小鳥、かかる虹を纏いながら華麗に避けると、相手の腹に掌底を撃ち込んだ。
「だがまだ遅い。立てるか? そうか、それは嬉しい!」
 百合子はよにも美しく笑うと、色使いと猛烈な殴り合いへと発展した。
「アレについていける自身はないなあ。若いねえ」
 零時は苦笑しつつ、ヴァレーリヤと剣斗の様子をみやる。
 ここは色使いを優先して攻撃すべきだが……相手もそれを分かっているようでヘイトクルーたちモンスターを前に出して集中した射撃を浴びせる戦法を選んだようだ。
「さて、働くとしようかね」
 零時は周囲の仲間を強化するような気を放つと、ヘイトクルーたちの集中砲火をうけつつあるヴァレーリヤへと治癒の気を放った。
 両手を揃え突き出すようにして放たれた波動をうけエネルギーを回復させたヴァレーリヤは自らを纏う聖なる障壁の強度を回復させる。
 ひび割れた強化ガラスのようになっていた障壁からヒビが消え、美しい紋様が舞うように動き始める。
「モンスターたちが邪魔ですわね。こういうときは……!」
 ヴァレーリヤはブンとメイスを横薙ぎに振ると、刻まれた聖句を太陽のように光らせる。
 そして勢いを殺さぬままに身体を一回転させ、大地めがけてメイスを叩きつけた。
「――『どうか我らを憐れみ給え』!」
 吹き上がる衝撃と波。それはヘイトクルーたちを吹き飛ばすのみならず、その後ろから射撃を浴びせようとしていた色使いたちを巻き込んで破壊する。
 色術によって黒のスケルトンを立たせ盾にしたようだが、ヴァレーリヤの放った衝撃はそれもろとも相手を吹き飛ばしてしまう。
「はーはっはっは! 俺こそは「剣の小刀祢」が一人、小刀祢・剣斗! 鬼楽の守護者として貴様らのような卑劣な略奪者などには負けん! 我が剣の錆にしてくれる!」
 こうして相手の陣形を破壊してしまえば後はらくなものだ。
 剣斗は笑いながらモンスター達の間を突っ切り、退こうとする色使いを捕まえて自らの剣を繰り出した。
 色術によって黒い刀身をナイフから伸ばし防御する相手だが、猛烈な勢いで連撃を繰り出す剣斗のそれを防ぎきることはできない。
「終わりだ」
 ドッという音がするほどの威力で、剣斗は相手の腹を蹴りつける。

●黒百合
「さて貴様らは何故我等が鬼楽の地を襲う?
 目的とその「色」の力の出所…そして『鏡の魔女』との関係を吐いてもらおうか?
 なに、俺は優しいからな、情報を吐いてくれるなら丁重に扱おう」
 倒した色使いのうち数人を生かしたまま捕らえた剣斗たちは、早速彼らへの尋問を開始した。
 武器商人やヴァレーリヤたちにぐりぐりされながらする質問はさぞかし答え甲斐があったようで、彼らのはいた情報をコウがメモにまとめていく。
 零時はその様子を一通り眺めてから、ちらりとセレマと升麻へと視線を移した。
「二人は何を?」
「持ち物検査、かな」
 セレマは色使いの制服をまるごとひっぺがし、肩についている紋章を調べていた。
「ふむ……」
 幾何学的だが複雑な紋章だ。十字に交差した黒い印。それぞれの端には五芒星が描かれ、中央には花。
 セレマの印と似たようなイメージもないではないが……。
「いや、ボクじゃねえよ?」
「まだ何も言ってねえ」
 升麻が紋章をひっつかむ。
「色術に使う術符に似たようなマークがいくつかあるな。つっても、ここまで黒一色じゃねえし花も五芒星もねえ。なんかの魔術とのブレンドってところだろうな」
「待て」
 百合子が二人の間からぬっと顔を出す。
「この紋章の中央。黒百合だ。それに見ろ」
 百合子が紋章に描かれた文字と幾何学模様を一定の順番で指さしていく。
 ある程度の『美少女知識』がない者には読み解けない幾何学暗号だ。
 それによると――。
「――『黒百合の夜明け団』。アレイスター・クロユリーか!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 襲撃の影にひそむ黒幕の正体が、どうやら明らかとなったようです……

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