PandoraPartyProject

シナリオ詳細

呪いを解くアイコトバ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それは始まりがゆるく
 とある森の奥深く。其処には古びた館がひっそりと立っていた。
 静かな森に古びた館、勿論カラスは飛んでいる。もっと良い所に住めばいいのにと笑う為に彼等は飛び回っている。
 更に語るなら霧も出る、黒雲も何故か四六時中館の上で渦巻いている。
 一体何故なのか? 実は意味が無い等と誰も思わないだろう。だがこれらの環境は何もかもが全て館の住人にしてこの森の所有者たる者の、ただの『趣味』というのが真実だった。
 お洒落だと本人は大真面目に思っている。
 ……それはさておき。

「ひえええええぇえぇぇぇぁぁああああああああ!!!!」

 現在、この主は自室に閉じ込められて出られなくなっていた。それも無数の亡者達に扉を雨の如く叩かれながら。
 何故こんな事になったのか説明しよう。彼は孤独と悪趣味な住まいを愛する名も無き魔術師だ。彼はある時、不意に人恋しさに駆られ趣味で研究していた死霊術を使ってみようと思い立ったのが始まりである。
 『やっぱり美女とかイイよネ~』とか『めっちゃ死体っぽさある奴は外せない』とか『ツギハギは欠かせないネ~』等とあれこれ召喚と作成を続けた結果、定員オーバーとなった地下の研究所から出て来てしまい館の内部に溢れ出てしまったのだ。
 一体どうしたものか。と余裕たっぷりに腕を組んで考え込む事三秒、物
凄い噛みついて来る亡者に追いかけ回され二時間、漸く逃げ込んだ部屋の中でガタガタ震えて一日。
 亡者達の狙いは自分だと分かってしまった彼はどう足掻いても逃げられない状況に頭を抱えていた。

「も、もうだめだ……どうしてこんな事になってしまったんだ!! きぇぇぇぇ!!」

 亡者達には弱点があるが、彼にはそれが『使えない』。
 陽の光や強い光でも燃え上がる様に亡者達の肉体をイジッた彼だったが、そもそも屋敷は年中暗雲渦巻く呪いの館状態である。
 つまり亡者を倒すには自力で、人体を破壊するレベルのパワーで、どうにかするしかない。
「そんなん趣味じゃないしぃ……」
 残念ながら当の本人は趣味かどうかで死ぬつもりだった。

「……仕方ない、これだけは嫌だったんだけどナ~」

 かくして魔術師は自室のベッド下から黒い電話の様な魔導具を取り出した。

●タスケテ
 という怪電話があったと『完璧なオペレーター』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)はイレギュラーズに語った。
 お気の毒に……という顔をする者達にミリタリアは頷いた。
「まぁ、これからその方を皆様に助けに行って貰うのですが」
「やっぱりか!!」

 ミリタリアはひらひらと手を振って、依頼の詳細を説明した。
「依頼主は生来名を持たない魔術師の家系の男性です。今回の依頼の経緯に至ったのは何かの機会にローレットを知ったからだとか、
 皆様に行って頂くのはゾンビ……もとい亡者達の詰め込まれた館へと突撃し、この亡者を殲滅しながら依頼主を救出して貰う事です」
 そう言って彼女はイレギュラーズの前に指を三本立てた。
「亡者の弱点は三つ。『聖なる力』『癒しの力』『強い光』の三点の内いずれかなら灰に帰す事が可能なようです」
「依頼主はできないのか?」
「アンデッドを量産する事ならできます」
「邪魔過ぎる……」

「勿論、亡者と言っても所詮は人型なので人体を破壊するつもりで戦えば普通に撃破する事は可能です。
 懸念されるのは異様に数が多いらしいので、弱点を狙う事をお勧めはしますが。……以上の事についてご質問はありますか?」

GMコメント

 「アンデッドにとって癒しを拒む事は、もう未練が無い事と私は思う」

 以下情報

●依頼内容
 魔術師の救出と亡者を全滅させる

●情報精度A
 不測の事態は絶対に起きません。

●魔術師の男
 趣味に生き続けて幾星霜。誰にも迷惑をかけずに死霊術をバンバン使っていた男はここに来てとんでもない事をやらかしてくれた。
 救出優先度は最重要です。OPからは想像がつきませんが、そもそもこの男が亡者に喰われた場合、次に標的となるのは森の外にある人里や他の人間となるからです。
 先ずは彼の元へ辿り着き護る事が無難でしょう。
 しかし彼を連れていると皆様の事は無視して亡者達は魔術師を集中狙いするため、皆様の作戦が鍵となるでしょう。

●亡者(総数:不明)
 至近で噛みつくだけのゾンビ型亡者。しかしツギハギのある亡者は遠距離から飛んで来てフライング噛みつきをしてきます。
 弱点は『アンデッドに効果あるスキル』や聖なる力を持った技に加え武器、『強い光』や『ライトヒール』を始めとした非戦や各種回復スキルとなります。
 パワーでゴリ押しをしても倒せます。
 亡者達は魔術師を何故か狙い続けますが、リプレイ開始時に籠っている部屋の中に居る限りは皆様を狙って行動するので注意して下さい。

●ノロワーレタ・ヤカータ
 魔術師の住む館です。とても邪悪な雰囲気漂う場所ですがよく見ると周辺環境含め内部はとても清潔にされています。
 一階、二階とあり、二階の魔術師の立て籠もっている部屋の前には物凄い数の亡者が密集しているので救出対象の場所は分かるでしょう。
 地下への階段を下りるとツギハギの亡者が多いとの事です。

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております。
 ちくわブレードです宜しくお願いします。

  • 呪いを解くアイコトバ完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月15日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客
クライム(p3p006190)

リプレイ

●呪われた館を前に
 到着して早々、『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)は額に青筋を浮かべかねない表情で絶句した。
「外にまで聞こえるレベルかよ……」
 彼等は救出依頼を受けて件の『ノロワーレタ・ヤカータ』に駆け付けた。
 そこに君臨するは禍々しい館、出迎える鴉達の嘲笑。何故かやたらと多い窓、中途半端に開いたカーテン。
 そして館の外に響いていたのはおぞましい濁音全開の呻き声だった。
 館の扉を内側から叩き凄まじい腐臭を漂わせているのは事前に聞かされていた亡者達の物だろう。扉窓から顔色ゾンビな男女がひしめいているのが見えているのだから間違いない。
「好奇心は猫をも殺すと言うが何というか……いやはや、こういうのをマッドな奴等というのかな?」
 クライム(p3p006190)が心なしか愉快そうに首を傾げる。
「作りすぎて自分で処分できなくなるなんてダメダメですね」
「バッカじゃないの!? 使役に対処用の弱点付けるのは良いとして! 趣味で天候操作するのも、まぁ良いとして?
 自分で使えない弱点作ってどうすんのよ! 全くもー!」
 『年中ティータイム』Suvia=Westbury(p3p000114)と『ツンデレ魔女』ミラーカ・マギノ(p3p005124)が二人呆れ返る。
 片やぷんぷんと、片やツンデレ。恐らく依頼主はとても喜ぶだろうが、それは仕事が終わってからの話。
「夏場でなくて良かったわ。まあ、大惨事になる前に止めましょ」
「ちっ、放っておけば人里に被害が出るか。迷惑な奴だ……まぁいい、やることはいつもと変わらん。“魔”の存在は皆殺しだ」
 依頼主が亡者に喰われてしまえば、次に狙われるのは周囲に点在する人里。つまり放置は出来ない。
 呆れつつも十六女 綾女(p3p003203)は扉へハロルドと並んで近付く。先頭はハロルドだ。彼がノブを回せばそれだけで亡者達によって内側から開け放たれるだろう。
 その一方で、館の外観をまじまじと眺めていた『夜鷹』エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)はぽつり。
「魔術師さん、ヒトがきらいなだけじゃないんじゃないかな。なんとなくだけれど……そう、おもうの」
「自業自得……というほどには、悪意が無いんだろうね、きっと」
 マルク・シリング(p3p001309)も頷き、腰からワンドを抜き構える。

「───」
「───……うん」
 微かに緊張が走る、が。エーリカは傍らの『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)と見合い、互いにその想いを巡らせた。
 彼がいればもう怖くない。彼女をしっかり守らねば。そう決意する彼等は数瞬の間を置いて互いの居るべき隊形に並んだ。
 大丈夫だ、と。

●視界がネッチョネチョでなんも見えねえ!!
 一瞬何が起こったのか分からなかった、とは後のハロルド談である。
「うお……!?」
 扉が勢いよく解放された瞬間、先ずは小手調べに自身の持つ力が有効打となるか見る為に。ハロルドは己が聖剣を唸らせ、剣圧を亡者の壁に向かって放った。
 その直後。どぷるぉんぶ、と形容し難い破裂音と共に緑のゲル状の液体が大量に弾け飛んで先頭のハロルドに降り注いだのだった。
 いや本当に何が起きた。
「効いてるみたいだね、そのまま頼むよハロルド君」
「うっわ……あたしの服にも飛んで来た」
「私もよ……今回は服については諦めた方が良さそうね」
 後衛の女性陣が引いている横で、マルクは癒しの力を込めた魔法を撃ちながら頷いた。
 飛来する白い光。着弾した亡者はその光に包まれ……
【アア……ヤット逝ケル……】
 シュワアア、と消滅した。
「成仏したな」
「なんで俺のは成仏じゃねえんだよ!」
「オーバーキルとかかしら……」
 怪訝な顔をしながらも一同は突撃する。何にせよ道は拓かれたのだ。
 館の中は死臭に混ざって芳香剤の香りが漂っていた。埃一つ落ちていない洋館に飛び散る緑の液体がそれらを塗り潰して行く。
「この亡者の館では君達の癒しの力が頼みの綱だ! こちらで抑えてる間に頼む!」
 ハロルドが突っ込んで剣を一振りするだけで亡者が風船の如く弾け、彼の身を纏う聖剣の加護が光を放つ度に亡者が蒼白い焔と共に倒れていく。
 倒れ込んで来た亡者をラノールがマトックで打ち上げて、体勢を崩した所へクライムの神速の斬撃が迎え撃つ。
 前衛が届かない範囲から迫る敵は綾女とエーリカがヒールによる支援砲撃で次々と消滅させていった。
「この階にいるのは全て似た様な性能の亡者だけみたいだ。
 引き続きハロルドを先頭に左側の壁沿いに進もう、見てくれ。向こうに階段が見える」
「お屋敷のお掃除は大変そうですが、愛しい茶葉のためにがんばらせていただきますの」
 ゲルまみれの前衛と、跳ね飛んで来るゲルを躱しながらSuviaはその手の中から回復薬の入った小瓶をばら撒いて行く。
 敵を見極めたマルクが一気に突破する事を提案、更に視界にチラついた階段を指差した。
「ははははっ! おら、掛かってこいよ! テメェら全員あの世に送り返してやるぜ!」
 横合いから手を伸ばしてきた亡者の手が焼け落ちる。そこへ銀色に輝くヤクザキックが亡者を襲い、直後に爆ぜた。
 聖剣の力を纏った彼の攻撃、一動作、常に彼を守護する光。そのどれもが聖なる光……魔を討たんとする力である。今の彼は正しくこの館にいる亡者達にとって天敵だ。
 最早そのクリティカルした性能は(もしや彼を投げるか振り回した方が早いのでは)と後衛に思わせる程。
「というかヒールで消した時もこれ心がちょっと痛むわね……なによ、なんでそんな安らかに消えてくのよ!?」
 マルクが比較的脆い敵を教える度にエーリカとミラーカのヒールが降り注ぎ、周囲の亡者を薙ぎ倒して行く。
 かくして、彼等は二階へと進行するのだった。

 トリガーを引く度に炸裂音と薬莢が床を転がる音が鳴る。
 次々と襲い来る亡者を切り裂く刃。その刀身に伝う特殊振動と鞘から発射された瞬間の加速により、クライムの剣撃は純粋な居合斬りとは異なる威力を持って敵を両断する。
 刀を瞬時に納刀したクライムは「ふむ」と鳴らした。
「近付けばこちらに振り向くが、奥の奴は一方向しか見ていないな」
「依頼主はあの部屋に立て籠もっていると見た」
「一気に道を開ける!」
 ハロルドが光の力を籠めた剣圧を飛ばして廊下中央に派手な風穴を開けた直後、一気にラノールとクライムが続く。
「奥の方から頑丈なのが……例の『ツギハギ』かな」
 廊下の奥から四足歩行で駆けて来る、黒い長髪を垂らした女性亡者を見たマルクが警戒を促す。
「私に任せて! 単純な火力魔法よりは得意じゃないけど。魔法使いの嗜みでしょ、これくらいね!」
 杖を軽快に回したミラーカの足元に新緑の魔法陣が広がった直後、特大の癒しの魔弾が撃ち込まれる。
 瞬間、女性亡者の全身が光りを発する。
【……今イクワ……アナタ……】
 猛烈にやるせない気持ちになるセリフが全員の脳内に響かせて消えていった。
「なに今のーっ!!?」
「す、すごくやすらかだった……」
 不意打ちに思わず涙腺が緩みそうになるエーリカの隣でミラーカがわなわなと震えた。
 暫くして、二階の亡者を殆ど倒した彼等は遂に依頼主と対面する事となった。

●合言葉は──Kiss the Prince──
 依頼主からの最初の一言。
「なんか君ら汚いな……何そのクサい緑色のプルプルしてるやつ」
「アンッタのせいでしょうーが!!」
 ミラーカのツッコミに拍手が上がる。
「貴方の依頼で助けに来ました。我々はローレットの冒険者です」
 と、そんなやりとりに苦笑しながらもまず名乗ったのはマルクである。彼は自分や綾女、ミラーカや外で他の部屋と一階から迫る亡者に応戦している仲間達は皆イレギュラーズである事を伝えた。
 その報せに頷いた魔術師は現在の状況を把握した。
「君達が来てくれて助かったよ。私も寝ずにいつまでも術式は維持できなかったからネ」
「術式?」
「鍵も掛かっていない扉や、厚くもない窓があれだけ押し寄せて来た亡者を留めてはおけないよ
 ……はぁ、疲れた……本来は防犯用の結界だから強度に難があったが、私だけを狙ってるのが幸いだった」
 彼は不意に力が抜けて座り込む。疲労からだろう、ボサボサの髪がくたびれて見えた。
「ねえ、依頼人さん?」
「エルトでいいよ……なんだイ」
「私達実を言うと、ここまで来るだけでも結構消耗してるの。
 休みながらにしてもここからは泥試合になるわ……あなたも危険なのに変わりはない……わたしも八つ裂きにされてしまうかも……」
 顔を近づけ、不安そうに肩を抱いて見せる綾女に魔術師エルトはごくりと喉を鳴らした。
 しかし趣味に生きる男は魅了にめっぽう弱かった。まさかこの男にそんな説得をするなんて……!
「彼女の言う通り依然として危機は去っていません。そこでお聞きしたいのですが、ご自身が狙われる原因に心当たりは?」
「彼等の食欲の対象に私を追加したからか……それか、この辺を何故か浮遊していた魂を無理矢理亡者の肉体に入れたからか……またまたそれとも私の趣味に合わせた反応を示す術式を心臓に刻んだからか……」
「どうやら全部のようですね」
 聞いた事をマルクは少しだけ後悔した。
「エルトさんにはここにいて貰えればいいわ。けどお願いがあるの、
 まず館の構造について。それと、此処の空を覆っている黒雲を少しでも弱めたりできないかしら。或いは使えそうな設備とか……道具ね。
 ここまで私は【発光】を使って来たけど、結構効果があったから雲をどうにかできる方法があるといいわね。陽の光に弱いんでしょう?」
 指を三つ、胸元で立てて見せる綾女。
 一瞬そちらへ意識が行きそうになるが、エルトは不意に聞こえたワードにどんよりした目が大きく開いた。
「そうか……! 最初にそれをやっていればよかったのか……!」
「何か思い出したの?」
「ある、あるとも。趣味でこの館の周囲を今の環境になるように陣を張ったのだが、呪文一つで『模様替え』出来るように術式を組んであったのサ!」
 マルクが前に出る。
「一体、それは?」

「地下室にある制御装置で、アイコトバを唱えるんだ。
 そのアイコトバはだね……『Kiss the Prince』、いつか私に超絶美人な花嫁が来た時の為に考えた、呪いを解く呪文サ」

●合言葉は
 階段踊り場、一本道となっているその場所でクライムとハロルドは亡者の侵攻を食い止めていた。
「なあスヴィア! どうだそっちは!」
「今仕掛けた物で充分ですの。一度下がりましょう」
「よし来た、ッシャア!!」
 衝撃波が亡者達を吹き散らす。手摺にしがみついていた者をクライムが切り落とし、彼等はSuviaの合図に応じて二階へと退散して行った。
 屋敷はそれほど広い訳ではないが、面積と空間が許すだけ亡者が出て来ていたのなら後から湧いてくる数もまた際限が無い。
 故に、本当に掃討しようと考えるなら相応の傷を覚悟しなければならなかったのだが……どうやら依頼主の話によりこの状況を一気に好転させる方法があると解ったらしい。
 そこで今はエーリカとラノール、マルクも共にSuviaが二階へ続く階段上にポーションバケツ型の罠を仕掛ける作戦を手伝っているのだった。
「他の部屋に入り込んでいた亡者は全滅させた、依頼主の様子はミラーカがファミリアーを通して見ている。
 守りもスヴィアの罠で時間は稼げるはずだ、これで私達は安心して地下へ行ける」
 肩口の傷をエーリカに治療して貰いながらラノール達が戻って来る。
 あとは、地下へ行くのみ。


【アア……本当ハ、モット生キテイタカッタ……】
【ワタシノ……子供達ニヤット合エル……】
【今……帰ルゾ……妻ヨ……】
「畜生何なんだ胸糞ワリィ!!」
「それ、今のヒール撃ったあたしに言ってる!?」
 地下室の惨状は特に想像を絶するものがあった。殆どの亡者はツギハギがあり、地下の構造も三人並べる横幅で、全体図はT字になっているらしい。
 それでも、前衛のハロルドが聖剣キックで蹴散らしては蹴散らし。眩い聖なる光を刀身から迸らせたハロルドがブーツで吹っ飛ばしまくる。
 ラノールがエーリカ達後衛を時には庇う事もあって、支援砲撃には事欠かなかった。
「気のせいかしら? ヒールが効き難いわね」
「あのツギハギはどうも『頑丈』だからね、生半な癒しの力では消滅しきれないようだ」
「でもハロルド様のキックは相手問わずとっても効いてるんですのね」
「全身がメガヒール級の男ね……!」
 時折、Suviaの投げたポーションがあちこちで割れる音が鳴り響く。
 綾女の呼びかけでエーリカ含め後衛陣で一定のローテーションによる味方への回復が行われ。これによって前衛の負担が僅かに軽減される。
 薄暗い地下室を暖かな光が幾度と瞬きし、その度に白い灰や緑のゲルや断末魔的遺言(?)が辺りに散らされる。
「くっ……!」
「ラノール! まってて、いまキズを……」
 狭い。それ故に前衛の負担は重い。
 回復が純粋に追い付かなくなるのだ、一体ずつ倒しても、上手く受け流しても。次々に後ろから飛び込んで来るのだ。
 疲労が顕著になり、それがダメージとなるのに時間は掛からなかった。

 だが。
「突き当り……! みんな、右だ! 奥に茨に覆われた部屋がある!」
 軍師だからこそ、見える物は前衛と異なる。マルクの声が響く。
「なるほどね。『趣味』って奴ね! 分かりやすい……!」
 遠方から天井を駆けて来た亡者をメガヒールで撃ち抜いたミラーカが深く息を吸う。もう少しで、この馬鹿騒ぎを終らせられるのだ。
「……ハロルド」
「応!!」
 前衛の二人が同時に構える。
 渾身の勢いで聖剣を振り被るハロルドの後ろで紫電が迸る。直後、彼の目の前に殺到していた亡者達が一瞬で真空刃に刻まれ光の中で爆散。
 横合いから這い出て来る四つん這いの亡者が飛び掛かる。しかし、それらの首は刹那に両断され、視覚がほんの一瞬捉えた映像の中で亡者達が信じられない表情を露わにした。
 炸薬が弾けて射出した高周波ブレードは無数の紫電を引き連れた一閃により目の前の亡者達を全て消し飛ばしたのだった。
 活路は拓いた。
 そこへ突き進むラノールが絡み付く亡者を振り払いながら一気に先頭の個体を打ち払う。
「全員走れ────!」
 誰かの叫ぶ声に弾かれ、全員で一気に走り抜ける。
 マルクが足元を掴まれ引き倒され。後方から追って来る亡者を指先から伸ばした無数の茨でSuviaが足止めをし。エーリカがラノールの周囲にいた亡者をヒールで弾き飛ばす。
【アァァァ……!】
「悪いけど、通させて貰うわ!」
「ならこれでどう?」
 天井から奇襲して来た亡者、入れ替わるように綾女がミラーカの前に躍り出た。
 瞬間。それまで防護役を果たしていた光が彼女から失せ、代わりに透き通るような輝きが辺りを包み込んで……『シェルピア』の奇跡が瞬いた。
 一気に彼女を中心に敵が消滅したのを見たミラーカがその場から飛び出す。

 音も無く降り立ったのは、茨に囲まれた寂しい部屋。
 壁際から未だに何かが蠢き生み出されようとしているのをミラーカは無視して、足元の魔法陣に手を乗せ長く使われていなかった術式を起動させる。

「合言葉は、『王子にキスをして』!」
 
 その瞬間。彼女の足元を起点に純白の光が広がり、世界を覆い尽くした。

●EPILOGUE
 最後に浴室を借りたイレギュラーズは、それぞれ身綺麗になってから改めて依頼人に会った。
「いやぁ……大変だったねホント」
「だからアンタの……はあ、もういいわよ。皆無事だったわけだし!」
 外は丁度太陽が真上を越えた頃だろうか。ミラーカは純白のふかふかなソファーに身を沈め、Suviaが淹れてくれた紅茶を飲んでいる。
 天井も白。カーペットも金とか蒼とか。窓の外からは陽の光がやけに美しく入り、中を照らし輝かせている。
「これもまた極端な……」
「子供の頃からの夢でネ。いつか私にも春が来ることを祈るよ、危うく冥土行きになる所だったが!」
「お前……次はもう他人の平和を脅かすような真似はやめろよォ……?」
「ひぃぃ!? は、はいぃ!!」
 聖剣をぎらつかせて、ハロルドは今後同じことを繰り返さない事を誓わせる。

「何はともあれ、ありがとうローレット。こんな所まで来させて申し訳なかったと思う
 ……私はこれに懲りて暫くは独りで過ごす事にするよ。アンデッドは当面触れないサ……」
「……」
 何処か寂しげに肩を落としたエルトはイレギュラーズを見送ろうと外へ向かう。その足取りは元からか、疲労からか、トボトボとした物だった。
 そんな彼に声をかける。
「いきているヒトもそんなにわるいものじゃないんだって、わたし、みんなにおしえてもらったの。
 だから……もし、あなたがさみしいときは……わたしたち、こんどは友人として、遊びにきます」
「そうね。魔術師として色々と教わりたいわ
 いい事もしてあげるから、ね?」
 エーリカ達は(方向性は違えど)微笑んでそう彼に告げる。
 魔術師エルト。彼はこの日──

「よーし、それなら次はもっとたくさんのユニークなアンデッドを揃えて凄い邪悪な館で出迎えるとするよ!」

 ──この日最後に、ハロルドとミラーカからのツッコミ(物理)を受けて真剣に反省したという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

成功です。
皆様の服に染み付いたゲルは魔術による作り物なので腐臭の心配はありません!

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