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シナリオ詳細

<Paradise Lost>Vincit qui se vincit.

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●気紛れな貴女
「――ああ、あなたさまが望むならぼくは何れだけだって道化になれるというのに!」
 芝居がかった声色で、朗々と叫んだ女はエメラルドを思わす眸に涙を浮かべていた。
 胸に手を当てて、焦がれるように手を空へと伸ばす彼女の傍らには詰まらなさそうに佇む一人の女の姿がある。
 月に焦がれるように身をくねる女は一つの言葉を思い出した。

 ――アタナシア。

 ――アタナシア、お好きになさいな。『遊んで』いらっしゃいな。

 彼女がそう囀るならば女は幾らだって児戯に興じる自身はあった。美しき女主人。
 彼女は酷く醜い男の誘いを受けて此度は男の手を取る事に決めたそうだ。女は彼女がそう決めたならば幾らでも従おう。
 彼女が靴を舐めろというならば這い蹲って舐める自身だってある。彼女が死ねというならば死ぬ自信だってあった。
「それにしたって、ぼくに声を掛けてくれたのはルクレツィアさまもぼくを愛しているという事だろうか?
 何時だってリュシアンもクラリーチェもジャコビニも、あいつらばっかりだったからぼくを頼ってくれただけで天にも昇る気持ちだよ!
 そうは思わないかい? ぼくの『憤怒』、ぼくの愛しき『壊世の焔』」
 やけに饒舌な女に語りかけられたのはその傍で佇んでいた黒き焔の娘であった。
 長く伸ばした金の髪に纏わり付いた焔は地をも焦がす烈火。女の目が吊り上がり言葉もなく唇が引き結ばれる。
「きみは囀ることが得意であった筈なのに、ぼくとの逢瀬を忘れてしまってそんなにも怒りに身を任せたのかい?
 ああ――きみの素晴らしい『駒』ならルクレツィアさまも喜んで下さるよ」
「……殺ス……世界ナンテ、イラナイ……」
「そうだね、ぼくの『ホムラミヤ』。ぼくだってルクレツィアさま以外の世界なんて必要としていないのだから!」
 色欲の魔種、冠位色欲ルクレツィアを信奉するその女の名前は『享楽』のアタナシア。
 その傍らに立つのは嘗ては世界を救わんと願った一人の少女のなれの涯て。焔宮 鳴 (p3p000246)と呼ばれていた只一人の魔種。
「ぼくのホムラミヤ、嫉妬しないでおくれよ? ぼくも、レディーには愛される性質でね。
 ……『超絶美少女のルル家ちゃんが健闘した』アタナシアと名乗ることを求めた愛らしいあの子にご挨拶もしなくては」
 くすくすと笑ったアタナシアは思い出す。あのヴィーグリーズの喧噪で自身を撤退に追い込んだ彼女達と再びの逢瀬を重ねるために。

●『サリュー』へ至れ
 その薔薇は秘密裏にその場所に咲いていた。
 ローザミスティカ――幻想国における治外法権と呼ばれた大罪人を収容する絶海の孤島。監獄島と呼ばれたその場所の実質的な支配者である女だ。本来の名をベルナデット・クロエ・モンティセリという女はフィッツバルディ公の姪である。モンティセリ辺境伯夫人として知られる彼女は貴族殺しの罪で監獄島に投獄されている『筈』ではあったのだが。
「話だけでも聞いてってくれるって事かね。喜ばしいじゃあないか」
 幻想王国の片田舎に位置する場所に存在したフィッツバルディ家の別荘。
 その地に呼び出されたイレギュラーズは『フィッツバルディ』からの手紙によってこの地へと導かれたのだ。
「改めて挨拶しようか? アタシはローザミスティカさ。今日はアンタらに実入りの良い仕事を頼みたいと思ってね。
 何、『人使いの荒い血縁者』が『掃いて捨てるような命をそれなりの額で利用したい』って言うんだね。
 あの島にゃ賄賂も何でも御座れ。良い仕事だってンなら多少の分け前を与えて成功率は高めたいと願うもんだろう?」
 唇を吊り上げたローザミスティカは「汚れ仕事にゃならないから安心しな」と足を組み直した。
「『監獄島の主から仕事を受けるのに』?」
 確かめるように問いかけたのはシラス(p3p004421)。フィッツバルディ縁者からの手紙を受け取りこの地に足を運んだのである。
 ローザミスティカとフィッツバルディ公の関係性は『公然の秘密』の状態だ。縁在る彼が知らぬ訳ではない。
「『監獄島の主が仕事を斡旋した』だけだからね」
 其れが何を意味するのかを分からぬ程に青年は無垢ではなかった。

 事をおさらいしておこう。
 アーベントロート公は娘リーゼロッテの当主代行権利を解任し、捕縛を第十三騎士団に遂行させんとしたそうだ。
 その一件へと介入したイレギュラーズは無事にリーゼロッテ・アーベントロートを幻想北部のサリューへと逃がしたとされている。
 ローレットはアーベントロートへと刃向かう事となったがクリスチアン・バダンデールが一枚噛んでいる事で煙に巻いたらしい。
 その噂は王都でも囁かれた。
 貴族達は事実であるかも分からぬリーゼロッテ嬢の解任の噂を社交界で囁き合い、時には令嬢の処遇を議論する無駄な時間を過ごしている。
 ……故に、ローザミスティカと『監獄島の罪人』に白羽の矢が立ったのだ。
 彼女達は大罪人。足切りのしやすい存在だ。
 だからこそ、『事実確認』程度には使いやすいとでも云う事なのだろう。

「面倒な事にアーベントロートのお嬢さんの現状把握を求める奴が居てね。
 なら最初から死んでも構いやしない何処の馬の骨かも分からない罪人を手駒に使った方が良いだろうって魂胆さ。
 いいかい? この件に『御貴族様は噛んでない』」
「分かってるさ。『そういうもの』だろう?」
 極楽院 ことほぎ(p3p002087)の返答にローザミスティカは満足そうに頷いた。
 チェレンチィ(p3p008318)とて承知している。罪人を使用しての情報収集は表だって動くことのない者が何があったとて責任と関与を追及されない為に行う事である、と。
「ローザミスティカ様はどの様にご用命なさるので?」
「胸糞は悪いけれどね、サリューの街の偵察を頼もうかね。目的は『リーゼロッテ・アーベントロートの現状』把握さ。
 まあ……そうなりゃアーベントロートとぶつかるだろうさ! アンタらにとってはちょっとしたショーみたいなもんだろう?」
「リズちゃんの無事を確かめれば良いんですね?
 ……いや、それは良いんですが、どうして此処に呼ばれたのか……」
 リーゼロッテを直接的に支援する立場ではなく、あくまでも罪人と共に事に介入し『突如として不可解な動きを始めたアーベントロート公の牽制』を行う作戦となるという。
 それならば『リズちゃん』の直接的な助けになりたいというのが友の心だと夢見 ルル家(p3p000016)は唇を尖らせた。
「ご指名さ。そっちのアンタは何となく似てた気がするから呼んだだけだけれどね!」
「……はい?」
 不可解な物言いだと冰宮 椿(p3p009245)が眉を吊り上げる。

「『享楽』の――
 いや、『超絶美少女のルル家ちゃんが健闘した』アタナシアとやらが『ホムラミヤ』と名乗る魔種を連れて本件に介入してる。
 アイツらにウチの罪人が遣られちまったらアタシも此処まで来たってのに報酬さえ貰えやしないだろ?」
 あくまでも金の為だと宣言するローザミスティカに椿は「ホムラミヤ」と呟いた。
 R.O.Oの幻想で出会った小さな少女は『焔宮 日向』と名乗っていたか。『知り合っていなかった筈の獣種の少女』と出会ったときに胸に浮かんだ言葉が椿は忘れられない。
 ――わたしだって、貴女に、『生きていて』欲しかったのに。
 彼女と、『ホムラミヤ』が重なった気がして椿は首を振った。
 ローザミスティカはワイングラスをテーブルに置いてからイレギュラーズの顔を端から端へと眺めやる。
「さ、アンタらはアタシの仕事を受けてくれるかい――?」

GMコメント

 夏あかねです。宜しくお願いします。

●成功条件
 ・『享楽』のアタナシア&ホムラミヤ の 撤退
 ・第十三騎士団 の撃退

●背景
 リーゼロッテ・アーベントロートがアーベントロート侯爵にその任を解かれ指名手配になりました。
 詳しくはトップページ『LaValse』下、『Paradise lost』のストーリーをご確認下さい。
 また、本シナリオでは『リーゼロッテ嬢の噂』を聞いていた『とある貴族』が事前に情報を探っていた為に『監獄島のローザミスティカ』と名乗る女から依頼を受けました。
 ローザミスティカ曰く、リーゼロッテの逃走を助けるクリスチアンが危険だという情報をリーゼロッテの家令であった『パウル』からリークされたそうです。『囚人たちが何かしている』と彼は何処かでキャッチしてたのかもしれませんね。

●エネミー
・『享楽』のアタナシア
 色欲魔種。冠位魔種ルクレツィアに心酔している女性。男性のような口調は彼女の騎士になろうと考えてのものでしょう。
 その称号は自称だそうです。『<ヴィーグリーズ会戦>ne vivam si abis.』にて夢見 ルル家(p3p000016)さんの「生きて帰れたら『超絶美少女のルル家ちゃんに負けた』アタナシアと名乗ると良いですよ!」の言葉を面白がってその様に名乗ることもあります。
 ネクロマンサー。無数の死霊を手繰り戦います。非常にEXFが高く、ネクロマンサーでありながら前線で戦う装備を有しています。魔法剣士と呼ぶのが相応しいでしょうか。

・『ホムラミヤ』
 焔宮 鳴 (p3p000246)さんの反転した姿。各地で反転の呼び声を発し、ついには憤怒と強欲に身を包まれた魔種。憤怒の呼び声を撒いてます。
 アタナシアが『可愛がって』おり、彼女に連れられてこの場所にやってきました。
 彼女は世界を壊せればどうでも良いため、アタナシアに利用されていようが関係はありません。

・第十三騎士団
 魔道を使用する精鋭アサシン集団。
 リーゼロッテ……というかアーベントロート麾下の汚れ仕事を請け負う通称『薔薇十字機関』です。
 近接戦闘から距離戦闘までもバランスよくこなすスタンドアローンであり、相当の手練れ揃いです。
 暗殺者なので殺傷力が高いタイプが多いと推測されますが能力の詳細は当然ながら不明です。
 ヨアヒム曰くお嬢様麾下は『二軍』。自身の使う連中は『一軍』でそうです。
 此処には10名程度が居ます。

・『死霊たち』
 2Tに1度4体ずつ増えます。初期に20体。アタナシアが『やる気を失う』と供給が減る彼女の死霊達です。
 逆に言えばテンションが上がると供給量が増えていきます。今日はテンションが高いです。
 アタナシアは幻想王国で使い捨てられた者や地に根付いた怨念を無尽蔵に生み出す能力を有しています――が、それもやる気が続く範囲での話です。
 兵士としてはそれ程有用ではなく、弱い者も混ざり、幼い子供などが動員されることもあります。
 また『この戦場で死亡』した場合はアタナシアの手駒になる可能性もあります。

●友軍
 ・サリューの兵隊達
 数は10名。サリュー有する兵達です。その士気はそれなりに高く、統率が取れています。
 イレギュラーズに関しては『幻想名声』により名や顔を知っている場合もある為、それが高ければ高いほどに指示を聞いてくれるでしょう。
 放置していても其れなりに戦えますが、命を落とすときはぽっくり落とします。

 ・『監獄島の罪人』
 数は5名。装備もバラバラの所謂『蜥蜴の尻尾』の皆さん。
 イレギュラーズの皆さんも『監獄島』で会ったことがあったり、名前を知っている相手が混じって居るかも知れません。
 今回は顔を布で隠し勝手に兵隊達に混ざって動いている体を装っています。
 放置していると簡単に死ぬかも知れません、が、所詮は罪人です。

●ローザミスティカ
 本来の名前はベルナデット・クロエ・モンティセリ。幻想王国の『監獄島』の実質的支配者です。
 フィッツバルディ家よりモンティセリ辺境伯に嫁いだ社交界の花でしたが、貴族殺しの罪で監獄島に投獄されています。
 ……今日は『実入りのいい話』で外に出てきたようですね。皆さんの依頼人です。
 リーゼロッテ・アーベントロートが無事であるか、敵は『薔薇十字』であったか、現状はどの様になっているか。
 それを知りたいそうです。少しでも情報を得られたら彼女は報酬を得ることが出来るらしく、「死なない程度に頑張れ」とイレギュラーズへと告げて居ます。

●ロケーション
 サリュー城下。クリスチアン達へと迫ろうとする追っ手を撃破する事が目的です。
 市街地戦となります。家屋が建ち並び、少し開けた場所にある広場『ヒュレー』で接敵開始となります。
 敵の数が多いことから、乱戦状態になる可能性は否めません。
 皆さんは友軍であるサリュー側の陣営に何故か混じって居る罪人達と共に『第十三騎士団』を斥けて下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●シナリオ同時参加の注意
 本日公開されている<Paradise Lost>のオープニングは複数同時に参加出来ません。
 どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。

  • <Paradise Lost>Vincit qui se vincit.Lv:50以上、名声:幻想20以上完了
  • GM名夏あかね
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年06月15日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
Legend of Asgar
シラス(p3p004421)
超える者
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
星穹(p3p008330)
約束の瓊盾
冰宮 椿(p3p009245)
冴た氷剣

リプレイ


 幻想北部サリュー。都市の灯りは鳴りを潜めて、小鳥の囀り一つも赦しはせぬ静寂が落ちる。
 石畳の街路の端には青々と茂る七竈が並んでいた。剪定された木々に秀麗さをも感じさせた家屋の佇まいはこの都市の治安が整っている事を嫌でも感じさせた。
「オレまでオモテに引っ張り出されるたァ、そーとーヤバそーなカンジ?」
 嘆息し、『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)が呟いた言葉を遮るように、遠く戦火の気配が広がった。
 平穏とは決して言えぬ現状がこの街を覆い尽くす。市中に突如として響き渡った靴の音。喧噪は戦乱の気配と共に遣ってくる。
「ま、お得意様からのご指名とあっちゃあやるしかねェんだが。死なねー程度に料金分、働くとするかァ」
 ぐ、と背筋を伸ばしたことほぎに『闇に融ける』チェレンチィ(p3p008318)は小さく頷いた。
「ローザさんからの依頼とあらば、受けない訳にはいきませんねぇ」
 ことほぎやチェレンチィに対してこの仕事を斡旋したのは現在地から見れば南部、海に浮かんだ孤島『監獄島』の主とも呼べる女であった。
 ローザミスティカに関する逸話について、彼女達は誰よりも詳しい自身もある。社交界の薔薇、亭主殺し、貴族殺し。大罪人。
 フィッツバルディ家の血族であり辺境伯家に嫁いだ女はモンティセリ伯を殺害し女主人に成り上がったと囁かれていた。
 その絶世の美貌に姿をも変貌させると称させる色香の女は幻想王国を騒がせた奴隷事件の一件以降は『ある人』――そも、それを隠す意味があろうか、誰もが想像に易い相手であろうに!――の走狗として言いように扱われているらしい。
 オーダー内容は簡単だ。
 アーベントロート家のお家騒動への『情報収集』。及び、その一件に介入してくる魔種の撃退である。
 前者は走狗としての依頼であり、後者はローレットが介入するための情報提供に他ならないか。
「お相手は第十三騎士団、それに危険な魔種も居るようですし、全力で取り掛からねば。
 ……――約束がありますから、ボクは死ぬ訳にはいかないのです」
 ひしひしと肌に感じる危機感がアーベントロート家が誇る第十三騎士団、通称を『薔薇十字機関』の実力を思い知らせるようでもあった。
「此度は随分と賑やかな戦場のようですね。第十三騎士団だけでなく、魔種も介入してくるとは……」
 見上げたのはサリューの権力者の居城。つまりはクリスチアン・バダンデールの屋敷であった。
 近付いてくる物音。やけに楽しげな話し声。其れ等を聴きながら鼻先に感じた腐臭に眉を寄せた『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)は身を潜める。
 権力争いと呼ばれるものに沙月は興味も無い。
 アーベントロートが内包したお家事情も、バダンデールの当主がアーベントロートの令嬢へ抱いた感情の質さえ興味を抱く事ではなかった。
 だが、サリューへと訪れる喧噪は興味が無いだけでは切ることも出来まい。貴族達が引き起こすお家騒動には必ずと言って良い程に罪無き年の民が巻込まれる。サリューに棲まう人々の為の『手助け』、それが清く正しきイレギュラーズの在り方と呼ぶべきか。
「幻想の貴族や騎士って本当に、どうしようもないわね。十三騎士団本隊……今まで貴族界隈に顔を出さなかったヨアヒムに従う理由は何なのかしら?」
 ヨアヒム・フォン・アーベントロートは娘リーゼロッテに『当主代行』の座を長らくの間明け渡していたと聞く。
『Legend of Asgar』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は「今更リズが不適格だなんて……笑っちゃうわ」と皮肉げに笑った。
 リーゼロッテ派と称する本邸の者達が彼女を逃がしたことは聞いている。幼馴染み(クリスチアン)の元に彼女が逃げ果せたのも本邸の兵達が自身の『元主人』に手を差し伸べたに他ならない。
 だが――そう一筋縄では行かぬが貴族社会か。ヨアヒムの放った兵士達がこの治安も安定した北部の街サリューへと攻め入って来ている事は明らかであった。
「実はね、ぼくという奴は遠巻きに眺められることには慣れているのさ! 何せ、美しいからね。
 ……おっと、お喋りな女は嫌われるのだったかな。どう思う? ホムラミヤ、ぼくが美しすぎて皆が妬ましく思っているのか、どうか」
「……」
 戦場の空気など遠くに追いやってしまうほどの饒舌。小さな噴水とベンチが並んだ憩いの場『ヒュレー』に立っていた女は長い銀髪を一つに束ね、オペラでも演じているかのような芝居がかった様子で言葉を連ね続ける。
 女の傍には怨嗟の焔に塗れた女が立っていた。火を纏った金色の色、焔の滲んだ獣の耳――『冴た氷剣』冰宮 椿(p3p009245)はひゅう、と音を立てるほどに息を呑んだ。
 記憶には『彼女』の事は無かった。椿は嘗て仮想世界(R.O.O)で『彼女』と出会った。その時から奇妙な違和感を感じていた。
 彼女とは既知であるかも知れない。彼女とは出会っていたかも知れない。そう思えば思うほどに心がざわめいた。

 ――ここは日向が護るの……! 誰も通さない!

 呪術師の少女、焔宮 日向。彼女の『変質した』姿が目の前にある。椿は震える声音で「ホムラミヤ」と呼んだ。
 黒い眼球に浮かび上がった焔の色が睨め付けん勢いで捕らえた。身を焦がす怨嗟は壊世の焔を纏った女を包み込む。
「ふふ、やっと出て来てくれたね。やあ」
 旧来の友人にでも会うような、やけにフランクな態度で手を上げた銀髪の女は『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)を見詰めてから笑みを浮かべた。
「ぼくに逢いたくて来てくれたのかい? レディールル家ちゃん。『超絶美少女のルル家ちゃんが健闘した』アタナシアだよ」
「『超絶美少女のルル家ちゃんが健闘した』アタナシア? え、誰です……? そんな変な名前の人知らないですけど……こわ……」
 じり、と一歩後方に退いたルル家に「照れていると思うかい? ホムラミヤ」と囁いた女――アタナシアは踊るような仕草でレイピアを構えた。
「さあ、さあ、楽しもう。ぼくらの夜を祝福する月が傾いてしまうまで!」


 アーベントロート家のお家騒動。加わるのは色欲麾下の魔種『享楽』のアタナシアと彼女の引き連れた元イレギュラーズ『ホムラミヤ』
「面倒なこと、だ」
 ぼやいた『金色の首領』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は広く仲間達の様子を藍玉の眸で眺めた。
 肩口を撫でた黄金の髪が頬を擽り、揺らぎ行く。初夏の風に混ざり込んだのは芳しい薔薇のコロンに隠しきれない死人の香りか。地に染みていた命を励起させるが如く立ち上がってきたのは死霊の騎士達。
「疾く、お引き取り願おう。知った顔(ホムラミヤ)まで連れてこられては、丁重にとはいかない、が。……些か乱暴でも、文句は受け付けない、ぞ」
「わあ、ホムラミヤ。きみは人気なんだね? 妬いてしまいそう」
 大仰な仕草で手を上げたアタナシアに『視線を送らず(スルー)』して『竜剣』シラス(p3p004421)はくるりと振り返る。
 市中の制圧のために駆り出されて来たサリューの兵士達はシラスの事をよく知っている。幻想を巻込んだ勇者総選挙の『双竜の猟犬』――否、『竜剣』とさえも称されたローレットのイレギュラーズのことを。
「俺はシラスだ、聞け。状況は悪い。だが敵は追い返す。そしてお前達は死なせない、クリスチアンも死なせない。
 俺達が起こしてきた奇跡を聞いてるだろう? 今その目で確かめろ。……俺に任せろよ、何だってやってみせるぜ」
 サリューの兵士達はどよめいた。クリスチアン・バダンデールはイレギュラーズにとってはグレーの存在だ。敵であると断定するにはピースの欠けた存在で在る彼もこの街では良き統治者として知られているか。
 兵士達は『幻想の勇者』の姿を知っている。その轟く名が何れだけの幻想の民を助けてきたのかも耳にしていた。有耶無耶な状態となろうとも彼等は肯くことを拒絶はしないか。導き手として彼以上の存在がこの場に居ない事を理解出来ないほどにサリューの兵は劣ってはいないのだから。
「ホムラミヤ! 照れ屋のようだ、どうしよう?」
「……」
「ふふ、君も照れ屋だね。いいんだよ、『全て壊して』。この街が壊れてしまおうともルクレツィア様は何とも思いやしないさ。
 ああ、寧ろ――腐った毬のような爺に表向きだけでも恩を売った事となって褒めてくれるかも知れない。君だって、壊したくて遣ってきた」
「……壊ス……」
 そうだよ、とアタナシアはホムラミヤを抱き締めた。二人への道を塞ぐようにぞろりと揃った死霊騎士。そして感じられたのは無数の息遣い。
「壊す、ねえ――
 仲間のピンチにゃ駆けつけるのが俺だが……元仲間が居る所にも駆けつけるのが俺ってな? さぁて、馬鹿共を殴るとしますかね」
 誰かを救う為。民の為。そんな彼女の願いが『反転』した結果だというならば苦い笑みを零さずに入られまい。
『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)は出来るならばアタナシアとホムラミヤの横面を殴ってやりたかった。
 だが、何事も適材適所が存在して居る。
「遣る瀬ないな、ホムラミヤ――鳴さん」
 金の髪、無垢な笑顔。過った全てを拭い去るようにプラックは拳を固めた。ガントレットに包まれた拳を固め眼前の騎士達と『姿を隠した』薔薇十字の兵達を睨め付ける。
「俺の目標は2つ、十三騎士団を速攻でぶっ倒す事。んでもって……俺の戦場で死者は出させねー事だ、さぁ、行くぜ、BBGッ!」
「素晴らしい! やる気というのは大好物だ。さあ、行こう。ホムラミヤ! 『遊びの時間』さ!」
 地を蹴って細剣を振り上げたアタナシアの眼前へと『桜舞の暉盾』星穹(p3p008330)は滑り込んだ。
「貴女のお相手は此方です」
 濃紺の籠手を装着した指先は顕現した華奢な刀を握りしめる。業の染みこんだ黒き戦装束に身を包んだくノ一は至近距離へと迫り来るアタナシアを睨め付けた。
(嘗ての同胞が仲間であろうと、魔種が相手であろうと、関係ありません。
 私の帰りを待つ息子や相棒の為に。死力を尽くします……見ていて。きっと、帰ります)
 アタナシア。ヴィーグリーズの戦場で相対したという彼女についての報告書を星穹は目を通していた。決して、自由に動き回らせて良い存在ではない。
 ホムラミヤと斬り結ぶが為に走り出したことほぎと椿を一瞥し、星穹は跳ねるようにして飛び掛かってくるアタナシアを無幻星鞘で受け止める。
「ぼくのお相手はきみかい? レディー、名前を聞いても?」
「……囀ずるならば独りでどうぞ。『誘う』ならばもう少し上品に。騎士の振る舞いを御存知ではないのかしら」
 基本的には全てに無視を。アタナシアは饒舌だ。それも、言葉を絶やす事無く、自らをアピールし続ける。ならば、その興味を失せさせ早々と撤退を促すためにイレギュラーズが取った戦法は『無視』であった。
「ツレない」
 アタナシアが唇を尖らせた。だが、目の前には一人の女。自身の行く手を遮るように決死の覚悟でやってきた星穹が居る。
「きみが応えてくれるまで我慢比べをすれば良いのかな? ほら、その顔――きみだってぼくと話したいのだろう。
 良いんだよ。気軽に声を掛けておくれよ! アーティでもアーシャでも何とでも呼んでくれたって良いのだから」
 星穹は思った――「そんなこと思ってない」。けれどそう答えるのも何となく面倒だ、と。
 それでも星穹は離れることはしない。粘着質に、其れこそアタナシアに酷く厭われるように動きたい。
 星穹はアタナシアが気に入らなかった。彼女の軽薄な態度。死者を冒涜する真似をしながら享楽を謳う。
 ――頭が可笑しい。口にすれば褒め言葉だと笑うだろうか。
 しかも、だ。椿とことほぎの前で獣の如く牙を剥きだしたホムラミヤ。彼女の事を『お気に入り』と呼びながら手駒のように振る舞うのだ。
「……騎士の振る舞いなど似つかわしくないわ、貴方の其れは道化です」
「おや、そうかな? 騎士とは、何だい? 麗しのレディー。美しい鈴鳴る剣でぼくに囀ってはくれるかい?」
 星穹はそれ以上は答えなかった。
 ――騎士とは、仲間や大切な人のために傷付ける覚悟を持った人のこと。
 今まで、星穹が見てきた沢山の仲間達。その矜持に傷を付けるような振る舞いを、絶対に赦しては置けないのだから。
「享楽の慰めに剣を振るうような愚か者のことではないわ、其の剣が可哀想です」
 アタナシアの頬を切り裂いた一閃。アタナシアの気を引くように星穹が剣を振り上げれば、女のエメラルドの瞳が星穹を覗き込んだ。
 美しい。そう感じたのはその瞳に湛えられた『享楽』が悍ましいほどに澄んでいたからだろう。
 耐えるだけだ。耐えろ。苛烈に、背中に翼が在らずとも。飛ぶことを知らずとも。耐えろ。脚に力を入れて、踏ん張って。
 己は盾だと傷付けられたその一撃一撃を跳ね返すのだ。
 アタナシアのレイピアが星穹を切り裂く度に女の腕に痛みが走る。赤い血潮が薔薇のように纏わり付いて地へと落ちて行く。
 その瞬間までもがスローモーション。エクスマリアの指先がぴくりと動いた。
「星穹」
 呼ばれた名に、無茶をするのは慣れてしまっていると星穹の唇が吊り上がる。ルル家の視線が揺れ動いた。
(星穹殿――! 耐えて……!)
 エクスマリアの積み重ねた過去が、神意よりも深く温かな少女の祝福を星穹に捧げた。天を読む金色の髪がふわりと広がり揺蕩うように揺らめいた。
「ヒーラー」
 呟かれた言葉にぴくり、と肩を動かしたのはホムラミヤか。椿がその動きに気付き「行かせません!」の発した声音は憤怒の炎に巻かれていた。


「おいおい」
 ことほぎが煙管からふう、と息を吐いた。睦言をその身に纏った女はホムラミヤへと照準を合わせる。
 目を眇め、魔女は劇薬の如き呪いを吸い込んだ。呼気に混ざり込んだ芳しき気配。
「縁もゆかりもねェが、これも仕事なんでな。ちょいと遊んでけよ!」
 ホムラミヤを逃すまいと注意を引いた女はその脚が僅かに歪んだことに気付く。ぎくり、と身体を鈍く動かしたホムラミヤの眸に映り込んだ苛立ちは滲む。
「――憎イ」
「そりゃ、憎まれ役ってもんだからなァ」
 唇を吊り上げたことほぎはリーゼロッテの情報を探していた。ある意味で依頼人からの『オーダー』は達成できているようなものだ。
 これだけ必死に第十三騎士団が追ってきているのだ。幻想北部のこの街に彼女が逃げ果せたのは確かである。
(『リーゼロッテ・アーベントロートは此処に逃げ込んでいる』『第十三騎士団はヨアヒムに従っている』、と)
 追っ手の正体こそ露見したが、其処に魔種が噛んでいるというのはビックニュースとして伝えられるのではないか。どうせなら報酬を弾んで欲しいが――
「壊ス、全テ……ドウシテ、ドウシテ邪魔ヲスル……?」
「生き延びるのが先か!」
 こほとぎが刹那、一歩下がる。その位置へと踏み込んだのは椿。白玉の髪飾りが揺らぎ、大太刀を一気に振り下ろせばホムラミヤが作り出した焔の剣とぶつかり合った。
「ッ、ホムラミヤ!」

 ――屹度、これは宿命なのでしょう。わたしは、彼女と対峙せねばなりません。この刃を以て、彼女と……斬り結ぶ!
   この身は、一振りの刃なれば……眼前の敵を滅するのみです。迷いなど……一片たりとも、ございませんよ!

 迷っている場合などなかった。椿の心に過ったホムラミヤと対峙する惑い。迷い、惑い、途惑い。その理由を探し求める。求めながらも、それは悟らせない。
 ここで迷えば腱は鈍る。仲間を失うやもしれぬ恐怖が心に火をつけた。
「あなたがどのような人であったのか、どのような笑顔を見せる方だったのか、わたしはわからない。でも……それでも!
 『冰』と『焔』が交わらぬ筈なのに交わる宿命であったとしても! わたしは、貴方を止める!」
「……壊サナキャ」
 幼い少女のように、言葉を漏したホムラミヤの焔が周囲を包み込む。
「ヒッ――!」
 声を上げたのは囚人であった。シラスは振り返る。
 シラスの先導で動き出したサリュー兵。そして顔を隠した囚人達。一方の士気は高く、もう一方は『どうせ死ぬのだろう』と落胆を滲ませている。
「……死ぬなよ」
 シラスは静かに声を掛けた。武装に頼ることのない彼の佇まいは囚人達にとっては不思議なものであっただろう。武器を手にするわけではない。己の身一つでこの戦場に挑むまだ年若い『勇者』が居るのだ。
「俺は、お前達を誰一人として死なせるつもりはない。
 先ずはエクスマリアを護ってくれ。彼女はこの戦場の要だ。それから指揮を執る俺や護りが薄い攻撃役のサポートを頼む」
 指示はその双眸がしかと戦場を見通すと告げた。次に、死霊は増え続けるはずだ。イレギュラーズは第十三騎士団を相手にしなくてはならない。

『Athanasia(不滅)』

 その名を有する魔種は死霊を召喚し続ける。それも、彼女がタネを準備するわけではない。地に沈んでいる死霊達に形を与えて騎士と化すのだ。
 故に、死霊騎士の戦力はその霊魂に左右されるらしい。女子供の霊はその姿をして現れるだろう。サリュー兵が戸惑うならば、罪人達はどうか。
 シラスは問うた。
「『配慮』せずに聴く。お前等は罪人だろ。それも、あんな流刑に合うくらいの。女子供を殺す事に躊躇いは?」
「あるわけねぇだろ! それ以上にお貴族様を殺したんだ!」
 声を荒げた囚人はバタフライナイフを握っていた。シラスはそれを『粗雑な獲物』だと感じていた。
 思えば、囚人達よりも己達の方が誰かを殺める機会は多かったのだろう。死ぬなよ、と何度も言葉を繰り返した。
 乱戦になる。アサシン達は厄介だ。目を光らせ、その存在を認識せねばならない――流石は『アーベントロート』と称賛でも与えるべきか。
「マジ寄りのマジで、クリスチアン殿とかマジどうでもいいんですけど、リズちゃんを助けるのに尽力してくれているのは事実ですし……。
 それに彼が死んだらリズちゃんが少なからず悲しむでしょうし……仕方ありませんね! 助けて上げましょう!
 そのためには城下の敵をパパっと片付けようではありませんか! ――ね?」
 に、と唇を吊り上げたルル家は「さぁ行きましょう皆様! 幻想筆頭勇者のおな~り~!」と大仰に声を上げて己の場所を知らせる。
 居場所を知らせるという事は『相手の攻撃を受けやすくする』だけだ。
 幸いにして、アタナシアは星穹が、ホムラミヤはことほぎと椿がカバーに入っている。ならば、ここに攻撃を仕掛けてくるのは――

「其処! リズちゃんの友達ではありますが拙者はフィッツバルディ派! 貴方方を倒すのに遠慮はありませんよ!」

 真珠。又の名をスピカ。古代に輝いていたとされる星の名を有した刀は力をくれる。大切な誰かが傍に居るような、結実の時を待ち望んだ決意。
 闇世でも目立った金の髪に隠されていた鴉天狗の眸が眩く光を帯びた。伽藍であった己の眼孔に宛がった妖の魔力は波動となり産み出される。
 アサシンの脚を絡め取った波動は瞬く間に広がると同時にルル家の肉体を傷付けた。
「……流石にイレギュラーズか」
「ふふ、そう褒めないで下さいよ! もっと褒めたくなるような戦い振りを披露したいところですが――死んでしまう前に引き際にはお気をつけを!」
 するりと通り抜けて行くのはシャルロット。霧満ちる世界より持ち込まれた血色の刀身をするりと引き抜いて叩き込んだのは魔性の一撃。
 吸血鬼たるシャルロットの肉体から毀れ落ちた魔性が大顎を作りルル家が目視を可能とした対象へと牙を突き立てる。
「今までアーベントロートを切り盛りしてきたリズを見捨てる、あなたたちの実力は如何ほどかしら? ――隠形しない暗殺者の実力、その身で示せ」
「当主代行殿もお人が悪い。斯うも魅了してしまうなど――流石は我らが青薔薇かな」
 男が皮肉げに笑う声が響いた。一人でも多く斃せばリーゼロッテが楽になるかも知れない。シャルロットはその気概でこの戦場に立っている。
 ヴァンパイアの牙を覗かせ蠱惑的に笑った暗殺令嬢。美しき魔性は世界を違えようとも同じ吸血種としての同族意識を掻き立てた。
(――ヨアヒムも吸血鬼なのかしら? ああ、いやだわ。あんな男が同胞(おなじ)だなんて。母親が吸血鬼であって欲しいけれど……)
 そう思考が横に逸れた刹那、シャルロットの横面目掛けて暗器が飛んでくる。
 見過ごすわけには行くまい。視線を一度、動かした。身を逸らし、背筋にぴんと張り詰めた気配がする。
 シャルロットの頬を引き裂いた紅の一閃。
「流石に、一軍二軍に興味はないけどスタンドアローンの暗殺者にデモニア二人は洒落になってない戦力ね?」
「そう褒めないで下さいますか」
 次に聞こえたのは女の声であったか。流石は第十三騎士団。アーベントロートの誇る『薔薇十字』の名は伊達ではないか。
 嗅覚は人の気配を感じ取る。汗、血潮、毒の類いに至るまで。獣にも匹敵するほどに誇るその鼻先をすん、と鳴らしてから沙月は宙へとその掌を打ち付けた。
 流れるような動きは距離感をも狂わせる。一瞬、距離を縮めるだけならば容易だ。
 空中に叩き込めば『声の主』の肉があった。腕だ。溢れた血潮が花のように舞い沙月のかんばせへと飛び散った。
「――驚かないのですね」
「声を発した時点で、居場所など」
「……そうですか。……これがアーベントロートの精鋭、成程。随分と実力が違うようにも感じられますね。
 強敵と戦えるのは嬉しい限りですが、この状況では素直には喜べませんね。疾うにお帰り頂ければ喜ばしいのですが」
 淡々と告げる沙月は死を遠ざけるが為に第十三騎士団の女と対等に渡り合う。一軍、二軍、そう称されてはいるがイレギュラーズと渡り合うだけの実力者である時点で油断は禁物だ。
(星穹さんが耐えて下されば良いですが……アタナシアとて強力な魔種。エクスマリアさんがヒーラーである事がバレた時点で此方も耐えの戦法に変えなくてはならないか)
 沙月は唇を噛んだ。アタナシアの周囲に産み出された死霊とサリュー兵士が渡り合うだけではない。彼等の重要な役目、エクスマリアを庇い続けることこそが肝要なのだ。
 エクスマリア自身はアタッカーだ。それ故にヒーラーに狙いを定める攻撃側の視点は想定できる。
 ことほぎが感じたようにアタッカー寄りの面々が多い。早期決着と付けたいと考えるイレギュラーズと長期戦に特化した魔種では分が悪いのも確かか。
(……オレはホムラミヤの相手が選任だが――)
 ちら、とことほぎはエクスマリアへと視線を動かした。流石に薔薇十字機関とて油断ならないか。シラスの指示を受けてサリュー兵達がエクスマリアを庇い続けるが実力差は歴然としているか。
「流石は、一軍か」
 呟きながらも、エクスマリアはことほぎと椿を支えるべく視線を送った。自身を庇ってくれるサリューの兵士達は危険域へと直ぐ様に転げ落ちて行く。
 其方にばかり気を配りすぎては魔種と相対する皆を支えきれない。戦場の要。自らをそう位置づけなくてはならないエクスマリアの藍宝の眸が揺らいだ。
 人間であるからには体温こそが感知できる。精鋭が揃えどもそれは消すことが出来ない重要な生者の証なのだ。チェレンチィの耳朶に輝いた金の刻。
 殺した君の願(のろ)いが光、握った刃を冴え渡らせた。
 トライノーイシェスチ。その一閃は鋭き雷鳴となり轟く。
「死霊までも揃いも揃って……」
 第十三騎士団の撃退こそが最優先ではあったがチェレンチィは死霊達にも気を配っていた。サリューの兵士達はエクスマリアの盾となりながら、懸命に死霊の相手を行っているか。じわじわと数が増えて行くのは第十三騎士団も『ヒーラー』を撃破する為に動き出したからだ。
(……死霊の相手は罪人か…まあ、サリュー兵なら、いいんですが……罪人たちはどうも、心配というか。その、なんか弱そうなので……)
 僅かに気が急いたのは罪人達はとても精鋭とは呼べぬ動きをしていたからだ。統率さえもてんでばらばら。シラスの指示を聞きながらも、懸命に命を繋ぐために戦っている様にチェレンチィは気を揉まずには居られなかったのだ。
「気になる、か?」
 問うエクスマリアにチェレンチィは「ボクも監獄島に居ましたが、別にそのよしみでとかじゃないですよ」と外方を向いた。
「所詮は罪人、蜥蜴の尻尾でも、ここで死なれて死霊になられたら困るという理由だけですから。ええ。
 其れなりに身体が動く兵士がアタナシアの側に付くことが問題なだけです。……どちらかといえば、ええ、殺し屋、暗殺者の端くれとして、第十三騎士団の戦い方には興味があるんですよ」
『どちらも』本音ではあった。暗殺者や殺し屋としてこれから露命を繋いで行くならば彼等の戦い方は参考になる。
 ローザミスティカには感謝をしなくてはならないか。彼女に言わせれば「なら、あたしの下に付けば良い」と簡単に全てを放り出す選択肢を出してくるだろうが――(そうとも、行っては居られないのですよ)
 友人が出来た。罪の烙印を持った自分を引き連れてくれる誰かがいた。
 その事を忘れてはならない。
 生きて返ると決めたならば、こんな場所で膝をついてなるものか。


 支援を担当してくれるエクスマリア。彼女がいるならば徹底的に火力を発揮しての短期決戦を――
 そう掲げた椿はホムラミヤに対して容赦なく剣を振り上げた。
 桜の花びらが舞い散るように戦装束を揺らがせて、椿は感じ取る。
(――やはり、重たいッ!)
 ホムラミヤの一撃はことほぎと椿諸共に燃やし尽くさんとするものだ。火力だけで言えば2対1であろうとも流石は魔種。対等か。
 アタナシアは『ホムラミヤを利用している』
 星穹が感じていたとおり、彼女の眼前の女がヒーラーだと口に為た瞬間からホムラミヤの標的はエクスマリアであった。
 否、誰もの目がエクスマリアに向いていただろうか。
(……分かる。第十三騎士団とて、ヒーラーは邪魔な存在だ。
 此方が、短期決戦に持ち込もうと考えれば、彼方はマリアを狙う。当たり前だ、『マリアだってそうする』)
 エクスマリアを庇うサリューの兵が尻餅をついた。視線を揺れ動かしてチェレンチィが「あ」と声を漏す。
 囚人の手からナイフが滑り落ちる。シラスの統率を持ってでも、現状に恐怖心を抱き出したのか。
「ッ――クソッタレ! お前達のタネは知れてんだよ! 猟犬の鼻を誤魔化せると思ったか?」
 姿を出来るだけ隠そうとする敵に対して食らい付くしらすの牙。猟犬の牙は執拗に追い立て吼え猛る。
 喉元に食らい付くように吸い込まれた一打は重く、十三騎士団の男の顎を砕く。
「ガッ」
「ッ――俺は友軍も死なせるわけにはいかねぇんだよ!」
 アサシン達はエクスマリア諸共サリューの兵へと攻撃を重ねていた。周辺目掛けての攻撃を続けて居たシラスは方向転換し、勢い良くエクスマリアへと接近するアサシンの元へと滑り込んだ。
 その流麗なる動き、構えから飛び出したのは三段。圧倒的な力を伴った一撃がアサシンを薙ぎ倒す。
 エクスマリアは自身と、ことほぎと椿を支える事に死力を尽くしているか。ルル家は星穹を心配するように、動き出す。
「拙者は星穹殿に! シラス殿は――!」
「ああ、カヴァーに行く。友軍だろうが何だろうがむざむざ殺させて堪るかよっ」
 二人が走り出す。シャルロットはひらりと踊るように為て直死の一撃を放った。
「リズの直属には美味しそうなのが何人か居たんだけど、こちらの連中は正直不味そうね。
 無味乾燥とした感情の凪いだ気配……いくら騎士よりアサシンでも……本当に人間?」
 濃い血の香りが立った。夜を踊る吸血鬼の力を伴って、シャルロットの表情に僅かな焦燥が滲む。
 イレギュラーズ側の火力は誇れるものだ。だが、支えたるエクスマリアを集中的に狙うアサシン達はそれぞれが独立しながらも非常に連携が上手かった。
(流石はリズが代理になる前は武闘派筆頭だっただけのことはあるわね……)
 一撃必殺。そう呼ぶしかない攻撃がシャルロットへと襲い来る。血を流すよりも『血を流させる』方が好ましい。
 そうとも言っては居られないかと鈍く、紅の瞳を輝かせてから、シャルロットは剣を振り上げた。
「ご無事ですか?」
「……ああ、」
 頷くエクスマリアにサリューの兵は疲労を滲ませながら「貴女がいないと俺は生きちゃいやいです。本当に女神様みたいですよ」と囁いた。
「どういう?」
「いえ…範囲の回復に含めてもらっているのに、お守りし通せなくて、名残惜しく」
 兵の言葉にエクスマリアがぎりぎりと軋む程に歯を噛み締めた。戦場の女神を守らなくてはねとシャルロットの声が響く。
 チェレンチィは怯え竦んだ囚人に仕方あるまいとぼやいた。小悪党だ。どうせ、ここで死ぬだけの覚悟は『ボクたちにはない』。
「エクスマリアさん! すまねえ!」
「いや、マリアが、支える」
 プラックの火の玉ストレート。沙月の流麗なる一撃。
「……相手も馬鹿ではありませんね」
 それでも、これだけ苦戦するか。

「――いやクッソ燃費の悪ィなオイ! オレァ本来地道に削る派だってーの!」」
 叫んだことほぎは各上である事は忘れていなかった。防御面のフォローを行い、ホムラミヤの攻撃をなんとか去なし続ける。
 当てることには特化していることほぎも、魔種を長時間相手取り続けることには苦心した。
 ホムラミヤは詳細こそは判明していなかったがその怒りからかなりの高火力を発揮している。重なり続けたエクスマリアの支援があってこそ、現状維持を続けて居られるか。
「ジリ貧だなァ」
 ぼやいたことほぎに椿の焦燥が滲んだ。確かに、ジリ貧だ。これ以上――というのも難しい。
 現状を俯瞰してから沙月は自由自在に遠距離攻撃を繰り出すことの出来る第十三騎士団と、魔種二人の標的がエクスマリアに集まっている事で彼女が撃破されることこそがこの戦線の瓦解に繋がる時付いていた。
 死霊を薙ぎ払い、アタッカーとして動く沙月がひらりとホムラミヤの前へと滑り込む。
「大丈夫ですか」
「……あァ、ちとキツいな」
 くそ、と呻いたことほぎに沙月は頷く。第十三騎士団の数は十分に減ってきている。だが、その分『魔種を抑えていた』側から上がった悲鳴は見過ごせるものではないのだ。
「あ~~! 思い出しました! アレですね! 行楽シーズンみたいなあだ名の魔種! だって1年ぐらい前じゃないですかぁ~覚えてませんよぉ~」
 びしりと指差したルル家はアタナシアの抑えへと滑り込んだ。
 彼女に構うことが彼女のテンションを上げてしまうかも知れない、がこの際は仕方がない。
「申し訳――」
「いいえ、結構こいつしぶといんですよね!」
 嫌になるとルル家がアタナシアを睨め付ければ「素敵な眸だね、レディー」と騎士気触れのウィンクが飛んでくる。
「「――……」」
 傷を負いながらも、懸命なる戦闘に参戦したルル家と、膝をつく星穹の空気が固まった。
 余裕綽々としたアタナシア。そう見えたのは彼女が何れだけ傷つこうとも喜ぶ『享楽』を胸に宿しているからだと知る。
 確実に一人一人を追い縋り、油断は禁物と一人ずつ潰すことに注力していたチェレンチィは足を掴まれるような感覚を覚えた。
 エクスマリアの身体がぐらりと揺らぐ。
「知っているかい? ヒーラーというのは最も面倒なんだよ。だって、ぼくが『可愛がってあげる』為には死んで貰わないと行けないのだもの。
 ……きみが立っている限り『イレギュラーズ』はぼくのところに転がり落ちてきてくれないだろう?」
「趣味が悪い」
 チェレンチィはぼやいた。エクスマリアの眸が強い色を湛え、睨め付ける。
 友軍を支え続けるシラスが呻き、第十三騎士団を薙ぎ払った沙月はあと一歩かと苦しげに呟いた。
 アーベントロートの追っ手は此れにて追い払えるだろう。だが――


「ふふ――」
 女が立っている。うっとりとした笑顔で『可愛がっている』ホムラミヤの顎を撫でて。
「楽しいね、ホムラミヤ」
「楽シイ……? 壊ス、全テ、何モカモ……」
「ああそうだね。ぼくの可愛い『焔(ホムラミヤ)』」
 壊世の焔がちりちりと周囲を焦がす。彼女をその双眸に映したイレギュラーズの反応は『愉快』そのものであった。
 享楽を是とする女はその反応を見るが為にわざわざ彼女を連れてきた。趣味が悪いとは言う勿れ。これも一つの楽しみ方なのだ。

 ――色欲のストーカーのくせに色欲とアーベントロート候のキューピッドになる気ですか!

 ルル家の言葉が響く。アタナシアは不機嫌そうに嘆息した。そんな訳がない。
 あの塵達磨のような男と『愛しい』ルクレツィアが口づけをする想像をするだけで『思わず街を壊してしまう』衝動さえも浮かぶ。
「ああ、早く逢いたいな。あの人に。
 帰ろう、ぼくのホムラミヤ。……どうせ、薔薇十字のかれらと行動を共にする謂れはないのだから、さ」
 まるで駄々っ子を家に誘うような仕草でアタナシアはホムラミヤの手を引いた。
「また逢おうよ。今度は名前を聞かせてくれるかい?」
「……ッ、二度と会いたくはありませんが」
 傷つき、膝をついたまま。星穹が呻いた。その背後には意識を失ったエクスマリアが倒れている。
「そんな、ツレないことを言わないでよ。レディー、きみの名前を囀るぼくの唇を思うだけで……ああ、心が躍りそうだ」
 うっとりと笑ったアタナシアの眼前へとシャルロットが飛び込んだ。レイピアがその胸に突き刺さる。
「酷いわね」
「酷い位がそそるだろ?」
 血は明らかに拙そうだ。美しいかんばせをしていても、その性悪さは滲んでいる。
 イレギュラーズ側の損傷は深い。アタナシアがヒーラーが倒れたならば好きに蹂躙しろと笑った声を聞いてからホムラミヤは直ぐに椿へと接近した。
「ッ、貴女は――!」
 椿は惑いを払うようにホムラミヤを受け止める。至近距離に覗き込んだ憤怒の眸が爛々と揺らいでいる。
「壊(コロ)ス――」
 囁かれた声音が、肌をひりつかせた。あと少し。されども、もう一歩が及ばないか。
 ホムラミヤは比較的自由であった。二人のイレギュラーズが抑えに付こうともその行く手を遮り続けることは出来てはいない。
 友軍達が盾となっていた事で戦線は長く保たれ続けて居たが、それも最早瓦解した。
「……流石は魔種、ですか」
 第十三騎士団も支援役を狙うとなれば、成程、その護りをもう少し固めておくべきだったかと沙月は呻いた。
「ステキだろう。きみも仲間になるかい?」
「……結構」
「ツレないなあ。コッチの舞台は美しいよ。ぼくを照らしてくれる月はこんなにも美しいのだから、ねえ?」
 うっとりと笑ったアタナシアに沙月は視線を投げかけてから、逸らした。
「おい、……この世界に端役なんて居ねぇ。囚人も兵士も主役なんだ、死なせはしねぇ。
 まっ、輝く主役だと思い込んで? 酔いに酔って自惚れが過ぎる"騎士ごっこ様"には分からないだろうがな?」
 プラックの言葉にくすりくすりと笑った。アタナシアがレイピアを構える。傷つき、肉を削がれようとも、その執念は不滅とでも揶揄うべきか。
 その背後には俯いたホムラミヤが立っている。彼女の腕から滴り落ちる血潮は焔へと変貌した。
(……分かるぜ、鳴さんの気持ち。正直、オレだってそうだ。
 それはそれとして誰かがぶん殴ってやらなきゃならねぇ。俺が殴るなら俺の憤怒と強欲を持って、全ての人の怒りを代弁して破壊に怒るさ)
 自身だって強欲に手を伸ばす。憤怒に身を任せたくなることもあった。
 世界を壊す焔になんか、喰われて堪るかとプラックは歯噛みする。
「良いか、10数える」
 プラックはその拳に力を込める。
 この内に、仲間達は撤退の用意をしてくれ、と。
「9」
 傷を負った仲間を庇い、出来る限り後退する為に。
「8、7…………4」
 護らなくてはならない。決して、青年は強者ではない。
「3」
 驕る訳でもない。
「2、1」
 だが、魂がそうしろと叫んでいるのだ――

「『Athanasia(不滅)』の騎士サマよぉ! 俺を見ろ! テメェとは此処でおさらばだッ――!」

 地を蹴った。星穹を越え、ルル家を越え、アタナシアの眼前へと迫り行く。
「良い拳だ。好きだよ」
「煩ェッ!」
 愛を囁く唇がプラックの至近に迫る。唇に触れたわけではない。アタナシアの血塗れの掌が青年の顔に押し付けられて、掌越しの口吻がひとつ。
 ぞ、と背筋に走った嫌な気配を振り払うようにプラックの拳が再度女の腹へと叩きつけられた。
「カフッ、」
 息が漏れる音。紅潮した頬に歪んだ笑みが浮かんでいる。まだ退かない。
 構わなければ構わない程に、アピールをするように女は星穹を甚振ろうと動いた。構えば構う程に女は楽しげに嗤い続ける。
「ああ、もう、退いて下さい!」
 其れだけで構わない。星穹も、ルル家も撃破を望んではいない。魔種はさっさと撤退してくれれば構わなかった。
「構ってくれなかったからさ」
 そんなナンセンスな言い訳を繰り返したアタナシアの腕を穿ったのはチェレンチィの刃だった。
 何が構ってくれない、だ。徹底的に無視をしたアタナシアがもっと遊んで欲しいと燻ってやる気を出すなど誰が思うか。
「構えば、お引き取り頂けましたか?」
「ぼくのかわいいホムラミヤが傷ついたなら帰ったかも知れないね。
 彼女のお披露目に来たんだ。ぼくだってレディーのエスコートを忘れる程に薄情ではないのだから!」
 軽口ばかり。チェレンチィは舌を打ってから鋭い刃を引き抜いた。囚人達は傷だらけ。此の儘放置すれば命を落とす者も居るだろう。何て様だと叫びたくなる光景を飲み込んでチェレンチィはアタナシアを睨め付ける。

「素晴らしい月だね。誰か連れて帰りたいくらいだ――けれど、きみ達がぼくを見詰めた嫌悪の眸も堪らなかった」

 プラックは決めていた。何かあったときの殿は任せろ、と。
 その視線の先には佇むホムラミヤが立っている。その腕はだらりと垂れ下がり血潮が流れて、足は引き摺るかのようだ。
「ああ、ホムラミヤ……大きな怪我をしてしまった。手当てをしよう」
「……」
 ホムラミヤは気にする素振りはないが、成程アタナシアは嘘は吐いていない。
 自らかホムラミヤが危機に陥れば早々に退くつもりだったのだろう。
 椿を、そしてことほぎを護るように拳を構えたシラスは魔種達を睨め付ける。
「この月に乾杯。――ぼくは、きみに酔い痴れているのだから」
 囁く声音が、降り注ぐ。
 月の光を浴びて、女は追うことはしない。

「ぼく、追掛けられる方が好きなんだ」

 ――嘯いた女の瞳が、光を宿す。目を穿たれようと、腕を落とされようとも彼女は屹度笑っているのだろうと。
 ルル家はその笑顔にそんなことを感じていた。

成否

失敗

MVP

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘

状態異常

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)[重傷]
愛娘
極楽院 ことほぎ(p3p002087)[重傷]
悪しき魔女
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)[重傷]
Legend of Asgar
プラック・クラケーン(p3p006804)[重傷]
昔日の青年
チェレンチィ(p3p008318)[重傷]
暗殺流儀
星穹(p3p008330)[重傷]
約束の瓊盾
冰宮 椿(p3p009245)[重傷]
冴た氷剣

あとがき

 お疲れ様でした。
 アタナシアは一年ぶり、ホムラミヤさんは影がちょこちょこと見えていましたがカムイグラから初ですね。
 それではまた、お会いしましょう。

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