シナリオ詳細
<覇竜侵食>破滅の音、響いて
オープニング
●破滅の足音
亜竜集落イルナーク。
三大集落に迫る規模を誇っていたイルナークはしかし、あっさりと滅びた。
死してなお強大な威圧を放つサンダードレイクの骨と岩山をくり抜いた硬い岩盤による強固な守り。
およそ滅びる要素がなかったはずのイルナークは、地下を掘り進めてきたアダマンアントの群れの前に滅びた。
恐ろしいことであった。
誰も油断せず、何処にも綻びはなく。
それでも、イルナークは滅びたのだ。
イレギュラーズによるイルナークからアダマンアントの巣への決死の潜入は、その地下帝国の強大さを広く伝える事になった。
地上へ出てきたアダマンアントによる、度重なる亜竜やモンスターへの襲撃事件も従来のアダマンアントの常識を塗り替える素早さであり……しかし、それをもイレギュラーズは撃退した。
かなりの数のアダマンアントを撃退し……だからこそ、その損害故にアダマンアントはしばらく作戦の立て直しを余儀なくされる……と誰もが思っていた。
だが、そうではなかった。
アダマンアントは……アダマンアントクイーンは、もっと合理的な判断をしていた。
「お、おいアレ……」
「アリか? なんでこんな所に。おい、避難の準備を」
もっと弱く、簡単で。質はそれなりでも数が確保できる食糧がある。
たとえ妨害者が出てきても、モンスターや亜竜と違い共闘など出来そうにない連中。
「に、逃げろー!」
「うわああああ!」
亜竜種の小集落。
それを襲い、妨害者諸共「食糧」にしてしまえと。
その合理的にして凄惨なる作戦は……同時多発的に発生していたのだ。
●小集落を守れ
「皆、話は聞いてると思う」
そう切り出す静李に集まった面々は頷くが……ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は、その背後で「ほあー」と目を回しながら倒れている【鉄心竜】黒鉄・奏音 (p3n000248)と、その奏音をベッドにしてすうすう寝ている棕梠に視線を向ける。
「……静李。アレはどうしたんだ?」
「アレはいいんだ。情報量が多すぎてショートした修行バカと、おねむの時間の昼寝バカだ」
「そ、そうか」
今にでも舌打ちしそうな静李ではあるが、どうにも気兼ねない関係に思えたのでベネディクトはそれ以上の言及をやめる。実際、どうにも友人関係ではあるらしい。
「話を戻そう。今、アダマンアントによる小集落への襲撃があちこちで発生しているんだ」
既に一部の集落では備蓄が奪われ、一般人たちも一部は生きたまま連れ去られているようだ。
「どうにか出来ないのかな? 巣の場所は分かってるよね?」
「難しいだろう。連中もそれは織り込み済のはずだ。万全の迎撃態勢が敷かれてる可能性だってある」
笹木 花丸(p3p008689)に、静李はそう首を横に振る。
すでに襲われた集落をどうにかするのは難しいだろう。
輸送中を襲撃する手もあるが……それとて、巣に運ばれてからでは困難だ。
だが、これから狙われる集落をどうにかすることはできる。
「襲われる集落の情報は揃ってるの?」
「ああ、問題ない。目的地までのルートは算出済でもある」
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)に静李は答え、地図を差し出す。
「この通りのルートで行けば、さしたる問題もなく辿り着けるはずだ」
「あれ。このルートはもしかして……」
地図をイーリンと共に見ていたリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が何かに気付いたように声をくあげる。
「あ、イルナークが近くにあるのです」
クーア・ミューゼル(p3p003529)もそう呟いて。静李も頷いてみせる。
「そうだ。イルナークから比較的近い場所にある小集落メイレン。それがアダマンアントが狙っていると想定される場所だ」
すでに、メイレンから他の集落にお遣いに行っていたエレンという少女が行方不明になっている。
恐らくは……もう彼女を助け出すには遅いだろう。
だが、メイレンを守ることはできるはずだ。
「今回の防衛に失敗すれば、何かとんでもなく恐ろしい事が起こる……そんな気がする。なんとしても防いでほしい」
静李がそこまで言った後……寝ていた棕梠がパチリと目を開ける。
「……集落の近くにカトブレパスというモンスターの縄張りがあるの。上手く使えれば、かなり役立つはずだわ」
なるほど、アダマンアントの数次第では……そうすることで、かなり難度が変化するはずだ。
諸刃の剣とはいうが……それを使いこなしてこそ、世界の危機というものは救えるのだろうから。
- <覇竜侵食>破滅の音、響いて完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年05月02日 22時06分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●避難開始
「メイレンに降り立った、孤独なsilhouette……それは、そう\儂じゃ!/ローレットとして初依頼に挑戦じゃな! フリアノン三人娘やメイレンの者達は同胞じゃしの〜。もちのロン助けるぞ!」
樹龍(p3p010398)が気合を入れているが……そう、此処は小集落メイレン。
今回アダマンアントに狙われている、その現場だ。
「全く竜でもないというのに、こんな荒野で一体どうやればこうもうじゃうじゃ繁殖できるのやら……」
「普通の虫は大抵石鹸水が効くらしいのであるが、ああでっかいと効果は薄そうなのであるな」
『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)と『うまうま』巫馬・峰風(p3p010411)がそう言い合うが、アダマンアントに関してはこれまで何度も撃退してきている。
その分勢力は削れたはずだが……それを取り戻すべく「手ごろな食糧」を狙ってきたということなのだろう。
それ自体は、不謹慎ではあるが……非常に狙いが良いと言わざるを得ない。
そんな利香は仲間と共にアダマンアントに対抗すべくモンスター「カトブレパス」の元へとやってきていた。
どうやるかは腕の見せ所だが……その間に、戦場となる小集落メイレンでは避難活動が始まっていた。
「奏音、ずいぶんと人を使うのが上手くなったじゃない。なら私もあなたをコキ使わせてもらうからね。失敗したらその尻尾、ひっぱたいてやるから覚悟なさい」
「えー、ボク? ボクじゃなくて静李じゃない?」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)に【鉄心竜】黒鉄・奏音 (p3n000248)が抗議の声をあげる。
しかし残念ながら静李は奏音よりもテキパキと働いている。たぶん地頭の差である。
「ほら、笑って、これから避難する人が不安がるでしょ。今回も、うまくやるわよ」
そう、何故ならば。
「神がそれを望まれる」
事実、イーリンの準備はとても周到であった。
まず、此処に来るまでに通った岩山や土のサンプルを採取。
メイレンの住民の話を聞きながら、此処に来るまでの地図情報と仲間の集めた情報から「一番襲来する可能性が低い岩山の上がどこか」をギフト「インスピレーション」で閃くということに挑戦していた。
アダマンアントが「来ないかもしれない」場所を確定できればそれが避難場所となるだけに、これは実に素晴らしいと言えるだろう。
「避難先では村人にこれに近い泥を体に塗って、息を潜めさせて。体温と匂い、音に気をつけてね」
「ん、分かった」
アダマンアントの感覚を欺くための準備も整える……と用意周到だ。
「メイレン……イルナークの近くである以上、この辺りの地下はほぼほぼアダマンアントの巣が張り巡らされてる可能性を否定できない範囲です」
『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)もそんな懸念を呟くが……事実、それを否定することはできないだろう。
そして、目下の問題はメイレンの住人の保護だが……
「ファミリア等の偵察でアリの来る方角さえ分かれば、という所ですね。判れば、逆の方角であれば凡そ問題は無いと思います……エレンさんが向かっていた方角も、参考になるかもしれません」
言いながら呟くのは、行方不明になったという少女の名前だ。
(判らない場合は……安全な場所の判断が難しいですね。ただ、より地下に近く逃げ場のない洞窟はあまり適してないと思うので、何れにせよ遮蔽物のある場所か周囲の岩山の上が良さそうですが……)
しかし、その問題をイーリンの情報収集とギフトがある程度解決した。
あとは、ファミリアーなどによる偵察だが……こちらは『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が担当していた。
空に小鳥のファミリアーを偵察として出し、周囲の地形の把握も行いながら蟻達が接近して来ていないかどうかを偵察、何かが解れば仲間に知らせる様にしていたが……それで分かったのは、アダマンアントの進軍方向だった。
そしてそれは、決定した避難方向が間違っていないことをベネディクトに告げていた。
(やはり通常の個体は兎も角アダマンアントクイーンについては状況を考え、動くだけの知性がある。出て来た所は叩いて来ているが、次はどの様に動くのか……そう考えると、不気味な相手だな)
ベネディクトも覇竜での経験を積んできたが、知性を、そして戦術を持つ相手程厄介なものはない。
アダマンアントがそれであることは、もはや疑いようもない。
イレギュラーズという妨害者がいることを理解した上で、このような手を打ってきたのだから。
「……いや、先ずは目の前の状況を何とかする所からか。俺達は余所者だ。その分奏音達には集落の皆を安心させる為に避難の誘導や声掛けをしてやって欲しい。頼めるだろうか?」
「おっけー、(静李が)分かったよ!」
「俺達も無論、全力は尽くすが中には信じきれぬ者も居るかも知れん」
「奏音だからな? 言われたのは」
静李が奏音の脇を突くが……そのいつも通りな様子にベネディクトは笑い、住民達にも視線を向ける。
「言葉だけでは足りぬかも知れんが、どうか俺達を信じて欲しい」
そう、状況の説明は済み……これからまさに避難が始まろうとしていた。
その指揮は『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)、『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)が行っていた。
「コャー。これはどういう状況なのかしら~」
「今迄のアダマントアントの撃退である程度数を減らせたって思ったけど、今回の襲撃を見ると……違うか」
「兵糧攻めが効いてきて焦れたアリさんが一斉攻勢に出ているのならば、これを凌げば反撃の機会ができそうなものだけれども。事情はどうあれしっかり守るのよ」
「……つまり、上がちゃんと考える頭を持っているって事だよね。だからって敵の思い通りに何てさせやしない。これ以上の犠牲者を出さない為にも守ってみせるよ、絶対にっ!」
これまで集めた情報から、花丸は誘導するべき場所については確定させていた。
そして、あとは説得だが……これは胡桃が頑張った。
「洞窟はアリさんが岩を掘ってくるので利点を活かしづらいの。そこで、わたし達としては岩山を登って避難するのをオススメしたいの。防衛用の備えとか土地勘とかもあるので、あくまでご相談という形になるのだけれども」
そんな切り出しから始まり、花丸たちをも含め見事に説得しきったのだ。
そうしてギフト「炎狐招来」による炎狐を先行させつつ、超聴力も使って地面を掘る音が聞こえないか、など警戒を深めていた。
(ワイバーン空輸ができなくても、アリさんの奇襲を防ぎさえすれば後は警戒したり岩山の岩にテコ入れて即席迎撃陣にできないか試したりとかする時間はありそうなの)
風向きや匂い消しなどの対策も実施していたが……。
「ありんこは振動や匂いに敏感……なるほど。洗ってない着古しの衣類とかあると囮にできたりなんてコトは……?」
その対策に峰風は感心しながらもカッと目を見開く。
「いやじゃ脱ぎとうない! そこらへんから調達できたらの話なのであるぞ! んん、ヒトの匂いではなくもっといい匂い? お菓子の臭いはみりょくてきなのである、わかるのであるぞ……」
本当に分かっているかは不明だ。実は分かっているかもしれない。どうだろう……さておいて。
「ふっ……避難の最中はいつアリが来るか分からん。儂はワイバーンやカトプレパスを手懐けられんから、警戒役に尽力じゃ! ハイセンスな儂の聴力、視力、嗅覚へ全集中の呼吸! 更に植物……雑草やら原っぱの声を聞いて、アリが来る方角や不意を警戒するぞ! もちろん補足したら仲間に報告連絡相談じゃ!」
何やらカッコつけながらもやるべきことをやっている樹龍は実に出来る子だ。
「こっちは私達に任せて3人は皆をお願い! 棕梠さんも頼んだよ。やろう、今の私達に出来る事を精一杯っ!」
「……ん。任せて」
花丸の声に棕梠も応え、頷く。避難の準備は完了しつつある。
「危ない時は叫んで助けを求めてくださいね?」
利香もアニキカゼを吹かせ格好つけるが……そんな利香に避難する住民達も頷きを返す。
此処は、これでいい。あとは……カトブレパス誘導班の成果次第であった。
●防衛戦、開始
多少、時間は巻き戻って。
『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)と『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)の2人は、カトブレパスの住み家近くにやってきていた。
「あのアリがここまで大規模な作戦が立てられるとは。もしかしなくても既に相当な大軍勢になっているのです……?」
「かもしれませんね! なんかもう一杯倒してるはずですし!」
しにゃこの返答に、クーアも頷く。まあ、それでも倒して撃退してはいるのだ。
総数は減っているはずだが……対応速度の問題であるのかもしれない。
「これはちょっと腰を据えてアリ駆除に奔走しなければならないかもしれません。まずは他人様の住処に攻め入ってくるアリ共の殲滅からなのです!」
「あ! 見えてきましたよカトブレパス!」
巨大なバッファローのようなその姿は、まさに事前に聞いた通りのカトブレパスだ。
気だるそうにしているカトブレパスに近づくと……しにゃこは、動物疎通の力も使い語り掛ける。
「猿でも解る動物語って本で勉強してきたんでいけます!」
言いながらしにゃこは両手に蜂蜜の入った壺持って接近し……そっと差し出す。
「好きなだけお食べください!」
カトブレパスからしてみれば「誰だお前」といった感じではあるだろうが……蜂蜜の効果は絶大であるようだ。
壺の中の蜂蜜を食べ始めるカトブレパスに追撃をかけるべく、しにゃこは更に語り掛ける。
「美味しいですか!? もっとたくさん食べれる場所あるんですけど……実はお願いしたい事がありまして! アリみたいなモンスターがこのハチミツを狙ってて! ソレを護る為にちょっと協力して戦ってくれたら、いっぱい分けれるんですけど……別に死ぬほど戦えって訳じゃないので! キツいなーって思ったら逃げてくれて全然いいので!」
別にアダマンアントは蜂蜜を狙ってはいないのでごっつい嘘ではあるが、後で蜂蜜を提供するつもりなのでまあ……ホワイトライと言えない事もないだろうか?
「あと名前付けていいですか! レパス君とかどうです!?」
その様子を見ていたクーアも「私もカトブレパスへの口添えに回っておきましょう」と加勢する。
「私にも動物との疎通能力はあるのです。ねこですので」
(ある程度会話の通じる相手と見込んで、実利を説く形で行きますか。もし通じなかったら……更にハチミツで釣りましょう)
「あのアダマンアントの貪食ぶりからして、集落を滅ぼしたら次のターゲットにカトブレパスを選ぶのは想像に難くないのです……ですから、今のうちに我々と一緒に不埒者のアダマンアントをやっつけませんか?」
そう、クーアはカトブレパス自身への被害を主張した。これは確定ではないが、有り得ない未来でもない。
黙って蜂蜜を食べていたカトブレパスだが……それを食べ終わると何処かへと視線を向け、ノソノソと歩きだす。
微妙にやる気があるかどうか分からないが……力を貸してくれそうだ。そのままカトブレパスと共にクーアとしにゃこが村の近くまで行けば、防衛体制が完全に整っていた。
そして……見えてくるのは、こちらに向かってくるアダマンアントの群れだ。
「レパス君、突撃を!」
しにゃこの指示にカトブレパスがフンと鼻を鳴らす。協力はしてくれるが、突撃はしてくれないようだ。
だが、その目が輝き……強烈な光による攻撃が放たれる。それは、この防衛戦開始の合図で。
「来たね。ここは通さないよ!」
「全てのアダマンアントを引き付けてしまいさえすれば、最悪の状況でもメイレン住民の方々の安全は確保できる……やりましょう、花丸さん!」
花丸の名乗り口上が響き、リースリットのレヴァティアの幻焔が広がっていく。
「ふふ、昆虫にこの瘴気はお辛いでしょうかね? 噛みつこうも殴ろうも受け流す華麗な宿娘の防戦というものをお見せいたしましょう」
広がる利香のチャームもまた、アダマンアントを引き付けて。
「しかし、近くだとこれはまた……黒くてカサカサするアレよりは1億倍マシですが……その殻をぶち抜くといたします。二重の舞の前では誰一匹とて通しはしませんよ!」
「利香が護って私が滅す、紫炎の破壊力をお見せしましょうか!」
利香とクーアが互いを補い合うように陣形を組む。
「此処までは作戦通り! あとはこの戦い……勝つだけよ!」
「うむ! ちなみに儂に回復は効かーん! 龍だから! じゃが植物は生命を吸い取るんじゃぞ! 凄いじゃろ!」
イーリンの紫苑の魔眼・懺溜が発動し、樹龍がスティールライフを叩き込んでいく。
「ボクのメインは魔砲なのである! どーん! コロッコロさせてやるのである!」
峰風の魔砲が放たれ、ベネディクトのH・ブランディッシュがアダマンアントの群れへと叩き込まれる。
「先ずは数を減らす事を優先だ! 問題ない、このままいくぞ!」
そんな中、AKA……アバターカレイドアクセラレーションを発動した胡桃のこやんふぁいあ〜が放たれる。
「このまま押し切るの」
そう、用意できる最高の環境も戦力も、陣形も整えた。
あとはもう、このまま最高の結果を導き出すだけだ。
だからこそ……花丸は叫ぶ。
「貴方達の相手は私達だよ。貴方達も生きる為に必死なだけなのかもしれない―けど、それは私達だって同じなんだ。生きる為に、皆と明日も今日と同じ日々を過ごせるように。抗わせてもらうよ、全力で!」
生きる為。それはこの覇竜では最も難しく、しかし最も重い願いだ。
だからこそ、抗うことに一片の迷いもなく。やがて、アダマンアントたちは1体残らず殲滅できたのだった。
……が、そこで終わりではない。リースリットは、カトブレパスに蜂蜜を振舞っていた。
「せめてものお詫びです」
「はちみつはそのまま生でいただく感じなのかしら。この辺りの郷土料理にはちみつ料理とかないのかしら」
胡桃がちょっと心配した様子を見せるが、カトブレパスは気にした様子もない。
「とにかく、約束の蜂蜜です。たらふく食べてください! もし足りなかったら……すいません次回用意するんで待ってて貰えません……? 笹木さんを人質にしてもいいので! お願いします! だからしにゃは食べないでください! 美味しくないですよ!?」
そんなことを言っているしにゃこをカトブレパスは蜂蜜まみれの口で軽く齧って「あーっ」と言わせて。
「巻き込んじゃってごめんね。誠意には蜂蜜をかな? ―いっぱいどうぞっ!」
「秘蔵のお気に入りのはちみつキャンディを出してあげるのである!」
峰風もギフトを活用しながらカトブレパスにプレゼントをして。
それとは別に、イーリンたちは住人たちと話をしていた。
「住民はこの後避難するんでしょ。それを少しでも手伝わないと。なんでって、もう他人じゃないでしょ、私達」
イーリンが言っている通り、此処は地理的に言っても危険だ。
アダマンアントの問題が解決するまでは避難は仕方のない事だ。
そしてベネディクトは行方不明になった少女エレンの容姿について聞いていた。
「もしかしたら、今後彼女を見つけ出す事が出来るかも知れん。僅かな希望であったとしても、だ」
そう、希望はある。だからこそメイレンの住人は知っていることを話して。
「三人娘にメイレンの者よ……儂と縁が出来た所で…儂の事知ってるヤツはおらんかー!? 知らんかー……是非も無し! 是非も無いから儂も復興やら避難手伝うー!」
自身の記憶のない樹龍が情報収集などもしていたが……そんなことが出来る程度には、僅かな平和を取り戻していた。
しかしそれも、本当に一時的なものであるのだろう。
だが、それでも取り戻した。その事実は……これ以上ないくらいに、大きいモノだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
メイレンの住人を守り切り、避難させました!
アダマンアントによる襲撃をほぼ完璧な形で防ぐことが出来ました!
GMコメント
小集落メイレンを守りましょう。
メイレンはイルナークから少し離れた場所にある小集落で、岩山に囲まれた平地に存在しています。
その地形上、岩山の洞窟に逃げ込めば安全を確保できる場所でもあるのですが……相手は岩も掘り抜くアダマンアントです。従来の防衛方法は通じないので、何も手を打たないと全滅してしまう状況にあります。
皆さんの到着から防衛戦開始まで、少しの時間があります。
その間にカトブレパスへの対応など、僅かではありますが防衛対応が可能でしょう。
なお、本シナリオではアダマンアントの数が多めです。
カトブレパスの利用法が難易度に大きく変化をもたらすでしょう。
●アダマンアント×10
全長2m。
嫌になる程硬い巨大アリ。攻撃方法は岩をも溶かす酸を弾丸のように飛ばす技と、強靭な顎による振り回し&叩きつけ攻撃です。
●カトブレパス
全長4m。巨大なバッファローのような姿をしています。
目から放つ光による強力な中距離範囲攻撃を行います。この攻撃には【石化】効果があるようです。
メイレンから少しだけ離れた場所にある洞窟の中で気だるげに座っています。
ハチミツが好きなようで、その香りによっておびき寄せる事も出来るでしょう。
ただ、ちゃんとアフターフォローをしないと恨まれる可能性が大です。
●メイレン住人
老若男女、合わせて20人。戦闘の役には一切立ちません。
イルナークが滅びていなければ、合併予定でした。
●フリアノン3人娘
何者かの手により勝手にユニット名がつけられてた奏音、静李、棕梠の3人。
詳しい情報は「覇竜侵食」特設ページにて。
https://rev1.reversion.jp/page/ilnarkfall
今回、3人が手伝ってくれます。何も指示がなければ適宜皆さんの手伝いを邪魔にならない範囲でしてくれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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