PandoraPartyProject

シナリオ詳細

他人の財布で酒が呑みたい

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●呪われし祝福の酒場の話・再見
 意味が分からない、と誰もが言う。
 当然だ。酒を呑んでないのに末期の酔っぱらいみたいなことを言われれば、誰でもそんな反応をする。
 いいんだよ、呑み過ぎなんだよお前。まずは落ちついて水を飲もう。な?
 そうしてそいつの正気を確かめた後で、もう1回同じことを言うなら軽く肩を叩いてやるのだ。
 そうか、分かったよ。お前疲れてるんだ。飲もうぜ、な?
 そして良い具合にアルコールが回って、それでもまだ同じことをそいつが言うならば。
 もしかしたらそいつは、本当にそこに辿り着いたのかもしれない。
 アルコール臭のする酔っ払いたちのへヴン。
 呑めば呑むほど偉い、酒のみたちの聖地。
 バー・アイアンへヴン。
 アルコールに魂を売ったような酒クズを心のままにフラフラさせると辿り着くという、その不可思議なバー。
 看板のないその店は、しかし酒クズには「バー・アイアンへヴン。時間無制限呑み放題」という看板が見えるのだという。
 しかし、大事なのは此処からだ。
 最近、「そこにまた行きたい」とかいう連中がいるらしいんだ。
 思う存分呑めて楽しかったとか、安値で楽しめるとかなんとか。
 とんでもねえ連中がいるもんだよな。
 ああいう奴等こそが、アイアンヘヴンに辿り着くんだろうな。
 え? 何処の誰かって?
 そうだなあ、確かアイツの名前は……。

●信じられるかい。これ、アフターアクションなんだぜ
「というわけで私の奢りで私のパーティーをすることに決まったわけですが」
「予算と質を考えると前回行ったバー・アイアンヘヴンが候補に入りまして」
「別に行くのに苦労はしないでしょうし、その辺りが妥当でしょう」
 そんなことを集まった面々の前で、3人の新田 寛治(p3p005073)がそんなプレゼンをする。
「なんだか3人いるように見えますわ。呑み過ぎたかしら」
「大丈夫だよ、ヴァリューシャ。私にも3人いるように見えるから」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)とマリア・レイシス(p3p006685)がヒソヒソと囁きあうが、そんな彼女たちの目の前で寛治A、寛治B、寛治Cが一糸乱れぬ動きで踊り始める。
 凄い、凄すぎる。
 まるで二日酔いの時に見る世界の光景のようだ。
 ただひたすら不安になる光景の中、寛治A、B、Cのアルカイックスマイルがやけに印象に残る。
 なんだろうか、すでにアルコールの生み出すアルコールワールドの中にいるのだろうか。
 アーリア・スピリッツ(p3p004400)は思わず自分のグラスの中身が違法醸造酒でないかを確かめる。
 ……大丈夫だ、ちゃんと美味しい。もう1杯呑めば確信に変わるかもしれない。
「と、いうわけで、この案件に関してはコンセンサスを得たということで。はい、解散です。お二人はお疲れ様でした」
 寛治Bが手を叩くと寛治A、寛治Cがスタスタと退場していく。
「雇ったの?」
「今回のプレゼンには最適な采配であったかと」
「インパクトはあったかなー……」
 マリアがそう呟き、前回ヴァレーリヤから聞いていたバー・アイアンヘヴンの惨状を思い出す。
 大丈夫だろうか。
 そんな不安が、胸中に生まれるが……どうせアルコールで押し流される。
 そう考えると、マリアは思考するのをやめた。
 

GMコメント

信じられるかい、これアフターアクションなんだぜ。

というわけで寛治さんの金で寛治さんのお祝いをするシナリオです。
会場はバー・アイアンヘヴン。
時間無制限呑み放題、古今東西あらゆる酒が揃っている「バッカスの精霊」が運営する幻のバーです。
酒クズを放流するとフラフラ彷徨って辿り着くバーなので、現場到着に関しては何も問題ないと思われます。

なお、バッカスの酒場には象徴となる伝説の美酒「バッカスの酒」が置いてあります。
バッカスの酒に手を付けるとバー・アイアンヘヴンの主である「バッカスの精霊」が出てくるのでやっつけましょう。
こいつはひでえや。でも大丈夫、正義です。
この際、呑めば呑むほど各種能力が上昇しますので事前に酒量が多い人ほど強くなります。
なお、バッカスの精霊を倒した後はバー・アイアンヘヴンは消えてしまいます。
最終的に路上に酔っ払いが転がる事になると思われますが、平和を守ったのでオッケーです。
つまりどういうことかって?
ただ酒ってことだよ。上手くアフターアクションしましたね、このファンドマネージャ。

●話が長い一言でまとめて?
 新田さんのお祝いですので祝辞を述べて酒を呑め。

●バッカスの精霊
バー・アイアンヘヴンの主。バッカスの酒を守るために存在しています。
ただしバッカスの酒は真の酒呑みに与えられるべきという使命も有しており、酒量の多い相手に弱くなります。
なお、攻撃技はプロレス技です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はA(アルコール)です。
 想定外の事態は絶対に起こりませんなんて言えるはずもありません。ヒック。

  • 他人の財布で酒が呑みたい完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ナール・トバクスキー(p3p009590)
ろくでなし
ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)
何でも屋
天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)
嘉六(p3p010174)
のんべんだらり

リプレイ

●無限飲酒編
「酒クズたちの朝は早い。即ちゼロ次会は朝から。とはいえ会場ずっとアイアンヘヴンなので、1次会も2次会も無い気がしてきました。∞次回。時間無制限一本勝負!」
 ちなみに嘘なので一本で済まないそうである。でも無限で何処かに回帰するなら結果として一本でいいのかもしれない。
 何を言ってるんだろう。分からない。
 分からないが今回、朝からバー・アイアンヘヴンに集まって呑んでいる。
 基本的に夕方とか夜からっていう発想はないらしい。
「皆様、本日は私の金報奨受賞祝いにお集まりいただきありがとうございました。本日の主役は私ですので、美女は侍らせるし男はパシらせます……冗談です武器を下ろしてください素手もダメです」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)のセットされた髪にピーナッツがシュートインした。
 武器でも素手でもないのでルールの範疇である。
「そんなわけで乾杯!」
 乾杯とは言った。言ったが……乾杯前から呑んでないとは言っていない。
 ゼロ次会とか∞次会とか言ってる時点で分かっている事だった。
「かんぱーい! 旦那にかんぱ~い! わははは! 酒うめえーーーー! あれ……旦那が三人に見える……俺こんな酒弱かったか? まあいっかあ! 美人も多いし今日の飲みは華があるねえ!」
 タダ酒と聞いてやってきた『のんべんだらり』嘉六(p3p010174)が一気しながら叫ぶ。ちなみに何回目の一気かはよく覚えていない。
「なんだか寛治が3人に見えますわ……飲み過ぎたかしら。ごめんなさいマリィ、お水を持ってきてもらっても良いかしら?」
「ヴァリューシャ! 私も新田君が3人に見えるから大丈夫だよ! それはそれとして、ヴァリューシャは酔ってる可能性もあるからお水だよ!」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)に『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が水をサッと渡すが、朝から呑んでる時点で今更ではあるしマリアも酔ってる可能性が非常に高い。
 2人合わせて瓶を何本開けたのか、ちょっと数えてみたくなるところではある。
「ふう、人心地付きましたわ。幻覚かと思ったら本当に3人いるのが解せないけれど、今は考えないことにしましょうだって、今は無限に無料で飲み放題! 空前絶後のリバースレインボーフェスティバルなのですから!」
「実際、どうして新田君が3人いるのかは私にも分からないよ!!! ふふ! でも確かに新田君が増えたことは些末なこと! なんてったって無料で飲めてしまうんだから! リバースはともかくレインボーフェスティバルの開催だぁ!」
 おかしい。すでに「新田寛治」の文字が何処にも残っていない。
「最近は師匠の目を盗んでは酒を飲みまくってる生活をしておりますどうも紫紡ですっ」
 そんな状況で(机の上に)立ち上がったのは『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)だ。
「新田さんこの度は金報奨受賞おめでとうございまーーーっす!!! 飲む用とは別に贈り物としてお酒も持ってきたのでうけとってください!!! ハブ酒にー!(新田さんAに)アブサンに!!(新田さんBに)白酒!!!(新田さんCに)」
「これはどうも(寛治A)」
「では私からも返礼を(寛治B)」
「こちら先日蒸留してきたフリアノン・ジンです(寛治C)」
「ひゃっほー!」
「というわけで紫紡さんプレゼントありがとうございます!」
 寛治Aが瓶の蓋を開けて瓶からダイレクトで3本を飲み干していく。
「え? 持ち帰り用? いや無理でしょ」
 そんなことを言いながら貰った瓶を一気していく紫紡と寛治。専門家の指導の下に訓練された肝臓がやっているので真似してはいけません。
「新田の旦那、今回は金報奨受賞お祝い申し上げる、酒くずとしてバーの酒を飲みつくす勢いで飲んでいくことで祝って行きたいと思っとるからよろしく頼むのじゃ。ささ、先ずは一献頼むのじゃカンパーイ」
『ろくでなし』ナール・トバクスキー(p3p009590)が常識人みたいな挨拶をしているが、やはり朝から呑んでいる。
 しかし0次会はどうも「そういうの」じゃないらしい。分からない。
 さて、此処で一番常識人っぽい顔をしている『何でも屋』ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)を見てみよう。
 ニヒルな笑みをしているハビーブだが……酒の呑み方も実に綺麗だ。
 朝から呑んでいる酒クズの一員とはとても思えない。あと2,3倍くらい一気させたほうがいいかもしれない。
 杯じゃない、倍である。倍プッシュだ!
(酒は良い。なにせ、日頃溜まったあれこれが、あたかもスッと抜け出てゆくからだ……尤もわしは、醜態を晒すまで呑むつもりはないがな。酒が入りすぎた席で見せる姿というものは、後でどう繕ったところでその人物の本性だと言える……! 本性が聖人君子だとでも言うのなら信用を失う心配も無いのだろうが…わしのような商人の根が善人であるなど、天と地がひっくり返ってもありえんっ……! ……尤も仮に善人だったとしても、無闇に心の内を曝け出すなどわしには毛頭ないがな)
 カッコいいことを考えているが、ハビーブ氏におかれましては落ち着いて、よーく周囲を見回していただきたい。
 さっきから寛治A、寛治B、寛治Cが一糸乱れぬ動きでタップダンスをキメている。
 ファンドマネージャなんですよ、アレ。善とか悪とか、今まさにヴァレーリヤの生み出しているレインボーの前では些細なことではないだろうか。
 だからほら、目を逸らすんじゃない。現実は此処なんだ。
 綺麗な虹でしょう。あれ、敬虔な司祭なんだぜ。
「新田君、おめでとう。新田君とPPP, Ltdのこれまでの成功を祝って、このようなものを持ってきたのだが如何かな?」
 中身は必ず酒の入っていない時に確認してくれたまえ、などと言いながらハビーブが差し出すのは書類入れだ。
 一瞬どの寛治に渡せばいいのかハビーブは悩むが、寛治たちは顔を見合わせて……最初に寛治Bが進み出る。
「では私が」
「いやいや、ここは私が」
 続いて進み出るのは寛治C。
「では私が」
「どうぞどうぞ」
 最後に寛治Aが進み出ると、BとCは後ろに下がって。
 ハビーブはちょっと酔いが覚めた気がしたが、寛治Aに囁く。
「というのもこの書類入れの中身……酒宴中のあれこれ(主にヴァレーリヤ君が吐き出すモノ)に備えて油紙やら何やらでぐるぐる巻きにして完全防水にしてあるが、実はファンドの出資契約書なのだ。つまり、「綺麗どころのお姉ちゃんにあられもない姿をさせる時にはわしにもギャラを支払わせてくれ」という事だ。要望は出しても口は出さんし、何なら期限等の条件も全て信頼ベースで構わんという、破格の契約だ。その代わり……新田君、わしが出資した事が決して妻達の耳に入らんよう、機密保持はくれぐれも頼むよ?」
 おっと、心の内というか闇のようなものが溢れ出ている。大丈夫? もっと呑んで記憶飛ばす?
「素敵なお話を有難うございました。ええ、当社は秘密厳守で使途不明金も自由自在でございますから。ほら、アーリア君もお酌して」
「シャーク・ドロップ!」
「オー・シャーク!」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の鮫を思わせるドロップキックの一撃が見事寛治Aを社畜の記憶と共に吹っ飛ばして、ついでに寛治Aの足の甲をグリグリと踏む。
「あっはいハビーブさんいつもお世話になっておりまして、いえ私なんてまだまだで……」
 そうして寛治Aの足を潰す勢いで踏みながらアーリアは思う。
「私ね、気付いたの。この酒クズ依頼、毎回ハードルが上がっていくの。なら前回を超えるにはどうするかって考えて――飲むしかない、って思ったわ。そう、私も――後ろの人もね」
 後ろの人なんていない。
 いや、居た。寛治Cがドドドドド……と音をたてながらポーズをきめている。
「ゼロ次会前から自主的なトレーニング(肝臓)! アルコールの掟によれば一度酒を飲み交わせばもうお友達ってわけでおろろrr」
 また虹が1つ輝いた。さておいて。
「ふぅすっきり。今日は新田さんのお祝いってことで全ての諸経費は新田さん持ちでしょ? え? 主役ってお会計も持つって……」
 アーリアが寛治Aに瓶を振りかざして追い詰め始めた辺りで、ヴァレーリヤが床板を剥ぎ始める音で中断される。
 寛治Aの頭骨は助かったがアイアンへヴンは大変なことになっている。
「紫紡もアーリアも皆も飲み比べしましょう! 飲み比べ! 音の違う床板を剥いだら、秘蔵っぽいお酒を見つけましたのよ! えっ、これは飲み放題には含めない? そんな話は事前の説明になかったので無効でございますわ! 乾杯かんぱーーい!」
「アーリア君もたくさん飲むんだよ!無礼講だ! えっ、これは飲み放題には含めない? そんな話は事前の説明になかったので無効でございますわ! 乾杯かんぱーーい! 全部飲んでしまおう!!!!」
 おっと、ヴァレーリヤが2人に増えたのかと思ったらマリアであった。
「はいかんぱぁーい! 店にあるお酒は全部飲み放題よねぇ、はぁいヴァレーリヤちゃん天才! 何が起きてもマリアちゃんが全てなかったことにしてくれるんだものヨシ! えーと、あっ祝辞ね」
 ポケットからくしゃくしゃのメモを出すアーリアだが、デロデロに酔ってから思い出すあたり、アルコールが回っている状態が正常な説はかなり「ある」かもしれない。
「新田さんはクソ眼鏡でぇ、女の子を裸エプロンにしたり脱がせたりする極悪人でぇ、捕まっていないのが奇跡なんだけどぉ、まぁ仲間としては頼りになる人なので……おめでとうございまぁす」
 祝辞中は裸エプロンの恨みを籠めてヒールで寛治の足の甲を再びぐりぐりと踏んでいるアーリア。
 しかし文面だけ聞いていると寛治が本当にクソ眼鏡の鬼畜眼鏡に聞こえるから不思議である。
「みなさん、最近はまってる飲み方とかありますか? わたしは最近出汁割りにドはまりしてしまいました……美味しい飲み方って他にもありますかね?」
「最近嵌っている飲み方かのう。それならこの間覇竜で見つけた溶けない氷のグラスで飲むキンキンに冷えた酒なんか良かったぞ」
 紫紡とナールが、そんなほのぼのとした会話をしている中で、寛治がスッと立ち上がる。
「ところでこの店「バッカスの精霊を倒したら消える」ってことは、倒さなければ消えないって事ですよね。捕らえましょう。そして生かさず殺さず。あ、自害させないよう拘束も忘れずに。これで完璧に時間無制限!」
 おっと、いつの間にかバンデッドマネージャーに転職したのだろうか。
「今回もあるんでしょう、伝説の美酒「バッカスの酒」。勿体ぶらずに早く出しなさいよ。私の財布はどうせ今日で底を尽くんですから、どうせならきっちり元を取らせていただきます。ほら全部出せ全部。ちゃんと飲み干すから」
「あっはっは! 楽しくなってきたね! ん? なんだい? バッカスとやらのAPを0にして飼い殺しにすればいいのかい? わかった。ふふ……ヴァリューシャの為に私は悪鬼羅刹にもなろう!」
「ぬう……なんか尋常ではない酒クズに目をつけられてしまったが、いいだろう。かかってこい!」
 そうして酒場に出現したのは前回よりもバンプアップしたバッカスの精霊。
「3人いますしバッカスにプロレス技でも仕掛けますか。アルコールパワープラス! アルコールパワープラス! アルコールパワープラス! トリプルクロスボンバー!」
 全員プラスでどうする気なのか。天井へと飛んだバッカスの精霊に逃げられ、3人の寛治のラリアットが互いの眼鏡を狩る。
 宙を舞う3つの寛治(眼鏡)がアーリアの酒にシュートされて。反射的にアーリアが飛び出し寛治Aを狩る。
 寛治を投げ飛ばし、逆さになった寛治の首に自分の膝を落とし床に叩きつけるフィニッシュ技。
「あ、あれは! アルコールが極限にまで高まった者にだけ使えるという酒乱の断頭台!」
「知ってますのマリィ!」
「うむ! 今ノリで言ったよヴァリューシャ! あと新田君は飲酒が足りてないんじゃあないかね??? ほら! 樽だよ。飲めないっていうのかい? のめー!」
「ガボボボボボ」
 寛治がマリアに樽を飲まされた辺りで、寛治Bと寛治Cはソッと退出している。定時らしいので仕方ない。
「うーん、いい気分……と思ったら、いつの間にか乱闘が始まっていますのね。酒場の華と言えば、喧嘩とギャンブル! さあさあ、誰に賭けますの!? 私は寛治Cで」
「ヴァリューシャ、Cはさっき帰ったよ!」
「Aで!」
「連れて帰ってきましたわ!」
「Cで! 私が勝ったら明日の分の酒代は頂戴致しますわーーー!!」
 なんかアーリアが寛治Cに耳打ちして「負けてくれればこちらの報酬を恵むわ」と不思議と帳簿に載ってないお金をスッと渡していたが、さておいて。
「よし、ならバッカス君は私に任せて! VDMランドのマスコット達から受け継いだ熱い闘虹魂を込めた酒瓶攻撃とファイナルとらぁバスターならぬファイナルマリアバスターで攻撃だぁ!!! 酒の精霊?知らないね! こっちには酒の天使・女神が付いてるんだよぉ!」
「よかろう、ならばバッカスバスターにてお相手仕る!」
 そうしてマリアとバッカスの精霊が互いにバスターを掛け合う無限バスター編に移行した辺りで、嘉六が肝臓の限界に達し始めたらしい。
「リバースレインボーフェスティバルだかヌルヌルレスリングだかとんでもねえ単語が飛び交ってる気がしないでもないがまあ…酒の席だし……いっかあ! あーそこの別嬪さん、俺にも予備(?)でバケツひとつ……何が入ってんのこれ?あっあ~~~……あーあー……レスリングってこれ……? やべえ……まあいっかあ、これで俺も安心して空のバケツに吐けおrrrr」
 ちなみにバケツはレスリングではありません。嘉六はバケツの中にどんな物語を見たのだろうか。
 とにかく、吐いてちょっとすっきりしたらしい。嘉六は目の前で展開している無限バスター編を観戦して「あー」と頷く。
「美味い酒は俺も飲みたいから協力するぜ。吐きそうだけど 死なせちゃいかんのよな?俺の鉛玉で解決するか? な、おいちゃん、美味い酒……だしな?」
「すまんなぁ、バッカスの精霊よ。儂らの(酒の)為にお主を倒さねばならぬとはじゃがこれも依頼を完遂するためじゃ大人しくしておいてくれ」
「飛び道具は!」
「反則だよ!」
「ぐへぁー!?」
「ぐあー!?」
 バッカスの精霊とマリアのハイジャック式パイルドライバーが嘉六をKOして、ナールをクロスボンバーで沈める。
「リバースレインボーフェスティバルに備えてバケツも裏で見つけましたよ! 水(と思っているローション)で洗い流しましょう!! あ、いつの間にか、ヌルヌルレスリング再演が始まってるんですね! 応援します!」
 ローションをぶちまけた紫紡が何か言っているが、大丈夫。酔っ払いである。
「いけー! 新田さーーんそこだーー!!! ふぉぉ!マリアさんもカッコイイ!! ファイナルファイナルぅー!」
「はい! というわけで何故か私に攻撃が集中してきたのでね! そろそろ皆さんの一発芸が見たいですねー! これが君に贈る金褒章だ! じゃないんですよ!」
 紫紡のグラスに眼鏡を突っ込み眼鏡割りを造りながら寛治は言うが、紫紡はケラケラ笑っているのでいいのだろう。
「眼鏡割りは癖になりらふね! いただきまっすぅ~!!! え? 一発芸れすか??? やりますよぉ~~一つは~師匠が家政婦さんに、謎肉フルコースされた時の顔真似と~もうひとつは、茶髪のポニーテールさんに追っかけまわされてるししょーの顔真似どっちがみたいれすか~~~???」
「一発芸なら私、良いのがありましてよ! ここで取り出しましたのは、常人にはとても飲み干せない樽入りのお酒。そして、どんなお酒も1分以内に消え失せる魔法の壷(寛治)でございますわー!」
「あ、私は先日百合の間に入ったと思ったら殺し間だったので一発芸はもう懲り懲り……どうして左右に来るんですかヴァレーリヤさんマリアさゴボボ両手に樽はダメですゴボボ」
「えっ、何か言ったかしら。聞こませんでしたわ。私達、貴方のお祝いのために集まったんですもの。まさかゲストの顔を潰すような真似はしませんわよね?」
「ああ、眼鏡割りで新田さんの本体が溺死! 新田さん、なんてことに……うっうっ……きゃー一発芸!えぇ、魔砲の壷ですって!? きゃぁもっともっと!」
「大丈夫です! 寛治さんはほら、無事で……あっ」
 紫紡のグラスから飛び出た眼鏡が、床にノックアウトされて転がっているハビーブの顔にスチャッと装着される。
 いつノックアウトされたのだろうか。誰の記憶にもないが、なんか顔面が腫れているので誰かが膝蹴りしたっぽい。
 男衆が軒並みノックアウトされているのでキャットファイトになりつつある中、バッカスの精霊が女性陣に組み伏せられている。
「みなさん、考えていることは一緒なんですねっ。これだけ強い人たちがいるので、弱らせて捕まえるのはみなさんにお任せして私は網とズタ袋と大きいダンボールに台車を用意しておきました! これなら捕まえた後の移動もラクチンだと思います! 再び、私たちの前に現れたのが運の尽きでしたねぇ〜」
「あらあ、駄目でしてよ自害だなんて。お酒…いえ、命がもったいないですわ。貴方は両手両足を縛られ、必要最低限のお水と食べ物だけを与えられて生き続けますの。そう、私達のお酒のために。未来永劫……」
「倒さなければいい――今から此処は、ローレットの拠点となるわ。万が一何か起きたとしたって」
「動くな! 酒クズ警察だ!」
「ヴァレーリヤと新田のせいです! 私は悪くないわぁ!! 全てあの二人のせいです!!!!!!」
「あっあっ、私達だけになすりつけるだなんて卑怯でしてよ! おまわりさーーん!あの紫髪の女も共犯でーーーす!!」
 勿論、官憲などいない。バッカスの精霊による幻である。
 しまった、と思うも……もう遅い。逆転のフランケンシュタイナーがヴァレーリヤとアーリア、そして紫紡を連続で撃墜し、バッカスの精霊は綺麗に逃走して消える。
 ちなみに寛治は壁に貼り付けられていた。何があったのだろう。
 胸元に「ノーメガネ、ノーカンジ」と描かれているので、たぶん酒クズの仕業なのは間違いない。
 そうして動く者が自分以外居なくなったバー・アイアンヘヴンの中でマリアが掃除をしながらニヒルに笑う。
「虹? 私が全て掃除するから実際そんなものはこの店には存在していなかったし、今後もすることはない。いいね? はあ、ヴァリューシャ可愛いよぉ……好き……」
 ヴァリューシャ可愛い。
 つまり、そういうことである。
 どういうことだろう。知らんけど。
 けどまあ……そんな感じである。

成否

成功

MVP

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

状態異常

なし

あとがき

無限飲酒編、じゃないんだよなあ……
ほんと皆さん素晴らしい。
おつかれさまでした!

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