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シナリオ詳細

オタクに優しいギャルがいないなら、君がオタクに優しいギャルになるのだ。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●オタクに優しいギャルの伝説
 オタクに優しいギャル! それは、伝説である。
 ラサのいにしえ、はるか太古の時代! オタクに優しいギャルは実在し、古代のオタクたちに優しくしてくれたというのだ!
 その存在は、未だ仮説の域を出ない。いや、だがここに、オタクに優しいギャルを描いたという太古の石板が発掘されたのだッッ!
 学会は沸いた! 紛糾した! それから黙殺した――! そう、いるわけないだろう、オタクに優しいギャルなんて! 学会はそう判断したのである!
 だが――そんな学会に、敢然と反旗を翻す学者がいた! アーライラ・クン博士とその弟子たちである!
「どうしてですか、これはどう見てもギャルを描いているではないですかッッッ!」
「いや、どう見ても当時のよくある衣装だし、ちょっとまつげバキバキに見えるけど、それもよくある、人体をデフォルメした絵柄で」
「まつげバキバキでネイルしてたらギャルだろうがッッッ!!!!!」
 アーライラ博士と弟子たちは、学会の反対を振り切り、オタクに優しいギャル遺跡の発掘に向かったのだ! ちなみに、学会費はちゃんと払っていたので、別に学会を追放されたりはしなかった。それはさておきそう、この遺跡を発掘すれば、古代からオタクに優しいギャルは存在したという仮説は現実のものとなり、すなわちオタクに優しいギャルは実在するという事になるのだ! これは重大な探検であった。
「いくぞ諸君! 我々がオタクに優しいギャルは実在したと証明するのだッッッ!!!」
『おー』
 博士と弟子たちは、意気揚々と遺跡の中へと向かっていく! この偉大なる一歩は、歴史的一歩になるのだ!


 当然のことながら、雑に遺跡に潜った一行は普通に遭難して、三日くらい帰ってこなかった。
 なので、ローレットに救助依頼が持ち込まれることになったのである……ッ!!

●それでこうなった
「どうして……?」
 アーリア・スピリッツ (p3p004400)がうつむいて頭を抱えた。呼ばれたのだ。「ギャルに一家言のあるイレギュラーズ」として。
「わ、私……ないわよぉ? その、ギャルについての知識なんて……!」
「そうですわよね。まさかネトゲでギャルアバターを使って男どもを手玉に取っているわけでもないでしょうし」
 と、何の気もなしにヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)がそういうので、アーリアはびくり、と肩を震わせてから、頭を振った。
「ええ、男を手玉になんて……そんな事してないわよぉ!
 ちょっとみんな、なぜか勘違いしちゃうというか……」
(ギャルは否定しないのか……?)
 マニエラ・マギサ・メーヴィン (p3p002906)は訝しんだ。
「さておき、まぁ、ギャルはどうでもいい。実際遭難している奴はいるのだろう?」
 マニエラが言うのへ、依頼主の男――学会の学者の一人で、アーライラ博士とは信仰深い人である。彼は古代のロリババアの研究をしていた――が頷いた。
「ええ、はい。食料や水は十分にもって行っているはずですが、何せもう三日。心配です」
「確かにそうですわねぇ。遺跡は危険なものなんですの?」
 ヴァレーリヤがそういうのへ、男は頷く。
「ええ、魔物が住んでいるようでして。一般的なアンデッドの類……それから人の声をマネして、呼びよせる……トラップ型の魔物ですな。囁くもの(ウィスパー)などと呼ばれております。救助者の真似などをされて、遭難者を誘われては問題がありましょう」
「なるほど、そこまでは分かった」
 仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)が手をあげた。
「で、この依頼のどこに、ギャルに一家言のある必要性が?」
 はい、と男が頷いた。
「遭難者であるアーライラ博士、そしてその弟子たちは、はっきり言って逃げ足は抜群ですので、魔物に遭遇せずに隠れているでしょう。これは確実です。情報精度はAなので。で、彼らをおびき寄せるために、ギャルの真似をする必要が!」
「いや、無いだろう!?」
 汰磨羈が叫んだ。
「今の話の流れのどこにギャルの真似をする理由が!?」
「ですので、逃げ足の速い彼らは、通常の救助隊が現れてもそう簡単には顔を見せないはずです。
 ですが、彼らはオタクに優しいギャルが大好きなタイプの人間……皆さんが、オタクに優しいギャルの演技をしながら遺跡を探索すれば、向こうから飛び出してくるという寸法」
「ハードルあがったな!?」
 汰磨羈が頭を抱えるのに、ゼファー (p3p007625)も苦笑した。
「……流石に、ギャルの真似をし続けるというのは……」
「ええ、むずかしいですよね。ギャルの格好をしながらオタクに優しいギャルの演技をしつつ、遺跡を探索するのは……」
「今さりげなくハードル上げたわね?」
 ゼファーが嘆息する。
「このまま何度も聞き返していてはハードルが上がりそうだし、諦めるしかなさそうね。
 たまきちも、たぬきとかあらいぐまって言われるよりマシじゃない?」
「最悪に最悪を並べられてもな……」
 汰磨羈がうんざりした表情で頭を振った。
「ですが、ゼファーの言う通りですわね。こういう時は心を殺してさっさと終わらせるに済みますわ。どうせ逃げられませんし」
 ヴァレーリヤの言葉に、仲間達は頷いた。もうこうなったら、やるしかないのだ……。
「ところで」
 マニエラが言う。
「この依頼持ってきたの、メンバーのうちだれだったかな」
 小首をかしげるのへ、
「さぁ? 誰かしらねぇ?」
 ゼファーは目を閉じて、肩をすくめてみせるのだった――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 これはリクエストシナリオなので、winwin関係みたいなものです。

●成功条件
 ギャルの格好をし、オタクに優しいギャルを演じながら遺跡を探索、アーライラ博士たち遭難者10名を救助する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 オタクに優しいギャルの伝説――それを求める紳士たち、アーライラ博士と九人の弟子たち。
 彼らはオタクに優しいギャルを求め、古代遺跡に入り込みました。
 そしたら遭難しました。
 遺跡の内部には魔物達が徘徊しており、とても危険です。
 しかしアーライラ博士たちは身を隠すことと逃げる事には長けており、現在は潜伏し命を長らえている状態。
 さあ、皆さんはアーライラ博士たちを救助するために移籍に向かうのです!
 アーライラ博士たちは、「オタクに優しいギャル」を探しています。つまり、皆さんがギャルの格好をしてオタクに優しいギャルを演じていれば、向こうから出てきます。というわけで、オタクに優しいギャルになりながら、魔物を倒して遺跡を探索してください。あと全身図とか作って洗井落雲にリプで送ってください。今月誕生日だったんです。
 作戦エリアは、地下遺跡になっています。いわゆる地下ダンジョンになっており、あたりは暗いため、明かりなどを用意しておくとよいでしょう。また、探索に必要なスキル全般は、様々な判定を有利に導くはずです。

●エネミーデータ
 アンデッド類 ×???
  いわゆる地下遺跡にいるアンデッド類です。マミー、スケルトン、ゴースト……太古にオタクに優しいギャルを求めて死した男達の亡骸は、死してなおオタクに優しいギャルを求めています。
  具体的に言うと、オタクに優しいギャルの真似をしていると寄ってきます。大変ですね。
  とはいえ、さほど強力なユニットというわけではありません。オタクに優しいギャルっぽく戦って、ぼこぼこにしてあげてください。

 ウィスパー ×???
  誰かの声をマネして発声し、近寄って来たものを喰らうという、不定形なスライムのような怪物です。
  お察しの通り、皆さんがオタクに優しいギャルの真似をすればするほど、その声と演技をマネして人をおびき寄せます。
  アーライラ博士たちもおびき寄せられてしまいますし、何より皆さんの痴態を目の前で再現されてるわけなので、辛いです。とてもつらいです。見つけ次第倒しましょう。

●救助対象
 アーライラ博士と9人の弟子たち
  オタクに優しいギャルを探し求める、アライグマの獣種たち……いったい何者なんだ……。
  戦闘能力は低いですが、隠れる事と逃げだすことは得意なので、現在無傷で遺跡に隠れています。
  オタクに優しいギャルが出てきたら飛んでくることでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • オタクに優しいギャルがいないなら、君がオタクに優しいギャルになるのだ。完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年07月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
※参加確定済み※
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
※参加確定済み※
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
※参加確定済み※
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
※参加確定済み※
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ
メイ・ノファーマ(p3p009486)
大艦巨砲なピーターパン

リプレイ

●アーリアお姉さんが言うには
「……私ね、ここ数日の記憶がないの。
 『アーリア、はいここサインして』ってゼファーちゃんに言われてサインしたのはギリギリあって……ウッ」
 苦し気に頭を抱える『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「そうだったかしら? わたし、そんなことした?」
 そんなアーリアへ、『風と共に』ゼファー(p3p007625)が明後日の方向を見ながら相槌を打つ。
 一方、『無名偲・無意式の生徒』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は頭を抱えるアーリアに駆け寄った。
「大丈夫か、エイ……アーリア。ギャルのことについては詳しいはずだろうエイ、じゃなかったアーリア」
 ぎぎぎ、と音がする彼のように、鈍く視線を動かしたアーリアが、微笑んでマニエラに行った。
「次エイ……みたいなこと言ったら、きゅっ、ってするわよ?」
「何を!?」
 マニエラが驚愕するのはさておき。ここは遺跡。アーライラ博士がつけた名前は古代オタクに優しいギャル遺跡。此処にいるアーライラ博士達を救助するのがイレギュラーズのミッションだが、それはさておき、イレギュラーズ達はみんなギャルっぽい格好をしていた!!!
「どうしてこんなことに?」
 小首をかしげる『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)。レーゲンは森アザラシなので、ちょっと可愛いリボンをつけたくらいだが、代わりにグリュックがギャルっぽい格好をしていた。具体的には、オーバーサイズのパーカーとホットパンツである。パーカーはホットパンツを隠すくらいのすその長さに、ぴょん、と飛び出た尻尾がチラリズムを煽る。可愛い。
「ギャルは良く知らないけれど、グリュックの優しさをぶち込むっきゅ!!」
 きゅー! とレーゲンが鳴く。グリュックの身体が、ぐー、と親指を立てて見せた。可愛い。
「ギャルって『ちょべりば~』とか『まじで~?』とかいう女の子……だっけ?」
 うーん、と小首をかしげつつ言うのは、『青き大空のピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)だ。メイは自分の格好をひらり、と動きながら確認してみた。再現性東京から借りてきたセーラー服はその通りだが、レギンスを履いたそのおみ足は健康的だ。スポーティなギャルという所だろう。可愛い。
「ボクもまだ21歳! ともだちからは『21歳児』って言われてるからよゆーよゆー!(キラッ☆) ということで、ボクは健康的スポーティー元気ギャルだよ!
 ……所でアーリアお姉さん、なんか疲れた顔してるね?」
 尋ねるメイに、アーリア(ギャル)は優しく笑った。
「多分二日酔いよ」
「でも」
「二 日 酔 い よ」
「はい」
 結構な迫力があったので、メイはこくこくと頷いて納得することにした。
「というか、ギャルって遺跡にいるもなのですか?」
 尋ねるのは、『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)だ。
「ギャルとはみんなが飢えに苦しむことなく、着たい服を着られて戦いのない平和な世の中で自由に生きる者であり、そのような世の中を実現するために突き進む武士のようなものだ、と書で読みました。何の書かはおいておいて」
 マグタレーナがそういうのへ、皆「なるほど?」みたいな顔をした。間違っていない気もする。
「いいえ、いいえ!
 遺跡にギャル? そんな場所を探すだなんて、まだ甘いですわね!」
 と、いうのはムショ帰りの前科無限犯、『ヤのつく自由なお嬢様』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)だ!
「真のギャルは、刑務所にこそ居ますのよ。
 たとえばそう、私のように! しばらくぶりの娑婆の空気は美味しいですわ〜〜!」
「ここ、地下遺跡ですけれどね?」
 マグタレーナがいうのへ、ヴァレーリヤが、ふふ、と笑った。
「まだまだマグタレーナにはわからないかもしれませんわね……どんなかび臭い遺跡の中でも、ムショの中よりは自由を満喫できるという事を……」
 そういうヴァレーリヤの格好は、再現性東京から借りてきた夏服のセーラーを、かなり着崩した、所謂ギャル系の格好だ。それだけでは寂しい、という事で、手にはチェーンのついた銀色のブレスレットをつけている。どう見ても手錠だ。言い方。
「なるほど。自由に生きればこそムショJKもアリよりのアリなのでしょう……」
 本当にそうです? と心の中にしまい込んで、マグタレーナは頷いた。ちなみにマグタレーナは、白いチューブトップと薄い青のデニムパンツに、黒ジャケットを羽織ったギャル教師である。ギャルで、教師である。そして母? 美味しい。すごくおいしい……。
「なにか雑念を感じましたが……さておき、これがわたくしの精一杯」
「んー? いい感じじゃね?」
 と、ポン刀ギャル……じゃなかった、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が言った。日焼けサロンでバキバキに焼いた肌に、ルーズソックスとミニスカセーラー服。ギャルである。
「ということで~、オタクに優しいギャルなたまきち、推・参☆
 刀提げたギャルって時点でもうパーペキでしょ?
 胸元のボタンをギリまで外しておくのも忘れない辺り、私ってばマジ神ってる!
 みんな、しくよろ~☆」
 等と言いながら、仲間達の隣に立って、次々と一緒に自撮りをしていくたまきち。その姿、行動、ソウルはすでにギャルだった。
「た、たまきち……どうしてそんなに覚悟きまってるの……?」
 流石のゼファーすら困惑しつつそういうのへ、汰磨羈は笑った。
「えー? 覚悟って言うかぁ……たまきち、元からこういう感じだったって言うかぁ?」
 覚悟にキマった目をした 汰磨羈に、ゼファーがこくこくと頷いた。怪物を生み出してしまったような気がした――。
「……さておき」
 こほんと、ゼファーは咳払い。ちなみに、ゼファーもちゃんとギャルの格好をしている。アーリアとゼファーの格好は、シナリオトップの画像をご確認ください。
「はじめましょ。傷は浅いうちにすませるのがいいわ」
「そうね……」
 アーリアが頷いた。
「それじゃあ、いくわよぉ、みんなぁ」
 アーリアが諦めた表情で言うのへ、仲間達は「おー」と頷いた。
 とにもかくにも――お仕事である!

●遺跡のオタクに優しいギャルたち
 かくして、イレギュラーズ達は探索の一歩を踏み出す。薄暗い遺跡には、太古のものと思わしき壁画が遺されていて、当時の生活を何となく思い起こさせる。そんな壁画を眺めながら、ゼファーは言った。
「確かにゴールドアクセじゃらじゃらで、ネイルにアイメイクもバッチバチな壁画ですけど。
 そういうメイクとかが流行った時代だった、ってだけな気がしなくもないわね。
 うん、白と黒っぽいのもいますけど。何か跪いたオタクを撫でてるっぽいですけど」
 先に進むにつれて、なんだか壁画は妙な方向に進んでいる。まるでオタクに優しいギャルが実在したかのように……!
「いや、これ……どう、なのかな?」
 メイが小首をかしげた。
「昔のことはよくわからないね……見ようによっては確かに……なんか、ギャルに見える……?」
「言葉のマジックよね……たぶん、女王にかしずく配下とかじゃないかしらぁ……?」
 アーリアが言うのへ、
「なるほど、確かにそうとも見えるよね」
 メイがニコニコと笑った。当時の絵描きがどのような意図をもってこの壁画を描いたのかはわからない以上、後世の人間はそれを見て想像を膨らませるしかない。このリプレイも、後世の人間が見たら、もしかしたら当時の人間の仕事として「みんなギャルの格好をして仕事していたんだね」って思われるかもしれないし。
「それより、えーと、研究員の皆を探さなきゃね」
 レーゲン……いや、グリュックがそういう。足下にはファミリアーのアライグマがいて、
「ちびオタク君。君に似たオタク君達が危ない目に遭ってないか確認よろしくね」
 と、グリュックが言えば、こくこくと頷いてから、とことこと遺跡の先を歩いていく。
「それから……ギャルの真似、だよね?」
「本当にやるのか……」
 マニエラがうんざりした様子を見せる。
「マニマニ、しおしおじゃん。ウケる。覚悟決めた方がいいって」
 汰磨羈がけらけらと笑いながら言うのへ、マニエラは澱んだ目を向けた。
「やるしかないのか……わかった、これも仕事だしな……」
「恥ずかしいなら、僕が先にやるよ」
 グリュックがそういうと、一歩前に出た。
「えーと……オタクくーん? 毛づくろいの時間だよー! 代わりばんこに毛づくろいしよー!」
 そう叫んだ刹那! 物陰から何かが飛び出してきた! 見るからに探索装備をつけた、獣種の研究員である!
「ええっ!? オタクに優しいギャルと毛づくろいができるのかい!?」
「確保ーっ!」
 ヴァレーリヤがぐい、と研究員を羽交い絞めにする。
「っと、いえ、確保ではありませんでしたわね。救助でしたわね」
「というか、今ので出てきちゃうの……?」
 メイが呆れた様子で言う。
「はっ! すみません、オタクに優しいギャルの気配を感じていてもたってもいられず……」
 えへへ、と笑う獣種の研究員に、マニエラはあきれた様子を見せた。
「有能なんだかあほなんだかわからんな……。
 こういうのがあと9人もいるのか……」
「とりあえず、オタクくん、後ろについてきてくれる?」
 アーリアが言うのへ、研究員は頷いた。
「はい! 所で、毛づくろいは?」
 満面の笑顔で言うので、グリュックは死んだ魚のような目で言った。
「終わったらね」

 というわけで、オタクに優しいギャルたちの捜索作業ははじまった! と言っても、なにも難しい事ではない。オタクに優しいギャルたちは歴戦の冒険者でもあるので、こう言ったダンジョンアタックには手慣れているのだ! まずはダンジョンアタックの基礎を行う。しっかりとした準備は作戦成功の第一歩だ。そこは完璧。この依頼の醍醐味は、そう、オタクに優しいギャルたちの呼び声なのだ――!

「どこですか? オタクに優しいギャル先生ですよ。
 オタクくん、今日は補習の日でしょう? 出てこないとギャル先生は怒りますよ――」
 マグタレーナが声をあげる。ギャル先生。何と聞こえのいい言葉か。こんなものには研究員たちが耐えられるはずがない!
「すみません! 先生! 俺たちが間違ってました! 踏んでください!」
 暗がりからずざーと飛び出してくる研究員が寝っ転がって腹を出したので、取り合えずマグタレーナは踏んでみた。
「だめですよ、オタクくん。授業に関係ない漫画を持ち込んでは」
「ああ御免なさい先生あーッ!!」
 その近くでは、距離感バグったメイが、研究員(あらいぐま)に顔を近づけて、にっこりと笑っていた。
「あのね、夏休み明けたらすぐ体育祭でしょ?
 障害物借り物パン食いお玉で生玉子運び100m×4リレー、絶対勝ちたいからさー……。
 夏休みに練習しようよ。いいかな?」
「煮るなる焼くなりすきにしてください!!!!」
 ひっくり返った研究員(アライグマ)がゴロゴロしたので、メイが距離感バグって思いっきり近くで、にっこりと笑った。
「よかった。じゃあ明日から毎日朝6時ね~」
 一方、ヴァレーリヤはオタクくん(アライグマ)の顎あたりをこしょこしょしながら、
「あのさ、いつも漫画描く時に使ってるペン、貸してくんない?
 あの隠し持てそうなサイズで、いざとなったらコンクリートも掘れそうなやつ。
 アレさえあったら、何があってもまたアンタに会えそうな気がするんだ」
 と、脳裏に脱獄のイメージを浮かべながらいうギャルに、
「大丈夫! 何なら差し入れとか外との連絡役もするから……!」
 と、とろけた顔でアライグマが言うので、ヴァレーリヤははにかんだ笑顔を浮かべた。
「また無事に会えたら、一緒に北の方に行こ。そんでマグロ獲ろうよ。……約束だよ」
「うおおお! カニでもマグロでも何でも来いってんだ!!!」
 あちこちでくりひろげられる、ギャルとオタクくんのロールプレイ! ちなみにここはそういうお店ではない。捜索作業中である。ギャルたちの決死の捜索により、研究員たちは次々と発見されていく。もちろん、ギャルたちを探し求めるアンデッドもそれなりにわいてきたが、ギャルたちはストレスを解消するよぅに、無情にもぼっこぼこにして追い返した。さようならアンデッド。
「距離感バグ……距離近め、スキンシップ多め……ごめん、ちょっと待って? これって割と普段からのわたし……?」
 オタクスケルトンを蹴っ飛ばしてインファイトするゼファーが困惑した様子をみせた。
「まぢ? ぜふぁっちギャルじゃん。今日からギャルってよぶし」
 汰磨羈がこれは逆襲の手を握ったぞ、という表情をしたので、ゼファーは慌てて頭を振った。
「ち、違うわ、ギャルっていうのはわたしみたいなのじゃなくて」
 そう言った刹那、突然、暗がりの奥からギャルの声が聞こえてきた!
『そうだし、たまきちみたいなのがギャルだし』
「そうそう、ああいうのが――って、あら?」
 ゼファーが首をかしげる。その声は、確かに汰磨羈のそれだった。が、目の前の汰磨羈は、きょとん、とした顔をしている。という事はつまり、これは汰磨羈の声ではない――?
「ウィスパーだわ!」
 ゼファーが声をあげた! 声をマネする魔物だ!
『ちがうし、たまきちだし』
 ウィスパーが言う。
『ぁたし、ギャルだし。オタクくん、何時も頑張ってるよね。ぁたし、ちゃんと見てるから
――』
「うっぼぁ」
 汰磨羈が吐血した!
「たまきち!?」
 ゼファーが叫ぶのへ、汰磨羈が小刻みに痙攣する。
「わ、ワタシ、私、わたし、あんな感じだったのか……? これまでも……これからも……!?」
「ああっ! 客観的な自分の演技を見せつけられて、心が重傷を負っている!!」
 マニエラが叫んだ! そう、演技している間は意外と心は躍るもの――辛いのは、後から自分を客観視することなのだ!
「いかん! 速やかにウィスパーを探してたおさんと、研究員(オタクくん)がどうのこうの以前に、此方の心が死ぬ!!」
『あ、これアーライラのじゃん。いっつもなんか書いてると思ったら漫画描いてるんだ……あれ、この女の子ってなんかアタシに似てるような』
 アーリアの声でウィスパーが喚く! アーリアが貧血のような症状を呈して地に倒れ伏した!
「や、やめて! ち、違うの! 私、私、ROOでもあんな事してない……!」
「アーリアーーーーッ!!」
 マニエラが叫んだ。アーリアの心に強烈なダメージが叩きつけられる!
「と、兎に角ウィスパーを探せ! 全力!」
 マニエラの叫びに、仲間達は頷いた。この強烈な攻撃は、正直うけたくはなかったのだ。

●そしてギャルは帰還する
 壮絶な戦いの果てに、みんな心に壮大な傷を負っていた。具体的にいうとパンドラ減らしました。
「後は……アーライラ博士だけですわね……」
 ヴァレーリヤが言うのへ、皆は頷く。
「いやな名前だな……まるで色々な性癖を持つアライグマのような名前だ……」
 マニエラの言葉に、メイは頷いた。
「なんだか……わけがわからないけど分かるよ、マニエラおねえさん」
 イレギュラーズ達の捜索は、ぼちぼち終わりに近づこうとしていた。捜索は遺跡の深部にいたり、9人の研究員を見つけ、後はアーライラ博士を残すのみ。
「ここまで来たんだし、なんというか、責任払いでゼファーさんに探してもらおうか」
 グリュックがそういうのへ、皆は頷く。ゼファーだけが目を丸くした。
「どういう事」
「どうもこうもないわよぉ……」
 死にそうな顔で、アーリアがいう。ちなみに汰磨羈は血を吐いて倒れている。アーリアの恨みがマシそうな顔に、ゼファーは嘆息した。
「……そうね。いいわ、腹をくくりましょう。こほん」
 すぅ、とゼファーが息を吸い込む。
「ね、アーライラくんさぁ、勉強ばっかして疲れてるっしょ?
 出てきて一緒にお休みしよ?
 ほら、ジュース(飲みかけ)、飲む?」
「飲みます!!!」
 なんか出てきたので、ゼファーはとりあえず踏んづけた。
「ウケる、がっつきすぎじゃん。でもさ、そういう面白いとこ、好きだよ、オタクくん」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「もうさ、あんまり無理しないでよ。オタクくんには、あたしがいるじゃん? それじゃ、いやかな?」
「いやじゃないです!!!」
「じゃ、もう帰ろっか」
「はい!!!!」
 話はまとまった。ゼファーが、ハイライトの消えた目で振り返るのへ、仲間達もハイライトの消えた目で頷いた。
「……帰ったら、強めのお酒、飲みましょ」
「付き合うぞ……」
 アーリアの言葉にマニエラが頷いて、汰磨羈が痙攣した。
「お酒は現実を忘れさせてくれるっきゅー……」
 レーゲンがしみじみと言った。
「そうだね……大人になるって、辛い事だよね」
 メイもしみじみと言った。
「それでは、戻りましょうか……おや、ヴァレーリヤさんは?」
 マグタレーナが尋ねるのへ、レーゲンが言った。
「さっき黒服の人に連れて行かれたっきゅ」
「なるほど、帰るのですね、檻の中に」
 納得したように、マグタレーナは頷いた。

 かくして、ギャルたちによる捜索作業はおわった。
 ギャルたちは確かな心の傷を負いながら、もう全部忘れようと決意するのであった。

成否

成功

MVP

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式

状態異常

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)[重傷]
陰陽式

あとがき

 ありがとう、オタクに優しいギャル――!

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