シナリオ詳細
再現性東京202X:何もしてないのに壊れたんだけど!
オープニング
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『ちょっと! お宅の商品、何もしてないのに壊れたんだけど!!』
再現性東京は夜も明るい――電力による灯りがビルを瞬かせているのだ。
が、それは夜遅くまで業務に当たっている者がいるという事でもある……その証拠に、顧客から電話があって対応に挑む一人の男性がいた。こんな時間帯だが、家の家電製品が壊れたのだという――その際の連絡が、冒頭で述べられた一言だ。
「はぁ。こういうのって、絶対何かしてるんだよなぁ……」
男性は吐息一つ。家電製品が何もせずに壊れる訳がないではないか。
いや確かに100%そうか、と問われれば初期不良や突発的な故障の可能性が絶対ないとは言い切れない。しかし、しかしだ。こういう事を言ってくる顧客はほぼ100%『何か』してるのだ。うっかり水を零したとか。うっかり変な操作をしたとか。
でも向こうは触ってないとか言ってくる。全くげんなりする話である。
ま。だからと言って無視する訳にもいかず――連絡のあった家へと到達すれ、ば。
「あ、ようやく来たわね! ほらこれ見なさいよ! 壊れてるでしょ!」
「はぁ……たしかにこれは壊れていますが……」
扉を開くと同時――激怒しているおばさんが現れた。
その手にはPCらしきモノがある。あるのだが……しかしヒビが入っていて酷い破損だ。明らかに高所から落としたか、何か別のモノをぶつけたかの跡である。これでよく『何もしてないのに壊れた!』などと言えるものだ。
思わず苦笑したくなってくる。どういう風に話を運ぶものかと考えていれ、ば。
「これだけじゃないのよ! お宅で買った電子レンジとか、冷蔵庫とかも……ほら!」
「しかし奥様。これだけのモノが『何もせず』に壊れるなんて事は……」
おばさんは続けざまに部屋の中を見せる。さすればそこには、PC以外にも破損したモノが多々。
……全て同様に激しい亀裂が走っているようだ。一体何をやらかせば此処まで壊れるのだ? 誰ぞと喧嘩でもしたのか。とにもかくにもこれで此方に責任を求めてくるなど流石に許容出来ない。これはお客様の方に何か原因があるんですと――
告げようとした、その時。
「なによその眼! さては信じてないわね――? じゃあ良いわよ、見せてあげる」
「はっ? 何を――ぐぁ!?」
男性の身に激痛が走った。
おばさんが少し触れただけで――まるで全身の骨が砕けるかの様な衝撃が。直後にはあまりの圧に男性の身も吹き飛びて……壁に衝突する。意識が持っていかれそうになる程の撃……な、なんだこれは……!?
「ほらね。何もしてないのに――壊れたでしょ?」
吐血する男性。その瞳に映るおばさんの姿は、妖しく影の様に揺らめていて……
人間ではない。そう思った時にはもう遅かった。
それは再現性東京の闇に潜む存在――夜妖であったのだ。
●
やがてカフェ・ローレットを通じて依頼が舞い込んだ――『何もしてないのに壊れた!』と毎夜の如くどこぞの会社にクレームを入れ、人を呼び込んでは危害を加える存在を討滅してほしいと。
「……まさかちょっと触れるだけで物を壊す夜妖、とはな」
そして今日もまた怪しい電話が舞い込んだらしい。『何もしてないのに壊れたんだけど! 早く見に来てよ!』と。住所は以前夜妖が出た場所とは別だが……しかし調べてみればその住所は『空き家』である筈の一軒家である事が判明した――
そんな場所に呼ぶなど一体如何なる存在か? 夜妖に間違いあるまい。
人を誘き寄せんとしているのだろう。また罪なき者に危害を加える為に。
……ともあれ夜妖は触れた対象に衝撃波の様な一撃を放ちて、内部から破壊せんとしてくる。
マトモに受ければ防に優れた人物と言えど危険かもしれぬ――更には情報によれば『触ってないのに壊れるんだけど!?』と、指差した存在に対して撃を放つ遠距離型の一撃もあるとの事だ。こちらは身体内部に浸透する力はないそうだが、やはり油断は出来ないだろう。
「空き家って事は家の被害は気にしなくていいんだよな。さて、どう攻めたもんかね」
いずれにせよ夜妖を放置してはおけぬ。
『何もしてないのに壊れた!』などとのたまい、他者を壊す輩を――打ちのめすとしようか。
- 再現性東京202X:何もしてないのに壊れたんだけど!完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月30日 23時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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『何もしてないのに壊れた』――か。
「まぁ初期不良や不具合、経年劣化等も考えられる故、一概には言えない事ではあるのだが……大抵の場合『何かしたから壊れた』という事の方が多そうな言葉だろう。特に語気を強めてくる輩には、往々にして斯様な類が多いと思われるな」
「古物商やってる吾輩にとっては、こういう物に当たる輩は超弩級の地雷客あるよ。
そればかりか実際に危害も加えてくるなんて……悪質なクレーマーにも程があるね」
戦場となる現場を見据えながら呟くは『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)に『尸解老仙』李 黒龍(p3p010263)だ。夜妖であれば理不尽という存在も珍しくはないのだろうが……こういう方向の理不尽とは、なんとも。
まぁいい。此処は一つ我々でお灸を据えにいくあるよ――
「……破壊の糾弾か。オレも未だ此の地の機器には慣れぬ身だ。何一つやらかした事が無いとは口が裂けても言えん――しかし理由が解らんのは兎も角、他者の所為と擦り付けるのは怪しからんな」
故に『アラミサキ』荒御鋒・陵鳴(p3p010418)が仲間とタイミングを合わせてから――己が式神に呼び鈴を鳴らさせるものだ。敵の領地に踏み込むのであれば、万が一の警戒に、と。
さすれば至る敵の気配。一つか――ならばと。黒龍が壁をすりぬけ踏み込みて。
「你好〜! 待たせたあるね〜、吾輩は修理業者のヘイロン・リーあるよ〜
こちらのお宅に“修理”が必要な者がいると聞いて来たある」
「お邪魔します――てな。まぁ修理つってもお前らの性根と魂を、だけどな」
「な、なによアンタ達――! 勝手に入るなんて失礼な! 菓子折りぐらいもってきたんでしょうねぇ!」
「おばちゃん達……すぐそういう風に何かを求めるのはよくないとオイラ思うよ?」
同時『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)に『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)も内部へと即座に侵入するものだ。喚きたてる夜妖の注意を引く様にチャロロは立ち回り、誠吾はそのチャロロが引き付けた個体へと容赦なき一閃を。
なんだクレームだと? こういうのは話を聞くだけでも段々と苛々してくるものだ……故に誠吾は可及的速やかに敵を滅さんと思考を巡らせるものである。
「アァア! 壊した、壊したワネ!! キッ――!!」
「えあ!!? 何、なんぞ!!? 我まだ何も触っとらんぞ!!?
……ええい! やかましく言われると、そういう手口と分かっていても焦るのう!」
「全く……このおば様は私の様に、不運でも上げに挙げまくっていたのでしょうか……?」
であれば。攻撃を受けた夜妖が本性を露わにするように、より暴力的に。
一瞬だけ、ついぞ驚いてしまう『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)――普段から何か言われる心当たりでもあるのだろうか――? ともあれすぐさま平静と、むしろ怒りを胸に敵の足並みを乱すべく歌を紡ぐもの。
家屋諸共だ。奇襲気味に一発ぶちかましてやり、捻じ伏せんとする……次いで『特異運命座標』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)も、その一撃に追随する様に前に出て魔力を込めた一閃を夜妖へと紡ぐものだ。
同時、彼女は想う。世の中には不思議が沢山ある事だが……『何もしてないのに壊れた』というもその一つなのだろうと。そして自らも――何もしてないのに攻撃が外れる事もよくあるもの――このおば様はもしやFB同族……!?
「やれやれ、だがこいつの『何もしてない』は嘘だからな――毛並みが違うよな」
だが、と。『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は更に撃を捩じこむものだ。
何もしてない? 戯言をほざくな。そういう事を言う奴ほど実際には色々やらかしてるんだ――特に己が知る者も――具体的にはイシュミル――も。意図的には何もしてないが、結果的に何かしている場合もある。
触れてないのにバチッて言って機械が壊れるヤツとか。あいつ(イシュミル)とか。あいつ(イシュミル(※大事な事なので二回))とか。
「確実になんかしてるだろ? 人に横暴振るったら因果応報だ――
本当に『何も出来ない』状態にしてやるよ」
呼吸が止まるぐらいな、と。
逡巡の音色を刻む。それはまるで愚かなる者を薙ぎ払うかのように――一閃した。
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呼び鈴に呼応して出てきた一体を集中攻撃。
『痛いじゃないの!』とのたまう夜妖はともかく――同時に各部屋にも警戒の索敵を行うものだ。情報によればまだいる筈……誠吾は気配を探りつつ、あわよくば奴らが纏めて出てくる所を狙わんとして。
刹那。夜妖の力が収束する――
それは破壊の力。微かにでも触れた者を壊さんとする衝撃の一手。
「何もしてないと言いつつ、此方を攻撃してくるとはな。
それは己が心にやましき所があると自覚があるのでは――?」
「ホントだよ! やっぱり意図的にオイラを壊そうとしてるよね!?
その衝撃が動かぬ証拠だよ! うっかり出してる訳でもないでしょ、おばちゃん!!」
「お、おばちゃんですって! これだからクソガキは!」
時として触れずとも壊す視線の力も振るわれる、が。グレイシアはその射線を反射的に感じ取り、躱しながら返す刀で勅使の一撃を叩き込むものだ――距離があろうと逃がさぬ黒の大顎が夜妖へと襲い掛かり。
同時にチャロロも奴らを挑発する様に立ち回る。壊せるもんなら壊してみなよ――と。
「壊れた事には違いないだろうが……これだけ見た目に破損しておいて、よく『何もしてないのに』と言えたものだ。恥を知らないのか? それとも面の皮が厚いのか……」
「苛々させるのが連中の目的でもあるのかね――威圧して『壊しただろ!』ってのもな。
これを素でやってるんだったら、人じゃねぇよお前らは」
ああ、一応夜妖だったかとグレイシアに次いで誠吾は審判たる撃を一つ。
騒ぎを感知し駆けつけてきている夜妖もいるが――体力が削れている奴を集中的に狙っていくのが効率的かと。さらに気を付けるべきは後ろ側への射線だ。
「あいや~これは、かなり派手にやってるあるね……」
それは癒し手を担える黒龍への備えという意味で、だ。
同時に彼はチャロロが引き付けている個体へと裁く光を放ちながら現場を見据える。おぅおぅこれはこれは……かなり『派手』にやってくれているものである、と。
「お代は全身の臓器を売っても払えない程高くつくが、よろしいあるか?
まぁ答えを聞いているとは限らないんで――あるがね!」
続けざま。放つ掌底より、肉体を通して穿つ気の放出が――夜妖へと直撃。
その身を崩壊させんばかりの勢いで攻め立てていく。うむ、これぞ正しく『叩き直す(暴力)』であるな……噂だと古いテレビはホントにこれで直ってたらしいである。人類の叡智!(確信)
「がああ! 貴方達の所為でまたヒビが……弁償しなさいよ弁償!」
「弁償だと? 成程な、では出張費用と時間外加算で相殺だ。
どうした? まさか人を呼ぶぐらいならタダだとでも思ってたか――?」
なぁに、釣りはいらんぞ。言を紡ぐアーマデルは、至りし敵を纏めて薙ぐ様にしつつ。
「やれやれ……空き家とて損壊を考慮せずとも良いとは所有者は如何した事やら。しかし其れならば一層の事、家毎潰れてくれんかねえ――近寄らずに済む。尤も、それでは流石に騒乱が拡大し過ぎると言った所か?」
「え~い! 最後の一体が奥から来るぞ!!
全く。壊れる壊れると言うのならこっちから壊してやるわい。
いっそのこと家屋諸共やってもいいじゃろ? ろ?」
更に陵鳴は皆の位置を気に止めながら位置取りを模索するものだ。流石に家屋の中であるが故に自由自在に動けるとは言えぬが……クレマァダが音の反響にて敵の位置を常に掴めば、敵がいない所を見定めて大胆に動く事は出来る。
そして撃を紡ぐのだ。双撃放ちて敵の身を削りクレマァダも敵の足並みを乱さんと引き続き歌声一つ。大黒柱とかないんか!? 壊すぞうらー!
「アアア! 信じられないわ! 修理に来た人が壊すなんて!!
馬鹿じゃないの!! ねぇアンタの会社に絶対言いつけてやるんだからね!!」
同時。夜妖側も一斉に衝撃を放つようにイレギュラーズへと浴びせるものだ。
攻撃の応酬。周囲一帯の家財には亀裂が走りて……
「まぁ――皆さんのお気持ち、私は分かりますわ」
と、その時。前衛を担うリドニアが衝撃を真正面からは受け止めず、流さんとする。
相手の攻撃に常に備える事は忘れないようにしながら――そして。
「私の攻撃も何もしてないのに外れますわ! 主に2分の1か3分の2くらいの確率で!
それでも高い攻撃に対して止められないスピリチュアルがそこにある! ギャンブルイズビューティフル! 当たった瞬間の背筋に走る高揚が忘れられまして? 否!
――さあ、貴方様もそんなギャンブルチックなお買い物で物を破壊するのが癖になりまして? ええ、きっとそうに違いありませんわ! 立場が立場だったら私達良いお友達になりそうですわね!」
「な、何言ってんのよアンタ!!」
一息早口で述べるリドニアの絶大なる主張。夜妖が否定してきているが、ふふ。そんなに恥ずかしがらなくてもいいんですよ――? お友達になりましょう、と言いたいのですが、ええ。
しかし運命はそれを許さないので――来世で。
「貴方は討伐対象。私はイレギュラーズ。此処でおさらばでございましてよ」
故、なるかな。
初手より集中的に攻撃し、体力を削っていた個体にとどめを刺すべく――
組み付き投げ払う一撃をぶち込んでやった。
●
攻勢に次ぐ攻勢。初期より、イレギュラーズの方が数では勝っていたのだ――
押し包む様に数を減らさんとする。
勿論、広い空間ではない故に廊下の広さなどにより動きが制限される面もあるが。
「しかしそうならそうで、初めから視野に入れて動くだけの事だ」
だからこそ陵鳴は冷静に状況を見据え続けるものだ。
敵の攻勢による混乱が起きぬ様に。狂気での自傷が無いように。
奴らの撃を見据え動きを決めていこう――そして狙うは、支離滅裂な言動に至る側。
「アアアア! 壊れろ! 壊れた! 壊れる! 壊れれれれ!」
「おんや。遂にあちらさん自体が壊れちゃったある? はっはっは、お似合いあるね~」
さすれば無茶苦茶に衝撃波を放ってくる者がいる者だ――
その被害はチャロロなど前に近い者達を中心に襲い掛かってくるが……ならばと転ずるは黒龍の治癒である。奴らの交える負を払い、傷を癒すのだ。確かこの地ではこういった行為を――
「『充電』と呼ぶと聞いたある。充電は大事ある!」
「充電……? うん、ああ、まぁ、確かにそうかもな……?」
そして黒龍からの支援を受け取ったアーマデルが神酒を投擲。
夜妖へと直撃させれば――その身が悶える様に痙攣していて。
「おっと? 『何もしてないのに壊れた』ぞ? ははぁこれが問い合わせの現象かな?」
「が、あっががが!!」
だが怒りによって奮起する夜妖が更に苛烈へと至るものだ。
なんてしつこい――まぁその事態も推定していたが故に、更に威力を弱めぬ撃を叩き込んでやるものだし、奥の連中を狙わんとすればチャロロが受け止める。
「おばちゃんたち、痛いでしょ? 変なことするからそうなるんだよ!
へんなことした自己責任ってやつだよ!
思い出してよ! 絶対自分でへんなこと、してるでしょ!」
「シテナイワヨッ!!」
「うそだっ!」
夜妖が高速で伸ばしてくる手を裁き続けるチャロロ。
微かに触れるだけでも衝撃が内部に。ボディの損壊が激しくなってくる、も。
「壊れないよ――オイラはね!」
ハカセの作ったこのボディは耐久性が取り柄なんだ!
彼は立ち続ける。ほら壊れた? 言ってみなよ!
「ちょっとやそっとじゃ壊れないよっ! むしろ、こっちが先にそっちを壊してやる!」
「うむ――奴らの身も大分『壊れて』来ている様だからな。あと一歩だ」
そして次なる夜妖の一手を潰すようにグレイシアが全霊の一撃を此処に。
家電の破損が火事に繋がったりしないか――? 念のための視線も巡らせながら、思うはこの夜妖達の成り立ちだ。一見人に見えるというのはなんとも厄介な代物――今まで幾度も夜妖とは戦ってきたが。
「こんなものが増えれば、混乱が巻き起こるだろうな」
一体この夜妖は、何故このような形になったのか。
分からぬが。今はただ解決の為の一歩を歩むだけだと彼は往く。
そうしていれば夜妖も遂に最後の個体だけと成りて。
「終わりだな。ったく、くだらねぇイチャモンつけたばかりか人を害しやがって」
「なによ! ホントに何もしてないのに壊れたのよ!!」
「うっせー!! 何もしてないのに壊れたとかあるわけねーだろ? 思い出してみろよ。スイッチを入れた後どっか触ったとか。電源切らないままコンセント抜いたとか! 近くで飯食ってて水ぶちまけたとか、ハムスターの類飼ってて連中がコード齧ったりとか!」
思い当たる節あるだろ?? 誠吾はかつてのバイト時代の理不尽を思い起こしながら攻撃もまた苛烈になるものである。ちなみにコンセントの下りに関しては、アーマデルが凄い勢いで頷いていた。
人類は『コンセントは差しっぱなしになってる筈』と思い込むものだからな……敵は己の記憶と身内にある……というのはまぁともかくとして。
「そもそも『何もしてないのに』て前提を付ける辺りで語るに落ちてるんだよ!
何かしたから『何もしてない』ってわざわざつけ足してるんだろ? 違うのかよ!」
「ち、違うわよ! アンタ何か証拠でもあんの!!?」
「ほらすぐ証拠求める! じゃあテメェはこっちの責任の証拠でもあんのかよ!」
最早逆恨み? そんなの知ったこっちゃね――!!
全力の一撃をぶち込んでやる。返しの衝撃が体を襲う? しらねー! 怒りが先だ!
そしてその勢いの儘に皆が押していく。
「……至らぬ自身の無知を認め、教えを請うのが正しい姿勢だろうに。
いやはや。家賃の一つも払わずして弁償だ何だと宣う面の皮の厚さには恐れ入る。」
「それに。最近の物は丈夫に出来ているとも聞きますしね――企業努力でしょうか。何もしてないのに壊れた……というのも、通さないように日々向上されているのでしょうね」
陵鳴の剣撃。一端後方に下がったリドニアの魔砲が家屋諸共貫いて。
ブッ叩いてやるものだ――理不尽よ消え去れ! 貴様はこの世界にいていい存在ではない!
「ガ、ガガガ、べ、べべべ弁償……!!」
「なんじゃなんじゃなんじゃぁ! まーだごちゃごちゃ言いおるのか!
何もしてないのに壊れたと申すからきちんと因果を与えてやったのではないか!!」
我は悪くないぞ――!! 言うはクレマァダである。
修復プロトコルが彼女の傷を癒し『壊れぬ』ように備えながら、紡ぐ一閃は壁越しに。遠慮も容赦もない一撃を横っ面から夜妖にぶち込んでやれ――ば。
「大体じゃな、クレームひとつ入れるにも礼というものがあるじゃろう!! まず己の瑕疵を確かめ、次に然るべき物言いでじゃなあ! 真っ先に『お前らが悪い!』などという、己が悪い可能性を最初から除外して相手側の事情を一切鑑みない言など、立場を利用した無知蒙昧なる輩と捉えられてもおかしくはないのじゃから……聞いておるのか! おいっ!! おっ………」
クレマァダ、刹那の停止。動きの見えない夜妖を見据えて――
「……何もしてないのに壊れたのじゃ」
いいんだよ、クレマァダさん――人に害成す夜妖だからね、それは。
「汝は全身バラしてもリサイクルできねえから利用価値は期待出来ないあるね。ここで生々しい感じのスクラップになるがよろし――その内風化して誰も思い出さなくなるあるよ」
「さようならおば様。次があるなら、せめて人を傷つけません様に……」
周囲を見据えれば……おぅおぅ酷い惨状だ。黒龍にリドニアが眺めても――最早無事なモノの方が少ないのではないかと――まぁいいか。これで邪悪は打ちのめされたのだから。
「……しかし今更だが夜に客の家に訪問するのはやばいからやめた方がいいだろうな。相手が普通の人類でもやばいからな……いや、ただ単純に、俺の背後で霊がそう囁いてるだけなのだが」
そしてアーマデルは今にも倒壊しそうな家より出でつつ、言を紡ぐものだ。
おかしい……何の言及なのか分からない筈なのに、分かってしまう……!! 『着払い』は魔法の言葉。何故か得した気分にさせる素晴らしい言葉だ。
「クレーマーから発生した夜妖か……ほんとに厄介だったね。オイラみたいなサイボーグすら『何もしてないのに壊れた』ってしようとしてくるもん……イテテ。もう少しで本当に『壊れた』させられる所だったよ」
「ふむ……理不尽の力とはかくも恐ろしいな。今までそのような類には遭遇していないが、これは幸運なのか、それとも店に来る客の質が良いのか……」
そして。一息ついたチャロロは破損個所を眺めながら夜妖を思い返し。
グレイシアは斯様な存在に巡り合った事がない己が身の幸運を――噛みしめるものだ。
やれやれ。いずれせよ何故か随分と疲れたものである……
さて帰るとしようか。
カフェ・ローレットへ。帰路への道へと――付くのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れ様でしたイレギュラーズ!!
ホント「何もしてないのに壊れた!」は信用できませんね……!!
ともあれありがとうございました!!
GMコメント
●依頼達成条件
夜妖の撃破。
●フィールド
再現性東京に存在する、ある一軒家です。
事前情報によれば此処は空き家の筈なのですが……近付くとどうにも生活している様な気配が漂ってきますし、中を見てみれば色んな家電製品などが存在している様に見えます。この空間自体が夜妖の力なのかもしれません――
とにかく内部に存在する夜妖を撃破してください!
家の損壊などに関しては気にしなくて良い、との事です。
●敵戦力
夜妖『何もしてないのに壊れたんだけど!』×3体
「何もしてないのに壊れる!」と深夜にクレームを入れ、人を呼び寄せ危害を加える夜妖です。衝撃波を与え、触れずとも物を壊す力を宿しています。姿形は普通の人間の様に見えますが、勿論人間ではありません……撃破してください!
能力としては近接型の『壊れた!』と遠距離型の『ほら壊れた!』があります。近接型は内部に衝撃を浸透させ、比較的高い威力のダメージを与える力があるようです。また『必殺』属性もあるのだとか。
遠距離型は射線(視線)が通っている対象へと指差し、その対象へと衝撃波を与えます。こちらは身体内部にまで浸透する力は在りませんが『狂気』や『混乱』、『乱れ系列』のBSを付与する事があるようです。
HPが少なくなってくると『もう! 弁償しなさいよ弁償!!』と支離滅裂な事を言ってきます。攻撃力と反応が上昇し攻撃が苛烈になりますが、しかし命中と回避が下がり雑な一撃を放ってくる様な状態へと変化するようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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