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シナリオ詳細

逆光騎士団と沼地の魔女

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●剣はみなのためにあり
 ネメシス国教に属するノフノ・ワンソン教会、通称『逆光教会』。
 町一番の大きさを誇る建物には、今日も多くの住民たちが入り、週一度の祈りを捧げていた。
 ネメシスにおける教義は教会によって違いがあるが、ここ逆光教会の教えはシンプルである。
「我々は民の自由と意志を尊重し、罪をまねく心を赦し、悪を憎む心を赦し、未熟なる我らの学びと育みを尊びます」
 両手を組んで、巨大なシンボルの前に祈りをささげる女。
 一見シスターのようにも見えるが、それは僧服が質素であるがゆえのこと。
 彼女には奇妙に光が差し続け、質素な僧服のシルエットだけを人に見せる。それゆえ彼女は『逆光』と呼ばれ、教会や騎士団の称号にも用いられた。
「此度我らをお守りになる逆光騎士団に、新たな騎士が加わります――プリクル」
 声をかけられ、前列のベンチから一人の少女が立ち上がった。
 銀の聖鎧を纏った少女プリクルである。
 『逆光』はひざまずいたプリクルの両肩にワンドを一度ずつのせ、祈りの言葉を呟く。
「あなたに『茨』の称号を授けます。逆光騎士団の一員として、これからも皆の自由と意志のため、はたらきなさい」

●沼地の魔女
「彼女が、今回の依頼人……もとい、依頼案内人のプリクルさんよ」
 あるレストランの個室席。『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)に紹介されたのはプリクルという名の少女騎士であった。
「ローレットの皆様、よろしくおねがいします! プリクルっす……です!」
 緊張しきった様子のプリクルは自分の頬をぱちぱち叩いてから言った。
「皆さんにお願いしたいのは、町の南にすまう『沼地の魔女』の討伐っす!
 逆光騎士団の先輩方は町の警備や最近頻発してる誘拐事件の捜査で手一杯なんす。新米の自分なんかにはできることないので……はは……皆様の案内を、させて頂いてます」
 乾いた笑いは自信のなさからくるものか、プリクルは頭をかいた。
 プリクルの仕事は現地までの道案内と戦闘への協力である。
 プルーがクラムチャウダーをスプーンで混ぜながらほおづえをついた。
「『沼地の魔女』というのは通称でね。言ってみれば怪物の一種よ。
 一応人間ではあるのだけど、人間であることをやめてしまったのかしら……容姿は醜く歪んでいて、大量の泥人形を使役しているわ」
「可能性は低いんすけど、誘拐事件の犯人かもって疑いもかかってるんす! 沼地の魔女をやっつけて、町の皆さんを早く安心させてあげたいっす!」
 プリクルは拳を握り、興奮したように立ち上がった。
「ローレットの皆様! 改めてよろしくお願す――お願いします!」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:沼地の魔女の討伐
 オプション:???

【概要】
 南の沼地には『沼地の魔女』が支配する領域があります。
 魔法を使うくらいはいいとして、『沼地の魔女』は教会に反する行動をたびたびみせており、町で頻発する誘拐事件の犯人ではという疑いがかけられています。(他にも容疑者は沢山いるため、逆光騎士団の多くはより重要性の高い人物への捜査を進めています)

【戦闘について】
 沼地に入ると突然『泥人形』が大量に襲ってきます。
 子供くらいの背丈をした土と泥とおぞましい植物によって作られたっぽい人形です。これらは複数同時に出現し、格闘攻撃をしかけてきます。

 泥人形を倒しきったら沼地の奥へ進み、魔女の住処へ突入しましょう。
(屋内外をばたばた動き回るような戦闘になると思われます)
 『沼地の魔女』は先程と同じ泥人形を大量に呼び出しつつ、戦闘を行ないます。
 攻撃力が高い上、自身の最大HP・防御技術を高めるスキルなどを使います。
 ここでの泥人形たちは『組み付き(R0に小ダメージ+【暗闇】)』を使用します。

【おまけ解説】
●逆光教会
 ネメシス国教に連なる教会。
 天義って聞くとすぐ頭おかしい人を想像しそうですが、日本のキリスト教会や寺みたいにおだやかで真面目なところ。
 町の中心的存在で、教会所属の騎士団が警察をはじめ様々な治安維持要員となっている。
 騎士団さえしっかりしていれば町は安泰という精神なので不正はしない。(したやつは死ぬより酷いめにあうので誰もしない)
 管理者の『逆光』がその名の由来。

●プリクル
 逆光騎士団の新米騎士。
 立派な騎士だった父のあとを継ぐ形で騎士にとりたてられたが、実戦経験が浅くて自信がない。
 装備は立派だし訓練も積んでいるのでPCと同じくらい戦えるが、なにぶん自分に自信が無いのでメンタルは弱い。
(プレイングで指示を出さなくても自動で動くAIつき)

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 逆光騎士団と沼地の魔女完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月10日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
リジア(p3p002864)
祈り
シラス(p3p004421)
超える者
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
凍李 ナキ(p3p005177)
生まれながらの亡霊
ミシュリー・キュオー(p3p006159)
特異運命座標

リプレイ

●逆光騎士団と逆光教会
 枯れた葉を踏んだ靴の形がくっきりと残る。
 うすくぬかるんだ土は湿り気を帯び、夏の終わりだというのに異様に蒸し暑かった。
 足跡のひとつも残っていない枯葉だらけの道を、イラギュラーズたちはゆく。
「逆光教会の教義、とても素晴らしい教義であると思います。教えに反する魔女……一体どんな人物なのでしょうか」
 ぼんやりと呟く『特異運命座標』ミシュリー・キュオー(p3p006159)。
 ミシュリーもまたネメシス(天義)出身ではあるが、教会やその土地によって教え方やありかたが細かく異なるようで、すこしばかり新鮮に見えているようだ。
「うーん……」
 会話に加わるか加わらないかの曖昧な態度をとる『カースドデストラクション』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)。
(天義の教会。反する方にもそれなりの理由がありそうだと邪推してしまいそうだけど。……今は控えましょう。プリクルさんがいる所でする話でもないし)
 ちらりと見た視線の先では、綺麗な鎧を纏った騎士プリクルがぎこちなく歩いていた。
 背筋を伸ばして顎を上げ、身体から軋むおとが聞こえるのではと思うほど緊張している様子だった。
「プリクルだったか」
「ひゃい!」
 『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)の問いかけにもこの調子である。
「まず自分が何をしたいか考えればいいんじゃないかな。そうすればそれに合わせておのずと力になっていく、と僕達は思ってるよ」
 どうやらランドウェラは自分の哲学について語っていたらしく、プリクルはそれに対して『ヒャイ!』とぎこちない返事をしていた。
 なったばかりの理想的騎士像やら面識のないローレットとの距離感やらが混ざり合い、振る舞い方がわからなくなっているらしい。
「………………」
 その様子をなんともいえない顔で見ている『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
(聖教国ネメシスって来るの初めてだけど、なんだか聞いてたイメージとちょっと違うね……)
 物事はセンセーショナルな物事が優先して広まるもので、先入観が実像を大きく歪めることも往々にしてある話である。
 すごい宗教観をごり押しして頷かない奴全員殺すのが天義の全てではないというのは確かなようだ。むろん、逆光教会が天義の全てでもないので早合点はできないのだが。

 一旦おさらいをしておこう。
 このたびローレットに託された依頼内容は『沼地の魔女』の退治である。
(それにしても不思議だな。人をやめれば、人でなくなったものは人から淘汰されるのか。ソレがなにかをしたと確定しているならば因果応報というものだが、疑惑だけで討伐対象となる。本当に、謎だ。生き物は破壊を嫌うと思っていたが……破壊で得る安息というものもある)
 『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)は集団の後ろを歩きながらそんなことを考えた。
 それも無理からぬというか、今更な話なのだが、『沼地の魔女』が討伐すべき対象である理由を、そういえば誰も聞かされていなかった。
 『モンスターを倒しましょう』と同じ理由で語られているのでうっかり飲み込んでしまいそうだが、何かの理屈を飛び越えているようにも思えた。
「魔女が誰かは知らねえが、こんな場所に住みついてんだ。クソ野郎に決まってるぜ」
 『特異運命座標』シラス(p3p004421)がじめじめとした沼地の様子に悪態をついていた。
 まあ幻想や海洋なんかでも盗賊や海賊と聞いただけで『とりあえず殺しとこうか?』となることも時々あるので、この町の常識なのかもしれない。
「で、何が出るんだって? 泥人形? 何体出るんだよ」
「どれだけ来たってかまわないわ。倒して進みましょ。私達は先へ進むために来たんだもの」
 『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)が当然でしょという顔で周囲を観察している。
 なにを観察しているのかと思ったら、自然会話や霊魂疎通を使って情報を集めようとしているらしかった。
「そういえばモンスターのこと詳しいだろ。泥人形のこと何か知らねえのか?」
「泥人形とだけ言われてもね……動く土のモンスターなんていくらでもいるから。それより、変なのよね」
 エスラが難しい顔をした。
「植物も霊魂もだんまりなの。霊魂もあるんだかないんだか……」
 理由はいくつか考えられるが、決めつけはよくないということで一旦保留である。
 そうしていると、『生まれながらの亡霊』凍李 ナキ(p3p005177)がぽつりと呟いた。
「『たすけて』と、言っています」
 こんなおどろおどろしい所にはおばけでも出そうだと(自分のことは一旦置いておいて)語るナキもまた、あるのか無いのか存在の曖昧な霊魂に語りかけていたらしい。
 エスラにできなくてナキにできたということは、恐らくは霊魂のあつかいに優れたがゆえの差があったということだろう。それだけかすかな、聞き取るのも難しいような声であったともいえた。
 もう少し語りかけてみようか。そんな風に相談し始めた段階で、彼女たちの足下から泥人形が飛び出してきた。
 一体だけに留まらない。右からも左からも、後ろからもその向こうからも、次々に泥人形が現われ、乱暴に飛びついてくる。
 あまりにも唐突な、しかし回避のしようがない戦闘の始まりであった。

●泥人形
「近づかれたくない人は私の後ろに下がって!」
 アンナは水晶の剣を握り、泥人形たちを阻むように立ち塞がった。
 通常の二倍は阻めるプレッシャーをはなつアンナ。しかしそんな彼女でさえ、大量にわき出した泥人形の数に圧倒されたちまちに取り囲まれてしまった。
「きりがないわ……!」
 ならば一気に沢山やっつけるまでとばかりに、アンナは泥人形たちを次々と串刺しにしていく。
 一方でエスラはプリクルと協力する形で魔術を連射していた。
「確かにあなたは確かに新米かもしれないわ。だけど、あなただって逆光騎士団の一員なの。見せてあげて、あなた自身に。『茨』の騎士の働きを。道なら私達が切り開くわ!」
「ど、どうもっす! けどイッパイイッパイかもっすー!」
 攻撃は得意だが防御はからきしというエスラに変わって防御を整えようと、エスラに群がろうとする泥人形たちの攻撃から庇うプリクル。
 騎士に任命されるというだけあって実力はたいしたもので、攻撃を片っ端からはねのけていた。
 プリクルの戦闘スタイルは高い自己回復能力と反撃性をもったタンカーである。今回はそれがうまくはまっているようだ。
 反撃に傷ついた泥人形たちを範囲攻撃で吹き飛ばすランドウェラ。
「こう群がってくると『ロベリアの花』が使いづらいね……まあ、仕方ないか」
「そういうときは……」
 焔が炎を纏った槍で泥人形たちを切り裂いた。
 回した槍で次なる泥人形を打ち払うと、どこからともなく作り出した炎の爆弾を投擲。新たに発生したばかりの泥人形たちを巻き込んで爆発した。
「こんな感じで!」
「それが一番かな」
 ランドウェラは距離を取りながら魔力の弾を連射。
 デスダンスの末に砕け散る泥人形。
 新たに発生した個体を、エスラがまってましたとばかりに『ロベリアの花』を打ち込んで炸裂させた。

「どれだけいるんだ? まさか無限にわき出たりしないだろうな」
 どこからともなくマジックカードを何枚も取り出すと、魔術の炎をともして次々と投擲するシラス。
 泥人形は燃え上がるが、倒されるたびに次々現われては突っ込んでくる。
 対処が楽なのは泥人形の機動力を含めあらゆる能力が低いせいだ。とにかく数だけ沢山居るといった印象である。
「それに……なんだか嫌な感じがします……」
 あちこち呪符を翳して魔弾を乱射していくナキ。
 この先の魔女退治に力を温存する目的ではあったが、彼の攻撃でも充分に効果があるようだ。泥人形が次々とけるように壊れていく。
「近づかれるのはいやなんですけど……!」
 ミシュリーは腕をぶんぶんと振っておまじないを唱えると、飛びかかろうとする泥人形を吹き飛ばした。
 放物線を描いて飛んでいき、木にぶつかって破壊される泥人形。
「……おや?」
 破壊されたあとの泥人形を観察してみると妙な感じがあった。
「どうした」
「たしか泥人形って、植物みたいなものが沢山埋まってるような状態で現われてますよね」
「そのはずだが」
 リジアが今更なにをと言いかけてから、ふと気づいた。
 壊した後の泥人形に、植物の残骸が見当たらないのだ。
「エスラ。ゴーレムじゃない。土を利用する植物のモンスターに心当たりはあるか」
「植物? 植物……あっ」
 はたと思いついたようにして、エスラは焔のほうへ振り返った。
「焔! さっきの炎爆弾、新しい個体に投げつけてみて!」
「え、こう?」
 言われるままに爆弾を投げつける焔。
 爆発に巻き込まれて散っていく泥人形だが、よく見れば泥人形の内側にあった植物が炎に包まれてぐねぐねと動いているのが見えた。
 パチンと指を鳴らすシラス。
「なるほど。つまりこういうことかな?」
 泥人形めがけて同じようにフィンガースナップをすると、突如泥人形が燃え上がった。
「とにかく大量に沸いてくると思ったら、タネはEXFだったわけだ」
「分かってしまえば……簡単だな」
 リジアはぶわりと翼を展開すると、破壊の衝撃を連続して叩き付けていった。
「復活に失敗するまで破壊し続けるだけだ」
 壊れた泥人形から離脱しようとした植物をがしりと捕まえ、さらなる破壊の衝撃を叩き込んでいくリジア。
 ついには動かなくなった植物が、ぬかるんだ土にべたりと落ちた。

●沼地の魔女
 泥人形たちは数でせめて連携をかき乱すことだけはうまかったが、個々の戦闘能力がとても低いがためにたいして消耗することはなかった。
 強いて言うならすごく面倒な相手だったということだけである。
「だが魔女自身も泥人形を利用するはずだ。備えていけ」
 リジアは沼地の奥に存在する小屋の前へと立った。
 不思議な形の小屋だ。
 形状を他人に説明するのが難しいが、切り分けたロールケーキのような形とでも言えばいいだろうか。
 建物全体は赤紫色をしていて、とても人が好きこのんで暮らしていそうな建物には見えない。
「……」
 人の気配らしいものはあるが、こちらに対するアクションはなかった。
 突入するか。
 リジアは強く息を吸ってから、扉もろとも破壊すべく魔力を放出した。
 どばんと音を立てて内側に飛んでいく扉。
 その先で待ち構えていたであろう魔女に直撃した――かに思えた次の瞬間、扉を粉砕しながら魔女が突っ込んできた。
 顔は醜く歪み、肉体もまた人間とは思えない色形をしていた。だが一番人間だと思えなかったのはその戦闘能力である。
 一瞬で距離を詰めると、リジアの顔面に枯れ木のような手のひらを翳し奇声をあげる。ただそれだけでリジアは吹き飛ばされ、へし折る勢いで樹幹へ激突した。
 魔女は『ギャギャ』と人語を忘れたかのように叫び、手で空間を横一文字に裂く。
 追って突入しようとしていたランドウェラやプリクルたちまでもが一斉に吹き飛ばされ、地面をバウンドしながら転がった。
 さらには土からわき出るように現われた泥人形が足や手にしがみつき、はじけた泥を顔に浴びせようとしてくる。
 それが『泥を肉体のように纏った植物のモンスターである』と分かっている今、いたずらに恐怖することはない。
 ランドウェラたちはそれを素早く引きちぎり、むしろ引きつけるように攻撃していく。
 泥人形を大量におびき寄せ、エスラに呼びかける。
「構わない。やってくれ」
 エスラの『ロベリアの花』は泥人形を一斉に攻撃するのに便利だったが、とにかく近接攻撃をしかけようとする連中には使い勝手がわるい。その間をとるように、ランドウェラは防御を固めて『自分を中心に』打たせる作戦に出たのだった。
「加減はできないから、こらえてね!」
 魔術を放つエスラ。
 泥人形が次々とはじけ飛んでいく。

 一方で、焔は炎を纏った槍を使って魔女へと襲いかかっていた。
 心臓をひとつきにするような絶妙な攻撃。
 しかし魔女は『ギャ!』と叫ぶと跳躍し、空中を泳ぐように回転しながら焔の喉に二本指を走らせた。
 激しい炎が焔を覆い、爆発を起こして吹き飛ばす。
「ボクに炎で攻撃するとか……!」
「下がってください……!」
 追撃を防ぐようにしてナキがマジックロープを放つ。
 ナキの生み出したオーラの縄は魔女の首にぐるりと巻き付いたが、一方の魔女はその縄をにらむだけで千切ってしまい、ナキそのものもまたひとにらみで吹き飛ばしてしまった。
 不可視の衝撃に宙を泳ぐナキ。それをジャンピングキャッチしたミシュリーが、よしよしと頭を撫でて彼を回復してやった。
「ちょっと強すぎるというか……本当に人間をやめてませんか? 魔女って、こういうのでしたか!?」
 魔女にも色々種類がある、と言ってしまうとそれまでなのだが。
 『悪魔と契約し身を堕とした女』という意味合いでの魔女であれば、この状態もありえる話であった。
 混沌世界における悪魔というのはつまり、魔種そのものをさしているのだろうから。
「魔種に傾倒しすぎた存在。狂気に犯され過ぎた存在……討伐対象になるわけです」
 心のどこかで逆光騎士団が不正義の罰としてこんな風にされてるのかと思ってもいたので、安心半分である。
 余談になってしまうが、本当に不正義を働いた騎士がいたならまず教会が野放しにしないはずなので、そういう意味でも安心である。
「となると、気になってくるのは『あの件』だよね」
「……ああ」
 シラスとリジアが二本指や翼に魔力を込めて連発し、魔女を屋内へ追い詰めていく。
 足下に落ちていた火かき棒を踏みつけて跳ね上げ、キャッチからの殴打。
 それを反射的に魔術の壁で防いだ魔女。反撃に腹を貫くように魔術の手を突き出すが、割り込んだプリクルがそれを代わりに受け止めた。
「い、今っす!」
 目を大きく見開いたアンナが、剣を素早く走らせる。
 『ギャ』と短い悲鳴をあげた魔女が、首筋を切られ、奥の暖炉へと激突した。
 首からだくだくと血を流し、けいれんしながらゆっくりと手を上げる魔女。
 その手首を切りつけ、魔女をにらみ付けた。
「誘拐の容疑が貴女にかかっているけれど。心当たりはあるかしら? なんて」
「どうやら人の言葉も忘れちゃったみたいだね。可哀想に」
 ぱたぱたと手を振るシラス。アンナはため息をついて、血を流すプリクルへ振り返った。
「新米と聞いていたけれど、さすが騎士ってことかしら」

●誘拐事件
 アンナたちは町で頻発している誘拐事件への関与を疑って魔女の捜査を進めていた。
「人の住処とは思えないわね」
「まるで虫とか動物だよね」
「討伐されるのも無理はない、のか」
 『魔女の家』はひどいものだった。焔やリジアもあちこち捜査してみたが、生活に人間味がまるで感じられなかった。
 虫とか草とか食べて生きていたっぽいことや、ヤバげな魔術で植物モンスターを服従させていたことなどがわかった。
「これを見てくれ。どうやら操るための呪具だと思うんだけど」
 ランドウェラが持ってきた石の円盤めいたもの。
「おや、それが例の?」
「魔女がここから町に出た痕跡はなかったですし……」
「関与してるとしたらその植物モンスターっすよね……じゃない、ですよね」
 ミシュリーとシラスは魔女を適切に『処理』して、プリクルとともに戻ってきていた。
 その一方で、エスラとナキは家の地下で別のものを発見していた。
 小さな子供と思しき骨である。
 ほんのかすかに残った霊魂の意志をさぐってみたところ、魔女が食料にしていたことがわかった。
 そしてもう一つのことも。
「皆さん、聞いてください」
 地下から戻ってきたナキとエスラが、少し深刻そうに言う。
「魔女は誘拐に関与していたわ。誘拐したひとを、どこかへ送っていたみたいなの」

 事件は終わり、また新たな事件へとつながっていく。
 ローレットのイレギュラーズたちがこの先へと進めるかどうかは、運命だけが知っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――next incident?

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