シナリオ詳細
<13th retaliation>無邪気なる冷たき妖精
オープニング
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深緑を覆う不可思議な茨。
それらは深緑の大部分を覆いつくし、深緑の民である幻想種達を捕らえ、覚めることのない眠りへと誘っている。
「すやすや……」
「う、ううん……」
その茨の呪いは死をも感じさせる呪いと言われており、昏睡する幻想種達の早急な救出が望まれるところ。
迷宮森林に入口に比較的近い場所にある集落ティストにおいても、この茨はかなりの領域を覆っている状況だ。
この地に入った森林警備隊は少しずつ茨を払い、住民の救出に当たっていたのだが……。
ある時、集落へと飛来したのは氷の様な素肌を持つ妖精だった。
「な、なんだ……?」
驚く警備隊隊長ラウルがその妖精に見とれていると、その妖精は楽しそうに笑って。
「好きにやっていいって言われたから、思いっきり暴れるの!」
氷の妖精がその場に呼び寄せたのは、毛むくじゃらな邪妖精トロール。
さらに、迷宮森林内で見かける大樹の姿を借りた大樹の嘆き。
それらを集落へと解き放った妖精はにこやかにその破壊活動を眺める。
「なにをする……!」
ラウルを始め、警備隊メンバーが矢を射放ち、風魔法で妖精に攻撃を仕掛けるが、相手はくすりと微笑んでそれらを避けてみせた。
「ダメなの。アイシィはもっともーっと楽しみたいの!」
背中の羽根を羽ばたかせ、踊るように宙を舞う妖精アイシィは茨に覆われた集落奥へと魔物達を引き連れていく。
「まずいぞ、奥にはまだ長老一家が……」
大半の集落民を保護した警備隊ではあったが、この事態は想定外。
集落奥は『茨咎の呪い』が強く残っており、迂闊に近づくことができずにいたのだ。
歯痒さを感じながらも、ラウル達はローレットへと助力を仰ぐべく連絡を取ることにしたのだった。
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しばらくして、その集落ティストへと駆けつけたローレットイレギュラーズ。
「現状、森林警備隊の方々が魔物の動きを監視していますが……」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が窓口となりつつ、状況の説明を行う。
茨に覆われた迷宮森林にて、森林警備隊は同胞の救出をと活動を続けており、その途中でこの集落にも立ち寄ったようだ。
徐々にではあるが、茨を振り払いつつ集落民を保護していたのだが、集落奥は『茨咎の呪い』の影響が色濃く、立ち入ることもままらなかったとのこと。
「そこに来て、氷の妖精がトロールや大樹の嘆きを引き連れて暴れ始めたのだ」
森林警備隊隊長ラウルが苦々しい顔で語る。そこで、アクアベルが敵についてわかる範囲でのデータをイレギュラーズへと提示する。
アイシィと名乗った氷の妖精はどうやら、冬の王の配下妖精とみられる。
冬の王に対する感情は不明だが、楽しいから思うままに振舞っているという印象をラウルは受けたという。
「このままでは、奥で昏睡状態にある集落の長老一家の命が危険です」
茨に覆われた奥地は長老宅の敷地を覆っている。
一家は家屋内で昏睡状態にあると見られるが、ラウル達も詳しい位置はまだ捕捉できていないとのこと。
「魔物を引き付けつつ、救助を最優先で動いてほしい」
家族構成は高齢の長老と妻。一人息子とその嫁、両者の間に2人の子供。いずれも小学生くらいの年齢であるそうだ。
「巨躯の敵に長老宅を踏み潰されてはかなわない。救出の間は引きつける必要があるな」
呪いと合わせ、茨はどこからでも攻撃を仕掛けてくるのが非常に厄介だ。さらに、気ままな妖精の気を逸らしたいところ。やることは多い。
「呪いが皆さんを蝕むことを考えれば、全ての敵の討伐は極めて困難です」
時間経過によって呪いは急速に進行し、満足に動けなくなる。その前に、幻想種達を救出したい。
「我々はサポートに回る。短時間なら茨の中に突入する覚悟はできている」
イレギュラーズと森林警備隊で協力すれば、敵の討伐はできずとも救助なら可能なはずと、ラウルは強く拳を握りしめる。
この依頼に臨むイレギュラーズ達もまた、口々に意気込みを語り、森林警備隊と握手を交わす。
「厄介な事態になっていますが、人命がかかっています。どうか、よろしくお願いいたします」
最後に、アクアベルは深く頭を下げ、幻想種の救出をこの場の面々に託すのだった。
●
茨の中、前方に見える長老宅。
平屋である様だが、それなりに広く、部屋数もあるようだ。
ズシン、ズシン……。
手早く家屋内へと突入したいところだが、毛むくじゃらのトロールや大樹の姿をとる大樹の嘆きが立ち塞がる。
「邪魔するなら、容赦しないの!」
ブオオオオオオオ!!
氷の妖精アイシィの声を応じて、トロールが吠え、大樹が枝や根を伸ばしてくる。
さらに、敵対者を感じてか、周囲を包む茨も束なってこちらへと絡まってこようとしていた。
敵対勢力をなんとかやり過ごし、幻想種の救出を。
イレギュラーズと森林警備隊は頷き合い、茨の中を立ち回り始めるのである。
- <13th retaliation>無邪気なる冷たき妖精完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年05月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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現状、深緑は全域を謎の荊が覆いつくしている。
迷宮森林のラサ側、浅い地帯であってもかなりの茨が覆っている状況で、多くの幻想種達は茨の影響で昏睡状態に陥っている。
「うむ! 深緑の危機とやらは分からんが、植物が儂を呼んどる気がしての! 此処に馳せ参じたぞ! いえーい!!」
ハイテンションにアピールする樹龍(p3p010398)はこの状況の中でも我を通す自身を、ふざけていて、うつけと笑われるのも仕方なしと自認していたが。
「為すべき事は忘れん、安心せい」
胸を張る樹龍の自信家っぷりに感嘆するメンバー達だが……。
「でも、ちょっとたいへんなことになっているわね……」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は今回の事態に苦い顔をしてしまう。
ティストと呼ばれるこの集落には森林警備隊が詰めていたが、長老宅周辺の茨の密度が高いとのこと。
濃い場所だと『茨咎の呪い』の影響を大きく受けてしまう。
だが、長老一家6名の救出が困難な状況となっているのはそれだけが要因ではない。
「ゆっくりでも避難活動が進んでいて良かったと思っていましたのに、ここで妖精様が参戦されるとは予想外ですね……!」
『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)の一言で、メンバーの視線が『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)へと注がれる。
「ひたすら深緑に取り残された妖精を探していたが、まさか冬の王の軍に楽しめそうだからと参加する妖精がいるとはね……」
サイズは今回の依頼を完遂する他に、幻想種救助を急務とする一因、この場へと介入してくる冬の王配下の妖精を説得したいと考えている。
「このままだとアイシィさんが危ない! 冬の王は魔種と結託してるし、最悪アイシィさんが反転してしまう!」
気分屋の妖精は面白半分で冬の王に味方しているという。
だからこそ、サイズはその危険性を伝え、離反してほしいと願うものの。
「妖精、大樹の嘆きに魔物……前途多難だな」
「加えて、茨の呪い。それに時間もあんまりない!」
『黒鋼二刀』クロバ・フユツキ(p3p000145)は問題点を列挙すると、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)がさらに指摘する。呪いは制限時間付きでその身を蝕むというから恐ろしい。
そんな状況で襲い来る魔物のおかげで人命もかかっており、嘆いている暇もないとカインは気を引き締めて。
「冒険者としてやれる事を全力全速でやるだけだね!」
クロバもここで見捨てるようなら、ファルカウの皆に顔向けできぬと大きく頷いて。
「全員救っていく、一人残らずな!」
力強く、その決意を口にするのだった。
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さて、現場は集落の奥。
長老宅敷地が丸々、密に茨で覆われている状況である。
今回、長老一家の救助に当たっては、依頼者であり、協力者でもある森林警備隊の助力を得る形だ。
「すまない。よろしく頼む」
隊長ラウルと共に頭を下げる隊員達。
10名いる警備隊の半数がクロバ、カインと共に長老宅へと突入、一家救出に当たる。
その間、他メンバーはというと……。
「それじゃあ、頑張らなきゃいけないわね」
ヴァイスも人命に関わる1件であり、皆で無事に帰りたいと本音を漏らす。
「ざっくりやることを言うと、警備隊達がさっと救助に回れるよう、とにかく敵を引きつけて耐える!!」
『ゴミ山の英雄』サンディ・カルタ(p3p000438)を含め、この場のメンバーのほとんどは氷の妖精アイシィとその連れを引き付ける役を担う。
そのアイシィをサイズが見つめ、ふと思う。
原因を知らないで何かを決めるのは、悲しみと代償を生む。
そんな言葉を聞いたことがあったサイズは、妖精アイシィが今辿ろうとしている道こそまさにこの言葉が当てはまると感じてやまず。
「……必ず、説得して見せる!」
「幸い楽しそうだからという単純な理由のようですから、もしかしたらお話を聞いてくれるかもしれませんが」
ハンナはその説得に多少の期待を寄せるが、その視線が妖精の連れてきた集団に向けられれば、一つ溜息をついて。
「妖精様が呼んできたあちらは……たぶん無理ですよね」
アイシィが連れていたのは、毛むくじゃらの巨人トロール、大樹の姿をした大樹の嘆き。加えて、辺りを覆う茨は突入する者全てに襲い掛かる。
「被害を最小限にトロール6体、やはり盾持ちが守らなければならない」
早速、『太陽の沈む先へ』玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)が前に進み、大声を張って魔物達の注意を引く。
「さあ来い。この盾砕いてみろ」
アアオオオ……。
ギギ、ギギギィ……。
トロール、大樹が桜花に気付いて近づいてくる。
「なんか面白くなりそうなの」
続いて飛来してくる氷の妖精に、意を決して前に出ようとするサイズの横で、樹龍が高笑いして。
「ふわっはっはっはっ! 氷の妖精よ! 貴様のその風格……! 最強たる儂と同じくらい最強と見た!! 手合わせ願おう!」
笑う妖精が宙を踊り始めると、サンディも負けじと構えをとって。
「レディの前で踊ってみせるってんなら、サンディ様の得意分野ってもんだぜ」
そうして、仲間達が敵対勢力の足止めを行う間、突入するクロバ、カインらは手早く準備を整えて。
「要救助者は6人、敵勢力は多数。そして俺達に与えられた時間はそう長くはない、だがそれに負ける俺達じゃない!」
統制によって、クロバは行動を共にするメンバーの士気を一層高める。
「イレギュラーズと深緑警備隊の名にかけて一人残らず救い上げるぞ!」
「「おお!」」
危険な場所への突入とあって、隊長ラウルも同行する様だ。
カインは搬送用の馬車も持ち込み、御者を隊員の1人に頼んでいた。その分、カイン自身も襲い来る茨の迎撃に当たる構え。
彼らは隙を見て、長老宅へと突入していった。
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アアオオオ……。
ギギィ、ギギギィ……。
トロール、大樹の嘆きはやりたい放題に暴れまくる。
周囲の茨も時折引きちぎってはいるが、やはりその狙いは目に付くイレギュラーズ。
(守りには自信がありませんが……)
ハンナは多少の不安を抱えるも、攻撃の激しさで相手に脅威を思わせるべく注意を引こうとし、ガンエッジで手近なトロールへと距離を詰める。
呼吸を整えて集中したハンナはそいつへと 猪、鹿、蝶の鮮やかな三連撃で斬りかかる。
手応えは十分だが、それだけで倒れる柔な相手ではない。
グオオオオオ!
トロールの絶叫にも急ぎ態勢を立て直し、ハンナは手数を活かしてさらにその体を切り刻んでいく。
長老宅前で抑えを行う形となるイレギュラーズの多くはトロールの抑えへと向かっていた。
(排除できればそれが一番なのだけれど、とりあえずは足止めでも問題はないわね)
相手を自由にさせれば、それだけ被害が大きくなる。
並列思考で戦いに臨むヴァイスは、白一色の儀礼短剣を握ってトロールに切りかかった。
殴り掛かってくる敵をそのままに、ヴァイスは次なる敵へと結界術を展開する。短剣、そして術式の効果もあり、ヴァイスの攻撃は敵を苛む一手となる。
しかしながら、トロールは6体。大樹の嘆きも5体いる。
イレギュラーズがトロールに集まる形となった為、警備隊がそのまま大樹の嘆きを引き付ける形となる。
「「いくぞ!」」
警備隊隊員達が矢を射かけ、風の魔法や精霊を飛ばして前方……主に大樹の嘆きへと攻撃を仕掛けていく。
大樹が隊員達へと近づくのに対し、隊員は距離をとりつつ遠距離攻撃を続けて引きつける形となる。
一方で、イレギュラーズもサンディなどが名乗りを上げ、トロール数体を抑えに当たって。
「こっちだ、サンディ様が相手になるぜ!」
叫ぶサンディがトロールを纏めて引きつけようとすれば、そちらにもトロールが集まって。
唸るトロールが近場で殴り倒した樹木を投げつけてくる中、サンディは向かってきた最小限の相手だけを抑える。
ブオオオ、ブオオオオ……!
直接殴り掛かってくる相手にのみサンディは身を張り、救出班の方へと敵が向かわぬよう立ち塞がった。
後はヘイトを買ったトロールの殴りつけを、引き付けるのみ。
(警備隊を狙わなくなってるのは儲けだな)
あちらも上手くやっているようだと勘づいたサンディは再生能力と自己修復を活かし、敵の猛攻を耐え始める。
桜花もまたトロール引きつけの為、盾を構えて自己強化。後は戦略眼を活かして向かい来る1体を全力で抑える。
(攻撃が飛び交う中邪魔が入れば説得所じゃなくなる)
桜花もそうだが、サンディもまた敵の攻撃を食い止めつつ、成り行きを見守る。
「冬の王が魔種と繋がっていて、反転の危険があるんです」
「んー?」
激しい戦いが繰り広げられる場で、サイズの呼びかけに応える氷の妖精が楽しげに宙返りする。
彼女が視線を向けるだけで、対象は凍り付いてしまうという。
(妖精武器として妖精のアイシィさんの攻撃には弱いが……)
それに耐え、サイズは彼女が後悔しないようにと気を強く持ち、敬語で呼びかける。
「反転したら二度と楽しく遊べなくなりますし、友達を傷付ける危険すらあるんです!」
「そんなことないのー!」
分かりやすく教導するサイズに、アイシィはレスポンスをするものの、聞き入れてもらえるようには見えない。
「氷の妖精……アイシィ! お主が儂と同じくサイキョーなのは疑いようもない!」
なおも凍てつく吐息を吹きかけてくるアイシィの前に、今度はサイズを庇うように樹龍が出る。
「じゃが、この行為の何が面白いのか全然分からんぞ! 雪玉とか作ったり~かまくらで遊ぶ方が面白くないか~?」
シンパシーを感じた相手だからこそ、仲良くなりたい。樹龍も気が合いそうなアイシィと話がしたかったのだ。……樹だけに。
「えー、そんなの飽きちゃったのー」
ただ、アイシィはよほど魅力的な申し出を冬の王から受けているのだろう。そう簡単には説得に応じてはくれないようだ。
「それに弱いヤツを虐めるよりか強いヤツに反逆する方がかっちょいいし面白くない??」
「うーん……」
難色を示すアイシィは空中を舞い踊る。
気まぐれであるなら、その気を引くことができれば。サイズや樹龍はさらに呼びかけを行う。
そこに周囲に張り巡らされる茨が束なり、うねる様にして戦場を薙ぎ払う。
メンバーはその攻撃をやり過ごしながらも、魔物達を抑え続けるのである。
茨の強襲は表だけに留まらない。
長老宅内部でも、時折、茨が束なって襲ってくることがあった。
そして、長老宅へと突入したメンバー達。
機動力を活かして移動するクロバは消耗を抑えるべく、戦いを避けつつ進む。
茨はこちらもしっかりと狙ってきている。
「樹を利用して移動するんだ」
それに巻き込まれぬよう配慮し、クロバは人道指揮を執りつつ長老宅内を移動する。
「……非常時だから、強引に扉を開けるのは許して貰いたいね!」
幾つかの部屋は施錠されており、カインがマスターキーと称する力……文字通り力技で扉をこじ開ける。
先に子供達を見つけたクロバは警備隊と共に聖葉を使って保護し、馬車まで搬送する。
「茨が来るよ!」
直感でカインがその接近を察し、仲間達へと伝える。
一度束なれば、茨は一度バラけぬ限りその周囲だけしか攻撃できない。
その攻撃の予兆を掴んだ一行は茨を避け、再び邸宅の奥へと進んでいくのである。
●
刻々と過行く時間。
戦い、救出活動が長期化すれば、茨咎の呪いの影響を強く受けてしまう。
満足に動けなく前に、この場から離脱したいところだが……。
救助隊は順調に長老一家の救出を進め、息子夫婦を保護していたが、やはりそこでも茨が素早く伸び、メンバーを襲う。
「茨に巻き込まれないよう走れ! 助けに来た俺達が助けられる対象になったらお終いだぞ!」
クロバは先に警備隊を離脱させ、カインと共に茨と対する。
厄介な相手だが、対するのは1体のみ。ラウル達が搬送して戻ってくる間、2人が茨を抑える形だ。
絡みついて動きを止めてこようとしてくる束なる茨を、クロバが太刀とガンブレードで次々に切り裂いていく。
茨は散開している状態だと切り払うのは並々ならぬ労力を必要とするが、束なることで強度が大きく低下する。
カインもまたAKAで自己強化を施してから収束性を高めた魔砲で茨を撃ち抜く。
しばし応戦する茨だが、さほど耐久力は高くない。戻ってきた警備隊が距離をとって援護射撃をしてくれるところでカインが閃光を走らせ、クロバが再度二刀の刃で茨を切り裂いてしまった。
1体茨を倒したものの、まだ敵はいる。メンバーは残る長老夫婦の捜索を急ぐ。
再び、長老宅前。
馬車へと次々に運ばれてくる長老一家の姿を、ハンナは横目で確認して。
「うーん、救助完了までもう少し!」
時間稼ぎもあとひと踏ん張りとハンナは刃を握る手を強める。
さて、まずはアイシィの説得だが。
「春の都に住みづらく、つまらないなら、俺が発展させた秋の都、オータムシェルで氷の妖精も楽しく過ごせますよ?」
「それ、どこにあるの?」
サイズはアイシィが自身の築いた街に興味を持っていたのを見逃さない。
ただ、彼女が離反するには至らない。もしかしたら、反転の危険を強く受け止めていなかったのか、あるいはもっと魅力的な取引があったのか……。
「なんでー? なんで、冬の王の子分なんじゃー? 最強なのにー?」
樹龍はアイシィの視線、吐息を堪えて自身がサイキョーであることを主張する。
実際、樹龍へと仲間達が回復を振りまくことはない。予め彼女には回復が利かぬ状態となっていることを伝えられていたからだ。
その分、様々な状態に対応できるよう備えてきた樹龍は、襲い来る茨から体力を奪いつつ説得を続けて。
「というか、戦闘飽きたから他の事して遊びたいんじゃがー?」
「アイシィも飽きてきたのー」
そんな彼女のノリはアイシィも嫌いではないらしい。
2人の説得に、アイシィは少しずつこの場での戦いの興味が少しずつ失せてきていたようだ。
そして、巨体の魔物達の抑え。
守りに不安を感じていたハンナだったが、敵陣を切り刻み、敵を攻め立てる。
とはいえ、敵の数が多く、戦力が分散している状況。加えて、トロールの自己治癒力の高さもあってなかなか倒すには至らない。
加えて、邪魔をしてくる茨の対処にも追われる。
トロールの猛攻を盾で抑えていた桜花だったが、横から入り込んできた大樹の嘆きが目に入り、纏めて抑える形となる。
さらに、馬車へと襲い掛かった束なる茨。桜花はそれを察して身を投げ出すようにその一撃を受けて倒れてしまう。
仲間が倒れたのを見て、すかさず広域を見通していたヴァイスがその穴を埋め、敵の猛攻を一身に引き受ける。
「こんなの、俺には効かねぇし?」
それでも、サンディは余裕を見せてトロールへと反撃を叩き込む。
注目が自分に集まると感じれば、サンディはここぞと変身バンクで派手に立ち回る。
「名付けて『へっおもしれー女』作戦……いや男女逆だけど!」
疲弊は激しく、元々深手を負っていたサンディも厳しい状態ではあったが、彼はアイシィの気を引こうとする。
「なかなか頑張るの」
とはいえ、思った以上に暴れられなかったことや、サイズ、樹龍の説得で別の興味が沸いた為か、アイシィは戦いへの興味を失いつつあったようだ。
皆が十全に力を尽くす中、ヴァイスは敵対勢力の足止めに動き続ける。
広域俯瞰もアリ、ヴァイスは的確に敵の動きを食い止めていて。
「もう、だめよ? あんまりおいたをしちゃ……お仕置きよ」
タフなトロールの脚がぐらついたところで、ヴァイスは一気に押し切る。
激しい暴風を前方へと巻き起こしたヴァイスの一撃。
ブオオオオォォォ……!
それにトロール数体と大樹1体が巻き込まれて吹き飛ばされていく。
多くは再び起き上がっていたが、ヴァイスの相手にしていた1体は地に伏したまま動かなくなっていた。
そこで、長老宅より現れる救助班。長老夫妻も保護、搬送できたようだ。
活動できる時間は残り少ない。
「すまない。先に離脱させてもらう」
長老一家の身を案じたラウル達警備隊、そして彼らを守るクロバがいち早くこの場から離れていく。
「撤退しましょう!」
イレギュラーズもこれ以上戦い必要はないとハンナが全身全霊で大喝し、敵を弾き飛ばして仲間達の離脱の隙を作る。
その頃には、アイシィはすっかり戦意を失っていたが、素早く伸びてきた茨からサイズが彼女を庇う。
パンドラを使って歯を食いしばるサイズに、アイシィは驚き戸惑う。
「……また、なの」
連れてきたトロールらをそのままに、アイシィは飛び去ってしまった。
飛び去る氷の妖精を見つめていたサイズだったが、最後尾のハンナに促される形で茨の濃いその領域から離れていくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは妖精の説得し、身を挺して茨から庇った貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
<13th retaliation>のシナリオをお届けします。
迷宮森林内にて、幻想種の保護に動いている迷宮森林警備隊ですが、人々の救出に苦慮しているようです。
彼らに力を貸し、幻想種を救出していただきますよう願います。
●状況
幻想種6名の救出
●状況
迷宮森林内にある集落ティストの奥側は茨の密度がかなり高くなっており、迂闊に近づけぬ状況です。
しかしながら、そんな中、魔物達は茨の影響などまるで受けず、眠った人々を狙っています。
茨の濃い領域へと突入、茨や魔物を掃討し、『聖葉』の力を借りて幻想種の保護を願います。
敵の数を減らすに越したことはありませんが、あくまで救出が優先です。下記の『茨咎の呪い』の影響もあり、長期戦は不利となりますので迅速に作戦を決行する必要があります。
●敵
○冬の王の配下妖精:アイススプライト・アイシィ
全長5,60センチ程度で、見た目だけなら氷の肌を持つ美しい妖精なのですが、面白そうだからと冬の王に味方し、やりたい放題振舞っているようです。
凍てつく視線は複数の相手を射抜き、凍てつく吐息を広域に吹き付け、宙を舞うダンスは見る者を引き付け、魅了します。
また、気まぐれな一面もあり、あっさりといなくなってしまうことも。
○トロール×6体
全長5mもある毛むくじゃらで筋力のある巨人。力で殴り掛かってくる他、絶叫してこちらの体勢を崩してきたり、倒木などを投げつけてくることがあります。
加えて、高い自己治癒力を備えている厄介な相手です。
○大樹の嘆き×5体
樹高6~7m程度の樹の姿をしており、根を動かして移動も可能です。
根を使った広範囲の突き出し、絡ませてからの締め付け。枝を使った薙ぎ払い、槍のごとき突き出しなどを行います。
○茨×3体
有刺鉄線の如く一定空間へと張り巡らされる謎の荊。
一体範囲の茨が束なってから敵対するもの目指して伸び、絡みついてきます。また、強引に排除しようとする者を昏睡状態へと陥らせたり、体力、気力を奪いつくりして死に至らしめようとしたりする。
茨は戦場のどこからでも束なることができるようで、その出現の把握はかなり難しいでしょう。
ただ、茨を傷つけることでその活動は低下します。
戦場に張り巡らされた状態では範囲攻撃に耐性を持つ為、非常に厄介な相手ですが、束なった茨は耐性が無くなるため絶好のターゲットとなるでしょう。
●NPC
〇迷宮森林警備隊×10名
弓の名手である隊長ラウルを中心に、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成。後方、樹上からの攻撃が得意。
関連シナリオで幾度か顔を合わせております。また、R.O.Oでは敵対模していましたが、現実の彼らは深緑の危機を幾度も救っていることからローレットに好意的です。
今回の依頼者であり、協力者でもあります。
危険な為待機も可能。救出対象の幻想種の搬送を任せたり、敵の足止めを任せたりなど、イレギュラーズの作戦に沿う形で動いてくれます。
〇幻想種×6名
救出対象。集落の長の一家、長老とその妻。一人息子と嫁、子供2人が昏睡状態に陥っており、魔物に狙われています。
●『茨咎の呪い』
大樹ファルカウを中心に広がっている何らかの呪いです。
イレギュラーズ軍勢はこの呪いの影響によりターン経過により解除不可の【麻痺系列】BS相応のバッドステータスが付与されます。
(【麻痺系列】BS『相応』のバッドステータスです。麻痺系列『そのもの』ではないですので、麻痺耐性などでは防げません。)
25ターンが経過した時点で急速に呪いが進行し【100%の確率でそのターンの能動行動が行えなくなる。(受動防御は可能)】となります。
●『聖葉』
アンテローゼ大聖堂の地下に存在する霊樹『灰の霊樹』に祈りを捧げて作られた加護の込められた葉です。
多くは採取できないため、救出対象に使用して下さい。葉へと祈りを捧げる事で茨咎の呪いを僅かばかりにキャンセルすることが出来る他、身体に絡みついた茨から何の苦しみもなく救出することが出来ます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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