シナリオ詳細
小芝居ダンジョン旅番組編~一泊二日秘湯の旅~
オープニング
●小芝居ダンジョン新展開
小芝居しないと進めないダンジョン。
それは幻想で最近発見されたダンジョン。
そして最近は鉄帝で多く発見されていたダンジョンでもある。
奥には素晴らしい宝があるとされながらも、誰もクリアできないでいた。
その理由は、そのダンジョンのギミックにあった。
そう、そのダンジョンは「小芝居」によって封印された扉が開くというダンジョンだったのだ。
しかしそこはイレギュラーズ。クオリティの高い演技で毎回突破してきていた。
そして、今回。『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)はそれの亜種と思われるダンジョンを発見していた。
「ほう、なるほど……」
ダンジョンのクリア条件について記された石板を読みながら、寛治は必要な人物をリストアップしていく。
分身紛いの技を見せつけたり眼鏡が本体扱いされたり色々ある寛治だが、彼は実はファンドマネージャである。
その仕事上、必要な人物を脳内で厳選するくらいは容易い。勿論、交渉に必要なものについてもだ。
「今回の場合は……なるほど。まずはカギとなる人物を引き込む必要がありそうですね」
「キャストとロケーションを指定してください」
「ええ、ええ。すぐに用意して指定しましょう」
そこに浮いているドローンのようなものへそう返しながら、寛治はニヤリと笑う。
「この案件、私にお任せいただきましょうか」
●一泊二日秘湯の旅
「それで私……ですか」
「ええ。是非お引き受けいただけたらと」
彼岸会 空観(p3p007169)は少し考えるような様子を見せながら、寛治の頭の上で浮遊しているドローンのようなものを見つめる。
丸い、何処となく機械的な「目」のような物体。
頭の上で光輪のようなものが輝いており、恐らくはその力で浮いているものと思われるが……練達製ではないだろうし、鉄帝製とも趣が違う。
今の寛治の話からするに、古代文明の何かしらであることは確実だ。
寛治から受け取った資料に視線を落とせば「一泊二日秘湯の旅」と書かれている。
どうやら幻想の「湖の畔に立つ秘湯の旅館に出向き、旅番組的に過ごす」という企画であるらしい。
なるほど、確かに練達のテレビ番組でそういう企画もあるにはある。
古代にもそういうものがあったのかもしれないが……つまりは、そういうことなのだろう。
美味しいものを食べて、温泉に入って、部屋でのんびり過ごしたりする。
そうしたものは何時の時代も需要があったということなのかもしれない。
それをクリア条件にするダンジョンは意味不明だが、まあ毎度のことだ。
小芝居しないと進めないダンジョンについては「時代劇編」で空観も参加したが、また胡乱なものを見つけてきたものだと空観は思う。
しかし、しかしだ。秘湯というのは少しばかり良い。
此処のところ、世情の慌ただしさも手伝って湯巡りも出来ていない。
旅費が寛治の財布から出るというのであれば、それもまた良しといったところであるだろうか?
「では、計画の細部をつめなければいけませんね」
「ええ、最高のものを作りましょう」
- 小芝居ダンジョン旅番組編~一泊二日秘湯の旅~完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月18日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●一泊二日秘湯の旅
「混沌に飛ばされ、ダンジョンに行って、秘湯に入る……旅行のマトリョーシカじゃねーか。でも以前の「青春編」とかいうクソみたいなのと比べりゃいくらもマシっスね。旅番組自体は見たことあるっスけど、上手くレポートできっかな……」
「今回の仕事は、旅番組の収録だったな。こういうのも小芝居と言うんだろうかね。特に演技がうまいわけではないが。まあ、打ち上げでたらふく食えんなら悪くねえか」
『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)に『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)がそう言って頷く。
「俺はADとして裏方をやらせてもらおうかね。ヤクザがテレビに映るのもなんだし、背中に映しちゃいけねえもんも背負ってるしよ。お蔵入りで失敗なんてのは洒落にならん」
ちなみに義弘たちだが、今回の現場となる「常熱旅館」にはまだ到着していない。色々と仕込みをしようとしているが故だ。
此処に来るまででバイクの旅のようなものもでっちあげているが、演出である。大丈夫。
「はいどーも、新田Dです皆さんシクヨロー」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)……今回はディレクターの寛治も最終確認にやってくる。
「今回はいつのまにか制作費が私の財布ってことになってるらしいんで、スポンサーも私ということですね……自主制作番組っていいません、コレ?」
なるほど、言うかもしれない。しれないが、それでみんなのやる気が出るなら後の打ち上げも寛治の財布でいいかもしれない。
「旅番組は着いてからの旅館、温泉、食事! がメインですが、折角だから道中も撮れ高の高い絵は使っていきますよ」
「浴衣でしっぽりのんびり――って思ったのに何よ新田さんこの企画!? 魔導バイクで充電しながら2チームで陣取りして途中クイズを出してスタジオでスーパー新田君人形を賭けたクイズやるって闇鍋にもほどが(ここで息継ぎ)あるわよんもう! 大体くーちゃん(空観)に魔導バイクの乗り方を教えるだけで日が暮れそうだったわ……」
「魔導バイクなる物は便利ですが乗りこなすのにコツが要りますね……お手数をおかけしまして申し訳御座いません。ですが、風を切る感覚はとても良いものでした」
「いいのよぉ。悪いのはこのメガネ(財布)だから」
「今不穏なルビがついたような」
私は企画書の「旅費が寛治の財布から出る」見逃さなかったからね。飲んで飲んで飲み倒すわよ、と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が言うのを彼岸会 空観(p3p007169)が「つまり予算の心配はないと……」と頷く。そう、予算の心配はない。
「宿も事前交渉は大事だ。撮影許可、宿泊プランの確認、実際に泊まる人数等、調整が必要になるだろう。宿側が撮ってほしいものもあるだろうしな。実際は話がついてるが、演者が交渉をして許可をもらう小芝居も宿側に付き合ってもらう必要もあるな」
「そうですね。その辺りについては?」
「極上のサービスを提供しますって言ってたな……新田さんの眼鏡が砕けた⁉」
事実上の予算上限なしが確定である。怖い。
「ふむ、温泉か。久しく入っていないからちょうどいい。しかも今回は旅費が新田D持ち! 他人の金でする旅行は良いものだ。まーた小芝居ダンジョンらしいが楽しめるところは楽しまんとな!」
『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が寛治の近くに浮いている古代文明式カメラをじっと見る。あれさえなければ寛治の奢りでただの旅行だったのだが……まあ、仕方ない。
「旅費が出ると聞いたので引き受けましたが温泉旅館なんて初めてです。旅番組についてはよくわかりませんがレポートをする仕事なんですね。はい? ジョシュ君として子供枠を担当? ……まぁいいですよ、それくらい」
『千紫万考』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)も企画書を再度確認し直しているが……まあ、問題ない。
「うふふ、もうすぐ到着ですわねー♪ 知る人ぞ知る温泉旅館! 温泉にお食事にめくるめく一夜の(自主規制)、楽しみですわー♪」
自主規制の部分は規制されてしまう。仕方ないね。ともかく『悦楽種』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)もやる気満々だ。
「よし、じゃあそろそろ再開か? 魔導バイクに関しては事前に準備、充電しておいたはずが何故かトラブルが起きるというのはどうだろうか。バッテリー切れで必死になって押して到着も悪くないだろう。絵が撮れたら道中はADの俺が押すんだがな」
そんな義弘の案が採用されつつも、D陣を乗せた車で魔導バイクで秘湯に向かうタレント陣を後ろから撮影再開していく。
突然クイズ振ったり、無計画に酷道を寄り道したりして秘湯に到着すれば、寛治がカメラに指示を出す。
「あ、景観はなんかいい感じのショットが2,3あればいいから。視聴者だいたい温泉を見たがってるから」
ちなみに寛治ディレクターの個人的な意見であり世の温泉番組愛好家とは関係ない、念のため。
「いやーやっと着いたっスね、ここが常熱旅館か」
メロン柄のヘルメットを取る葵だが、なんだか歴戦の芸人の雰囲気が漂っている。
「途中で魔導バイクのバッテリーが切れて、数キロを押して歩くのめっちゃしんどかったんスけど……なぁ道筋の計画どうなってんのD? え、全部オレの判断次第? それ言われたら何も言えねぇよー」
そんなこんなで宿に到着である。
「湖の畔にある旅館と言う事で、水面を吹き抜けて来た風が涼しくこの時期でも大変心地よいですね。一番よい部屋とプランしか残っていないと? まあ、大変。私この『露天風呂貸し切り宴会プラン湯浴み着付』が気になっていたのですが……更に上のプランがあるのですか? それはそれは……楽しみですね」
「嗚呼、でもまさか最高級の部屋と最高級の料理プランしか空いてないなんて!」
「しかしあそこでまさか新田Dが……なんにせよ無事に旅館へたどり着いてよかった。あ、部屋と料理はもちろん最高級グレードで頼む」
空観とアーリア、ブレンダのコンボで寛治の眼鏡を割ると、いよいよ温泉旅館のリポート、開始である。
●温泉旅館リポート
「お世話になります、ジョシュアです。よろしくお願いします。今日泊まる部屋はどんな感じなんでしょう? 荷物を置いて……あ、美味しそうなおまんじゅうがあります。食べていいのですか? ではお茶と一緒にいただきます。もし買えるのであればお土産に買っていきたいですね」
ジョシュアと葵は一緒の部屋だが、早速ジョシュアが温泉饅頭を食べている。この旅館で手作りの温泉饅頭は薄皮で、とても美味しい名物だ。ちなみに同時刻、女性陣は取れ高の為に説明を受けながらゆっくりと部屋に向かっている。
「館内も伝統ある旅館と言いますがとても綺麗ですし、売店も御座いますね。私、一心地付いた頃にあそこを覗くのがとても好きです」
売店には様々なお土産が売っているが、やはり旅館で作っているこだわりの温泉饅頭は一番のオススメであるだろう。
と、そこで一応、大衆向け娯楽の番組のようですから旅館の方にもお話を聞いてみましょう……などと考えながら空観が従業員に話を振る。
「この温泉の伝説では雪が降ったようですが、今でも積もるのですか?」
「ええ。毎年……そうですね、紅葉の季節が過ぎますと雪が降るようになります」
「伝説と同じ様な日に此処へお邪魔するのも楽しそうですね」
空観がまさに分かっている対応をしながら進んでいけば、部屋へと辿り着く。
「わぁ、すごいお部屋!」
「とても爽やかで良い眺めでございますわねー♪ あの窓際の謎スペースも完備しておりますのですね、でしたらそこで寛いでみたりも良いですわね」
アーリアとメルトアイがそう言っている間にも、ブレンダが皆の荷物を部屋の隅へと置いていく。
ちなみにこの間、義弘が宿内に入ったら廊下から見える庭園をどーんと撮影、宿の女将さんに庭園の歴史や広さを解説して貰い、別角度から撮影した映像を流す……といった流れをしっかりと作っていた。
部屋の内観をばーん、部屋からの景色をずばっと撮影していこう……というのも義弘の言葉だが、意外と適性があるのかもしれない。ともかく、次は温泉である。
「一番視聴率を稼げるのはここだろう? 手は抜けんな。撮れ高には期待していてくれ。温泉番組というなら温泉に入るときはあれだろう。タオルを巻いていいんだろう? 水着よりもそれっぽいしな」
そう、特別な許可を得ているのでタオルでも水着でも大丈夫である。
「はい、タオルとかはちゃんと身につけてくださいねー。放送できなくなっちゃうからねー」
スポンサーがOKでも、PPP倫がNG出すからね、と寛治が言っていたが、まさにその通りである。PPP倫は厳しいのだ。
ちゃんと映像では「特別に許可を得てタオルを着用しています」というテロップも表示される。
「そして温泉ですが。私は特別な許可を得て水着着用での入湯です。ええ、タオルにしようと思ったら触手が邪魔で巻けませんでした! でもイロイロ便利ですのよこの触手」
その後、メルトアイが何か言っていたが季節外れの鳥の群れが一斉に飛び立って録音されなかった。
触手がウネウネしていたのでセンシティブな話だったのかもしれない。さておいて。
ちなみに「温泉は堂々とカメラ持って女湯に入る。Dだからね。ちゃんと現場押さえないと」と言っていた寛治は一端義弘に締め落されて古代文明カメラだけ入っている。
「はいスタッフー、ここ全力で撮るよー。メインだからねー。後で編集するから、素材になるようあらゆるカメラアングルでね。あ、男湯は2,3カットあればいいです。むしろ女湯で音声だけのシーンがほしい時にだけ男湯の映像出せばいいから」
即座に復活した寛治がそんな指示を出しているが、そんな男湯のほうはなんとも平和である。
「色んな種類のフロがあるみたいっスけど、やっぱ目玉の露天風呂だな。あー……最っ高、木々に囲まれた雄大な景色を眺めながらのフロはいいっスねー。効能とかは編集が何とかしてくれるだろ」
そう、実際の映像では寛治か義弘の声で解説が入るので安心だ。
「そうですね。歩き疲れましたし露天風呂は温かくて気持ちがいいです」
葵とジョシュアは、そんな会話をまったりとしていく。
「一応鉄帝出身なので雪の恐ろしさは知っています。雪かきとか雪かきとか雪かきの手伝いが大変でした。でも皆様が困っていたから一生懸命頑張りました。褒めてほしいものです」
「ああ、偉いっスね。中々できることじゃない」
さて、そんな平和な男湯の光景と比べ女湯は……こちらも平和だった。
アーリアがお湯をすくって「とろとろだわぁ」なんて言ったり、出した腕をさすったりで温泉お色気シーンを演出していたり。
ブレンダ相手に「やだぁ、こんな所に黒子があるの!?」なんてキャッキャした声を出したりもしている。
「そちらは湯加減どぉ?」
「ええ、とても良い湯加減です。アレクサンデルさんもアーリアさんも所作が堂に入っています……慣れておられるのでしょうか……」
「そうかしら?」
「どうだろうな。しかし視聴者が求めるのは効能云々ではなくサービスシーン! というのだけは分かるぞ」
足を伸ばして組みなおしたり、肩にお湯をかけたり温泉を堪能しながら色気を振りまくブレンダに空観は微笑んで。
「ベルベットムーンさんはどうでしょう、楽しんでおられますかね」
「ええ。あ、カメラさん。水着姿はそれはもう舐めるように撮影頂けたらと♪」
そんなことを言うメルトアイに古代カメラがモザイクビームを発射しているが、PPP倫に何処かが引っかかったのだろうか?
「ふふ、よかった。私はひっそり、こっそり。一献忍び込ませて先に楽しませて頂きます」
勿論特別な許可を得ています、と後でテロップも出る。
「あ、新田さんが入って来てもこういう場合は対応しない方がきっと良いのですよね」
「もし眼鏡の気配があったら衝撃の青で熱湯の出口辺りに落とすわ。打ち身にも効くし平気よきっと」
寛治が落とされたかどうかは特典映像でお楽しみいただくとして、食事である。
「まずは旅館の出すメニューをいただくっス。こういうトコで食べるメシは特別感あってマジで美味いんスよね。うん、オレは口下手っスから、美味いって伝わればそれでいいんスよ。他のメンバーは……あーもう酒が入るのが早ぇよ」
「こんなにたくさんあるなんて贅沢ですね。新鮮な魚の刺身に、地元の野菜などが使われた料理の数々。僕はお酒の代わりにジュースで乾杯させてもらいますよ。美味しい……こんなの食べた事ありません」
葵とジョシュアの食レポは、互いを補い合う良いコンビだ。
「……ご覧くださいこのエビ!」
言いながらメルトアイが食べるのはタコにもウニにも見える代物だ。見た目はカニかもしれない。
「ぷりぷりのうねうねのむちむちでございますわ!」
カメラに向けて思いっきり見せ付けた後、口に運ぶところまでを色気のある演技を……しようとしてモザイクビームをカメラに撃たれた。どうも芸人枠で認識された感がある。
そしてアーリアは……こちらは湯上りは髪をアップで浴衣にビールで乾杯していた。
食事は撮影も忘れのんびり、といった風体だ。勿論まだ忘れてはいない。
「一番高い日本酒を――あら、お値段の0多い? 私のお金じゃないしよし!」
寛治の財布、ヨシ!
「はい撮影お疲れ様でした~。これで一通り終了です! まあまだカメラ回すんですけどね。乾杯~!」
全員に一言ずつ貰っていた義弘も、そこでようやく一息ついた顔になる。今日一番真面目だった男、義弘。頼りになる漢である。
始まった打ち上げだが……恐らく今日一番得たものが多かったのも、義弘であるのかもしれない。
「今回は色々段取りをしたが、仲間の皆が楽しそうに過ごすのが一番いいと思うんだ」
だからこそ最初の一杯を飲むと、義弘はそう言って笑う。
「楽しそうにしているのを観て、自分も行きたい、体験したいと視聴者に思ってもらうのが、旅番組の目的だ。だからこそ、仲間が楽しそうなら基本的になんでもいいんだがな……これからの酒が入った惨状は見せられねえよなぁ……まあ、打ち上げなら俺も一杯やらせてもらおうかね。財布は新田さん持ちなんだろう?」
「そうよ、眼鏡の奢りよ! 無礼講よぉー! 今夜はどこまでも飲み倒すわぁー!」
「私も飲みますわよー! 其方様もどうぞぐいっと一杯♪ 寝落ちるまで騒ぎ楽しみましょうとも♪」
アーリアとメルトアイが叫べば義弘も「そうか」と微笑む。ならば、遠慮する必要もなあっそうだ。
「こういう宿だと良い和牛の陶板焼きとか定番ですよね。あと川魚の塩焼き」
「それが……これをご覧ください。塩釜焼きなんです」
「おお、これはこれは」
寛治と空観も料理を楽しむが……そこで空観も楽しそうに微笑む。
「ふふ、シリーズ化なるものになればいいですね」
「ええ、全くです」
寛治が眼鏡を光らせるが……その横でブレンダもたっぷり楽しんでいる。
「こういう時は冷酒かな? おすすめをお願いする。一番高い奴でな。あとこの塩釜焼きってのはどう食べるんだ……?」
コツン、と割るのが正解であったりする。とても美味しく見た目も楽しい料理だ。
「デザートも値段は気にしないから、一番いい旬のフルーツも出してもらおうか」
そうして一通り頼んで一杯飲めば、もうブレンダも幸せ気分だ。
「いやー、上品に飲み食いするのも嫌いではないがこうして羽目を外すのも必要だろう? 改めて乾杯だ!」
「はーい、乾杯!」
キン、とアーリアと乾杯すれば、テンションも自然と上がっていく。
「そうだ、追加で蟹を頼もう、蟹。甲羅酒とかやってみたかったんだ。酒も瓶でどんどん持ってきてもらって宴会だ! コースで美味しかった物も持ってきてもらうかな!」
「カニなら此処にございますわよ♪ 今ちょっと見た目がアジですけれど……」
「なんでそれ変形してるんだ? 怖ぇよ」
謎の料理は旅館のスタッフが気付いて回収していったが、さておいて。
「ただでさえ美味い酒と料理だがこれが全部タダだと思うとより一層美味しく感じる。じゃんじゃん持ってきてくれ!」
今度はプライベートで来てもみよう、などと考えるブレンダだが……実際、この旅館は素晴らしい。
「いえあの、そんなに話し上手でもなければ少食な方なんですけど……。あぁでも、きっとこういう付き合いも経験のうちなのかもしれません」
頃合いを見ていて一端フェードアウトしていたジョシュアも呼び戻されていたが……料理が一新されていたので、これはこれで楽しいものである。
「新田様と亘理様もお疲れ様です。すごく高そうなお酒頼んでますけど新田様のお財布は大丈夫でしょうか? もはや手遅れ感が……。番組を作るって大変ですね。すみません、今回はごちそうさまでした」
そんな言葉に寛治は眼鏡を光らせて。その意味にジョシュアが気付いたのは……翌日、早起きして朝の湖を見ていた時だった。
「移りゆく空の色が映る光景はとても綺麗です」
もう全部撮り終わった。あとは帰るだけだが……朝もやの中に、眼鏡が光っているのをふと見つける。
「ところで当然ながら制作費全部持ち出しなんて、普通にやったら大赤字です。なぜそのような真似を私がしたか、誰も疑問に思わないようですね。それは当然「この映像に関するすべての権利を買い切るため」です」
古代文明カメラから排出された映像ディスクを手に、寛治の眼鏡が光る。
「一度放映してオシマイでは勿体ない。これだけのキャスト陣、まだまだマネタイズの余地があります。配信、円盤、そしてディレクターズ・カット版! 宴会で乱れた女性陣の様子とかを極秘映像でお届けプライム・フリックス!」
「やっぱりそう来たわね、叩き壊すわ!」
「ハッハッハ、お忘れですかアーリアさん! 小芝居ダンジョンの成果物は不壊!」
そうして寛治とアーリアの追いかけっこをジョシュアは「あー……」と何とも言えない表情で見送る。
2人の追いかけっこがどうなったかは……スタッフコメント集にてお楽しみください。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
特典映像1:親指を立てながら湖に沈んでいく寛治ディレクター
特典映像2:カッコいい義弘AD特集
特典映像3:その時男性陣は……
特典映像4:シークレット!
GMコメント
はい、アフターアクションです。
幻想の湖の畔にある秘湯「熱の湯」を擁する温泉旅館「常熱旅館」に行って旅番組しましょう。
皆さんの様子をドローンが撮影していきますので、リポーターぶると良いと思います。
ちなみに温泉番組なんか見た事ねーよという人の為に大体の流れを解説しますと。
案内人と呼ばれる役が1人~数人、そして解説役が1人、といったような構成になっています。
案内人はとにかく温泉や料理、部屋などを楽しんで解説役が温泉の効能を解説したり案内人に「うふふ、楽しんでますね」とか言ったり(返事は返ってこない)、そういうヤマもオチもないまったり番組です。
ちなみに常熱旅館はかつて雪が大量に降った寒い日、遭難した人が温泉でみるみる回復し元気になったという伝説の残る「熱の湯」を擁する豊穣式の3階建て旅館です。
湖の畔にあるので全室レイクビューで構成され、温泉は1階に露天風呂、3階に湖を望む「天空の湯」があります。
身体を温める効果が特に高く、湯冷めしにくい硫酸塩泉です。
カルシウム硫酸塩泉、あるいは石膏泉とも呼ばれており、傷を癒す効果もあると言われています。
色は無色透明。焦げたような匂いを感じることもあるそうです。
ちなみにクリア条件ですが、散々レポーターぶって翌日に旅館を出て「いい旅でした」みたいな締めをすると完了になる層です。ドローンが自壊し、自動再生機能のついた記録ディスクが出来上がります。素敵ですね!
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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