シナリオ詳細
<覇竜侵食>許すまじ、破滅の賛歌
オープニング
●デミワイバーンたちの危機
ギャアギャア、とデミワイバーンたちの煩げな声が響く。
一体何をそんなに騒ぐことがあるのか。
デミワイバーンは覇竜を闊歩する亜竜の中でも小型種であり、全長はおよそ1m程度。
実力はモンスター、亜竜含めても相当下位であり「そりゃまあ、外のモンスターよりは強いけども」程度だ。
そんなデミワイバーンが何かしらの苦境に陥るのは、珍しいことではない。
ないが……あまりにも煩すぎる。
騒音といっていい程の音を出せるデミワイバーンの「大きな群れ」に、何かが起こっている。
その何かが「何」であるかは、現場を見れば一目瞭然だろう。
切り立った岩山が並ぶ岩場で、デミワイバーンの吐いた炎が「襲撃者」を焼く。
ジュウッと襲撃者……アダマンアントの外殻が焼ける音が響き、しかしアダマンアントは怯まない。
切り立った岩山を何の苦もなく登っていくと、デミワイバーンへと酸を発射する。
「ギャアアアアア!」
落ちていくデミワイバーンに地上のアダマンアントからも酸が発射され、トドメを刺す。
そう、デミワイバーンの群れを攻撃するのはアダマンアントの群れ。
弱い分集って他の生き物に対抗するデミワイバーンの強みは、同じく数を武器とするアダマンアントの前では消えて失せる。
此処に居るアダマンアントに羽はないが、垂直のような岩山の壁もアダマンアントにとっては地面を歩くのと何ら変わりない。
そしてアダマンアントは一切死を恐れていない。
此処で死んだアダマンアントも、狩ったデミワイバーンも。全ては等しく彼等の貯蔵庫へと運ばれるだろう。
そしてそれは……自然の摂理を超えた速度と数のアダマンアントを作り出すのに使われてしまうのだ。
●アダマンアントを撃破せよ
「アダマンアントの群れが確認されたの」
棕梠はそう言うと、机に置かれた地図に示された一点を指さす。
「場所は此処。岩山に囲まれた、デミワイバーンの群生地よ」
デミワイバーンはワイバーンと比べると格段に弱く、他のモンスターと比べても然程強くはない。
言ってみればワイバーン界の劣等生だが、その分仲間意識は強く危機管理も出来ている。
今回の場所のような、他の亜竜やモンスターが集まらないような場所に集団で集まって、身を護るような生き方をしているのだ。
……だが、アダマンアントには然程関係ない。
およそ50ほどのデミワイバーンの群れに対し、攻め込んだアダマンアントの数は30。
そして確認された時点ではデミワイバーンはすでに42、アダマンアントは27までその数を減らしている。
ハッキリ言ってデミワイバーン側がボロ負けである。地の利を生かしてなおこれでは、デミワイバーンが絶滅するまで然程時間はかからないだろう。
デミワイバーンとて撤退はしたいのだろうが、アダマンアントの動きが素早くそれを許さない。
此処にイレギュラーズが加わったとして、乱戦の中どの程度アダマンアントによる「回収」を阻止できるか予測できない。
「……となると、搦め手が必要になってくるの」
搦め手。それを使うかどうかはイレギュラーズに託されるが……調べた限り、このデミワイバーンの生息地の近く。
日当たりの良いポカポカとした草地があり、そこは「グルメなネオサイクロプス」の昼寝場所となっているのだ。
勿論言語は通じないし話し合いなど出来そうにもないが、上手く誘導し戦場に突っ込ませることは可能かもしれない。
あるいは、グルメなネオサイクロプスの下にアダマンアントを誘い込む……といった作戦も可能だろう。
どちらにせよグルメなネオサイクロプスにとっては災難でしかないが、それによって相当な有利を確保できるようになるのは間違いない。
……勿論、馬鹿正直に死闘を繰り広げるのも良い。
「全部、任せるの」
信頼してるから、と。
棕梠はそう言うと、地図を差し出すのだった。
- <覇竜侵食>許すまじ、破滅の賛歌完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年03月23日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●ネオサイクロプス参戦作戦
「またアリさんだよー! ほんとにもうどこでもいるんだから! ワイバーンさんたちのピンチ! 数は多いけど何とかするしかないね! アリさんの餌になんてさせないんだから!」
「アダマンアントがフリアノン近くまで勢力を伸ばしているとは……数の多いデミワイバーンを餌として持ち帰られるのは避けたいですね。しかし私たちだけであれだけの数を殲滅するのは難しいでしょうし……。申し訳ありませんが、ここは作戦通りにサイクロプスの力を利用させていただきましょう」
『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)と『紫晶銃の司書竜』劉・紫琳(p3p010462)のそんな声が響くが、実際そんな言葉も出るだろう。
アダマンアントの地上への進出はここのところ、連続発生している。
そしてワイバーンのピンチ……というと首を傾げる者もいるかもしれないが、ワイバーンもピンキリである。
デミワイバーン。ワイバーン同様の獰猛性を持ちながらも小型種であり、実力も低い。
そうであるが故に集団で身を護る生き物だが……同様に数を武器にする相手、しかも実力が上であれば途端にそれは狩りの対象となってしまう。
まあ、アダマンアントのようなものが襲ってくるのは覇竜の歴史でも初であるが故に、デミワイバーンの生存戦略をどうこういうのは筋違いではあるだろう。
言ってみればこれは一種の異常行動に近いのだから。
だからこそアダマンアントを倒さなければならないが……アダマンアントの数は、凄まじく多い。
それでもデミワイバーンの数もアダマンアントの数も含めれば現在、合計60。
いくら互いに潰しあっているとはいえ、気軽に中に入っていけるようなものではない。
「普通だったら特に介入することもないんだろうけど、増えすぎたアリはさすがに問題ってことよね。集落一つ滅ぼすアリってとんでもないけど……大きいしちょっとげんなりするわ」
準備が整うまで隠れて待機している1人である『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が、そう呟く。
戦闘にギリギリ巻き込まれない位置で待機しているが、保護結界も無事に働いている。
(多少壊れるのは自然の摂理だけど、容認できるかどうかは別だしね)
オデットはアダマンアントと相対したことはない。だからこそ、その反応は自然なモノ……覇竜の常識と同じであった。
しかし、『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は違っていた。
アダマンアントと戦い、その巣の中に潜入したからこそ分かる事があった。
(あの強ぇアリンコをあの数何とかしろっていうのか?)
「ちっとキツイが……やってやるさ。サンゴを助ける為になるかも知れねえんだ」
そう、亜竜集落イルナークに襲撃の日に「居たかもしれない」少女、サンゴ。
その所在は未だ不明だが……ルカは諦めてはいなかった。
「流石にこの数を俺達だけで何とかするのは……やってやれねえ事はねえがちっとばかし骨だ」
だからこそ、ネオサイクロプスにも暴れてもらう事に決めていた。
その作戦は此処に居ない『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が遂行中だが……それまでは待機ということだ。
「サイクロプスがアリを攻撃してくれるならすごく助かるっス。ノリアさんにも感謝っス」
『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)もルカと共に頷くが、つまりはそういうことなのだ。
「グルメなネオサイクロプス……何度か報告書で見かけたモンスターかな?」
『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)も作戦の内容を思い出しながらそう呟く。
グルメなネオサイクロプス。覇竜でちょくちょく出てくるネオサイクロプスの1体ではあるが……同一個体であるかは不明だ。
まあ、グルメなネオサイクロプスなんてものが何体もいるかどうかは分からないが。
「利用することになるのはちょっと申し訳ないけど、此処でアダマンアントの回収を阻止出来ない事の方がもっとマズいことになるもんね。使える手は全部使って何とかしてみせるよっ!」
言いながら、花丸は隣の棕梠に話しかける。
「無理だけはしないようにね? お昼寝スポットに案内してもらえるの、これでも楽しみにしてるんだから!」
「……ん。こんな事態は早く終わらせたいわ」
相変わらずの眠そうな目で言う棕梠ではあるが……解決したい気持ちは同じだ。
そんなほのぼのとした様子を見ながら『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は呟く。
「事態の悪化は食い止めるとして、大元をどうやって探すか……それが問題だな」
悪意の介在はともかく、こんな変化がきっかけなしに起こるはずはない。
だからこそ、きっかけを探らなければならなかったのだが……アダマンアントの動きが予想以上に早すぎた。
これも対処療法に過ぎないのはエーレン自身分かっている。
しかしやらなければ世界が滅びかねない。
(まずは目の前の事件を打開しないとどうしようもない、な)
思わず肩を竦めてしまうが、それも仕方ないと言えよう。
そんな中、『元ニートの合法のじゃロリ亜竜娘』小鈴(p3p010431)が手元で借りて来た『jabberwocky』を遊ばせる。
崩れ落ちた『怪竜』ジャバーウォックの鱗であり、翠玉の如き光を宿しているが……なんと、竜種に一目おかれる可能性があるという。
「こんなものまで知合いに借りてきたが、これ本当に効果があるのかのう……? いや妾が亜竜種のせいか変な感じはたしかにするのじゃが」
竜ではなく亜竜なデミワイバーンに効くかどうかはちょっと分からないが、試してみる価値は充分に有るだろう。
(しかし先日の事と言いネオサイクロプスには悪い事をするのじゃ。真面目にお礼に好きなだけ料理を振舞う機会とか作らんと本格的に恨まれるかもしれんのう)
同じ個体かは不明なものの、ネオサイクロプスに多生の縁があった小鈴はそんなことを考えてしまう。
「アリ。実物と戦うのは二度目だが、なかなか油断ならない相手。だが.....負けはしない。俺の方が、黒い!」
謎の対抗心を燃やしているのは『闇』シッコク(p3p010498)だ。黒とか闇とかはシッコクの大事な要素なので、負けられないのだろう。
その燃える心をなんかこう闇の力とかそういうアレ的なものとして解き放つには、作戦の成功は必要不可欠だが……ノリアはその頃、丁度寝ているネオサイクロプスの元へやってきていた。
この激しい戦闘音にも関わらずグウグウ寝ているネオサイクロプスを見上げながら、ノリアは呟く。
「食べるためでも、身をまもるためでもなく、命をうばうのは、好みませんけれど。自然のバランスを、まもるためでしたら、しかたありませんの。でも……なるべく、原生種同士での決着に、ちかづけるほうが、より自然な形に、なるでしょうから。グルメなネオサイクロプスにも、おてつだいを、お願いしてしまいますの」
言いながらノリアが温めているのはドミグラスソースオムライスだ。
フォン・ド・ボーから作られるエスパニュールソースを更に煮詰めるという割とガチで手間暇かけて作った渾身のドミグラスソースをかけたオムライスであり、深い味わいと溢れる肉と野菜の旨味が心を掴んで離さないという品なのだが……。
「グルメ、と称されるくらいなら、いとしのゴリョウさん謹製の、ドミグラスソースオムライスをあたためて、顔のちかくで、食べてやったなら……おいしいにおいに、気づかないなんてことは、ありませんでしょう。隙だらけに、見せかけて……横から、うばえそうに、おもわせておきながら……アリのほうに逃げて、追いかけさせますの!」
深い信頼故の言葉を言いながら、ノリアはドミグラスソースオムライスを温めて。
やがて……ネオサイクロプスの鼻が動き、その目を見開いた。
●ネオサイクロプス、乱入!
「……なんだか、ねらわれているのは、磯の香かぐわしい、わたしの、つるんとしたゼラチン質のしっぽのほうのような気も、するのですけれど……それならそれで、好都合ですの」
そんな事を言いながら、ノリアはネオサイクロプスを連れて戦場へと乱入する。
「ゴオオオオオオオオ!」
「ギャア!?」
「!?」
突然のネオサイクロプスの乱入にアダマンアントもデミワイバーンも混乱に陥り……それは、この事態に介入する絶好の隙だった。
「やれることがわかってるなら簡単よ。また力を貸してね、私の友達たち。悪いアリはぜーんぶまとめて吹き飛ばしてあげちゃうんだから!」
オデットも突入しシムーンケイジを放つ。
「聞いてね、熱砂の精たち。狙うのはアダマンアントだけよ。アリの巣穴をつぶしちゃいましょ!」
「好き勝手してるみてえだが…これ以上はやらせねえよ!」
そうしてラサを思わせる熱砂の嵐が放たれ……ルカもアダマンアントへH・ブランディッシュを放つ。
とにかく数を減らしていくのが目標だが……ネオサイクロプスもアダマンアントがウザかったのか、足でグシャリと踏み潰す。
「よし、上手くいってるね!」
花丸も蒼天を傷ついたアダマンアントへと叩き込み、棕梠がそこに更に攻撃を入れていく。
状況は完全に混戦になっているが……デミワイバーンたちは、どうやら「アダマンアントの敵が来た」ことは分かったらしい。
「そこのデミワイバーン達!! 助かりたかったらあっちに向かって飛ぶのじゃ!! アントどもが追いかけてくるだろうが、途中に助っ人が居る。その助っ人の所までアントどもを誘導できれば、お主たちは助かるのじゃ!!」
ハイテレパスと動物疎通を使い小鈴がデミワイバーンに呼びかけるが……基本デミワイバーンは頭が凄く悪い。
悪いが……悪いなりに気迫の勝負で根拠とかそういうのは無視して強い意思を叩きつける小鈴に、デミワイバーンも感じるものがあったらしい。
「わたしたちはみんなを助けに来たの! 一緒にアリさんやっつけよー!」
ユウェルも動物疎通の力を使いながら、そう叫んで。更にはシッコクも手振りで「しっしっ」とやっていく。
まあ、ネオサイクロプスが助っ人かといわれるとかなり怪しい部分はあるのだが……ネオサイクロプスの背後へと飛んでいく……いや、そのまま離脱していくデミワイバーンたちは、文字通り「助かった」だろう。
「ええー……」
「お、おおお……そりゃあ援護までは期待しとらんかったが……」
まさかそのまま飛び去るとはユウェルも小鈴も思っていなかっただろう。
デミワイバーンはまあ、もう結構心が折れていたのだろう。仕方がない。
まあ、その分アダマンアントの狙いがネオサイクロプスと小鈴たちに攻撃が集中するようになったのでまあ……良かった、のだろうか?
ネオサイクロプスの槍がアダマンアントにまた1体トドメを刺す。
「まあ、アダマンアントの数も減っている……離脱して貰った方がいいか」
「そうっスね。戦力として機能してくれるならそれに越したことはないっスけど怪我をしたやつとかにそのまま残しておくわけにはいかないっス。逃げてくれてよかったっス」
「確かにな」
ライオリットにエーレンも苦笑しながら……しかしすぐにサザンクロスをアダマンアントへと向け気を引き締める。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。お前たちも命じられているだけなんだろうが、やらせるわけにはいかない」
そう、デミワイバーンたちが居なくなったのであれば、此処からが本番だ。
アダマンアントに名乗って理解されるとはエーレンも思ってはいない。
それでも名乗るのは武芸者としての律義さ故か。
放つ神鳴神威はボロボロのアダマンアントを叩き潰し、その数を減らす。
(今の俺はまだ、突出して生き残れるような闇ではない。連携していかねばな……)
仲間の高レベルな戦闘を目に焼き付けながらも、シッコクは自分のやるべきことをやっていく。
最優先は闇の加護……超分析とも呼ぶソレやブレッシングウィスパーによる援護だが、絶え間なく湧く闇の力(意味深)がその原動力だ。さておいて。
「デミワイバーンをかばうのもやぶさかではなかったっスけど……話がシンプルになったっスね!」
アデプトアクションからのブルーコメットを放つライオリットは叫びながら、アダマンアントの動きに目を光らせる。
もしデミワイバーンの死骸を運び出そうとするアダマンアントがいれば優先的に攻撃しようと考えていたのだが……今のところは問題なさそうだった。
あるいはライオリットたちを代わりの餌として持ち帰ろうとしているのかもしれないが……紫琳も飛行しながら状況を確認している為、見逃す事はないだろう。
「表皮が硬いのであればその隙間を狙えればあるいは……!」
その紫琳も曲芸射撃で関節部……そして脚の付け根や触覚部など、弱点となりうる部分を積極的に狙っていた。
弱点がわかればこれからの作戦にも役立つだろうという、そういう考えだったが……やはり狙う価値はある程度ありそうだった。
「絶対に回収なんてさせないんだから!」
ユウェルも壱式・竜爪でアダマンアントを薙ぎ払うべく襲い掛かっていく。
集中砲火と、ネオサイクロプスという火力を手に入れたユウェルたちの優位は揺らぐことなく、アダマンアントの、その全てを撃破する。
流石にネオサイクロプスも疲れたのか荒い息を吐いていたが……利用されたことは分かるのだろう。
ジロリとこちらを見下ろしているのが分かる。
「あの……ご機嫌取り……やっぱり、わたしのしっぽじゃないと、ダメでしょうか……? 再生は、しますけど……痛いおもいをするぶん、せめて、おいしく食べてくださいですの!」
ノリアがそう提案するのを、仲間達が「まあまあ」と抑える。それは最後の手段でもいい。
「妖精印のおいしいリンゴよ。私のお気に入りなんだから」
領地でおいしくなるように作られたリンゴだもの、香りも味も保証するわ、と言いながらオデットが差し出したのは妖精印の林檎。
真っ赤で艶やかでいい香りのするおいしそうなリンゴをネオサイクロプスは口の中に放り込み、まあ当然だが一口で食べてしまう。
(領地の林檎の布教できたりしないかしら……)
その姿を見ていてオデットはそんな事を思うが……まあ、オデットの頑張り次第だろう。
そしてルカはなんと簡易キッチンを広げて料理をしていた。
「ま、ちっとばかし見てな!」
使う食材はデザストルの旅で手に入れたものばかり。
「でけえ亜竜の肉にしっかり火を通してから竜牙酒でフランベして香りつけ副菜にフリアノンポテトのじゃがバターと里で育てた野菜をつける……っと」
出来上がったソレは、本当に美味しそうな香りを放っていて。
「ほら、お前さんの地元のもんで作った料理だ。美味ぇぞ」
それもまた、ネオサイクロプスは一口でパクッと食べてしまう。
「気に入ったんならまた作ってやるよ」
そんな事を言うルカに、ネオサイクロプスは無言。まあ、元々言葉を理解しているかは怪しいのだが。
「まあ、そうだよね。グルメなネオサイクロプスさんのご機嫌を取らないとね。こっちの都合で一方的に利用してさようなら……じゃ、流石に申し訳ないし。報告書で今迄グルメさんが興味を示してた食べ物とかを用意するのは難しかったけど……美味しいお肉を用意してウルトラ上手に焼き上げてみたよ!」
言いながら花丸が差し出した肉も、ネオサイクロプスはパクリ。
そしてエーレンも高級肉を野趣あふれる感じで炭火焼きにして差し出す。
良い肉の味わいを最大限活かすべく味付けは塩コショウのみだ。
「ノリアの尻尾を差し出させるのは忍びないので、これで満足してもらえるといいのだが……」
「では、私からも持ってきたこの高級肉を贈りましょう。量は物足りないかもしれませんが、誠意を示すにはこれが良いと聞いたことがありますので」
言いながら、紫琳も高級肉を取り出す。
「『落ち込んだ時、肉が答えです』『焼肉は全てを解決する』等、外界ではお肉に関する格言も多く存在するとのことですしね。彼の舌も満足させることができるでしょう」
メガネをクイッとさせる紫琳の前で、その高級肉もネオサイクロプスの胃に納まって。
しばらく黙っていたネオサイクロプスは槍を担ぐと、そのまま何処かへと歩いていく。
グルメ欲が満たされたので満足した……ということだろうか?
とにかく、彼との戦闘は回避できたようだった。
「じゃあ、ワイバーンさんのお墓作ろっか」
ユウェルのそんな言葉に、全員が頷く。
「放っておいて別のアリさんに回収されちゃったら困るし埋めるだけじゃだめだろうから燃やしちゃうのがいいのかな」
そう、アダマンアントであればそれも容易だろう。
だからこそ火をつけて、火葬にする。
「みんなのお友達をちゃんと送ってあげるからね」
これもワイバーンさんたちに伝わってるといいな……と呟くユウェルだが……まあ、伝わらなくともその誠意は、きっと何かを救うだろう。
それは心正しき者だけが持ち得る、輝けるものなのだから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
アダマンアントを無事に撃破しました!
GMコメント
フリアノン近辺の岩場にてデミワイバーンとアダマンアントが戦闘中です。
状況はデミワイバーンが大きく不利。
この戦場に介入し、アダマンアントによる「回収」を阻止しましょう。
グルメなネオサイクロプスを上手くアダマンアントにぶつける事が出来れば、相当楽になります……が、相応に恨まれるので機嫌を取る方法も考えましょう。
●モンスター
・デミワイバーン×36
ワイバーンの中でも比較的小型種。
弱いわけではないが、デザストルに住むモンスターとしては比較的下位の実力。
火を吹くブレス攻撃、鋭い爪による攻撃と、相手を掴んで空中で振り回す攻撃を使用してきます。
・アダマンアント×24
嫌になる程硬い巨大アリ。攻撃方法は岩をも溶かす酸を弾丸のように飛ばす技と、強靭な顎による振り回し&叩きつけ攻撃です。
デミワイバーンを狙っているようですが、皆さんを狙わないわけではありません。
・グルメなネオサイクロプス
覇竜領域デザストルを闊歩する強大なモンスターのうちの1体。
1つ目の巨人で、その辺で引っこ抜いてきた巨木を槍に加工しています。
攻撃方法は突き刺しと連続突き、踏み潰し。
開始時点では現場からちょっとだけ離れた草地でぐうぐう寝ています。
グルメなので、食べ物の匂いなどで起きるかもしれません。
●棕梠
覇竜領域デザストルに存在する亜竜集落ウェスタで生まれ育った少女。
実年齢は定かではないが外見は14才程度の少女。
曰く、ウェスタにも一昔前から居たともされるが真偽の程は分からない。
常に眠たげにしており、地下の日の当たらぬウェスタでも『お昼寝スポット』をぼんやりと探し歩くことが多い。
余り多くを語らない彼女は平穏を望み、優雅な昼寝こそが至上のものであると認識しているようである。
基本は魔術師タイプであり、水を手繰り操ることに長けている。
なお、今回は皆さんに同行しています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
指定されたルートを通る限り、行きに関しては想定外の事態は絶対に起こりません。
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