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シナリオ詳細

<潮騒のヴェンタータ>闇夜の海戦

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●敵の気配を感じて
 夜の海を、六隻の軍船が縦に連なって進む。このダカヌ海域に出没する、巨大な鯨の死体の魔物ラーテンホエールと、その体内に宿る魔物達を討伐するためだ。
「そろそろ、ですね」
「ああ、空気がヒリついてきやがった。アモンのジジイは……」
「当然、気が付いていると思いますよ」
 その二番艦『アンリミテッド・バイオレンス』の甲板では、艦長ホオジロの側に侍るヒョウモンダコの海種ヒョウモンが、何かを感づいた様子でホオジロザメの海種であるホオジロに話しかけた。
 もちろん、ホオジロの方もそれには気付いた様子で、ニヤリと笑みを浮かべる。そして前方の艦隊旗艦にして一番艦『シーガイア』の方を見やり、その艦長であり艦隊指揮艦でもある老騎士の名を口にした。
 だが、ホオジロに言及された老騎士アモンは、ホオジロやヒョウモンでさえひよっこ扱いされておかしくないほどの軍歴を持つ。ヒョウモンが言ったとおり、『シーガイア』では光を一切発することなく、音も極力抑えながら戦闘準備を整えはじめた。
「ようし、こちらも臨戦態勢だ。アモンのジジイがあれだけ上手くやってるんだ。こっちが目立つようなヘマはするなよ?」
「そんなことをしたら、またひよっこ扱いされてしまいますからね」
 普段よりも大幅に抑えた声量で、ホオジロがヒョウモンに告げる。ヒョウモンは苦笑いしながら、ホオジロの指示を艦内に伝達していった。

 ダカヌ海域を徘徊する魔物達との海戦が、もうすぐ始まる――。

●ギルド・ローレットにて
 時は少々遡る。
「やることも酔狂だけど、加護とやらも酔狂だねぇ」
 資料にザッと目を通しながら、『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)は半ば呆れたように呟いた。その資料には、シレンツィオで展開される竜宮弊キャンペーンと、ダカヌ海域にもたらされる乙姫メーア・ディーネ―による竜宮の加護についての情報が記されていた。
 竜宮弊キャンペーンとは、ダカヌ海域に出現する深怪魔を封じる神器『玉匣』の力の欠片である『竜宮弊』を、各国が如何に多く集めるか競い合うイベントである。竜宮弊は危険な場所にあるため、その回収にはイレギュラーズが動く事になるのだが、各国はそれぞれ一位になった際の公約を出し、イレギュラーズ達から竜宮弊を集めようとしていた。
 そして竜宮の加護とは、水着姿であれば戦闘力が向上するというものだ。何故こんな加護なのか、その理由は如何あれ――。
「まぁ、目の保養になっていいですよねぇ」
 デレデレとしたしまりのない笑みを浮かべながら、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)が独り語ちる。その脳内には、海上で、あるいは海中で戦う、女性イレギュラーズの姿の妄想が広がっていた。だが。
 ――ゴチン!!
「あいたっ!?」
 ユメーミルの鉄拳が、勘蔵の頭に落ちた。
「下らないことを考えてるんじゃないよ! まったく、これじゃどっちがお目付役だかわかりやしない」
 元々、勘蔵はユメーミルの教育係兼お目付役であった。だが、最近教育係の部分はともかくとして、お目付役の部分は逆転してしまったきらいがある。
 ともかく、鉄拳によるユメーミルの叱責を受けた勘蔵は、目の前のイレギュラーズ達に向けて以来の説明をはじめた。
「えー、今回の依頼ですが、ダカヌ海域に出現するラーテンホエールの討伐と、その体内に巣食う魔物達の殲滅となります」
 そして勘蔵は、それぞれの魔物の情報について、特にラーテンホエールの巨大さについて語っていく。
「それだけ巨大なこともあってか、依頼者の海洋軍からは討伐艦隊も出されており、皆さんにはその艦隊と同行・共闘して頂きます」
 おそらくはラーテンホエールと討伐艦隊が艦隊戦と言うべき戦いを演じ、イレギュラーズ達はラーテンホエールの体内から出てくる魔物達の相手をすることになるだろう、と勘蔵は続けた。
「『シーガイア』や討伐艦隊を守りつつそれらの魔物を殲滅し、最終的にはラーテンホエールを撃破して下さい。よろしくお願いします」
 そこまで言うと、勘蔵はユメーミルと共に頭を下げながら、現地に向かうイレギュラーズ達を見送るのだった。

GMコメント

 大変お久しぶりになってしまいました。緑城雄山です。
 今回はダカヌ海域に出現するラーテンホエールと、その体内に巣食う深怪魔の殲滅をお願い致します。

●成功条件
 敵の全滅

●失敗条件
 『シーガイア』の撃沈。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ダカヌ海域の広々とした海。時間は夜間。天候は晴天。
 暗視用のゴーグル&水中で活動するための装備が貸し出されるため、視覚や水中行動に関するペナルティーはかかりません。
 自前で暗視や水中行動などの能力を用意している場合、有利に判定されます。
 また、後述する特殊ルールにより、水着姿のPCは戦闘力が向上します。

 なお、敵側はもちろん味方側も光は一切発していないため、神気閃光のような光を放つスキルなどを使ったりした場合、敵側の注意を引いてしまう危険性があります。ご注意下さい。

●初期配置
 ラーテンホエールとシーガイアの距離1キロメートルの時点で、イレギュラーズ達の行動開始とします。
 ラーテンホエールは基本的に前進していく一方、討伐艦隊は速度を落として砲撃戦に入るため、両者の距離は徐々に縮まっていきますが、先行してラーテンホエール達を叩きに行くか、討伐艦隊と共にラーテンホエール達を待ち受けるかで、戦闘判定開始時の距離は変わってきます。

●ラーテンホエール ✕1
 冒涜的な力により使役されている、巨大な鯨の死体。ラーテンホエールの中での巨大な個体であり、そのサイズは大型艦の『シーガイア』以上です。
 いわば深怪魔達の母艦で、その体内には大量のモンスター達を宿しています。
 巨大すぎるために回避はマイナスの領域に入っており、防御技術もほぼ皆無なのですが、生命力が極端に高い上に全てのBSが付与されません。
 イレギュラーズ達への攻撃は後述する深怪魔達に任せ、基本的に討伐艦隊を狙ってきます。

・攻撃手段など
 大海嘯(対艦) 【防無】【溜】
  直線上に大津波を放ちます。さすがに一度や二度では『シーガイア』は撃沈されませんが、何度も食らいすぎてしまうと危ないでしょう。
  この攻撃から味方艦船を「かばう」ことは出来ません。
 体当たり(対艦) 【移】【弱点】
  直線上に突進し、敵艦に体当たりします。
  この攻撃から味方艦船を「かばう」ことは出来ません。
 禍々しき潮 神特特 【邪道】【鬼道】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】【呪い】【重圧】
  冒涜的な力の宿った潮を噴きます。射程は、自身の身体から40メートル以内となります(潮を噴いた部位からではないことに、注意して下さい)。
 BS付与不可
 マーク・ブロック不可

●レーテンシー ✕10
 巨大なオウムガイ型の深怪魔、その中でも大型の個体達です。
 殻による高い防御力を持つ一方、特殊抵抗は低くなっています。

・攻撃手段など
 スパイラルアタック 物遠単 【移】【邪道】
  堅牢な殻を回転させながら突進し、体当たりします。
 カウンター・マジック 自至単 【副】【付与】
  自身にカウンター能力(【棘】)を付与する魔法です。

●フォアレスター ✕15
 頭に魚が丸ごと乗ったような、半魚型の深怪魔です。武器の扱いに習熟しているため命中は高くなっていますが、他は目立った能力はありません。

・攻撃手段など
 クロスボウ 物遠単 【多重影2】【変幻】【邪道】【毒】【猛毒】【致死毒】【出血】【流血】【失血】
  一度に2本の矢を番え、射撃を行います。矢の先端には毒が塗られており、命中したら傷口を広げる仕掛けがされているため、毒系と出血系のBSが付与されます。

●タイラント・ガゼ ✕5
 船に飛び乗ってくることもある、巨大なウニのような狂王種です。その中でも大型の個体達。
 無数の針を射出してくる他、パッシブで【棘】を持っています。

・攻撃手段など
 無数の針 物遠域 【多重影】【変幻】【邪道】【痺れ】【ショック】【感電】【出血】【流血】【失血】
  無数の針を、広範囲に射出してきます。
 【棘】

●ラーテンホエール討伐艦隊
 ラーテンホエール討伐のために、海洋軍が編成した艦隊です。旗艦『シーガイア』以下、随伴艦『アンリミテッド・バイオレンス』他4隻からなります。
 陣形は単縦陣で、『シーガイア』が盾となってラーテンホエールの攻撃を受け止め、『アンリミテッド・バイオレンス』をはじめとする随伴艦が『シーガイア』の後方からラーテンホエールに対し砲撃戦を行います。
 艦隊指揮官アモン、副指揮官ホオジロとその副官ヒョウモンは、これまでの様々な依頼の経緯から、イレギュラーズ達には信頼を置いていて好意的です。

・シーガイア
 堅牢さを誇り、防御能力に長けた大型艦です。討伐艦隊旗艦。
 艦長は艦隊指揮官でもあるアンモナイトの海種、老騎士アモン。

・アンリミテッド・バイオレンス
 堅牢さは『シーガイア』に劣りますが、火力は『シーガイア』より高いです。討伐艦隊随伴艦。
 艦長は副艦隊指揮艦でもあるホオジロザメの海種、ホオジロ。ヒョウモンダコの海種であるヒョウモンがその副官を務めています。
 二人とも攻撃性が高く、『アンリミテッド・バイオレンス』自体が敵艦に接舷しての白兵戦を得意としていますが、今回はラーテンホエールの禍々しき潮の事もあり、『シーガイア』の後方から大人しく砲撃戦を行います。

●特殊ルール『竜宮の波紋』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―による竜宮の加護をうけ、水着姿のPCは戦闘力を向上させることができます。
 また防具に何をつけていても、イラストかプレイングで指定されていれば水着姿であると判定するものとします。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <潮騒のヴェンタータ>闇夜の海戦Lv:20以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年08月06日 22時14分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

リプレイ

●水着のイレギュラーズ達
「……竜宮の加護は、便利なようで不便ですね」
 夜空のような濃紺の、和服を思わせつつも肩と足を大胆に露出している水着姿の『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が、ぼそりとこぼした。
 今沙月達がいるダカヌ海域には、乙姫メーア・ディーネ―による竜宮の加護がもたらされている。その加護とは、水着姿であれば戦闘力が向上するというものであった。
 だがそれは逆に、十全な状態で戦闘に臨みたければ、事実上水着の着用を強いられると言うことでもある。
 仕方なしに水着姿となった沙月だったが、やることは普段と変わらない。全力で敵を打ち倒すまでだ。
 なお、この後の戦闘に備えて沙月達の乗る海洋軍艦『シーガイア』は一切の光を放っていないが、もし明るい場所で見れば沙月の白い肌と濃紺の水着のコントラストは、大いに映えていたことだろう。
「……よりにもよって、鯨の死体かよ」
「死んだ鯨の体内には大量のガスが貯まってて、爆発する事もあるって言うからねぇ。
 怖いのかい、ジェイクの旦那?」
「馬鹿言え、そんなわけないだろ。お気に入りのアロハと水着に、強烈な匂いが付くのが嫌なんだよ」
 これから戦う敵、ラーテンホエールについて『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が愚痴るように吐き捨てると、『闇之雲』武器商人(p3p001107)が揶揄するように声をかけた。すかさず、ジェイクはキッパリと否定する。
 「お気に入り」とジェイクが言ったその装いは、濃い青のアロハシャツに赤いロングトランクスの水着に円いサングラス。この後に戦闘が控えていなければ、何処かの海に遊びに行くと言われても違和感のない姿だった。一方の武器商人は、白と薄紫のチャイナ服ベースと思われる水着を着ている。この水着、手首や足首まで覆われいるためにほとんど肌が露出しておらず水着とは言い難い所があるが、しかし優男を思わせるスラッとした体躯と女性のような腰まであるロングヘアは中性的な麗人と言った風情を醸し出しており、海水浴場にでも行けば黄色い声とともに女性達が集まってきそうであった。
(彼女とお揃い風で揃えたので出来たらあんまり汚したくないんですけど、仕方ないですよね……)
 水着を汚したくないのは、『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)も同様であった。薄いブルーで描かれた南国風の花の縁を全体にあしらった白いロングトランクス型の水着を穿き、青いレイを首から提げている。これと対照的な色使いをした水着の彼女と並べば、お似合いのカップルとして周囲の目を惹いたことだろう。
 この姿で加護を得て海戦に臨むと言うのは、鏡禍にとっては不思議な心持ちであった。
(でも、どんな格好でもやることは変わりありません。皆さんを、お守りしてみせます)
 静かに、鏡禍はそう決意した。
(……戦闘能力が向上するのはいいけど、水着姿にならないといけないのはちょっと恥ずかしいよね)
 黒いビキニの上に白いパーカーと黒い短パンの『竜交』笹木 花丸(p3p008689)は、自身の姿に少々恥ずかしさを覚えている。肌の露出が多めなこともあってか、仲間達が皆水着姿であっても、恥ずかしいことに変わりはない。
 せめて海中に入るまでは少しでも露出を減らしておこうと、花丸はパーカーを左右から寄せて、上半身を覆い隠していた。

「鯨さん、死んでるのに無理矢理動かされてるの? そんなの酷い……!
 出来るだけ早く解放してあげるから、もう少しだけ待ってね!」
 シーガイアの舳先寄りの甲板に立ち、まだ見ぬラーテンホエールの素材とされた巨鯨の死体に、『桜花の決意』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は同情と決意を込めて語りかけた。キルシェの水着は裾が膝程まである、小さいピンクの花を全体的にちりばめた白いワンピースであり、頭にはつばの広い麦わら帽子を被っている。首から胸元にかけてと裾周りに施された大きめのフリルが、元より可愛らしいキルシェをさらに可愛らしく装っていた。
 キルシェとは逆、シーガイアの後方の甲板に立ち、一列に並んでシーガイアに追従するアンリミテッド・バイオレンス以下五隻の随伴艦を眺めているのは、『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)だ。年相応かそれよりやや幼く思える肢体に黒いビキニ様の水着を着ている様は、そのギャップもあってか、ある意味背徳的な色気を醸し出している。
(大型艦の艦隊戦を間近で見れるのは、いい機会に思えるのですよ!
 威力の出し方のジャンルは魔砲とは違いますけども、大口径大火力! はやっぱり気になるのです!)
 とは言え、これらの軍艦による砲撃戦、特に砲撃の瞬間をギャラリーとして観戦することは出来ない。依頼を達成するために、戦闘に参加しなければならないからだ。ルシアにとっては、そこが残念なところだった。
(……これ程の大きな戦いは、流石に緊張してしまうのだわ。
 この状況でも実力を発揮できる人達が、とても妬ましいのだわぁ)
 ルシアとは別に、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)もシーガイアから随伴艦を眺めている。上半身には鮮やかなオレンジの水着を着け、下半身を薄いグリーンのパレオで覆い、鍔の広い白い帽子を被った華蓮は、海辺に行けばきっと一輪の花として人気を集めたことだろう。
 ただ、今は大規模な戦闘の前と言うこともあり、華蓮の身体は緊張で強張っている。そして、こんな状況でも平然としている仲間達に、華蓮は嫉妬を覚えていた。しかし、それに囚われてばかりはいられない。
「せめて一つ一つ、自分の役割を確実に全うしていかないとだわね」
 この水着を選んでくれた大好きな親友のことを思い出した華蓮は、親友に恥ずかしい戦いは出来ないとこれからの戦いに意識を向ける。すると、身体の強張りは自然と和らいでいた。
(この混沌の海で、何度も艦隊戦やる破目になるとはなぁ……つくづく縁があるのかなんなのか)
 空から艦隊を一望する『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)は、再び訪れた機会に奇縁を感じずにはいられなかった。艦隊を眺める紅い瞳、そして紅い翼に合わせた紅のビキニ姿を、背面を覆うようにして頭と腰に設えられた髪の色と同じ黒の薄いヴェールが飾る。その様は、単純な色気だけではない、何処か得も言われぬ雰囲気を感じさせた。
「あの時ほどに頭が冴えてるかはわからねーけどよ。やれるだけはやるぜ」
 確りとした意気を瞳に宿しつつ、ミーナは言った。

「アモンさん、久しぶり。一緒に戦えて嬉しいよ」
 シーガイアの艦長室で、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は艦長にして艦隊指揮官であるアモンとガッチリと握手する。イズマの水着は、自身の髪の色と合わせた青をベースに黒をアクセントとした、上半身と下半身でセットになっているスポーティーなものだ。
「そして任せてくれ。魔物の討伐はもちろんだが……あの鯨に近付いて攻撃できるようにする策がある」
「ほほう、その策とは……?」
 自信満々なイズマの言に、アモンは興味津々でその「策」を聞き出そうとする。これまでの依頼を通じてイレギュラーズに全幅の信頼を置いているアモンは、イズマから聞き出した策の成功を確信していた。

●誘き寄せ、叩く
 討伐目標であるラーテンホエールを察知すると、イレギュラーズ達の大半はイズマの操縦する小型船で先行した。そして、ラーテンホエールまで攻撃が届く間合いに至ったところで、次々と小型船から下りて戦闘に入っていく。
「シーガイアをやらせるわけにはいかないんでな。止まっててもらうぜ」
 ラーテンホエールとその上に陣取るフォアレスター達を目掛けて、ジェイクが鋼の雨を降らせていく。突然上から降り注ぎ、自分達を傷つけていく鋼の雨に、フォアレスター達は目に見えて狼狽し混乱した。
「さて、上手く行ってくれてればいいが」
 ジェイクの本命は、ラーテンホエールの行動を妨害し、シーガイアが攻撃される回数を少しでも減らすことだ。フォアレスター達の行動を妨害できたことを確認したジェイクは、ラーテンホエールも同様であることを願うばかりであった。
「僕は右に行きます。武器商人さんは、左をお願いします」
「わかったよ、任せておきな」
 前衛としてラーテンホエールの前に展開している、タイラント・ガゼとレーテンシーの集団を上手く誘引するべく、鏡禍と武器商人は手早く役割を分担した。
「それっ! 僕、水月・鏡禍が貴方達の相手です!」
「さあさあ、どんどん我(アタシ)の方に寄っておいでよ」
 鏡禍が、右側にいるタイラント・ガゼとレーテンシーに向けて1680万色に輝く林檎を投げつつ、堂々と名乗りを上げる。林檎は派手な光と音を響かせながら爆発し、その周囲のタイラント・ガゼとレーテンシーは爆発を引き起こした鏡禍に明らかな敵意を向けた。
 武器商人は水中ライトを点灯させながら、左側にいるタイラント・ガゼとレーテンシーに向けて呼びかける。その呼び声を受けたタイラント・ガゼとレーテンシーは、ざわり、とした得も言われぬ感覚に襲われ、武器商人を滅せんとする。
「ちょっとぐらい反撃を受けても、花丸ちゃんは大丈夫! きっちり数を減らしていくよ!」
 棘など怖くないと言わんばかりに意気揚々とした声をあげつつ、花丸が棘の隙間に腕を突っ込むようにして、タイラント・ガゼの一体の本体に全力のストレートを叩き込んでいく。拳は殻を破って中身に食い込み、メキッ! とした手応えは得られたものの、それだけ密接するとやはりタイラント・ガゼの棘が刺さってしまうのは避けられないところであった。
「ごめんなさいね。少し、静かにしてもらうのだわ」
 華蓮は花丸が殴ったのとは別の、鏡禍の側にいるタイラント・ガゼに指先を向ける。すると、どこからともなく現れた茨がタイラント・ガゼに絡みついて、その動きを封じた。タイラント・ガゼからは棘が飛んで来たが、その威力は弱く、華蓮をまともに傷つけるには及ばない。
「雑魚は、早々に片付けてしまいましょう」
 ひらひらと空中を舞う花びらのように、タイラント・ガゼやレーテンシーの間を縫いながら、沙月が流れるように攻撃を繰り出していく。無限に続くかと思われた演舞のような連撃は、タイラント・ガゼやレーテンシーの殻さえ叩き割り、強かにダメージを与えたことを明白にする。
 それだけダメージを与えれば、沙月もタイラント・ガゼの棘によって相応の傷を負う、はずであったが。
「そのようなもの、私には通じません」
 赫焉瞳によって護られた沙月は、全くの無傷だった。
(確か「光る攻撃は気をつけろー」って話でしたけども……ルシアの破式魔砲、すっごく光るのでして)
 闇夜の中で強烈な光を放てば、目立って標的となりかねない。鏡禍や武器商人は、それを逆用して光を放ち、敵の攻撃を誘引しにかかっているが。
 ともあれ、だからと言って攻撃を行わないと言う選択肢は、ルシアにはない。
 対物狙撃銃「IrisPalette.2ND」を構えてラーテンホエールに狙いを定め、ルシアは破式魔砲を撃った。IrisPalette.2NDの銃口から、ものすごい光と音が迸っていく。
 ズドォン! 艦砲にさえ劣らないであろうその一撃は、ラーテンホエールの頭部の一部をしっかりと抉り取っていた。
 一方、ラーテンホエールやその体内に棲んでいる魔物達も、やられっぱなしではいない。タイラント・ガゼは棘で、レーテンシーは回転しながらの体当たりで、ジェイクの妨害を免れたフォアレスターはクロスボウで、鏡禍や武器商人に集中攻撃を浴びせていった。なお、ラーテンホエールはジェイクの妨害が効いて動けないでいる。
「鏡禍さん、大丈夫!? ルシェが、今傷を治すから!」
 鏡禍も武器商人も掠り傷とは言えないレベルの傷を負ったが、武器商人の特性もあって、キルシェは鏡禍を集中的に治療しにかかる。キルシェが福音を紡いでいくと、鏡禍の傷はほぼ掠り傷といっていいくらいまで癒えた。
「大丈夫です! ありがとうございます!」
 鏡禍はキルシェの癒やしに深く感謝しつつ、しっかりとした言葉で答えた。
「今だ、一気に倒すぞ!」
 イズマは鏡禍の隣に飛び込んでいき、周囲の空間に紫色の帳を降ろす。終焉と狂気をもたらす帳に囲まれたタイラント・ガゼやレーテンシーは、ガクガクと震えながら動きを止めて、そのほとんどが行動を封じられた。
 帳に囲まれたタイラント・ガゼからは棘が飛び、レーテンシーは付与された魔法によってダメージを反射してきた。だが。
「無駄だ!」
 沙月と同様、赫焉瞳に護られたイズマには無意味だった。

 先行したイレギュラーズ達にやや遅れて、シーガイアをはじめとする討伐艦隊もラーテンホエールとの砲撃戦に入る。
「闇雲に撃っても意味はない! 味方と狙いを合わせて、一カ所に砲撃を集中させるんだ!」
 討伐艦隊の三番艦で、ミーナはそう指示を出す。元々は味方から漏れてきた敵に対峙しつつ艦隊をフォローするつもりだったが、仲間達がしっかりと敵を食い止めているため、砲戦の指示に専念できていた。
 ちなみにミーナがより近い二番艦ではなく三番艦で指揮を執っているのは、二番艦アンリミテッド・バイオレンスでは艦長ホオジロと副官ヒョウモンの指揮の下、ルシアが撃った部位に合わせて猛烈な集中砲火を浴びせており、三番艦以降をそれにしっかりと追従させた方がいいと判断したことによる。

●崩れゆく肉体
 ラーテンホエールに棲んでいた魔物達は、討伐艦隊が砲撃戦を始めてから程なくして、殲滅された。
 タイラント・ガゼとレーテンシーは鏡禍と武器商人の周囲にそれぞれ誘引されていたが、鏡禍の周囲に集まった魔物達はイズマの紫色の帳によって行動を封じられている間に、沙月の演舞を思わせる流れるような連撃、華蓮の発現する稀久理媛神の意志、花丸の拳による痛撃、さらには攻撃に回る余裕の出来たキルシェによる亡霊の慟哭によって、みるみるうちにその数を減らしていった。
 武器商人の周囲に集まった魔物達は、武器商人に着実に傷を負わせていく。だが、その傷が武器商人の起こす津波の威力を上げることになり、魔物達はより大きなダメージを受けることになった。武器商人は魔物達から棘や魔法によって応分の傷を負うことになるが、それがまた武器商人の津波の威力を上げていく……。何度かのその繰り返しで、武器商人の周囲の魔物達は綺麗に一掃された。
 ラーテンホエールに乗っているフォアレスターは、ジェイクの鋼の雨によって行動を阻害されながら着実にダメージを受けていた。そこにタイラント・ガゼやレーテンシーを片付けた他のイレギュラーズ達が加わると、瞬く間に全滅。
 その間にも、ルシアの破式魔砲、アンリミテッド・バイオレンス並びにミーナの指揮を受けた三番艦以降の討伐艦隊による砲撃が、着実にラーテンホエールの身体を削り取っていた。既に頭部の大半は損壊しているが、まだラーテンホエールが動きを止める様子はない。

「残るはお前だけだ! ここからが正念場、そして腕の見せ所!」
 イズマの前に展開される、数多の魔法陣。そこから発射された無数の青い光弾が、ラーテンホエールの頭部にズドドドドド……! と猛烈な勢いで次々と突き刺さっていく。ラーテンホエールの頭部は、これでほぼ消滅した。
「ああ。ここまで来れば、一気に仕留めるだけだ」
 ジェイクが大型拳銃『狼牙』、凶銃『餓狼』の二挺を立て続けに撃った。死神が命を嘲笑うが如き二つの銃弾が、ラーテンホエールの下顎の上を通り過ぎ、身体の中心を深々と抉り貫いて、二つの大きな孔を開ける。
「これだけの巨体だと、茨を絡みつかせるのも一苦労だわね……」
 状態異常を主な攻撃手段とする華蓮にとって、状態異常が通用しないラーテンホエールは相性が悪すぎる。だが、それでも少しでもラーテンホエールの生命力を削ろうと、華蓮はラーテンホエールに指先を向ける。茨が、ラーテンホエールの削れた肉体に絡みつくと言うよりも貼り付いた。
「何なのだわ?」
 そこで、華蓮にとって不思議な事が起こった。ラーテンホエールに貼り付いた茨が、ラーテンホエールの肉体に深く食い込んでいこうとしているのである。
 理由は、元が死体で使役されているだけのラーテンホエールに気力など存在しないことだった。華蓮の茨は絡みついた相手の気力を奪うが、相手に気力が残っていなければその分の生命力を奪い取ろうとする。故に、茨は気力を奪えなかった分、ラーテンホエールの生命力を奪いにかかったのだ。
「これなら、行けるのだわ!」
 そうと理解した華蓮は、再度指先をラーテンホエールに向けて、茨を貼り付かせてさらに生命力を奪いにかかった。茨の周囲の肉体が、次々にボロボロと崩れ落ちて塵になっていく。
「花丸ちゃん、これで思いっきりぶん殴るよっ!」
 邪を払う聖なる力を腕に纏わせながら、花丸は拳を固く握りしめる。そして海中に潜り込み、まだ残っているラーテンホエールの下顎の下に至ると、身体ごと光り輝く拳を全力で突き上げた。拳が貫通すると、ラーテンホエールの下顎は徐々に細かくひび割れていき、やはり塵となって消滅した。
「待たせたなデカブツ! お前の馬鹿体力と私、どっちが力尽きるか勝負といこうぜ!」
 さらにミーナが空から急降下して畳みかけ、「希望の剣 【誠】」の空の蒼を映したかのような刀身をラーテンホエールの背にグッサリと突き立てる。砲撃戦の指揮はもう十分と判断して、討伐艦隊を離れてラーテンホエールを直接攻撃しに来たのだ。
 落下エネルギーと共に零距離で絶大な神秘エネルギーを宿した刃で貫かれたラーテンホエールの背は、徐々に広く崩壊していき、クレーターのような形に深く抉れた。
「そこですよ! 行くのです!」
 ミーナが穿ったクレーターの真上まで飛翔したルシアが、IrisPalette.2NDの照準をクレーターの中心に合わせて、破式魔砲を撃った。派手な轟音と眩い光を放ちながら、光の柱がラーテンホエールの腹まで貫通する。
「ここまで壊されても、まだ動くのですか……」
「ですが、終わりは見えています。頑張りましょう」
 生物ならとうに死んでいる状態でも動き続けるラーテンホエールに、鏡禍は呆れ混じりに呟く。沙月は、そんな鏡禍を励ました。
 二人はその間にもラーテンホエールとの距離を詰め、表出しているラーテンホエールの内部に全力のストレートをそれぞれ叩き込む。
 ずぶり、と真っ直ぐに突き立てられた腕の半ば以上が、ラーテンホエールの肉体の中に食い込んでいく。すると、その周囲の肉体にビキビキビキ……と微細な亀裂が入っていった。
「キミはもう、朝を迎えることは無い――食らい尽くせ」
 武器商人はラーテンホエールにそう告げると、一枚の札を取り出して全身が闇のように黒いシャチを召喚した。シャチは、武器商人の命令通りにラーテンホエールに襲い掛かると、沙月と鏡禍がヒビ割れさせた部分をガブリと一気に噛み砕く。さらにシャチは、飢えでもしているのかのように獰猛に、ラーテンホエールの肉体を食んでいった。

 それから程なくしてラーテンホエールは力尽き、残る肉体も全て塵となって砕け散った。討伐艦隊はシーガイアが一度だけ津波を受けて軽微な損傷を受けただけであり、ほぼ完勝だった。
(――もう、辛いことはないよ。あったかい所で、ゆっくり休んでね。……お休みなさい)
 キルシェは先程まで戦場だった海で、ラーテンホエールの素材とされた巨鯨の魂が安らかに眠れるよう祈る。慰霊の祈りは、優しい桜色の雨をその場に降り続かせるのだった――。

成否

大成功

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

武器商人(p3p001107)[重傷]
闇之雲

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。
 皆さんの活躍によって、シーガイアはじめ討伐艦隊は大したダメージを受けることも無く、ラーテンホエール討伐の任を果たすことが出来ました。
 MVPは何方のプレイングも素晴らしくて迷いましたが、武器商人さんにお送りします。
 タンクとダメージディーラー、両面で活躍をされたところをポイントとしました。

 それでは、お疲れ様でした!

 

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