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シナリオ詳細

<13th retaliation>まどろむよるの三眼呪霊

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●呪霊
 深い森の中、咲く一輪の花があった。
 風に揺れるか一日に数時間程度の日を浴びるかという生き方をしていた花が、ズンと踏み潰される。
 人の体躯の倍はあろうかというそれは、ピンクと緑と紫を混ぜ合わせたような奇妙な色をし、どこかぶよぶよと形を揺らがせている。
 だがやがてその全身は人間のそれに近く定まり、しかし顔面だけがぎょろりとした三つの目と裂けたような大きな口に定まる。
 それは『呪霊』と呼ばれる、ひとびとの霊魂を奪い呪術によって変容してしまった怪物である。
「――!」
 ゴオウとヒグマのように呪霊が吠えると同時に、彼の後方から走り抜けていく無数の呪霊たち。彼らの体躯は人と変わらないとはいえ、腕を大鎌のように変形させたり頭を巨大な狼のそれに変えたりと凶悪な外見へ変化しながら走って行く。
 対するは――。
「紅牙忍術十三代目継承者――」
 如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の腕に装着していた濡羽色の絡繰手甲からジャキンと小太刀の刀身が伸び、先陣を切った両手五指全てをナイフに変形させた呪霊の斬撃を払う。舞うように相手の懐を抜け脇腹を切り裂いた後、素早くくみ変わった絡繰手甲から腐り分銅が伸び、なぎ払う動きで前方二体を強引にどかす。自動式ホルダーから飛び出た十字手裏剣を掴み投擲しつつ絡繰手甲を日本刀型に変形させると、両手で握り手裏剣の刺さった呪霊を袈裟斬りに切断した。
 ギャアという叫びをあげて消滅する呪霊。解放された呪術から霊魂が抜け出し、もとの持ち主の元へと帰って行くのが直感で分かった。
「深緑の民を眠らせるのみならず、魂までもをとらえ怪物に変えるとは……『常夜の王子』ゲーラス。赦しておけぬでござる」

 時は現代深緑の奥。ファルカウのふもとにあるというアンテローゼ大聖堂を、ローレット・イレギュラーズたちは奪還した。
 深緑じゅうが呪いの茨に覆われ民達が謎の眠りに落ちてしまったという事件の解決のためだが、当然その黒幕たち……これから戦うべき敵たちとの邂逅でもまたあった。
 咲耶たちが出会ったのはそのうちの一人、『常夜の王子』ゲーラスという鎧の形をした呪物である。あまり後からに精鋭チームですら全滅しかける事態に陥ったが、仲間達の(そして咲耶自身の)活躍によってゲーラスを退けるに至る。
 だが彼らの侵攻が完全に終わったわけではなかった。
 この拠点から動かさぬためか、あるいは拠点を奪い返すためか、散発的に敵が現れ大聖堂への襲撃をしかけていたのだ。
 今回森に現れた呪霊の一団もそのひとつである。
「あれからも警戒と迎撃を行っていたでござるが、今回の一団はチームであたらねば危険でござるよ」
 咲耶が説明したのは呪霊の中でも強力な個体『三眼呪霊』が率いる一団であった。
「この一団には【まどろみ】の力が込められていたでござる。以前ゲーラスが用いた奇妙な異常状態でござるな」
 完璧すぎるほど完璧な異常状態対策をした仲間でさえクラリときてしまうような、回避不能なバッドステータスが【まどろみ】である。未知のものであったため、咲耶たちが名付けたそれは今回の呪霊たちも行使していた。
「『茨咎の呪い』も相まって長期戦は危険。速攻戦を仕掛けるでござる」
 咲耶はそう言うと、治療を終え立ち上がる。
 大聖堂を――ひいては深緑を守るための戦いが、また始まるのだ。

GMコメント

●オーダー
・成功条件:三眼呪霊率いる呪霊の一団を撃退する

 フィールドはファルカウふもと、大聖堂近辺の森内です。
 かなり大量の呪霊が解き放たれ、それを三眼呪霊という特別に強力な個体が指揮しています。
 相手はとにかく手数と頭数で攻めてくるでの、どかどか攻撃して群れを突破し、この三眼呪霊へと挑みましょう。

●呪霊と三眼呪霊
 深緑の民の霊魂が奪われ、呪霊に変えられています。
 これらを倒すことで霊魂は持ち主のもとへ帰りますが、取り逃すとそれだけ持ち主の肉体が衰弱してしまうでしょう。できるかぎり倒していくようにしましょう。

・【まどろみ】
 『常夜の王子』ゲーラスが用いていた未知のバッドステータスです。
 解析によると、こちらの優れたステータスを弱体化させる能力をもつようです。
 防御に優れた者が防御を突破されたり、攻撃命中力に優れた者が攻撃をかわされたりといった現象がおきていました。

・呪霊たちの抵抗突破力
 ゲーラスはかつてこちらの特殊抵抗力を突破してきましたが、呪霊たちまで抵抗を自動失敗させるとは思えません。
 特殊効果でいう【疫病】にあたるものが自動失敗なので、呪霊たちは【鬼道10~20】程度、三眼呪霊は【災厄】程度の突破力をもつと思われます。

●『茨咎の呪い』
 大樹ファルカウを中心に広がっている何らかの呪いです。
 イレギュラーズ軍勢はこの呪いの影響によりターン経過により解除不可の【麻痺系列】BS相応のバッドステータスが付与されます。
(【麻痺系列】BS『相応』のバッドステータスです。麻痺系列『そのもの』ではないですので、麻痺耐性などでは防げません。)
 25ターンが経過した時点で急速に呪いが進行し【100%の確率でそのターンの能動行動が行えなくなる。(受動防御は可能)】となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <13th retaliation>まどろむよるの三眼呪霊完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
駆け出し錬金術師
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
天之空・ミーナ(p3p005003)
紅矢の守護者
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
金枝 繁茂(p3p008917)
夜妖<ヨル>を狩る者
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
輝奪のヘリオドール

リプレイ

●呪霊の波
 ヒグマのように吠える三眼呪霊。
 立ちはだかるように並んだ『黒鋼二刀』クロバ・フユツキ(p3p000145)と『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)は、地面から湧き上がる湯気のように発生した呪霊たちへと構えた。
 相手も相手でこちらの狙いを察しているのだろうか、呪霊達が行く手を阻むようにゆらゆらと人型をとり、そしてその腕をひろげ顔に笑みのような形を作る。
「挑発でもしてるつもりか?」
 『ゼーレトリガー・滅式』のトリガー部分に指をかけ、あえての一刀スタイルで両手を剣の柄にかける。
 ズンと強く踏み込むクロバの気迫に押されたのだろうか。呪霊達が僅かに引くような動作をみせるが構うことなくトリガーを握り込み、クロバは爆発的な魔力を纏って呪霊の一体を切り裂いた。
 そのまま周囲の呪霊たちの首や腕を次々に斬り捨てていく。
 残像が次々と生まれ三人分に分身したかのように見えるクロバ。その上を飛び越える形で紅の翼を広げるミーナ。
 大鎌を振りかぶったミーナに、今度は呪霊の一部が飛びかかる。
 腕を鎌のような形に変えた呪霊が跳躍し斬りかかったが、ミーナは翼を器用に羽ばたかせて回避。大上段からの大ぶりな斬撃が失敗した呪霊はそのままつんのめるような姿勢になった。ミーナはそれを踏み台にして更に飛ぶと、ザワッと驚いた様子を見せる呪霊たちめがけて鎌を派手に振り込んだ。
 紅蓮の氷塊が無数に生まれ、一瞬でナイフのように研がれたそれらが呪霊たちへと降り注ぐ。
(やーれやれ。久方ぶりに来てみれば、また新しい問題抱えてんのな。あっちでこっちで……こんだけ同時に発生するもんかねぇ?)
「深緑の土地を踏み荒らすだけではなく霊魂を呪霊に変えると来たか……。
 ――死者の魂を冒涜するお前らを許すわけにはいかないな。”死神”クロバ・フユツキ、お前らを駆逐する!」
 さらなる圧倒。
 呪霊たちの個体戦闘能力では歯が立たないとわかったようで、三眼呪霊はガチリと歯がみする表情を作ると再び吠えた。
 左右から湧き上がるやや大型の呪霊たち。
 ひとつは全身の溶けかかった5mほどの巨人呪霊。
 もうひとつは人の形を維持できず巨大な顔面となった呪霊だ。
 顔面呪霊が口を開き、呪力を圧縮させた砲撃を放ってきた。カースビームとでもいうべきそれを、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は防御しながら反撃にかかる。
(呪霊の大量発生か……茨咎の呪いも合わさり、呪いが満ちているな……息苦しい……少しでも呪いを減らさないと、深緑に取り残された妖精を探す行動にも支障が出るな……。
 それに呪霊の元が深緑の民なら救っとかないとな…もしかしたら妖精と親しい人がいるかもしれないし)
 防御直後のサイズへ無数の呪霊がとびかかるが、H・ブランディッシュを繰り出すサイズによって一瞬でなぎ払われた。
 そんなサイズの後ろで守られるようにして立つ『特異運命座標』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)。
 まどろみから目覚めるかのように、閉じていた目をうっすらと開くと己の力を解放し始める。
(こんなものが…これが深緑の人達の魂だなんて。
 でもよかった。倒すことで返してあげられるなら。
 私は、私の知らない私の…この冷たさに頼るまでです。
 戦いの中で不思議と冷静になれる、失った記憶の私……お願いしますよ)
 マリエッタの力がサイズへと流れ込み、サイズの握っていた鎌(あるいは本体と言うべきか)についた細かな傷や呪力による染みが消えていく。
「【まどろみ】……あまり無視して良い状態ではなさそうですね」
 サイズの受けた状態を観察するかぎり、能力が全体的に低下しているように見える。優れた能力であればあるほど弱体化をうけるのだろうか。であれば、どれだけ早急に治癒できるかが勝敗に大きく影響しそうだ。
 そうしている間に巨人呪霊が突進を仕掛けてくる。
 対抗したのは仲間達の中でも特に線の細い『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)であった。
 ゆらりと巨人呪霊の前へ躍り出ると、微笑を浮かべて片手を翳す。
 挑発的なしぐさに巨人呪霊が思い切り殴りかかる――が、あろうことかサルヴェナーズは抵抗すらしなかった。
 ドブンという奇妙な音をたててはじけ飛ぶサルヴェナーズ。
 泥沼を踏み潰したかのように、あるいは泥のつまった水風船を破裂させたかのように周囲へ散っていく泥……が、ひとりでに動いて再び人の形を取ったかと思うとサルヴェナーズが再生成された。
「人の形を真似ただけの呪い……まるで私と同じですね」
 サルヴェナーズの笑みが苦笑のそれに変わり、巨人呪霊は自らの拳が潰れていることに気付いてぎょっとした反応をした。
「聖域であったはずの場所が穢れていくのは、見るに耐えません。
 きっとあなたも、誰かの聖なる願いや祈りであったはずなのでしょうに……」
 悲しげに呟き、巨人呪霊へ歩み寄るサルヴェナーズ。
 無抵抗に弾き飛ばされた存在が一歩ふみこんだだけなのに、巨人呪霊は畏怖を抱いたかのように一歩後退する。
 『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)はその隙を全力でついた。
 ついたというよりは――。
「深緑の同胞達の魂がこんな姿になってしまうなんて……許せません!」
 両手に握ったガンエッジ。トリガーを引いて破裂音と同時に魔力を爆発させたハンナは紅蓮の魔力を刀身に纏わせ、二刀同時に巨人呪霊へと繰り出した。
 咄嗟に防御の姿勢をとった巨人呪霊だが、クロスした腕をハンナの剣はバターのように切り裂いて行く。
 かくして切断され、ばらばらと崩れ溶けていく巨人呪霊の腕。
 ハンナはガンエッジをそれぞれ翳すように握ると、トリガーを連続で引きまくる。
 全弾を撃ち尽くした形になった刃には激しい魔力の光が溢れ、巨大化し一つに合わさった刀身が巨人呪霊を今度は左右真っ二つに切断されて崩れ去った。
「今すぐ元凶に剣を突き立てたいところですが、ここにはいない者の事より、まずは目の前の呪霊からですね。一つでも多くの魂を解放出来るように!」
 そんなハンナを狙う顔面呪霊。口がさけるほど大きく開くとハンナを飲み込もうと飛びかかる。
 が、それを阻むように突っ込んだのが『神威雲雀』金枝 繁茂(p3p008917)だった。
 跳躍しタックルでも浴びせるかのようなフォームで顔面呪霊の口内に自ら飛び込んだ繁茂。
 ばくんと口を閉じる顔面呪霊だが、繁茂は大鎌を振り抜く姿勢で顔面呪霊の後ろ側から飛び出した。
 必殺の一撃で殺し損ねたことに瞠目する顔面呪霊。
 が、次の攻撃に移ることは出来なかった。
「お主もまたゲーラスの呪いに囚われし者。安心せよ、今すぐ苦しみから解放するでござる」
 『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の声がしたかと思うと鎖鎌が顔面呪霊を貫き、先端の鎌がガギンと音を立てて四方に広がるフックへ変化したかと思うと顔面呪霊をロック。
 咲耶はハンマー投げでもするかのように顔面呪霊を強引に振り回すと、フックを解除してぶん投げた。
 大聖堂の壁に激突しはじけ飛ぶ顔面呪霊。
「呪霊はここにいる者以外にも大勢いる筈。早く救ってあげたいのは山々でござるが、その為にも今拙者達が出来る事から初めてゆこう。
 では深緑の民を救う為に十三代目・紅牙斬九郎、いざ参る」
 絡繰手甲・妙法鴉羽『宿儺』を変形させ刀モードにした咲耶が構えると、三眼呪霊が吠えながら突進を仕掛けてきた。
 間に割り込み、鎌で防御をかける繁茂。
「霊魂を閉じ込めた黒鎧と戦いましたが、霊魂を呪霊に転じさせるとは……。
 あるべき姿を歪め駒のように扱うなど見過ごす事はできません。
 最期に救いを願った者として責務を果たしましょう」
 きりりと目を光らせ、三眼呪霊と至近距離でにらみ合う。
 すると――三眼呪霊は胸部に大きな口を作ったかと思うとそれを開き、呪力を圧縮したカースビームを零距離放射した。

●三眼呪霊と掃討戦
 カースビームをまともにくらい、吹き飛ぶ繁茂。
「あまり長く抑えておける相手ではなさそうですね。火力は治癒力でカバーできるとはいえ、一分半が限度です」
「充分だ。全力で行く」
 クロバはここぞとばかりに鬼哭・紅葉を抜くと魔力を爆発させ高速移動を開始。
 ハッとして振り返った三眼呪霊は腕を剣にしてクロバの攻撃を弾くが、弾けたのは一発だけだ。更に何発もの斬撃が連続でたたき込まれ、三眼呪霊の肉体が確実に削られていく。
「幸い、火力に大きく振り切った仲間が多いですからね。短期決戦は得意です!」
 続いてハンナがガンエッジのリボルバー式弾倉を開きながら手首を返すように振り、空薬莢を勢いよく吹き飛ばす。飛ばした瞬間すかさずスピードローダーを押し込んで高速リロードをはかると、すぐにトリガーを引きまくってフルチャージ状態とした。
 魔力で作られたハンナの幻影が全員全く別の方向に飛び三眼呪霊を取り囲むと、一斉に魔力を爆発させた剣で斬りかかる。
 最後はガンブレードの魔力を炸裂させたクロバとガンエッジの魔力を解放させたハンナによるクロススラッシュによって三眼呪霊を切り裂き……三眼呪霊は膝からがくりと崩れ落ちた。
「知ってはいたが……まじかで見ると凄まじいな」
 ミーナはやれやれと息をつくと、残る呪霊たちへと向き直る。
「一気に行くぞ。集まれ」
 ミーナが呼びかけると、マリエッタやサイズたちが集まってくる。
 皆【まどろみ】の効果を受けて弱体化しているが、ミーナが紅蓮のエネルギーを解放することで仲間達にかかっていた呪いが切り裂かれ、【まどろみ】から解放された。
 潮目が変わったと察したのだろう。周囲の呪霊達が一斉に撤退モードへと転じた。
「逃がすか!」
 四つ脚状態となり逃げ出す呪霊を、サイズが追いかけて道具術を放つ。
 短剣が連続で刺さり崩れ落ちる呪霊。
 そこへマリエッタから伸びた冷酷な影が絡みついた。
(それにしてもこれを使うと不思議と力が戻るように感じるのは…失った記憶の私でしょうか、本当に何者だったんでしょうね)
 何かを思いながら、翳した手でぎゅっと握る動作をするマリエッタ。
 絡みついた影が呪霊を締め付け、そして握りつぶすように破壊する。
「素早く三眼呪霊を倒したことで、ここからは掃討戦に変わった……ということですか」
 繁茂はそれまでの防御スタイルを一旦やめ、逃げだす呪霊たちを追いかけ始めた。
 いや、追いかけるというのは正確ではない。呪霊たちの意識を自らに引きつけ、数匹を集めるかたちで自分へと引き寄せる。
 怒りに身を任せ、呪霊達が獣のように繁茂めがけて食らいつくが……。
「頼みます。私ごとやってもらって構いません」
 全身に奇怪な怪物たちが食らいついた状態のまま振り向くと、ミーナが『マジか』という顔で鎌を返した。
「ま、呪霊よりもいくらかタフならやる価値はあるか」
 みすみす逃がすよりは良さそうだ。ミーナは再び紅の氷塊を無数に作り出すと、繁茂を巻き込む形でぶっ放した。
 食らいついていた呪霊たちもろとも直撃し、最後に残ったのはキュッとネクタイを直す繁茂だけだ。
 ミーナはさらなる追撃を仕掛けよう――とした所で呪霊の一体が巨大な虎の形をとって反撃を開始。
 サルヴェナーズがここぞとばかりに巨虎呪霊の前へ躍り出ると、その爪による打撃を身体で受けた。ずぶりとめり込む爪。それによって身体を固定した巨虎呪霊が鋭い牙で食らいつく。サルヴェナーズの口からどぷりと黒い血のようなものが漏れ出た。
「対策が早いですね。ですが……其方の『詰み』です。後は、お願いします」
 最後の台詞は敵に対して述べたものではない。
 絡繰手甲を刀モードにして襲いかかった咲耶に対するものである。
 咲耶はあろうことか呪霊の下へと身をかがめて滑り込むと、巨虎呪霊の腹に刀を突き立て、そのまま身に沿って切り裂いていく。
 両足と片手をつかって強引に駆け抜けた咲耶はそのままごろんと転がって巨虎呪霊の下から離脱する。

 崩れ落ちた巨虎呪霊から霊魂が解放され、どこかへ飛んでいくのが咲耶にもわかった。
「被害者を囚え呪霊に変える……何度見ても悍ましい呪いでござる。『夜の王子』ゲーラス、奴とはいずれ決着を着けなければならぬでござるな」
 あらためて周りを見てみると、残った呪霊の姿はない。
 皆倒したか、あるいは取り逃したか。
 戦闘の中で多少の汚れがついてしまったからか、マリエッタがぱたぱたと服をはたく。
「どうやら、無事に終わったようですね」
「ああ、倒した呪霊に捕らわれていた霊魂も、持ち主のもとへ帰っただろう」
 サイズも戦闘が終わったことを実感してか小さな形へと戻っている。
 戦ってみてわかったが、ゲーラスの作り出した呪霊はなかなか厄介だ。
 今回はこちらの持ち味をフルに活かせたからよかったが、【まどろみ】によって個性を殺された上に数で押し込まれたならこちらの損害が40%を割っていたかもしれない。
「すまない、死神と言っておきながら送ってやるくらいしかできなかった……」
 『このツケはいずれ、清算させてやる』とゲーラスに強い想いを抱きつつ、剣を鞘に収めるクロバ。
「今回は逃げられた呪霊も、次は絶対に解放してみせますからね」
 ハンナも同じように剣を収め、そして仲間達の様子を見た。
 多少の損害はあったが、無事にのりきっているらしい。
「今回は私達の攻撃が綺麗に三眼呪霊に入りましたが……周囲の呪霊に庇われていたらマズかったですね。相手は頭数を活かして長期戦に持ち込むこともできたでしょうし」
「そうしなかったのは、連中にとってこっちの戦闘力が未知だったからだろう」
 ミーナは腕組みをして、『次があるなら少し危ないな』と呟いた。
 こちらが一度経験した【まどろみ】に対策したように、こちらのメンバーの戦い方を覚えた連中が再び戦う際に対策を講じてきたら厄介だ。
「でしょう、ね。けれど対策をとられたとしても、まだまだやれることはあります」
 ゲーラスが非常に慎重にこちらと戦っていたことを記録から知っていたサルヴェナーズは、再び戦う際にはこちらも相応の戦い方をしなければ足元をすくわれるだとう……と考えていた。
 『相手の狙いを外すこと』や『相手の強みを殺すこと』など造作も無い。であれば、相手がこちらと同等の戦術レベルを持っていた場合同じことをしてくる筈なのだ。
 そういうとき、奥の手をどれだけ使えるかが……あるいは『どれだけ準備したか』が勝負をわけることになるだろう。
「その時は、必ず……」
 繁茂はそれ以上言わず、大聖堂へと戻っていった。
 やるべきことは山のようにあるのだ。今も、これからも。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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