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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>兵站潰して接収しよう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 鉄道都市ボーデクトン。
 鉄帝にあるこの都市は、帝都スチールグラードから見て西側に位置している。
 現在、この街は新皇帝派である軍部特殊部隊『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』により制圧されていた。
 もっとも、英雄と名乗っているが実態は愚連隊でしかなく、ある意味烏合の衆だ。
 そのため、制圧した街の警護は雑でしかない。
 現状が支配でも統治でもなく、制圧でしかないことが物語っている。
 つまり、気付かれずに街の中を動き回ることも出来るのだ――

(納品に来たって所かな?)
 物資が運び込まれる建物を、恋屍・愛無(p3p007296)は少し離れた家屋から隠れて見ている。
(色んな街を荒らして手に入れた資材を卸しに来たってわけだ)
 状況を推測しながら、愛無が視線を向けているのは、30代の男。
(元手は掛けずにボロ儲け、って顔してるな)
 新時代英雄隊を相手に、にやにやと笑いながら代金を受け取っている男は、手配師と呼ばれている。
 元々は囚人らしいが、現在の皇帝勅令で自由の身となり、略奪を行う野盗などに物資を手配しているようだ。
(貯め込んでる資材をかっぱらおうと思ってたけど、いったん戻った方が良いかな?)
 想定外の状況に、愛無は思案した。
 愛無が今この場にいるのは、少し前に受けた依頼の縁だ。
 とある街を襲撃した野盗を撃退したのだが、そいつらに武器などを卸していたのが手配師。
 捕まえた野盗を締め上げた話では、鉄帝の混乱につけこんであちこちで奪った物資を元に幻想から武器を仕入れ、野盗などに売って回っているらしい。
 それを聞いた依頼人のリリスは――
「ろくでなしが人様から盗んだ物を世の中に還元しましょう」
 ということで、手配師が貯めこんでいる資材をかっぱらおう、という話になり、その前段階の調査依頼を愛無は引き受け、今ボーデクトンにいるというわけだ。
(手配師1人ならともかく、愚連隊もどきも沢山いるし……物資を取り返したあと運ぶ人手もいるから、いったん戻ろう)
 周辺の地形や建物の配置を確認したあと、愛無は依頼人の元に戻った。すると――

「襲撃しましょう」
 ボーデクトンの地図を広げながら決定した。
「資材が運び込まれていた建物があったのは、ここで間違いないかしら?」
 愛無は示された箇所を確認し応える。
「間違いないよ……それよりこの地図、どこで手に入れたの?」
「鉄道の整備を請け負っている街があるんですが、そこの人達から教えて貰って作りました。少し前に依頼を受けて協力したことがあったんですが、その時の縁で今もやりとりしてるんです」
 愛無に応えたのは、依頼人の1人であるヴァン。
「ボーデクトンは鉄道都市ですからね。仕事の関係でよく訪れていたそうです」
 地図に愛無から得た情報を書き込みながら、ヴァンは説明を続ける。
「資材が運び込まれていたのは、ボーデクトン市街地の北部にある倉庫ですね。本来は鉄道の機材や備品を保管するための物らしいですが、今は新時代英雄隊が兵站用の倉庫にしているみたいです」
 件の倉庫を赤ペンで囲むと、幾つか矢印を引いて話を続ける。
「倉庫から都市中央の軍事基地や市庁舎に繋がる道路が整備されているので、いったん集めた物を配る役割がある筈ですが、話を聞いた限りでは動きが鈍いですね」
「どういうこと?」
 愛無の疑問にリリス達は応える。
「ポッケないないするのに忙しいんじゃないかしら」
「新時代英雄隊って、実体はゴロツキの集まりみたいなものですからね。横領とかしてるんでしょう」
「それに手配師が加担してるかもしれないわね」
「支払いの形で手配師が一端プールして、そのあと見かけ上の帳尻を合わせて出た差額を賄賂として渡す、ぐらいはやってそうね」
 そこまで言うと、リリスは話を纏めるように言った。
「とにかく今回の目的は、収奪された物資の確保。わざわざ1か所に集めてくれてるんだから、面倒が省けて良いわね」
「それと同時に、倉庫を守っている新時代英雄隊を殲滅し、ボーデクトン攻略の助けに繋げましょう」
「ボーデクトン攻略?」
 聞き返した愛無に、ヴァンは説明する。
「帝政派で、ボーデクトンを攻略しようという動きがあるんです。それに乗っかりましょう」
「近い内に作戦が開始されるみたいだから、それに合わせて襲撃しましょう。ローレットに協力依頼を出すつもりだから、予定が合えば力を貸してくれない?」
「分かった。考えておく」
 地図を見ながら応える愛無だった。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回は、ボーデクトン攻略作戦に関連するシナリオになっています。

以下が詳細になります。

●成功条件

倉庫を守る新時代英雄隊を倒し、倉庫にある物資を持って帰る。

●状況

今回は、以下のような流れで進みます。

1 倉庫の周辺で配置につく。

倉庫の近くには家屋があり、50mぐらいに近付くまで気づかれずに接近できます。

倉庫を囲むようにして家屋があり、どの方角から進攻するかは自由です。

2 倉庫を守る敵に近付き、戦闘開始。

どういう布陣で、どのようなタイミングで戦うかは自由です。

少人数で注意を引いた所で、後方から襲い掛かる事も出来ますし、全員が一度に一塊になって突撃するのも自由です。

3 敵を倒し、倉庫にある資材を持って帰る。

依頼人が蒸気トラックを用意しているので、それに乗せて持ち帰れます。

運転手も用意されてますので、運転する必要はありません。

運転手は非戦闘員なので、戦いが終わるまでは少し離れた場所で待機しています。

倉庫の近くに、敵方の蒸気トラックがありますので、それに乗って持って帰るとかも出来ます。

●戦場

倉庫を中心として、周囲に資材置き場の広場が円状に広がっています。

平地ですので、戦闘に支障はありません。

●敵

倉庫の出入り口に、10人程度の新時代英雄隊がいます。

完全にだらけた状態なので、動きが鈍いです。

それ以外にも、倉庫の中に何人かいるかもしれません。

新時代英雄隊は、実態は愚連隊のような集まりのため、1人1人はあまり強くはありません。

1人2人、リーダー格で強いのがいるかも? ぐらいです。

●その他

手配師と呼ばれる男が、新時代英雄隊の横領に手を貸しています。

勘が鋭いので、戦闘より少し前に危険を感じ取って蒸気トラックに詰め込めるだけ物資を詰め込んで逃げてます。

●特殊ドロップ『闘争信望』

当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度

このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <大乱のヴィルベルヴィント>兵站潰して接収しよう完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
倉庫マン(p3p009901)
与え続ける
囲 飛呂(p3p010030)
君のもとに

リプレイ

 倉庫の入口でたむろしている新時代英雄隊。
 だらけた様子で警戒を怠る彼らを、『ノブレス・オブリージュ』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は遠目で確認していた。
(手配師は……居そうにないな)
 依頼人から似顔画を見せて貰ったシューヴェルトは、目の前の敵の制圧だけでなく、その先も考えている。
(放置は出来ない。あいつらを潰すのは当然として、可能であれば手配師に関するさらなる情報を得たい所だな)
 先のことを考えながらも、今やるべき事は手を抜かない。
 敵を引き付ける囮役として、仲間の配置が完了する時間まで待っている。
 同じように囮として配置についている『与え続ける』倉庫マン(p3p009901)は、戦闘以外のことが気になっていた。
(あの様子だと、まともに倉庫を整理してませんね)
 倉庫と聞いて思わず依頼に参加した倉庫マンだが、実際は整理や補充ではなく強奪。自分の本分から外れているような気もするが――
(……問題はありません。きっちり、需要を果たして参りましょう)
 戦闘前に関係ない思考はカットし集中する。

 囮役が配置につく中、奇襲役も準備を終わらせていく。

(やれやれ、まさか俺がヴェルスに与することになろうとはね)
 昔捕虜になった事のある『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)だが、それは一先ず棚上げしている。
(苦しんでいる人がいるなら、やるべきことをやろうか。きっとそのための力なのだから)
 自分の力の使い所を意識しながら、史之は配置につく。
 そこから少し離れた場所で、家屋に隠れるようにして配置についているのは『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)。
(あれから更に集めたみたいだな)
 事前偵察をしていた愛無は、荷物が載せられた蒸気トラックが増えているのを確認し決意する。
(カエサルの物はカエサルに。良く解らん格言だが。奪われた物は奪う)
 当然、抵抗されるだろうが――
(邪魔するなら蹴散らす。手っ取り早く、この国のやり方に倣うとしよう)
 敵が怪我をしたり死んだとしても自業自得。
 ましてや目の前の敵は、収奪した物を、さらに自分達の懐に入れようとしている輩だ。
 放ってはおけないと、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)も思っていた。
(どの組織にも横領とかで私腹を肥やす様な連中が居るものね)
 呆れたように、遠目に新時代英雄隊を見ながら思う。
(とりあえず、その横領した物は強引に接収させてもらうわよ)
 少しでも被害者の元に戻れば良いと思いながら、配置につく。
 その間も、新時代英雄隊のだらけぶりは変わらない。
 倉庫番を任されてる以上、それなりの能力がある筈なのだが、そうは見えない。
 単純に物資を集める能力が評価されたのかもしれないが、実際の所それを実現していたのは手配師だ。
 なので出来れば捕縛したい所だが気配すらない。
(完全に逃げてるな)
 状況から、『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は判断する。
(手配師を潰したい所だが、逃げちまってんなら仕方ねぇ。奴とズブズブの奴らを徹底的に潰して、取引先を減らすまで)
 時に絡め手も有用だ。
(風が吹けば桶屋が儲かるってな。取引先が無くなりゃ、それだけ弱らせることは出る筈だ)
 ベルナルドは目前の敵以外のことも考えながら、変化でクロウタドリの姿をとり、家屋に隠れながら配置についていた。
 彼と同じように家屋の影に隠れながら、『蒼輝聖光』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は戦意を高めていた。
(奪われた物資は、全部取り戻さないと)
 強く思うのは、被害者のこと。
(奪われて食べ物すらない人達も大勢いる)
 憤りは、目の前の敵よりも手配師に対しての方が強い。
(野盗をけしかけて物資を略奪するなんて……でも――)
 憤りを飲み込み今やるべき事を優先させる。
(今は奪い返すのが先決。苦しんでいる人達に返してあげないとね!)
 スティアと同じように、皆の戦意は高い。
 それは『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)も同じだった。
(ここなら狙い易いな)
 狙撃し易いポイントに、飛呂はつく。
 そこは家屋の屋根。
 他の建物よりも高く狙い易い上に、倉庫入口からは見辛いポイントだ。
 いつでも撃てるよう、新時代英雄隊に狙いをつけながら、半ば呆れていた。
(随分と、だらけた顔してるな)
 緊張感のない新時代英雄隊に、ため息をつくように思う。
(新皇帝とやらのオコトバもあって、自分たちは好き勝手していいんだって思ってるんだろう)
 そう見えるほど、だらけている。
 しかしイレギュラーズは、それを許さない。
(行動には責任が伴うもんだ。好き勝手、される側になっても文句言えないよな?)
 冷ややかに思いながら、装填完了。

 そして戦いは始まった。

●偽りの英雄を叩け
(まずは分断する)
 最初に動いたのは、シューヴェルト。
 呪詛の力を込め、抜刀。
 その威力は離れた場所であっても届き、敵の守りを透過。
 傷は与えず衝撃だけを刻んだ。
「おいっどうした!」
 敵は仲間の一人が、突如苦痛で体をよじるのを見て警戒する。
 その中でひとり、冷静に指示を出しているのを確認し、シューヴェルトは次のターゲットに選ぶ。
(おそらくリーダー格か、それに近い相手だ。連携を防ぐためにも、可能なら仕留める)
 再び呪詛の刃を放ち、命中。
 受けた敵は痛みで一瞬、顔を歪めるが――
「あそこだ!」
 シューヴェルトの姿を確認し仲間に警戒を促す。
(一撃では無理か)
 短期決戦は無理と判断したシューヴェルトは、囮役として効果的に動くことにする。
「シェヴァリオン、行くぞ」
 シューヴェルトは、愛騎であるシェヴァリオンに騎乗。
 あえて手間取っているかのような動きで、敵の追撃を誘い――
「捕まえろ!」
 釣られた敵は走り出す。そこに――
(さて、始めますか)
 囮役である倉庫マンも敵の誘導に動く。
 自身に、守りの加護を付与した上で接敵。
「テメェなんだ!」
「どうも。倉庫マンです」
 挨拶大事とばかりに丁寧に自己紹介。
 敵は馬鹿にされたと思ったのか攻撃してくる。
 しかし、まともに届かない。
 倉庫マンの展開した魔力障壁と破邪の結界が阻む。
「効きませんよ」
 あえて挑発すると、魔眼で敵の1人の思考を誘導したあと、逃げるように走る。
「待てやっテメェ!」
 まんまと引っ掛かり、敵は追い駆ける。
 それが誘導だと敵のリーダー格は気付いたのか――
「バカ! 戻れ!」
 呼び戻そうとするが、飛呂が阻む。
(指示を出されると厄介だな)
 事前に自身を強化していた飛呂は、仲間の動きを援護するため精密狙撃。
 死神の一撃を思わせる威力と正確さで急所に命中。
「があっ!」
 敵は守りの加護を掛けていたのか、一撃で仕留められはしなかったが、今までになく苦痛に顔を歪め、その場から逃げる。
(遮蔽物に隠れたか)
 飛呂は、スナイパーとしての冷静さで状況判断。
(倒せないが逃げられることもない。一先ず足止め出来れば今は良し……となれば――)
「分断の手伝いをした方が良いな」
 敵戦力を細切れにし、仲間を援護することを優先する。
(固まってる。ちょうど良いな)
 倉庫マンを追い駆けている一団に向け、連続射撃。
 鋼の驟雨を降り注がせ、動きを止める。
 そこに、タイミングよく史之が跳び込む。
 反応しきれない敵に、強襲乱撃。
 敵は次々斬り裂かれ悲鳴を上げると、中には怖気づいたのか逃げようとする者が出る。だが――
「この程度で泡食っちゃってどうするのさ」
 史之は足止めするように挑発する。
「君たち新時代英雄隊なんだろ? 名前負けしてるね。それともあれかい、自分たちは傷つかずにぬくぬくと過ごすのが、英雄だってことかな?」
「っ、テメェ!」
 プライドを傷つけられたのか、敵は一斉に襲い掛かってくる。
 しかしそれを史之は捌きながら、倉庫マンに声を掛けた。
「ここは任せて。倉庫を頼むよ」
「お願いします」
 倉庫マンは礼を言うと、倉庫に向け走り出す。
 敵は追い駆けようとするが、史之が立ち塞がり防ぐ。
「通さないよ」
「舐めんな! 1人で俺らに勝てるつもりか!」
「ひとりじゃないわ!」
 押し寄せる敵に、不意を突くようにイナリが突進。
 神速で敵の背後を取り、首筋目掛け一撃。
 血飛沫が上がる。
 それが飛び散るより速く、連撃。
 まさしく目にも止まらぬ速さで刃を振い続ける。
「ひっ!」
「こいつどっから出た!」
 突然出てきたイナリに、敵は恐慌状態になる。
 それは物質透過で家屋の中から現れただけなのだが、史之に集中していた敵には瞬間移動で出てきたようにしか思えない。
「ダメだ」
「逃げ――」
「逃がさないわよ」
 イナリは身体能力を瞬間的に激増。
 音を置き去りにするような勢いで急加速し、進路上の敵を弾き飛ばす。それを繰り返し――
「ぎゃあ!」
「ひぃ!」
 次々戦闘不能にしていくイナリだった。

 この時点で三割ほどの敵を倒し、さらにイレギュラーズは撃墜数を増やしていく。

「待てやテメェ!」
 追い駆けて来る敵を、シェヴァリオンに乗ったシューヴェルトが巧く誘導する。
 他より開けた場所に辿り着くと、シェヴァリオンから降り――
「囲んで潰せぇ!」
 敵は数の多さを頼りに囲もうとする。しかし――
「見るに耐えんな」
 後方から、クロウタドリの姿から人の姿に戻ったベルナルドが奇襲をかける。
 一瞬で間合いを詰めると、一点集中した極撃を零距離で放つ。
 敵は不意打ちでまともに食らい、宙に浮く勢いで吹っ飛ばされる。
「テメェ!」
「仲間がいやがった!」
 敵は威嚇するように悪態を吐くが、ベルナルドは唾棄する様に返す。
「無駄口はいいから掛かって来い。もっとも――」
 蒼穹の絵筆で、紫色たる終焉の帳を宙に描きながら言った。
「絵にする価値もねぇ英雄モドキに俺達が倒せると思うなよ!」
 仕上げの一筆を入れると、幻想から現実へと実体化した衝撃波が敵に襲い掛かり吹っ飛ばす。
 そこにシューヴェルトが追撃。
 連携し敵を追い詰めていく。
 しかし数に勝る敵は、死角から襲い掛かろうとするが――
「後ろがガラ空きよ!」
 スティアが逆に、死角から渾身の一撃を叩き込む。
 悲鳴すら上げられず、一撃で敵の1人は戦闘不能に陥った。
「油断し過ぎだね」
 スティアは、ベルナルドやシューヴェルトに敵が集中し過ぎないよう、あえて挑発するように言った。
「そんなんだから一撃でやられるんだよ」
「テメェ!」
 挑発に釣られた敵が、スティアに襲い掛かる。
 だがスティアは、その時には既に動いていた。
「遅いよ!」
 敵の動きを読み切り、攻撃を回避しながら誘導。
 一直線上に集めた所で、神聖なる光を撃ち放つ。
「ぎゃあ!」
 纏めて敵が吹っ飛ばされ、それによって生じた隙を逃さず、スティアはベルナルドとシューヴェルトに距離を詰め回復。
「回復は任せて。戦闘に集中できるよう、立ち回るから」
 花弁のような魔力の残滓を舞い躍らせながら、回復に動いた。

 この時点で敵の半数以上が戦闘不能になる。
 残りは少ないが、手練れが多い。しかも――

「一端倉庫に退け! 体勢を立て直す!」
 リーダー格の指示で倉庫に逃げ込み入り口を封鎖。
 時間を与えれば面倒なことになる所だったが――
「ギフトを使って、ここから入れるようにします」
 倉庫の側面に辿り着いた倉庫マンがギフトの準備をする。
 彼のギフトは、向こう側に空間がある壁を一時的に開くことが出来る。
 使用中は場を離れられず、それゆえ戦闘中に使い辛いが、誰かを壁の中に届ける役に徹すれば使用可能だ。
「準備は良いですか?」
「ああ、頼む」
 応えたのは、愛無。倉庫周辺の敵掃討をしていたが逃げ込まれた所で、倉庫マンが来てくれたので手を借りる。
 倉庫の壁が開かれ、突入。
(さぁ、仕事の時間だ)
 倉庫の中は薄暗く見え辛かったが、猟犬のような嗅覚をギフトとして持つ愛無にとって、敵の配置を掴むのは難しくない。
(五人、か)
 匂いの種類で判断し、死角に移動。
 襲撃する前に、保護結界を展開。
(やけくそになって火でもつけられたら面倒だ。使える物は使わねばな)
 戦闘だけでなく資材確保の事も考え動く。
 奇襲特化の動きで音を消し、敵の背後に移動。
 狙いは、敵リーダー格。
(どうせ、こいつ等は碌な情報は与えられておるまい)
 手配師の用心深さから考えて、それが正解だ。
(相手が逃げるならば深追いもすまいが。リーダー格は念のため捕獲も視野に入れておくか)
 槍状に粘液を生成し、一斉に放つ。
 不意を突かれ悲鳴が上がるが、倉庫の中の敵は手強く、すぐさま反撃に動く。
 銃弾や魔力弾が放たれ、周囲の資材に当たるが保護結界のお蔭で傷は無い。
 とはいえ出来る限り被害が出ないよう早く倒そうと愛無が奮闘していると、一発の銃声が響き――
「ぐあっ!」
 敵の1人が肩を撃ち抜かれる。
「援護するから攻撃に専念してくれ」
 倉庫マンのギフトの助けを借り入って来た飛呂が、援護射撃でサポート。さらに――
「外の奴らは制圧した! 残りは倉庫にいる奴らだけだよ!」
 倉庫入口を破壊した史之が仲間と共に援軍に来る。
「どうする? あいにくだけど、これは俺たちのものになる。それが嫌なら、全力で掛かって来なよ」
 史之は資材を示し、倉庫に残った敵に問うと――
「……降伏する。命は惜しい」
 勝ち目無しを悟った敵は、力なく武器を捨て両手を上げた。

●戦い終わり 
「運転手に使いを出した。しばらくしたら来てくれるはずだ」
 メカ子ロリババアに運転手を呼びに行かせたベルナルドは、発光で倉庫内を明るくしながら仲間に言った。
「随分と貯めこんであるから、持ち帰るのも一苦労だな」
 資材を確認しながら思案する。
「物資ごとに分けた方が良いのかもしれないが、どこにどれだけあるのか分からんと難しいな」
「それは、どうにかなりそう」
 複数の書類を確認しながら応えたのはイナリ。
「几帳面に、資材の納付書が残ってるから」
 書類の目録と実際の資材を見て鑑定し、間違いがないのを確認する。
「価値の高い物を優先して持ち帰りましょう。あと資料が多くて全部持ち帰るのは無理だから瞬間記憶で覚えて帰るね」
「だったら明るい方が良い。手伝おう」
 そうこうしている間に蒸気トラックが来て資材を載せる。
「全部取り返すつもりで載せていこう!」
 運転手たちを手伝って、スティアは手際よく載せていく。
「これだけあれば、たくさんの苦しんでいる人達に返してあげられるね!」
 スティアに応えるように、荷物の背を手伝いながら愛無が返す。
「カエサルの物はカエサルに、だな。『本来の持ち主』に返すとしよう」
 それに賛同するように、皆も資材を乗せ短時間で完了する。
 あとは運ぶだけだが、その前に捕縛した敵の処遇を話し合う。
「改心して知ってる事を話してくれるなら衣食住の口利きぐらいはしてあげるよ? 無理なら牢屋に入ってもらうしかないけど」
 提案するようにスティアが言うと、捕縛した敵の1人が日に皮肉げに言った。
「牢屋? 今この国に、そんなもんねーよ」
「ならば殺すしかないな」
 刃を首に当て、シューヴェルトは静かに言った。
 それは情報を引き出すための駆け引きの一環。
 これにリーダー格が返す。
「……殺されるのは御免だ。抵抗するつもりはない」
「ふむ」
 刃を収め、シューヴェルトは言った。
「君は他に比べて手ごたえがあった。情報も持っていそうだ。手配師に関する情報を教えて貰えるか? 例えば、どういうルートで接触したりとか、な」
「……なんで手配師なんか気にする?」
「そんなのムカつくからに決まってるじゃんか」
 返したのは飛呂。
「また略奪するかもしれないんだ。出来ればそっちも止められるよう、準備はしときたいさ」
 これを聞いてリーダー格は保身を働かせる。
「分かった。知ってる限りは話すから命の保証はしてくれ」
「安心したまえ。情報が無くとも取って食おうという訳ではない」
 淡々と、しかしそれゆえに事実の重みを込めながら愛無が言った。
「君達は不味そうだしな。だが人間の臓器というモノは移植できるのだろう? 帝政派でも医療関連の議論は活発でね。死体より役に立ちそうだ」
 これにリーダー格は脅しではないと判断し――
「……嘘偽り無く全て話す。命は惜しいし、弄ばれるのも御免だからな」
 知る限りのことを話し出した。それを聞き――
「ということは、手配師は俺達が襲撃する少し前に逃げ出したんだね」
 史之は話を聞いて、手配師が乗って逃げた蒸気トラックのタイヤ痕をチェックする。
 それを見たリーダー格が探るように言った。
「あいつが逃げた先なんか調べてどうする気だ?」
「次につながるかもしれないからね」
 ため息をつくように言った。
「だいたいこういうのは黒幕がいるもんだ」
「……黒幕ね……」
 関わりたくないと言わんばかりに眉を寄せるリーダー格だった。そして――
「倉庫は綺麗にしましたし、出発しましょう」
 最終チェックをした倉庫マンと共に、皆は資材を運び出す。
 倉庫近くに止められていた蒸気トラックも全て接収し、根こそぎ持ち帰るイレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!

皆さまの活躍で、無事奪われた資材は取り戻すことが出来ました。
この後、依頼人の手により、簒奪された村々に分配されることになります。
本格的な冬を前に、これで凍死者等も減るでしょう。

それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

●運営による追記
 本シナリオの結果により、<六天覇道>帝政派の生産力が+10されました!

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