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シナリオ詳細

<デジールの呼び声>竜宮マイスター通りの危機

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●マイスター通りにて
「■■■ーーーー■■」
「■■ーー■■■■ーー■」
 竜宮のマイスター通り。竜宮城の中でも少しマニアックなお店の並ぶ通りだ。
 普段であれば秘めやかに、しかし確実ににぎわっているその場所に、何処か冒涜的な声が響く。
 理解できない。
 否、理解してはいけない。
 そんな類の言語だ。たとえ理解したとして「理解してはいけない」ということだけが分かるだけかもしれない。
 さながら、信じるもの全てを冒涜し否定するような言語を垂れ流しているのかもしれないし。
 そもそも言語に聞こえるだけの何か別のものであるのかもしれない。
 どのみち、それを垂れ流す半魚人は今マイスター通りをウロウロしていて……閉まった店の戸を叩いて回っているのだ。
 そう、まるでそこに何かいるなら出てこいとでも言うかのように。
 しかし、それに応えることが悪手であるのは確実だ。
 いや、応えてはいけない。それはさまに、竜宮よりも更に深い深い海の底、闇の底。
 そんな場所からの呼び声かもしれないのだから。
 そして、今。
 かつてイレギュラーズが助けた『ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル』の店主、寅子が店の中で震えていた。
 どうか、助けを。それだけをただ、心の支えにしながら。

●寅子救出計画
「緊急の仕事です」
 『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201) は集まった面々に、そう切り出した。
 インス島への襲撃作戦の準備が進み、ローレット・イレギュラーズおよびシレンツィオ連合軍が包囲を完了したのがつい先ほどのことだ。
 だが、作戦決行直前、ローレットに緊急の連絡が伝わった。竜宮が、再び深怪魔たちに襲われたというのだ。先の襲撃の際、残された『深怪魔の種』が発芽し、竜宮を内部から襲ったというのである。
 この緊急事態に、フレキシブルに動けるのは、イレギュラーズ達だけだった。
 イレギュラーズ達は、竜宮防衛部隊と、インス島攻略部隊をすみやかに編制、攻撃と防御の二正面作戦の実行に取り組む。
 だが、同時に『天浮の里』にも動きがみられ、ローレットはさらに、そちらへの対応も迫られることになったのである。
 そして……この多方面の作戦の中で竜宮のマイスター通りを占拠した深怪魔(ディープ・テラーズ)の情報が寄せられていた。
 幸いにもほとんどの店は今日は休業していたのだが……ただ1つ、『ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル』だけは作業があって店主の寅子が店に残っていたことが分かっている。
 マイスター通りが今日ほぼ閉店状態だったこともあって、寅子がまだいるとは知られていないようだが……連中が店の中に押し入るようになったら、もうどうなるか分からない。
「……つまり寅子さんを救い、ディープ・テラーズどもを全滅させる。それが今回の仕事です」
 寅子は戦闘力に関してはほぼ期待できず、かなり脅えているだろう。
 その辺りを考慮しながら作戦を組む必要はあるだろうが……。
「急いで向かってほしいです。時間がどれだけ残されているか分からないです」

GMコメント

『ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル』の店長の寅子を救い、ディープ・テラーズを全滅させましょう。
マイスター通りは今、敵以外の人影はないように見えます。
トラ☆ブルは電気を消しカーテンを閉め、ドアの鍵もかかっています。
寅子は店の何処かで耳を塞ぎ震えていると思われます。
正気度のようなものがガリガリ削られていますので、救出のタイミングは考える必要があるかもしれません。

●敵一覧
・フォアレスター×20
半魚人型深怪魔です。首から上に魚がまるごと乗っているような造形をしており、人間と同じく武器をもって戦います。他のネームドのような特殊な個性をもちませんが、武器の持ち替えなどによって様々な状況に対応します。
具体的には槍や水中用の魔法の銃などを所持しています。これらの武器には【麻痺】の力が付与されているようです。

・ディゴンに仕えしもの×1
フォアレスターと同じ形状ですが、深い闇色をしています。水を自由自在に操り、どのレンジにも対応します。
水を操り鋭い刃にしてギロチンのように相手の上から叩き落とす攻撃を使用します。
ディゴンなるモノの配下であるようですが……?

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●名声に関する備考
<デジールの呼び声>では成功時に獲得できる名声が『海洋』と『豊穣』の二つに分割されて取得されます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はDです。
 多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
 様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。

  • <デジールの呼び声>竜宮マイスター通りの危機完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月08日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
雨紅(p3p008287)
ウシャスの呪い
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
型破 命(p3p009483)
金剛不壊の華
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎

リプレイ

●マイスター通りへ
「やはり奴等! 私と似たような存在 混沌世界にも外来ではなく蔓延るのか? 枝分かれどもめ!」
 『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)が叫んでいるが、何のことかは不明だ。
 まあ、通常進行なのであまり心配する必要はない。
 闃ク陦灘ョカ(赤城ゆい)の協力も得ているが、オラボナは現場には連れてきていないので、こちらも心配はない。
 さて、先程から「心配」といっているが……そうした心配が必要な場所である。
 此処は竜宮マイスター通り。竜宮城の中でも少しマニアックなお店の並ぶ通りだ。
 平時であれば楽しげな声が響いているはずのその場所には今、怪しげな連中がウロウロしている。
「■■■ーーーー■■」
「■■ーー■■■■ーー■」
 聞こえてくるのは、怪しげな言葉。
 あるいは、言葉ですらない冒涜的な何か。
 理解できない。
 否、理解してはいけない。
 そんな類の言語だ。たとえ理解したとして「理解してはいけない」ということだけが分かるだけかもしれない。
 さながら、信じるもの全てを冒涜し否定するような言語を垂れ流しているのかもしれないし。
 そもそも言語に聞こえるだけの何か別のものであるのかもしれない。
 分からない。だが、理解できないのが恐らくは普通なのだろう。
 歩いているのは首から上に魚がまるごと乗っているような造形をした半魚人……フォアレスター。
 あまりにも不気味なその姿だが、それだけではない。色違いの深い闇色をした者もいる。
 ディゴンに仕えしもの。確か、そう呼ばれていたはずだが……。
「遠目に眺める分には、奇妙奇天烈な怪人がぞろぞろと並んで練り歩いている様はむしろ笑えそうなものですけど。近づくと、なんとも耳障りな雑音を奏でていて不愉快ですわね」
 『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)がそう呟くが、それは恐らくこの場にいる全員の一致した見解であるだろう。
 あまりにも不愉快。聞いているだけで何か大事なものを冒涜されているような、そんな気分になるのだ。
「深怪魔……は、前に戦った怖いスライムみたいなのと同類なのかな? 見てるだけでもイヤなモンスターがたくさん街に来てるなんて、普通のヒトたちには見せたくない光景だよね……早く助けないと!」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)がそう呟くが、以前アクセルが戦ったソレと種別的には確かに同じであるのだろう。
「ぶはははッ! つまりあの敵陣を突破するってワケだ! 腕が鳴るねぇ!」
 笑う『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)はギフト「棒を針に」で細身となり、鎧も最低限の痩身仕様で機動力重視になっている。
「俺の仕事は乱戦の中を突破して店内に突入、寅子を救助することだったな。いつでも行けるぜ」
『ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル』の店長、寅子。
 店の中に取り残された彼女を救い出し、フォアレスターたちを倒すのが今回の任務だ。
 その為にカイトは『ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル』の位置や入口なんかの間取りを聞いて大まかに把握しつつ此処まで急行してきた。こうして事前確認した情報とも相違がない。
「深海魔というのは、なんとも不思議な生態をしているのですね。種から発芽とは、いやはや、植物なのか魚類なのか……」
「やれやれ、通りにまで敵が現れたか……竜宮城の雰囲気は個人的にも気に入っているのでね、これ以上被害が出る前に、彼らにはご退場願おうかな」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)に頷きながら雪月花を構えるが、まさにインス島の襲撃作戦の準備が整った今、こうした事件が起こるのは不安材料ではある。だからこそ、徹底的にやるつもりであった。
 そして、だからこそ『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は思う。
「このタイミングは……狙ってのものなのでしょうね。不安や疑問は尽きませんが、後手であろうが動かねば。今は、助けを求める方の元へ参りましょう」
 そんな雨紅の格好は真っ赤なバニーガールだ。
「この地らしく、かつ寅子様の怯えを軽減できる姿で戦いましょう。つまりバニーガールで」
 そういうことらしい。間違っていないし、大真面目だし、結構似合ってもいる。TPOにも合っている。
 よし、何ひとつ問題ない。さておいて。
「ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル……な、なんか胡乱な感じがするのは気のせいか? 関わったらネタにされそうな……と、ともあれ、そこの者が襲われているのなら助けない道理はないな、ああ!」
 『表裏一体、怪盗/報道部』結月 沙耶(p3p009126)はちょっと店の名前に疑問を抱いてしまうが……マイスター通りは大体そんな感じなので安心してもらいたい。
 そんな沙耶はまず人助けセンサーで寅子の居場所を察知しカイトと確認をしあう。
「私自身は行かない。救出の方は他の仲間に任せて私はディゴンに仕えしものに集中する。や、本当は行きたかったがな? 連携を崩すわけにもいかないからな。……気になってたわけではないぞ? ほんとに」
「うんうん」
「ほんとだからな?」
 カイトと沙耶がそう言い合う中で、『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)は寅子のことを思う。
「なんていうか、ついてねえ姐ちゃんだよなぁ」
 そう、まさに「ついていない」の一言が似合うだろう。前回はチンピラに店を狙われて、今回は「これ」だ。
 こんなについていないのも、早々ない。
「それにしても、あー、オラボナ? オマエさんの能力(ギフト)、本当に大丈夫なんだよな? 何か己れの勘が全力でヤバいやつって主張してくるんだが」
「なに、正気を失いかけているならば同一奇譚だ。奴を私と『同じもの』とする、この誤認は一時的なものだ。つまり、ちょっとした荒療治、もしくはワクチンとでも謂える。実に素敵な案だとは思わないか? Nyahahahahahaha!!!」
 それはどうだろうと命は首をかしげるが、まあ今はオラボナを信じるのが話が早い。
「竜宮はいっつもどこかがピンチね! でも困っている人がいるなら助けに行かないわけにはいかないわ。それじゃあサクっと助けに行きましょうか。人助けも大事な仕事。さぁ舞台の幕をあげましょう」
 『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)が声をあげれば、全員が配置につく。
 そう、ヴィリスの言う通り……今からハッピーエンドへの舞台の幕をあげるのだ。

●舞台の幕をあげよ
 初手は『ドジっ子バニー喫茶・トラ☆ブル』の入口に一番近いフォアレスターに放たれた超長距離からのアクセルの魔砲だった。
 入口近くからどかせて救出組の負担を減らしながら、声を上げて戦闘音に寅子がびっくりしないようにワンクッションを置く、そういう作戦だ。
「ディープ・テラーズ! 目的はなんかよくわからないけど……オイラたちイレギュラーズが思い通りなんかにさせないからね!」
「そういうことだな!」
 ゼフィラのダークムーンが発動し、フォアレスターたちを暗い運命で照らす。
「さあ、私の仕事は邪魔なフォアレスターのお掃除。まずはタランテラを撃ち込んでBSを付与して動きを止めさせてもらいましょう」
 瞬きのタランテラで躍動的なステップを踏むヴィリスはそのまま『ステイシス』へともっていく。
「もう動けないでしょう? 足がいらないのなら動けるかもしれないけれど大事な足はとっておきなさいな! さぁ、今のうちに寅子を助けちゃってちょうだい! 幕はこのまま下げちゃうわ!」
 ヴィリスがそう叫べば、オラボナが動くべきは此処だと更なるサポートに入る。
「何? 危ういだと。ならば仕方がない。私と敵の衝突を見せつけて『的が己ではない』と認識させよう。オーク曰く『~VS~』の図だ。悦ばしいエンターテインメントなのだよ。耳を塞ぐ為だ、両手を失くすなよ」
 ギフト「同一奇譚」を発動させながらH・P・Lをオラボナが放ち、更に玉兎が惑ヒ醉月を発動させる。
 瞬間、竜宮のネオン・サインを使用したゴリョウが走り出し……沙耶が竜宮のネオン・サインを使い一気にディゴンに仕えしものへと接近し名乗り口上をあげる。
「しかし……しかしオラボナは何をしようとしているんだ? 戦闘中に言うのもなんだが、なんか私のSAN値がゴリゴリ減らされていく気がするぞ……救出に向かったのもオークに見えるゴリョウだし……色んな意味でビジュアル的に大丈夫か……?」
 ちなみにゴリョウ曰く「これは怪物同士がぶつかることで寅子に「自分は狙われてない」と認識させ、一時的に傍観者視点にする効果が見込めるぜ。また仮に寅子が様子を見たとしてもオラボナのギフトで自身の感情、状況を整理するのに間違いなく時間がかかる。その隙を狙って接触出来るってワケだな。正直パニックになって逃げちまうのが一番やべぇんで、それを防ぐ目的でもある」とのことらしく、見た目の効果を狙った作戦であるらしい。
 まさに怪物には怪物をぶつけるんだよ的発想だが、まあ、そういうのもアリだろうか。今此処に他の一般人がいないから出来る演目とも言える。
 ちなみに、もう少しばかり穏当な心理的配慮をしている者もいる……雨紅だ。
 住人ぽく見えそうなバニーと、普段からしている舞うような戦い方で、こちらへ意識が向くよう、そして店から意識を逸らすようにしたいと望むからこそ雨紅はバニーを着ていた。
 そして放つのはデッドリースカイ。奇襲じみたその一撃がきまると同時に、ウルリカがラフィング・ピリオドを放つ。
 その間にもゴリョウは走る。
 跳躍の技能を活用して敵をパルクールのように飛び越え、隙間を縫い、店内に向けて走り抜けていく。
 来る攻撃は高い防技と回避で受け流し、また攻勢反応装甲を活かして攻撃に対して牽制して隙を作ろうともしていく。
(敵の引き付けは皆の衆を信じ、俺はただ前に向かって突き進み、一刻も早く寅子を確保するぜ!)
 その結果は、成功。ゴリョウは「トラ☆ブル」の看板のついたその店へと辿り着く。
 ドアのカギはかかっているが、これはもう仕方ないとゴリョウは蹴り壊す。
 ガアンッと音を立てて鍵の壊れた扉が開き、そのままゴリョウは店内へと突入していく。
「……そこか!」
 エコーロケーションで周囲を探知、人助けセンサーで寅子の位置を確認、ギフトを解除して滑り込みながらオーク姿で確保する。
  この際、オーク姿で両肩をしっかりと掴んで確保するのも忘れない。
「ぎゃあああああああああ! いきなり太ったあああああああ!」
「ぶはははっ!」
 何なら反射的に俺を殴らせて落ち着かせるくらいでもいいだろう、などと思っていたゴリョウだが……この調子なら大丈夫そうだ。
「よぉし、よく頑張った! 後はしっかり守ってやるからあんま離れるんじゃねぇぞ!」
 オーク姿に戻るのは威圧感があるが、護衛として頼り甲斐を重視した結果だった。
 デカい図体で視界を塞ぎ、これ以上の正気度を削らせねぇ意図もある……とゴリョウは言っていたが、目の前でいきなり質量を増加させながらスライディングしてくるオークは予想以上にインパクトがあったようだ。
 すでに寅子の脳は「?」で埋め尽くされており、これ以上の情報を処理できる余地はなさそうだ。
 しかし同時に動かなくなってしまっているので、ゴリョウは寅子を抱える。
「目標確保ぉッ! 存分にやっちまいな皆の衆ッ!」
 以後は寅子を『かばう』ことで守り切れば任務完了。だからこそ、ゴリョウの言葉に全員がその闘志を燃え上がらせる。
 すでにフォアレスターたちは倒し、残るはディゴンに仕えしもの、ただ1体。
 だがそのディゴンに仕えしものは、中々にタフであった。
「さあ、この不愉快な声を聞き続ける必要もないだろう?さっさと終わらせよう」
 ゼフィラのアナイアレイト・アンセムが発動し、ずっとディゴンに仕えしものを押さえていた沙耶がソニックエッジを放つ。
 そしてギフト「獣の理」を発動させ最善の行動を取ろうとし続けていた命も、今やるべきことを正確に把握しながらダークムーンを放つ。
「さあ、このまま掃討しちゃいましょうか。それにしてもなんでこんなことをしたのかしら……?」
 私じゃ考えてもわからないし考えすぎるのも時間の無駄ね、などと言いながらヴィリスが一撃を加え、玉兎のフルルーンブラスターが炸裂する。
「月は落日を迎えて闇の中で輝くもの。それを空も星も知らぬ深海魚に教えて差し上げましょう」
 その一撃が、ディゴンに仕えしものを……いや、何かを唱えている。
「ディゴン……■■■ル■、■■■■■――ディゴン!」
 断末魔だろうか、その身体はズシャリと音を立てて倒れ、ブクブクと泡のように消えていく。
 確実に殺した。そう考えたその瞬間。ゾワリとした感覚がその場を覆う。
「これ、は……!?」
 アクセルは、見た。その場に開いた暗い穴。そこから覗く目のようなものを。
 そして、飛び出してくる巨大なタコのような足を。
 誰かが何かを言う前に、全員がそこを飛びのいて。
 マイスナー通りを砕くような一撃が、その場に振り下ろされる。そのままタコの足も穴も消えていくが……アレがディゴン、だったのだろうか?
 フォアレスターたちなどとは比べ物にならない威圧。アレが一瞬ではなく此処に現れていたら……どれだけ上手くやってもマイスター通りが全壊していたのは間違いない。それだけの力をもった存在だと誰もが感じていた。
「今のがディゴン、なんだね……」
 アクセルが小さく呟く。ディゴンに仕えしものがいるなら、なるほど。「ディゴン」も確かにいたということなのだろう。
 それのことも気にはなるが、今はどうしようもない。
「ダガン、ディゴン、リヴァイアサン……絶海には沢山の信仰対象があるのですね……」
 ウルリカがそう呟くが……リヴァイアサンにせよディゴンにせよ、危険であることに変わりはない。
「正気を削るような異様な神と異質な信仰……練達の怪異とも関わりがあったりするのでしょうか?」
 そうなのかもしれないし、違うのかもしれない。
 あるいは、そうしたものは世界のあちこちに偏在していて、誰にも気づかれないうちに世界の何処かで何かが起こっているのかもしれない。
 それは分からない。少なくとも今は……未だにゴリョウの変化で脳がショートしている寅子に雨紅が声掛けしているのを手伝うべきなのだろうか。
「まあ、こんなものか。さて……寅子は大丈夫……うん、大丈夫か。私もいろんな意味で疲れた気がする、少し休ませてくれないか……?」
 沙耶も軽く息を吐きながら、そう声をあげる。
「ひとまず寅子を落ち着かせた方がいいかもしれないわ。といっても私にできるのなんて踊りくらいだしとりあえず踊ってみせましょうか。ぼーっと眺めてるだけで落ち着くこともあるじゃない? どうせ暇だしそれくらいはしてあげるわ」
 バニー服でも着ていればよかったかもしれないけれどいつものレオタードでごめんなさいね。その代わりとっておきの踊りを魅せてあげる、とヴィリスは『黒靴のバレリーヌ』の異名に相応しい踊りを披露していく。
「寅子のほかにも観客が来るかもしれないけれどそうしたら来た皆を楽しませてあげるわよ! プリマドンナを甘く見ないでちょうだいね」
 非日常から日常へ引き戻すのは、あるいはこういうものなのかもしれない。
 だからこそ、ヴィリスは踊って。命も周囲の片づけを始めていく。
 そうした「日常への回帰」は……きっと、恐るべき恐怖へも対抗する力へとなっていくだろう。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!

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