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シナリオ詳細

<タレイアの心臓>飽くることなき貪食の

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……そう、ファルカウを燃やすのね」
 青髪をした幻想種の女性――ラフィーネが複雑な心境の覗く顔を見せる。
「あぁ、それがここを覆う冬を溶かすのにはそれが必要ならしい。
 やはり君も思うところはあるだろうか?」
 ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は真剣な目で目の前の女性を見る。
 ラフィーネはこの深緑にあるクエイトなる集落の出身だ。
 それも、先にクエイトへ訪れた時は霊樹の力の片鱗と親しげ――古馴染みの様子だった。
「そりゃあねぇ……ないって言ったらうそになるわ。
 でも――それしか方法がないのよね?」
「少なくとも、過去はそうだったようだな」
「それなら、するしかないのでしょう。
 それに、クエイト様はいつかはまたそうなる時が来るかもと思っていたらしいわ」
 そういうと彼女はポーチから何かを取り出した。
 それは――小さな1粒の種だった。
「これは霊樹クエイトの種。一応ね、クエイト様の分霊と契約できるような者に手渡されてきたものよ。
 他所は知らないけれど、少なくともクエイト様はそうすることでいざとなった時のことを考えてらしたわ」
 そういうと、ラフィーネはそっとポーチへ種をしまいなおす。
「――それに、木は燃えるものでしょう。燃えて朽ちて、新しい森になる。
 そういうものだと、クエイトの住人は教えられてきたわ。
 ――だからってファルカウは燃やさないけれどね?」
 そういって彼女は笑う。どこか達観したようなそんな雰囲気だ。
「――でも、まずはファルカウへ進まないとなのよね」
「ファルカウにはきっと、魔種や竜種が待っているはず……それでも行かないわけにはいかない」
「それなら……」
 ベネディクトの言葉に、ラフィーネが静かに視線を合わせる。
「もちろん、私も一緒に行かせてもらうわ。
 いいわよね? ここまで一緒に行かせてもらえたし……」
「あぁ、もちろんだ」
 ベネディクトが言葉に頷いて手を差し伸べれば、2人は握手を交わす。


 ――木々が燃えている。
 それも、眠りの世界などではなく、現実の木々が。
 冬の雪景色の重たい空気が熱に溶けて水っぽい匂いが辺りを包み、火の熱が空気にちりちりと揺らいでいる。
 町の中には人影が1つ。
「あまり旨くないな……」
 その背には両翼、額には1本、それぞれ側頭部に2本角。
 その両の手足も竜を思わせるものになっていた。
 そして、太い爬虫類のような尻尾。
 その姿は、近く仲間になったイレギュラーズ達に――亜竜種にそっくりだった。
 その亜竜種に見える者は深いため息を吐いて、手に持っていた長い何かを燃え盛る薪にくべた。
「で、どこの誰だ、貴様ら」
 そう言って、緩やかに男がイレギュラーズの方に顔を向ける。
「……あぁ、貴様らがあれか、ローレットだとかいう奴らか」
 「亜竜種……か?」
 ベネディクトが目を見開き呟けば、それは静かにその身体をイレギュラーズの方へ向けた。
「ベネディクト君、下がって。
 皆も戦闘準備をしてくれるかしら……あれは、亜竜種なんかじゃないわ」
 その男の姿を見た途端、ラフィーネがそれを制止する。
「どうした、ラフィーネ……何を警戒してる?」
「ごめんなさい。私、今までずっとアレを旅人(ウォーカー)だと思ってたわ。
 だから、まさかこんなところで会えるなんて思わなかった」
 そう言った彼女は、ポーチの中から小さな本を取り出すと一枚ページを破りイレギュラーズ達に回し見させる。
「『貪食の竜翼』……獲物と決めた町を焼き払いそこにある物全てを食らいつくす……私が追ってた相手の一人。
 あいつの獲物になったとされている町は今まで確認されてるだけで2件あるわ」
 鋭い視線を向けるラフィーネの言葉は、どこか苦しげにも聞こえる。
「可食物……だと?」
「えぇ、そう。可食物……石だろうが木々だろうが家屋だろうが……動物であろうが関係ない」
 その『動物』に『住民』まで含まれていることを、彼女は口にするのを拒んでいるようだった。
「今はちょうど粗方食いつくしてな……気分がいい。良かったな貴様ら、今回は戦わずにいてやろう」
「……逃がすと思うか?」
 ベネディクトが槍を構えれば、男が一つ溜息を吐いた。
「全く……まぁ、足止めはベルゼー様の命でもある……おい、フラウス」
『……なに?』
 男に答えるように霊樹をバリボリと食らっていた亜竜――フラウスが顔を上げる。
「相手してやれ。お前なら大したこと無く蹴散らせるだろ」
『仕方ないな……分かった、私がやればいいんだね』
 そういうと、亜竜フラウスは咥え込んでいた霊樹の破片をべきりと喰らう。
 その間に、男はその大翼を羽ばたかせて飛びあがる。
 イレギュラーズの射程圏外まで飛翔した魔種はそのまま行方をくらました。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 亜竜種の魔種はどこぞへと消えましたが、残された亜竜を退けましょう。

●オーダー
【1】亜竜の撃退

●フィールド
 大樹ファルカウへ向かう道中に存在していた霊樹の里。
 冬の景色に埋もれている一方で亜竜の炎によりあちこちが焼け落ちています。
 霊樹は亜竜フラウスのごちそうとなり、幻想種の影はありません。
 大量の血痕を考えれば、幻想種の生存は絶望的です。

●エネミーデータ
・フラウス
 橙色の皮膚、鼻頭に縦続き2本の角、蛇のような身体に一対の翼が特徴的な亜竜です。
 常に飛行状態にあります。
 どちらかと言うと穏やかな性質の一方、
 非常に貪欲で比較的細身の体のどこに入るのか分からない量を食べる食欲旺盛な個体です。
 ターン経過またはHP7割以下で撤退します。

 豊富なHP、各攻撃力と抵抗、やや高めの反応、EXAが特徴的です。
 巨体を利用した物理攻撃に加え、炎に関する神秘攻撃を多数所持しています。
 全ての攻撃が貫通、広域、範囲などの範囲攻撃です。

 BSとして高位の【乱れ系列】や高位の【火炎系列】を持ちます。
 一部攻撃にはスプラッシュ、追撃などを持ちます。
 また、パッシヴで【火炎無効】、【復讐】を持ちます。

●友軍データ
・『高潔なる探求者』ラフィーネ
 ベネディクトさんの関係者。
 皆さんと同等程度の実力を有する冒険者であり、水にまつわる魔術を用いる魔術師です。
 ヒーラーとするかアタッカーとするかは皆さん次第です。

●『夢檻』
 当シナリオでは<タレイアの心臓>専用の特殊判定『夢檻』状態に陥る可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <タレイアの心臓>飽くることなき貪食の完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
シラス(p3p004421)
竜剣
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
夜咲紡ぎ
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
黒き葬牙
ユウェル・ベルク(p3p010361)
宝食姫
劉・紫琳(p3p010462)
紫晶銃の司書竜
唄青・シャーロット(p3p010522)
特異運命座標

リプレイ


「ただでさえ禁書の記述に従って焔王フェニックスの力を使い、我々の手でファルカウに火を放つなんてことをすることになってしまい、非常に気が立っているところに、更に亜竜の炎ですか」
 その光景は『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)にはあまりにも度し難いものであった。
 それしかなかったとはいえ、信仰の対象に火をつけた。
 それだけでも気分が悪いというのに――これだ。
「……この者達が同胞や霊樹に行った非道を思えば、此処で徹底的にぶち転がしてやりたい気持ちも山々、ではあるのですが……ファルカウへ、この事件の元凶へと急ぐ道中、余り時間は掛けられません」
 柄に添える手に力が籠る。
 そうすると、一瞬ながらも彼の姿を思い起こせば、籠る熱が冴えていた。
「血の匂い、煤の匂い……それに人間が焼ける臭い」
 戦場に充満するそれらに『竜剣』シラス(p3p004421)は思わず言葉を漏らす。
「クソが、こんな真似してタダで帰すわけねえだろうがッ!」
 激情のままに叫びは亜竜には届いていないのだろうか。
「……なあ、散々暴れ回った大将はトンズラか?」
 魔種へと銃口を構えた『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)の言葉は静かに戦場に響く。
 その銃弾が魔種を狙うよりも前に牽制とばかりに放たれた炎を危なげなく躱したまま、視線は戦場を見渡した。
「これじゃ死んじまった幻想種が救われなさすぎるだろ……
 わからねぇよ、テメェらが何を考えてるのか分かりたくもねぇよ」
 激昂というには熱はない。けれど義賊はたしかに吐き捨てるように怒りを向けた。
『んー? なんで君達はそんなに怒ってるの?』
 亜竜の声は、あくまでも自然だった。
「――この炎は……血は」
 『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は広がる光景に思わず表情に暗さを覗かせる。
「……そうですか。『再生』ではなく『奪う』ための炎なのですね。
 ここで、暮らしていた人々は、彼らの、彼女たちの物語は。
 そんなに、容易く奪っていいものでしたか? そんなに、美味しいものでしたか……?」
『うーん……分からないなぁ、君達の言うこと、よく分かんないや。
 弱いやつらは強い奴の餌になるのはしかたないことでしょ?』
 本気で理解できてないといわんばかりに亜竜が首を傾げ。
『あぁ、でも不味くはなかったかな』
「成程、随分と自信があるらしい。ならば──」
『黄金剣』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は冷静に声を上げる。
 けれど握る槍には力を。怒りを抑える――とはいうが、入る力に怒りが滲んでいた。
「んもー! なんでこんなところでまで亜竜が暴れてるのさ!
 お腹がすいたからって人に迷惑をかけちゃだめなんだからね!」
 そう叫ぶのは『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)である。
『どうして? 人間だってお腹を好いてる時は同族以外を食べるでしょ?
 私も同族以外を食べてただけだよ?』
「『食らいつくした』などと言いましたが、騒動に乗じて『食事』に来たとでもいうつもりですか。
 凶悪な亜竜が領域の外でも暴れているというのは見過ごすわけにはいきません」
 愛銃に手をかけた『紫晶銃の司書竜』劉・紫琳(p3p010462)は亜竜に銃口を向けた。
 フラウスは不思議そうにその銃口を見てから首を傾げた。
「ああ、こんな……ひどいのです、ひどいのです……」
 臨戦態勢を敷いた仲間達に合わせるように『特異運命座標』唄青・シャーロット(p3p010522)はその光景にその顔を悲し気に揺らす。
「リンディス!!」
 だがその魔弾が構築されるよりも遥かに早くベネディクトが動く。
 黒く美しき魔術式が輝きを放ちリンディスを大きな支援をもたらし、直後にはその魔力を自らにも付加すれば、ただでさえ最速なる黒狼は最早止まらない。
「ラフィーネ、攻撃を頼めるか?」
「うん――君が支援に回る分も、働かせてもらうわ!」
 隣で頷いたラフィーネが間合いを取ってから魔方陣を描き、水弾を放っていく。
 それに続くはアルヴァの姿。
 弾丸の如く飛び出せば、遥かな亜竜の頭上すれすれへ。
「テメェは――蹂躙される側の気持ちを理解しようとしたことがあるのか?」
 熱を静かに籠めた言葉と共に思いっきりその頭をストックで殴りつけた。
 大きく、ガクンと頭を下げた亜竜はその衝撃で閉じた口の中に貯め込んだ魔力が暴発して煙を上げる。
「……先程逃げた魔種も含めて相応の報いは必ず、受けさせてやりますとも!!」
 それは己に課す己が理想を押し通すための魔術式。
 その紅玉のような瞳が亜竜を捉えたまま逃すことはない。
 その瞳は亜竜の起こした魔力の暴発を捉え、次いでそれによって生じた僅かな揺れを断ち斬るようにリトルブルーを振り払う。
 放たれた斬撃は僅かなる揺れをより激しく刺激してみせ――亜竜の意識を縛り付けた。
「お腹がすいたからってこんなことしちゃだめでしょー! おしおきだよ!」
 飛翔するユウェルはそのまま亜竜めがけて突撃を仕掛けていく。
 そのまま側面へと回り込めば上段に振り上げたハルバードを思いっきり振り下ろした。
 ただでさえの重量を加えた空中での振り下ろしは亜竜の鱗に弾かれるが、連打を叩きつける。
 苛烈なる三連撃が亜竜の鱗の同じ場所を削り続け、強かな傷を刻むこむ。
「――自分の楽しみだけの炎なんて。
 親友の――アカツキちゃんの炎に比べて、なんて弱弱しい炎でしょうか。
 挑発するつもりもありません。
 貴方の炎如きでは、燃やし尽せないだけです」
 最適たる戦術を描きながら告げるリンディスの言葉は真っすぐな確信をもって告げるものだ。
 脳裏に浮かべた親友の炎はもっと暖かいのだから。
「まずは下りてきていただきましょう」
 紫琳は愛銃に弾丸を込める。
 それは彼女の瞳の如く美しき紫の凶弾である。
 真っすぐに飛翔し向かうは亜竜直上、そのまま銃口を真下にむけ引き金を引いた。
 放たれた弾丸は紫の尾を引いて亜竜の身体へと炸裂する。
 直後――弾丸は周囲を汚染し重力の均衡を崩す。
 それを2発、3発と打ち込めば、亜竜の身体が揺れる。
「どうした? そんなノロマじゃあ亀だって捕まらねえぜ」
 それらの動きの後、シラスは動き出す。
 飛びあがると同時、その手に魔力を籠める。
 禍々しい闇を帯びた貫手を向けるは亜竜の眼。
 迸る魔力を恐れるように亜竜が動き出すが遅すぎる。
「自慢の鱗も目ん玉までは守っちゃくれないだろ!」
 剣の如き鋭さを帯びたそれは亜竜に致命的な傷を残す。
『あぁ――もう、鬱陶しいなぁ!』
 そう吼えた亜竜の背後に魔方陣が構築されていく。
「人間を舐めるなよ」
 シラスは静かにつげるものだ。
 真っすぐに静かに告げたままに、振るい抜いた手刀は貫手のまま描くような二連撃を為す。
 刹那に最高を思わせる刺突の乱舞は亜竜の身体に壮絶なる傷跡を残す。
『そうだ、あの女……あの女とあの男が目障りなんだなぁ……!』
 激情のようなものを見せた亜竜が咆哮を上げた刹那――魔方陣から炎の塊が生み出された。
 放たれたそれはまるで隕石か何かのような射線を描いて迸り、ドラマを中心とする周囲を焼き払う。
「たたた、大変なのです……。シャーロットも、頑張らないと……。
 ま、町を潰して回るなんて絶望を産む行為、魔法少女として許せませんです!」
 シャーロットは握りしめたステッキに魔力を籠める。
 ステッキの先端に術式が浮かべば、そこから魔弾が放たれる。
 水色の輝きを放つ魔弾は亜竜の身体へ炸裂すると共に亜竜の身体にたこのようにへばりついた。


 ベネディクトを起点とした圧倒的な速度戦術は、イレギュラーズと亜竜との戦いに大きな優位を生んでいた。
 それに加えて大きかったのはドラマが注意を惹いたことと、制空権を奪い取るに足るだけのイレギュラーズが集っていたことが大きい。
 フラウスにとって、それは初めての反撃であり、初めての不利であり――そして、初めて死を予感させるものだった。
『……人間が、こんなに強いわけない。お前ら、何者?』
 首を傾げる亜竜の声は、明らかに震えている。
『こわい、こわい、殺す――殺す、殺してやる!
 私にこんなにも傷を負わせるなんて!』
 亜竜がはっきりと怒号だと分かる咆哮を上げて――その口に尋常じゃない量の魔力が集束する。
『消し飛んじゃえ――』
 放たれたる熱線が戦場の炎を更に激しく燃え上がらせ、直後には描き出された魔方陣から炎の塊が戦場にクレーターを作り出す。
「や、止めるのです! これ以上、暴れないで!!」
 シャーロットは思わず声を上げていた。
 殆ど絶望的な幻想種の生存を、更に下げるようなフラウスの激情に叫ぶ。
 ここに来てから、分かっていた。
 人助けセンサーにただの一度も、引っかかるような物はなかった。
 それでも――ゼロではないはずなのだと信じているから。
「止まるのです――!!」
 あらん限りに叫んで放った魔弾が亜竜の身体に炸裂した刹那――その身体にへばりついていたタコの幻影がより強く亜竜を締め上げた。
『な、なんだこれ……!?』

 じたばたと動く亜竜めがけ、ベネディクトは動いた。
 連撃に次ぐ連撃、起点となって仲間達を支えるその位置から――不意の一撃を。
 放たれたる黄金の竜、その爪が空舞う亜竜を捉えた。
 振り抜かれた爪は、黒き魔力を帯び、さながら狼が飛び掛かるが如き軌道を描く。
 跳ねるように駆けた竜爪が亜竜の身体に壮絶なる傷を生んだ。
「どうした、大したこと無く蹴散らせるのではなかったか? ──あまり人を舐めるなよ、亜竜!」
 それはベネディクトの出せる全力を乗せた刺突。
 放たれたるそれに、亜竜が悲鳴のような咆哮を上げた刹那――竜爪は再び閃く。
「ここに住んでいた者達の――貴様らの手で殺された者達の無念のためにも」
 鋭い刺突が宙を舞う亜竜に再度、牙を剥く。
 その身に抱いた怒りを全てぶつけるが如く、振り抜いた刺突は亜竜のど真ん中を刺し穿つ。


「テメェらが弱者と思って俺らを見下ろしたこと、絶対後悔させてやる」
 アルヴァは静かな激情のままに銃口を亜竜の翼に向ける。
 静かに放たれた弾丸が亜竜の翼へ炸裂する刹那、銃に仕込んだギミックを使って亜竜に引っ張られるように肉薄する。
 そのまま、力いっぱいストックで殴りつけた。

 何故殺した。
 ――殺す必要があったのか?

 何故喰らった。
 ――喰わねばならぬ事情があったのか?

 そう問いたい気持ちはあった。
 ――けれど。
「何故――そこに答えなんて無いんだろうな」
 そう問えども、答えは出ている。
 だからこそ――この亜竜は、あの魔種は赦せないのだ。
「強いていうならお遊びのつもりか?」
 亜竜にはきっと、そんなつもりさえないのだろう。
 ――だが、あの魔種はどうなのか。
 その属性が『暴食』なのだとしても――この光景にはそれ以上の嗜虐がある。
 だからきっと、『そう』なのだろう。
「竜って奴は己が崇高な存在だとでも思ってるらしい。
 生命は一人一つ、それはテメェら竜だってそうだろう。
 だからこそ、他人の生命をさもゴミのように踏み潰すテメェらを絶対に許さねぇ……」
 握る銃身に力が籠る。亜竜はそんなアルヴァを見上げて、睨むような仕草を見せた。

「どうしてこんなことしたの?」
 ユウェルはフラウスへ向けて問う。
 どうしてもこの亜竜が悪い亜竜には見えなかった。
 その行動には、どことなく『惰性で魔種と一緒にいるような』――そんな感覚があった。
『ご飯……ご飯ってどんな?』
「可能な限り、君の要望も聞くよ?」
『じゃあ――じゃあ、たっぷりの魔力を持ったものがいい。
 この霊樹みたいな! でも、どうせ無理でしょ?
 私はね、魔力が好きなの。たっぷり、魔力が食べたい。
 でも、私が満足するぐらいの量は全然足りないよ――』
 いうや、亜竜がその口に魔力を集めていく。
「でも、人に迷惑をかけちゃいけない。
 そんな当たり前のことが守れない竜は退治される。
 ずーっと昔のおはなしから決まってることだよ」
『どうせ――ほとんどの奴はそんなことできないからね』
「そうですか……では、私達が退治させていただきます」
 紫琳はいつの間にか滲んでいた汗で少しばかりズレていた眼鏡を押し戻し、真っすぐに亜竜を見た。
「――あまり火力はありませんが、当てる事には多少覚えがありますので――」
 真っすぐに見据えてそう言えば、静かに引き金を引いた。
 対物ライフルより放たれた弾丸は、ただの弾丸に過ぎぬ――けれど。
 本来、物を破壊するような銃から放たれた弾丸は亜竜の皮膚を貫き、その身動きを阻害するには十分だ。

「そんなに腹が空いてんならよォ……喰いやがれ、俺の拳を!」
 シラスは取っておいた居寤清水をあおるや、自身の身体能力を跳ね上げる。
 亜竜に追いつかせるつもりなど毛頭ない。
 手始めの三撃は貫手のままの刺突で叩きつけ、その鎧の如き皮膚を削り落とす。
 露出した皮膚が見えた刹那、シラスは拳を握り締めた。
 放たれた殴打の衝撃は亜竜の身体を貫かんばかりの物となって響き渡る。
『げふっ、げふ、くぅぅ……ぅ』
「村人を食い散らかした礼をくれてやるぜ!
 ――反吐ブチまけな!!」
 猛連撃を受けた亜竜が、不意にその口を大きく膨らませ――大量の血を吐いた。
 だが、それでもシラスの拳は止まらない。
「まだまだまだァ!」
 もう一度、自分の残っている限りの力を振り絞らんばかりに、打ち込んでいく。
『なんで、なんでどいつもこいつも……』
 亜竜が訳も分からないとばかりに声を上げる。

 それを聞いたリンディスは静かに亜竜を見据えた。
「知っていますか?」
 燃え盛る炎を吹き飛ばすような温かな風を携え、真っすぐに。
『何が、何が?』
 鏡導の魔導書が鮮やかな輝きを放ち、循環した魔力が魔方陣を再構築する。
 仲間達の傷を、受けた炎を、全て吹き飛ばす祝福の詩と共に風が吹いた。
『……う、うぅぅ……お、覚えたからな……お前らのこと、覚えたからなぁ!』
 亜竜はそう吼えるや、大きく羽ばたいた。
 戦線を離脱する速度で真上へ向かう亜竜へ、リンディスは視線を交え続ける。
「逃げたとしても風は追い続けますから、覚悟をしていてくださいね?」
『お前だけは――お前だけは連れて行く――』
 静かな宣告――少女のそれに、亜竜がそう応じる。
 その意味が、リンディスには最初分からなかった。


 戦いを終えたイレギュラーズは更なる奥へと進む前にまだ残していたことがあった。
「だ、だれか――誰かいませんか?」
 シャーロットは人助けセンサーを行使――いや、酷使しながら里の中を歩き回っていた。
 殆どの家屋が燃え落ち、酷い匂いが充満していてセンサーにも反応はない。
「可能性がいくら低くても、ゼロではないはずなのです、きっと……」
 そう信じて、探し回っていたその時――ふいに、小さな声を聞いた。
 振り返ればそこには燃え落ちた家屋が1つ。
 そのこえはその奥からだった。
「手伝ってください!」
 シャーロットはそう声を上げて、その家屋の中へ。
 障害物を取り除いたその向こう側、そこに1人の少女がいた。
「……良かった、よかったのです……」
 自然と、そう声が出ていた。


「……ここに居たはずの人たちに――紡がれていたはずの物語に、ささやかな安らぎを」
 リンディスはそっと手を合わせていた。
 簡単な墓標を作った。
 それは本当に簡単なもので――そもそもだれもその向こう側にはいないけれど。
 それでも、ここには確実に物語があったはずだから。
 祈りを捧げるように、手を合わせる。
 その時ふと、あの亜竜の声を聞いた気がした。
「ゆっくり眠ってくれ。仇は俺達が取る」
 シラスはその簡素な――霊樹の残りに寄り添うような墓標に静かに手を合わせてそう告げる。
 亜竜が飛んで逃げた先――そこは、自分達が向かう場所だった。
「次は――仕留めてやる」
 そういうシラスの声はひとまず落ち着き始めた激情が滲んでいた。

「せめてラフィーネさんのお持ちの霊樹クエイトの種のように、
 こちらの霊樹の種でも見つけられれば……後に繋げるコトが出来るのですが」
 そう呟くドラマは霊樹の付近を探っていた。
 ようやく見つけ出して、ほっとほおを緩めたその時だ。
 ぞわりと背筋に寒いものが駆けた。
 じわりと景色が歪む――いや、霞む。
 それはまるで――目が閉じていくような――


「それでのこのこと帰ってきたか……憐れだな」
 致命傷と言うには軽すぎる傷を抱えた亜竜の頬を撫でるように、魔種が笑う。
『うぅぅ……あいつら、あいつら強かった……』
「そうだな……そうだろうな。貴様には何が足らなかったと思う」
『……私は、私にはまだまだ……』
『もっと喰らえばいい。そう思わないか? フラウス。
 まだ食い足りてなかったのだろう、貴様は。故に負けた』
『そうかなぁ……私は……私は……それで負けた?』
 知性を讃えた亜竜(けもの)へと、魔種が言葉を紡ぐ。
 それは、へばりつくような甘美な声であった。
 ――これが、ただの魔物であれば容易く転げ落ちたであろうほどに。

成否

成功

MVP

ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
黒き葬牙

状態異常

ドラマ・ゲツク(p3p000172)[夢檻]
蒼剣の弟子
リンディス=クァドラータ(p3p007979)[夢檻]
夜咲紡ぎ

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
無知なる亜竜は一度は逃れたようですが……果たして。

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