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シナリオ詳細

<LawTailors>VermilionKnight

完了

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●VermilionKnight
 朱く燃える戦旗を掲げ逃げ惑う男の背を剣で貫く。
 血を流して倒れる男は一瞬で命を失っただろう。
「出来るだけ苦しまずに……いや、苦しまなければ、あの子が救われない」
 苦悶の表情を浮かべる騎士――ディーン・ルーカス・ハートフィールドは、相反する言葉を口走った。
 己の内側で渦巻く螺旋の焔は、怒りと制約の狭間で激しく揺れ動いている。
 一つ命を奪う度に、己が間違っているのではないかと問いかけてくる声がディーンの中に木霊した。
 それを振り払うように、歯を食いしばり剣を走らせる騎士ディーン。

「間違っていない。これで良いんだ」
 剣柄を握り絞め己へ言い聞かせるように次の村人へと剣尖を向ける。
 上手く隠れているようだが、ディーンの目には遮蔽物の向こうの熱源として感じられた。
 向こうもこちらに気付いたのだろう。
 感が良く働くヤツだとディーンは跳躍し相手の進路を塞ぐ形で降り立つ。
「……あ」
 小さく声を上げた少年――『ワシャク』キアン(p3n000148)はディーンに驚愕の瞳を向けた。
 それはディーンも同じだった。何故、この少年がこんな場所に居るのか。
「キアン?」
「何で、ディーン。こんな……酷いじゃないか。『何の罪も無い人を殺したのか!?』」
 戦場に木霊したキアンの声にディーンは赤い瞳を見開く。
 それはかつて旅人であるディーンが元の世界で悪逆を尽くす敵に言い放った言葉と同じだった。
 殺戮を繰り返す異能者達から罪の無い人々を守る為にディーンは戦っていた。
「……何の罪も無いだと」
 キアンの言葉に打ちのめされたようにディーンは戦旗を地面に突き立てる。
 苦悶の表情を浮かべるディーンにキアンは近づいて肩を揺らした。
「ねえ、ディーンどうしたんだよ、もしかして敵に何かされたのか?」
 元奴隷だったキアンにはこの情緒の乱れに覚えがあった。薬物投与と洗脳で殺戮に使われた奴隷を沢山見てきたからだ。
「ディーン、帰えろう。あんたは『世界を救う英雄』なんだろ!?」
 世界を救う英雄という言葉をディーンは否定するように首を振った。
「私は、英雄なんかじゃない……この手は、赤く、罪に……っ、あの子のため」
 キアンを押し返したディーンは「逃げろ」と息絶え絶えに伝う。

「――ヴァーミリオンナイト、どうした。そっちは仕留めたのか」
 声に振り返れば、『仲間』が多くの村人を自分と同じように殺害していた。
 無残に惨たらしく凄惨な戦場。
「ああ、問題無い。今そっちに行く」
 ディーンはキアンに背を向けて『仲間』の元へ歩いて行く。
 彼はキアンを逃がしてくれたのだ。
 罪なき人を手に掛けながらも慟哭を抱き、正気と狂気の狭間で藻掻き苦しんでいる。

「……っ」
 キアンはディーンを『救う』為に逃げる事を選んだ。
 自分だけじゃどうしたって敵わない相手だ。
 ここで無駄死にしてしまっては、ディーンを救うこともできやしない。
「待ってて、ディーン」
 必ず助けに行くからとキアンは一人、闇夜に走り出す。

 幻想とラサの国境沿いにある村『マールーシア』は老若男女関係無く、全ての命を失った。
 数週間前に逃げ出した村長一家を除いては――


 砂漠の渇いた風が肌を攫っていく。
 日差しが照りつける場所は鬱陶しい程暑いのに、建物の中にはいると途端に肌寒くなった。
 ザラついた指先に違和感を感じるルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は、外の砂を建物の入口で払いながら馴染みの顔に手を上げた。

「よお、チー・フーリィ。来てやったぜ」
「ありがとうルーキス。ルナールも」
 ルーキスの隣に寄り添うルナール・グリムゲルデ(p3p002562)にも『緋狐』チー・フーリィは屈託の無い笑顔を向ける。人好きのする笑顔というのは商人の基本なのだろう。
 ラサを拠点とするキャラバン隊の一つ『緋狐』を率いるフーリィに呼び出されたルーキスは、彼女の他に見知った顔が居るのに肩を竦めた。
「ふむ、お茶会って雰囲気じゃないわけだ」
 ルーキスが視線を流せば、レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)と蓮杖 綾姫(p3p008658)が深刻そうな顔で視線を落していた。
「ああ、依頼だよ依頼。2人を合わせて呼び出されたのは9人か」
 レイチェルの言葉に綾姫が資料を手に取りじっと見つめる。
「この男……何処かで見覚えが」
「綾姫はディーンを知っているのか!?」
 テーブルの向こう側から身を乗り出したキアンが嬉しそうに笑顔を見せた。
「何処だったか」
「まあ、彼はイレギュラーズとして活躍していたそうだから見知っていてもおかしくない」
 巨大な骸骨にもたれ掛かった『骸骨運送』リズクッラーがぶっきらぼうにそう応える。
「まあ、何が今回の依頼か詳しく教えてくれフーリィ」
「そうですね。拙も知りたいと思います」
 ルーキスとルナールがソファに座り、その隣の橋場・ステラ(p3p008617)が頷いた。

「事の発端は、数週間前。私達が『マールーシア』の村長一家を幻想国まで護衛する任務に就いてた時なんだが……」
 フーリィは商人としてとリズクッラーは運び屋として彼らを送り届ける依頼を受けた。
「その戦力としてやってきたのがそこのキアン、そしてディーン・ルーカス・ハートフィールドだった」
 何の変哲も無い護衛任務。
 されど、其処へ強襲してきたのが『ロウ・テイラーズ』と名乗る集団だった。
「盗賊か何かか?」
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が隣に座る冬越 弾正(p3p007105)へ資料を寄越す。
「ロウ・テイラーズについては調べている所だが、盗賊のような粗忽な連中ではないらしいね。何か目的を持って動いているらしいというのは、彼らの口ぶりから分かったよ」
 フーリィの言葉に佐藤 美咲(p3p009818)は首を傾げた。
「目的って何っスかね?」
「内容までは分からないけど、彼らが明確な意思を持って『マールーシア』の村長一家を殺そうとしていたのは事実だ。それでその中に非常に強力な魔種と思われる者が居てね」
「……魔種」
 デモニアという言葉にチック・シュテル(p3p000932)は眉を下げる。
「その時、村長一家と私達を逃がすために殿を務めたのがディーンだ」
 ディーンはその後、消息を絶った。
 通常なら、魔種に破れ殺されてしまったとみるのが妥当だろう。
「でも、俺はあの人が死ぬはず無いって思って、ずっと探してた。そしたら、『マールーシア』の村が襲われて。その中にディーンが居たんだ。洗脳を受けたみたいですごく苦しそうだった」
 かつて、キアンも薬物で洗脳されイレギュラーズと戦った事があるから苦しみは身に染みて分かるのだ。

「それで、今回の依頼は……そこの『村長一家』を守れって事か」
 レイチェルが視線を上げて四人の男と幼女を見つめる。
 資料を見るに父親のドミニク・エドマンドとその息子ブラッドリー、レックス、ダニーと歳の離れた妹パトリシアだろうか。
「奥方は……」
「ええ。妻は二年前娘を生んだ際に他界しまして」
「そうでしたか。失礼」
 故郷を失ったドミニク達はこの数週間、夜も眠れぬ日々を過ごしているらしい。
「村の皆を弔ってやろうにも、いつ奴らが襲ってくるかと思うと」
 マールーシアはロウ・テイラーズの襲撃によって遺体や建物も全て燃やされてしまったのだ
 残っているのは焼け焦げた瓦礫だけだろう。

「なるほど。じゃあフーリィは村長達が村に行けばそのディーンってやつが襲ってくると予想してるのか」
 ルナールが視線を流せばフーリィが頷く。
「恐らくな」
「ディーンは本当に良い奴なんだ。洗脳されてるのに俺を逃がしてくれた。だから、ディーンを止めて欲しいんだ。お願いだよ!」
 キアンは涙を浮かべながらイレギュラーズに懇願する。
 自分の力ではどうしようもない状況。だから、藁にも縋る思いで頭を下げた。
「ん……大丈夫、だよ」
 キアンの肩をチックが優しく包む。
「そうだぞ、キアン。俺達に任せとけ」
 レイチェルが少年の頭をわしわしと撫でた。
「守りましょう」
「こんな小さな子を殺させるわけには行きませんから」
 ステラと綾姫が立ち上がり。
「行こう――」
 アーマデルの言葉に弾正が「応」と口の端を上げた。

GMコメント

 もみじです。リクエストありがとうございます。
 <LawTailors>の序曲開幕です。

●目的
・エドマンド一家の保護
・ディーンの撃退

●ロケーション
 幻想とラサの国境沿いにある村『マールーシア』が舞台です。
 焼け焦げた瓦礫が散らばっていますが、戦闘に支障はありません(フレーバーです)
 日中なので光源は問題ありません。
 村人を弔うエドマンド一家を守りながら、ディーンとの戦闘になります。

●敵
○『焔朱騎士』ディーン・ルーカス・ハートフィールド
 謎の組織『ロウ・テイラーズ』に所属する焔朱騎士(ヴァーミリオンナイト)。
 キアン曰く、彼は洗脳されているようです。
 マールーシア襲撃事件の際、苦悩している姿が見られました。
 正気と狂気の狭間で揺れ動いているのでしょう。

 攻撃は狂気に汚染されているのか以前より強さが増しています。
 彼を正気に戻すような声かけにより、攻撃の手が緩むと予想されます。

 鋭い剣技に加え、炎の魔法を操ります。
 オールラウンダーですので注意しましょう。

○ロウ・テイラーズの騎士たち×10人
 ディーンに従う騎士達です。統率が取れています。
 近距離攻撃を主体に弓士2名、回復1名も居ます。
 ディーンを庇うなども行います。

●NPC
○『ワシャク』キアン
 戦闘は出来ますが、今回は村長の娘パトリシアを守っています。
 余裕があれば村長や息子も守ります。

○『マールーシア村長一家』
 父親のドミニク・エドマンドとその息子ブラッドリー、レックス、ダニーと歳の離れた妹パトリシアです。
 村人達を弔っています。

●ポイント
 戦闘を優位に進めるためにもディーンへの声かけは必要でしょう。
 騎士たちから謎の組織ロウ・テイラーズの情報を引き出すのもいいでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <LawTailors>VermilionKnight完了
  • GM名もみじ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年02月28日 22時07分
  • 参加人数9/9人
  • 相談8日
  • 参加費300RC

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(9人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
※参加確定済み※
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
※参加確定済み※
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
※参加確定済み※
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
※参加確定済み※
冬越 弾正(p3p007105)
終音
※参加確定済み※
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
※参加確定済み※
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
※参加確定済み※
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
※参加確定済み※
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
※参加確定済み※

リプレイ


 日差しが照りつける砂漠の村には、渇いた風が吹いていた。
 外套を揺らし『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は傍らの少年の頭をなでつける。
「キアン、無事で良かったぜ」
「レイチェル、ありがとう」
 眉を下げる『ワシャク』キアン(p3n000148)の願いにレイチェルは力強く頷く。
「ディーンを止める為に全力で……だな。俺に任せとけ」
「うん!」
 キアンの大きな声に『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)はこの依頼を持ってきたチー・フーリィの顔を思い出す。
「毎度ながらチーは厄介事を運んでくるねぇ」
「フーリィが持ってきた仕事、一筋縄じゃいかないとは思っていたが……こう来るとは思ってなかったな、予想以上に難儀だ。とはいえ、仕事を持ってきてくれたフーリィの顔も立てなきゃならない」
 ルーキスの隣に寄り添う『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)は髪を掻き上げ溜息を吐いた。
「仲介料はさておいて、ちゃんと報酬は弾んでもらわないとな」
「確かにそうだな。それにヨハンナの前でみっともない場面も見せれんしな?」
 ルナールは口角を上げて、『娘』であるレイチェルに視線を向ける。
 生暖かいルーキスとルナールの眼差しに眉を下げるレイチェル。
「そういうのは、ちょっと恥ずかしいから。まあ、でも二人が居るなら心強い。頼りにしてるぜ」
「ああ。俺自身、屈強な盾とは程遠いが……自分がやれる事をやるとするよ」

 キアンが語るディーン・ルーカス・ハートフィールドは正義感の強い男だった。
 誰に対しても優しく、悪に屈する事無く、まるで聖人君子のようだと『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)は肩を竦める。
 上手くこの『マールーシア』での依頼に潜り込む事が出来たけれど、と美咲は遠くの砂山を見つめる。
 美咲の本来の目的は此処へやってくるという『ロウ・テイラーズ』への接触だ。
 上司からその任務を受けて此処へ来たのだ。
「どうした? 美咲。熱にやられたのか?」
 心配そうに顔を覗き込むキアンに美咲は笑みを浮かべる。
「ああ、キアン氏正義感に燃えてるなーって考えてただけでス。うちの上司とは違いまスね」
「そんなに怖い上司なのか?」
「まあ。ある意味とても怖いっスね……そういえば村長さん、なんでこの村が襲われたか分かりますか?」
 美咲の声にビクリと肩を振るわせる村長のドミニク・エドマンド。
「……いや、分からない。突然村が襲われたと聞いただけで、私達は……何も悪く無い、何も」
 収まりの悪い物言いに美咲は瞼を下げる。
「大丈夫っス。悪いのはロウ・テイラーズで村には何の落ち度もないです。でも、何か手がかりがあればなぁと思いまして……今から村に行くわけですし。情報はあればあるだけ村長さん達をまもれるっス」
「いや……でも、まさかアイツが生きているなんて」
 小さな声になる村長に美咲は「お辛いなら大丈夫です」と肩に手を置いた。
 ここで逃げられでもしたらそちらの方が困るのだ。マールーシアに村長一家を連れて行かねばロウ・テイラーズは現れないと美咲は村長の背を優しく撫でる。

『竜眼潰し』橋場・ステラ(p3p008617)はその様子に青赤の瞳を向けた。
「ふむ……」
 何やら色々と込み入った背景があるのかもしれない。
 村長が語りたがらないのは言いたくない後ろめたい事情があるのだ。
 とはいえ、ステラ達が請け負った仕事は村長一家をディーンから守る事。
 特に娘のパトリシアを守るキアンには注意を払う必要がある。
 詳しく調べるにしても、戦いが終わってからであろうとステラは外套の端を握った。

 村の中は焼け焦げた瓦礫が散乱していた。
 既に村の惨状を聞きつけた盗賊共が金品を攫って行った後なのだろう。
 不自然に荒らされた跡が目に付く。
『Utraque unum』冬越 弾正(p3p007105)はその光景に胸を掻きむしられる。
 少し前に見た記憶が頭の中に映し出され、目に映るものと重なった。
 弾正の故郷も燃え落ちたばかりなのだ。
 村長のドミニクが悔しそうに涙を流しているのが見える。
 その痛みはどれ程のものだろう。弾正はそれに寄り添いたいと思った。
 されど、未だ執拗に狙われるのには理由があるはずなのだ。
 その原因を見極めなければ真に救う事は出来ないだろう。
「心から血を流す覚悟で真実をこの手に掴もう!」
『Utraque unum』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は弾正の声に頷く。
「……狙われていたのは村全体という事か。弾正、気をつけろよ」
「ああ。分かってる」
 相方の奮い立つ気持ちがアーマデルには分かるのだろう。それを無謀へと変えないようにするのもアーマデルの仕事だ。
 アーマデルは聞こえてくる声に耳を傾ける。
 マールーシアに残った霊魂の叫びが、そこら中に散らばっていた。
 恐怖と痛みに逃げ惑う事を繰り返している。死の直前の記憶に囚われているのかもしれない。
 伝わってくるのは、突然ロウ・テイラーズと名乗る騎士達が村を襲撃したこと。
 逃げ惑う全ての人達を殺し尽くしたこと。
 ――これは『報復』なのだと騎士達は口にしたこと。
「復讐……?」
「どういう事だ? 村が襲われたのは何か理由があるっていうのか?」
 弾正の声に村長の次男レックスが怒りを露わにする。
「何だよそれ! 俺達のせいだってのか!?」
「落ち着けレックス。襲って来た奴らが言ってた事なんだろ」
 レックスを押さえ込む長男のブラッドリー。
「すまない、不用意な言葉だった」
「いや、問題無い」
 弾正は次男を宥めるブラッドリーに共感を覚える。
 村長の嫡男は苦しい事があっても、立場上いい出せない事があるからだ。
 弾正も子供の頃はそうだった。それが嫌で村から逃げ出したのだ。
「弔おうという君の勇気は素晴らしい。故に守ろう……気になる事があれば何でも相談してくれ」
「ありがとう」

 陽光を遮るヴェールから赤みを帯びた琥珀の瞳が見える。
「死を悼む気持ち……知っているからこそ、叶えてあげたいこと」
『燈囀の鳥』チック・シュテル(p3p000932)は白い羽を緩く広げた。
「村長達家族の、そして……キアンの想いに、おれは添いたい」
 守りたいと思ったのだ。人の為になる事をしたいとチックは願う。
「だから――」
 チックの瞳が村の広場から走ってくる『旗』を見上げた。
「守りたいと思った、から。ディーン、君を……止める為に。戦う、よ」

 ――『焔朱騎士』ディーン・ルーカス・ハートフィールドが剣を抜き放つ。


 目の前に現れた赤き騎士を見据え『厄斬奉演』蓮杖 綾姫(p3p008658)は眉を顰めた。
 ディーンの情報を見た時から、鈍い頭痛がきえないのだ。
 綾姫の朧気な記憶の中に、ディーンと共に戦い、そして敵対し剣を交えた光景が流れ込む。
「異世界に呼ばれても、なお続くのは因果なのでしょうか」
 かつて竜王と呼ばれたディーンと対峙した事を思い出す。
「以前とは立場が逆になってしまいましたが、ね」
 彼は正義の為に、綾姫達異能者と戦ったのだ。それが今は、村を襲った組織の一員。
「でも、何故……」
 綾姫の記憶の中にある彼もまた、キアンが言うように優しく正義感に溢れていたというのに。
「どんな理由があって村を滅ぼしたのかは知らないし興味もないけど」
 ルーキスは片翼を大きく広げ動き難い外套を取り払う。
 何事にも因果というものがある。キアンが知っているディーンが豹変したというならば、何かしら外因的な影響を受けたと見るのが妥当だとルーキスは緋金の瞳を上げる。
「そんな連中に良いように使われるディーンもディーンだ、手抜きもしないし容赦もしない。ちょっとキツイ気付けをあげるとしましょう」
 ルーキスの言葉にルナールが頷いて、戦場へと走り出す。
「正直面倒くさいから全部なぎ倒してしまいたいんだけど。ま、娘と旦那の為に頑張るよ」
「そうしてくれると助かるよ」

「イシュミル、あんたは息子達の護衛を頼めるだろうか。娘はキアン殿が守っているからな。彼らが精神的に耐えられず駆けだしたりすると危険だ。あんたなら精神状態を見極めて対応出来るだろう?」
 アーマデルは振り返り、共に戦場へ来ていたイシュミルへと声を掛けた。
「まあ、善処するよ」
「余裕があれば回復を入れてくれると助かるが、自分と依頼者の安全を第一にしてくれ」
 分かったと頷いたイシュミルは村長一家を戦場の隅にある遮蔽物の裏に隠す。
 アーマデルは戦場へと向き直り、キアンの元へ駆け込んだ。
「キアン殿、ディーン殿の戦い方は知っているだろうか」
「うん、旗を振るう時は鼓舞したり魔法使ったりするかも。基本的には剣を使うと思う」
 キアンの言葉にアーマデルはディーンを見遣る。
 確かに理に適った戦術。正しく王道な戦い方をするのだろう。
「手心を加える余裕等なかろうし、この依頼の達成が第一だが……」
 味方の命には代えられないけれど、キアンの気持ちを考えれば出来れば殺さずに事を終わらせたいとアーマデルは剣柄を握り絞めた。
「ならば、できる限りを尽くそう」

 美咲は戦場の隅に居る村長一家へと走り込む騎士を視界に捉える。
 ガシャガシャと音を立てていては不意打ちも何もあったものではない。
「バレバレでスよ」
 ふわりと美咲の肢体が騎士の目の前に現れる。
「な……!? どこから」
 驚いた騎士の首を目がけ足払いを駆ける美咲。甲冑の中に伝わる振動で騎士の脳が揺れる。
「レイチェル氏!」
「おう!」
 裁きの剣を纏ったレイチェルの眼前に赤き血潮の魔法陣が光輝いた。
 焔はレイチェルの身を焦がし、尚も憤怒の顎を騎士へと向ける。
「一度だけじゃねぇぜ!」
 煌々と燃え盛る幻覚の中、騎士は更なる焔に身を焼かれ悲鳴を上げた。

 騎士の後ろから畳みかけるように、別の敵が村長一家へと向かう。
 それを防ぐように立ち塞がるのはルーキスとルナールだ。
「この状況で遠距離攻撃を持つ弓師とヒーラーが、戦場に長居するのは御免被りたい。そういうわけで、ルーキスはガンガン宜しくな?」
「任せて。まずはこいつらから」
 騎士が振り上げた剣をルナールの槍が押し返す。斬撃を逸らしダメージを軽減するのだ。
 ルーキスの片翼に食い込む騎士の刀身。
 眉を寄せてはじき返すルーキスにルナールは心配そうな瞳を向ける。
「無茶はしないようにな」
「大丈夫だよルナール、こう見えて火は守りにも使えるのさ」

 アーマデルと弾正は戦略の要となる回復役へと走り込むが統率の取れた騎士達の剣に行く手を阻まれた。
 事前の情報でそれも想定していた事だとアーマデルは弾正に目配せをする。
「お前らのやりたい事は何だ? 弱い者虐めか? 正道あってこその騎士が聞いてあきれるぜ!」
 弾正の言葉が戦場に響いた。
「何を!」
「だってそうだろ? 村長一家を殺すのに何人で来てるんだよ?」
 煽るように騎士達の目を見て弾正は叫ぶ。
「お前らはただの人殺しだ!!」
「黙れ黙れ!」
 騎士達は弾正目がけて剣を掲げる。怒りに狂ったように弾正に剣を突き立てる騎士達。
 アーマデルは相方に引き寄せられた敵を背後から蛇腹剣で打った。
 それに重ねるようにステラの大剣が甲冑を叩く音が聞こえる。
「がっ!」
「申し訳ありませんが、押し通りますよ!」
 絶大な威力を伴った剣の重みで、騎士達の堅い甲冑がぐにゃりと曲がった。

 ――――
 ――

 チックは戦場をオレンジの瞳で見渡した。
 統率の取れていた騎士達の動きが弾正の言葉で乱されたのだ。
 しかし、それは弾正が大きく傷を負ってしまうことでもあった。
 チックは眉を寄せ傷付いた仲間へと癒やしを運ぶ。
 手にした燈杖から優しい光が溢れ落ちれば、弾正の傷へと集まり再生する。
「皆への危険、退けさせるのは勿論……だけど。何だか、放っておく……出来ない」
 弾正からディーンへと視線を向けるチック。
 彼の前にはステラが対峙していた。
「ディーンさん、なぜ守るべき民草を、力無き人々を手に掛けるのですか?」
「あれらは守るべき民草などではない……あいつらは」
 苦しげな表情を浮かべるディーンにステラは剣を横から払う。戦槍で絡め取るように力を流すディーンにステラは距離を取り、黒き顎を解き放った。
「……ぐっ、私は何故」
 痛みに歪むディーンの声の中に、迷いを感じ取ったステラ。
 狂気に抗っているのだろう。出来れば洗脳されているであろう彼を元に戻したいとステラは思う。

「顔を見てはっきりと思いだしてきました。気高き『竜王』、守護者たる貴方が狩り手に堕するなんて」
 綾姫の言葉が戦場に木霊する。
 顔を上げたディーンはかつての戦友を見て目を見開いた。
「綾姫……? 君もこの世界へ来ていたのか?」
 ディーンの瞳に生気が宿る。先程までの虚ろな色ではない。強い意思を持った光が見えた。
「かつて共に戦った戦友として、そして悪逆の徒、貴方と敵対して剣を交えた者として聞きます。
 貴方は今『己の意思で剣を振るって』ますか?」
 剣柄を握るディーンの動きが止まる。
「自分の意思……私は、あの子の為に、しかし……」
 戦槍を地面に突き立てたディーンは、手を額に押し当てた。頭を抱えるように苦悩するように。
「違うのであれば、我が剣でそれを止めます」
「何を……」
 かつて守るべき者達をその異能を持って虐殺した綾姫が自分を止めようというのか。
「今更お前が、と言いたげですね。……私もそう思います。許しを乞うつもりもありません」
 ただ、と綾姫はディーンの瞳を真正面から受ける。
「異界の放浪者として、役目に殉ずるのみ――その旗に、今の『竜王』を誇れますか?」
 風に赤き戦槍が翻った。


 ルーキスは魔法陣を空に並べ騎士を撃ち貫く。
「私の配下が生贄はまだかって……まあ、これだけ活きのいい人間の魂だ、ちょっとすり減っても問題ないでしょう」
 夫であるルナールの怪我に気を配りながらも、攻撃の手は緩めない。
「悪いな、俺は本職じゃないんで……さぞ不安だろうが我慢してくれ」
「大丈夫か父上!」
 赤く染まるルナールの身体。心配してレイチェルが声を掛けてくる。
「こっちは気にしなくていいよヨハンナ。伊達に戦闘経験は積んでないさ」
「そうだぞ。ヨハンナはそっちに集中してくれ」
「分かったぜ」
 ルーキスの魔法に騎士共が蹴散らされ、戦場に転がる。

 レイチェル達のやりとりを見て仲の良い親子なのだとステラは目を細めた。
 ステラの強大な暴力の前に、統率など無意味。
 ディーンを庇う騎士をその威力を持って叩き潰すステラ。
「邪魔をするというなら、容赦はしません」
 なぎ払う剣尖に風が生じてディーンの頬を切り裂いた。
 ディーンの持つ戦槍から炎が巻き上がり、ステラの頭上に叩きつけられる。
 それを火花を散らしながら受け止め、はじき返し、姿勢を低くしたままステラは横薙ぎの刃を敵の懐目がけて突き入れた。
「ディーンさんは狂気に抗っているのでしょう。なぜ、抗っているのですか。この虐殺を非道だと思っているからではないですか。拙にはそう見えてならないのです!」
「非道であると、分かっている。だが……!」
 ステラの言葉にディーンは己の意思を奮い立たせる様に歯を食いしばる。
「分かっているのなら何故ですか!」
 自身の正義の信念を曲げてまで、成さねばならない事があるのかとステラは叫んだ。
「それは強制されているのではないですか!?」
 強く揺さぶるステラの言葉にディーンの心はこじ開けられる。
「私は……」
 確実に洗脳から解けかけていると確信があった。
 ステラは剣を振るい、言葉を乗せ。意思を叩きつけた。

「……誰かに支配されて力を振るうのが。虐殺を行うのが『英雄』なのか!? 目ぇ覚ませ!!」
 レイチェルは片翼――ジョアンナの力を借りてディーンへと魔法を展開する。
 対峙するディーンにレイチェルの瞳が重なった。
「ロウ・テイラーズ……法を「仕立てる」者。お前達は何者だ? 何の為に村を滅ぼした?」
 拮抗するレイチェルとディーンの力。
 瓦礫の惨状に二つの炎が混ざり合う。
「……酷い有り様だ。相当な恨みがないと、こんな事は出来ねぇぞ。遺体も建物も全て焼き尽くすなんて。怒りの炎の持ち主。お前達を洗脳しているのは誰だ?」
 レイチェルの問いかけにディーンが眉を寄せた。
「あいつらが、この村の者達が、あの子に何をしたのか。知らないのだろう」
「ああ、そんなもん知らねぇよ。だけどな、復讐ってものは『英雄』がするもんじゃねーよな」
 そういう泥臭いものは自分のような反英雄がするべきもの。
「ねぇ、『あの子』とは一体誰なの」
 チックはディーンに問いかける。自分の意思でないのなら、誰の為に此処へ来たのか。
「君達(ロウ・テイラーズ)は、何を標として動く……してるのか」
 操られているのか、その理由を知りたいのだと真摯な瞳を向ける。
「……君が知る『罪』と、この村は。何か……関係があるの?」
 チックは世界を救う英雄ではなく、『ディーン』という一人の騎士に向き合うのだ。
「おれは、君の事を……よく知らない。でも、キアンやフーリィ達から……話を聞いて。立派な行い、した人なんだって……思った。ねぇ。……君が救いたいと謳う人は、本当に……その子、なの?」
 ディーンはチックの色素の薄い髪に切なげに瞳を揺らす。
「だって、あなたの表情を見て。揮う攻撃を身に受けて。苦しい感情……伝わって、きたから……罪を贖う方法は、死だけじゃ……無い、と思うんだ」
 瞳を僅かに伏せて、剣尖をだらりと地面に降ろすディーン。

「あの子は、ネイトは。このマールーシアで生まれた子供だったそうだ」
 ディーンの口から溢れた『ネイト』という名前に、村長と息子達が肩を振るわせるのをルナール達は見逃さなかった。
「両親の居なかったネイトは生まれた時から疎まれ生きて来た。そして、十歳になる頃に『悪魔の子』と言われるようになり、村中から虐げられたのだと」
 外を歩けば年端も行かない自分より年下の子供に石を投げられ、力の強い者には殴られ蹴られる。
「特にその村長一家は酷い扱いをしていたそうだ。傷だらけの身体、焼印の痕。口に出すのも悍ましい行為の数々。幼いネイトに惨い仕打ちをした……」
「それは、アイツが悪魔の子だったからだ!」
 戦場の隅から次男のレックスが声を張り上げる。レックスと三男のダニーは輪を掛けて酷く、ネイトを生きている玩具や奴隷のように扱ったらしい。
「アイツは悪い悪魔なんだ。『あの魔術師』がそう言ったんだ。悪魔の力を封じておくには日々の浄化が必要だって。ネイトを従わせ浄化するのが俺達の役目だった!」
 レックスの言葉にディーンが再び怒りの灯火を瞳に宿す。
「何が悪魔だ……! あの子は只の子供だ」
 剣に闘志の焔が宿り赤々と燃えていた。

「俺の神は復讐を肯定する。生者が死者の手を離し、再び歩き出す為に。だがそれは復讐される側は無抵抗で死ねという訳じゃないし。そもそも必ずしも命で贖わねばならないものでもない。永遠に殺し合いを続けぬよう、何処かで区切りをつけようという事だが……」
 アーマデルは蛇腹剣を構えたまま村長へと近づくディーンの前に立った。彼が語るは故郷での話しだ。
 ヒトというものの心は簡単では無い。
「ディーン殿、洗脳に身を任せるのは楽だろうが……甘えるな!」
 彼の隣には弾正も双璧を成して立ちはだかる。
「罪なき人を殺めたなら、その屍の十字架を背負い、己が正義に旗を振れ!
 彼らの無念に報いれるのは、手を汚した貴様だけだろうがッ!!」
 弾正の己が正義と言う言葉にディーンは目を瞠った。
「その戦旗は何の為に在り、誰の為振るう? 苦しいのは己の信条に反する事をしているからだろう」
 正義と信条。
「何故にこの村の命を絶やすのか。そちらにはそちらの正義があるのだろう、ならば語って見せるがいい」

「私はネイトに同情した。何も持っていない子供が、復讐を遂げるという意思だけで生きていたあの子が可哀想だと思ったのだ。私に泣いて縋ったあの小さな手を振り払うことが出来なかった」
 それは洗脳であったのかもしれない。
 されど鋼の意志を持つディーンが抵抗すれば、子供の力など容易くはじき返せる。
 そうしなかったのは、彼自身がそれを受入れてしまったから。
「ここ『マールーシア』で行われた非道からの復讐、ある意味自業自得、とも言えますが」
 綾姫は怒りに瞳を揺らすディーンと村長の間に割って入る。
「私たちがイレギュラーズだった事、幸運だったと思いなさい。そうでなければ、私が斬っていたかもしれません」
 村長からディーンへと視線を向けた綾姫は撤退を促す。
「ディーン、私達が居る限りこの人達は死なせません。これ以上の消耗は無意味ではありませんか?」
「綾姫……分かった。私の代わりに、この村の人達を弔ってやって欲しい。私にはそれをする資格が無い」
 深く息を吐いたディーンは剣を収め踵を返した。
 それに習い、呆けていた騎士達も後に続いていく。

「なあ、そのネイトっていうのを『悪魔の子』って言い出したヤツは誰なんだ?」
 レイチェルの冷静な問いかけに、村長が眉を寄せる。
 先程帰っていった騎士達に問いかけるよりも村長の方を突いた方が情報を引き出せるとレイチェルは判断したのだ。もし仮に自分が組織に所属していたのならば、敵対勢力に情報を易々と渡す筈が無い。
「名前は……な、ぜだ。聞いたはずなのに。覚えてない? 確か長い銀髪で……」
「金色の瞳だった、とか」
「あ、ああ。そうだ……顔を思い出せないけど、アンタに似ている気がする」
 レイチェルは口を引き結び強く憎悪の表情を浮かべた。
「それは、そいつが悪魔だなぁ。俺の顔によく似た悪魔だ」
「どういう事だ? ヨハンナ」
 ルナールとルーキスが首を傾げ近づいて来る。
「……父上、母上。厄介な事になってすまねぇ」
「それは問題無いさ。自分のやりたい事を成せっていつも言ってるだろう」
 レイチェルの頭をくしゃりと撫でたルナールは口の端を上げた。
「それで、詳しく事情を説明してくれないか。そこの村長さんよ。可能な限りで構わない、無理に喋れとも思ってはいないがね」
 全てを解明できるとは思わないけれどとルナールは瞳を上げる。
「まあ無事ならそれでいいよ」
 ルーキスはレイチェルの頭を撫で回し笑みを零した。
「さて、二人とも帰るぞ。帰りついでにフーリィに報告もしないとな?」
「そうだな。一先ずは帰ろう」
 ルナールの言葉にレイチェルはようやく肩の力を抜いた。
「ルーキス、帰ったらこの無茶が特技なヨハンナにアップルパイでも焼いてやってくれ」
「ふむ、甘い物か。折角だしチーから食材を仕入れて帰ろうか」
「それもいいな」
 レイチェル達親子の和やかな会話と共に、静かに村人達の弔いが行われた。
 撒かれた聖水と祈りの言葉に、この場に残っていた魂達が天へ昇っていく。
 青く澄み渡る空へ光となって消えて行った。

 ――――
 ――

『ミサちゃん、『ロウ・テイラーズ』って聞いたことあるかしら?』
 己の上司である、高橋 真由美の言葉を反芻するように思い返す美咲。
『ダメよ? 隣国の話なんだからもっとアンテナを高く持たないと。それでね? 今回ミサちゃんにはその組織の調査をしてもらいたいの』
 練達とは程遠い地での任務に疑問を呈するように美咲は首を傾げる
『だって、練達の方に火が飛んでくると面倒くさいでしょう? 幻想ラサの国境間にいるうちにつつければ練達には飛んでこなくなるから、うまいこと押し付けてほしいかなーって』
 緩い口調で軽々しく言ってくれると美咲は真由美に瞼を下げる。

 ふと視線を上げれば、前を歩いてくる作業服の男達が見えた。
 広大な敷地と広い工房の中で紡がれる、繊細で美しいテイラーズジャケット。
 血なまぐさい戦場などではない。普通の仕立屋の工房の中を美咲は歩いて居た。
 ここは、ロウ・テイラーズと繋がりがある場所なのだ。

 その『仕立屋』へと潜り込む事が出来た美咲は先輩である男達に小さく頭を下げた。
 通り過ぎて行く男達は美咲に振り返る。
「あいつ何だっけ……見た事無いような。前から居た?」
「前から居たぜ。あれだろ。カラーレス・シビルの一人だろ」
「ああ~、何か居たような気がする」
 まだ『色』を与えられていない無色の人達の事をそう呼ぶのだろう。

「さて、お仕事しますか」
 普通に働いて生活をする。秘密諜報組織「00機関」のスパイである美咲は敵地に溶け込み情報を集めてくるのが役目なのだ。マールーシアでの依頼はこの為に請け負ったもの。
 美咲のメガネの縁が窓から差し込んだ光を反射した。

成否

成功

MVP

冬越 弾正(p3p007105)
終音

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 焔朱騎士を退け無事に村人を弔う事が出来ました。
 MVPは敵を上手く引きつけた方へ。
 リクエストありがとうございました。

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