PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Celeste et>おいしうれし果実の成り

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 少年達は、夢に見ていました。
 “雲と雷の壁”を抜け、いつか外へと羽ばたく日を。
 この島は確かに豊かだけれど、其れだけでは足りない。徐々に減って行く食料、増えていく老人、死んでいく命。大人たちがひそひそと、自分たちのこれからについて不安げに話し合っているのを少年達は知っていました。
 だから、外に行きたかった。自分たちが外に行って、全ての問題を解決するんだと。
 羽根はないけれど、技術ならある。作ったグライダーでいつか、この島の外へ行くんだ。そうして見知らぬ地を知りたい。ずっと地続きの大地、ご先祖様が住んでいた大地へ、僕たちも降り立つんだ。

 其の夢はこんこんと引き継がれ――そうして、とある少年が石板に触れた時。
 アーカーシャという島は隔絶から解き放たれ、大地への航路が開かれたのです。



「ああ、忙しい、忙しい」
 鉄帝中心部。
 鉄帝文官の一人であるファリドは部下を幾人か引き連れて廊下を急ぎ足で歩いていた。
 其れもこれも、南部のノイスハウゼン上空に現れたあの浮遊島の所為。――いや、所為、というのは少し違うかもしれない。おかげ、と言った方が良いのかも知れない。
 島の動きから天候の変化、様々なデータがファリドの元に入って来るものだから、其の仕分けに躍起になっているのだ。
 確認するようにファリドは傍の文官に問うた。
「確かに伝説にあるアーカーシュなんだな?」
「既に鉄帝民は其の名称で呼んでおります。降りてきた少年達は自分の事を、“かつて鉄帝から飛び立った者たちの子孫”であると」
「其の少年達は保護出来ているのか?」
「既に。『歯車卿』は聴取後に調査隊を結成しております」
「流石の速さだな。――アーカーシュか。巧くいけば新たな鉄帝の資源を調達できるかもしれない」
 ファリドは唇に指を当て、思案する。
 『歯車卿』の調査隊では足りない。自分たちも独自に調査隊を指揮する必要があるだろう。今其れを依頼できるのは――イレギュラーズをおいてほかにはあるまい。彼らは覇竜領域で亜竜を手に入れたという。空へのアクセスが容易な彼らなら。

「――だが、頭が痛いな」

「派閥の話ですか」
 付き従う文官の一人がひそり、と小声で言う。そうだ、とファリドは頷いた。あの島、アーカーシュを巡り、鉄帝上層部は二つに分かれようとしていた。
 一派。国家の為に行動する軍人たちで構成される“軍務派”。
 そしてもう一派。特務の機密特権を盾に主導権を握ろうとする“特務派”。
「……何が特務だ。あれだけ堂々と浮かんでいるものに特務も何もあるまいに」
 憎々し気に言うファリドは国益のために動く軍務派だ。
 特務派よりも先に、何らかの益になるような場所を見付けねばならない。拠点の構築、現地の生物・集落の調査……やる事は山ほどあるが、ファリドに出来る事は一握りしかない。
「悔しいが、イレギュラーズの動きに任せるしかないだろう。出来る限り特務派とは違う地域を調査して、名目だけでも良い、我々軍務派が掌握するんだ」
「はっ」
 斯くしてイレギュラーズという矢はアーカーシュへ放たれる。狙うのは未開拓の森部分。鈴成るのは地上でも見るような様々な果実。
 其の中には未知の果実があるかもしれない。

 ――分割されつつある上層部は一先ず置いておいて、君たちは未知の島を探索すれば良い!

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 新しい冒険領域! ワクワクしますね。
 どうやら色々な思惑があるようですが、今は素直に探索を楽しみましょう。


●目標
「アーカーシュの果樹林を調査せよ」
 全2章です。


●立地
 浮遊島アーカーシュの村“レリッカ”から歩いて程ないところにある果樹林です。自然に林立した様々な果樹が並んでいます。
 通常の大地にもあるような果実もありますが、長い独特な暮らしの中で果樹名は失われ“紅くて丸い実”、“黄色いひょうたん”など、独特な名前が付けられています。
(既存のフルーツを推理する場合は下記“聞き取り結果”をご参照の上、調査して下さい)
 また、アーカーシュ特有の果実もあります。
(其の場合は下記“謎の名称一覧”をご覧ください)

 他にも色々な果実がある事でしょう。毒見がてら一口いかがでしょうか。


●予感
 森の奥がざわざわとしています。
 穏やかな森に反して、其処に住む者は未知の侵入者にピリピリしているのかもしれません。
 果実を取りすぎると怒りを買う。かも。


●聞き取り結果
 紅くて丸い実
 黄色いひょうたん
 緑のひょうたん
 ピンクのおしり
 紅いつぶつぶ
 小さな花束


●謎の名称一覧
 紅いひょうたん
 緑のつぶつぶ
 鳴らない笛
 天使の忘れもの


●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。



 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • <Celeste et>おいしうれし果実の成り完了
  • GM名奇古譚
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月04日 21時15分
  • 章数2章
  • 総採用数30人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 ――果実園は、アタシの楽園だった。

 時々村の子どもたちがアタシの獲物を取って行くけど、そんなのはささやかなもので。気が向いた時に暴れ回って、落ちる果実たちを抱えて帰るのがアタシの楽しみだったの。
 其れなのに……其れなのに!
 何なのアンタたちは! 突然人の果樹園に入り込んで、あれやこれや果実をもいで、た……楽しそうにしちゃって!!
 友達のいないアタシへの当てつけ!? そ、そりゃ、こういう性格だから友達出来ないんだって言われたら其れまでだけど……しょうがないじゃない! アタシは“嵐精”! 過ぎたる風と雨を引き連れる精霊なんだもの!
 なによ、なによ、なによ! アンタたちなんか、アタシの雨に打たれて、アタシの風に吹かれて、此処から落っこちちゃえばいいんだわ!
 そうよ! アタシの大切な果物を奪う奴は――余所者は、絶対に許さない!



 瞬く間に黒雲が天を覆う。
 黒い衣をまとった黒髪の女が天につむじ風のように舞い上がると、付き従うように風精霊たちが実体化し、舞い上がり、突風を吹きすさばせた。
 雷がごろごろと唸っている。金髪の雷精たちが何処へ落とそうか、と内緒話をしている。
 水精たちは雨を呼ぶ。其れはぽつり、と誰かの鼻先に落ちたかと思うと――ザア、とあっという間に果樹の森全域に広がった。
「許さない! 許さないわ、アンタたちの事、アタシ許さないから!」
 怒れる黒き淑女は嵐の精霊。
 疎通できずとも判る、精霊たちは何故か実体化して、心得のないものにもはっきり見える。精霊たちをなんとかして鎮めなければ。見境のない怒りの嵐が、レリッカを襲う其の前に――!



★Enemy!★
嵐精x1
 攻撃手段は持ちませんが、1ターンに1体「暴風精、雨水精、轟雷精」のいずれかを召喚します。

暴風精x3(初期)
 風の攻撃(扇)で攻撃してきます。
 神秘攻撃です。

雨水精x2(初期)
 雨を用いて、足止め系列のBSを付与してきます。
 また、傷付いた精霊を癒す事もあります。

轟雷精x2(初期)
 雷を落として、単体の高威力攻撃をしてきます。
 2ターンに1度しか攻撃しませんが非常に強力です。
 神秘攻撃です。


第2章 第2節

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花

「へっ、面白くなってきた!」
 甘い果実を食べられないキドーにしてみれば、団子より花。果実より美人。黒髪を暴風になびかせながらぎろりとイレギュラーズを睨みつける女に興味津々であった。
「あらあら、ここは精霊の住処だったのね」
 フルールは特に別嬪さんに興味がある訳ではないが、これは困った、と頬に手を当てて首を傾げた。それにしてもはっきり見えるわ、と不思議そうに。
「ここは初めてだから、そういう事には全然気付かなかったの。ごめんなさいね?」
「謝って済むと思ってるの!? アタシの果実をパクパクパクパク食べちゃって!」
「よう、黒髪が綺麗なお嬢さん! それから付き添いの皆々様! 断りもなく押しかけて果実を食いまくった奴らがいるのは謝るが、そっちのお嬢さんの言う通り、俺達はどうにも勝手が判らなかったもんでね。だからまずお話しようじゃあねェか。あんたが気分良く納得できるまで、新しい友人として」

 まあ、俺はお友達以上の関係になるのを期待してるけどさ! ガハハ!

「なっ……なっ……不用意に踏み込んできて、アタシの果実を取った上におハナシしようですって!? 貴方、どういう神経してるの!?」
「おっと、貴方なんて他人行儀はナシだぜ。俺ぁキドーってんだ。さんとかくんとかは要らないぜ。あんたの名前は何てぇの?」
「……名前?」
 問われて、黒髪の嵐精はきょとんと黒い瞳を瞬かせた。そんな単語初めて聞いた、というように。
「……あ。 キドー、この人はもしかしたら果実と同じかもしれないわ」
 フルールが其の表情を見て、思い当たったように言う。
「果実と?」
「ええ。名前なんてないんじゃないかしら。嵐と言えば彼女だから、名付ける必要がなかった存在。――ねえ、どうやったら怒りを鎮めてくれるのかしら? 私は精霊は大好きよ。だから、仲良くしたいの。私の傍にも、ほら」
 フルールが横を見れば、ひゅるり、と風精霊が舞う。暴風精とは違い、穏やかな風を二人に運んでくれる。
「みんな優しい子よ。ちょっと困った子もいるけど……仲良しだから、こうして融合も出来るの。私とも友達になってくれる? そうしたら、貴方だけの名前をプレゼントしたいわ。オラージュなんてどう?」
「オラージュ! いいね、素晴らしい。取り敢えずの呼び名として其れでも良いかい、お嬢さん?」
「……フン! 好きに呼べば良いわ。村のニンゲンは私の事を嵐って呼んでたけど、別にどうでも良いもの! で!? 戯言は其れで終わり!?」
「……だよなあ。俺も何もしないのも性に合わねェ」
「戦うの?」
「嫌ならあんたは去っても良いんだぜ、美人さん」
 フルールは少し考えて、いいえ、と頭を振った。
「私も戦うわ。そうしたらきっと、オラージュの気が済むかもしれないもの」

成否

成功


第2章 第3節

雨紅(p3p008287)
愛星
レオナ(p3p010430)
不退転
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合

「成る程。嵐に雷、水、風――この浮遊島には精霊が多いようですね」
 雨紅は静かに思考する。
 ――先日見せて頂いた楽器は、恐らく祭事などで使われていたもの。精霊たちに捧げるものだったのでしょうか。
 フーガが頬を掻きながら呟いた。
「荒々しいけど、神秘的な存在と戦うってなんだか抵抗があるな……」
「かといってなすがままにされる訳にはいきません。下手をすれば果樹を折られてしまう可能性もあります」
「そうだな。然し、何を以てあのような思考に至ったのかは把握しきれぬが……敵意を向けられるのであれば、戦に臨むのみ」
 レオナが武器を構える。怒れる嵐精は怒りのままに、雨水精を一人呼び出した。
「溺れてしまいなさいッ! そしてアタシたちに縋るのよ、助けて下さいって!」
「生憎と、そうは成らぬ」
 レオナも雨紅も、狙いは雨水精だ。
 長剣を構えると、レオナは一気に接敵する。雨水精はどこか獰猛な笑みを浮かべて、ふう、と霧を掌から吹きかけた。其れはレオナと雨紅の足を止めようとするが、
「させねえ……!」
 フーガが後方から支援している。リュートを鳴らし、奏でるは甘く切ないバラード。友軍に不調を乗り越える力を与え、レオナと雨紅は雨水精に斬りかかった。
 レオナの剣が、縦横無尽に斬りかかる。其れは残像が質量を持つかのよう。十重二十重に斬撃を受けて、ばしゃん! と雨水精は水となって霧散した。其れは死ではなく、単に戦場から離脱しただけのようだ。
 雨紅も、まるで精霊に捧ぐ舞を踊るように戦う。嵐精を狙わないのは、彼女に見て欲しいから。計算され尽くした戦場の中、死角から雨水精を狙って放つ一撃。
 ばしゃん! と暴風雨の中、旋律と水の跳ねる音が踊る。レオナが剣と盾を用いた一撃で精霊をしたたかに打ち――雨水精がみるみる減って行くのを見て、嵐精は唇を噛んだ。
「なによ……! まるでアタシたちが悪者みたいじゃない! 突然入り込んできたのはアンタたちの癖に! 許さない、絶対許さない――!!」
 暴風精たちが其れに応え、風の一撃をレオナと雨紅へ見舞うけれども、フーガの奏でる旋律によって傷は癒えていく。其れがますますに嵐精の怒りを買った。

「……悪者っていうか、俺達は噛まれそうなのを防いでいるだけなんだけどな」
 リュートを鳴らす合間、フーガは呆れたように呟いた。

成否

成功


第2章 第4節

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃

「許さない、か……この地に立ち入った事か、果実を食べた事か」
 ごめんなさいしても収まりそうにないね、と、ヨゾラは隣のイグナートを見た。
「そうだね。お互いにイロイロと言いたい事はありそうだけど、まあ、この際だ! イロイロは置いておいて騒ぐとしようか!」
 例え嵐の精でも、オレたちイレギュラーズは嵐の海さえ超えてみせた陽気な連中だからね!
 イグナートは構えて、一気に暴風精へと接敵した。己を闘争心で強化して、暴風を厭わず精霊を殴り飛ばす。女性の形をしていようが関係ない、己に挑んでくるならば、其れは殴るべき敵なのだ!
 ヨゾラもイグナートを援護するように、閃光で精霊たちを攻撃する。
「瞬く光よ!」

 ――荒ぶる精霊に制裁を!

 閃光は嵐精を傷付けて、眩く輝く。
 嵐精は雨水から精霊を一人呼び出すと、己を癒すように指示する。
「許さないわ! アタシの果実を取るだけじゃなく、アタシを傷付けるなんて!」
 癒しの雫で傷をある程度癒した嵐精が、怒りの声をあげる。
「果実を取ったのはごめんなさいで済むけど、……でもこの先、森に立ち入る事も果実を食べる事も禁止はできないだろうし、話し合うためにもまずは静まって貰うしかない!」
「そうだね! そうして静まったら呑もう! 悩みなんてものは酒を呑んで一度忘れて、思い出した頃に改めて考えるくらいで丁度イイんだよ!」
「気楽だなあ」
 イグナートの言葉に、思わず笑みがこぼれる。
 でも、其れくらいで良いのかもしれない。あんまり深く考えず、嵐精の気が済むまで殴り合って、其れで、盃を交わして――
 敵陣に斬り込んだイグナートを倒れさせない為に、ヨゾラは癒しを紡ぐ。彼が倒れては話にならない。絶対に倒れさせない、と心中で誓う。

成否

成功


第2章 第5節

只野・黒子(p3p008597)
群鱗
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に

「説得したいけど、聞いてくれるような状態じゃないな」
 飛呂は嵐精の怒れる様子に呟いた。
「一応話してはみるっスけど、……期待しないで下さいっス」
 美咲が言う。声を掛けて聞きたい事があるのだと。
「判りました。私は敵を引き付けます。狙いは一つになった方が、相手の動きは予測しやすいでしょう」
 黒子が前に出る。
 飛呂は逆に後ろに下がって、遠距離から轟雷精を狙う。

「あの~」
「……なによ!」
 美咲が恐る恐る、嵐精に声を掛けた。
「私も学生時代、ソロで飯を食ってたタイプなんで……ここでなんですが、許してくれませんかね?」
「……はぁ? ガクセイ? 何言ってンのよアンタ」
「いや、正直、アンタが考えている以上にアンタは重要人物だと思うんスよ。なので嫌われたくないっていうか……なんせ、レリッカの外に住む言葉を交わせる存在。其の上、アンタとこの果樹園っていつから存在しているんスかね? 私たちには第一次調査隊が来る以前の情報が不足してるんスよ」
 そういう訳で、こちらとしては情報源としてアンタが必要なんス。
 美咲が言うと、嵐精は少し黙した。
 暴風が吹きすさび、黒子を狙う。飛呂の狙撃によって撃ち抜かれ、無数の雷鳴となって轟雷精が四散する。
 其の中で嵐精と美咲は、静かに確かに向き合っていた。
「……別に、アタシ以外にも捜せばいるわよ。昔から住んでて、アタシみたいに話せる精霊なんて」
「でも、今のところはアンタしかいないんスよ」
「アタシは話すつもりはないわよ。というか、話すような大した事なんてないわ。ある日ニンゲンが落ちて来て、村を作って、子どもたちがたまにアタシの果樹園に入るようになって……其れくらいじゃない?」
「はあ~……じゃあこんなに精霊がはっきり見えるのは此処では普通なんスか?」
 美咲がじり、と距離を詰める。
 嵐精は其れに気付かず、思い出すように視線を逸らした。
「さあ……アタシは寧ろ、下の世界を知らないし。寧ろ下の“アタシ達”ってどうなってる訳?」
「少なくとも、――アンタみたいにはっきりと意志を持っているかは判らない、っスね!」
「……え!?」
 雨水精はもういない。
 轟雷精は飛呂に撃ち抜かれ。
 暴風精は黒子に首ったけ。
 その今なら、嵐精を狙える。美咲は其の隙に一気に距離を詰めて、一撃、二撃、撃ち込んだ。
「きゃあ!」
「不意打ちじみてて良心が痛むっスけど……!」
 そうして、結束バンドでぐるり、と嵐精の手首を縛った。こんなものが効く訳ないと判ってはいたが、嵐精に対する“私たちの勝ち”を示すには丁度良いかと思ったのだ。

「……」

 嵐精は実体化を解いて、結束バンドを地に落としてから見せつけるように手首をさすり。

「……はーーーーー……」

 長い長い溜息を吐いた。

「はいはい、アタシの負けよ。好きなだけ果実取って行けば!?」
「……え?」

 イレギュラーズたちは顔を見合わせた。
 もしかしてだけど、とんでもない勘違いが起きているのでは?

成否

成功


第2章 第6節

 嵐精霊は唖然としていた。

「え、じゃあ、つまり、アンタ達は調査の為に踏み入っただけで……必要最小限の果物だけ採取して帰るつもりで……侵入者だけど、森を切り倒したりするつもりでも……」

 なかった、と。
 風雨が落ち着いたころ、イレギュラーズの説明を聞いた嵐精は少し黙して。みるみるうちに顔を真っ赤にして、

「なによそれーーーーー!!!! 聞いてなーーーーーーーい!!!」
「まあまあ! ほら、さっきも言ったけど飲もう! 呑んで忘れよう!」
「五月蠅いわよ!! 呑まないわよお酒なんて!!」

 アーカーシュ全土に響き渡らんばかりの大音声が響き渡ったのでした。

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