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シナリオ詳細

<spinning wheel>茨迷宮に潜む水の邪妖精

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 深緑は現在、『茨』によって封鎖されてしまっている。
 迷宮森林も、大樹ファルカウも、アンテローゼ大聖堂も……とのこと。
 それというのは、ファルカウ付近には一切近づくことができないからだ。
「迷宮森林で情報を集めている森林警備隊の皆さんも、調査ですら苦慮しているようですね……」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は深緑の状況を憂うメンバー達へと現状について説明する。
『謎の茨による国家の封鎖』
『内部に踏み込むと眠気が感じられる』
『茨は侵入者を拒み、踏み入る者の命を奪わんとする』
 現状、この3つの情報だけが確固たる事実で、それ以上の情報はなかなか仕入れることができずにいた。
「ですが、妖精郷は現状、茨の影響を一切受けてはいないそうです」
 幸いに、『大迷宮アルヴィオン』によって切り離された地となっている常春の国は茨の影響も存在せず、妖精達は何事もなく暮らしているようだ。
 本来、ここには深緑を経由する必要があるが、妖精達は『魔種ブルーベル』によってラサとの国境沿いの出入り口を用意してもらったそうだ。
「どうやら、妖精達は代わりとして深緑へと踏み入らぬようにと取引したそうですね」
 ならば、イレギュラーズもまた妖精女王と取引をした。
 侵入経路の提供と引き換えに、彼女達を魔種らから護ると。

 妖精郷に至ることはできるようになったが、深緑……大樹ファルカウを目指すとなれば、再び妖精郷から『大迷宮アルヴィオン』へと転移し、攻略する必要が出てくる。
「以前とは逆ルートをたどる形だけれど……、様々なルートがあるから同じ攻略が通用しないし、何より迷宮内まで茨が侵食しています」
 茨の対応をしながら、迷宮攻略。迷宮もそうだが、内部には様々な魔物や大樹の嘆き、アルヴィオンに封じられていた大精霊冬の王の配下など、敵対勢力が潜む。
 これらを討伐しつつ、出口となる『アンテローゼ大聖堂』を目指したい。
「以前、立ち入った方も、新たに立ち入ることになる方も、くれぐれもご注意ください」
 茨も、魔物ら敵対勢力も一筋縄ではいかない。
 それだけに慎重な立ち回りを気掛けていただきたいと、アクアベルは依頼に臨むメンバーの身を案じていたのだった。


 妖精郷にて、イレギュラーズは妖精達と交流の後、『大迷宮アルヴィオン』へと転移する。
 他のイレギュラーズのチームも様々なルートで攻略に臨んでおり、こちらのチームもそのうちの一つを選んで進むことに。
 そこは、水の流れる迷宮だ。
 だだっ広い広間ではあったが、床は複雑な迷路を描いている。
 比較的天井が低めなのは普段なら別段問題なかったのだろうが、迷宮にまで侵食した茨がかなりの領域張り巡らされており、下手に飛べば束なった茨に絡めとられてしまうかもしれない。
 通路感はかなり離れており、その間は水が流れている。水深は50m程度だろうか。
 泳げるなら水路へと飛び込んで移動する方が速そうだが、水はかなり冷たく、下手に飛び込めば体力を持っていかれそうだ。
 それに、この場には冬の王の配下である邪妖精らが潜んでいたようだ。
「ヒサビサノ、エモノダ……!」
 水の中から現れたのは、体表が緑色の蛙……いや、蛙人間といった出で立ちをしたヴォジャズローである。
 ブオオオオォォ……!!
 さらに、青い体表の邪妖精、奇怪な顔を持つ水棲馬ナックラビーも3体控えている。
 頭上からは茨、水中は邪妖精達。
 イレギュラーズ達は特殊な迷宮にて、同時にそれらを相手取るのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 <spinning wheel>のシナリオをお届けします。
 妖精郷から茨に覆われた深緑を目指し、大迷宮ヘイムダリオンの攻略を目指します。皆様の力をお貸し願います。

●目的
 大迷宮ヘイムダリオンの攻略
 冬の王の配下妖精と邪妖精の討伐

●状況
 大迷宮アルヴィオンを進み、途中で出くわした冬の王配下の妖精と配下の邪妖精を討伐することになります。
 迷宮は冷水の流れる通路で、天井も高さ10mいかない程度ですが、迷路状の通路から外れた場所は水深50m程度の水場となっており、水の流れがあります。通路下は所々通れるようになっており、水の適応があるとスムーズに攻略できるかもしれません。
 ただ、現れる敵を考えれば、水中での戦いは避けるべきかもしれません。

●敵
 メインは冬の王の配下討伐ですが、戦場に張り巡らされる茨も邪魔をしてきます。

○冬の王の配下妖精:ヴォジャズロー×1体
 邪なるヴォジャノーイ。
 全長2.5mほど。緑色の体躯をした蛙人間といった姿をしており、水の精とされるヴォジャノーイが更なる邪気を纏った存在です。
 敵対者を舌で縛り付けて水中に引きずり込もうとしたり、巨大な氷水車を出現させて周囲を凍らせつつ相手を轢こうとしたりしてきます。
 体力を奪うべく、高く飛び上がってからのしかかった相手に直接食らいついてくることもあります。

○邪妖精(アンシリーコート):ナックラビー×3体
 全長3m程度。水棲馬と言われる種類の邪妖精です。
 青い体表、豚の様な鼻面と長く裂けた口、真っ赤な一つ目を持ちます。
 毒の息を吐き、闇の力を放出しつつ、突撃してきます。

○茨×3体
 さながら有刺鉄線の如く一定空間へと張り巡らされる謎の荊です。
 一体範囲の茨が束なってから敵対するもの目指して伸び、絡みついてきます。また、強引に排除しようとする者を昏睡状態へと陥らせたり、体力、気力を奪いつくりして死に至らしめようとすることも。
 茨は戦場のどこからでも束なることができるようで、その出現の把握はかなり難しいでしょう。
 ただ、茨を傷つけることでその活動は低下します。
 戦場に張り巡らされた状態では範囲攻撃に耐性を持つ為、非常に厄介な相手ですが、束なった茨は耐性が無くなるため絶好のターゲットとなるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <spinning wheel>茨迷宮に潜む水の邪妖精完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
季 桜綾(p3p010420)
❀桜華❀
スースァ(p3p010535)
欠け竜

リプレイ


 ラサから妖精郷へと向かったイレギュラーズは、『大迷宮アルヴィオン』へと転移する。
「またこの大迷宮ヘイムダリオンの攻略に乗り出すコトになるとは」
 事前情報もあり、暖かな衣服を纏う『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は小さく嘆息しつつ通路を見回す。
 そこは床が迷路を構成し、壁でなく水路が床を遮る形となっている場所だった。
「ココが深緑とかいう場所――いや実際はもっと違うのか?」
 常春の妖精郷から一転、迷宮の冷たい通路を歩く『❀桜華❀』季 桜綾(p3p010420)は身震いするほど寒さを感じていた。
「水路の迷宮……興味はあるけど、落ちたら危ないどころじゃないかも」
 『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は水路に潜む影に目をやる。
 普段なら水路を進んだり、低空飛行したりして攻略もできそうな場所なのだが、今回ヨゾラを含めたメンバーは水中へと落下することを極力避けたいと考えている。
「前回の経験は……果ての迷宮と同質の此処では余り意味をなさないようですねぇ」
 長期行軍になっても大丈夫なよう数日分の携帯食料と飲料を用意するなど、最大限対策を講じていたドラマは仲間と頭上を見上げる。
「こんな所にまで茨か。まったく、無節操に過ぎるな」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は水路頭上に張り巡らされた茨に辟易とする。
 触れた者を昏睡状態とする謎の茨は深緑を覆うだけに留まらず、アルヴィオンにまで侵食していたのだ。
「茨に包まれた内側は眠りについている……なぁんて」
 御伽噺なら王子様が助けに向かうシチュエーションだが、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は「お姫様が助けに行ったっていいじゃない?」と微笑む。
「この迷宮を踏破した先に深緑があるんだ! こんなところで躓いてるわけにはいかないよ!」
 『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は何が阻んでこようとも、絶対にすぐにこの迷宮を突破してみせると強く気合を入れる。
「……ようやく掴んだ大樹ファルカウへの道筋です」
 それは、ドラマも同じ認識だ。
「街が……同胞が、どんな状況に曝されているのか、気が気ではありません。早急に、駆け抜けましょう!」
「さっさと片付けて、この鬱陶しい茨からはおさらばしたい所だ」
 そのドラマに、汰磨羈も同調していた。
 この寒々しい通路に咲く花々に、桜綾は目を見張る。
「正直、春は深緑よりもこの女性陣の多いパーティの方にありそうじゃん?」
 今チーム8名中6名が女性であり、美人揃いの面々である。
 ただ、イレギュラーズの先輩方をナンパできないからと、彼は普通に接することにしたらしい。
「ま、仕事で格好いいとこ見せちゃうのがイチバンっしょ」
 普段もこれくらいかる~く誘えたなら。桜綾は嘆息しつつ仲間達の後を追う。
「ヒサビサノ、エモノダ……!」
 その時、水中から飛び出してきたのは緑色の体躯をした人影。
 それはやや大柄な蛙人間の見た目をした冬の王の配下妖精ヴォジャズローである。
「……冬の王。未だに、その影響が此処には残っているのですねぇ」
 ドラマが水中へと視線を下ろせば、水路の所々が凍り付いている。下手に落ちれば水ごと凍らされて動きを止められかねないのだ。
 さらに、ヴォジャズローは後方に自身より少し大きな水棲馬の姿をした邪妖精ナックラビー3体を従える。
「道を急ぎますのに。ですが、ちょうど身体が冷えると思っていたところです」
「もう雪は解けて、春が来たの。冬の王達には、眠ってもらうわ」
 胸の内をさらす『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)が良い運動になればと身構えると、アーリアも眠たげな眼で敵を見据える。
「深緑にも妖精郷にも縁はないが、めちゃくちゃにされてんの見て放っておけるほど冷血でもない」
 『欠け竜』スースァ(p3p010535)はそれに――と続けて。
「一仕事終えたあとの一杯ってのは美味いだろ?」
 深緑の酒がいかなるものかと気にかけ、この場を通り抜けるべく武装を纏い、アドレナリンを爆発させるのである。


「イケ、オマエタチ!」
 ブオオオオォォ……!!
 冬の王の配下妖精ヴォジャズローが発した声に応じ、ナックラビーが不気味に唸る。
 頭上の茨が気になるが、目立った動きがない間は目の前の敵が最優先とドラマが動く。
「あなたの相手は、私です!」
 相手が他の仲間に向かわぬよう、ドラマは魔力による振動を浴びせて強引にでも自身へと引き寄せる。
 ヴォジャズローも望むところと、彼女をじっと見つめて長い舌を伸ばしてきた。
(あからさまに水場に強い風体ですものね)
 引きつけは良いが、水中に引きずり込まれるわけにはいかない。
 水中へと飛び込む敵から逃れるべく、ドラマは落ち着いて水中を泳いで通路へと上がり、再度敵へと向き直っていた。
「ヴォジャズローを抑えてもらってる間に……」
 ヨゾラはリトルワイバーンに乗り込み、地上付近で飛行しつつも仲間達の移動や行動を阻害せぬよう立ち回る。
 そして、ヨゾラは掌握魔術を組み上げ、気糸の斬撃として放つ。
 ブオオオオォォォ……!!
 真っ赤な一つ目を光らせた邪妖精らは毒の息を吐きかけ、または闇の力を解き放つ。
 邪なるその力はイレギュラーズへと襲い掛かる。
「水に落ちないよう気を付けないと」
 アレクシアは邪妖精と茨の引き付け役として、簡易飛行しつつ飛び込んだ敵陣で転身の魔花を放って邪妖精らを惑わす。
 上手く巻き込んだことで、敵の狙いはアレクシアへと集まる。
 運気向上の卦を自らへと打ち込む汰磨羈は周囲の茨に変化がないかとチェックしつつ、移動しながらスパークさせた妖刀を振り抜き、白桜の花びらを舞わせる。
 切り裂かれた邪妖精は苦悶の表情を浮かべるが、それも刹那のこと。思った以上にタフな相手のようである。
 アーリアもまた茨を見ていたが、あちらこちらでうねる様な反応を示すも、どこを攻撃すべきかと見定めているようにも見えた。
「地形が移動しにくくて、あちらこちらへ走るのが煩わしいですね」
 玉兎は虹色の軌跡を残すリリカルスターを放ち、ナックラビーへと打ち付ける。彼女はあまり動かず、仲間達と固まって行動することにしていた。
「抑えてくれる間に、手早く倒したいな」
 自己強化を施したスースァは抑え役となる仲間の身を案じ、格闘を仕掛け見定めた邪妖精に殴打を見舞う。
 ただ殴りつけるだけでなく、武装の素材となる暗黒物質、加えて彼女の持つアクセサリーの効果も相まって相手を不調に陥らせる。
「せっかちな男は嫌われるそうだからさ、もうちょいゆっくりしときなよ」
 行動が鈍れば、スースァは一気に終わらせる構えだ。
 ブオオオォォ……!
 ふざけるなと言わんばかりに赤い瞳を煌めかすナックラビー。
 そいつらから少し距離をとり、水に落ちぬように自身の翼を羽ばたかせていた桜綾が邪妖精複数体を捉えて。
「一気に……ドーン!」
 狙いすませ、照準を定めた大口径魔力砲から放った桜綾の一発はナックラビー2体を見事に撃ち抜く。
 ただ、それで慢心してもいられない。頭上で何やら怪しい動きを、桜綾は察知したからだ。
 イレギュラーズに邪妖精達。これだけいれば茨も大きくうねり、一気に束なっていく。
「茨が集まるぞ!」
 汰磨羈が仲間へと叫びかけ、その方向を示す。
 茨は相手を昏睡状態に陥らせることができる。この状態で水路に落ちるのも避けたいところだ。
 悪態づくアーリアも邪妖精ごと束なった茨を叩きやすくなるようにと、リリカルスターで誘導しようとする。
「本当、茨が厄介ったらありゃしない!」
 長く太く束なっていく茨は、間違いなくアーリアを含めたイレギュラーズを狙っていた。


 茨はただ自分達へと近づく者を絡めとり、その動きを止めようとする。
 どうやら、この場の茨は邪妖精らも敵とみなしていたのか、イレギュラーズと纏めて文字通り一網打尽にしようとしていたらしい。
 茨は戦場全体に張り巡らされており、どこからでも襲い来るのが非常に厄介だ。力のない者はなすすべなく絡め取られ、昏睡状態へと陥ってしまうからだ。
 ただ、イレギュラーズはそう簡単に倒されはしない。
「来るぞ!」
 桜綾は別所から自身を襲わんと茨が束なっているのを好機と判断し、突き出される茨を正面から穿つ。
 それを確認した汰磨羈はすぐさま反応し、迅速な排除へと当たる。
 敵にだけ呪いの歌を歌い聞かせていたアレクシアも束なる茨が立てる音によって茨の動きを感知し、仲間達へと呼び掛けた。
「今度は……こっちだよ!」
 しかも伸びてくる方向はアレクシアの射程範囲内とあって、彼女は足元に巨大魔方陣を展開し、茨状の魔力を放出して束なる敵の動きを止めようとした。
 こちらは、邪妖精の相手と合わせ、スースァが反撃態勢をとりつつ相手取る。
「さぁさ、私の肌を傷つけてごらんなさいな」
 敢えて水路へと落ちていたアーリアもまた茨を抑えようとする。
 冷たい水中でも問題なく泳ぐアーリアは、アレクシア近辺の邪妖精と纏めて茨の誘導をはかっていた。
 茨が襲ってきたこともあり、仲間の射線を開けようとした玉兎を新手の束なる茨が襲い掛かる。
「個体識別は難しそうですし、このままこの茨を引きつければ良いでしょう」
 そう考える玉兎は、茨に向けてリリカルスターを飛ばす。
 引き付けたまでは良かったが、彼女は近場で暴れるナックラビーの攻撃を受けてしまう。
 続けざまに茨の攻撃を受けた玉兎。束なる茨の一撃によって意識を失いかけたが、パンドラを使って意識を保つ。
 なお、落下した彼女は桜綾が回収し、ヨゾラが幻想福音によって癒しをもたらす。
「皆を倒れさせないからね……!」
 こちらの虚を突いて襲い来る茨に氷の王の手勢。ヨゾラは全力で仲間を支える。
「ヨウブンニナレ!」
 とりわけ、この戦場における強敵ヴォジャズローを抑えるドラマ。
 茨は上手く皆が対処してくれていたことで、彼女は強敵の対処に専念する。水中に落とされることも幾度かあったが、気を引くヴォジャズローをイラつかせる。
「ギ、ギギ……」
「持久戦は得意分野なのです」
 身体能力を最大まで引き上げたドラマは術式理解で効率を高め、剣術と魔術を組み合わせた斬撃を浴びせかける。
 ――私の教わった蒼剣が標榜とするのは、負けない剣。
 ――相手の手管を挫き、負ける芽を潰す。
「この場は保たせてみせましょう」
 悠然としたドラマの態度が、一層ヴォジャズローの怒りを買うのである。


 茨は広域展開することで防御力が非常に強化され、他者の侵入を防ぐことができるものの、攻撃力には乏しい。
 その一方で、束なることでイレギュラーズですら致命傷を負うほど攻撃力は非常に強化されるが、非常に脆くなってしまうようだ。
 この近辺に展開していた茨が全て束なったことでイレギュラーズはそれらを抑えていたが、程なく最初に束なった茨を、桜綾の傍へと迫る汰磨羈が追い込む。
 激しく暴れる邪妖精の攻撃は無視できないが、再度茨がバラけて奇襲してくる前にそちらを叩きたい。
 絡みついてくる茨、そして手前にいたナックラビー。
 両方を同時に相手取りたい汰磨羈は桜綾が茨を相手取る間に簡易飛行で浮かび上がる。
 仲間を巻き込まぬよう汰磨羈は水場の真上で茨による攻撃を回避し、ナックラビー、茨の2体が直線状に並んだタイミングを見計らい、一息で薙ぎ払う。
 ナックラビーは耐えていたが、茨はバラバラと崩れ、水路へと無数の波紋を立てて落ちていく。
 邪妖精を抑えていたアレクシアも茨の動きを止めようと自身へと攻撃を向けさせようとする。
 長く束なる茨は水路へと巻き付く形となるが、再び広域展開も可能な様子。
 その茨がさらに伸びようとしてきたのに対し、スースァが飛びかかる。
「茨は茨らしく、じっとしてな」
 拳に力を籠めたスースァは激しい乱撃を浴びせかける。
 スースァの一撃一撃が束なる茨に効果的な打撃を与え、その個所が一気に力なくし始めていた。
 さらに、アーリアが茨へと多数の小妖精を向かわせる。
 楽し気に酩酊する妖精らは邪妖精と合わせ、茨を翻弄する。
 さらなるスースァの乱撃を浴びて動きを止めた茨を、アーリアは橙色の糸できつく、激しく縛り付けた。
 乱戦模様となっていたことで、ピンポイントに茨を狙うことにしたアーリア。その判断は功を奏し、茨が完全に動きを止めて付近一帯の茨が枯れていく。
 もう1体は桜綾、持ち直した玉兎とヨゾラの3人が攻め立てる。
 玉兎が神気を展開する中、桜綾の凶弾が茨と邪妖精を穿つ。
「僕等は先に進むんだ……邪魔するなー!」
 水路にこだまするほどの声量で叫ぶヨゾラが桜綾と逆サイドから気糸の斬撃を敵陣へと浴びけかける。
 その範囲には仲間もいたが、気糸は敵のみを捉えており、茨を完全に切り刻み、同時に弱っていた邪妖精1体も合わせて仕留めてみせた。
 ブオオオオォォ、ブオオォォォォ……。
 いくらタフな邪妖精とはいえ、体力に限界はある。
 苦しそうに吠えるそいつらはアレクシアへと力を振り絞って突撃するが、スースァが背後から迫る。
「待たせたね」
 拳を抉りこんだスースァが残る力を奪い去ったことで、水棲馬は水中へと落ち、沈んでいく。
 もう1体のナックラビーもまた、桜綾が仕留めにかかる。
 彼は残るヴォジャズローと合わせ、深く、静かに抉るような弾丸を撃ち込む。
 手前の邪妖精が泡を吹いて倒れたのはもちろんのこと。奥の配下妖精の体へと弾丸を埋め込む。
「ギギ、ツカエヌヤツラメ……!!」
 怒り狂うヴォジャズローは激しく荒ぶり、具現化した氷水車を水路へと走らせて広域を凍り付かせていく。

 残るは邪なる水の精ヴォジャズローただ1体。
 そいつを抑えるドラマの元へと、イレギュラーズが次々に駆け付けて包囲網を敷く。
「おまたせ、ドラマちゃん!」
 彼女を労うアーリアがすかさず加勢し、じっと敵を見つめる。
 蜂蜜酒の甘い罠。纏わりつく毒の運命には抗えない。
 続けて、アレクシアも再び巨大な魔方陣を展開し、茨状の魔力でその動きに制限をかける。
「ギ、ギギ……!」
 ならばと舌を長く伸ばすヴォジャズロー。
 ドラマがそれに捕らえられるが、すぐさまスースァが大きく開いた口内を狙ってねじ込むように殴打を叩き込む。
「汚いモンで触ってんじゃないよ!」
「ブボアアアァァ!」
 無様な叫びを挙げる水の精を、玉兎も冷めた目で見つめて。
「蛙らしく、水底で冬眠でもしていれば良いものを」
 彼女が聞いていたところでは、元となるヴォジャノーイは月相に呼応する性を持つ妖精とのこと。
「深みに還して差し上げますわ」
 その点には、玉兎も多少の親しみを持っていたが、邪魔をするなら是非もなし。
 一気に攻め入った彼女は神秘の破壊力を拳に込め、膨らむ腹へと極撃を叩き込んだ。
「糸よ、糸よ……敵だけ切り裂け!」
「ブベエエエエッ!」
 続けて、気糸を操るヨゾラがその体を切り裂く。
 全身から青黒い血を流すヴォジャズローは退路を探して周囲を見回すが、怒りに任せて水路を凍らせてしまった為、逃れることもできない。
 右往左往するヴォジャズローを、桜綾が仲間を巻き込まぬようほぼ真上から敵の体を撃ち抜く。
「獲物は良く見て選ぶべきだったな。まあ、後の祭りだが!」
 さらに、汰磨羈が敵の背後上方からスパークさせた妖刀で切り裂く。
 畳みかけるように、それまで攻撃に耐えていたドラマが幾度となく繰り返していた禍断の一撃で仕留める。
「ギ、ギィィ…………」
 大きく目を見開いたヴォジャズローはだらしなく舌を垂れ流し、凍った通路の上に突っ伏したのだった。


 戦闘の余波残る迷宮内の水路。
 ヴォジャズローの氷水車が走った影響でまだ凍っていた部分もあり、一層冷える中でメンバー達は戦いの傷を癒す。
 主となった仲間達の治癒に当たっていたヨゾラが茨の晴れたこの水路を飛び、周囲を偵察する。
 彼は手早く道順を確認し、仲間の元へと戻る。
「……長居すると、風邪ひいちゃいそうだからね」
 女性の多いチームメンバーの身を案じるヨゾラ。
 実際、アーリア等は身震いしていて。
「さっさとお風呂に入りたいところだけど……今は先へ急ぎましょ!」
 ただ、そのアーリアを含め、茨で閉ざされた大樹ファルカウをいち早く目指したいメンバーも多い。
 深緑を助ける手段。茨の大本を何とかする手段を見つけ出したいヨゾラ。
「その為にも迷宮超えて、深緑へ行くんだ……!」
 皆、彼の言葉に頷き、再び水の流れ出した水路を進んでいくのである。

成否

成功

MVP

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは討伐対象を抑えきった貴方へ。敢えて水路へと落ちて茨を誘導した貴方にも称号をお送りさせていただきます。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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