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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>赤き鉄/黒き霧

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪意の襲来
 鉄帝国の街ロスバッハは雪深い谷でありながら、鉄帝国には珍しく食料資源の豊富な土地だ。
 谷に住まう雪怪鶏やこの地域にしか自生できない雪舞茸の収穫が見込め、それゆえに自然環境を壊さぬ程度に壁が築かれいざという時に籠城が可能な砦として古くから利用されてきた。
「帰国早々、こんなことになるとはね……」
 砦の見張り塔へと登った、鉄のように黒き肌の男。ヴディト・サリーシュガーは部下から双眼鏡を受け取りつつも、目を細めまずは眼前の風景を見つめた。
 谷間に続く道にそって、黒ずんだ霧が線を描いているように見える。
 それは彼個人が持つ、悪意を視覚化できるという特殊な能力によるものだ。
 バイルの館に呼び出されたときのことを思いだし、ヴディトは一度目を瞑る。
 そして振り返り、部下達に声を張った。
「敵襲です。防衛準備を。援軍は……このご時世です。期待しないほうがいいでしょう」

●降下作戦
 場所は変わって、空の上。
 飛空艇『キャンディポップ号』はパステルカラーの可愛らしい船だ。
 自らの姉から「これに乗って行きなさい」と貸し出された時には正直もっと格好いいのが良いとおもったリュカシスだったが……事態の緊急性を知るや乗る船の色など気にしていられなくなった。
「ロスバッハ砦へ、正体不明の一団が襲撃」
 ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)は情報屋の寄越した資料の一文を声に出し、その狼の如き顎を閉じてグルルと唸った。
 食料資源の豊かな砦が襲われるという事態にではない。
 鉄帝国が窮地にあるという事実にでもない。
 情報屋が様々な観測方法でもって描き出した、敵の一団の色と形に……復讐の炎とでもいうべきものが湧き上がったのだ。
「赤い怪物の群れ……デスね」
 同じ資料を見ながら、リュカシスがスケッチ画を手に取る。
 情報に寄ればそれは天衝種(アンチ・ヘイヴン)という魔物であり、冠位魔種バルナバスの配下として弱者を排除するべくばらまかれた怪物たちである。
 その多くは真っ赤な猟犬のような姿をしているものの、ぽたぽたと血のようなものが垂れている様子がうかがえる。ワインのような赤い液体が凝固してできた怪物であると、情報屋の分析内容がスケッチに走り書きされていた。
 ウルフィンにとってそれが探し求めた相手の手がかりかもしれないし、違うかもしれない。
 いずれにせよ、燃え上がったこの感情を吹き消すことは難しいだろう。
「この連中を滅殺すれば良い、と?」
 彼の荒ぶる気配に反応したのだろう。飛空艇格納庫で待機していたワイバーンのエルゥドリンがグオウと小さく吠える。
 常人ならばそれに怯えるところだが、リュカシスはむしろニカッと笑って腕に武器を装着。
 ハイペリオンの加護をうけたジャケットを羽織ると、今にも飛び出しそうな勢いで立ち上がる。
「伯父上の護ってる砦を助けに行こう! アンチ・ヘイヴンは、ぶっとばします!」
 ゴオウと風がなるほどの勢いで拳を突き出し、そして飛空艇の扉をあける。
 そこは――なんとロスバッハ上空。
 砦を襲う一団の、まさに真上であった。

●赤き怪物たち
 ロスバッハ砦前に布陣した鉄帝軍兵士の数は、少ない。
 なぜなら『新皇帝』の勅令が下さった際に各都市が様々な理由で分断され、多くの部下を遠方に取り残す形になってしまったためである。
 無理からぬことだ。誰も、ヴェルス皇帝がある非突然冠位魔種に敗北するなどとは思わないし、直後に総軍鏖殺の令が下るなどと思わない。人災……いや、天災のような出来事だ。
「それでも、民を護らぬわけにはいきません。全軍抜刀、行こう――」
 見張り台から飛び降りると、風を纏って軽やかに着地。ヴディトは仕込み杖から刀を抜く。
 周囲には黒い全身鎧を纏った兵士。彼らも剣を抜き、突撃を開始。
 対するは赤き怪物の群れである。
 猟犬のごとき怪物――仮にこれを『スカーレットハウンド』と呼ぼうか。
 スカーレットハウンドは凝固し鋭くなった牙を剥きだしに兵士の一人へ食らいつく。とっさんい腕で防御するが、鎧を噛みつぶしてしまうほどの圧力に兵士は悲鳴をあげた。
 更に一部の怪物は姿を変更。大鷲の如き姿――仮に『スカーレットイーグル』と呼ぼう――が兵士の上をとり、鋭い爪で鎧の装甲を切り裂いて行く。
 戦闘力はもとより、数の差は……圧倒的だ。
 兵士の倍はあろうかという怪物の群れを前に、ヴディトはある種の覚悟を決めた。
 が、そんな彼の頭上。はるか天空より――

 ――あなたが、現れるのだ。

GMコメント

●オーダー
 降下作戦により電撃的に怪物の群れを襲撃。窮地にあるロスバッハ砦とヴディト臨時防衛部隊を救援しましょう。

・降下作戦
 飛空艇からダイブすることではるか上空から強襲します。
 これが成功すると最初の一撃を有効に、そして必ず先手を取って打ち込むことができます。
 自力での飛行手段があれば有利に働き、なくてもジェットパックを使っての安全降下が可能です。

 途中、こちらの強襲を妨害すべくスカーレットイーグル数体が飛び込んでくるかもしれませんが、1~3名がこれを払いのけることで妨害を排除することが可能です。この1~3名はいわば切り込み隊長ということになるでしょう。

●エネミーデータとフィールドデータ
 天衝種(アンチ・ヘイヴン)の一団が敵となります。
 OPでは正体不明のと記述しましたが、これは彼らの細かい戦闘能力や特性をまだ解明していないためであります。
 主には猟犬型と大鷲型の二種。その奥におそらく彼らを統率しているボス個体が存在している筈です。
 プレイングの字数を圧迫しそうなので、略称も一緒に乗せておきます。

・スカーレットハウンド(紅猟犬)
 猟犬型の怪物です。顎による食いつきは非常に厄介で、こちらの動きを鈍らせたり攻撃力を損ねたりします。また、攻撃に【弱点】属性がついたものがありこちらの防御を突破してくることがあります。

・スカーレットイーグル(紅大鷲)
 大鷲型の怪物です。OP内では猟犬型から変形していますが、ただの移動用省エネ形態にすぎないので戦闘中に変形がおこることはないと思って貰って大丈夫です。
 飛行能力をもち、非常に命中性能の高い攻撃を仕掛けてきます。
 攻撃内容にはこちらの防御力を低下させるものがあり、スカーレットハウンドと組み合わせるとかなり深刻なタンク殺しとなります。

・リーダー個体
 戦闘序盤では姿を隠している個体がいます。アンチヘブンの集団を統率しているリーダー個体らしく、皆さんが襲撃を仕掛けてから暫くすると(流石に出ないとマズいと判断してか)出現してくるでしょう。
 性能は不明ですが、スカーレットハウンドやイーグルと比べて非常に優れた性能を持っていることは確かなはずです。油断せず充分な連携をとって挑みましょう。

●味方
・ヴディト・サリーシュガーとその臨時防衛部隊
 砦を護る防衛部隊が今まさに敵と戦っています。
 皆さんがやってくれば、当然味方として連携してくれるでしょう。
 優れた戦闘能力を持つヴディトはともかく、兵士達はあまりレベルが高くないので足止め要員として援護に回すのがよさそうです。

※補足:ヴディト・サリーシュガー
 鉄帝国の軍人
 代々鉄帝軍に所属するサリーシュガー家の次期当主
 軍馬の紋を戴く軍属の家系
 戦闘能力的には防御や回避が高くじわじわ反撃していくタイプ。
 甥っ子のリュカシスを可愛がってるけど軍人みたいにきっちりな態度で接してくるのが寂しいらしい。
 アーカーシュの一件では政治ゲームをうまいこと回避して自分を貫いた甥っ子を結構誇りに思っている。(独自の情報屋経由でアーカーシュの一件は把握済み)

  • <総軍鏖殺>赤き鉄/黒き霧完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月24日 16時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日の優しさ
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ゼファー(p3p007625)
魔女
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
一条 夢心地(p3p008344)
殿
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎

リプレイ

●天空より赤を見下ろせ
 飛空艇『キャンディポップ号』。パステルカラーの船体とは裏腹に装備満載のイレギュラーズたちを乗せたこの船は、いまロスバッハ砦上空にあった。
 扉を開き、侵攻する赤き軍勢を見下ろす『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
「ここで生きている人達のことなんてお構いなしなんだから……『勅令』、ホントに碌でも無い!
 でも、魔種が好き勝手に楽しんでいられるのも今のうちだからね。あんな奴のことを皇帝なんて呼びたくないけれど、『新皇帝』、近々絶対ぶっとばす!!!」
 決意を胸に、数歩下がって助走を付け、リュカシスは大空へとダイブした。
 ジャケットから広がる幻影の白き翼がはばたき、リュカシスの身体が飛行状態へと移行する。
 その横を、『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が急降下姿勢のまま一度追い抜いた。
「なんだか面倒くさいことになってるのね、政治だ何だってのは難しくてよくわかんないのよ。
 でもまぁ、やることは簡単なんでしょ?
 パッと駆けつけてパッと退治して、よし。わかりやすくて大変助かるわ。
 私、暴れる方が大得意なんだから」
 風の精霊にウィンクすると、自らの身体をくるんと丸く畳んで回転しながら急降下をかけていく。
 そんな彼女たちを保護するかのように三方向に散るワイバーンの一団。
 手綱を握ってヤンチャに暴れるワイバーンをあやつる『最期に映した男』キドー(p3p000244)は、並走するワイバーンたちをちらりと見た。
「弱肉強食とか……普段なら適者生存だろと言う所だが、今は知ったこっちゃねェんだ
 ただ色々とムカついてしょうがねェ。その点ではあのバケモノ共と気が合うかもなぁ!」
 なあ? と尋ねるように、暴風が荒れるなか大声で呼びかけてみたが、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は黙ってワイバーンに跨がり眼下の群衆を見つめるだけだった。
 戦いを前にしたことで緊張が高まったのか、あるいはゾーンに入ったのか。
 そんな空気を壊さないようにか、『殿』一条 夢心地(p3p008344)がナーッハッハと笑いながら金色の扇子を広げた。扇子も和服もものっすごい風にあおられているが、どういうわけか余裕そうだ。
「なるほど、電撃! 夢心地エアボーンというわけじゃな。
 確かにこの状況ではそれしかあるまい。
 グワーーーーッと降りてドギャーーッと決めるのじゃ」
 麿に続くのじゃ! と叫んでワイバーンをけしかける夢心地。
 『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)の跨がるエルゥドリンがグルルと獰猛に唸った。
(戯れに『奴』が動き出した……? それが真実だとしても違ったとしても調査する価値は十分にある……)
 ロックは己が被っていた化けの皮――もとい人間種めいた風貌をばりばりと引き剥がし、その狂暴なる狩りの復讐者、あるいは『おおかみ』の姿を露わとした。
 エルゥドリンと同じかそれ以上に獰猛な咆哮をあげ、下方にむけて加速をかける。
 『風と共に』ゼファー(p3p007625)はそんな彼らの降下の様子を一通り眺めてから、借り受けたジェットパックを装着する。
「此の国をひっくり返そうとする連中は幾らでもいたけど、実際にひっくり返ったのは今回が初めてね。嗚呼もう。今回ばかりは笑ってられなさそうだわ!」
「だねぇ」
 『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)が扉からちょいっと下方を眺めると、ジェットパックも装着せずにぴょんと飛び降りる。
 両手両足をX字に広げて空気抵抗をかけると、飛空艇の出撃穴から飛び出してきた『大蛮鳥 マジ・ス・ゲートリ』が翼を広げて朋子を回収。騎乗状態となる。
「皇帝が変わってすったもんだしてるけど、なんていうかやり口が気に食わないんだよねぇ。
 弱肉強食とはいうけど、だからって弱い者いじめは違うじゃん?
 こんなよくわからんモンスター放ってわざわざ弱いやつを狩るなんて、それこそみみっちい雑魚のやり方だし。
 というわけでそのしみったれた根性が気に入らないのでぶっ潰します! 以上!!」
 いくぜ! とゲートリの腹をかかとで蹴ると、急降下の角度で敵の群れへと突撃を敢行したのだった。

●赤き鉄
 ヴディトは黒き悪意の霧の中、杖から抜いた刀を縦横無尽に振り抜いていた。
 まるでダンスを踊るような華麗な剣さばきであるがしかし、砦の兵をずっと上回る敵の戦力を前にやはり劣勢にあった。
 スカーレットハウンドに足をかみ砕かれ、スカーレットイーグルに兜を食い破られる兵。
 そんな彼らが命を落とさぬようにと扉まで後退させるが、このまま後退が続けば中の民を守るためだけにここで死ぬことにもなりかねない。
 砦に入られれば終わりだ。民を守り切れず、かなりの死傷者を出し、彼らの士気も激しく低下するだろう。援軍の望めぬ砦で士気を失った兵団の末路など、想像するだにおぞましい。
「く……っ」
 歯を食いしばり、黒い霧に目をこらす。
 が、そんな中。
 霧を突き破る鮮烈な姿が目に入った。
「長谷部朋子が一番乗りいただきぃ! 切り込み隊長の栄誉はあたしのもんだー!!」
「ギョゲェ!?」
 ノーブレーキで地面に突っ込んできたせいでゲートリがいやな声を出し、それを踏み台にした朋子が宙返りをかけながら跳躍。
 彼女たちの『突進(あるいは爆撃)』を慌てて回避したスカーレットイーグルを、『原始刃 ネアンデルタール』で強引に切り裂いてしまう。
 重量ゆえにずどんと地面に突き刺さるネアンデルタール。
「ヘェイ、デリバリーだぜタイショー」
「あなたは――ローレット!」
 その事実にはたと気付いたヴディトは思わず天を仰ぐ。
 そこには、ワイバーンで降下しスカーレットイーグルたちに攻撃をしかけるオリーブたちの姿があった。
 クロスボウを用いて射撃戦をしかけるオリーブ。
 イーグルは距離を取って回避しようと試みるが、空中戦闘に関する加護をうけているせいなのかオリーブの狙いは正確にイーグルのボディに矢を次々に命中させていく。
「モット喰わせろ……」
 そんなイーグルをかっ攫うように、ロックの骸槍『狂骨』が相手の翼を引き裂きながら通り過ぎていく。
 たった一匹だけの話ではない。エルゥドリンが通り抜けていった先ではイーグルが破壊され赤き血のように散っていくさまが次々に見られた。
「大乗仏陀――」
 夢心地は抜いた刀を顎の下で水平に構えると、ワイバーンで素早く走り抜けイーグルたちを次々と切り裂いていく。そして、自らを大の字にすると手裏剣のごとく回転しながら自らを発射。行く先々でイーグルを爆発四散させていく。
「最近、飛んだり泳いだりが多いわね? ま。こういう時こそ派手な登場が盛り上がるってもんでしょう!」
 そんな混沌とした戦場に、ゼファーがジェットパックを用いて降下。
 着地狩りでも狙ったのかイーグルハウンドが彼女の足に食らいつこうと迫るが、ずんと突き立てた槍によってその牙が止められた。柄ごと蹴りつけることでハウンドを蹴り飛ばすゼファー。
 その勢いでくるりと回転させた槍を更に腕と身体で加速させ、水平回転に近いスイングに整えると次々に襲いかかるハウンドたちを槍の穂先と鐺でそれぞれ払いのけていった。
 最後にザッと靴のヒールと槍の穂先でブレーキをかけた、その空間にリュカシスがふわりと着地。
「伯父上、防衛部隊のみなさん! お待たせいたしました。ローレット部隊、ただいま現着いたしました」
「リュカシス……来てくれるとは」
 ならばとヴディトはリュカシスに背を向け、迫るハウンドを剣で切り払う。
 これが何を意味するのか、この家で育ったなら分かる。
 リュカシスはヴディトの背をまもるかのように彼に背を向け、逆方向から迫るイーグルにショートレンジショットガンをぶっ放す。
 そう。もはやリュカシスは、世界に通用するファイターなのだ。
 アーカーシュの大事件を『どの派閥にも属さずに』闘い抜いたという強烈なる個が証明している。
「負傷した兵を砦の中へ逃がします。ここは任せても?」
「はい!」
 肩越しに、走って行く足音が聞こえる。
 リュカシスは目を大きく開いて、ニッと笑った。

●スカーレットホロウ
 オリーブが残り僅かなスカーレットハウンドを斬り捨てた頃だろうか。
 地面を割るようにして赤い柱が噴出した。
 ハッと振り返り、そしてすぐさま防御の姿勢をとる。
 その『赤い柱』が放つ殺気めいたものを感じ取ったからなのか、それとも熟練の勘がそうさせたのか。いずれにせよ正解だ。
 浴びせられた深紅のエネルギーはまるで巨大な拳となってオリーブを吹き飛ばし、彼は崩れた石の柱をさらに崩しながら地面をバウンド。そして転がりつつもすばやく地に手を付けて立ち上がった。
「これは……情報にあった『リーダー個体』でしょうか」
 誰よりも強く反応したのはロックだった。骸槍『狂骨』を握り、ぐるりと回すと突進の構えをとり赤い柱めがけて走り出した。
「一番槍は我が戴く……!」
 柱から再びエネルギーが噴射され、巨人の拳のごとくロックを打つ――が、それを跳躍し槍を斜めに叩きつけたゼファーが払いのけた。
 拳の下をすり抜けるように身を低くして突っ込んだロックは槍を柱へと突き立てる。
 液体……ではない。確かに手応えがあった。
「――」
 ロックはそのまま強引に押し切る――かと思いきや、素早くその場から跳躍。かっ攫うように飛んできたエルゥドリンの足を片手で掴むと、反撃にと放たれた無数の『赤い棘』を回避した。
「さて。あんたらの正体が何かは知らないけれど……一先ず片付けさせて貰うわよ。
 どうせ、嫌でも長い付き合いになりそうですからね。
 お互いをするには十分過ぎるほど時間がありそうだわ?」
 ゼファーは槍の回転で棘を撃ち落とすとそのまま前進。柱から飛び出してくるやや小柄なスカーレットハウンドの集団を、より深い踏み込みで払いのける。
 そこへ突撃していくのはオリーブと朋子の二人である。
 一度は打たれた巨大な赤い拳をスライディングで回避すると、オリーブはそれを剣によって切り払う。
 ばしゅんと液状化して散っていく拳。
 朋子はゲートリに跨がりまっすぐ突っ込むが、今度は複数に増えた赤い手がゲートリの首や足へと掴みかかった。
「ゲートリ、耐えろ!」
 と朋子が叫んだかと思うとゲートリの背と頭を踏み台にしてジャンプ。
 『原始刃ネアンデルタール』を高く振り上げ構える。
 赤い柱を真っ二つに切り裂きながら突き進む斧。
 しかしそれは、途中でガキンと何かに止められた。
 棒状の、しかしどろどろとしていて形状のわからない何かによって『原始刃ネアンデルタール』が止められたのだ。
「まじか!?」
 左右に分かれ、流れていく赤い液体。広がる水たまりのようなフィールドから、再び無数の赤い手が伸び、朋子の足や腕に掴みかかる。
 ――が、それをすぐに『ゲリ/フレキ』が食いちぎっていった。
 キドーの呼び出した妖精狩猟団《ワイルドハント》の猟犬である。
「なんだこいつ、気持ち悪ぃ動きしやがる!」
 いつでも投げられるようにと爆弾を手にとるキドーだが、味方が相手に群がる状態では使えない。邪妖精たちに任せるほかないだろう。
 ……などと思っていると、柱の中から姿を現した人型にみえなくもない何かが朋子を突き飛ばし走りだす。
 後衛チームを狙うつもりか。オデットはプリズムカラーの円環を無数に連ねてライフルのように光弾を撃ちだそう――としていたのをキャンセル。
「あなたがリーダーかしら? 出てきて早々悪いけどおやすみなさいってね!」
 飛び込み、赤い手を突きだしてきた相手に向けてオデットはパンチを繰り出した。
 身長120センチから繰り出すクロスカウンターが命中するはずがない――と思うやもしれないが、プリズムの輪を通った腕は光の巨腕(人間からしてもやや大柄なサイズ)に拡大され赤き人型実体を殴り飛ばした。
「多少はやるようじゃが、今更出てきたところでどうにもならぬわ。
 斬って斬って斬って斬って斬ってそれで終わりじゃ。
 なーーーっはっはっは!」
 殴り飛ばしてしまえばこちらのもの。
 夢心地は刀を一度鞘に収め、駆け出す動きとあわせて高速抜刀。デコピンの要領で斬撃に速度と勢いを乗せると、人型実体の腰部分を真っ二つに切り裂いた。
 が、それでも止まらず夢心地の首と腕にがしりと掴みかかる。
 そうなってみて気付いたが、凄まじい速度で力が吸い取られていくのが分かった。
 白塗りの顔に僅かな焦りがはしる。
 だが、わずかだ。わずかな間の、わずかな動きだけ。
 なぜなら、視界の端でリュカシスが大ジャンプをかけたのが見えたからだ。
「待ってました! メインディッシュ……じゃなかった! リーダー個体!」
 腕に装着していたパーツががちゃがちゃと変形し、まるで巨大な鋼の拳を完成させるとスラスターからの噴射で加速し人型実体の上半身をぶん殴ったのである。
 吹き飛び、そして二度ほどバウンドしたかと思うと液状化して広がり、そして地面にしみるようにして跡形もなく消えてしまった。

●雪深きロスバッハ
 ロスバッハはこの季節に至ってもまだほんのりと雪の残る地域だ。
 砦の周りはともかく、内側には堅くなった雪が壁際に集められている。いざという時壁にのぼりやすくなったり、いざという時壁の守りを若干だけが強化してくれるという昔からの知恵だ。
「伯父上、お怪我はありませんか!?」
 駆け寄るリュカシスに、ヴディトはややにこやかに頷いた。
「幸いなことに。リュカシス、そちらは?」
「元気です!」
 むんっと力こぶを作ってみせるリュカシス。
 その様子を、キドーとゼファーは遠巻きに見つめていた。
「この砦を襲った連中、どう思う」
「さあ……今のところはなんとも」
「……」
 その後ろに立ち、黙って『化ケ之皮』を被り直すロック。
 オリーブがその様子をじっと見つめていた。
「なににせよ、麿等の大勝利じゃ!」
 扇子を広げ紙吹雪をなげながら笑う夢心地。
 朋子はといえば、なんかすごいぐったりしたゲートリに薬を塗ったりしていた。
「途中まではともかく、最後のヤツにはだいぶやられらたなー。アンチ・ヘブンってそのくらいつえーのかね」
「かもしれないわね。なにせ、冠位魔種の軍勢だもの」
 オデットがけが人達がいないかきょろきょろと周りを見ている。
 負傷した兵はかなりいるが、致命的な被害というほどではないようだ。
 こうして継続した支援を受けられるなら、この砦はまだ民を収容したまま戦えるだろう。
「とはいえ……永遠に凌ぎ続けるわけにもいかない、か」
「はやいとこ、例の『新皇帝』とやらを倒さなくっちゃあ、ね」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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