PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ドラゴン肉はお好き?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「そういや、聞いたか?」
「ああ」
「トライアルの話だろ?」
 勢いよくジャッキを煽り、テーブルに置く青年。2人の仲間に頷いてみせる。
 フリアノンの里長たる珱・琉珂いわく、この地域で雑用仕事を割り振って欲しいのだと。それは外の民達にとってこの場所がどれだけ危険な場所か知らしめると同時に、その中でも生き抜くことができるか試す場でもある。
「B.Dの狩りも手伝ってもらえるかもな」
「まさか! 流石に荷が重いだろ」
「小さくたって亜竜の群れだぞ」
 真っ黒な黒髪から、黒曜石のように艶やかな角を生やした青年が呟くと他の2人が顔を見合わせる。あまり乗り気ではない、というように。
 黒髪の青年は燻製になったドラゴン肉をつまんで口へ放り込む。
「けれど、同じものを狩って食卓を囲むのが彼らと仲良くなる一番の方法だろう」
「あー……それもまあ、そうか」
「仲良くなんて、」
「嘘つけ。お前だって仲良くなりたいんだろ?」
 赤髪の青年が指摘すれば相手は気まずそうにそっぽを向いた。黒髪の青年は小さく笑う。
「別に良いんじゃないか。里長は仲良くなることを禁じているわけでもない」
 むしろ、彼女こそ彼らに対する興味を隠そうともしていないだろう。
「まずは小さな群れの狩りに誘ってみないか。様子を見て、ダメそうなら撤退させれば良い」
 他でもない、提案した彼自身も。イレギュラーズという存在に興味を引かれているのだ。



「これからB.Dを狩りに行くんだ。良ければ一緒に行かないか?」
 そう声をかけてきた黒髪の青年――カイにイレギュラーズは「B.D?」と首を傾げる。狩りに行くというのだから、動物の一種なのだろう。
「ああ、そこからか。B.D…… ビグディ・ドグディっていうのは亜竜の一種なんだ。もちろん簡単に狩れるヤツじゃないが、肉が美味い」
 亜竜の肉。その言葉に思わず反応した者もいるだろう。他の国じゃほぼお目にかかれない素材である。
「この前通り過ぎた群れが大きかったから、そこから遅れた小さな群れがこれから通るはずなんだ。あんた達でも装備をしっかり整えていけば、勝てない敵じゃない」
 当の亜竜種達ですら苦戦するというのだから、亜竜との戦いに慣れないイレギュラーズにとっては苦戦する相手になるだろう。しかし、それでも――その後に待ち受けるご褒美を考えれば、心が弾む。
「戦いが終わったら折角だ、一緒に狩った肉を食おう!」
「おい、それは俺が言い始めたことだろう」
 カイの後ろからにょっきり現れた赤髪の青年に、カイが憮然とした表情を浮かべる。まあまあ、と宥めた青年はイレギュラーズたちへ向き直った。
「俺とかは最初反対してたんだけどさ。小さい群れならキミらでも大丈夫だろうってカイが言ったのさ。それになんだかんだ言って、キミらに興味あるし!」
「……全く、調子のいい」
 ニコニコと笑みを浮かべる赤髪の青年にため息をついて。カイはイレギュラーズたちへ向き直った。
「そういうわけだ。あんた達が嫌じゃないなら、飯まで付き合ってくれ」

GMコメント

●成功条件
 ビグディ・ドグディの撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●フィールド
 集落フリアノンの周辺。空がぽっかりとあいた岩場です。多少足場は悪いかもしれません。
 見晴らしがよく、亜竜たちからも皆さんが良く見える事でしょう。
 戦闘を終えた際は『直ちに集落へ戻ってください』。他の敵性生物と接触する可能性があり、非常に危険です。
 また、狩った肉は調理場を借りて料理できるそうです。

●ビグディ・ドグディ×25体
 通称B.D。群れで行動します。亜竜種をはじめとしたヒトを喰らい、見つからなければ他の亜竜を襲って日々の食糧としています。比較的小型なのでたくさんの量を狩らなければなりません。
 空中における回避に優れていますが、彼らも餌(貴方達)を食べたいので、戦闘時は低空飛行します。
 彼らの牙は非常に危険です。攻撃時に【失血】【ショック】BSにかかることがあります。また、その翼は風を
 また、絶命時に広範囲へ【呪い】をばら撒きます。

●NPC
・カイ
 亜竜種の青年です。黒曜石のような黒髪と、灰色の瞳を持ちます。趣味は料理。
 肉弾戦を得意とし、それなりに戦える戦士です。一緒にドラゴン肉を狩ります。

●ご挨拶
 愁です。
 ドラゴン肉、一度は食べてみたくないですか? 最後は他愛もない雑談と共にご飯を食べましょう。
 ただし後の楽しみばかり考えていると危険です。自分たちがお肉にされちゃうぞ!
 それでは、よろしくお願い致します。

  • ドラゴン肉はお好き?完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月20日 22時22分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇

リプレイ


 覇竜領域デザストル。大陸南方の山脈地帯にあるこの地は、危険な生物が多く存在する。しかしそのようなところで住まう以上、彼らと相対しないというわけにもいかないようだ。
「この度はよろしく頼むよ、カイ君」
「特異運命座標。俺はベネディクトだ、宜しく」
「ああ、こちらこそ」
 『死は等しく訪れる』ルブラット・メルクライン(p3p009557)と『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に頷くドラゴニア、カイ。トライアルの話を聞いてイレギュラーズに声をかけたということだったが、ベネディクトたちにとっても渡りに船であった。
 新天地に来た以上、原住民たちとの関係は良好であった方が何かと事を進めやすい。初めのうちに交流を深めておかなければ。
「向かいながらでも構わないが、戦いの際に注意すべき点があればご教授願いたいな」
 最も、純粋なイレギュラーズの力を試したいのならば、全く教えないというのも彼らにとってはひとつの手だ。それならばルブラットたちも最善を尽くすだけである。
「そうだな……この領域で戦うのなら空には気をつけた方が良い」
「空?」
 歩きながらルブラットはちらりと上空を見る。澄んだ青空だ。山岳地帯とあって、少しばかり寒さも厳しい気はする。
「亜竜たちは主に空からやってくる。他の奴らと戦ってる間に不意打ちを喰らうことも少なくない」
「なるほど。仕事をこなしたらすぐ戻るように……というのもそれが理由か」
 ベネディクトは依頼の内容を思い返して頷いた。空を得意とする相手に、疲労の溜まった体で応戦するのは分が悪い。
「しかし、そのような亜竜を狩っているのでしょう? ビグディ・ドグディ……でしたか。どんな味がするのか楽しみです」
「僕も楽しみ! ドラゴン肉ー!」
 『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)の言葉に『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がわくわくとした表情を浮かべる。食材確保、もとい依頼を頑張る気力もバッチリだ。
「ぶはははッ、そうだなぁ! 俺も腕が鳴るってもんよ!」
 豪快な笑い声を響かせる『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。カイがその口ぶりに興味の視線をくれる。そんな様子に『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)はふっと口元を緩めた。
「楽しそうね。私もドラゴン肉の知見を得ないと」
 ラサに隣接した地だ。あの土地でも運搬できるような保存方法などを模索すれば、デザストルとラサの間で貿易ができるようになるかもしれない。食料の搬入口が今より広がれば、ラサの子供が餓死することも減るはずだ。
 真面目に考えるエルスにゴリョウは「本当にそれだけか?」とニンマリ笑った。途端に彼女は動揺の色を見せ、視線を右往左往させる。
「い、いえ、別に? その、肉の味自体に興味がないこともない……けれど……」
「ふふ。初めてなのは誰もが同じですからね」
 興味を持たぬわけがない。かく言うサルヴェナーズとて、ドラゴン肉など初めての経験である。
「とはいえ、食べるつもりが食べられてしまわないよう、気を引き締めませんとね」
「そうですね。狩人というより、立派な戦士の仕事のようですから」
 『音撃の射手』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)に『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は頷く。練達を襲った亜竜たちの群れはどうにか追い返したが、あのような存在もドラゴニアたちは食料として、時には武防具の素材として狩っているのだろう。逞しいことである。
(美味しいものを皆で囲めば、互いの理解も深まるというものですね)
 マグタレーナたちがドラゴニアたちに興味を示しているのと同じように、彼らもまた外の住人であるイレギュラーズたちに興味がある。食を通じて文化を知ると言うのも悪くない。
 多少不安な足場を通ったものの、一同たちはビグディ・ドグディ――B.Dたちの出没する岩場へと到着する。ゴリョウとベネディクト、サルヴェナーズは三角形を作るようにして警戒し、他の者たちはその内側でB.Dの出現に備えた。
(四方八方、それに上空もですか)
 視線を巡らせ、襲い掛かってくる可能性のある場所に目星をつけるリースリット。傍らではエルスが岩によってできる暗所も見通そうとしっかり観察する。
「こちとら準備は万端だ。いつでも掛かってこい!」
 ゴリョウの声が岩場に響き渡る。同時にサルヴェナーズがあちらこちらを駆けまわる亜竜種の幻影を発動させた。それぞれの顔などは判別がつかないが、後ろから見るだけなら只々逃げ回る無防備な姿だ。こんな術も扱えるのか、とカイが小さく目を見開く。
 と、そこへ岩場から飛び出す影があり、幻影へ向かって飛びついた。実態を持たぬそれはすり抜けて、同時にサルヴェナーズが目元を晒す。
「ご飯をお求めなのでしょう? 早く来ないと、逃げてしまうかもしれませんよ」
 魔眼が妖しく煌めく。現れたB.Dたちはサルヴェナーズを新たな餌として認識したようで、勢いよく飛び掛かっていった。それに感化されたか、他のB.Dたちもイレギュラーズたちの前へ姿を現した。すぐさまベネディクトは槍を構え、力強く投擲する。狼の遠吠えの如く空気を切り裂いた槍はB.Dたちへ並々ならぬ威圧感を振りまいた。
「ぶはははははッ、こっちにも餌はいるぜ!」
 どっしりと構えるゴリョウ。そのもっちもちな腹肉にB.Dたちの視線が集中する。うまく3人へヘイトが分散するのを確認質t、リースリットは風の力を受けて足元を浮かせた。その周囲を冷えた空気が取り巻き、魔力を帯びる。
「あとは殲滅するのみ。――参ります!」
「美味しい料理の為にひと汗かいちゃいましょ!」
 美しき高位の術式がB.Dたちを絡めとり、それすらも喰らうようにエルスの黒影魔王が顎を開ける。不意打ちさえ凌げばあとはこちらのものだ。マグタレーナの歌う絶望の旋律が周囲を満たす中、カイもイレギュラーズに続いて得物を振りかぶる。
「いでででで! やるじゃねえか!」
「ゴリョウさん!」
 しかしB.Dたちの狩りに特化した牙は群れで押し寄せた。岩場にパタタ、と鮮血が散る。ヨゾラは星空語りのクロースを翻し、その背に光の翼を生み出した。
「皆は傷付けさせないよ……!」
 翼から羽根が舞う。あるものは刃のように鋭利な姿となってB.Dを刻まんと降り注ぎ、またあるものは優しい光を灯して触れた味方の不調を弾き飛ばした。
「助かるぜ!」
「まずは立ち回りやすい状況を作らなくてはな」
 ルブラットの使役する熱砂の精が空高く舞い上がる。それは風を呼び、砂を巻き上げ、周辺一帯を叩きのめさんと暴れまわる。
 巻き上げられたB.Dたち。しかし耐え凌いだものはイレギュラーズたちへ敵意を向ける。サルヴェナーズは向かってくるB.Dたちを見ると戦闘態勢を取った。
 すると、どうか。暗く輝く泥がねちゃりと音を立て、身に纏う汚穢の檻や、頭上に頂く光輝の冠から零れ落ちてくる。そこから生まれた蛇や羽虫は、近づいた者を喰らいつくさんと襲い掛かった。蛇に噛みつかれたB.Dがギィァ、と悲鳴ともつかぬ鳴き声を上げる。その命はエルスの放った一撃にて刈り取られた。
 これを好機と畳みかけるイレギュラーズだったが、不意の増援にはっと顔を――カイを除いて――強張らせる。
(成程、これでもまだ『小さい群れ』なのか)
 ベネディクトは本来の群れは一体どれだけの規模なのか、と考えつつも自身へ敵を引き付けるべく腹から声を出す。
「さあ、生きの良い肉はこっちだ! 食えるものなら食べてみるがいい!」
 ベネディクトの挑発にB.Dたちが動く。彼やゴリョウ、サルヴェナーズの負傷をカバーすべく、ヨゾラは強力な支援術式を展開させた。
「ぶはははッ、入れ食いだねぇ! 食いでのある餌はよほど魅力的と見える!」
 餌と書いてぶたにくと読む。ゴリョウのもちもちボディはB.Dたちにとってそう見えるかもしれない。
 文字通り体を張って敵を受け止める3人の間を縫うように、ルブラットはステップを刻む。通った跡は死が這いより、近くを飛ぶB.Dたちをそちら側へと誘うのだ。
 だがそれからすり抜けて、1体がリースリットへ接近する。息を詰めた直後、B.Dの翼が不自然に動いた。恐らく最初は彼女を狙っていたのだろう――が、大きく逸れて近くにいた群れの仲間へ。困惑しながらも雷の魔術を繰り出すリースリットの耳に、くすりと笑うマグタレーナの声が滑り込む。
「不運でしたね」
 その手のひらで輝くダークムーン。暗い運命を吸い寄せるそれはB.Dたちを確実な死へと近づけていく。
 B.Dたちの数が減っていくという事は伴ってイレギュラーズたちも疲労が蓄積しているということ。けれどサルヴェナーズは傷だらけになりながらも、決してその膝をつきはしない。
「あともう少しです……!」
 魔眼がより一層煌めき、幻影魔術を展開させる。B.Dなど軽く呑み込めてしまいそうなほどに大きな蛇の大群を見せた。それを吹き飛ばそうとするかのようにB.Dが風を巻き起こすと、イレギュラーズたちの身体が否応なく後ろへと押し出されていく。ベネディクトはその風を切るように槍に力を込めて投擲した。
「まだだ、まだいける!」
 ヨゾラのクェーサーアナライズが活力を与え、ルブラットの魔力が勢いよく放出される。次いでエルスが放った、月の魔力を纏った一撃はすぱんとB.Dn首を堕とした。
「ぶははッ、あと2体だ! あとは俺が受け持つぜ!」
 パンドラがゴリョウへ力を与え、どしりと構えなおす。リースリットは風の精霊の祝福と加護を武器へ宿し、細剣を振りかぶった。残る1体がゴリョウを貫くように突っ込もうとしたが、その勢いは途中で止められる。
 じゃらり。
 闇色の呪鎖がB.Dへ巻き付いていた。動くこともままらないような呪縛に、亜竜の息が止まる。マグタレーナは瞑目したまま、静かに「おやすみなさい」と告げた。
 どさりとその身が地面へ落ち、静けさが辺りを締めた。カイは周囲を見回し、群れがこれで全部であろうことを告げる。
「それじゃ、打合せ通りさっさと持ち帰るか」
「ああ。ここはまだまだ危険に溢れている様子だからね」
 ゴリョウの言葉にベネディクトが頷き、手近なところに転がっていたB.Dの遺体を3体ほど抱える。ルブラットも同じように3体集めると、魔法で動く木馬を呼び出した。妖精たちによって動かされる故かじゃじゃ馬ではあるが、道中はその運搬性能を発揮してくれることだろう。
「振り落とさないように頼むよ」
 ルブラットの言葉に応えはない。後で甘い菓子をやると言ってやるべきか、さて。
 ヨゾラは袋へいそいそとB.Dをしまいこみ、リースリットも自分が持てる分を抱えるとサルヴェナーズとカイたちの方を見た。
「あとはお願いできますか?」
「お任せください」
「ああ」
 大量のB.Dを抱えるサルヴェナーズ。カイも慣れたようにそれらを抱え上げる。全てのB.Dが回収されたことを確認した一同は、足場に気を付けながらも急いでフリアノンへ戻ったのであった。



「――で、此処からが肉の調理の時間か」
 砂や血で汚れた装束を着替え、汗を拭いたベネディクトは腕まくりする。とはいっても手伝えるほどの技量はない。
「では、共に火を起こしませんか?」
 サルヴェナーズは調理場の奥を示した。練達のように便利な着火グッズがあるわけもなく、仲間たちが下ごしらえをしている間に火起こしをすれば、調理時間もいくらか短縮できるだろうと彼女は言う。
「ああ、そうだな。皆、片付けや重労働があれば手伝うから声をかけてくれ」
 頷いたベネディクトは仲間たちへそう言葉をかけると、サルヴェナーズと共に火おこしへと向かった。
 一方、カイが手際よくB.Dたちを解体する傍らで、それを観察していたルブラットも包丁を握る。
「解体の経験があるのかい?」
「いいや。だが私は医者なのでね、幾多の手術をこなしたこともあるから任せて欲しい」
 人や動物とは異なるだろうが、きっとその経験は生かせるはずだとルブラットは――仮面で表情が見えないが――どこか自身ありげな様子である。ヨゾラが見守る中、彼はそれなりに要領よく捌き始めた。
 そうして用意された肉は、当然ながら調理されなければならない。ヨゾラはどんな料理を作ろうかと肉を前に考える。野菜も持ってきたし、一緒に炒めてみようか。
(ゴリョウさんはどんな料理を作るのかな……?)
 彼の料理と聞けば心が躍る。ああ、楽しみだ!
「まずはシンプルにドラゴンステーキといこうか」
 そのゴリョウはと言えば、分厚い肉を前に下味をつけていく。カイがこれで柔らかくした方が良いと香草を差し出せば、それを興味深げに眺めた。
「へえ、ここではこの香草で柔らかくできるのか!」
「外では違うのか?」
 不思議そうなカイ。というのも、その香草はデザストル以外で見かけない種である。この限定的な地域で生息するのだろう。
 ゴリョウとカイは料理について情報交換しながらも、料理を作り上げていく。ドラゴンステーキで肉の特徴を把握したゴリョウは、自分で持ってきた調味料をいそいそと出した。
「マッシュポテトはこれで良し、と。次はソテーを作りましょうか」
 出来上がっていくメインディッシュを横目にマグタレーナは付け合わせを作っていく。あとはスープなども作ってみようか。
 肉のいくらかは保存用として回されたものの、イレギュラーズも関与したドラゴン肉料理はこれまでにない多様性を持ってドラゴニアとイレギュラーズの前へ出されることとなった。
「待ってましたゴリョウさんのお料理っ!」
 目を輝かせるエルス。ラサであった一件からの大ファンであるが故に、決して食い意地が張っているというわけではない。ゴリョウの料理だから、なのだ。
「わーい、お肉お肉ー! いただきまーす!」
「カラトリーは見慣れたものだね」
 早速! と料理を食べ始めるヨゾラ、その隣でルブラットは用意された食器などに目を向ける。隔絶されていた場所だったが、使いやすいものというのは似てくるのか。そう考えた彼へ、カイは細々とだがラサから持ち込まれるのだと言う。
 ラサに存在する隠れ里クスィラスィア。そこからは植物の種や獣の肉の他、衣類や文化流入ものんびり行われているのだそうだ。
「甘味もあるのかい?」
「少なくとも俺達はあまり食べていないな……あんたは好きなのか?」
「ああ、そうだね。貴方が苦手でないのなら、次はご一緒にいかがかな」
 そう誘いながら、仮面を外さず料理を口にするルブラット。カイとしてはその仮面の方に興味を抱かれていそうではあった。
「ドラゴンステーキ、柔らかくて美味しいですね」
「全くだ。あの香草はあちこちに生えてるもんなのか?」
 リースリットとゴリョウはステーキに舌鼓を打つ。分厚い肉ではあるが、噛むときにも苦労はない。ジューシーな肉汁が口の中一杯に広がる。
「ラサとは交流があったのね……ドラゴン肉なら近いし、持って行って珍しい料理を作ることもできるかしら」
 エルスは肉を味わいながら考え込む。そうすれば『あの方』にも興味を持って頂けるだろうか――。
「……はっ!」
 気が付けば一同の視線を総ざらいしていたエルス。なるほどね、みたいな表情をしている仲間たちに彼女は耳まで真っ赤にさせた。
「ち、ちが、なんでもな……くはない、けれど! ……サプライズしたいから……その、秘密にして、よね?」
「ぶははははッ、いいねえ!」
「んもうっ、ゴリョウさん!」
 笑うゴリョウに口を尖らせれば、彼はすまんすまんと言いながら――でもまだ笑っている――ある一品をエルスの前へ出す。
「それならこれも評価してくれよ! 熱々の白米とドラゴン肉を使った丼、いけそうじゃねえかと思ってな!」
 白米というそれにカイが興味を示す。彼とゴリョウは随分と気が合いそうだ。
 きっといつか、外国の食材がデザストルで当たり前に食べられる日も、来ることだろう。

成否

成功

MVP

サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇

状態異常

ゴリョウ・クートン(p3p002081)[重傷]
黒豚系オーク
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)[重傷]
砂漠の蛇

あとがき

 お疲れさまでした。イレギュラーズ。
 肉が食べたくなりました。分厚い肉、いいですよね。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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