シナリオ詳細
<総軍鏖殺>デパール防衛戦
オープニング
●デパールの町にて
「くそっ! 奴等、何処からこんなに人数を集めたんだ!」
デパールの町の自警団が、焦ったように声をあげる。
鉄帝でデパールといえば、交易の拠点として名高い。
周囲に様々な職人の村などがあるせいか、そうした村々の職人による選りすぐりの品がデパールに並び、この近辺でならデパールに行けば間違いない、と言われる程だ。
それ故にデパールには様々な品と金品が集まり、「こう」なるまではスチールグラードから来る人もいたほどだ。
しかし、それ故にだろうか。デパールは今襲撃を受けていた。
相手は凶悪なことで知られる「デスアイン盗賊団」だ。
盗賊……というよりも凶賊に近いが、攻め込んだ村々で奪い、殺す……そういったことを繰り返した連中だ。
最近は官憲に追われ姿を隠していたはずだが、このタイミングで大きく動き出したようだ。
「ガハハハハハ! ちっと耐えたところで無駄だぞ! 助けなんか来ねえ! 今は力が全てなんだからなあ!」
デスアイン盗賊団の首領、ロートが豪快な叫び声をあげる。
事実、新帝の勅令により鉄帝の警察組織は解体されている。
いくら耐えても、其方方面での助けは期待できない。
できないが……別の希望は、ある。
自警団は歯ぎしりしながらも、今は籠城戦を続けるしかなかった。
●デパールの町を救援せよ
帝政派。それは行方知れずとなっている前皇帝ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズの復権を狙う勢力である。
今回は帝位が魔種、それも『冠位憤怒』に奪われたため、皇帝が変わったことを……少なくとも暗黙下では認めていない。また最悪でも『魔種ではない者』が帝位にあるべきと考えているのだ。
そんな帝政派の中心人物は鉄宰相バイル・バイオン。
立場上、新皇帝バルナバスとは交渉どころか、従う余地すらないため、混乱の渦中にあるスチールグラードからの撤退を余儀なくされた状態でだ。
現在は近隣の街『サングロウブルク』に仮の拠点を構え、残念ながら一方的な防戦を強いられている。
これは、そんな帝政派からの依頼であった。
「デパールの町は我々帝政派に恭順を宣言している町だ。資金面、物資面でも援助をしてくれている」
伝令に来た鉄帝兵士はそう説明してくれる。
そう、商業で成り立っているデパールは新帝の勅令から始まった群雄割拠を受け、いち早く帝政派に味方することを宣言した町だった。
当然、帝政派もその恩恵をある程度受けている。
しかし今、そのデパールを凶悪な「デスアイン盗賊団」が襲撃しているのだ。
最悪なことにデスアイン盗賊団はデパールからの決死の伝令をほぼ皆殺しにしており、サングロウブルグまでの知らせが遅れていた。
襲撃からおよそ2日が経過しているが、今から急げば半日程度で到着するだろう。
その頃にはデパールの門が破られている可能性は非常に高いが……まだ、間に合うだろう。
デスアイン盗賊団がデパールの人々を皆殺しにして略奪を済ませる前に、奴等を完全に排除する必要がある。
「我々も同行する。デパールの町の防衛は急務……よろしく頼む」
- <総軍鏖殺>デパール防衛戦完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年10月23日 22時50分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●デパールの町救出作戦:A班
悲鳴と破壊音。デパールの町は、そうしたものに包まれていた。
お昼時……通常であれば楽しい声が聞こえてくるはずなのに、どうしてなのか?
その答えはデパールを襲っているデスアイン盗賊団のせいだと、そうとしか言えない。
「力が全て……暴力で奪うのは手っ取り早いが作り手が死んだら新しい物は作られなくなる……例えば食料を自身で作らずに奪うだけだったら奪う相手が、肉にできる生物がいなくなったら、食料なども尽きてどうしようもなくなる。そういう手段でしか生きられなかったのか、ただ力振るいたいからかは知らんが既に死者が出たなら、情け無用でいいよな」
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は超聴力で戦闘音がする方向を把握して、シュヴァくんの馬車を操り急いで向かっていく。
そう、デパールの町はすでに戦闘状態にある。だからこそA班とB班、2つの班に分かれて行動していた。
そしてウェールはA班。B班側が向かいにくい方、すぐに助けに行かないと大変そうなところの救援を優先するべく、鉄帝兵士3名を一緒に馬車に乗せていた。
「死ぬな。生きろ。そして一人でも多くの誰かを助ける兵士さんたちの力を貸してくれ!」
「任せてくれ!」
「鉄帝に起きてる騒動はまだ終わらず。戦う力が、戦い方を知ってる兵士さん達ならここで死ななければもっと大勢の人を助けることができるだろうから無茶だけはしないでほしい。無茶するのはパンドラがあるイレギュラーズの仕事だからな」
それはまさにウェールの本音だろう、兵士たちもウェールを信頼するように頷く。
早速というわけではないが、家に踏み込み襲っていた盗賊団員を『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)と『帝国軽騎兵隊客員軍医将校』ヨハン=レーム(p3p001117)が倒していた。
「まぁ、こんなご時世なので賊の生き方というのもわからんでもないがね。皆殺しはラインを超えちゃったかな。僕は人を救うが、これは人ではないなあ」
この家に居た人々はなんとか無事だったが……これと同じ光景が町中で繰り広げられているのは確実で、此処に彼等を残していくわけにもいかない。
「近隣の住宅か集会場へ逃げてください。兵士さん、お願いします」
「分かった。俺が護衛しよう」
鉄帝兵士が1人、家族に寄り添い護衛するようにライフルを構え町中を走っていく。
「賊が現れてから二日半、街の方々はよく頑張ってくれました。その中で頼ったのが我々なら、せめてそれに応えないといけません。可能な限りを救い、そして全ての賊を始末します。それが我々に出来る事です」
「ウェールさんが馬車を出してくれたおかげでで移動が楽だね。目立ちそうでもあるが、まぁ、こちらを狙ってくれればそれはそれで」
オリーブとヨハンはそう言い合うが、こちらが目立てばその分デパールの住人の安全度が高まるという点では今ヨハンの言った通りに「それはそれで」なのだろう。
「ったく、本当に仕方のない連中ばかりだな。皇帝一人変わった程度でこの有様、元から腐ってたも同然じゃん。今この国に悪人を閉じ込める牢屋はないってのに、その意味を悪人共は理解してんのか?」
屋根の上で『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)もそう呟くが……だからこそ、と言えるだろう。
何をやっても止める官憲は居ない。それはあちらこちらに潜んでいた悪を露呈させるのだ。
官憲が居ない。それは悪党にも、悪党寄りだったものにも甘い蜜のような言葉なのだから。
そう、あえて言うのであれば。連中は理解した上で自らの欲を満たしているのだ。
この場所は、その証明のようなものだと。そう理解できるからこそアルヴァは馬車には乗らず、近くの脇道や屋根の上を移動することを選んだ。
広域俯瞰で可能な限り敵の多い地点を探し、最短ルートでウェールを誘導しているのだ。
高機動を生かしつつ、飛行で邪魔な障害物はスルーするその姿は、航空猟兵の名に相応しいだろう。
「聞こえるぞ! 西だ!」
「よし、先導する!」
ウェールに応えアルヴァが先導し、馬車が現地へと程なく辿り着くその直前。
「やぁ、ちんけな盗賊団が町を襲ってるって聞いて参上したよ」
「なんだあ!?」
「チッ、正義の味方気取りか!?」
「やっちまえ!」
今まさに商店から略奪していた盗賊団にアルヴァが名乗り口上をあげる。
「悪人を閉じ込める牢屋が無いってのは、お前らにとってそんなに嬉しいことなのか?」
悪人を裁く法がないということ、それは悪人は無条件に処刑されても文句言えないこと、このままだとお前らは必ず殺されるということだと。アルヴァはそうゆさぶりをかけていく。
「投降するのなら、命だけは助けてやってもいい」
「ハッ」
答えは、嘲笑。だからこそ、到着した馬車からウェールが銀時雨を放ち、ヨハンとオリーブが飛び出す。
「こんなやつらにやられるイレギュラーズはいないが、自警団や兵士の負傷すら許さない。デパールの人々も当然だ、全員救う。帝国軽騎兵隊客員軍医将校ってのは伊達じゃないんだぜ!」
「そういうことです。これ以上の狼藉は許しません」
オリーブのロングソードが閃き、鉄帝兵士たちのライフルが火を噴く。
A班の迅速な動きは、こうして罪なき人々を救い罪深き者たちを屠っていく。
それはB班の活躍にも、強く……濃く、影響していく。
●デパールの町救出作戦:B班
「治世が乱れている隙を狙って襲撃するなんて……なんて狡猾な人達なんだろう。こんな世の中だから手を取り合って協力していかないといけないというのに……今は少しでも多くの人達の救う為に行動するよ。そして悪い人達は全員ぶっ飛ばすよ!」
B班の1人である『蒼輝聖光』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は事前に精霊操作を使用し、周囲の探索をして貰っていた。
B班が捜索する予定の範囲を一通り確認して貰って、助けを求める人達がいた場所を報告して貰っていたわけだが……これはA班の面々が緊急性の高い場所の救援をしてくれるからこそ出来る捜索法でもあった。
「確かに今の鉄帝は、力が全てなんだろう。だが……その力の使い方を誤ってる奴には、しっぺ返しが来るもんだ。いつかと言わず、今くだしてやろうじゃねぇか。大斧よりも重てぇ正義の鉄槌ってやつを」
「うん、一人でも多くの人を助ける為に!」
『優しい絵画』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)にスティアも力強く頷く。
ちなみにそんなベルナルドの胸元で揺れるのは無名の羽根。
弱者を装うにはピッタリのその羽根の効果か、その辺りにいた盗賊団員がベルナルドに向かって襲ってくるのは羽根の効果かクズっぷりが凄いのかは多少判断に困るところではあるが……。
「コャー。爆釣なの」
「実際問題、俺の武器は絵筆だからな。拳銃なんかに頼ってる奴にとっちゃ、カモがネギ背負って来たように見えるかもしれねぇな。ただ、残念ながら俺は鴨じゃねぇ。愚か者の嘆きを運ぶクロウタドリだぜ」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)にそう答えながら、ベルナルドは蒼穹の絵筆を手の中で遊ばせる。
魔法の微光を纏う不思議な絵筆はそれ自体が唯物ではない名品に見えるが……まあ、盗賊の視点では高そうなもの、程度にしか思えないのかもしれない。
「人の心を持たぬ外道共め。相応の報いを受けさせてやろう。スティア君! 頼りにしているよ! 出来るだけ多くの人を救おう!」
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)もリニアドライブで飛行し上空からそう叫ぶが、その高度は「狙撃される危険性を少なくできる、敵の射程を外れる程度の高度」を維持している。
すでに何度も戦っているが、このデスアイン盗賊団はマリアが一番許せない類の連中であった。
とはいえ、マリアはひどく冷静だ。突出したりはしない。
B班の仲間と足並みを揃えて行軍すること、基本的には住民の安全が最優先であること。
B班は進軍エリア毎に賊を殲滅し順に安全エリアを広げていくこと。
住民は変に動かさず安全確保したエリアの頑丈な建物に隠れていてもらうこと。
それらを円滑に行うべく、マリアは上空から超視力で偵察と索敵を行っているのだ。
胡桃のギフト「炎狐招来」による炎狐も先行偵察とか別ルートとかに向かわせて、捜索範囲を広げている。
加えて広域俯瞰を使用することで、周囲の状況を把握したり、敵の奇襲に警戒したりもしている。
これはかなり素晴らしい索敵作戦であり、早速マリアは次の目標を見つけていた。
「よし、見つけた! 北方向、三軒先! 青い屋根の家!」
家のドアを叩き壊している盗賊団員たちを見つけ、マリアは急行する。
「裁きを受けろ! 貴様らに相応しい雷撃だ!」
対神攻性鎧『雷装深紅』を纏い放つのは蒼雷式・天槌裁華。
「ぐあっ⁉」
「なんだアイツは!」
「引きずりおろしてやれ!」
「1人じゃないの」
胡桃のこやんふぁいあ〜が炸裂し、此処でようやく盗賊団員たちは明確な敵であると思い至ったようだ。
(弱いものいじめが好きなら自分の不利には敏感そうかしら。その辺りを突いて数の不利を埋められるといいのだけれども~)
そしてスティアの福音が響き渡り、ベルナルドがワールドエンド・ルナティックを放つ。
「とらぁ君は私達に付いて皆の救助ともふもふボディで心を安心させてあげて! 戦闘は出来るだけ避けて弱った相手にファイナルとらぁバスターとアルティメットとらぁインパクトを決めるくらいにするんだよ? 君が怪我をしたら他のマスコット達やヴァリューシャ、私も悲しいからね! でも賊に加減する必要はないよ! やる時はめちゃくちゃにしてやるんだ!」
「とらぁ……」
マリアが『VDMランドの謎の生物兼マスコット』とらぁ君にそんなことを叫びながらもマリアは再度の攻撃に移り……そうして盗賊たちを倒していった後。
ついに2つの班は合流し、デスアイン盗賊団の首領、ロートと激戦を繰り広げる。
「チッ……さっきから妙だと思ったら手前等か!」
A班へと襲撃をかけたロートだが、その奇襲は成らなかった。
だがそれでも、その巨大な斧による両断を可能とする膂力は恐るべきものだった。
この一撃の強さであのクズどもを統べていたのだろうと、そう思わせるものがあった。
「さてさてロートくんね、鉄帝国の怒りを買ったなあ。そして引き際も見誤った。デスアイン盗賊団はもう終わりだぞ。切れ味が鋭い斧であればその切れ味を上回る治癒で塞ぎ続けるだけだ。これを押しきれない敵になど何の感情も抱かんよ。さようなら」
「ナメんなあああ!」
ヨハンを狙おうとしたロートだが、ベルナルドのフルルーンブラスターがそれをさせない。
「ご自慢の斧で、俺の一撃をぶった斬ってみせろよ。出来るもんならなァ!!」
「ぐ、おおおお!」
凄まじい威力のフルルーンブラスターにロートは傷つきよろけるが、まだ戦意を失っていない。
「君らの統率力や戦う力があればもっと普通に生きられるはずだ! 他の生き方を考えなかったのか!? 恥を知りたまえ!」
「ハハッ、ふざけんなよ! 今だ! 全部手に入れるのは今なんだよ!」
「ああ、そういうスタンスなんだな」
マリアの叫びに耳を貸さないロートに、アルヴァもそう吐き捨てる。
つまるところ、自分たちならばこの時代で一番輝けると。そう判断した連中なのだ。
そして実際、それを狙えるだけの力を手に入れる可能性も……僅かではあるがあったかもしれない。
まあ、この場でそれは潰すのだが。
「デスアイン盗賊団、名前がダサいのよ。やってることも規模の割にはみっともないので、改名をおすすめしたいの」
ロートをこやんぱんちで胡桃が殴りつければ、オリーブの三光海舟が放たれる。
「く、そっ……手前等さえ来なきゃ、全て整ったってのによ……」
そう言い残し息絶えるロートの死にざまからは、やはり反省など見られはしない。
だが、それはもう仕方のないことなのだろう。
誰かから力尽くで奪うことを選択した時点で、モンスターとさほど変わらないのだから。
「じゃあ、避難した人達を迎えに行こう。 怪我している人達を順番に治療しないといけないし!」
元気な人達には応急処置を手伝って貰おうかな? 人手は多いほどいいからね。わからなかったら教えてあげればいいし! と、スティアは努めて明るい雰囲気で仲間たちに声をかける。
デスアイン盗賊団の連中は、誰1人として改心することなく死んだ。
それはもう仕方のないことだ。しかし、罪なき人々は確かに救えたのだ。
「治療が終わったら皆でゆっくり休みたいね。復興作業は明日から頑張るってことで」
そう、デパールの町の人々の生活はこれからも続く。
だからこそ、まずは心の休息も必要だろう。そして願わくば……今日のことを思い出に出来るような、幸せを。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
デパールの町の救援に成功しました!
●運営による追記
本シナリオの結果により、<六天覇道>帝政派の求心力が+10されました!
GMコメント
鉄帝兵士たちと共にデパールの町に向かいましょう。
皆さんが到着するときは、丁度お昼頃です。
すでにデパールの門は打ち破られ、自警団は町の各所で消耗戦を強いられています。
街に集会場のような大きな建物はありますが、デスアイン盗賊団の動きが素早く避難は上手くいっていません。
弱い者を優先して狙うザ・クズなので避難が難しいのもあるのでしょう。
なんとかデスアイン盗賊団を撃破し、デパールを守りましょう!
●デスアイン盗賊団
・『紅の凶賊』ロート
デスアイン盗賊団の頭領。巨大な斧を持ち、立ち塞がるものを両断します。
ただクズの頭領なので、奇襲攻撃も好みます。
・盗賊団員×50
デスアイン盗賊団の団員です。様々な武器を持っていますが、拳銃は標準装備のようです。
弱い者を殺すの大好きなクズの見本です。
●友軍
・鉄帝兵士×5
鉄帝国の勇敢な兵士です。
ライフルと銃剣を装備しています。
・自警団×総数不明
デパールの自警団員です。
どの程度残っているかは不明ですが、剣を装備しています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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