PandoraPartyProject

シナリオ詳細

揺蕩彩色の水鉱石

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「「あ」」
 声が揃うのは同時で、先に次の言葉が出たのはドラゴニアの少女――ニナだった。
「こんにちは。集落は慣れてきた?」
「なれて……うぅん」
 どうだろうか、と首を傾げるミラ・ミラ(p3p009334)。なにぶん、覇竜領域デザストルだけでなく、ローレットで受ける依頼自体も初めてだったものだから。慣れたと断言できるようになるまでは、きっと沢山の時間がかかるのだろうと思う。
 ミラの返答にニナは目を瞬かせると、少し考える素振りを見せる。そしてミラの方を向き直し、もし良ければなんだけれど、と切り出した。
「またひとつ、頼まれごとをしてくれないかな?」
 ぱちりと深緑の瞳を丸くするミラ。ニナはこれから、また姉に頼まれて素材採集に向かうのだと言う。
 前回の依頼では詳しく聞けなかったが、ニナの姉イチカは砂や土、鉱石などを砕いて水と練り上げ、工芸品や道具などを作るクリエイターなのだそうだ。そのためにニナは調達係として外へ出ることが多い。イチカの人使いも荒くなるし、多少の荒事だって慣れるもの。
 ニナはニナで、頼まれた素材を取るついでに他の植物や鉱石も採取して、他の者と売買するのだという。危険な場所に行けない者もいるから、需要と供給が一致するのだ。
「つぎは、どこにいく、ですか?」
「水の中で光る鉱石を探しに。水中に出来る鉱石なんだけれど、それがある水たまりは不思議な色合いに輝くんだ」
 様々な色が折り重なり、水面が揺れれば光の屈折でまた変化していく。素材として取りに行くのは勿論だが、デザストルで見られる中ではかなり美しい場所なのだと。
 しかし集落の外へ出る以上、危険はつきものだ。ニナが狙っている場所もまた、亜竜たちが餌を食べに来ることがある。うっかり鉢合わせでもしたら大変だろう。
「1人なら彼らが去っていくまで待つけど、イレギュラーズが一緒に来てくれるなら早く仕事も終わるし。折角なら他の人にもあの景色を見てもらえたら嬉しいな」
 危険な場所に誰もが行けるわけではないから――あの場所を知るのは数少ない。それをほんの少し寂しそうに笑ったニナは、それじゃあ行こうかと手を差し出した。ミラはきょとんとその手を見る。
「他のイレギュラーズだって呼ばないと。護衛依頼ってやつでしょ」
 一緒に戦うけどね、とニナは片目をつぶってみせて。それから再び、ミラへ促すように手を出したのだった。



 その鉱石は、地上で見るだけではただの半透明な鉱石だ。柔らかくて、手でもあっという間に砕けてしまう。だから持ち帰りたい者は柔らかな布を持って行って、大事に大事に包む。
 鉱石の中心を凝視すれば、わずかな靄があることは見えるだろう。砕けると跡形もなくなってしまうけれど、古くから生きるドラゴニアはそれを『精霊』とする者もいた。砕くことで精霊は自由になり、亜竜に邪魔されることなく自由な空を羽ばたいていく。
 その御伽噺が本当なのかは誰も知らない。精霊と言葉を交わす力がある者でさえ、その真実を知らないのだ。
 あまりにも弱々しい精霊で、言葉を交わすほどの力がないのかもしれない。
 逆に強力な精霊で、術者たちの力量不足なのかもしれない。

 真実は揺らぐ水の中。色を放つ鉱石たちだけが知っているのだろう。

GMコメント

●成功条件
 ニナの護衛

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●フィールド
 集落ウェスタの近く。鍾乳洞へ入ります。暫くは細く長いうねる1本道ですが、その先には空の見える広い空間があります。戦闘が起こるのであればここでしょう。
 そこからは何本かの脇道がありますが、その内1本が水鉱石へ辿り着く道となります。
 水鉱石のある水場周辺は多少広がっており、壁や天井に光が投影されているようです。腰かけられそうな岩もありますので、小休憩もできるでしょう。

 広い空間では飛行することが可能ですが、他の敵性生物に見つかる可能性もあります。非常に注意しないと想定外の敵を呼ぶことになるでしょう。また、足元は若干凸凹しています。

●エネミー
・ロックイーター×10
 ワイバーンのような亜竜です。【飛行】を持ち、空から襲ってきます。
 岩や石など硬いものを食べる種で、特にこの鍾乳洞は気に入っているようです。天井も彼らが食い破りました。そのまま天井を広げつつ、足場を齧っています。
 彼らは硬いものを食べますが、彼らの雛はまだ消化する力が弱く、柔らかいものを好みます。故に、ロックイーターたちは皆様を雛の餌として殺して連れて行こうとするでしょう。しかし、ここで撃退すれば亜竜たちも多少の危険を感じ、この鍾乳洞へ近づきにくくなります。
 戦闘時は頑強な牙と力強く羽ばたける翼が主な武器となる他、彼らは口から火を吹いて地面を熱することが可能です。直接攻撃は勿論の事、熱せられた地面にも注意が必要でしょう。
 また、彼らは鳴き声を共鳴させあって能力を高めるようです。これは反射的なもので、いかなる状況であっても仲間の声には反応せざるを得ない、とも言えるようです。
 【火炎系統】【乱れ系統】【窒息系統】などのBS対策をしていくと、より動きやすくなるかもしれません。


●NPC
・ニナ
 癖っ毛の金髪をうなじで結った女の子です。姉に頼まれて水鉱石を取りに行く他、道中遅れない程度に他の素材を採取していきます。
 ナイフ使いで、そこそこ戦えます。イレギュラーズから指示があれば聞きます。
 水鉱石の場所は彼女が知っているので、案内して貰えば間違いはありません。

●水鉱石
 陸地では半透明な鉱石ですが、水の中では光ります。光は淡く色づいており、様々な色へ変化していきます。
 鉱石の中央に靄が見えますが、何だかわかりません。古きドラゴニアは精霊だという人もいるし、今ではその靄が光を出す正体だとも言われています。
 皆さんが採取場所まで到達したら、最大で片手に乗るサイズの鉱石を1人ひとつ持ち帰っても良いそうです。採取が不安であればニナがとってくれます。
 水鉱石のある場所ではニナが亜竜避けの香を焚いてくれますので、落ち着いて眺めることが可能です。

●ご挨拶
 愁と申します。
 アフターアクションありがとうございます。また、一緒に冒険に行きませんか。
 それではよろしくお願い致します。

  • 揺蕩彩色の水鉱石完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
浅蔵 竜真(p3p008541)
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
ミラ・ミラ(p3p009334)
聡き耳
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
スースァ(p3p010535)
欠け竜

リプレイ


「ニナー!!」
 鍾乳洞の前で待っていたドラゴニアの少女は、元気の良い声にそちらを振り返った。そこへぶんぶんと大きく手を振る『嵐の牙』新道 風牙(p3p005012)の姿を認め、こちらもまた片手を上げる。
「この前ぶりだね」
「おう! また別のもの採取に行くって聞いたから来たぜ。今回もバッチリ護衛してやるさ!」
 任せとけ、と風牙が力こぶを作るポーズをする。彼女の姉が芸術家だったと聞けば、前回の採取物に納得もいくもの。今回の鉱石はどのように使うのかわからないが、依頼である以上、全力を尽くすことに変わりはない。
「みら、まえよりもっとがんばりますね」
 むん、と『聡き耳』ミラ・ミラ(p3p009334)が気合を入れる。同じ人たちと、また一緒に冒険出来ること。いつ何があるかもわからない冒険者という職を続けていく中で、それは奇跡のような縁だろう。何よりそれがニナたちで嬉しいからこそ,頑張りたい。
「ひかるこうせきも、たのしみです。もってかえれるの、うれしい、ので」
「だな! いい記念品になりそうだ」
「そうだね。アタシも妹に持って帰ってやりたいな」
 『欠け竜』スースァ(p3p010535)は大切な異母妹を想う。あの子もスーファも、デザストルで生まれたとはいえその大部分は知らない場所だ。妹を連れてくることは叶わなくとも、そこでのお土産を持ち帰ることができるのなら、景色は自分が覚えておいて語ってやれば良い。きっとあの子なら、楽しそうに聞いてくれるだろう。
「水の中で光る鉱石、きっと綺麗なんだろうな」
「うんうん! それに様々な色に変化するんでしょ?」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)の足は浮き足立つ。珍しいもの、しかも美しいものとなれば一目見たくもなるものだ。工夫すればインテリアとして飾ることもできるだろう。
「……と、まずは依頼をきっちりこなさないとね」
 どんなふうに飾ろうか、などと考えに耽っていたスティアは我に返る。その様子にニナはくすっと小さく笑った。
「うん、そうだね。まずは辿り着かないと」
 ニナを中心にして、一同は鍾乳洞へ踏み入る。ミラが彼女についているのを見たスーファは、あちらは大丈夫だろうと視線を巡らせた。
 鍾乳洞は細く長い1本道。何かが襲ってくるとすれば正面からか、殿からかのいずれかだ。中央にニナがいれば真っ先に襲われはしないだろうし、接敵箇所に近いイレギュラーズたちも索敵がしやすい。
(まあ、飛竜の系統が狭い場所へわざわざ潜るとも思えないが)
 念には念を入れて、先頭を行く『刺し穿つ霊剣』浅蔵 竜真(p3p008541)は周囲の敵性生物を探す。だが、その視線はついつい鍾乳洞の方へ。
 知識としては知っているし、かつて映像や資料でなら見たこともある。しかし百聞は一見にしかずと言う通り、実際に見てみるとより不思議な印象が深まった。
「そこ、滑りやすいから気をつけて」
「了解なのです」
 ニナに頷いた『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)はそろりとやや不安定な足場を抜ける。微妙な曲線を描いた地面は、ともすれば滑って壁に頭を打ち付けてしまうだろう。
「ここ、濡れてるんだね。水脈と繋がってるのか……それとも雨水が溜まったりしているのかな?」
 不意に屈んだ『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)が地面へ触ってみれば指先が湿る。首を傾げ、手巾で水気を拭いながら立ち上がると、イズマが首を巡らせた。その両耳は遠くで響いた音をも拾い上げる。
「……水の滴る音がするな」
「ってことは――上?」
「一概にそうと断言はできないが、おそらく」
 イズマが歯切れ悪くも頷く。ここは地底湖に近い場所である。雨による貯水がどこかから流れてきている可能性もあるし、水位の上がった――あるいは土地の下がった――場所から水が流れている可能性もあるだろう。
「ニナくんは何か知ってる?」
「いや、ここはわからないな。ただ、雨が降った後はちょっと足を取られやすい……ような気がする」
 こちらも断言とまではいかず、トストはおやと片眉をあげた。聞けば、雨が降るとこの先の道も水没してしまうそうで、滅多に行かないタイミングなのだそうだ。
「この先、というと」
「亜竜たちが穴を開けたとこ。そのまま足場まで齧ってるもんだから、雨が降ると池みたいになるんだよ」
 果たしてどこまでかじり取るつもりか定かではないが、これ以上足場が下がれば雨以外の問題も起こりそうである。
「水がずっと溜まるようになったら、水鉱石を取りに行くのも一苦労だね……」
 竜真と共に先頭を進むスティアは難しい顔で考え込む。亜竜は退治するつもりでいるが、その後何かの対策をしたほうが良いだろうか?
「ここで他の素材も採取するなら、なおさら不安要素は取り除きたいな」
 頷くイズマは、ニナに今日は何か採取していくのかと問う。彼女はもちろんと首肯した。
「とは言っても、細々したものだけれど。自分で持てる量だけ持っていくんだ」
「より多くの素材を、というわけではないんだな」
 妖精の木馬に載せられるのなら、その方が彼女自身の稼ぎにもなって良いだろうに。イズマの瞳にどうして? という色が浮かんでいたのか、ニナは苦笑を浮かべる。
「採り尽くしたらまた探さないといけないからね。そこまで稼ぎに困ってるわけじゃないし、デザストルで新しい稼ぎ場の開拓って結構大変なのさ」
「なるほどな」
 大量に採取するより、安定した量をコンスタントに供給できた方が売り手もつきやすいのだろう。
「道が広がってきたから、そろそろかも」
 スティアが両脇の壁に手をつけ、幅を測りながら進む。程なくして日の差し込みが見えた。しかしイレギュラーズたちは羽ばたきの後に表情を引き締める。
「……ニナさん。水鉱石は、どこのみち、ですか?」
「ここを出たら左の壁際を伝って、2つめの細道だよ」
 ミラはそうっとその道を視界に移す。今まで通ってきた道とそこまで幅の差はないだろう。無理くり通ってくるとは思えないが――壁を齧られてしまったら、どうなるかもわからない。
「それでは参りましょう。先駆け頂くのです!」
 クーアが我先にと飛び出して、空を飛んだり地面を齧ったりと自由な亜竜たちの前へ躍り出る。一面を紅が満たした。追うように風牙が飛び出し、クーアの炎を避けるように旋回したロックイーターの真下へ飛び込む。
「叩き落してやるぜ!」
 気の爆発と共に真上へ勢いよく飛び出す風牙。深くめり込んだ槍に亜竜は悲鳴を上げて地面に転がり、よろよろと立ち上がる。
「ニナさんは、ここにいてほしい、です」
 自身を魔術で強化したミラは、落ちてきた敵に向かって勢いよく飛び込んで行く。音速の殺術に攻め立てられながら、亜竜は翼を広げて再び空高く舞おうとした。
「そうはさせるか!」
 イズマとスティアが敵を引き付けにかかり、空を舞う敵を引き下ろす。それでも上へと逃げようとするロックイーターを竜真の斬撃が捉えた。もう1体残る亜竜へスーファは得物を向けながら、自身の肉体を強化していく。
「多少飛べるくらいで逃げられたと思うなよ?」
 この程度であれば、まだ捉えられる範疇だ。
 スティアの魔力が敵を酔わせるように漂って、その音色が視線を誘導していく。ロックイーターたちは互いの鳴き声を共鳴させながらスティアへと突っ込んでいった。
「悪いけど、狩りはよそでしてもらうよ!」
 その最中にトストのディスペアー・ブルーが響き渡る。静かで昏い水底へ誘うようなその歌は、冷たい呪いをひたひたとロックイーターたちへ纏わりつかせ、苦しめる。
 しかし徐々にスティアへとロックイーターたちの視線が集まってくれば、必然に彼女が集中砲火に遭う。クーアは味方と標的を合わせるように、空から滑空していこうという亜竜へ雷を打ち上げる。
「天の果てまで堕ちるのですっ!!」
 向かうべくは天のさらに向こう側。風牙が宙に押し上げられた亜竜へ向けて高めた気を爆散させる。そこへ亜竜たちにとっては慣れた『音』が聞こえてきた。
 それは先ほどまで自身らが共鳴させていた『声』に酷似した『音』。その発信源であるイズマは自身から発せられる音を鳴き声であったそれに変えながらも攻め立てる。辺りを凍らせるような細剣の動きと共に放たれた。
「これで、おわり、です……!」
 ミラの加速する攻撃が1体の亜竜を仕留める。しかし彼女の耳がぴこんと立つと同時、彼女は仲間の方へ振り返った。
「ブレスが、きます!」
 はっと仲間たちが飛び退くと同時、敵の1体が火を吐き出す。熱せられた地面の近くがゆらゆらと蜃気楼のように揺れ、一同は知らず知らずのうちにごくりと唾を呑み込んだ。あれに直撃したら……ただでは済まない。
 スティアはある程度の敵を自身へ引き寄せながら歌を紡ぎ出す。亡霊の慟哭はより長く、かの身に巣くうモノを止まらせる呪いだ。
「岩を食う奴でも血は赤いのかね?」
「さて、やってみなければわからないな」
 そうかい、と口端を上げたスーファはアイアンメイデンに亜竜を閉じ込める。響き渡る断末魔。遅れて染み出したそれは――。
「赤だ」
「へえ」
 その答えに竜真はぴくりと片眉を上げる。実際のところ、意外だったと言っても良い。岩を食うような生物でも同じ色になるというのは、何とも不思議な心地だ。
「まだまだ多いね……!」
 トストはネメシスの光で敵陣を一掃しにかかる。こうして少しずつ体力を削っていけば、1体ずつ倒すのも時間をかけずに済むだろう。
 しかし目の前で一斉に亜竜たちが顎をあけ、ひょえっとトストは顔を引きつらせた。目の前にじわじわと熱が溜まっていくのを感じる。だがこれだけのロックイーターが一斉に火を放ったら、何処へ逃げるのか。
 そんな焦りは、一瞬のうちにして掻き消える。突然ロックイーターたちがその口を閉ざし、それから次々と鳴き声を上げ始めたのだ。
「上手くいったか」
 そう呟く竜真が近くのロックイーターへ攻め立て、体勢を崩す。彼らの声の記録はうまく役立ったようだ。
「ロックイーターたち、ここは怖いところだ! とっとと逃げることをお勧めするぜ?」
 風牙もこれに続けとその横腹に風穴を開ける。イレギュラーズたちはそこへ雪崩れ込むように猛攻を開始した。
「泥仕合だってねこの領分、そう簡単に崩されはしないのです!」
 亜竜たちが立て直そうとするも、クーア渾身の光弾が機動力を削いでいく。トストの放つ神気閃光に、竜真はリーガルブレイドで斬り込んだ。スティアが自身を回復させながら耐え忍び、一刻も早く数を減らそうと風牙が敵の体を上空へ向けて強打する。
「1体ニナさんのほうに向かってる!」
「っ!」
 スティアの声にミラはすぐさま身を翻した。滑り込んだ彼女の体がロックイーターに捉えられる。
(みらができることはすくないから。だから、からだ、はります。ぜったいに、まもります!!)
 それは確かな負傷であった――はずだが、ミラは素早く立て直すと手痛い一撃を亜竜へ見舞う。イズマが追い打ちをかければ、とうとうロックイーターは諦めたのか、悔しそうな鳴き声を上げながら空を舞いあがった。
「ふん、逃げるなら逃げればいいさ」
「ああ。次は狩ってやるぞ!」
 スーファの言葉に頷きながらイズマは動物疎通で一喝する。それが聞こえたかどうかは定かでないが――イレギュラーズたちが、ヒトがただではやられないのだと、この戦いの結果で思い知った事だろう。



「やー、凄いねぇ……」
 ほう、とトストが感嘆の声を漏らす。壁にも天井にも光に当てられた水面が揺らめいて、不思議な感覚だ。けれど少しばかり懐かしさを感じるのは、どことなく故郷に似ているからだろうか。
(こんなに明るくはないんだけどね)
 それでもやっぱり、あそこは落ち着く場所なのだ。
「綺麗な石は眺めて堪能するに限りますね」
 クーアは水鉱石のある水面を覗き込む。水場の内側に張り付いた鉱石は仄かに色づいた光を放ち、こうして眺めている間にもゆっくりとその色味を変えている。折角なら焔のように揺らめく紅蓮色の鉱石が欲しい。真剣に睨めっこをしていると、話に聞いていた通り鉱石の中央に靄のようなものが見える。
(精霊っぽい何かしらが宿っているのでしたか。鉱石なら、精霊というより無機との疎通になりそうですが……どちらも専門外なのです)
 語り掛けられないのであれば仕方がない。こうして美しきを眺め、気に入ったひとつをありがたく頂戴しようではないか。
「見せたいと思うのもわかるな」
「はい……きれいで、すてき、です」
 スーファとミラは天井を仰ぎ、表情を綻ばせる。ここでだけ見られるものだろうから、しっかり目に焼き付けておかなければ。持ち帰ったら小さな器などに水を張って、鉱石を沈めてこの光景を思い出そう。
「採取はやってみていいかい?」
「私も自分で採ってみたいな!」
「俺もお供しよう」
 スーファの言葉にスティアがはい! と手を挙げて、イズマも腕をまくる。自分で採れば思い出にもなるだろうし、自身で選んだ鉱石を採取する経験はなかなか積めるものでもない。
「じゃあこの布を使って。他には?」
「俺も自分で採ろう」
 竜真の言葉にニナは追加で持ってきていた布を取り出す。あとはニナが採取する分、と何枚かの布を手にして、いざ。
(光が凄く綺麗だ……)
 水の中に潜り、深い場所の鉱石を取りに行ったイズマは水面を仰ぐ。水面から見る景色も綺麗だったが、水の中から見るそれもまた趣あって良い。
 イズマが水辺から上がると、他の仲間たちも各々で採取したり、ニナに採ってもらったようだ。ミラは大事にそれを抱え込み、乾いた柔らかな布でしっかりと包む。
「なあニナ、お前の姉ちゃんに頼んだら、この石を加工して何か作ってくれるかな?」
「おすすめのアクセサリーなどがあるなら教えてもらいたいな」
 風牙と竜真の言葉にニナは考え込む。正直な話、ニナがそういったデザインなどに関与したことはないらしい。言ってみれば何か考えてくれるかもしれないと彼女は告げる。
「なら帰りに寄ってみるか!」
「また新しいお使いを頼まれるかもしれないけどね」
 肩を竦めるニナ。けれどそれならそれで、加工が終わるまでの待ち時間とでも思えば良いと風牙は笑う。
 スーファも妹へのお土産を大切にしまって、ニナの方を振り返った。彼女も彼女で必要分は採取できたようだ。
「あんがとね、見に来る機会くれて」
「こちらこそ。とはいえ、まだ復路が残っているけど」
 しかしその復路はきっと、往路よりずっと楽なものになるだろう。あの亜竜たちも負かされて早々にやってくることはないはずだ。
「それじゃあ帰ろう! 忘れ物しないようにね」
 スティアの言葉に一同は踵を返し始める。トストは最後に水辺を振り返った。
(やっぱり、鉱物としては別のものみたいだな……手がかりにはならないかぁ)
 鉱石と聞いて故郷を思い出したが、どうにも産地が異なる石のようだ。ひとかけらだけ貰っていくけれど、それは郷愁をなくすものではない。

 帰りたいなぁ。

 その言葉は、誰も居なくなったその場にころりと転げた。

成否

成功

MVP

浅蔵 竜真(p3p008541)

状態異常

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)[重傷]
天義の聖女

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 持ち帰った鉱石は大切にしてくださいね。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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