シナリオ詳細
霧里の湯煙
オープニング
●
旅館。ああなんという甘美なる響きであろうか……
その言葉は疲労困憊である者にとってはオアシスの如き空間。
暖かな湯にて心身を癒す……なんたる極上であろうか――
「……って、楽しみにしてたんだけどね」
「いやあ……そのね? あの時は色々あったんだよ、事情が」
――だというのに。『以前』イレギュラーズ達を旅館へ連れて行くと騙して病院へと連れ込み、冬の病気対策で予防接種を無理やり受けさせたギルオス・ホリス(p3n000016)にハリエット(p3p009025)はご不満な様子であった。
信じていたのに裏切られた――そのショックは大きい。
ちょっとばかり『むっ』とした様子であるハリエット。『これも君たちを想っての事だったんだよ――』なんて言われたって納得できるかは別なのである。だから。
「だから――うん。今度こそ本当に旅館に行こうか」
「……本当に?」
「ははは。今度のには裏は無いから安心していいよ。
最近縁が出来た覇竜領域の方に秘境とされる温泉地があるみたいなんだ――
そこへ行ってみよう」
「『今度のには』って言う事はやっぱり自覚はあったんだね」
ジト目のハリエット。けれど、こうもギルオスが言うならば今度こそ裏はないのだろう。
しかしまさか最近交流が開かれた覇竜の地へとの招待とは意外な地だ――
なんでも亜竜集落ウェスタの一角に温泉地があるらしい。周囲は木々に囲まれ、大自然の息吹を感じながら過ごせる……秘境とも言える素晴らしい地だ。『薄明の湯』『潺の湯』『和湯』の三種の温泉が湧き出ており、須らくなんらかの効果があるそうで――って、まぁ百聞は一見にしかずとばかりに歩を進め、早速件の旅館に到着……すれば。
「さぁ着いたよ、ここが噂の旅館で――うわっ!?」
瞬間。ギルオスの顔面に――林檎が直撃した。
林檎? なんで? どうして? そんな疑問が怒涛の如く押し寄せるが、答えは向こうからやってきた。ソレは……
「キキッ!」
「――うん? あれって……猿?」
ハリエットの視界に映ったのは、一匹の猿だ。
……いや違う。よく見れば一匹所ではない。二匹、三匹、四匹……もっといるぞ!
「ああ、お客様ご無事ですか!!? 今ちょっと温泉が連中に不法占拠されておりまして……うわっ! くそ、この! 果物を投げてくるな!! 本気で追っ払うぞ!!」
さすれば恐らく従業員らしき亜竜種の人物が旅館より出てくる――が。直後にはその後頭部にギルオス同様に果物が投げつけられるものだ。モップを振り回し追いかければ、件の猿達は面白がる様な感じで逃走していく――
……事情を尋ねれば、どうやら奴らはこの近辺に出現する猿の一種『エブシ猿』という者達らしい。
魔物の類ではない為そう強くはないのだが、非常に悪戯好きで油断すれば人の物を取ったりする事もあるのだとか……ただ、今回偶々出現した数が非常に多いらしく、温泉も奴らに不法占拠されている真っ最中。
「はっ。そういえば外の方々は特異運命座標なのだとか……
然らばお頼み申し上げます! 奴らを追っ払ってくれませんか!
無論、果たして頂ければお代はタダに……!!」
「……やっぱり依頼の一環だったんだねコレ」
「ち、違うんだ! これは、そう偶々で……今回は謀った訳じゃないからね――!?」
再びジト目のハリエット。とはいえ、このまま猿達を野放しに温泉を楽しむ事はどのみち出来ないのだ。
緊急ながらも依頼であれば仕方ない――
奴らを追っ払った後に汗を流すのも悪くはないだろうと、貴方達は準備を進めるのであった……って、うわッまた果物が飛んできた! あっ――!!
- 霧里の湯煙完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年02月25日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「……ってことが、あったんだよ。まったく、カイトさん。あの時は酷かったよね」
「あ、ああ……それとよ念のため確認したいんだが……ここ、ふつーの温泉なんだよな?
隣に病院併設されてるところじゃないよな???
事が片付いたらいきなり病院が現れたりしないよな――?」
「大丈夫だよ! 流石に今回はそんな事はないから!!」
前回。ギルオスに騙された経緯を『今は未だ秘めた想い』ハリエット(p3p009025)はメンバーに説明するものだ――さすればその前回に参加していた一人である『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)は物凄く警戒する様に周囲を窺うものである。
鳥さん軽くトラウマなのである――! 脳内でミニカイトがピィピィ! と泣いて……違う、鳴いている。しかしまぁ当のギルオスも無いと言っているようだし……いやだがまだ信用できない! もしかしたら地下に病院が隠されているかも――!
「へぶしっ!!?」
――が、その時。
カイトの横っ面に林檎がブチ当てられた――猿だ。
「ンキー! キキキ~♪」
「……ほう。猿ごときが、鳥類最強の猛禽に楯突くとはいい度胸だな。
お前らが何しようが自由だけどよ……やったからには」
狩られる覚悟はあるんだろうなぁ――?
カイト、飛翔。保護なる結界を張りつつ猿共を追っ払うべく『狩り』を開始する――!
同時にハリエットも威嚇射撃開始。猿をさっさと追い払い……湯を楽しみたいからと。
「にしても旅館があるのは驚いたな……まぁ、偶にはのんびりハメを外せるかと思ってたんだが、思わぬ依頼が入るとは――まぁローレットにいりゃあこういう事も稀にはあるわな」
「コラァ! 余所様に迷惑かけたらいけないって教わらなかったの?
お尻ひっぱたきますよ?! 待ちなさい! 正座して反省するまで許しませんよ――!!」
同時。頭を掻きながら状況を『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は見据え、『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は呼吸一つ――の直後には大いなる声を炸裂させるものだ。
それはまるで悪戯好きのガキンチョ共を叱り飛ばす近所のおばさんの如く――!
響く声は広範囲に影響を及ぼせば、その分だけ猿達は恐れおののくものである。
「ンキ――!?」
「お前らにも習性ってものがあるのかもしれねぇけど、やり過ぎはこうなるもんだ、分かったか?」
更に。逃げ越しとなった猿達をマカライトは己が狼――ティンダロスと共に往く。
猿達を更に追い込んでいくのだ。魔物だというならまだしも、所詮この地帯に住まうだけの猿であれば果物を投げつけてくる程度が関の山。奴らの注意散漫な死角から驚かして山へと追い返してやろう――
「はぁ……全く! あーしの癒しを邪魔するのは罪が重いわよ!
遠路はるばる折角秘境の温泉地だと聞いてたのに! このエテ公共!」
あーしの恨みを思い知りなさいよね――! 更にマカライトに次ぐ形で攻め立てるのは『ガンカタ巫女』昼子 かぐや(p3p009597)だ。放たれる数々の銃弾はまるで奈落からの呼び声が如く。怒りと共に振るわれる脅威があらば更に猿達は蜘蛛の子散らす様に逃げて――
「ははは、タイミング悪く温泉が不法占拠されていたとは。
まぁ覇竜領域は過酷な環境……こういう事もあるのかもしれないな。
それにちょっとした遠出の心算だったが、いい運動になりそうだな――ポメ太郎」
ええっ!? ゆっくりするんじゃなかったんですか!? まだ運動するんですか――!?
主人たる『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に連れられてきたポメ太郎だったが、突然の運動発生に大ショック。彼の脚に擦り寄って頭を何度もくっつけるのは『やめましょうよ!』という抗議の証か――でも『あと少しだ』と頭を撫ぜながら言い聞かせ。
ベネディクトもまた猿達を追っ払うのに助力する。
とは言っても、大きな声や武器で威嚇と牽制の構えを取ればそれでも十分かと。
「まぁあくまで只の猿。本気を出す事もあるまい――――と、ポメ太郎?
それはさっき猿達が投げたヤツじゃないのか? 美味しいのか?」
刹那。足元を見ればいつの間にかシャクシャクとポメ太郎が林檎を食べていた。
『はい! 美味しいんです!』と言わんばかりに物凄い勢いでがっついている――一応、見た限り犬に与えてはいけない果物はないみたいだし、大丈夫だとは思うが。ただ果物は加糖の塊である為にまーたポメ太郎が丸く育ってしまうかも……メイドが氷の表情を向けてくる。
ともあれ温泉に早い所浸かりたいのだ。
さっさと彼らにはご退場願うと――しようか。
●
「覇竜領域。此度、初めて訪れましたが、このような場所もあるのですね……」
「ふふ。温泉があるから訪れる猿、か。話せば分かる子もいたりするかもしれないね」
ンキー! ンキキ――!!
あちらこちらからイレギュラーズに撃退される猿の声が響く中――彼岸会 空観(p3p007169)と『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は逃げる猿達の様子を観察していた。
彼らを追い払うは両者共に、他の面々とも同様の心積もりである。
しかし――マルベートは早速に『潺の湯』へと身を漬けながら猿へと語りかけるものだ。
「ンキッ?」
「やぁ――君達はこの辺りに住んでいるのかい? ああ安心したまえよ。君たちが害をなすつもりがないのなら、無理に追い出す事もない……裸の獣同士、このかけがえのない時間を共に過ごそうじゃないか」
「ンキキキッ?」
もしかすれば物分かりの良い子もいるのではないかと。
大自然の緑を思わせる、かの湯に浸かりながら――穏やかな言を紡ぐものだ。
大丈夫、安心して。森の香り豊かな湯も近くに在る為かな、今の私は機嫌が良い。
多少の悪戯だって大目に見てあげようじゃないか――ふふふ、ほらほら果物は投げるものじゃないよ。大人しく此方に来て。グルーミングもしてあげようね――ほら、林檎に梨は投げるものではなくて食べるもの……
「……聞き分けのない子は、ちょーと大人しくしてもらおうかな?」
「ンキッ!!?」
だと言っているのに、どうしても止めない悪戯小僧はお仕置きだ。
超速に捉える複数の猿。そのまま抱き寄せ首を絞めようか――
何、ほんの微かなお仕置きさ。そう。
「君達の投げた果物はとても美味しそうだからね。
――後で君達を乗せる皿の上に一緒に盛り付けてあげよう」
「ンキッ――!!?」
冗談か本気か。知れぬが彼女の底知れぬ笑みが――其処に存在していた。
そして空観もまた別の猿を見据えるものだ。
猿達が慌てて逃げる果て……そこには一際大きな猿が一匹いて。
「ふむ……では、参りましょうか」
故に往く。恐らくアレが猿達の長だろうかと判断できれば。
その眼前へと跳躍。さすれば――
「お待ちを。其方の目的や如何に――?
この地を占拠したのは只の悪戯か、それとも温かき湯に浸かりたかったからですか?」
言の葉を交わすものだ。
動物と意志を交わす術によって。彼らの奥底を問いたださんとする――悪戯好きが高じて不法に占拠しているだけなのか、将又湯に浸かりたいと言う思いもあるのか。
後者であればまだ良し。旅館の者に伝え猿専用の湯舟を用意して頂く事も出来るかもしれない。いや――
「どの道、このまま其方が退かぬ様であれば、次は狩らねばならぬやも知れません」
「ウキッ……」
「それは恐らく其方の本意ではありますまい。共存の道を、考えられるべきかと」
これ以上、不当な害をなすのであれば討伐も止む無し。
彼らの思案する様子を見れば、恐らく予想通り湯に浸かる事が彼らの本命の望みではあるのだろう――無論。悪戯好きの側面も確かにあるからこそ、今の事態が起こってはいるのだろうが。しかし過酷な環境下で過ごす者達は共存の道を探すべきだと……
「……ああ、そうですね。
もし、悪戯し足りないと言う事であれば私がお相手仕らせて頂いても宜しいですよ」
「ンキ~?」
「そうですね――鬼ごっこ、などはどうでしょうか」
ふふ、と。笑みを見せるは鬼が行う鬼ごっこ。
猿達が投げていた果物を一つ手に取って。
はたして彼女が行うは逃げる側か、それとも鬼の如く追う側か……
●
さて。
猿達を懲らしめる事に成功した温泉は再び平穏を取り戻していた――幸いと言うべきか猿達は施設そのものを損壊させる様な悪戯はしていなかった為に、少しばかりの掃除で温泉も綺麗に。
故、なら、ば。
「温泉だ――!! ふぅ、やっと堪能できるぜ!! 鳥さんはこっちの湯に行くかな、と」
遂に待望の温泉タイムだ!
往くカイトが真っ先に目指したのはマルベートも楽しんでいた『潺の湯』である。
文字通りに羽を伸ばしてくつろごう。体の隅々まで染みわたる温かさが彼の体を癒すもの……えっ? 鳥はお湯が駄目な種族も多いんじゃないかって?
「はは! 猛禽は平気なんだよな――なんたって至上最強の鳥だからな」
よく飛ぶとりさんは翼の付け根や筋肉を酷使してるのだ。しっかり休めて柔らかく。
ゆっくりと、ゆっくりと浸かって――体を休めるとしよう。
……おい。茹でて柔らか鳥肉とか思ったやつはどこのどいつだ。出汁でもねぇよ!!?
「ふぅ……最近の練達での騒動は激闘だったからな……
休める様な暇もなかったし、久方ぶりの温泉はやっぱり別格だな……」
「ああ全く。偶にはこうしてゆっくりと過ごしたいものだ」
一方で美しい琥珀色の湯が特徴な『和の湯』へと至っているのはマカライトやベネディクトたちであった――連れのティンダロスやポメ太郎もどうやら入れる様で、少し離れた所で思い思いに過ごしている。あ、犬かきして泳いでるぞポメ太郎。
「……しかし、それにしても温泉か……覇竜の地は荒涼と共に自然が重なっているなら、それなりに規模の大きい活火山とかあるんだろうか? 噴火とかを心配してる訳じゃあないけれどよ……」
「さてどうだろうね――今の所そういった情報は入ってきてないけれど、まだまだ未開の地も多い。一つぐらいはあってもおかしくないかもしれない」
と、その時。マカライトの疑問に答えたのはギルオスだ。
マカライトもそれなりに依頼で火山が活動範囲のものを見た気がするが、どうにもこっち――混沌――では印象が薄い感じがしていたのだ。温泉に浸かっていればふと思い出しただけではあるのだが……
まぁ、きっといつか地獄見るから別にいいか。
今はじっくり浸かって風呂上がりに飲む物と夕飯を考えよう――
「酒か牛乳か、贅沢な悩みだ」
ただ。一種類の湯しか楽しめない訳でもない。
後で別の湯の方にも行ってみようかと――思案していれば。
「ふぅ……生き返る~……桃の香りに包まれて、はは。
実在していたらこれが桃源郷ってやつなのかなー」
「ええ。この時期の温泉はまこと、身体の芯から暖まる感覚がどうにも何かに擽られる様な、内より優しく触れられる様な心地がして何とも言い難い良さがありますね……だからこそ温泉は至高と言えるのでしょう」
『薄明の湯』の方には、かぐやに空観らが楽しんでいる所であった。
穏やかな乳桃色。ほんのり香る桃の匂いが嗅覚からも楽しませてくれる。
これぞ寒き冬の醍醐味よ。と、思っていれば更にリディアやハリエットも薄明の湯へと浸かり。
「ふふ。美肌効果、色、匂い……どれも魔法少女に相応しい完璧な湯ですね……!
しばらくのんびりと浸かっていきましょうか――うーん外も眺められて、景色がいいですね」
「そうだね……ここは他にも種類もあるから、沢山、楽しめそう……
いいお湯、だね。身体がゆっくりほぐれていく」
語桃の色合いが特にリディアは性質的にお気に入りのご様子――
であればとハリエットも言の葉を喉の奥より絞り出すものだ。
誰か――語らう者が欲しいなんて、今まで思う余裕がなかった。
だって、近寄ってくる人は私を利用しようとする人ばかりだったから。
悪意。内に秘められたソレばかりがハリエットの日常だった……
でも。
変わる切欠を貰ったんだから、変わりたい――
その想いが胸の内より顔を見せれば、勇気を持って――言の葉を紡ぐものである。
ほんのりと。体のみならず心もほぐす温泉に浸かりながら。
「ふぅ……さて、上がりましたら如何しましょうか。美味しい食事もあるとの事ですが」
「ま、とりあえずは――やっぱ温泉に浸かったらコーヒー牛乳って相場が決まってるよね! これっしょこれ!! これ呑んだ後は――あっ! 卓球台! こんなのまであるんだ!!」
ねーねー誰か卓球しなーい?
空観の言に続いてかぐやが見つけたのは――そう、旅館の定番品(?)たる卓球台であった! さすればそれを見据えたのハリエットとリディアで。
「卓球かぁ……どうだろう、リディアさん、やってみる?」
「卓球ですか。なるほど……初めてですけど、試しにやってみましょう。
これは、たしか、こうやって握るんですよね……」
「そうそう! あっ、じゃあ丁度良いからこの中村モデルのラケット使う?
なんでもこれを使えばどんな素人だろうとプロレベルの実力が発揮できるとかなんとか」
えっ!? そんな神秘的効果が……!? 中村さんもビックリですよ――
ともあれ和気藹々と試合開始! ちょ! てや! たあ――!
「はぁ、はぁ。うーん初めてにしては中々やるわねリディアさん……!!」
「かぐやさん、ラケット二本持ちとは、もしかして上級者ですか……!?
くっ。でも、負けませんよ――てぇいや!」
四苦八苦しながらも結構撃ち返せているリディア。
よって見据えた一瞬の隙を突く様に――全力での、スマッシュ一閃!
――したら慣れない事をしてしまったが故か、思いっきり外してしまって。
「あ、あれ? 球が……球はどこに? あっ。もしかして浴衣の中に……す、少し待って下さいね。浴衣直さないと……あれ? えーと、あれ? わわわ、このままだとはだけて……!」
「あはは! 汗かいちゃったから、このままもう一回入ろうか!」
どうせ時間もまだあるんだし――と。胸元から帯の間にまで手をいれて、浴衣がズレ。肩やら脚やらが外気に晒され焦ったリディアを導いていく――
「ぷはっ――!! やっぱこれだよな、風呂上がりにはコーヒー牛乳!!
この文化って一体どこの文化なんだろうな? まぁ旨いからいいか!」
さーて夕飯は何かな、温泉卵かな――!
それでいいのか鳥類の化身よ! ほかほか柔らか鶏肉……じゃなくて、ゆっくりと温泉を楽しんだカイトはコーヒー牛乳を喉奥へと飲み込みながら、まだ見ぬ美味へと思いを馳せて。
「さてさて。コーヒー牛乳も悪くないが、しかしやはりここは種類が欲しい所だね。
後は、さて。この『新鮮な肉』をどうディナーのメニューに加えたものかな」
同時。マルベートもまた貴重な湯上りの時間を楽しむものである。
その手には枡酒の様なモノがいつの間にか抱かれていて――
…………おっと? もう片方の手にあるのは、ん、なんだ……?
何かの肉っぽい気がするが、ま、まさか……?
「ふふ。詮索は――無用だよ」
私の好きな『人間の味』には適うまいが。
まぁ似たようなものだろうと――マルベートは食欲を滾らせて。
「――さて。今日は色々と災難だったな、ギルオス」
「いや全くだよ……まさか猿がいるなんてねぇ」
「ははは。まぁ解決したから何よりだな――そちらは少しは疲れは取れたのか」
ああ。温泉自体は絶景だし良い湯だったしね――と。
ほがらかに語るのはベネディクトとギルオスの二人である。
コーヒー牛乳を互いに口元へ。温かな身体に染みわたる――
「俺達もそうだが、そちらも普段から何かと忙しいのだろう。あまり無理はしない様にな」
「命を懸ける事も多々ある君達程じゃないさ――でもそうだね、うんゆっくりさせてもらうよ。ベネディクトもせっかくの機会だ、体を休めてね」
「ああ。……まぁ流石にあれくらい気を抜けとは言わんが、な。
まぁ――今日は良い息抜きになった、有難う」
直後。視線を向けた先にいたのは――のぼせたのか遊び疲れたのか大の字の状態で眠っているポメ太郎であった。今ならもふり放題かもしれない……と。ポメ太郎を抱えて連れていくベネディクトと手を振って別れれば。
「ギルオスさん。我儘をきいてくれて、ありがとう」
「おっと――ハリエットか。楽しめたかい?」
「うん。とっても」
そこにいたのは、ハリエットであった。
彼女は、こちらを覗き込む様に視線を合わせて――そして。
あのね。
「いつも忙しそうに人や書類に囲まれているから、理由をつけて、連れ出したかったんだ。
身も心も、自然の中で開放してもらいたかった」
優しい笑顔の裏に、時折違う色が見える気がして。
それが何なのかは、聞けない。から、せめて。
……だいじなひとが、今だけでも穏やかでありますように。
「うん、そうか――どこか心配させちゃったかな。ごめんね」
「ううん。いいの」
ささやかにして、でも大事な願い。
どうか、どうかと。霧里の湯煙で、彼女は願う。
暖かな湯煙に包まれて――ただ一時の平穏でも、と。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
この前まで激戦の最中。これからもきっと大変な事があるかもしれませんが……その一時の平穏を描写出来たなら幸いです。MVPは猿とも意志を交わせた貴方に。
ありがとうございました!!
GMコメント
リクエストありがとうございます!
ちなみに『以前』の経緯はシナリオ『旅館に行くと聞いていたのに(動物)病院の看板が見えてきた』ですが、そういう事があったというだけで、読んでいなくても問題ありませんのでご安心ください。
それでは詳細です!
●依頼(?)達成条件
猿を追っ払って温泉を楽しみましょう!
ちょっと戦闘っぽい要素もありますが、今回はどっちかと言うと旅館を楽しむ事の方がメインです。なのでプレイングはほとんど温泉や旅館を楽しむ事に割いてOKですのでご安心ください!
●フィールド『霧里の湯』
場所は覇竜領域。亜竜集落ウェスタの一角に存在する、秘境の温泉地とも言われる場所です。
立派な旅館がある……のですが何やら野生の猿達に占拠されて困っている様子。
とはいえ彼らを追っ払って後は悠々に楽しみましょう。ちなみに下記の温泉以外にも卓球できる様なスペースがあったり、コーヒー牛乳っぽい飲み物などもあったりします。
・薄明の湯
穏やかな乳桃色の温泉です。
なめらかな湯触りが特徴的で、美肌効果があるのだとか。
ほんのり香る桃の様な匂いが温泉気分を高めます。
・潺の湯
大自然の緑を思わせる様な色の温泉です。
さらさらとした湯触りが特徴的で、疲労回復の効果があるのだとか。
まるで森林の中にいるかのような落ち着く匂いも素晴らしいです。
・和湯
美しい琥珀を思わせる色の温泉です。
とろみのある湯触りが特徴的で、保湿効果が高いのだとか。
少々硫黄の匂いがしますが、それがかえって温泉感を更に高めています。
●エブシ猿×たくさん
現在、温泉を不法占拠している猿達です。魔物ではなく人に対してもそこまで敵対的ではありませんが……非常に悪戯好きで油断すると人の荷物などを盗っていこうとする者達です。果物とかを投げつけてくる事もあるのだとか。
ただ、先述の通り魔物の類ではないのでイレギュラーズの皆さんなら適当に追っ払う事は簡単です。大きな声を出すだけでもビックリして逃げていくかもしれません。
●ギルオス・ホリス(p3n000016)
ローレットの情報屋です。今回は純粋に皆の心と体を休めてもらおうと、旅館へやって……きたのですが。なんと間の悪い事か、猿達が暴れているではありませんか! 『こ、これは僕も想像していなかったんだよ!』とは言ってます。
彼も協力して猿を追っ払います。順当に追っ払う事が出来たら後はゆっくりしたいようです……
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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