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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>伏兵は大樹たるや<トリグラフ作戦>

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<トリグラフ作戦>
 ――鉄帝には『鉄道』が存在する事をご存じだろうか。
 線路の上を、多くの荷や人を乗せて走る蒸気機関車がこの国には在るのである。
 平時であればソレは鉄帝各地の資源流通を支える要の一つでもあった、が。

「新皇帝の勅令に伴い、各地の補給線は寸断された――つまり鉄道施設とは連絡が取れなくなったんだ。新皇帝派の暴動に巻き込まれたか、混乱の最中に魔物の類に襲い掛かられたか……」

 不明だが、いずれにしろこのまま放置してはおけないと語るのはゲルツ・ゲブラーである。
 鉄道網は鉄帝国各地に伸びている。つまり、鉄道網を奪還する事が叶えばその周辺地域に物資や人員を運ぶのが容易になる訳だ――軍事拠点が中心であるが故に軍事力は高いが、背後に幻想国という敵国を抱えているザーバ派にとっては、新たなる一手として鉄道網の回復を図りたかった。
 いずれ帝都へ狙いを定めるにせよ、別の地点への行動を狙うにせよ。
 鉄道という施設には大きな価値がある。
 何より。ザーバ派の勢力に程近い鉄道施設『ゲヴィド・ウェスタン』には――
「『列車砲』も存在している……のだからな。
 まぁそれはゲヴィド・ウェスタンの列車砲が無事かを確認せねばならないが……とにかく。南部戦線方面軍はゲヴィド・ウェスタン奪還を直近の目標と定めた。その為にまずは、かの施設へと繋がる攻略ルートの安全確保を行っておきたい」
「――つまり、敵がいたら殴り飛ばせ、と?」
「簡単に言えばそう言う事だな。
 まぁ路線の状態も確認しておきたい……破損している可能性もあるからな」
 列車砲。それは鉄帝国の誇る軍事兵器の一つだ。先述したゲヴィド・ウェスタンという地は駅だけでなく、軍事施設も兼ねておりそういった軍事車両も保管されているらしい。故にこそ奪還の計画を進めんとしている訳か……
 が、いきなり制圧作戦実行とはいかない。
 現状、かの鉄道施設が如何な状況であるのか分かっていないのだ――もしかしたら新皇帝派によって制圧されているのかもしれないし、そもそもその周辺に敵が潜んでいたりするかもしれない……
 故にこそまずは偵察とルートの確保だとゲルツより依頼を受けた訳である。
 ――イレギュラーズがいるは、ザーバ派の拠点たる城塞バーデンドルフ・ラインより北に進んだ『ゲルダ街道』方面。そこは林の中に件の路線の一部が存在しており、この線路を道なりに進めばゲヴィド・ウェスタンにも通じている……と?
「むっ。おいおい――ゲルツ。此処の線路、大きく破損しているな」
「あぁ。これでは鉄道施設を確保しても使用できない……やはり偵察は重要だな。後から拠点に連絡を入れて工作部隊を派遣させよう。修繕さえすればまた使用できる様になるはずだ」
 其処には、大きく線路が破損している現場があった。
 まるで何か『巨大な力』によって叩き潰されたかのような跡だ――
 ……なんらかの魔術が振るわれたのだろうか、それとも。
「より巨大な魔物でも訪れたか――修繕してもまた壊されては敵わない。
 周辺領域を調べてみよう。もしかすればコレを行った原因がまだいるかも……
 むっ!!?」
 原因に関して思考を巡らせてた――正にその時。
 『木』が動いた。風の揺れの類ではない。真実、動いているのだ。
 ――擬態型の魔物か!
 反射的に跳躍すれば直後には激しき衝撃が地を襲う――
『――――』
「チィ! 気を付けろイレギュラーズ、周囲から殺意を感じる――」
「あぁ。こいつは、囲まれてるなッ! 小賢しい連中だぜ!」
 それは新皇帝が誕生してより、鉄帝各地に湧いている天衝種が一角。
 ジアストレントという木に擬態する魔物であった。全く動かなければ魔の気配を精度高く消し去るという話を聞いた事もあるが……噂に違わぬ様だ。一体が動いたのを皮切りに、更にゲルツやイレギュラーズの周辺で敵意が急速に増えていくのを感じる。
 待ち伏せていたというのか? 線路の様子を見に来る人間を奇襲する為に?
「……ならば戦闘力の無い者ではなく、我々だったのは幸いだったと思うべきか」
 眼鏡の位置を整えるゲルツ。奇襲されたのは予想外だったが『やる事』に変わりはないのだと冷静さを取り戻すものである――元より、敵性存在が居れば撃退する事も視野に入れていたのだから。
 こんな所で天衝種如きに邪魔されてなるものか。
 鉄道網奪還計画。
 『トリグラフ作戦』と名付けられたソレは――始まったばかりなのだから。

GMコメント

 ザーバ派は鉄道網奪還計画――トリグラフ作戦を開始しています。
 本命である鉄道施設への攻略の為の第一歩。
 ご縁があればよろしくお願いします。

●依頼達成条件
 全ての敵勢力の撃退。

●フィールド・シチュエーション
 鉄帝南部、ザーバ派の勢力圏内に程近い『ゲルダ街道』です。
 この地には北へ続く路線が存在しています……が。政変による混乱で周辺の状況は不明でした。その為にゲルツと共に偵察に来たわけですが――どうも天衝種達が待ち伏せていた様です。全方位からこちらに近付いてくる無数の魔物の気配を感じています。

 敵勢力を撃退し、周辺の安全を確保してください――!

 周辺の地形は林で満ちています。時刻は夕方ごろです。
 中央付近には林の中を突っ切る様に線路も存在していますが……現在は政変の混乱による影響で汽車は運航していませんので、これの破損はあまり気にする必要はないです。どうせ後で纏めて直すので。

●敵戦力
・天衝種『ジアストレント』×15体?
 大樹に偽造する擬態型の魔物です。
 一切動かなければかなり気配を消失状態にさせる事が出来ます。その特性を利用してか、皆さんを待ち伏せていた様です……動き出した個体達が皆さんを押し包まんとあらゆる方向から包囲せんとして来ています。
 まだ気配を潜めている個体もいるとは思いますが、そう言った個体は多くはない事でしょう。

 能力としては非常に高い膂力による一撃を得意とします。また、枝を伸ばして中~遠距離へと攻撃し敵を捕らえんとする能力も宿している様です。【痺れ系列】や【出血系列】のBSを伴う事があります。
 ただし反面、動きは早い訳ではない様です。
 更にあちこちから現在接近中ですが、まだ距離が離れている個体も存在しています。
 つまりまだ包囲網は完成していません――付け入る隙は十分にあるでしょう。

●味方戦力
・ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)
 鉄帝国軍人にしてラド・バウ闘士でもある男です。
 遠距離射撃を得意とする飛行種です。
 また、射撃程ではありませんが接近戦も出来、皆さんと共に戦います。
 ひとまずは近場の個体を倒さんと射撃を行いますが、他になんらか指示があればそのように動く事でしょう。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>伏兵は大樹たるや<トリグラフ作戦>完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月27日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

リプレイ


 周囲から敵意が接近してくる――その前にとイレギュラーズ達は即座に動き出した。
「鉄帝にも列車があるとは……それは是非見てみたいですね。
 特にこの先には列車砲があるとか――その為にもまずはこの場を切り抜けねば。
 いや……伐採しなければ、ですかね?」
「えぇ。小賢しい樹には相応の報いを差し上げましょう――先ずは包囲の突破から」
 その姿は『ぬくもり』ボディ・ダクレ(p3p008384)や『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)だ。囲まれる前に突破し、態勢を整えんとする――周囲から迫りくる敵意の感情を両名共に察知しつつ、玉兎は其方の方角へと火力を一閃。
 絶大なる神秘を収束させた一撃だ。包囲を破りやすそうな方へ、穴を抉じ開けよう。
「囲まれてる――ってあの動いてる『木』達が作戦の障害になるの?
 ふーん。向こうからノコノコ出てきてくれたなんて、ちょうどいいじゃん。
 片っ端からぶっ潰してって修理用の木材にしちゃえばいいんだよ!」
「インフラは国の強さ……理解できない連中に壊されたままじゃ勿体ないものね!」
「そうなのでして! 線路を敷く為の必要な木材――これはネギが鴨を背負ってき……あれ、逆なのでして? とにかくきっとチャンスなのでして! だからぱぱっと返り討ちにしてやるのです――! ではでは! これより鉄道奪還計画の<トリグラフ作戦>改め<オペレーション・ポッポー>開始でしてー!!」
 更に『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)に『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)も動くものだ。美咲の行動に連鎖する様に『ょぅι゛ょ』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)も動けば――彼女の魔砲たる一閃が戦場に瞬く。
 ぽっぽー! ハイテンション掛け声と共に繰り出されれば、進行方向上に存在せし敵影を薙ぎ払おうか。乱れた所へとヒィロが跳躍一つ。切り込み役として高速の動きの儘に敵を斬りつけよう――!
 然らば美咲も、枯れ枝すら残さぬ斬撃を振るいて追加なる攻勢。
 後続たる者達を引き連れながら更に傷を抉っていけば。
「こういう手合いにはサーモバリック爆薬で森ごと燃やし尽くして……冗談よ、真面目に戦闘するわ。そんな事したら線路も燃え盛っちゃうかもしれないし――ね」
「これも天衝種でありますか……! 樹が動くなどなんたる存在! しかしこれ以上鉄道網を破壊させるわけにはいかない……ここで食い止めるであります!」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)に『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)も其方の方角へと火力を集中させるものだ。冗談めかした言を紡ぐイナリは、ヒィロらの動きに合わせ一点集中突破――天衝種の懐、否。背後へと飛び込んで自らの小刀で切りつけようか。
 さすればムサシも美咲の行動に合わせて速度の儘に敵の身を削る。
 大樹なれど穿てぬ身はあるまい――!
 叩き斬る。連中が枝を伸ばして来ようとも、躱して飛び込み更なる一撃を放ちて。
「一度出発したらなぁ、急には止めれねぇんだよ……その身で味わってもらおうかい!
 行くぞゲルツ――遅れるなよ!」
「ああ。精々置いていかれない様に尽力するとしよう……!」
 然らば『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は殿を務めながら、ゲルツにも声を掛ける――言うなればイレギュラーズ達が取っている作戦は、包囲が完成する前に一点に穴を開け、更にすぐ傍にいる次の敵目掛けて突撃していくという形だ。
 そう。それはまるで包囲の為に円として形成された『線路』に沿う様に。
 ――『山手線』という単語を知る者であれば、なんとなし想像も付きやすいかもしれない。
 肝となるのは止まらぬ事。肝となるは迅速である事!
 故にゴリョウも前面へと全力を注ぐ。意志を込めた眼差しをもってして。

「トリグラフ作戦に相応しい『見立て』だろ?
 俺ら自身が汽車になりゃいいんだ! ま、到着する駅は踏みつぶすんだがな!
 さぁ! 『イレギュラーズ』号、出発侵攻ってなぁッ!」

 自らに注意を引き付けんと――激しき気を宿した視線を叩き込むのであった。


 天衝種ジアストレント達は徐々にイレギュラーズ達に近付かんとしていた――しかし。

「あはっ! おそいおそーい! そんなんじゃ一生追いつけないよー!」

 それよりも彼女らは遥かに早く動き続けていた。
 ヒィロが変わらず先陣にて斬り込んでいく。その身を光らせ、まるで誘導灯の様に誰しもを導きながら――だ。それは味方への目印であると同時に、敵に対しても目立つようにする意図が故に。
 天衝種らは樹で出来た腕を振るいて彼女を止めんとするが、しかし止まらぬ。
 挑発する言と共にヒィロは己が儘に在り続けるのだ――そして。
「……木の魔物って薪や炭にできるのかな? 何で出来てるか、後で確認したいね」
「ぽっぽー! 線路に立ったら轢かれて危ないって教えてあげるのですよ!!
 汽車は急には止まれないのです! だから――
 アクセル全開! フルスロットルで突っ切るのでして!!」
 ヒィロに注意を引き付けられた横っ面を美咲やルシアが即座に追撃した。
 美咲は特にヒィロの動きに即応する様に。突出の繰り返しを維持できるように注意を怠らぬものだ――傷を負えばすぐさま負傷を『切り離し』治癒できるように。ルシアはまたもオペレーション・ぽっぽーの化身と成りながら彼方に至る魔力の奔流を放とうか――
 眼前には二体の天衝種。
 いずれも頑強そうであるが、こんな程度で押し留められると思うなよ――!
「うむ。今の我々は正に鉄道のよう……でありますな!」
「おぉよ! 後ろの方は俺に任せときな――皆は全力で前の方を頼むぜ!!」
「承知でありますゴリョウ殿!」
 続け様ムサシも天衝種を薙ぐ様に踏み込むものだ。手数の多さをもってして大樹を斬り倒してやろうではないか――後ろの方は常に殿としてゴリョウが警戒している。敵が近付いてきているか、足音の反響をその耳で感知せんとしながら、だ。
 勿論、速度を優先しているが故に陣形の精密さまでには拘っていられない。
 一か所に留まり敵を迎え撃つ――と言う様な戦術ではないからである。もしも一度でも止まってしまえば瓦解する……とまでは言わないが、移動してきている天衝種達に囲まれてしまい作戦の長所が潰されてしまうだろう。
 だからこそ常に呼吸するが如く全力を投じていくのだ。
『――――!!』
「ほう。流石にやられっぱなしではありませんか――しかし」
 刹那。そんな狙いを悟ったのか、強引にでも動きを止めんとする天衝種が大きく腕を振りかぶった。巨体を利用した一撃は正に地を揺らすが如く……だが。
 それを真正面から受け止めたのがボディである。
 あぁ思った通り素晴らしい膂力だ。只人であれば粉砕されていたかもしれない。
 ――だが。
「私を倒すにはまだ足りない――来い。皆様には傷一つつけさせません」
 続く二撃目。ソレに対してはカウンター気味に得物をぶつけ貫き穿つ。
 枝を伸ばして来れば剪定してくれようか。
 禁忌たる人造妖刀が、連中の身を裂く度に――輝きを増している気がする。深く抉れば緑色の血が噴出して……わぁトレントってこんな青汁みたいな血が出るんです? びっくり。
「なんともまぁ、面妖な……しかし皆々様、なんとも俊足たる者。
 落伍せぬ様に気を張り詰めておかねばなりませんね――」
「あぁ。しかし、これほどの俊敏さがあるからこそに出来る作戦でもあるな」
 次いで敵の下へと駆け抜けていく者らに遅れぬ様にとしているのが玉兎やゲルツである。移動に気を付けつつ敵があらばゲルツは射撃支援を行い、玉兎は敵の動きの阻害を狙うおう。トレントらは巨体で在ればこそ懐に至れば、魔の放出も容易い。
 と。穿ちながら玉兎は思考するものだ――己が服装を。
(……常々思っておりましたが、やはりこの衣は戦場においては鈍重で不適ですわね)
 さりとて、皆様のように蝉の羽が如き薄布に身を預けるのは躊躇われるところ。斯様に、風でも吹けば飛びそうな代物など、そもそも衣装として適しているのか――しかし神使の使命の前には羞恥心など――ふむむ。
 悩ましい。けれど、いつか時に余裕がありし時に検討だけはしてみようかと……彼女は頭を振って雑念を振るえば、眼前に集中したるものだ。
 ――ある程度の道のりを進んできたが、今の所イレギュラーズ達の作戦はうまく行っている。それは皆の移動速度がかなり速いという事が起因しているだろう……作戦を支える根幹である機動の力。それがしかと備わっていればこそ、だ。
「行けそうね――連中は随分と鈍い様だし、このまま――
 っと。思っていれば団体さんのお出ましみたいよ!」
 が、直後――優れた三感を抱くイナリが気付いた。
 眼前より迫りくる天衝種の数が多い、と。こちらへの移動途中で合流したのだろうか?
 いずれにせよ数が多ければ速攻とはいかなそうだ――と、更には。
「ッ! そこ、潜んでいるわ! 天衝種よ!!」
「だいじょーぶ!! ボクなら反応できるもんね!!」
 イナリの観察眼によって見抜いたのは、じっと動かず気配を殺していたジアストレントだ。周囲の植生と微かに違う――しかしよく見なければ見抜けぬ誤差――の気配をイナリは瞬時に嗅ぎ取り声を張り上げる。さすれば奴めが奇襲せんとうごくものだ、が。
『――■■■!!』
「へっへーん、効かないよ!
 じゃんけんは後出し最強って習わなかった? 先に動いたそっちの負け!
 大人しく伐採される事だね!」
 ヒィロには通じぬ。獣種としての天性の才が反射なる動きをもってして躱すのだ。
 他の面々に至ってもイナリの注意により即座に跳躍――さぁ。そちらの反撃は、その程度で終わりなのだろうか?
「然らば……一気に片付けさせて頂くであります! ムサシ・セルブライト――参るッ!」
 掛け声一喝。
 隠密状態から姿を現したトレントへと――ムサシが必殺剣たるV字斬りを直撃させた。


 かき回した包囲網。最早天衝種達の狙いは崩れ果てていた。
 連中の動きはただ感じ得る人間の気配の下へと向かうのみ――そして。
「このまま返り討ちにしてやるのでしてー!
 オペレーション・ポッポーの礎にしてやるですよ――!!」
「さぁてさて! いよいよ佳境って所だが……俺にもう少し付き合ってもらおうかねぇ!」
 その向かってくる連中をルシアは纏めて吹っ飛ばす。自らに戦闘の加護を絶えぬ様に降り注がせながら――虹の奔流を幾重にも渡って紡ぐのだ。然らばゴリョウはそんなルシアなどを狙う天衝種を己に引き付けんとする。
 傷を負った者がいれば治癒の術を振るい、そうでなくば真正面から受け止めよう。
 敵も、潜んでいた個体も出てきて全て集合してきた。
 あと一歩力の限り踏みとどまる場だと確信――すれば。
「お強いですね。お陰で貴方の体がこうも割れた」
 ボディもまた耐えうるものだ。
 彼の強靭なる肉体は、躱すに向かぬが堅牢たる要塞そのもの。そして彼を穿たんとすれば反撃の一手が棘の様に紡がれるものであり……打ちのめさんとするジアストレントの身にこそ、むしろ損傷が蓄積されていた。
 勿論、ボディも無傷、と言う訳ではないが。
 それでもいざとなれば己が身を修復せんとすれば――倒れる事はない。
「さぁどうされました――? 来ないのならばこちらから行きましょうか。
 これらは実に有益な木材になってくれそうですしね。でしょう? ゲルツ様」
「ああ。恐らくだが、使える部分もあるだろうな……暴れた分、その身で補填してもらおう!」
 そのままにボディはゲルツへと視線を滑らせながら戦闘を継続。大樹を全て刈るまで進撃が止まろうものか――! ゲルツも近付いてくる天衝種達に狙いを定め、次々と引き金を絞り上げるものだ。
「とはいえ、未だ擬態型が潜んでいないとは限りませんわね……皆様ご注意を」
「ま、その辺りは私が警戒しておくわ。多分、もう打ち止めだとは思うのだけれどもね」
 そして玉兎は確認にしうる気配の『外』に未だ敵がいるのではないかと、油断せぬ警戒を続けるものだ。念入りに擬態が混ざっていないか確認する――うっかりと敵に背後を取られ、強打を貰う可能性もゼロではないのだから。自らの身体を輝かせ、夕暮れの暗闇に敵が紛れる事が無いようにもしつつ。
 同時。イナリもまた周囲に注意は張り巡らせながら、敵に斬撃を叩き込むものだ。
 背後に刹那に回りて、連続的に。放たれる閃光の如き軌跡がトレントを両断する――自身の限界を突破しうる加護もあれば――その精度たるや正に神業。
 更に、イナリが試みているのは植物と疎通する術が通じるかどうか、だ。
 内容は簡単なモノでいい。これが効かなかったり、或いは無視されるのであれば『敵』である確率があるのだから、と。植物以外がいるかどうか、簡易なれど確認せんとして。
「よし! 敵を押し込めていきそうでありますな……!
 これ以上の長期戦は敵に有利な所もあるであります。
 ――このまま一気に趨勢を決めてしまいましょう!」
 そうして戦っていればトレント達が倒れ伏していく。まだある程度数は残っているが、このまま攻めればいずれは敵の数も付きそうだと――ムサシは眼前の敵を打ち倒しながら判断しようか。
 が、イレギュラーズ達も無傷と言う訳ではない。
 連中の飛ばしてくる枝が出血を伴い、身を確実に削っているのだ。
 そうでなくても連中の膂力は脅威――痛打を貰えば油断は出来ぬ威力を秘めていて。
 だからこそムサシは前方に常に立つ。
 己に注意を向け、皆を助ける為に――!
「宇宙保安官は……退かぬでありますよ! ここからが本番であります!!」
「ええ。連中は、鉄帝の冬を暖める薪にしてあげましょう」
「数も減りましたし1体ずつ轢き潰して参りましょうか」
 直後。ムサシに次いでボディや玉兎も、正念場と見て全霊を此処に。
 ――激突する。トレント達が枝を伸ばしイレギュラーズ達の陣形を崩さんとするのだ。
 故にゴリョウが支え、ルシアが敵を吹き飛ばし、イナリが超速の果てに敵の背面へ。
 そして。
「包囲殲滅を狙うには、ちょこーっと鈍行すぎたんじゃないかなー
 あっ。というか、アレだね。
 むしろ……ボク達が弾丸列車みたいに速すぎちゃってゴメンね?」
「そろそろ決めさせてもらうとしようか。ヒィロ――行こう」
 ヒィロと美咲が、往く。
 敵が最後の抵抗か、或いはこっちに突撃してくるつもりか――固まっているのだ。
 ならばそこを狙い穿つ。共に、連鎖する様に行動する切っ先を向けて。
「うん! 美咲さん、いつものヤツいくよー!」
 最後のトドメはやはりアレだとばかりに。
 ヒィロの挑発が敵の足を押しとどめ、敵に隙を作りながら。
 美咲が全てを――超速の彼方に、飲み込むのだ。
 圧倒的な速力で奪い尽くす速力が連中を侵略すれ、ば。
『■、■■■、■■■■■――!!』
 天衝種が、天に吠える様に声を響かせた。
 それは魔物なりの断末魔か。激しく轟く咆哮の果てに――最後のトレントが倒れ伏す。
 ――終わった。周囲に敵影は、もういない。
「……一応まだいないか、確認するだけしてみるわね。
 それにしても木の魔物って薪や炭にできるのかな?
 本当に樹の部分もあるし……なんだか解体すれば出来そうな気もする」
「そうね。もう暫くだけ周囲の様子を見てみましょうか。
 それにしてもトレント……普通の木材より丈夫かしら?」
「まぁそうだな。魔物と言っても可食部のある存在もいる様に――連中を物資とする事も十分可能だろう。どれだけの強度かは知らんが、後でバーデンドルフ・ラインの部隊に解析を頼んでみるか」
 念のために美咲は周囲にまだ潜んでいる輩がいないか、落葉や土の乾燥による変化を見据えんとする……外気に触れたままの場所と、魔物の移動でズレた場所は状態が違うはずだ。この手法で先程見つけた個体もいるのだから。故にイナリとも協力して索敵しようか。
 と、同時に紡いだ言葉に反応したのはゲルツである。
 魔物も何かに利用できるかもしれない――噂だと食料になった個体もいるとか。
「ふむ。それなら鉄帝の支援に出来るかもしれませんね、持って帰ってみますか」
「ぶはは! 使えるものはなんでも使う、ってか――いいね。もしかしたらこのトレント達も食料に出来るんじゃねぇか……? 流石に無理か?」
 ならばとボディやゴリョウは興味深げにトレント達の亡骸を観察してみるものだ。
 今の鉄帝に余裕はないのだから……使えるのならば、何でも使う。
 ま、なにはともあれ――当初の目的は完遂した。
 これでトリグラフ作戦は一歩前進したと言えるだろう。
「オペレーション・ポッポー……いつかこの先に、行ってみるのでして……!」
 然らば。ルシアは線路の続く果ての方角を見据えるものだ。
 かの計画の目的地は、この線路の先にあるのだから――

成否

成功

MVP

ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 ぽっぽ……もとい、トリグラフ作戦の一環はこれにて完了しました。
 本命たる地への攻略作戦はまたいずれ。ありがとうございました!

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