PandoraPartyProject

シナリオ詳細

猛進、黄色い毛玉たち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●※シナリオ画像はイメージです

 ぴ!
 ぴぴ!
 ぴよぴよー!

「お、おいなんだありゃあ!」
「ひよこ……?」
「そうだけどそうじゃないんだなあ!?!?」
 可愛らしい鳴き声に、しかしその図体に男たちの顔が引きつる。そうこうしている間に地鳴りのような音は彼らへ向かって確実に近づいていた。
 迫りくるのはひよこの大群。そう、見かけはひよこなのだが――どうしてああもデカイんだ!?
「に、逃げろ! 潰されちまう!」
「だが兄貴、ここでどうにかしなきゃ家がぺちゃんこだあ!」
「いやあ……無理じゃね……?」
 そうだよ無理だよ! というのが皆の本心であるが、食い止めなければひよこたちの行く先には自分たちの村がある。あの大群で来られては、人は無事でも家や村を囲う柵は木端微塵だ。なおここで『人は無事なん??』ってツッコミは受け付けないものとする。
「此処で逃げるには鉄帝人の恥、いや男の恥よ!」
「「「兄貴!」」」
 駆けつけた長兄に男たちが喜色を浮かべる。この兄は村一番の強者だ。彼が前に立つなら勝ったも同然――。

「うわーーーーー!!!!」
「「「兄貴ーーー!?!?」」」

 そんな兄があっという間にひよこでもみくちゃにされ、勢いよくどこかへ吹っ飛ばされていく。最早ギャグかよってくらいの勢いだ。顔を引きつらせた3人は、減速せず向かってくるひよこの大群に回れ右する。

 かくして、この日。小さいながらもひとつの村が消滅した。なお、死者はゼロである。


●小さい方の黄色い毛玉
「僕とは無関係ですが!?!?」
「あら、そうなのぉ?」
 ぷりぷりと憤慨するブラウ(p3n000090)にアーリア・スピリッツ(p3p004400)は首を傾げる。大きくなってもひよこなんて、まるでブラウのようだと思ったのだが。
 ちなみにブラウ自身は「そのうち立派な鶏になります!」と豪語しているが、そろそろ彼も成長しはじめないと一生ひよこではなかろうか……というのが、ローレットで共に働く情報屋たちの意見であったりする。
「それにしても、巨大ひよこねぇ……死者ゼロっていうのは流石というべきかしら?」
「でしょうね。鉄帝人でなければ確実に被害は大きかったと思います。……とは言っても、村は全壊ですけど」
 鉄帝に現れた超巨大ひよこの群れ。勢いよく駆けまわるその姿は遠目から見ていればギリギリ可愛らしい範疇だが、勢いのままに村を踏み荒らしていったとなれば笑えない。
 被害に遭った鉄帝人たちは軽症者多数、現在は隣の村に身を寄せているそうだ。ただ、立ち向かおうとした若者1名がひよこに吹っ飛ばされ重体である。命の別状はないとのこと。
「ひよこたち、どうやら普通の生物ではないみたいですよ。2匹が近くにいると1匹増えます」
「え?」
「2匹が近くにいると、1匹増えます」
 聞き返したアーリア、復唱するブラウ。本当に、同じ存在が2匹近くに存在していると、その間に1匹のひよこが突然現れるのだと言う。そしてそのひよこと別のひよこがまた近くにいると――というように、ねずみ算的な増え方をするのだそうだ。
「このままだと走り回るひよこに蹴散らされるか、鉄帝一帯がひよこで埋め尽くされるかの2択ですね」
「それは困るわぁ。私の領地、鉄帝に近いのよ?」
 黄色い毛玉を存分にモフれるというならそれはちょっと抗い難いが、暴れまわるひよこ群である。大人しくモフらせてくれるとも限らないし、国境を飛び出て天義までやってきたら事が事だ。
「元々は1匹で見かけられる穏やかな種類だそうですから、群れでなくすれば大人しくなるんじゃないかと思います。もしかしたら、ひよこたちにとっても初めての事でびっくりしているのかも……」
 びっくりで村を全壊にされるのは洒落にならないが、そうであるのなら――そうでなくても、止めるしかあるまい。

GMコメント

●成功条件
 ひよこの『群れ』を倒す事

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●フィールド
 鉄帝の広い雪原。どこかにはひよこたちに蹴散らされて全壊した村があります。
 いたるところにひよこの足跡が付いており、後を追えばいつかは出会えるでしょう。
 雪が積もっているため、動きに多少の支障があります。天気は良好です。

●エネミー
・超巨大ひよこ×30
 ブラウみたいにもっふもふな超巨大ひよこです。大人2人分くらいの高さがあります。普通の生物ではなく、恐らく精霊や妖精の類でしょう。どのひよこも姿が同じなので、見分けるのは難しいです。倒れる時はぽふんと小さな煙を出して消えます。食べられません。
 時折鉄帝では見られるものだったようですが、群れを成していたという報告はありません。非常に稀な事例で、ひよこたち自身も増えていく自分たちにパニックを起こし駆けまわっていると思われます。本来は穏やかな気性です。
 可愛らしい見てくれながら、鉄帝人をワンパンするくらいには強いひよこたちです。突進、翼ではたく等の単純な攻撃が多いですが、通常攻撃に【飛】が付きます。
 その他のBSは不明ですが、状態異常で攻めるというよりは勢いと数で攻めるような雰囲気です。恐らく攻めるのは得意ですが攻められるのはそこまででもないでしょう。
 ひよこ同士が近くにいると、不定期に新たなひよこが生成されます。そのため、1匹にしてしまえばほぼ人畜無害です。

●ご挨拶
 愁と申します。
 以前いただいたアーリアさんのAAからシナリオをお届けします。放っておくとアーリアさんの領地にもひよこが溢れかえって大変な事になりそうです……。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • 猛進、黄色い毛玉たち完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
セス・サーム(p3p010326)
星読み

リプレイ


 ひゅぉぉおおおおぉぉ……。
 だだっ広い雪原を冷たい風が吹く。寒いわぁ、と自分の体を抱きしめながら『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は視線を巡らせた。今のところ、件の黄色い毛玉は見当たらないようだ。
「流石にうちの領地、っていうか故郷がひよこまみれになるのは避けたいわねぇ」
 故郷サン・サヴォア領に存在するアルベール湖の近くには、近頃ミケランジェロランドという観光地が出来ている。そこで仲良く暮らしてくれるならむしろ大歓迎なのだが、それでもひよこで埋め尽くされるのはちょっと。夏には去年よりパワーアップしたほこほこ地獄が待つことになる。
(字面とイメージだけならこう、まだまだ寒い夜になんて飛び込みたいんだけど!)
「かなりのパワーを持っているのは、さすが鉄帝産……ですね」
「無害なら放置しても良かったのですが」
 村を全壊させるとなると、と難しい顔をする『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)に『白ひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)はこくりと頷く。このまま増えてしまえば、アーリアの故郷へ至る前に多大な被害を起こしてしまうだろう。
「制御不能となればヒトとひよこらの均衡も崩れるというものでしょう」
「はい。お互いの、ためにも……なんとかしてあげましょう、ね」
 『星読み』セス・サーム(p3p010326)の言葉にメイメイは気合を入れ、『無敵豪腕鉄火砲』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)もまた力強く首肯する。パニックになっているうちにどんどん増えているとなれば、ひよこたちが気の毒だ。早く安心させてあげよう。
「……でもほんと、ブラウくんじゃないの?」
 アーリアは思わず首を傾げる。黄色くてふわふわのひよこといえば、真っ先に思い出すのはぬいぐるみのような情報屋だ。今頃ローレットで盛大なくしゃみをしているかもしれない。
 しかし同じように思うのか、それともひよこ自体が気になっているのか。『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)はそわそわと落ち着かなさげだ。
 ともあれ、見つけなければ話にならないとリュティスは雪原へ視線を向ける。さて、地道に歩いて足跡を探してみようか。
「わたしは、ファミリアーで……空から捜してみます、ね」
 メイメイは冬の寒さにも強い鳥を使役し、空を見回るようにお願いする。パタタ、と羽ばたいていった鳥を追いかけるようアルペストゥスもまた翼を広げ、力強く地を蹴って飛び立っていった。
「グゥ……」
 飛びながら視線をあちらこちら。この雪原には全壊させられた村の跡地があるようだから、そこをまずは起点にしようと探す。暫しして村の跡地を、さらには飛び出していったと思われるひよこたちの足跡を見つけたアルペストゥスは仲間へ聞こえるように大きく息を吸い込んだ。
「グォォォーーーーン……!」
 その声を聴きつけたイレギュラーズたちは声の方向へと向かい始める。さらに足跡を追跡するアルペストゥスは、ぴぃぴよと声が聞こえてきた辺りで着地すると、おもむろに地面を掘り始めた。力強く雪を蹴散らし、土を掘り返してあなぐらを作る。できたならばまた少し離れた別の場所へ。皆が辿り着くまでにどれだけ掘れるだろうか。

「コャー、なんと」
 思わず『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)はぽかんと口を開け、その視線を上げる。
 イレギュラーズたちがアルペストゥスに追いつき、合流してひよこの群れたちへと向かった所、彼らはぐるぐると大きな輪を描くようにその場を周りながら増え続けていたのである。しかし互いが近いのでポンポンと新たなひよこが増殖し、それらもびっくりしながら走り始め――以下ループ。
「このままだと鉄帝が……世界中がひよこだらけになってしまうの。ひよこ鑑定士の数も足りなくなるの」
 本当にそれあるのか? と思ったがエスプリらしい。しかしひよこ鑑定士といえど全力ダッシュするひよこたちの雌雄を鑑定するのは至難の業――じゃなくて。そんなことを言っている場合ではないのである。
「がんばってなんとかしないといけないの……!」
「ええ! 数を減らしながら落ち着かせましょう!」
 リュカシスが1体の前に立ちはだかり、そのダッシュを止める。拳に想いを込めれば、言葉の通じない相手だって『もう大丈夫』の気持ちは伝わるはず!
「そのひよこアタック、もふもふしてそうねぇ」
 私も、とアーリアもひよこを受け止める。あっふかふかもふもふ。この鉄帝の冬に温もりとふわもこが合わさってああ幸せ――。
「はっ」
 あわやのところで我に返ったアーリア。このもふもふ、ありもしないBS【魅了】を持っている……!?
 気を取り直した彼女は激しく瞬く光でひよこたちを照らす。こわくないからねぇ、なんて言ってもびっくりはするもので、一帯のひよこたちは目をまん丸にするとイレギュラーズの存在に気付いたようだ。
「ぴぃ!」
「ぴぃぴぃぴぃ」
「ぴぃぴよぴよぴよ!」
 ぐるぐる回っていた動きが一転、イレギュラーズたちへ飛び込まんばかりの勢いで向かってくる。その様子は必死に助けを求めているようなのだが……図体と勢いが相まってこっちが怖い。顔が引きつりそうだ。
「グゥルル」
 アルペストゥスの唸り声に合わせ、雷撃が真っすぐにひよこたちへ立ち向かっていく。リュティスはその背へ光の翼を生やした。
「あれが全てこちらに来ると……流石に困りますね」
 その光刃に触れたひよこたちは目を回し始め、あっちへこっちへと突進を始める。ころんころんと何体かが丸いボディで雪原に跡をつけた。
「ぴぃぃぃ!」
「ぴぃ!」
「ぴぃぴぃぴぃ!!」
 物凄く不服申し立てているひよこたち。おっと仲間割れか?
「い、痛くして、ごめんなさい……」
 その中から間引くように、メイメイのけしかけた妖精と胡桃の狐火が向かっていく。まずは彼らの距離を取らせなければ、仲間内で揉めていても新しいひよこは爆誕するのである。
 しかしながら存外に彼ら、そのふわもこボディで立ち上がる。少しでも間引きやすいようにとセスは雷撃を放った。出来る限りは野へ帰したいものだが、これではそれも叶わない。
「繁殖と云うよりは複製、或いは分裂といった現象のようですね……」
 ポン! と新たに生じた個体を横目に『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は掌握魔術を構築する。全てが同じ、優先順位がないとなればいくらは気は楽だ。気分の問題と言えば、あのもふもふの誘惑である。アーリアとかリュカシスが羨ましい――じゃない。今は絶つべき煩悩である。
「……ガァァウ」
 アルペストゥスはひよこたちへ群れを出るのだと語り掛けながら少しずつ敵の数を減らしていく。同族とは共に在れなくても、異なる種であれば未来を共にできるだろうと。
(むれから出るゆうき、大切。このままだと、ふえつづけてしまう)
 ぴぃぴぃと騒ぎ立てる声に紛れてしまっても諦めず、語り続けるアルペストゥス。メイメイもブラックドッグで応戦しながら落ち着いてと叫ぶ。
「あ、あばれるともっと、増えてしまいます、から……! あっ」
「イテー!」
 突進にあったリュカシスがごろんごろんと雪の上を転がっていく。しかし頑丈な体はこの程度じゃへこたれないと、飛び起きたリュカシスは再びひよこたちの傍へ駆けだし拳を握った。案じるこの想いよ、届け。
 そんなリュカシスへセスは回復を施す。セスへ向かおうとするひよこがいることに気付き、胡桃は熱砂の精霊を呼び出した。精霊が楽し気に舞って、重圧を伴った砂嵐にひよこたちを閉じ込める。そこへ気糸の斬撃を展開したアッシュにより、ひよこたちはぽてんころんと転がされ始めた。
(随分とパニックの様子ですね……)
 しかし手を抜けばあっという間にひよこが増えていく。どうにか散り散りになって落ち着いて貰わねば。
「今のうち! 皆集合よー!」
 アーリアの掛け声とともに癒しの力が放たれる。その目の前でひよこがまたぽんっと増えた。リュティスが全体の数を見ながら神気閃光へと切り替える。
「……近くにいたら、私達も増えるとかないわよね!?」
「おそらくは。増えたら……どうしましょうか」
 同じ人物は2人もいらないが、ひよこたちを見ている限り同じ姿をした別個体として生成されている。もし『本物』をかけて勝負などになったら非常に面倒くさい。そうならないようにと願うリュティスだった。
 何はともあれ、減って増えてを繰り返しながらも徐々にひよこの頭数は減っていく。リュカシスは純粋な拳だけの勝負に持ち込んで、相手の余力を見ながら攻撃を放つ。
「すこし、ぴりっとするかも、しれませんが……!」
 メイメイの放ったオーラの縄がひよこを捉えんと飛んでいく。執拗に向けられたそれへ絡めとられた個体へ、セスの衝術が命中した。
「他の方と離れていただきますよ」
 ころんころんと転がり、群れから離されるひよこ。追い打ちをかけるように胡桃もひよこを転がしていく。メイメイが今です、と叫んだ。
「はーい呼ばれて飛び出たお姉さんよぉ」
 ひよこの前へ出たアーリアがリリカルスターで引き付け、群れへ戻らないように誘導する。その毛玉をアルペストゥスががっしと掴んだ。
「ぴ? ……ぴ!?」
 宙へ浮いていく体に驚愕するひよこ。しかし驚いている内にアルペストゥスは先ほど掘ったあなぐらへ連れて行ってしまう。
「グル、グルルル……」
 じっとしているようにと伝えたアルペストゥスは、おもむろに牡丹餅を取り出した。それを加え、ひよこの口元へ持って行く。思いきり餌付けられたひよこは大人しく鎮座したのだった。
 少し離れた場所で戦っていたイレギュラーズたちは、2羽目、3羽目もできるなら保護してあげようと動き出す。倒さずに済むのならそれに越したことはない。
「抑え込み、お願いなの!」
「はーい!」
「ギャーウ」
 時にアーリアがおちつかせもふもふし、時にアルペストゥスが掘った別々のあなぐらへと連れて行く。アッシュの放った箒星にまだ暴れまわるひよこがぽふんと姿を消した。リュティスがあともう少しと福音を響かせる。
 そして――。
 その場に1羽だけのこされたひよこは、驚かせていたものが居なくなったことに気付いてきょろきょろと辺りを見回した。いない。ここにいるのは自分とちいさないきもの(イレギュラーズ)だけ。
「ぴ? ぴ? ……ぴ?」
「もう大丈夫です」
「落ち着いたかしらぁ」
「グゥ」
 目を白黒させるひよこにイレギュラーズたちが声をかけ、ひとまずひよこ騒動は収まったのだった。



「ぴよぴよ。ぴよ、ぴよ」
「ぴぃ!」
「……ぴよ? 人間の言葉で大丈夫? そうですか……」
 動物疎通で対話しようとしていたアッシュは返って来た言葉に頬を抑える。なんだ、人間の言葉で問題ないなら早く言ってほしい。
 ともあれ、ここまで距離を取ればむやみに増えることもないようだ。セスもやってきて、人間の言葉が理解できると自らの言葉で伝え始める。
「離れていれば増えませんから、不用意に同族へ近づかないよう気をつけて。わたくしたちは、貴方がヒトに無害であると証明したいのです」
「ぴぃ……」
 セスの言葉を聞いたひよこは、しかし何かが気になっているようだ。それを聞いたアッシュが優しくひよこを撫でる。
「此の国の方々はとても大雑把……いえ大らかですので、憎んだりしませんよ」
「ぴぃ?」
「ええ。ですからどうか、あまりに気に病まず」
 それと、とアッシュは付けたし、こころなしかキランと瞳を輝かせる。もうここでは煩悩を抑える必要がないのだ。
「あっずるいわぁ! 私も~!」
 サンクチュアリでひよこの手当てをして回っていたアーリアがアッシュに続きもふんと毛玉へダイブする。その姿を見てメイメイもはっとした。
(そ、そうでした。わたしも、もふもふしたい……!)
 おいでおいでと手招かれ、ともにもふもふするメイメイはふにゃりと笑みを浮かべる。あたたかい。
「一度は群れを共にして、寂しいかとは思いますが……穏やかに過ごすため、なので……」
 もふもふの誘惑に負けながらもそう説明するメイメイ。ああ、ブラウもまかり間違ってこれくらい大きくならないだろうか、なんて思ってしまう。
「モフモフですね!」
「飲み込まれてしまいそうです……」
 リュカシスとリュティスもアルペストゥスが別所につくったあなぐらで匿われていたひよこをもふっていた。そこへアーリアが治療にやってきて、それが済むと再びもふぅ。リュティスは今回の経験をポメ太郎のブラッシングに生かさねば……と思いながら毛玉に埋もれていく。
「もうこわくないわよぉ。……ところで1匹くらいうちのミケランジェロランドに――」
 駄目かしら? と言えば、ひよこもそれなあに? というように首を傾げる。ふわふわな鳥が集まっているところなのよ、なんて言えばそのつぶらな瞳が輝いた。
 嘘は言っていないはずだ。フライドチキンが売られているとか、言っていないことはあるけれど。
「村の事は気にしなくて大丈夫ですからね! ボクたちも手伝って、再興しますから!」
 今回の超巨大ひよこをイメージした菓子やおもちゃを作って売れば、再興費用になるだろう。あとで提案してみようと思いながらリュカシスは存分にもふもふ。
「グゥ?」
 ここのひよこは連れて行かなくても良さそうか、とアルペストゥスが首を傾げた。そして別の場所にいたひよこの元まで飛んでいくと甘やかすように嘗め、ひよこが望むなら遠い場所へと連れて行く。
 新天地にて、彼らがどのように生きていくのかはわからないが――少なくとも、今回の様に同族と出くわして大変なことにはならないように。悪いようにはならないはずだ。
 だって混沌は、ぼくをも受け入れてくれているのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)[重傷]
無敵鉄板暴牛
アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 もふもふでしたね。これを書いていた時は寒かったのに、季節の移ろいを感じたリプレイ執筆でした。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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