シナリオ詳細
うどんが人類に反旗を翻す話
オープニング
●危うし、鉄帝のおひるごはん!
鉄帝のお昼事情は複雑だ。
何しろ鉄帝は町中でも何が起こるか分からない。
大通りではよく分からない暴走ロボットが暴れているかもしれない。
曲がり角からはパンを咥えた覆面レスラーが飛び出してくるかもしれない。
屋根の上には猫の動きを取り入れようとする迷走中の闘士がいるかもしれない。
路地裏にはヤンキーからカツアゲしている遊び盛りの子供がいるかもしれない。
そんな中で営業している……というか普通にご飯を食べられる店は大人気だ。
鉄帝にお店は数あれど、シェフがいきなり客をフランケンシュタイナーでノックアウトしない店となると、これが中々希少である。
故に鉄帝では、屋台もよく出ている。
手軽で安全に簡単ご飯。ご飯時になると出てくる屋台飯は働く鉄帝人の生活に必要不可欠なものだ。
しかしまあ、そうなると屋台も色々なモノが出てくる。
美味しい飯を出す屋台が人気になるのは当然のこと。
だが人気の屋台が出れば当然同じようなものを出そうとする屋台も増える。
一時はカレーの屋台が20以上並んでいたこともある。
そして屋台飯で鉄板と言えば麺だ。
特にモチモチしていてお腹にもたまる、うどん。
どう作っても大抵美味しいうどんは、真似しようとする者達にも大人気だ。
しかし……しかし、だ。
いくらうどんがお手軽に作れて美味しいからって、雑に作っていい理由があるだろうか。
いや、ない。
だからこそ、うどんは立ち上がったのだ。
鉄帝の食を守るため、正しいうどんを守るため。
いや嘘つくんじゃない、絶対何処かの研究所だろ。
責任者出てこい。
すでに先日付で更迭しました。
そっかー。
●うどんを叩け、うどんだけに
「というわけで、うどんを倒してくるですよ」
チーサ・ナコックはそう言いながら微妙な表情になる。
当然だ。
まるでソバ派と思われかねない言動だ。そうではなく。
「お昼時になると、鉄帝の町に何処からかうどんが現れて人々を襲うです」
主にうどん屋台を……それもレベルの低いうどん屋台を襲うようだが、そのやり口たるや実に残酷だ。
うどん屋台の主人を往復ビンタで黙らせるとブレーンバスターでトドメを刺し、うどん生地を取り込んでしまうのだ。
こうなれば屋台の売り上げはゼロ。収支で言えばマイナスだ。
ダメな屋台だけがそうなるという保証もない以上、真面目なうどん屋台も出店を控えてしまう。
結果として今、鉄帝のうどん屋台が激減しているのだ!
これはまさに鉄帝のうどん文化の危機とすら言えるだろう。
うどんを、守らなければいけない。
その為にはうどんを倒さなければならないのだ。
「一応、偽装用の屋台も用意してはいるです。うどんの材料も、基本的なものなら」
その辺りは流石チーサといったところだろうが……何故屋台の用意があるのか。
「詮索したら尻にコイツを刺すです」
でかいフォークがギラリと光るのを見れば、そういうこともあるよねとしか言えはしない。
うどんの文化を守るため……行け、イレギュラーズ!
- うどんが人類に反旗を翻す話完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年02月12日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●防げ、鉄帝うどんの危機!
鉄帝のお昼を邪魔するうどんたちの存在は善良なうどん屋台を脅かしていた。
何故なのか。分かるはずもない。ソバ派の陰謀なのか、それともご飯過激派の策略か。
絶対鉄帝の何処かの研究所の暴走だが、さておこう。
「誰ですか、こんなのの収容違反した奴は!! え? もう更迭された? そうですか……」
『メイジン』那須 与一(p3p003103)がそれなら仕方ありませんね、と言っているがちょっと待ってほしい。
SとかCとかPとかつきそうなヤツを作ってるのがそいつ一人とは限らない。さておいて。
「またすごくピンポイントな危なさの相手が……と、ともあれ、がんばるよー! うどんが壊滅しないように!」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)がそんな声をあげるが、鉄帝はそういうとこあるので仕方ない。
「まあうどんくらい空を飛ぶでありますよね。常識であります」
「ええと。鉄帝はやはりとても、何といいますか、すごい国なんですね……」
「で、あります」
一方、鉄帝適合度が高まると『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)みたいになる。
いっそそうなった方が幸せかもしれない。
『淑女の心得』ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)も是非そうなってほしい。きっと幸せだから。
「立ち食いそばやうどん、わたしも好きなの。良い文明なの。練達に色々あったせいで研究所から脱走した悲しきうどん生命体とかの話かと思ったけれども……鉄帝にもそういうのいるのねぇ。うどんをうどんの好きにさせるわけにもいかぬので」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)も「コャー」と頷いているが、それを聞いたら練達の研究者が泣……かないか。今は無理だろうが、平時なら「俺の方がもっと凄いの作れる」とか言ってそうだ。
「いやはや、今まで渡り歩いてきた世界の中で一番奇っ怪だな、ここは。……だからこそ面白いが。フフ、今回は生きうどん、か。興が乗る相手だ。かつてこの手をイカスミパスタのようだと称された覚えがあったかも知れないワタシが迎え撃ってやろう!」
『謎と闇』レーツェル=フィンスターニス(p3p010268)も触手をうねうねさせながら愉しげに笑っているが……うどんVSパスタとか新しい概念を突っ込むんじゃありません。めっ!
そんなスーパー麺類大戦はさておいて、『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)や『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)のように正統派な怒りを抱いている者もいる。
「食料問題に対策取ろうとして商品食われちゃ世話ないわー。細かく考えても無駄だろうし、郷に入っては郷に従え、で」
「伝統的な味こそ正道にして至高、変にいじった食べ物は許せないって気持ちわかるわかるー! ボクも『グルメ』…美食家の一人だからね(非戦スキル的な意味で)、えっへん! でもそこに困ってる人達がいるのなら、今回はあえて攻めたいな――「邪道」のグルメを! ね、美咲さん!」
「ええ、そうね。さぁ、軒並みぶちのめして美味しいうどん食べるよ!」
いや、違った。正派ではなく邪派だったようである。
とにかく、うどんを倒すためにうどんをお昼時に出さねばならない。
その為のチカラ(屋台)は……此処に、ある。
●突撃鉄帝のお昼時
アクセルの屋台は、美味しそうな香りを出していた。
『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラースの伝手を用いて用意した高級なお揚げなどの準備も完璧。
そう、アクセルが目指しているのは……。
「オイラはおいしい方のうどん屋台になるよ! 料理スキル起動!」
そう、鉄帝の働く人たちのお腹を素敵に満たす美味しいうどんである。
「作るのはきつねうどん! お揚げに熱いダシが染みて寒いときにもいい感じのはず。鉄帝の寒さに負けないように、熱めにしたダシを多めにして温かく食べられるようにするよ!」
そう、お揚げは出汁をとてもよく吸う。
出汁が不味ければお揚げも不味く、そして出汁が旨ければお揚げも旨くなる。
そんな諸刃の剣であるのがうどんにおけるお揚げ。
だが宣言通りに美味しいうどんを作ろうとしているアクセルの動きに隙は無い。
うどんは太めものを少し柔らかめに茹で上げて、あえて噛むことを重視。
柔らかさの中にコシが残るようにして食べ応えをアップさせる方針だ。
そう、コシは重要だ。これがなければうどんではないという人もいるし、柔らかいのが好きな人もいる。
そして美味しいうどんの香りに惹かれて、昼食時の勤め人たちがフラフラとやってくる。
「おお、うどんだ。いいな、ここ最近良いのがなかったし」
「うどんに襲われてたしねぇ」
「まあ、仕方ないさ。あれじゃあな」
美味しいうどんに飢えていたのだろう。次々に人やうどんが集まってくる。
「……ん?」
そう、うどんである。なんかいる。
何やら「うんうん」とでも言っていそうな感じである。敵意は全く感じられない。
様子見で様子見でうどんを一杯出してみるが……目の前で一瞬にして吸収し、なんと代金を吐き出していく。
いったいどういう理屈なのだろうか。
とにかく、1体しかいないし敵対的でもない。ならば……とアクセルはそっと近寄って不意打ちで神気閃光を喰らわせる。
倒したうどんをアクセルはそのまま外側を削いで細切りにしているが、他のお客さんは嫌そうである。
さて、では近くにいるうどん邪派……もといヒィロと美咲の屋台はどうか。
「ボクたちは敵を引付けるのがお役目だからー、屋台でもうどんの敵意を煽れればいいよね。だからって食べ物をあえてマズくするのはグルメとして許せない……ってことで美咲さんと考えました!」
「普通の人にはとても味わえたものじゃないけど、ごく一部の嗜好の人には絶品の味になる“ウルトラスーパー超激辛デリシャスうどん”!!」
そう、辛口系は確かにうどん……いや、麺界の邪派であろう。
美味しい人には美味しいが、徹底的に受け入れられない人もいる。
しかも「ごく一部」と言い切るその辛味たるや、相当なものであるだろう。
「狙われやすくするためのものなので、そこに一工夫。うどんは真っ当にし、おだしを……超絶辛く! とある大陸で先住民族の一部族が食べていたという【伝統の味】よ!」
(具体的には唐辛子を煮出しただけの汁で、とにかく辛い、すごい。激辛好きには堪らない……って言ってたよ)
なんかもう真っ赤な色をしているが、どうなのだろう。どのくらいの範囲に受け入れられるのだろうか?
「美咲さんの料理の腕とボクのグルメ味見舌で、辛さと旨さのギリギリを見極めた逸品うどん! 匂いも見た目も極悪だけど、その筋の人にはわかる! まぁぽっと出の即席うどん(敵)には理解できないかなー」
自信満々のヒィロの様子に興味を持ったのか客がやってくるが……「ぐあー!」と声をあげる。
「ゆ、湯気がもう辛い!? 辛すぎる!」
「あ、俺はいけるかも。あ、やっぱ無理ぎえー!」
阿鼻叫喚である。流石にお昼に酷い目に合いたいという人は少ないのか、アクセルの屋台と比べると客は少ないようだ……が。
気が付くとうどん生地が来ていた。
見つけると同時、ヒィロが闘志を放つ。確かめずとも分かる。うどん生地は、物凄く敵対的だ。
「ヒィロが引き付けて私が撃つ! 多くの敵に打ち勝ってきた二人の連鎖行動、麺類に止められるとは思わないことね!」
美咲の神気閃光が放たれて。丁度その頃、与一はラーメンの屋台を出していた。
「うどんをわざとまずく作ればうどんモンスターを誘い出せるのでしょうが……私にはそんなことできません!! だからラーメン作ります!!」
いっそ潔い。何しに来たのか思い出すべきだが、潔過ぎて素晴らしい。
「とりあえず定番の醤油ラーメン! 背脂入りですよ!! 美味しいですよ!!」
「確かに旨いな」
「やっぱ昼はラーメンだよな」
ラーメン派の客が与一の屋台に来ているが、これでうどんは来るのだろうか?
「……あれ? こころなしか、うどんモンスターのヘイトがこっちに向いてるような……?」
おっと、ラーメンが気に入らなかったのだろうか。
こちらに突進してくるうどんに向けて与一がHades03を構える。
「どんどん撃って表面の殺菌処理をしておきましょう! なんせ、後で食べる人もいるみたいですからね!」
「あの訳わからんウドン食うのか……?」」
お客さんがそんなことを呟いていたが、突っ込まない辺り与一の鉄帝適性が高くなっていそうだ。
さて、では鉄帝適性がとんでもなく高そうなエッダはどうか。
こちらは材料調達に精を出していた。
「というわけでうどん作りであります。自分はうどんをこねるところからでありますが……」
具体的には怒り付与でうどんたちをひとまとめにして下がりながら魔神拳で叩いていた。
「うどん……うどんというのは叩く数がコシに繋がると聞いたことがあるであります……もう出来上がってる? こまけえこたあいいんでありますよ。メンもキジもひとまとめにして叩くんでありますよ。AP減って来たら雷神拳で補充するんでありますよ。うどん風情が生意気なんだよオラッ!!」
これは酷い。うどんを引き付けるためにうどんを作ろうという前提を崩し、最初からうどんを狩りに行っている。まさに鉄帝。
「うどんだけではやや華に欠けるでありますね。やはり酒は必要では? 持ち込んだ酒も店に出して倍率ドン!! 酒は利率がいいんでありますよ!!」
(最初は呼び水としてちょこっと待ち客に飲ましていざ売る時にちょっと高いけどまあ出せなくもないくらいの観光地価格で売り付けてやるであります。アルコールで食欲もドンであります)
これは酷い(2回目)。なんと極楽印の祝酒を出してきた。確実に儲けにきた。
「ところで自分も一杯……いや味見味見」
これは酷い(3回目)。でも仕事はしてるのでまあいいだろうか。
では、胡桃はどうか。彼女はレーツェルと共にジュリエットの屋台を手伝っていた。
「調理自体は手伝えんぞ。ワタシの方法はそこらの生物と合っていないらしいのでな。一度人間を昏倒させたことがある。という事で力仕事か呼び込みなら引き受ける。得意な者が調理に集中出来るようにな」
「一般客の人がどれくらい来るか分からぬけれども、どちらかといえばサポートに入る感じで、人手が足りなさそうな屋台に潜り込んで、うどんの茹でる手数を増やしたりお客様対応したりでお客様の回転率を上げたりしていくかんじかしら~」
そんなことを言っていた2人をタイミングよく捕まえて自分の屋台に組み込んだジュリエットは英断であっただろう。
「どんな人でも空腹になるのは同じ。せっかく作るのですもの、美味しいものを食べて笑顔になって頂きたい。ですので、私は美味しいうどんを作ろうと思います」
コンセプトとしてはアクセルのそれに似ているだろう。
鉄帝の働き人のお腹の幸せを考えている。
沢山のメニューは大変なので、エビ天うどんだけを作ることにしたジュリエットだが、エビ天もお揚げに勝ると劣らないトッピングだ。
ツユはこだわって、カツオ出汁の本格派。
エビは事前にエビ天を下拵えして、揚げるだけ。
うどんを茹でるのは胡桃との共同作業だ。
「あとは、これは大事ですよね。ネギ盛り自由です。エビ天とツユが無くなったら販売終了にいたしましょう」
なんとネギ盛り自由。これは働き盛りには嬉しいサービスだ。
最後にレーツェルが呼び込みをすれば、次から次へとお客さんがやってくる。
「おお、これは美味いな」
「うんうん、天ぷらもいいもんだ」
ワイワイと人やうどんが集まってくる中、レーツェルが集まってきたうどん相手に「ぽこちゃかパーティ!」を繰り出している。
「ワタシはそれが一番得意なのでな? 踏みつけるも殴るも然程変わらんだろう。その体にコシを生み出してやるぞ」
「わたしもちょっと行ってくるの」
屋台をジュリエットに任せて胡桃も戦いに加わり、うどんを焼いていく。
「うどん生地を直接焦がすのってどうなのかしら~。何はともあれ燃やしておくのよ。あぶらげも持ってきたの、きつねうどんなの。そなたもうどんとしての務めを果たすべき時が来たの」
そうしてうどんを倒していけば、各屋台の近くに動かなくなったうどんたちが積み重なっていく。
これをどうするか。答えは簡単だ。
「この量のうどん、無駄にしていいものじゃないよね。衛生的な面も含めた可食部位だけでも、いけるひとで食べちゃいましょ」
「ボクは食べるよ。ていうか美咲さんのうどんを楽しみたいな。愛情に優る調味料はないってそれ一番言われてるから! えへっ」
ヒィロもそんなことを言って。美咲の手は素早く動いていく。
「さて、屋台で使った辛いおだしに手を加えましょまずはきちんととった出汁を合わせてー、ミルクでまろやかにしつつコクだししてー、後は香り系のスパイスも添えれば、旨辛なミルクうどんの出来上がり!」
そうして食べてみれば、あの激辛うどんが美味しいうどんに早変わりだ。
「さー、みんなもおひとついかがでしょ?」
そうして、鉄帝のお昼は守られて。
それからしばらくの間、手抜きのうどん屋台も消えたそうである。
ちゃんとやらないとうどんがくるぞ。
とまあ……そういうわけである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
収支報告……黒字!
報酬に黒字分100ゴールドが追加されました!
GMコメント
うどんを倒してうどんを守る話です。何言ってんだ。
屋台は用意されていますが、自前の屋台がある人はそれを使って大丈夫です。
うどんは美味しいものを出していればうどん(敵)は友好的に、なんか変なのを出しているとうどん(敵)は敵対的になります。
どの道倒さなければならないので、どういう屋台をやるかは皆様次第です。
なお、一般客が来る可能性もありますので、場合(プレイング)によっては売り上げが【プラス収支】になるかもしれません。
●うどん(敵)
どっかの研究所がうっかり逃がしたうどん生命体ウドンフォーマー。戯言です。
・ウドンメン×20
白くて長い奴(うどん的な意味で)。
太さは1mほど、長さは不明。動きはまさにワーム。
巻き付きによる拘束攻撃、身体を鞭のように動かす打鞭攻撃を使用します。
なお、空も飛べます。
・ウドンキジ×5
白いうどん生地が人型をとったもの。動きは人型モンスターに準拠。
その姿を活かした格闘戦を仕掛けてきますが、身体が伸びるので射程が意外に長めです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
Tweet