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シナリオ詳細

シャーベット・オーシャン

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その海は、夜になると凍る。

 海風と気候の成せる業か。それとも、魔法使いが解けぬ魔法をかけたのか。
 それは誰にも知る由のない事だが――海洋の片隅に“氷る海”と呼ばれる海域がある。湾曲した岸辺に囲われた、半分湖のようになっている地帯だ。
 不思議な事に――どんな熱帯夜であろうとも、その海は夜になると水面が凍り付き、星空を映し出す。氷の色はまるで鏡。細波の切っ先までが凍り付き、さながら絵画のよう。
 けれど朝になれば全て太陽の熱にさらされて溶けてしまう、海洋の夜の夢。

 ローレットとのつながりを得た海洋では、祭りの時の熱狂ほどではないが、今でも客人をもてなすためのあれやこれやが行われている。
 “氷る海”でもそれは同じ。屋台が立ち並び、夜は穏やかなランプの灯りが凍った細波を照らす。どんな熱帯夜であろうとも、その海は凍り付き、人々の賑わいはやまない。



「という海域から、ご招待が来てるのです。これは行かない手はないのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はうきうきとチケットを見せる。なんかいっぱいある。手あたり次第送り付けたんだろうなあ、という感が満載である。
「地域の人はシャーベットの海とか、そういう感じで呼んでるっぽいです。波を踏むとしゃりしゃりするそうなのです。ボクも踏んでみたいのです、しゃりしゃり」
 でも、どんなに暑くても凍るってどういう原理なんでしょうね?
 さて、どういう原理なのでしょう。それは判らないけれど。
 夏はまだ続くのだから、海で涼を取ったって良いじゃない。

GMコメント

ちょっとね、準備してたら時期を過ぎちゃったけど。
こんにちは、奇古譚です。今回はイベントシナリオのご案内です。

●目的
 氷る海でくつろごう

●立地
 海洋の片隅にある、半円上の岸辺に囲われた一帯を“氷る海”と呼びます。
 昼は普通の海ですが、夜になると水面が薄く凍り付き、夜空を鏡のように映すことから、観光名所として売り出されています。
 周りの砂浜にはいろんな屋台がいっぱい。お昼から開いています。
(お祭りに出る屋台なら大抵ある、と思っていただいて結構です)
 薄氷なので海の上を歩くと落ちます。波打ち際も踏むと割れてしまいますが、しゃりしゃりと雪に似た感触が楽しめます。素足だとちょっと痛いかも。

●出来ること
《1》昼、屋台を物色したり浅瀬で遊んだり
《2》夜、屋台を物色したり海を見つめたり
《3》その他色々(屋台運営など)

 賑やかに遊びたい方は1、しんみりとした雰囲気が欲しい方は2をおすすめします。
 他にやりたい事がございましたら3でどうぞ。雰囲気を壊さない程度に描写致します。

●NPC
 おりません。ご注意ください。
 ユリーカちゃんは皆さんを笑顔で送り出しました。

●注意事項
 迷子・描写漏れ防止のため、冒頭に希望する場面(数字)と同行者様がいればその方のお名前(ID)を添えて下さい。
 シーンは昼・夜のどちらかに絞って頂いた方が描写量は多くなります。



 今回はアドリブ控えめとなります。
 皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってレッツ海。
 では、いってらっしゃい。

  • シャーベット・オーシャン完了
  • GM名奇古譚
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年08月18日 21時05分
  • 参加人数30/30人
  • 相談5日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (30人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
二輪
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
クロバ・フユツキ(p3p000145)
終翼幻想
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
戦場のヴァイオリニスト
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
マナ・ニール(p3p000350)
まほろばは隣に
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ミスティカ(p3p001111)
赫き深淵の魔女
マリア(p3p001199)
悪辣なる癒し手
秋宮・史之(p3p002233)
浮草
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
紅獣
アニー・メルヴィル(p3p002602)
恋揺れる天華
枢木 華鈴(p3p003336)
ゆるっと狐姫
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
ラクリマ・イース(p3p004247)
協調の白薔薇
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
桜咲 珠緒(p3p004426)
桜花爛漫
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
ノブレス・オブリージュ
ロク(p3p005176)
クソ犬
美咲・マクスウェル(p3p005192)
あの虹を見よ
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
リアム・マクスウェル(p3p005406)
エメラルドマジック
コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)
信仰者

リプレイ

●Daylight
 氷る海。
 海洋の片隅に位置するその海域、昼は海洋の他水域と殆ど変わりない。屋台が人寄せに声を上げ、賑やかに観光地としての顔を見せる。

 どうして、どうやって、海が凍るのか。それを証明するのは、彼女――おいては師である魔女たちにすれば簡単な事なのかもしれない。
 けれど、ミディーセラに“解剖”の趣味はなかった。或いは単に、そういう気ではないというだけかもしれないが。不思議なことは不思議なままでいい。たまには喧騒に身を浸したって良い。屋台の客引きの声を聴きながら、暑い砂浜を楽しそうに歩く。それは月の光が支配する静かな夜にはあり得ないものだ。
「こんにちは。ハーブティーはいかがですか?」
 ふとそんな声を聴いて、ミディーセラは振り返る。穏やかそうなハーモニアの女性――アニーが簡易屋台を開いていた。薬草が煮立ち、燻り、煎じられる香り。ある種、ミディーセラがよく親しんだ香り。海洋にもあるのかしら。けれど、そう、彼女は海洋の人ではないような。
「あなたは」
「はい、幻想から来ました。屋台も開けると聞いたので……自家栽培のハーブでお茶を煎れたんです、良かったらどうぞ」
 試飲ですからお代はいりませんよ、とアニーから手渡されたハーブティー。香りを嗅いで、一口。
「……ローズヒップ?」
「あ! 判りますか? そうなんです、色々ありますよ」
 おすすめはシャリシャリフローズンハーブティーです。
 ふむ、それは美味しそうですわ。
 魔女の愛し子と薬草の申し子が、今しばし歓談す。


●幕間
 しゃらり、しゃらり。夜を引き連れて、波音に氷の音が混じるようになる。
 寄せた波の枠線が霜となって砂浜に刻まれ、少しずつ海面が凍ってゆく。

 そんな中に泰然と立つのはロク。犬ではない。出来るならオオカミになりたいコヨーテだ。
 本当に海が凍るの? じゃあ、海の中に入っていたらどうなるの? そんな素朴な疑問。溺れるのは嫌だから、浅瀬で待っていた。のだけれど……
「あっ、なんか凍ってきた? 海が冷たく…ちょっとまって、水面上がって来てない? やばい! なんで!? あ! 海だから! ここ海だからか! 潮が満ちて……あっ! 溺れる! 逃げよう! 此処から! あっ海が! しゃりしゃり言ってるよ! すごーい! ちょっとずつ凍っ痛い! なんで!? あっ凍ってるからか! 浜辺やばい! 素足痛い! 痛いよー!」
 コヨーテが駆けていく。その後ろを追うように、しゃりしゃり、しゃりしゃりと海鳴り。


●Moonlit
 知っている声がした気がして、クリスティアンは顔を上げた。何故だろう、彼女ならきっと夕暮れの海に身を浸して色々試してみるのだろうなと、友人を思い起こして笑みを浮かべる。
 既に海は凍り付いていた。喧騒から少し外れて静かな波打ち際を歩めば、氷を砕く微かな音と柔らかな痛み。それはまるで、夏から秋へ移ろう時を表しているかのようで。思えば今夏は色々な事があった。思い返せば暇がなく、思い出す顔も無数。薄氷を僅かに覗き込めば、月光の照り返しが美しい。そして、その後ろにある喧噪も――嗚呼。
 まだ夏は終わらない。それに、静かなまま終わらせるのは、勿体ない。どうせなら賑やかに。そして友たちの笑顔と共に。
「おおい!僕も混ぜておくれよ!」

 凍り付いた波の間を、小さな妖精が駆ける。
 それはアスレチックを楽しむような心地で、一枚の絵画に出来そうな光景だった。
「余りはしゃぎすぎてはダメよ」
 エリーナはそう言いながらも、笑みを崩すことはない。サンダルを取り出すと、これを履きましょうね、と妖精の両足に触れる。
「……!」
 サンダルというものを不思議そうに見ていた妖精だが、足を護るものだと知ると、今度は凍った波の切っ先を踏みつけて遊び始めた。
 不思議な海だが、楽しむには悪くない。エリーナも試しに波の切っ先を踏んでみて、……その不思議な感触に、わ、と声を上げた。
「?」
「な、なんでもありません。本当よ?」

 のんびりと海辺を歩くコーデリア。天義の名門の出である彼女は、世界を見聞する旅の途中だ。
「成る程。これは見事ですね……本当に海が凍っている」
 各国の情勢、民の様子。それらを見るのが目的ではあるのだが、その国々が持つ珍しい景色にはいつも驚かされてばかりだ。己の視野はまだまだ狭いのだと、こういった景色を見るたびに思わされる。
「もし私が貴族ではなかったら……」
 あるいは冒険者として、珍しい光景を求めて旅をしていたのかもしれない。冒険をして、この身分では味わえない何かを胸に焼き付けたのかもしれない。――が。結局自分は天義の貴族。生まれは変えられないものだ。
 どのような原理であれ、神の御心によるものであるならば。コーデリアはしばし、静かに凍り付いた海へと祈りを捧げた。

 静かに波打ち際に佇む縁。海が空を映して、その稜線は曖昧だ。
 星空を鮮明に映し出す水鏡。まるで宇宙にでも来たようだ――そうぼんやりと思っていた彼の視界の端、きらりと光る金色の髪が掠めたような気がした。燻らせる煙管、金色は儚くその煙の向こうに消えてしまいそうで、捕まえたくて離したくなくて、思わず手を伸ばし……
 ぱりん、と氷の割れる音。脚を濡らす海水の冷たさに、は、と息を呑んで立ち竦む。海面に落ちたのは涙ではない。未練がましいと自嘲する言葉が、一つ。

 月はいつだって、どんなに苦しいときだって、夜に見上げればあるものだ。
 噛みしめるようにクロバが見上げた月は、やはり煌々と輝いていた。変わるのはいつだって、月を見上げる人の方。己はどうだろうか。クロバは問いかける。思えば、一人で月を眺めるのはいつぶりだっただろう。
 「オレも……」
 変わってきたのかもしれない。その言葉を飲み込み、はっとする。それではいけないのだ。異形の腕を月にかざして、己が誰か噛みしめる。
 “クロバ=ザ=ホロウメア”の在るべき道はただ一つ。そうだろう、なあ。
 氷の鏡に己を映し、彼は心中で問う。

 凍り付き、星を映し出す水面の鏡は、大自然が己にかけた魔法。
 その輝きに触れてみたいとミスティカは浜辺から一歩を踏み出した。ぱりん、と薄氷が割れて足が沈んでしまう。これが沈まないでいて、海の上を歩けたら素敵なのにと夢想する。
 このまま氷と水の底に沈んだら、どんな世界が見えるのかしら? 映っている星を掬ってみせたら、その星にゆけたりしないかしら?
 浅瀬に立ち、その足首までを夜の海にさらしながら想像を巡らせる。額にある深紅の宝石に、きらりきらりと星光が反射していた。

 一人になりたかった。――独りに、なりたかった。
 アマリリスは騎士ではなく、ただ独りの少女として海辺に立つ。
 かつて聖女と讃えられた彼女を、一晩にして無力感に突き落とした父。狂気をまき散らしてなお、行方の知れぬ父を思う。
「お父様」
 声に出せば、思い出す。優しかった父が何故?
「お父様、……お父様、お父様! 嗚呼、嗚呼! 嗚呼!」
 声に出せば、思い出してしまう。愛おしかった村を何故!
 泣き崩れ、それでも膝を突きはしない。海へ吼えるように叫ぶ。ただただ、おとうさま、と繰り返し。
 帰りたい。信仰と言う神聖に満ちた故郷に。絶対なる神が守るあの国に。早く、早く帰りたいのです。
 泣くのは今日だけだと己を赦しながら、ただ、ただ、アマリリスは桜色の頬を涙で濡らす。

 忙しなかったからたまにはこういうのもいいですの。
 マリアは一人のんびりと、空と海の写し鏡を眺めている。試しに近寄って、波のように枠線を描く氷を踏んでみる。
 しゃりり。
「まぁー。本当に凍るのですねー」
 不思議ですの。それに、面白い感触。
 やめられなくて、しゃり、しゃり、と何度も踏む。
 しゃり。
 しゃり。
 どうして。
 どうして。
「…………」
 足を止めた。興奮が一気に冷め、意識が落ちていくのはいつか、助けられなかった子の事。どうしてと問うのは、その子なのか、自分なのか。
 何故でしょうね。……嗚呼、何故でしょうね。
 祈るように呟く。その祈りが天上にいるあの子に通じると信じて、再び氷を踏みつけた。遊ぶのではなく、歩き出すために。これからを生きるために。

 浜辺で微かな潮騒を聞きながら歩む史之。
 白い波に、月明かり。その白さ気高さが、かの海洋の女王を思い出させ、ほう、と吐息を漏らさずにはいられない。
 最初に出会ったときは、名乗りそびれてしまった。美しさに見とれて、自己紹介が出来なかったのだ。出来れば次にお会いするときには、名前を憶えて頂きたい。そんなささやかな願いを胸に抱き、波を踏んでみる。
 にじみ出る海水に、かの女王はここを知っているのだろうかと思いを馳せた。知らないのならば見せたい。水を汲んで帰れないだろうか。女王だけではない、ギルドの皆にも見せてやりたい。
 波打ち際で奮闘する事、しばし。なんとか土産に値するだけの量は持って帰れたようだ。

 こうして海を見渡すことが出来る身体。時折咳き込み、血を吐けども、立って歩き、思うところに行けるという奇跡。
 冬に雪というものは見たけれど、氷る海とはまた異なる趣だと、珠緒は感嘆の息を吐く。昼間に頂いた“はーぶてぃー”と、油いっぱいの“ぽてと”。これらが食べられるのもまた奇跡。ならもう少しくらい欲張ってみたい。波打ち際を歩いてみたいと、珠緒は一歩踏み出した。
 まるで雪を踏むような、屋台で売っていたかき氷のような。しゃりしゃりという感触に、思わず顔が綻ぶ。
「この感触、ユーリカさんにも教えてあげましょうか」
 珠緒は歩く。己の二本の足で。弱々しいながらも、しっかりと。

「俺、惨状ですね」
 突然だが間違いではない。ラクリマの周りにはアベックがいっぱい。片思いの人も割といっぱい。虚しくない、虚しくなんかないと己に言い聞かせる姿は健気としかいいようがない。儚げな姿は月光や海と相まって一枚の絵になりそうなのに、どうしてアベックを気にしたりするんだ。
 気を取り直して。
 アベックの事を頭から振り払って海を見てみれば、舞台のように綺麗に凍り付いている。この海の上で歌えたら――きっととても楽しいのだろう。海に映る星空と、天上に輝く星空。天体に囲まれて思い切り歌えたら、と思うのだけれど、凍るだけの冷たさを海は持っているのだとラクリマは落胆する。
 いっそパンドラ復活使う? まだ結構残ってるよね?
 などと明らかに戦闘寄りの考えをしていると、ふと声がかかった。
「あらぁ? ラクリマくん?」

 アーリアは屋台で買った酒を手に、浜辺を一人ゆったりと歩いていた。靴底が氷を砕く感触が楽しくて、何処へ行こうというでもないが、音を求めて歩いてしまう。
 このままどこまでも歩いて行けそうな気がするのだけれど――例えば絶望の青だって、越えてしまえるような気がするのだけれど――もしかすればもしかすると、なんて、少し深いところに足を踏み出してみる。
 ぱりん。
 ほらね。
 氷は儚く割れて、ヒールが海を僅かに割る。それは何処か、深いところに繋がっているような気がするとアーリアは思う。どこか遠くへ行きたいと足を踏み出しても、結局は薄い氷の上。踏み砕いて海の底――
 僅かに目を伏せ、なぁんてね、と再び目を開けて周囲を見れば、知った顔が何やら煩悶しているよう。
「あらぁ? ラクリマくん?」
「! 貴方は……」
 何事も楽しくいきたいわよねぇ。例えそれが、薄い氷のような楽しみでも。
 見知った顔、おひとりさま同士の二人、仲良く屋台飯としゃれこむのだった。

 その頃、【シャーベット・ウォーク】。リアは本当に凍り付いた海に、瞳を輝かせていた。その隣でシオンが「まるで月が二つあるみたいだ」と零す。詩的ながらも、彼の両手にはわたあめにイカ焼き。どうやら昼の海も堪能した後のようだった。
 折角だから波打ち際も歩いてみよう、とは焔の提案。ビーチサンダル越しに氷を砕く感触と、ひんやりとした涼しさ。
 リアは年上だからと見守っていたけれど、二人の呼ぶ声に己も波の枠線を踏み。三人の意見が一致する。すなわち“こんなの初めて!”。リアはひっそり焔と仲良くなる隙を狙っていたようだが、それもきっと杞憂。だってこんなに意見が揃っているのだから。
 けれど――次の瞬間、背中を伝う冷たさにリアは飛びあがった。
 焔にわたあめを預けてしゃがみこみ、氷を探っていたシオンが、彼女の背中に氷を入れたのだ。
 追いかけっこを始める二人を、あーあ、と見守る焔。これでは誰がお姉さんやら判らないね。

 乗り物ですからね。誰かを載せて走ってみたかっただけなんです。
 そう零すローダーが、バイクの後部を示した。
 “ナンパ”したマナを載せてゆっくりと二人、灯りを付けないで波打ち際を走る。一人で来たのに、奇矯な出会いもあるものだ、とマナは風になびく髪を押さえて思う。海が凍り付いたせいか、汐風も今は薄い気がして。凍ってしまったからなのか、どうしてか。それは判らないけれど……
 バイクの駆動音が緩くなって止まるまで、誰も何も言わなかった。ローダーも、マナも。静かに唸るような潮騒だけが響いている。
 そして長いようで短い海岸線の旅は終わり――ローダーは、ただ一言だけ問う。
「戻りますか?」
 マナはその問いにゆっくりと微笑み、答えを口にした。
 言葉は潮風に攫われて、何と答えたのかは二人しか知らない。

「結乃、こっちじゃ、こっち!」
「わぁ! 待って、おねーちゃん!」
 華鈴と結乃は二人、波打ち際。湖が凍るのは聞いたことあるけれど、海が凍るってどうなっているんだろう? 結乃が考えている間に、華鈴はどんどん先へ行って、波を踏む。
「……ど、どう?」
「おお。雪を踏んだような…とても冷たい感触じゃ」
 はらはらと問いかける結乃に、華鈴は大丈夫だという声色で答え。ならボクも、と結乃も波を踏む。
 しゃり。しゃり。しゃり。
「……! わぁぁ、面白い!」
 おねーちゃんの言った通り、まるで雪を踏んだときみたいだと、結乃は夢中になって波を踏む。
「ね、ね、おねーちゃん! 足跡いっぱいつけたい!」
「うむ。余り深い処へは行かぬようにな」
 華鈴は思う。自分と言う保護者がいれば安心だろう、なんて。
 傍目には幼子としか思えない二人は、満面の笑顔を浮かべながら波打ち際でいとけなく遊ぶ。

「此処に来て海を見ないという選択肢はないなー。そう思うでしょ?」
「そうだな。幾度となく世界を渡ってきたが、この光景は初めてだ」
 美咲とリアムは二人、波打ち際で凍り付いた海を眺めている。水鏡を楽しむというよりは、美咲はその仕組みに興味があるようだった。
「この世界は、美しいものが多いのだな」
「美しい、ねえ。まあさておいて、私のいた世界では――なんだけど。海水が凍るときはね、水だけが凍るんだよ」
「……つまり?」
 つまり、塩分はそのまま残るって事。
 どうなんだろうね?と言いながら、波打ち際の氷を一つ折り取って舐める美咲。
「……なるほどなー」
「どうだった?」
「え? いやあ、結果は自分で確かめてみてごらんよ」
 その方が判りやすいよ? と勧める。するとリアムは美咲の手からするりと氷を抜き取って、一口舐めた。
「……!! ちょ、君」
「なるほど。……ん? どうかしたか?」
「いや、……あー。なんでもない」
 これは無自覚ですわ。言ったらこっちが恥ずかしいやつ!

 せっかく夜なのだからとギフトを発動し、髪を月の色に輝かせるルーキス。月光色の髪を揺らして波間に踏み入り、無邪気な子どものようにはしゃいでいる。
 ルナールもおいでよ、と手を引かれ、二人で波打ち際。ルナールはルーキスのこの髪色が好きだ。勿論、いつもの白い髪色も好きなのだが。
 遊ぶ方法ならいくらでもある。けれど今日は、ルナールに決めてもらいたい。そう言ったルーキスに、ルナールははて、と考える。
「たまにはお兄さんが決めても良いと思うんだー?」
 波打ち際でも、浜辺でも。何なら海の底でも。
 けれどルナールは、浜辺を選んだ。手を繋いで、一緒に歩こう。――浜辺に残る四つの足跡。片方は濡れていて、けれど、しっかり二人寄り添って。
「もっともっと色々なところに行こうよ。勿論二人で揃ってね」
「色々なところか……ああ。ずっと一緒に二人揃って、な」

 さて、アストラルノヴァとブーケの二人。この氷る海へ行こうと言い出したのはどちらだったか知れないが、ゆったりと砂浜を歩く。砂を踏む音の中に、時折氷を砕く澄んだ音が混じり入り、ブーケは耳を傾けていたが――
「でも、ヨタカさんってなんや…他人行儀やんなぁ?」
 と、ふとした事を言いだした。アストラルノヴァはきょとんとして…それから、あだ名でなんて呼ばれた事がないとむず痒い顔をする。
 その間にもブーケは候補を上げていく。タカリン、よっちゃん、……ヨン様。
「これええね! ヨン様って呼ばせてもらいますわぁ」
「……じゃあ俺は、ぶーちゃ……んん、ルーさん……?」
 一生懸命手繰るように紡ぎ出されたあだ名に、なんだかおかしくてブーケは笑った。飴玉みたいに癖になってしまうかも。

「寒くないのに凍った海、か」
 そんなのが見られるなんてな、とリゲルは感嘆の息を吐く。隣でポテトも、そうだな、と同じく息を吐いた。寒くないから、息が白く霞む事はないのだけれど。寒さが苦手なお前でも大丈夫だな、なんてリゲルが言うものだから、海面よりも天上よりも、私のお星様が輝いているよ、ってポテトも返してしまう。
 一緒に砂浜へ踏み入って、氷を割って遊んでいると、それがまるでダンスでも踊っているような心地になって。
「……もう少し一緒に踊っていただけますか? 私の王子様」
「勿論。謹んでお相手致しましょう、俺のお姫様」
 それはまるで御伽噺のように。リゲルはポテトの手の甲に唇を寄せ、寒くはないのだけれどそうしたくて、身を寄せた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆さま思い思いに楽しんでいただけたようで、良かったです。
しゃりしゃり。海が凍る。その海風は秋風に似ているかもしれませんね。
ご参加ありがとうございました!

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