シナリオ詳細
<竜想エリタージュ>大救出! バニーさんず!
オープニング
●囚われのバニーさん達
『捕まっちゃった~~!』
「でしてー!!」
と、檻の中でうわーん、と叫ぶのは、マール・ディーネーと雑賀 千代 (p3p010694)、ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)の三名である。いや、良く視れば、部屋の奥にはまだまだバニーさん達の姿を確認できるだろう。二人以外のイレギュラーズの姿もあったかもしれない。確実なのは、全員がバニーないしはそれっぽい服や水着を着ているという点。
「うう、どうしてこんなことに~!」
と、マールがうーわんと泣いた。その隣では自主的に鎖につながれて「くっ」って顔をしている千代がいて、何となく鎖をじゃらじゃらさせていた。
「卑劣な……! 人質をとって私達まで捕まえるなんて……!
許せません、か、かい、かいら……なんでしたっけ、あの海賊の……」
「海鮮特選市みたいな名前でして!!!」
ルシアが言う。念のため言っておくが、海乱鬼衆(かいらぎしゅう)。豊穣の海を根城とする海賊集団だ。その中でも、特に極悪非道と目される集団がいて、それらを『濁悪(だあく)海軍』という。端的に言ってしまえば、その濁悪海軍の海賊たちに、このバニーたちは囚われてしまったわけだが、ではどうしてそうなったのか――と言えば、話は少し前にさかのぼる。
カジノ・ドラゴンズ・ドリーム。竜宮でも名高いカジノである。そこで働いていた千代とルシア(言うまでもないが、二人ともちょっとしたドジをやって、お仕置きの強制労働中であった)は、キャストのバニーと共に竜宮の外、シレンツィオに向かう船の上にいた。目的としては、技術・情報交流だ。シレンツィオにもカジノがあるわけで、そう言った他店カジノとの情報交換を行う場がこの度もたらされたわけである。
まぁ、カジノの研修である。マネージャーの一人、そしてディーラーやスタッフをと務める10数名のバニー・竜宮嬢たちにとっては、ちょっとしたシレンツィオへの旅行のような感覚だったし、シレンツィオのカジノ側としても、新たな竜宮のカジノと交流を深め、あわよくばうまい事一緒に儲けられる話をつけておこう……といった程度のことであり、つまりシレンツィオ側にとっても、竜宮嬢たちへの接待という面が大きい。この船も、シレンツィオからわざわざ迎えにやってきた、海洋の船にあたる。
そんなわけだから、その道筋にはルシアと千代の同道も許されていた。イレギュラーズである二人だ、護衛としてもうってつけであったのである。もちろん、他に護衛として雇われたイレギュラーズ達の姿も、あったかもしれない。
「船旅というのも良いものですねぇ」
バニーガール姿の千代が、海風に揺られながら甲板でそういう。その横で、ぴょんぴょんと飛んでみせるのが、マールだ。
「そうだよね! あたしもこの間、始めて船に乗ったんだけど。あの時はほら、竜宮の危機を伝える必要があったからあんましたのしめなくて。今回初めて、たのしーなー、って思った!」
「えっ、どうしてマールさんがいるんです!?」
ルシアが目を丸くした。確かに、何で居るんだろう。マールはえへへ、と笑った。
「楽しそうだったから、ちょっとお願いして、一緒にね?
それに、ルシアさんや千代さん、他のイレギュラーズさん達ともお話できるかなーって」
「そ、そうでしたか……まぁ、大丈夫……なのかな……?」
千代が小首をかしげた。マールは気軽な人物だが、こう見えて竜宮の重要人物の一人なのである。竜宮の人達はよい人ばかりで、基本的におおらかなのだが――それ故に警戒心の欠如、それが悪い面である様な気もする。
「あ、ねぇねぇ、あっちにも船があるね。あの形……豊穣の船かなぁ?」
「ほんとですね。まるで壁がういてるようでして!」
ルシアが言う。それは、いわゆる安宅船のような形状をしている。マストをはっているが、非常時には船底近くのオールを漕いで船速を増すのだろう。
「あれ、でもあれ、漁船じゃない……よね?
竜宮にたまに流れ着くので、あんなの見たことないし……。
もしかして、ヤバい奴……?」
マールがそう言った刹那、安宅船の壁面から、大砲が突き出した。
「伏せて!」
千代が叫び、ルシアが反射的にマールを押し倒した。同時、ずどん、という音が鳴って、水しぶきが上がる。波に船が揺れた。
「攻撃でして!」
ルシアが叫ぶ。
「えーっ!? ど、どうして!?」
マールが尋ねるのへ、千代が顔をあげた。
「旗……旗……あ、あれ海賊旗ですよ! 何でしたっけ、茨城空港みたいな名前の!」
千代が言うのへ、マールが叫んだ。
「あーっ! この間、竜宮で戦った時についてきた人たちだ! なんだっけ、千葉茨城栃木みたいなまえの!!」
「カイラギシュウだよ! かすりもしてねぇなお前ら!!」
ずだん、と、刃が甲板に突き刺さった。三人が慌てて振り向くと、そこには和風の軽装をした海賊の男がいた。
とっさに千代が、マールを背に構える。ルシアがぶつぶつと術式を唱え始めた。その手に強烈な魔力が迸り――。
「動くなよ。お前らが護衛なのはわかってる。だから、こういう手を取った」
気づけば、他の海賊たちが、バニーたちに刃を突きつけているのが見えた。
「人質とは卑怯でして!」
ルシアがぐぬぬ、と呻き、集めた魔力を霧散させる。ふん、と男が鼻で笑った。
「俺ァ濁悪海軍の兵藤だ。ま、しばしの付き合いだよ。お前らは商品だ。このままシレンツィオで売り捌かせてもらう」
(……まずいですね。今は動けません)
ルシアが言うのへ、千代が頷いた。
(はい。ひとまず捕まったふりをして、様子を見ましょう……!)
小声でつぶやきつつ、二人はゆっくり両手をあげた。マールがきょろきょろと二人を見てから、慌てて追従する。他のイレギュラーウ図がいたとしたら、同じ判断を下し、今は一時的に捕まった事だろう――。
かくして、イレギュラーズ、そしてドラゴンズ・ドリームのバニーたちは囚われの身となったのである――。
●竜宮嬢SOS
「……ええと、すみません、皆さん……」
静かにそう告げるのは、メーア・ディーネー。竜宮の乙姫にあたる人物であり、竜宮の最高権力者と言ってもいい。もちろん、他の竜宮の民と同じく気安く話せる間柄だが、それはさておき。
メーアが務めて冷静を装っているのは、本当に、大変な時が多い。つまりこの状況は、『とてつもない問題が起きている』という事だ。それを察したから、レッド・ミハリル・アストルフォーン (p3p000395)、エーレン・キリエ (p3p009844)、そしてイレギュラーズ達は静かに頷いた。
「仕事っすよね? 大丈夫っす。話してください」
レッドが言うのへ、メーアが頷く。
「実は、先日技術交流のためにシレンツィオに向かったドラゴンズ・ドリームの一団が、行方不明となりました」
「行方不明……深怪魔の仕業か?」
エーレンが言うのへ、メーアは頭を振る。
「いえ、実は情報がありまして……というのも、なんでか知らないのですが、船にお姉ちゃ……マールが、乗っていまして……」
はふぅ、とメーアが困ったようなため息を吐いた。
「マールとは、以前の一件以来、連絡が途絶えないように発信機と通信機になるネックレスを持たせているのですが、それを通じて少し情報が入りました。どうやら、海乱鬼衆・濁悪海軍の襲撃を受け、捕虜にされたようです」
「海乱鬼衆……豊穣の海賊だったな。奴らに襲われたのか……」
ふむ、とエーレンが唸る。
「じゃあ、大変っす! すぐに助けに行かないと!」
レッドの言葉に、メーアが頷く。
「はい。わたし……竜宮の乙姫としても、民を見捨てるわけにはいきません。
ですが、今から通常の船で、海乱鬼衆の船に追い付くのは難しい……そこで」
メーアが、申し訳なさそうな顔をした。
「……わたしの加護を最大限に使い、皆さんの持つ船に『竜宮の加護』を強力に与えます。これを使えば、海を自在に、魚が泳ぐように進めるのです……」
「それは願ったりかなったりだが……何故そんな申し訳なさそうな顔を?」
「その……ええと、この加護はかなり強力で限定的なので……船に乗る皆さんには、竜宮の正装をしていただかないといけなくて……」
「つまり」
エーレンが察した顔をした。
「バニーになれと」
「はい……というか、近づくだけで皆バニーになります……」
メーアが頷く。うごあ、とレッドが呼気を吐いた。
「で、ですが、これしか取れる方法が無くて……」
「うう、わかってる、わかってるっす。これ、シリアスなバトルシナリオに見せかけて、バニーさんが大暴れする与太よりのシナリオって事っすね!?」
レッドが、かはぁ、と息を吐いた。
「ちなみに、本当に近づくもの皆無差別にバニーにするので、濁悪海軍の皆さんも勝手にバニーになると思いますが、耐えてください、色々と」
「ほらきた! きたっすよこれ!!」
レッドが指さした。
「う、うむ……だが、他に方法がないならやるしかあるまい……というわけで、やろう、皆」
エーレンが言うのへ、仲間達は頷いた。
かくして――バニーさんの、バニーさんによる、バニーさんのための戦いが、始まる!!!
- <竜想エリタージュ>大救出! バニーさんず!完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年09月23日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●いざ、救出戦
「……確かに、ものすごい加護だな。まるで、海を走るかのように船が進んでいく」
そう感心したように言うのは、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)だ。船上にてそう呟くエーレン、彼の乗っている船は、通常の船速とは思えぬほどの速度で海を走っていた
「その代償は――」
エーレンが、自身の服を見やる。服。いや、それはバニースーツだった。竜宮の正装であり、最も加護を受けやすい(と、竜宮の民が主張している)衣装。そう、これが加護の代償だった。強力すぎる竜宮の加護は、その代償として、加護の影響範囲内にいるものすべてをバニーにしてしまうのである!!(これはこのシナリオだけの突飛な設定なので、他のシナリオで使うかどうかはその時のGMの気分次第の設定です)。
「いえいえ、これもなかなか眼福というもので」
なんだかとっても満たされた顔で言うのは、『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)である。皆バニーである。幸せ。
「うう……ちょっと気恥ずかしいっす。こうしなきゃイケナイのわかってはいるっすけど」
もじもじとしながら言うのは、『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)。バニーさんである。レッド、の名の通りか、赤いバニースーツが色白の肌に映えて美しい。
「詳細に描写するなアライィィィ! BUと全身とピンとどれがお望みっすか!!」
強いて言うなら全身ですが、本音を言うなら全部。
「強欲!!」
地団太を踏むレッド。可愛いね。
「さておき、船が見えてきたようだな」
エーレンがそういう。
「ほんとっす! あらためて、すごい速度っすね」
気を取り直したレッドがそういう。前方に見えるのは、安宅船のような形状の戦闘戦だ。
「この速度なら、すぐに取り付けるだろう。大砲も、そうやすやすとはこちらを捉えられないはずだ」
エーレンがそういうのへ、バルガルが頷く。
「そうなると、やはり接近戦になりますね。準備はよろしいですか?」
「ええ、それはいいのですけれど――」
そういうのは、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)。当然のことながらバニーである。シフォリィは、少しだけ表情を曇らせてから、言った。
「……これ、もしかして……敵の海賊もみんな、バニーになってる系のやつでしょうか……」
『あっ』
全員が声をあげた。
確かにそういうパターンに間違いない奴だった。
さて、一方、安宅船の奥底。そこは倉庫を兼牢獄となっていて、十名近い人間が捕らえられている。捕らえられているのは、竜宮のスタッフと、バニーさん達と、マール・ディーネー。そして、『ょぅι゛ょ』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)、『立派な姫騎士』雑賀 千代(p3p010694)、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)といったイレギュラーズ達だ。
「えーん! 外してほしいのでして!!」
ルシアがそういうと、腕につけられた鎖がジャラジャラという。とりわけ戦闘能力のあるであろうイレギュラーズ達は鎖で手を縛られている。
「御主のずどーんは敵にとっても脅威であろうからなぁ……警戒されるもやむなしか」
汰磨羈がそういう。とはいえ、汰磨羈も後ろ手に縛られており、動くのも困難だ。
「せめて鍵が手に入れば……だが。この辺の檻、脆いな。蹴り飛ばせば外れんものかな」
「それはいいのだが、実際に檻を破壊できたとして」
ウェールが言う。
「この人数を連れての脱出は困難だという事だろう。俺たちも、それなりの戦場はくぐってきた……が、さすがにこの大人数を連れて、狭い船内を無事に通過できるとかは怪しい」
「あたし一人で行ってみようか?」
マールが言った。
「あたし、結構すばしっこいし……」
「いえいえ、危ない事はさせられないですよ!」
千代が言った。
「まさかこの烏天狗の私が付いていながらみすみす人質取られて捕虜になってしまうなんて……くっ! 殺せ!」
ぎゃあぎゃあとわめく千代に、見張りの男がめんどくさそうに視線を送った。
「あの見張りもいますからね……一気に制圧しなければ、まずいです」
「となると、今は待ち……になるか」
と、バニーのウェールが言った。
「あれ? ウェール?」
汰磨羈が目を丸くした。
「ああ、歯がゆいな。だが、俺たちが行方をくらましたことは、シレンツィオか竜宮、ローレットもすぐに把握するはず……だから」
「いえ、そうでなくて」
ルシアが言った。
「……どうした?」
ウェールが怪訝そうな顔をして、目を丸くした。
「汰磨羈さん、何故バニースーツを着ている……?」
「いや、御主がだよ! いや!? 私もだ!?」
「皆バニーでして!? どういう事になっているわけなのですか!?」
わたわたと騒ぎだす一同に、マールが、ぱぁ、と顔を輝かせた。
「あっ、きっとメーアの加護だ!」
「メーアさん、人を無差別にバニーにする趣味でもあるのです???」
千代が言うのへ、マールは答えた。
「ううん、そうじゃなくて。すっごく強い加護を発動したんだよ。
何度も使えないし、代償として、加護を受ける人と、付近の人は竜宮の正装になっちゃうんだけど」
「竜宮の正装……ああ、バニーですね……」
気づけば自分も、バニースーツになっている。というか、全員バニーになっていた。
「テメェら!」
見張りの男が言う。
「いつの間に着替えたんだ!?」
「いえ、なんというか」
千代が嫌そうな顔で言った。
「おじさんも……バニーなのですが……!」
「何って……マジだ!? 何で!?!?!?」
見張りの男がパニックに陥る! 何やら外からもざわざわと声が聞こえてきた。恐らく、船中の海賊たちが、バニーになっているところなのだろう。
「ほら、皆竜宮の正装!」
マールがにっこりと笑って言うのへ、ウェールが嘆息した。
「恐ろしい加護だ……いや、バニーというのにも慣れたが、慣れたくはなかった……俺ももう35なんだぞ……?」
「それは……同情するが……」
汰磨羈がそう言いつつ、いやいや、と頭を振った。
「これが加護の力なら、チャンスだ! 敵はパニックになっているはず……!
それに、どうやらこの加護、私たちの力も増幅しているらしい。
ルシア、この脆い部分を破壊して、一緒に出るぞ! 見張りを黙らせるのだ!」
「おまかせでして!」
ルシアが檻の近くによってみると、さび付いていて、確かにイレギュラーズならば破壊できそうだ。ルシアが「えいやっ」と蹴っ飛ばしてみると、それはばきん、と音を立ててへし折れる。見張りに気づかれていないか見て見たが、どうやら見張りは、千代とがみがみ言い合っているようで、此方には気づいていない。
「いまでして! 小柄なルシアと、ねこになった汰磨羈さんなら、抜けられるはずです!」
「よしきた! 行くぞ、ルシア!」
ギフトにより、己の姿を猫へと変える汰磨羈。汰磨羈が、檻の隙間を通り抜けると、ルシアがもぞもぞと身をよじらせて、そこから突破した。
「いくぞ、ルシア!」
「了解でしてー!」
飛び出した二人が、同時に見張りにドロップキックをぶちかます! ぎゃあ、と悲鳴を上げた見張りが壁にたたきつけられて、そのまま気絶する。汰磨羈は見張りの懐をまさぐって鍵を取り出すと、檻の中のマールに放り投げた。
「縛られていないのは御主だ! すまんが、鍵を開けて、皆の拘束を解いてほしい!」
「まかせて~!」
マールがにっこりと笑って、鍵を開ける。そのまま仲間達の拘束を解く。
「ふぅ! すっきりしました!」
千代が笑う。ウェールは頷き。
「ああ。格好は……あれだが。これはチャンスだ」
その言葉に、皆は頷いた。加護が強まったことを考えれば、おそらくこれは竜宮からの援護。そしてこちらが捕まったことを把握しているという事であり、同時に、救援が向かっていることの証左でもあった。いや、むしろ今まさに、救援部隊は到着している可能性がある。
「可能な限り上へ向かおう。敵と遭遇したら、そのまま籠城することを提案する」
「そうですね。此方は、少数で多数のバニーさんを守らなければなりませんから……下手に動くのは危険です」
千代がそういうのへ、汰磨羈が頷いた。
「さっきも言ったが、加護の力で、此方の力も超級に増幅している……ならば、救出チームが来るまで耐えることも可能だろう。むしろ、籠城していた方がい、ルシアのずどんも本領を発揮できるだろうしな」
「では、上に向かいましょう!」
ルシアが言った。
「マールちゃんは、援護をお願いしたいのでして! でも、無理は禁物です! 自分の身と、バニーさん達を守ることに注力してほしいのです!」
「うん! おっけー、ルシアちゃん!」
マールが笑ってそういうのへ、ルシアも頷いた。
「よし、いくぞ、皆!」
ウェールがそういいながら、扉を開ける。果たして、脱出行の幕が上がった――。
●救出×脱出
「うッわぁあ……むさ苦しい海の漢がみんなバニーさんっす!」
レッドが叫ぶ。船の中では、つまりそういう光景が繰り広げられていたのだ!
「くそ、バニーの変態が攻めてきたぞ!!」
悲鳴を上げる海賊たちを、エーレンが切り捨てる。
「くそっ、何とも言い返せないが――!」
エーレンが嘆息する。エーレンも、何度も言うがバニー姿である。プレイングからバニー衣装の描写を拝借するならば、
『鍛え上げたしなやかな長身のボディラインを筋肉まで完璧に見せつける手首足首までの丈の肌色ボディースーツ。
黒光りするエナメルの編み上げバニースーツと網タイツ。全部ピッチピチのパッツパツだし一部もっこりだ。
頭上にはウサ耳が揺れるし首元には蝶ネクタイ、さらに足元はピンヒールだしご丁寧に化粧までしてくれたぞこのバニー加護』
との事である。ちなみにこれは生まれて初めてエーレンが着たバニー衣装であるそうな。
「やめろやめろ! 詳細に描写しなくていい!」
エーレンが叫ぶ。バニーのおっさん(海賊)が、大太刀を振り回しながら遅いか蹴って来るのへ、ピンヒールのかかとを腹部にめり込ませてやった。ぐえ、と悲鳴を上げておっさんが斃れる。
「敵の数は多いですが」
バルガルが言う。ちなみにバルガルもちゃんとバニーで、描写をお借りするならば『がっちりベルト装飾のついたバニーコート。兎耳・蝶タイ・カフスピンは黒で統一』である。皆バニーにこだわりを持っているのだ。洗井落雲は嬉しい。
「確かに、この加護は強力ですね。鎧袖一触、とはまさにこのことでしょう」
「……これ、だいじょうぶっすよね? 副作用でバニーを着ずにはいられないとか、そういうのないっすよね?」
レッドが不安げに言うのへ、シフォリィが嫌そうな顔をした。
「……流石に、そういうのはないと思いますが……」
言いつつ、片刃剣を振るう。切断された次元が、辺りの海賊たちを巻き込んで収縮、一気に吹き飛ばした。ばごん、と強烈な音と共にあちこちの壁にたたきつけられた海賊たちがKO。
「それよりも、なんだかバニー服の生地の方が、力に耐えられないような……?
大丈夫ですか? これ、ばーん、ってお胸とかがはじけ飛ばないですか?」
「そう言われると、なんだかはじけとびそうな気がしてきたっす……」
レッドが顔を赤らめる。とはいえ、エーレンやバルガルも大丈夫であるし、大丈夫なのではないだろうか……仮に弾けたら大惨事になる。
「いけませんね……なるべく早く進み……ましょうっ!」
シフォリィが、再度片刃剣を振るった。再び断裂させる次元と、収縮による範囲斬撃。海賊たちが再びフッ飛ばされ、死屍累々(幸いにして気絶してるだけで死んではいない様だが)のその中を、イレギュラーズ達は進んでいく――その先で、強烈な魔砲(ずどん)が光った!
「ルシア! ストップ! こっちは味方だ!」
状況を察したエーレンが叫ぶ。「ほんとでして!?」と、ルシアの喜ぶ声が聞こえた。慌てて走って行ってみれば、樽などを塹壕に、立てこもっているルシアたちの姿が見える。
「助けに来てくれたんですね!?」
千代が胸をなでおろす。
「はい、ええ、ええ、此処が天国ですね」
バルガルが感動したようにそう言った。たくさんのバニーさん達がいたので。
「ここは(あるいみ)監獄だが?」
ウェールが首をかしげる。
「そういうのはいいっす! ひとまず、さっさと脱出しましょう!」
レッドがそう言った刹那、しかし彼らの背後から、複数名の足音が聞こえた。慌てて振り返れば、バニーの筋骨隆々のおっさんが、怒りの形相でこちらを睨んでいるではないか!
「テメェら! これ、これテメェらの仕業か!?」
「あー、えーと、どっちだ?」
汰磨羈が困った顔をしながら指さした。倒れた海賊たちと、バニー服。
「どっちもだよ!!」
そういうオッサンは、濁悪海軍の海賊、兵藤である。
「う、うーん……私たちのせいと言えばせいだが、そうでもないと言えばそうでもない……」
汰磨羈がそういうのへ、兵藤が吠えた。
「もうどっちでもいいわ! テメェら、生きて帰れると思うなよ!」
兵藤が目くばせするのへ、周りの海賊たちが一斉に襲い掛かる! 巨大な太刀、振るわれたそれを、バルガルが刃の腹を叩く形で、反らした。
「おっと、おぉナイスバニー! がっしりした太腿にタイツがしっかり映えてますよ! バニースーツに合う筋肉も素晴らしい!
しかし、脱出の邪魔となるならば――!」
鎖を振るえば、先端の小刀が、バニー海賊を切り裂いた。刻まれた呪が、海賊の意識を奪い取る。
「鎖でじゃらじゃらやられた、お返しをします!」
千代が樽の裏側から、白の狙撃銃を取り出して、弾丸を撃ち放った。放たれたそれが、バニー海賊の太刀を貫き、とり落とさせる。
「ずどーん、でして!」
同時に放たれた魔砲が、海賊の身体を撃ち抜いた。吹っ飛ばされた海賊が、壁にたたきつけられて意識を失う。さて、その抗戦を追うようにウェールは吠える! 引き付けられた敵の攻撃を受けながら、
「千代さん、撃て!」
叫び、援護を要請。
「お任せを!」
千代は声をあげて、群がる海賊を撃ち貫く。
「よし、取り巻きは任せよ!」
汰磨羈が叫んだ。
「シフォリィ、エーレン、レッド! そのキッツイオッサンを何とかしてくれ!」
「了解っす! 竜宮嬢と護衛を返してもらうっす! 兵藤バニーさん!
これでスッ転んじゃえっす! ケイオスタイド……!」
レッドが叫んだ。その手を掲げると、船室のあちこちから混沌の泥が吹きあがり、兵藤に襲い掛かる! 泥は兵藤を叩き、撃ち流すように叩きつけた。兵藤が必死で踏ん張り、耐える。
「うるせぇ! バニーって言うな!」
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。俺の恰好も大概キツいがお前も最悪だな」
エーレンが名乗りつつ、切りかかる! 刃と刃が交錯する。きぃん、と甲高い衝突音が鳴った。
「好きで着てねぇよ! お前と違って!」
「いや、俺も好きでは着てないが!?」
交差する刃が、数度の打ち合いを果たす。エーレンが飛びずさると同時に、入れ替わりにシフォリィが飛び掛かった!
「一気に倒させてもらいますよ! なんだか、バニー服の耐久度がギリギリなのです!」
なぜか自己申告してバニー服をボロボロにしていくシフォリィ。せっかくなので、ボロボロという事にしておこう。タイツは破けて、あちこちから肌が見える。白い肌とのコントラストが美しい。
「くそーっ、なんでお前みたいな綺麗なねーちゃんだけがバニーにならないんだ!?」
「そういうものです、世の中!」
シフォリィが刃を振るう。兵藤がそれを刃で受け止めるが、繊細なれど苛烈なシフォリィの斬撃は、男の防御を上から打ち崩すかのような一撃を与えた。
「エーレンさん、レッドさん!」
「了解っす! もっかいケイオスタイド!」
ずぁ、と泥が迫る! シフォリィもろとも飲み込む勢いのそれが、兵藤に迫る。だが、魔の泥は、味方を巻き込むようなことはない。そのまま兵藤が、泥に飲まれて体勢を崩す。
「トドメだ!」
エーレンが刃を振るう。強烈な斬撃が、兵藤の身体を撫でた。
「ぐ、あっ!?」
悲鳴を上げる。そのまま倒れ込んだ兵藤を、混沌の泥が何処かへと流していった。泥は海賊たちをまとめてさらい、そのまま海の方へと放り出してしまう。
「ふん。これでちょっとは懲りたはずっす!」
レッドが笑った。
「すごい! みんなやっつけちゃった!」
マールが驚いた表情で、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「それに、みんなおそろいだね! えへへ、なんだかうれしい。みんな、とってもよく似合ってるよ!」
そう言って笑いかけるのへ、イレギュラーズ達は、改めて自分たちがバニーであることを自覚させられた。
「これ……いつまで、バニーのままなのでしょうか……?」
シフォリィが言う。同時に、ぱちん、とお胸のあたりの生地がはじけたので、シフォリィは己を抱きしめる格好をせざるを得なかった。
結論から言うと、バニー姿はシレンツィオに到着するまで続いて、一行はシレンツィオにバニー姿で上陸することとなった。
船着き場の皆かかけられた、好奇の視線が忘れられなかったとか、そうでなかったとか。
いずれにせよ、作戦は完了。
めでたしめでたし、である。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
ナイスバニー!(〆の挨拶)
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
バニー大戦争だ!!
●成功条件
すべての濁悪海軍の撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
シレンツィオのカジノとの技術交流のため、船でシレンツィオに向かっていた、ドラゴンズ・ドリームの面々。
そこにはマールやイレギュラーズの皆さんの姿もありました。
が、そこに現れたのは、海乱鬼衆・濁悪海軍の海賊たち。海賊たちは瞬く間に船を占拠、竜宮のバニーさんや、人質をとられ抵抗できないイレギュラーズ達を誘拐し、自分の船に連れ去ってしまいます……。
さて、その後、メーアから依頼を受けたイレギュラーズの皆さん。皆さんは、マールの持つ発信機のペンダントの情報を頼りに、竜宮の加護を強力に乗せた船で、濁悪海軍の安宅船を見つけることができました。
が、竜宮の強力な加護の副作用により、皆さんは強制的にバニー服を着せられています。近づくだけでバニーになるので、多分濁悪海軍の海賊たちも全員バニーになってます。バニーしか此処にはいません。泣いても笑ってもバニーです。頑張ってください。
まぁ、服がバニーになっているだけで、あとちょっとエッチなハプニングにあいやすくなってるだけです。基本的には、頑張ってバニーたちを救出、濁悪海軍の海賊たちを撃破していただきます。
状況としては、脱出チームとして、捕らえられたイレギュラーズ(申告制)と千代さん、ルシアさん、そしてマールが船底の牢屋から甲板を目指して進行し、
救出チームとして、助けに来たイレギュラーズ(申告制)とエーレンさん、レッドさんが、甲板で戦いつつ船底を目指し、合流、敵を全滅して離脱する、という形になるかと思われます。
作戦決行タイミングは昼。海は穏やかで、船が激しく揺れたりすることはないでしょう。内部は少々くらいですので、明かりなど持っていくと便利です。
●エネミーデータ
バニー・濁悪海軍の海賊たち ×40
バニーになってしまった海賊たちです。ま、まぁ、女性海賊もいるから多少は……。
それぞれ太刀や槍などで武装してします。メインレンジは至近距離~中距離での攻撃ですが、遠距離攻撃ができないわけではありません。(あんまり得意ではありません)。
一気に30人全員と戦うわけではなく、4~5人程度と何度かエンカウントするイメージです。
救出チームが相対する場合は大したことのない相手かもしれませんが、脱出チームが遭遇する場合は、非戦闘員のバニーさん達を守る必要があるため、出来るだけ戦闘を避けるように動いた方がいいと思われます。
数は多いですが、今回は凄い乙姫の加護を受けているため、皆さんもかなりパワーアップしています。ので、問題なく対処はできるでしょう。
バニー・兵藤 ×1
バニーになってしまった濁悪海軍の海賊・兵藤さんです。オッサンですので辛い……。
太刀で武装し、その一撃は真空波を生じて、多くのレンジをカバーする攻撃となるでしょう。複数攻撃もお手の物です。
部下として、バニー海賊たちを5名ほど引き連れて遭遇します。遭遇状況はそれこそ状況によりますが、おそらく救出・脱出の両チームがうまく合流できたあたりになるかと思います。要するに、脱出の最後の障害になる形です。
●特殊ルール『竜宮の波紋・超』
今回のシナリオでは乙姫メーア・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を強力に向上させることができ、水中では呼吸が可能になります。水中行動スキルを持っている場合更に有利になります。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。が、今回の加護はすさまじい力をもたらす代償として、強制的に竜宮の正装――バニー服を着せられます。男も女も老いも若きもバニーです。ちなみに、敵には戦闘能力向上の加護はかかりませんがバニーにはなります。そういうものです。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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