＜総軍鏖殺＞Stollen Attacke

オープニング

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　デンタル坑道。
　鉄帝南部に存在する鉱山の発掘作業の為に作られた地である――
　ここからは主に鉄や、一部古代文明の名残と思わしき物体が発掘される事があった……故に平時であればそれなりの人数が毎日作業に務めていたのだ、が。新皇帝の政変による治安の悪化に伴って、多くの作業員は故郷の家族を心配し、この地を離れた。
　それ以来デンタル坑道は無人の地となり果てた訳である……
　しかし。ザーバ派は勢力拡大に伴ってこの地に目を付けた。
　此処を再稼働させる事が出来れば、勢力の役に立つのでは――と。しかし。

「……残念ながら諜報部の報告によると、天衝種が根城にしているらしい」
「天衝種……魔物か」
「あぁ。大型の、蛇の様な個体だ。エヴィストラトスと名付けられたとか」

　ゲルツ・ゲブラー（p3n000131）は語る。厄介な存在に占拠されてしまっていると。
　天衝種。新皇帝が登場した前後から鉄帝各地に増えている魔物の一種だ――
　エヴィストラトスは巨大な蛇の様な存在で、坑道内をかなり素早く移動するらしい。土を掘り起こし、新たに通り道を作る事も出来るのだとか……当然だが坑道内は狭く、大規模な部隊を投入するには向いていない。
　故に少数精鋭としてイレギュラーズに白羽の矢が立ったわけである。
「君達にはエヴィストラトス――長いな。大蛇で良いか。
　とにかく坑道に我が物顔で済んでいる大蛇を倒してほしい。
　……が、残念なニュースもあってな。坑道内の地図はない。
　坑道の責任者なども含めて各地に離散している様でな」
「つまり――坑道内の順路などに関しては、現地で探るしかないのか」
「そうだ。そしてもう一つ重要な点として、大蛇は『二体』いると思われる。
　強力な毒液も吐いてくるようでな。囲まれると厄介かもしれん」
　坑道内を探索中に前後を囲まれる危険もある――そういう訳だ。
　更に諜報部の調べでは坑道はそう大きい道幅ではない。恐らく2～3人並ぶのが精一杯、と言った所だろう。当然空を飛ぶことも出来ないし、場合によっては射線の確保も一苦労かもしれない。
　外の様に自在に陣形を展開するという事も出来まい――さてどのように作戦を立てたものか。
「それと、さっきも言ったが……大蛇達は穴掘りにも長けている。
　もしかしたら坑道内は崩れやすくなっている場があるかもしれない」
「なんて迷惑な連中だ……」
「同感だが、魔物に倫理を求めても仕方ない。十分に注意してくれ。
　この坑道を手に入れる事が出来れば、南部戦線の技術力にも影響がありそうだしな……
　頼んだぞ、イレギュラーズ」
　吐息を零すゲルツ。厄介な状況だが、仕方ないと。
　どの道勢力圏内に魔物がいるのなら退治せぬ訳にもいかないのだ――いつ坑道から出てきて周囲の村や街へと往かぬとも限らない。ならば脅威は今の内に取り除き、坑道自体も勢力下においてしまおうと。
　そしてソレを成すのは、少数にして一騎当千たる力を持つ――
　イレギュラーズ。君達しか、いないのだからと。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

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「天衝種に占拠されているのは痛いけど、廃坑じゃないのよね？
　なら、大蛇を排除して補強すれば――鉄とかまた取れるって事で。
　色々と利用価値は見出せそうね。特に、今のご時世は」
「近隣の安全確保をしつつザーバ派の支援にもなるなら一石二鳥だね！
　あ、大蛇だから一石二蛇かな？　数もちょうど合ってるし！　アハッ」
　デンタル坑道。その地へと足を踏み入れるのは『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル（p3p005192）に『瑠璃の刃』ヒィロ＝エヒト（p3p002503）だ。南部戦線を主体とするザーバ派に属する二人はこの地の奪還に意欲的である――少なくとも、新皇帝が解放した元死刑囚とか相手にするよりずっと気分いい仕事だ、と。美咲は吐息を一つ零しながら往くものだ。
　なんぞや『嫌』な気配は既に坑道内から漂っている。
　警戒は怠れないと――ヒィロと美咲は暗闇を見通す目を巡らせようか。
　特に彼女達が集中的に観察するのは『大地の様子』だ。
「うーん。この辺りは大丈夫そうだけど、奥の方は特に心配だね。
　なるべく安定した所で蛇達を相手取れればいいんだけど」
「そうね。そのためにも、蛇達がどこを通ってきてるのか判断しておかないと……採掘するための坑道なら、本来穴って全部人工なモノ。だけれども違う代物があれば……それが蛇達の掘ったモノと判断できるかしら、ね」
　地中に亀裂が走っていないかとヒィロは見ているのだ。戦闘はともかくとして、生き埋めになるのは御免であれば……いや生き埋めにならなかったとしても、戦闘の最中に崩れて仲間と分断される危険性もある。そうなれば一気に危機だ。
　分断された場合迂回路となる様な道があるか――それも可能であれば確認せんとしつつ、美咲も自然に対する知識と、敵意を感知しうる術を張り巡らせて広域を警戒する。鉱床と関係しない穴。或いは判別が不可能な所は警戒対象として、蛇達の跡ではないかと思案しつつ。
「ザーバ派の資源確保、物資確保に於いて此の作戦の成否は要と成り得るかもしれません。此の内乱が長期化するのであれば、其れは猶のことです……坑道の確保は急務かつ、非常に重要な意味を占めていると言えますね」
「人がいなくなっただけでまだ鉱脈自体は生きてるなら尚更――だね！
　冬を凌ぐ足しにしたいし……不法占拠してる蛇には退いてもらわないと！」
　続けて『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド（p3p007834）に『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア（p3p007129）も坑道の中へと足を踏み入れようか。一体どこぞから蛇が襲い掛かってくるか知れたものではなく、人数も活かしづらいこの地形……中々不利な環境だとアッシュは思う、が。かといって対応不可とまでは考えていない。
　まずは一列となろうか。アッシュは中列程度の位置に。アリアは『夜砕き』如月＝紅牙＝咲耶（p3p006128）と共に周囲を警戒しつつ――慎重に進んでいく。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず……まぁ、今回は虎ではなく大蛇でござるが。
　何はともあれこのまま放置をしてはおけぬな。『狩り』をさせてもらうでござる」
　同時。咲耶が放つのは使い魔の鼠だ。
　アッシュも二体使役し、合計三体。二体前方へと先行させ、一体は後方の警戒へと走らせようか――いずれかに相手の姿を先んじて捉える事が出来れば良し。破壊されても其れは其れで役目を果たしたと言える。
　敵の位置が不明である事を潰すのが、一番の優先事項なのだから。
「…………ダンジョンってアリアに聞かされたのに。
　さては初めから承知の上だったわね、アリア……！」
「えっ？　何か言った――？　ほら、それよりも今は辺りを注意しないと！」
　と。坑道を進めば進む程に複雑な心境を抱いているのは『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ（p3p000854）である――おのれぇ！　只の坑道じゃないの！　違うのよ、こう、ダンジョンっていうのはもっと自然によって培われた……くっ！
　咳払い一つ。イーリンは精神を手中させ、眼前を見据えるものだ。
　特に彼女が注意するのは『不審な穴』である。蛇が掘ったものか、それとも『正常な穴』であるか……入り口付近の、およそ状態が正しいと思われる構造を瞬間的に記憶した彼女は、その穴に差異がないか――常に注意を巡らせよう。
　蛇の堀った穴であれば、奴らが近い可能性もあるのだから。
「……後は土の匂いも重要ね。蛇共の匂いがこびり付いている可能性もあるわ。
　それから人間じゃなくて野生動物に準ずる存在の採掘はやはり違和感もある筈……」
「坑道として使われていた場所なら、崩落防止に坑木が設置されているでしょう。
　其れがなければ――やはりこの通りは大蛇の蠢いた後と見るのが是かと」
　更にイーリンもアッシュも注意深く観察するものである。
　蛇の跡を見据えるのだ。情報こそが力。微かな痕跡も逃すまいと――さすれば。
「よりによって坑道に住み着くとか厄介な大蛇よね～しかも坑道のサイズに適してるとか、明らかに狩場みたいなものだし……でも、ま。蛇肉は美味しいらしいよ？　淡白らしいけど、タレとかに漬けると合うらしいし。食べられる前に食べちゃう？　Haha」
「やれやれ……ま、上手く肉を入手出来ればそれも悪くはないのかもしれんな」
　『咎人狩り』ラムダ・アイリス（p3p008609）は隊列最後尾に位置しながら、敵の奇襲に備えるものだ。蛇肉の旨さに想いを馳せつつ……さすればその声に『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック（p3p009191）もまた吐息を一つ零すもの。
　が、ラムダもまた周辺の警戒を怠っている訳ではない。優れし五感を常に張り巡らせながら――各所を警戒する。地面に蛇の移動痕が無いか。坑道を徘徊する、イレギュラーズ達以外の物音が聞こえないか。そして何よりこちらに敵意を向けてくる存在がいないか。
　そうしていれば勘付くものだ。微かに、何かが『動いた』と。
　――天衝種だ。
　先行させていたファミリアーの使い魔達も、自らに殺意の様な、食欲の様な感情が向けられるのをどことなく感じる――で、あればと。
「やっぱり足音とかを感知してるのかな……？　なら、持ってきたコレで……！」
「――刹那でも隙を見つける事が出来れば奇襲も叶おう。皆々様、ご準備を……！」
　アリアは周囲の地形を保護する結界を張りながら――少し離れた所に石を放ってみるものだ。音が反響し、蛇共の目……いや『耳』を誤魔化せるのではないかと。さすれば咲耶は気配を絶ちつつ、敵の意識の狭間を狙わんとする。優れた耳にて敵の接近を知覚せんとしつつ。
　一拍。二拍。なんぞやが蠢く音がしたと思った――次の瞬間。
　穴より出でるは狙いの天衝種。
　ファミリアーやアリアの放った石へと大きな口を開けて喰らい付いてくる――が。
「これも依頼だ。大人しく狩られるつもりはないだろうが……
　我等も狩らない事由はないからな。
　人の領域を住処にしてしまった事を不運と嘆くがいい」
　ウルフィンが往く。探索は、その方面に優れた仲間に任せていたが。
　事、戦闘に至るならば自らの出番であると――迅速たる跳躍と共に。
　一撃を蛇の頭へと投じてくれようか。

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　ウルフィンの速度は爆発的に上がり往く。『狩る』のはこちらだ、とばかりに。
　槍で串刺す。高速へと至るウルフィンの一撃に次いで、機を見た咲耶の刃も続こうか。
「背後に回れれば最上――しかし流石にこの地形では厳しい所があるでござる、か。
　されど意識の影を突くもまた忍びの術が一つ――御免ッ！」
　彼女は奇襲するが如く。気配絶ちし忍は微かなる狭間すら武器へと変じさせよう――
　自らに戦の加護を齎しつつ、紡ぐは三撃。殺意の針が蛇の身を穿たん。
　然らば蛇が痛みに悶える様子が窺えるものだ。次なる瞬間には、怒りの牙を向けてくれば、流石に巨体な事だけはある頑強さである、か。
「さぁかかってこい！　ボクが相手だ！　そらそら、どうしたの～！
　そんな大口開けちゃっても、頑張って届かせないと意味ないよ～～！」
「速攻を仕掛けるしかないわね。もう一体が来ても面倒なだけだわ――」
　であればとヒィロが敵の注意を引かんと挑発と共に立ち回るものだ。
　彼女には蛇の強襲を感知しうる勘がある。故にこそ前へ出ており、大声と渾身の踏出しによって敵の注意を引かんとするものだ――今の所出てきているのは一体だけだが、派手に戦闘していればもう一体もやがて出てくると思えばこそ美咲と共に連携し事にあたる。
　抜群の連鎖力によって間髪入れぬ。美咲は牙や頭部などを狙いて、一閃。
　それは概念の切断。『切った』という結果を残さんとする事象の斬撃――だ。
　完成系でないが故にこそ絶対ではないが。しかし強靭なる威力を秘めているには違いない。更に……ヒィロらは先に観察していたように、この場で崩落の危険がないかも見据え続ける。万が一の時は安全圏まで敵を誘引する事も必要かと――
「蛇の相手はニーズヘッグで慣れてるわ。この程度可愛い物よ。
　さぁ――存分に相手をしてあげましょうか。『神がそれを望まれる』」
　もう一匹に関する事はイーリンも思考を巡らせているものである。彼女が警戒するのは特に逆側、だ。挟み撃ちとなる危険性の回避を模索しつつ……イレギュラーズ達の陣形中央付近で語り上げるは一つの唄。
　それはあやかし狐の怠惰な語り。銀狐の純なる想いが詰まりし一端。
　蛇めの放つ毒なんぞ討ち祓う力をもった――切なる声は誰しもに戦う力を与えて。
「さてさて。好き勝手に掘り返されて岩盤事故とか起こる前にサクッと退治しようか。
　それにここに眠る資源を荒らされるのも癪だからね。
　坑道ぜーんぶ返してもらうよ。強制的なのは、不法占拠の咎って事で」
「この巨体じゃあ、避けるのも難しそうだよね！　逃がさないよ、ここで仕留める！」
　直後。ラムダにアリアの一撃が蛇へと叩き込まれる。
　隊列最後尾より展開するラムダの鎖は蛇の身を縛り執拗に絡み付こうか――鈍らせた刹那の隙を見逃さずアリアが踏み込めば、超越の魔力を叩き込もう。破壊の威を宿した一撃が蛇を内側から破裂させんとばかりに襲い掛かる。
　攻勢に次ぐ攻勢――しかし、やはりと言うべきか坑道の地形上の問題もあり、必ずしも戦いやすい状況では無かった。前へ出でようとすれば詰まる。蛇の毒液や牙を躱そうにも、十分なスペースが無ければ受けるより他も無く。
「しかし――やり様はあるものです。如何なる状況であったとしても」
「あぁ。喉の奥や、鼻の下辺りを狙え。其処が蛇のピット機関であるはずだ」
　だからこそアッシュは一歩引いた、中列程度の位置より撃を紡ぐものだ。
　暗き空間には闇夜を見通す目をもってして視界を確保し。放つは銀色の一閃――
　描く軌跡は一直線に蛇の喉奥を捉え、炸裂させようか。
　続け様にはウルフィンが再び神速と共に至り敵の身を削る――
　魔物ではあるが構造は基本的な蛇と同じではないか、と。
　推察の上で重要器官に一撃一閃。さすれば。
『――――！！』
「ふむ。これだけ叩き込んでいれば……流石に少しは身じろぐようですね、とっ！」
　蛇が一端、後退する様な動きを見せるものだ。
　如何に地形上の優位があろうともこれだけの攻勢が続けば耐え難いものか――アッシュは状況を判断した、しかし正にその時。坑道の真横に亀裂が走る――！
「二体目だね！　でも真後ろから来るよりはマシかな……！！」
「ええ。ここからが正念場でしょうか――参りましょう」
　現れし二体目。されど、警戒していたアリアやアッシュは揺るがない。むしろイレギュラーズ達の警戒によって近く出来ていたのならば、アッシュは赫々とした雷をカウンター気味に叩き込んでやるものだ。
　どちらも駆除してみせると、更なる一撃を――紡ぐのであった。

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　激闘。激しい衝撃が走る度に、坑道自体が不穏に揺れるものだ。
　ヒィロの懸念通り崩れる可能性もあるか――しかし。
「ぜーったい主導権は取らせないよ！　イーリンさん、統率お願い！」
「任せて。そろそろ本格的に駆除させてもらうわよ。
　連中の餌場は、今日をもって……連中の墓場にしてやりましょうか」
　イーリンの豁然たる統率の下、迅速に陣形を整え直すイレギュラーズ達。
　祝福の詩を捧げ、治癒の術をイーリンは張り巡らせればまだまだ戦える余力は残るものだ。蛇達の牙が鋭かろうとも尚に――そしてヒィロは再び美咲と共に連携し事に当たるもの。敵に先手は取らせない。常に、自ら達こそが最速に至らん――
「どれだけ吼えても、どれだけ足掻こうと無駄よ。全て、斬り落とすわ」
　然らば蛇達はイレギュラーズ達の身を蝕まんと、毒を振るってくるものだが。
　その、毒に侵された部分を――美咲はすぐ様に斬り落とす。
　これもまた負傷の概念に対するが一撃。外傷の治療足り得る彼女の一端。
　負の発生事象そのものを穿ちて滅ぼすのだ。
　成せばすぐさまに反転攻勢。牙へと再度の一撃を紡ぎ――叩き折ってみせよう。
「しかしあれだね坑道を掘り進んでくるとか蛇というよりサンドウォームかな！　砂漠にいるならまだ自然だけど――いやはや混沌の世の中も広いものだ、ねぇ！」
　次いでラムダの魔術が振るわれる。縦横無尽に操る呪鎖を、敵の口へと着弾させてやるのだ――坑道を掘り進むぐらいの力があるのであれば、頭部の鱗辺りは相当な硬度だろう。ならばソコは避け、柔らかそうな部分を狙えばいい。
「串焼きにしてあげるよ――大丈夫。美味しく味わってあげるさ、最後の一片までね」
「これで終わりだよ――！」
　然らば最初期より戦い続けてきた蛇の方は、限度が近い事が窺えるものだ。出血激しく身も震えている。激しく身じろぎすれば、周囲の地形に亀裂を走らせるものだが――奴の悪あがきなど、ラムダとアリアが力の限りの一撃を紡ぎて終わらせよう。
　逃さない。蛇の身を内側から破裂させる様に魔を叩き込み、打ち倒す。
　焦げる様な匂いと激しき炸裂音が生じれば――後は一体だ。
　やはりこの個体も同様に非常に優れた体力を持っているようで中々に耐える。
　毒を吐き散らし、隙あらばイレギュラーズを呑み込まんとする力。
「だが。最早ここまでだ。一体だけで何を成し得るか――」
　――であればと。その力をこそ利用するのは、ウルフィンだ。
　彼の身は無傷ではない。最初の個体との戦いも含め、全身に傷が目立っている。
　しかし。傷が増える度に彼の力は増していた。
　よくもやってくれたな、と言わんばかりに彼の一撃一撃が――重くなっていく。
『ガ、ガ、ァアア！』
「苦しいか？　痛いか？　それは自然な事だ。だが、逃がさん」
「土の中に潜むのならばいざ知らず、見えているならば遣り様がござる。
　そう安々と喰われるつもりはござらぬよ。
　――その首。しかと、貰い受けるでござる」
　であれば咲耶の一撃もまた振るわれるものだ。
　彼女は柔らかき腹や、目や口の内部。とかく鱗に阻まれぬ所へと、只管に。
　討伐いたす――洞穴を再び掘られ、逃げられては面倒であるが故に。
　今こそ此処で力の限りを尽くさん！
　抵抗する蛇。身じろぎ続ければ、天上より小さな埃や石が舞い落ちてこようか。
　殺されるぐらいならば生き埋めにしてやろう――と？
「させません。ソレを成させないために――一刻も早くと、来たのですから」
　アッシュが言を紡ぐ。多少の手傷は必要経費、承知の上で一頭を仕留めに掛かったのだと。
　坑道を害させはせぬ。彼女は再びに赫々たる雷を、その剣に。
　如何なる鎧であれ。如何なる身であれ両断せしめよう。
　――穿つ。その魂を、その命を。
　断末魔の叫びすらあげさせず――雷撃の一閃が、全てを呑み込んだ。
　……静寂が戻る。坑道に。
　この静寂こそ平穏か――再び人が戻って来れば、蛇がいた時とは別の賑やかさを取り戻そう。
「後はザーバ将軍の名前で鎮圧宣言すれば、安心して採掘再開してもらえそうだよね！」
「ええ。ま、坑道の現状確認だけしておきましょうか。
　人が戻って来てもその矢先に崩落したら大変だし、ね」
　然らばヒィロは微笑みと共に、美咲に続くものだ。
　大蛇を物資転用可能か。いやそもそもこの坑道の物資はどれ程使えそうか――
「ふぅ、お疲れ様。さて、と。じゃあ後は此処に何があるのか調査だけしておきましょうか……ええと。鉱物資源はどれぐらいあるのかしら。石炭や鉄鉱石があると燃料資源に出来て便利なのだけど」
「念のため、品質が劣化していないか確認してもらお！　ちょっとぐらいなら放置されてる鉱物とかもある筈だよね！　えーとこれは石炭かな……袋に詰めるだけ詰めていこう！」
　同じく動くのはイーリンやアリアも、だ。バーデンドルフ・ラインに情報として持ち帰れば、後々の再開に伴って動きもスムーズになるだろう、と。
「まぁ……蛇共が散々穴を開けた跡だろうからな。獣道なんて地盤補強も何もされてない危険な所だ。人が踏み入れば如何に崩れるか知れたものでもない――深みまでは往かず、後日編成隊を組んで再調査を行えばいいのさ」
　しかし危険な地まではいかぬ様にと、告げるのはウルフィンだ。
　安全は確保された。本格的に取り戻すのは、後日でもいいだろう、と。
　そう――蛇の道は潰え、この地は鉄帝に――取り戻されたのだから。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

　依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ！
　坑道を取り戻す事に成功しました。やがてザーバ派の手が本格的に入り、採掘が再開される事でしょう……
　ありがとうございました！

●運営による追記
　本シナリオの結果により、＜六天覇道＞南部戦線の技術力が+10されました！