シナリオ詳細
VDMランドのアイドルを募集しています……というか、君にはVDMランドのアイドルになってもらうよ! 君に拒否権はないよ! 私はプロデューサーの虎!
オープニング
●今回のあらすじ
リア・クォーツ (p3p004937)とドラマ・ゲツク (p3p000172)が目を覚ましたら、見知らぬ病室のベッドの上にいて、白衣を着たとらぁくんが此方を覗き込んでいた。
●いい加減アイドルデビューしたまえよ! 私は虎P!
「落ち着いて聞いてください。あなた達が寝ている間に、あなた達二人のアイドルデビューが決定しました」
と、とらぁくんが言ったので、リアとドラマは思わず目を見開いた。
『しゃ、しゃべった!?』
「ふふふ、とらぁくんはしゃべっていないよ!」
と、よく見たら、奥の方に看護婦の格好をしたマリア・レイシス (p3p006685)がいる。どうやら、先ほどの声はマリアの腹話術らしい。腹話術くらいできるよ! 優秀な軍人だからね!
「マ、マリア!? あなた一体どういうつもり!?」
リアがベッドの上で身をよじる。気づけば、四肢を拘束されている様だ。それはドラマも同じ。いったいどうして……。
「……思い出してきたのです。たしか、ラド・バウからの帰り道、なぞのとらぁくんに後方から追突されて……」
「そう言えばそうだったわ……」
ちなみに、とらぁくんはもふもふなので、追突されても二人には怪我一つない。もふもふだからね。
「そうだよ! 実は、いつまでたってもアイドルデビューしない二人に、流石の私も我慢の限界なんだ!
そこで、今日! ちょっと強制的に集まってもらったんだよ!」
「マリアさん、落ち着いてください!」
ドラマが声をあげる。
「いつものマリアさんらしくありません……いったいどうしたのです?」
「そうよ、こういうやり口、まるで焔のパターンだわ!」
「ふふふ、気づいたようだね! うれしいよリアちゃん!」
ぴょん、と物陰から、ナース服を着た影が飛び出す! ああ、それは見間違うはずもない! 炎堂 焔 (p3p004727)だ!
「そう! 炎神の子、炎の巫女、そして敏腕アドバイザー、炎堂焔ここに推参! だよ!」
「焔ァ! アンタの差し金か!!」
「焔君には、アドバイザーとして今回のデビューを仕切ってもらっているんだ!」
マリアが、むふー、と胸を張る。どうやら焔に全幅の信頼を寄せているらしい。
「というわけで年貢の納め時だよ! 二人とも! ここ、VDMランド特設ステージで華々しくデビューし、観客を沸かせてもらうからね!」
「ちゃんとグッズも販売してるよ! チェキ、ブロマイド、アクリルスタンド! 売り上げは全部VDMランドの運営資金と、ヴァリューシャの酒代になるから心配しないで!」
「何も安心できない……!」
ドラマが、目をぎゅーってつむってぐぬぬって顔をした。
「ど、どうしましょう……このままでは、2人で辱められることに……!」
「言い方がヤバいわ、ドラマさん! でも……そうね。私にいい案があるわ」
リアが、にやり、と笑う。ドラマが、ごくり、とつばを飲み込んだ。
「こ、この難局を切り開く手が……?」
「ええ……いい? ドラマさん。気を隠すには森の中。葉を隠すには葉の中。つまり、数が多ければ、それだけ私たちが目立つ可能性はさがる……!」
「つまり……?」
こくり、とリアは力強く頷くと、
「提案があるわ! 二人とも! いい? 私たち二人だけでは、VDMランドを支えるアイドルになれるか不安なの。
そこで! 多人数アイドルグループを結成することを提案するわ!」
「多人数!?」
「アイドル!?」
「グループ!?」
「とらぁ……」
リアの提案に、マリアの、焔の、とらぁくんの脳裏に衝撃が走る! ドラマは「何を言い出したんだこの人」みたいな顔をした。
「そう……そして、アイドルの目星はついてるの。一気にいうわ! IDもつけるから間違えようがないようにね!
アーリア・スピリッツ (p3p004400)!
ジェック・アーロン (p3p004755)!
イーリン・ジョーンズ (p3p000854)!
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル (p3p008017)!
小金井・正純 (p3p008000)!
このメンバーが、アイドルに最適、という業界の調査も出ているわ!」
「そうなのかい? 敏腕アドバイザー君!」
マリアが尋ねるのへ、焔は頷いた!
「うん!!(正直よくわかんないけど、面白そうだから全員巻き込もう!!!)」
「心の声が漏れているのです……」
ドラマが怯えたような目で、リアを見やる。
「任せて。あたし達だけが死ぬわけじゃない……こうなれば全員、道連れよ……!」
「狂ってる……」
ドラマは戦慄した。
●君たちにはアイドルになってもらうよ! 私は虎P!
と、今回の被害者たちが詰め込まれたのは、アイドルステージの控室だ。そこには、様々な表情で虚空を見つめる今回の被害者たちがいる。
例えば――アーリアさんは、とりあえず懐からスキットルを取り出すと、中に入っていたお酒をあおった。髪の毛の毛先がほんのり琥珀色に輝く。素面ではやっていられそうになかったのである。
「……どうして……?」
アーリアさんがぼんやりと呟く。その衣服は……ああ、フリフリのアイドル衣装……! 皆目をそらしていた。誰も、アーリアの言葉に応えらえるものはいない。何故なら、どうしてこうなったのか、誰もわからないからだ……。
「どうしてこうなったかはさておき」
こほん、とリアが言う。
「今やるべきことは……舞台を成功させることよ」
「どうしてそんなに前向きなんですか?」
正純が死んだ魚みたいな目で言う。
「正純さん。よく考えてみて? アイドル。これは偶像という意味があるわ。偶像、つまり信仰を集めるための、まさに偶像」
「信仰……」
「つまり……アイドル活動とは、すなわち信仰……これも、信仰の一つの形……!! 星の巫女たるあなたの活動には、プラスになるはず……!」
「なるほど……なるほど?」
正純は嫌そうな顔をした。
「ぶっちゃけ生贄が欲しかっただけだよね?」
ジェックが本質を突いた。
「……というか、アタシ、アイドルとか言う柄じゃないのに。なんで連れてきたの……」
「おや、ジェック殿は充分、可愛らしいと思うけれどな?」
ブレンダが笑う。
「アイドルらしくないというのなら、私の方がそうだろう。私は騎士であり、部下からの信を担う身ではあったが……アイドル、となるとな」
「それ、私の前で言える?」
胡乱気な表情で、イーリンが言った。
「もっともかけ離れてるなら、私が立候補したいわね……こちとらただの冒険者よ?」
はぁ、とため息をつくイーリン。まさか自分が、アイドルだなんだととらぁくんに拉致されてくるとは、思いもよらなかった……。
ここにいるメンバーは、リアの指示に従い、とらぁくんがとらぁ……して連れてきた者たちだ。突然連れてこられて、アイドルになれ、と敏腕虎Pに言われて、ここに放り込まれている……。
「ちゅうか、それ言うたら一番意味わからんの儂なんじゃが」
なんか唯月 清舟 (p3p010224)が言った。
「え? ちゅうか、なんで儂ここにおるんじゃ? なんで?」
なんか唯月 清舟 (p3p010224)が居た。皆「わからん」みたいな顔をしている。
「ふふふ……事故だよ」
と、ばーん、と扉が開いた! そこには、黒いスーツを着てグラサンつけた、敏腕アドバイザー気取りの焔が居た!
「焔ァ!」
「ふふふ、私もいるよ!」
と、隣には、黒いスーツを着てグラサンをつけた、敏腕虎プロデューサーのマリアもいる!
「とらぁくん、たまに動くものを無差別に連れてきちゃうからね! 清舟君は、猫じゃらしを狩るついでに連れてきちゃったんだって」
「え? 儂、猫じゃらしのついでなん?」
「経緯がどうであっても、ここにいるからにはアイドルになってもらうよ!」
焔がにこにこと笑って言った。
「でも、女性用の服しか用意してないから、斬るのは女性用の服にしてね! 嫌ならどっかその辺からそれっぽいの持ってきて!」
「えっ」
「さぁ、VDMディーヴァの皆! いよいよ本番だよ!」
マリアが言うのに、アーリアが首をかしげた。
「今集まったばかりなのに?」
「練習をかいてる余裕とかないと思うよ! OPの時点で、いま3000文字くらい書いてるからね!」
「なるほど……確定参加者も10人……これは厳しいわね……」
ごくり、とアーリアがつばを飲み込んだ。
「というわけでぶっつけ本番だけど、皆には期待してるよ!」
マリアがにこにこというのへ、しかしリアとブレンダは目くばせをし、無言で焔とマリアの背後に忍び寄る。すると、そのまま羽交い絞めにした!
「えっ」
「まさか、自分たちだけ安全地帯からリプレイに登場できるとは思っていないわよね?」
「こうなったら、2人にもアイドルになってもらう」
「そ、そんな! 今回は裏方でぬくぬくできると思ったのに!」
焔が叫ぶ……が、そんなことはお構いなしだ!
「皆! 今のうちに二人を着替えさせるのよ!」
リアの号令に、皆が一斉に飛び掛かる!
――そしてしばし後。
10人のアイドルが、ステージに立つ!!
- VDMランドのアイドルを募集しています……というか、君にはVDMランドのアイドルになってもらうよ! 君に拒否権はないよ! 私はプロデューサーの虎!完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年03月30日 22時35分
- 参加人数10/10人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●オン・ステージ!
VDMランド・スペシャルステージ開催される――!
この度デビューした新アイドルユニット、VDMディーヴァ、初登場!
初々しくも確かな実力を持つ、可憐な10の華をお楽しみあれ!
メンバーはこの十人!
『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)
『白砂糖の指先』ジェック・アーロン(p3p004755)
『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)
『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)
『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)
ステージ観覧料は無料(ワンドリンク制・VDMランド入場料は別途必要)!
当日は様々なグッズの販売も予定しています!
「おうえええええええええっ!!!!」
アーリアが呻いた。抱え込んだ頭はすでに七色に輝いている。飲んだのだ。その服は、フリルをあしらった、淡い紫を基調としたロリータイメージの衣装だ。
「アライグマのね……スタイリストのアーラ・イーって人がね……良く似合ってますよアーリアさん、すてき! って笑いながら……うふふ、アーリア、もう無理ぃ……」
「まずい、アーリアの正気が維持できないわ」
イーリンが口元に手をやる。かなしいものを見るような目で。
VDMディーヴァ、歌姫たちの控室。そこには、本番前の緊張……というよりは、これからバンジージャンプします、みたいな空気が漂っている。
「ふふ、アーリア君! 自信を持ってくれたまえ!」
マリア・プロデューサーの虎・レイシスが満面の笑顔で言う。
「敏腕プロデューサーの私が言うのもなんだけど、アーリア君の魅力はばっちりさ! アイドルの素質がある……私は軍人だけど、ううん、だからこそ、人を見る目はあるつもりだよ? そう! アーリア君なら、世界を魅了できる!
そうだよね、敏腕アドバイザー君!」
「うん! そうだよ、マリアちゃん!」
と、炎堂 敏腕アドバイザー 焔がうんうんと頷いた。ちなみに、2人も可愛らしいアイドル衣装を着ているが、他のメンバーのような忌避の感情は見受けられない。むしろ楽しんでいる方だろう。
「止めてください、マリアさん。前向きな言葉も、言葉のナイフになることがあるんです」
正純が戦慄した様子で言う。アーリアがもう何杯目かになる酒のグラスを空けた。
「でも、流石リアちゃんとドラマちゃんが選んだメンバーだよね! うん、絶対に、楽しい舞台になるよ!」
その焔の言葉に、メンバーの視線がじろり、とリアとドラマにむいた。
「あ、やっぱり、私も巻き込んだ側、扱いなんですね……」
あきらめの境地でドラマが言う。
「どちらかと言えば、私は巻き込まれた方のはずなのに……寧ろこのリクエストシナリオの経緯を考えたら代役として巻き込まれたのは私のはず、と言う謎の声が聞こえた気がした、のですが。
ああ、狂っています。狂っています、が、私とリアさんの2人だけでこの重責を果たすのは荷が勝ちすぎているので、皆には巻き込まれて貰いましょう」
自分の手に負えない事態が起きたらどうすればいいのか? 簡単だ『仲間に助けを求める(なかまをいけにえにささげる)』ことが重要なのだ。これが友情である。
「こうなったら仕方ないわ」
こほん、とリアが咳払い。
「思い出して、これまで私たちが積み上げてきた、長く苦しい練習の日々を」
「うむ……なんか、したような気がするな……したような気がする……此処では描写しないが、確かに、辛く苦しい日々だった……」
ブレンダが言う。その辛さと苦しさは、大半が羞恥心との闘いだった気がするが。練習の日々は、誰か好きな方にイラストとかSSとか頼んで好きに捏造してもらえればいいと思う。皆の努力と友情の練習の日々作品をお待ちしています。
「つらい……混沌世界には神が実在するけれど、実際のところ神は死んだのでは……?」
ジェックが死んだ魚みたい眼をして言った。正純と対になる様なイメージの、ペア衣装である。カラーは白と赤を基調とし、それぞれお互いに、そのメインカラーが違っている。もちろんフリルはふんだんに。
「ゴネたら降りれたりしない?」
「だめだよ! 私はプロデューサーの虎!」
「ダメ? そっかぁ……」
あきらめの境地。
「いや、なんじゃ、みんな、当然のように儂をおいちょるが」
清舟くんがなんか言った。
「適応しすぎじゃろ……なんか、すごくきらびやかな練習の日々に……女子同士の友情に……儂も参加しちょった気がしてきた……。
ええんか、おんしら……これ、いや、儂がおってええんかこれ……?」
「いい、清舟さん」
リアが言った。
「同じ地獄に落ちるのに、男だの女だの言ってはいられないわ」
目がぐるぐるしてる。
(これが地獄を見てきた奴の目か……)
清舟は戦慄した。
「それより! そろそろ舞台の時間だよ!」
焔が声を上げた。
「演出的に、控室の映像を映しつつ、ステージにパーン! って感じにするからね!」
「なるほど、良い演出だね! ほら、アーリア君も笑って! 始まるよ! 3,2,1,はい!」
無音ドローンカメラが、控室の映像を撮影し始めた。もう賽は降られてしまった。やるしかない。
「うそ、もう出番!? もぉ~、控室映すの禁止ぃ~☆」
きゃぴ、と笑顔をカメラに向けたのは、アーリアだ。酔いが頂点に達したのか、もうどうにでもなれゾーンに入ったのか、この時、誰よりもアイドルをやったのがアーリアだ!
「す、すごい……! まるでプロのよう……!」
正純が感心した。プロではないのだが、何だろう、アーリアさんは真面目なのだろう。だからこうして、なんにでも全力を尽くすのだ……。
「さぁ、皆行くわよ! イーリンも、騎兵隊として負けてられないわね! 誉れ高き騎兵隊の頭領ですものね!」
ぐっ、とリアが親指を立てた。イーリンが嫌そうな顔をする。
「なんで騎兵隊を引き合いに出すの? 誉れ高きとか超恥ずかしいんだけど?」
「一番槍は任せるよ――騎兵隊頭領」
ここは流れに乗っておけばとりあえず被害を減少できるだろう、とジェックも流れに乗った。
「そうだな、頑張れ――騎兵隊頭領」
ブレンダも弾避けに専念する。
「ああ、もう! 騎兵隊の頭とか関係なくない??
うう、わかった、わかったわよ!」
それから、すぅー、と息を吸い込むと。
「 覚 悟 完 了
私、アイドルやるわ!」
絶望の光の輝く瞳で、イーリンはそう言った。リアは満足げ気に頷く。
「今日はいよいよ本番よ。
今まで血の滲むような努力をしてきたあたし達だけど、そのお陰で絆は十分深められたと思う。
大丈夫大丈夫! あたし達は完璧なアイドル!
ヴァレーリヤの酒代を稼ぐアイドル、VDMディーヴァ……いくわよ! オー!」
『オー!』
黄色い声が、控室に響いた。その映像を見ていた、会場のファンの歓声が巻き起こる! 駆けだす、ヒロインたち。いや、アイドルたち! カメラは彼女たちの背中をおって、そして、光の道を通ったまま、ついに、ステージへ――。
●わたしたち、アイドル!
「みんなー! 今日はライブに来てくれてありがとう♪
私はプロデューサー兼、アイドルのマリアだよ!
当園自慢のアイドル達の晴れ舞台を楽しんでいっておくれ!」
マリアがマイクを手に、そう声をあげた。観客席から歓声が響くと同時、勇壮さを感じさせるBGMが鳴り響く。
「まずは私達――VDM・キャバルリィの三人がお相手!」
男女を問わぬ歓声が響く。ステージ中央に飛び出したのは、マリア、焔、イーリンの三人だ。マリアは、イーリンにマイクをほうってよこす。イーリンは、それを高らかにジャンプして、受け止めた。観客席から歓声が響く。
「みんなー!! 今日は来てくれて、ありがとーーー!!
私たち、精一杯歌うから、みんなも全力で応援してねーーー!!
一曲目からぶち上げていくから、乗り遅れるんじゃないわよー!!」
イーリンの声に、観客たちから応答の歓声が響き渡る! ステージの口火を切るのにもってこいのナンバーは、イーリンが作詞作曲を手掛けた、VDM・キャバルリィのヒットナンバー!
「『突撃・恋のカラコール』――!」
歌いあげる、乙女のナンバー。果敢に突撃、一気に反転。誘惑して、奇襲するの。気づいた時には、ずっと遠く。捕まえられる? 私のテイル――!
順々にパートを分けて歌い上げていく、三人。マリアが、ステージを盛り上げるように紅の雷を放ち、焔はその紅蓮で以って恋の炎をあげききる。
「みんなに楽しんでもらえるように、ボクも頑張って用意してきたんだ!
今日が皆の中で大切な思い出になるように、頑張って歌うね!
さぁ、ついてきて! まだまだボクたちのパフォーマンスははじまったばかり!」
焔が客席をマイクを突き出す! 同時、「ほっむらちゃーん!」という声が鳴り響いた。ファンからのコール。ふと、あの子を思い出す。あの子には、送る側。今は、もらう側に。
「ありがとー! さぁ、ついてきて!」
焔がぴょん、と飛び跳ねて空中で身を翻す。マリアの描いた幻影が、まるで炎が虹を描いてまうような演出を見せた。
――この日のために練習したの(突然拉致されたけど)
――喉が枯れるほど唄ったの(やけ酒を控室で煽ったけど)
――それは一体なんのため?(マジで私もそう思う)
――みんなとここに居たいから!
「マリア! 焔!」
イーリンが両手をあげる。その手に掴まるみたいに、二人は手を差し出した。三人が一緒に、ステージを駆けまわる。観客席に向って、客席の合間に通された通路を、ウィニング・ラン――。
三人がステージに舞い戻った瞬間に、曲は終わった。割れんばかりの拍手が鳴り響く中、三人はゆっくりとステージ後列に戻る――。
それと入れ替わりに、静かに舞い戻ってきたのは、ふたりのスナイパー。正純。そしてジェックだ。
「さあ、行きますよジェックさん! ここまで来たらもうパッとやってパッと終わらせた方が早いです! 経験的に!
私の弓と貴女の銃で観客のハートを撃ち抜きましょう!」
観客達から、ドット笑い声が響く。「正純ぃぃぃ! わいや! みとるでぇぇぇぇ!」みたいなファンの声が響いたので、正純は客席に向かって笑顔で手を振ってみせた。
「そう、これは依頼これは依頼これは依頼 やるしかないやるしかないやればできるやればでき……、
皆ーーー! 盛り上がってるぅーー!?
次はアタシ達が、キミのハートを撃ち抜いちゃうぞ☆」
ばぁん、と指で銃をジェスチャーして打ち抜いて見せると、観客席から黄色い悲鳴が響き渡った。ジェックちゃんは、その透明な雰囲気から、女性ファンも多いのだ。
先ほどとは変わった、少し静かな曲が流れだす。静かなれど、想いは燃え上がる。いわば、静かな青色の炎か。
「かならず、あなたのハートを撃ち抜く――私達」
「『デュアル・シューター』が、あなたを狙ってる☆
アタシ達のココロ、歌に乗せて届けてあげるから──ちゃんと受け止めてよね!」
リアもドラマもいつもこんなことしてんの? 黒歴史製造機か? 吐きそう、と思わずつぶやきそうになったが、ジェックは必死で耐えた。何にしても、歌わねばならぬ。二人のパフォーマンスは、動的ではない。どちらかと言えば、先述した通り、元気いっぱいというよりは、思春期の少し複雑な恋心を謳ったような楽曲だ。
でも、静かなれど、情熱は一番。
「ほら、気づいて――BAN☆ BAN☆」
撃ち抜く銃弾は、恋のおまじない。あなたに届け、あなたを射止め。気づいてほしい、私とアタシの、恋の気持ち――。
貫く射手、恋のスナイパー。二人のディーヴァが、ウィンク一つ、口づけ(ワンショット)。曲の終わりと同時に、ハートを撃ち抜かれた観客たちがばたんと倒れて救護室に運ばれて行きつつ、さておき二度目の場面転換が訪れる。
「あなたのハートをきゅっと生搾り☆ サワーで乾杯、アーちゃんよぉ」
アーちゃんがきゅ、と胸のあたりでレモンを潰すようなジェスチャーをした。ファンの中ではおなじみの、レモンポーズだ! 隣にはブレンダ、清舟の姿も見える。
「清子ちゃんをよろしゅうなぁ〜〜!!」
清舟……いや、清子ちゃんが、可愛らしいアイドル衣装で手をふった! 観客達から、黄色い悲鳴が上がった!
「え、なんでみんな儂受け入れてるん……?」
清子ちゃんが一瞬、素に戻ったが、このリプレイでは素に戻った回数が多い奴が負けである。いかん、と清子ちゃんは頭を振ってから、
「儂ら『VDMうわキツチーム』、目を離さんと、ちゃんとみちょれよ~!」
観客席から、「儂っ娘か、いいな」みたいな声が響いたので、清子ちゃんの心のパンドラがゴリゴリ削れた。
「は~~いみんな~ブレにゃんだよ~☆
うわキツトリオなんて名前だけど清ちゃんとアーちゃんと一緒に頑張るよ☆」
ブレにゃんが、きらきらの黄色のフリルアイドル衣装で両手を振ってぴょんぴょん跳びはねる! ブレにゃんには女性ファンも多いので、個のファンサービスには男女問わずに感激の悲鳴を上げている!
「それじゃぁ、皆、いくにゃん☆
『きみと私をブレンドして』、いっくにゃー!」
ブレにゃんが声をあげると同時に、清子と同時にアーちゃんの背中を押した。アーちゃんを半ば強引にフロント・センターに立たせたのである。アーちゃんが一瞬すごい顔をしたが、すぐににこりと笑って、
「やられちゃった~☆ よーし、今日はアーちゃん、センターがんばるね~☆」
とか言った。心のパンドラがゴリゴリ削れる音が聞こえた。
『きみと私をブレンドして』、明るく可愛らしい、少女を歌った恋の歌だ。誰だこのメンバーで恋の歌? みたいなこと言った奴、皆必死に頑張ってるんだぞ。
「きいて~☆ 皆~☆
せいしゅーうん(青春)のアリアをー♪
\一緒にうたおー/」
\一緒にうたおー/
観客席にマイクを向ければ、観客たちのコールが巻き起こる。
「ふふ、ありがとー!」
清子ちゃんが可愛らしく手を振った。かわいい。
「ブレにゃんも、皆と一緒に歌いたいにゃー☆」
ブレにゃんが、ぱちり、とウィンク一つ。直撃した女子があまりのうれしさに気絶して倒れた。
「とろけるくらいに☆ まざりあいたいの☆
きみと私、ぶれんどして☆」
ブレにゃんがフリルのスカートをフリフリしながら歌う。その可愛らしさには、洗井落雲も気絶して、ここで執筆を中断して30分寝込んだ。
さておき、乙女の恋を歌った可愛らしいポップソングは終わりを告げた。うわキツの三人が、
「せーの、ありがとー!」
アーちゃんの音頭と共に、仲良く、勢いよくお辞儀をする。ひらり、と清子ちゃんのスカートがまって、ちらりと見えたので、ここで洗井落雲とファンは一時間寝込んだ。
冗談はさておき、三度目の場面転換の後は、いよいよ本命の二人、といってもいいのかもしれない。そもそも、このステージは、この二人のために用意されたもの、といっても過言ではあるまい。
さぁ、皆も二人の名前を呼んで。
ドラマ・ゲツク!
リア・クォーツ!
そう、2人は永遠のヒロイン。究極無敵のアイドル。混沌のすべての偶像の頂点。神像建立。手札誘発。あと……まぁ、とにかくすごい!
「みんなーーーー楽しんでくださっていますか!?
まだまだ盛り上がっていきますよーーーーッ!!」
アイドル衣装のドラマが、センターで両手を振った! ドラマーッ! おれだーッ! 結婚してくれーッ!! 観客席から声が響くのを、ドラマは冷静に手を振っていなした。
「皆ー! 盛り上がってるー? 今日のステージは、まだまだこれから盛り上がるわよー!」
リアも、『いつもの』アイドル衣装で、マイク片手にぴょん、と飛び跳ねた。元気いっぱい、愛情いっぱい。そんな愛らしさをアピールするそのしぐさが、女子に男子にも人気の秘訣である。
「みんな、今日はどんな歌が聴きたいですか?」
ドラマが、マイクを客席に向ける。様々なリアとドラマのヒット曲の名が上がる中、やはり最も多かったのは――。
「やっぱりそうよね、『ロマンティック×ドラマティック』!」
リアがそう声をあげた瞬間、あの名曲、『ロマンティック×ドラマティック』のイントロが流れ始めた! 観客たちが興奮の声をあげる! そう、『ロマンティック×ドラマティック』。混沌に生きるものなら、知らぬ者はいないだろう、あの名曲だ! えっ、聞いたことない? PPPモグリの方? 多分リアかドラマのボイス欄にあるはずだし、無かったら年内にできると思う。
「聞いて、届いて、私たちの気持ち……あの青の果てまで!」
リアとドラマが、頬を寄せ合って、ウインク一つ。同時に、投げキッスをしてみれば、観客たちが次々と倒れていく! 幸せのファンサに、観客たちの忍耐が耐えられなかったのだ! アイドル、それはもはや、一つの生ける伝説である。その伝説の最前線に立ちづるけるのがこの二人! 『ロマンティック×ドラマティック』、リア&ドラマだ!
「いくわよ、ドラマ! あたしたちの魅力、思いっきり見せつけるの!
だってあたしたち達はスーパーアイドル! そうでしょ!」
両手を絡めて、身体をくっつけて。見つめ合う、ふたりの瞳。その瞳の中に、己を見る。その瞳の中に、恋するあなたを見る。
二人は恋をしている。想いを持っている。だから美しい。だから輝ける。
「はい! 最高のパフォーマンスを、皆さんに! そして――」
あなたに。だって私達は、最高の、恋する乙女(アイドル)なのだから――!
静まり返る、観客席。音が止まり、静寂が訪れる舞台。
真に心に迫る、アイドルの姿を見せられた時に怒るものは何か。
悲鳴? 歓声? どれもちがう。まずは沈黙。それは、神が降臨したにも似た、神聖なる沈黙。
歓声も、拍手も、それからだ。
割れんばかりの拍手。二人に惜しみなく降り注ぐ、それは、ファンからの愛の証。
「ありがとう!」
「ありがとうございます! でも――」
二人がそう声をあげた時、残るメンバーが、一斉に、ステージへと飛び出した! 最前線で、一列に並んで。その手を繋いで。
「まだまだ、夢は終わらない!」
イーリンが、言った。
「たとえひと時の夢でも、今この瞬間は!」
マリアが、言った。
「ずっと続く、刹那の永遠を――」
ジェックが、言った。
「皆の心に!」
焔が、
「刻み込む!」
正純が、
「私達の最後のナンバー!」
ブレにゃんが、
「聞いてください!」
アーちゃんが、
「最後まで、駆け抜けてくぜ!」
清子ちゃんが、
「いくわよ! VDMディーヴァ!」
リアが、
「『終わらない、レインボードリーム』!」
ドラマが、
皆が、歌い出す。
皆が紡ぐ、それは軌跡。
可能性を生み出す、偶像たちの歌唱。
それこそが――僅か、今この瞬間、今この夜だけの出来事だとしても。
現実に存在する、輝かしい、奇跡であることに。
誰もが刻み込む。
これこそが――究極のアイドルだと!
ステージは大成功の裡に終わった。熱の冷めやらぬなか、控室では、アイドルたちが、満面の笑顔で、見つめ合っていた。
「すごいよ、皆!」
プロデューサーが、言った。
「私も感動したよ! アイドルってすごいね!
じゃあ、次回もみんな、よろしくね!」
にこにこと、感動した様子で、プロデューサーが言ったので。
アイドル達は、異口同音に、こう言った。
『絶対嫌』
完。
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
あ、物販のチェキお願いします。全員分、一枚ずつで。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
これはリクエストシナリオなので、僕は悪くないです。
●成功条件
ステージを成功させる。
●情報精度
このシナリオの情報精度は虎!
この依頼は虎! 参加した君も虎! 見てくれた君も虎!
●状況
VDMランドで、アイドルグループ『VDMディーヴァ』としてアイドルデビューします。
というわけで、描かれるのはアイドルステージ……ドキドキの友情、素敵なラブソング、びっくりのハプニング――ステージにはすべてが詰まっています。
まぁ、要するに何をすればいいのかと言えば、
マイクパフォーマンス
衣装や演出の指定
歌唱(著作権に反しないもの)
ネタ
ファンサービス
……などなど、とにかく何でもして、アイドルステージを盛り上げればいいわけです。
やるべきことはシンプルです。始まりは強制であっても、今はもはや皆さんはアイドル。立派に勤め上げてください。
●ステージ
VDMランド特設ステージが、今回の舞台です。あると思ったものは何でもあります! なんでも利用し、とにかく客のボルテージをあげましょう!
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
相談は、VDMディーヴァの控室という体でお話しください。
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