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シナリオ詳細

今日の収穫物は、大根、白菜、じゃがいも……それとプラント・リザード?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●亜竜種たちの生活
 亜竜種たちの集落が存在する覇竜領域。危険な怪物たちが住まうこの地にも、当然のことだが、自然の実りは存在する。
 集落の付近に存在する畑では、今日も多くの亜竜種たちが農作業を行っている。冬の季節でも旬となる野菜たち、例えば大根や白菜、ジャガイモなどの収穫と、次の春に向けての新たな種子植え付け。休む間もない作業が続くが、これも生きるための大切な仕事だ。
「大根はこっちに並べておいておくれ! じゃがいもはあっち!
 白菜はこっちの籠だよ!」
 亜竜種の女性が声をあげた。畑から掘り出されたばかりの野菜たちが、籠に詰め込まれていく。このまま洗い場まで持っていて、泥を落とした後納品するのだ。
「雑草抜いてきますねー」
 若い亜竜種の男が、鎌をもって声をあげる。他の作業員たちも鎌を手に、広い畑に散っていった。
 作業員たちが腰を落として、雑草を鎌をつかって切り裂いたり、引き抜いたりしていく。背中にしょった籠に抜いた雑草をリズミカルに放り投げた。手慣れた様子の作業員たちが、鼻歌交じりで雑草を抜いていく……と。
「んん?」
 と、男が声をあげた。見たことのないような草が生えていた。ぎざぎざで、触ったら切れそうなくらいに鋭い葉っぱだ。
「なんだこれ? こんなの生えてたことあったっけ?」
 雑草、とはいえ、ある程度は生えている種類も決まっている。農作業の長い男は、あらかたどんな雑草が生えているのか、それがどんな名前なのかくらいを知ってはいたが、今日見たこれは、本当に全く、初めて見るようなものだった。
「どっかから種かなんかが飛んできたのか?」
 声をあげる男へ、別の男が声をかけた。
「外から来たやつらが居ただろ、ローレットだっけ? あいつらが持ち込んだんじゃねぇの?」
「外のタネか? ま、植物はどこでもしぶといもんだしな……」
 男は納得すると、そのギザギザの葉っぱを、分厚い手袋越しにつかんだ。ん、と再び声をあげる。なんだか、あったかい? まるで、生き物のような……?
「なんだ、変な草だが……」
 抜いてしまえば一緒だろう。男は鎌を当てると、まずはその葉を切り裂いた――途端。
 じわり、と、草の切り口から、青い液体がしみ出した。それは、まるで生き物の肉片を斬ってしまって、傷口から血がしみ出すかのような様子だった。
「変だ、こんな水分湛えてる植物……?」
 男が首をかしげた刹那、ぶるり、と残された草が震えた。びたびた、とのたうつようにそれがうごめくと、びしり、と畑に亀裂が走った!
「なんだ!?」
 男が慌てて飛びずさる。同時、草がその亀裂越しに、自ら『飛び出した』。それは、長い長いつるの先端であることに、男は気づいた。周りを見てみれば、あちこちの、同じ種類の草が、ずるり、と畑に亀裂を走らせ、そこから這い上がる様につるをもちあげた。やがて畑の一辺の土が盛り上がると、そこから巨大な、つぼみのようなものが、大地を裂いて現れたのだ。
「この草……あのつぼみから繋がってたのか!?」
 男を始めとした作業員たちが声をあげる。返事をするように、つぼみがぶるぶると震え始めた。ばたん、と音を立てて花びらがひらき、赤いバラのような花びらの中心から、トカゲのような生物の首が伸びて、威嚇するように吠えあげたのだ!
「なんだ!? 薔薇の真中に……あれは亜竜(ワイバーン)の顔だ!!」
「プラント・リザードだ!」
 作業員が叫んだ。
「植物の特性を持ったワイバーンだよ! なんでこんな所に潜んでやがったんだ!?」
「ヤバいぞ、この草、こいつ一体分だけじゃない!」
 作業員の言葉通り、あちこちで草が震え始めた。それは亀裂を生みながら大地に這い上がり、やがて弐つのつぼみが、地上へと顔を出す。そのつぼみが、ばたん、とひらくと、中から黄色の/青色の花の中に、同様にトカゲの首がある。
「三匹も潜んでやがったのか!?」
「やばいぞ! 全員、はやく逃げろ! 喰われちまうぞ!」
 作業員たちが、慌てて畑から逃げだした。三匹のプラント・リザードは、太陽の光を一身に浴びるように華を開くと、まるでここは自分たちの縄張りであると主張するように、亜竜種たちを威嚇しだした。
「くそっ、このままじゃ畑がアイツらの養殖所になっちまう!」
「と、とにかくいったん避難だ! 対策は後から考えよう……」

●薔薇の花を落とせ
「あー、アンタらが、ローレットのイレギュラーズ……だな?」
 と、亜竜の男が、あなた達ローレットのイレギュラーズ達へと告げた。
 亜竜種たちの集落で事件があったという話があり、駆け付けたあなた達。あなた達を迎えたのは、この地で農作業に取り組むという亜竜種の男だ。
「ついさっきの事だが、畑にプラント・リザードって亜竜が現れちまってな。それも、三体。
 こいつらを何とかしないと、農作業が再開できないんだ」
 彼の話によれば、農作業中の畑に、地中でも潜ってやってきたのか、プラント・リザードが現れたのだという。
 プラント・リザードは、植物の特性を持つ亜竜、ワイバーンの一種で、華のような体と、ワイバーンの頭を持つ、という奇妙な怪物である。
「アンタらは、ここで仕事を探してるんだろ? 覇竜領域トライアルとかってので……。
 その一環だ、なんとか畑を取り戻しちゃくれねぇか?」
 作業者の男は頭を下げた。亜竜種たちと縁を結ぶという目的もあるが、それ以上に、やはり困っているものを見捨てることはできないだろう。
 あなた達は依頼を受諾した旨を告げる。男は顔をほころばせて、
「そ、そうか! 助かる!
 敵はふざけた外見をしてるが、亜竜だ。くれぐれも気を付けてくれよ!」
 と、あなた達を送り出すのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 畑に現れた、奇妙な亜竜、プラント・リザード。
 これを討伐しましょう!

●成功条件
 三体のプラント・リザードの撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 亜竜種たちの集落。そこにある畑に、突然プラント・リザードという亜竜が現れました。
 プラント・リザードたちは、まるでその畑を自分の縄張りのように振る舞い、辺りを荒らしています。
 せっかく育てた野菜たちも、これから育てる筈だった野菜も、このままでは台無しになってしまいます。
 皆さんは畑に向かい、このプラント・リザードたちを撃破する依頼を受諾したのです。
 作戦決行タイミングは昼。足場は荒れた畑になっているため、少し歩きづらいかもしれません。

●エネミーデータ
 亜竜プラント・リザード ×3
  植物とワイバーンの特徴を併せ持った亜竜モンスターです。見た目は、薔薇の花の中心から、ワイバーンの顔が生えているような、奇妙なものをしています。
  攻撃力は高めで、特に植物である葉を伸ばして鞭のように振るって打ち付けてきたり、華から花粉などを飛ばして、広範囲に『毒』系列や『麻痺』系列のBSをばらまいてきます。
  耐久面や機動力の面でやや弱く、一体ずつ確実に仕留めて良ければなんとかなるでしょう。
  ちなみに、赤、青、黄、の三体が存在します。それぞれの性能差はありませんので、色の違いは攻撃の際の目印にしてください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 今日の収穫物は、大根、白菜、じゃがいも……それとプラント・リザード?完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

リプレイ

●畑のプラント・リザード
 広大な農作地。ふかふかに耕された土の上には、収穫を待つ野菜たちが顔をのぞかせていた。
 ――その中心地。まるでこの畑は自分他たちのものだ、と主張するかのように、巨大な三つの薔薇が咲き誇っていた。
 赤、青、黄。三色の花弁の中央には、トカゲのような顔がついていて、光合成でもするかのように、目を細めて日を浴びている。
 その怪物の名を、プラント・リザードと言った。その名の通り、トカゲ……この場合は亜竜だが、とにかくそれと、植物が融合したかのようなモンスターである。
「……あの子達が、そうなのねっ!」
 むっ、と悪い子をしかるような表情をして、『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は畑へと姿を現した。
「お野菜、畑の持ち主が頑張って愛情込めて育てたのに、それを奪ったり台無しにするのはめっ! なのよ!
 畑はプラントさんの物じゃないわ!
 持ち主さんたちに返して貰うんだから!
 ……それに、お野菜さん達も、困ってるみたい。お腹がすいた、喉が渇いた、って!」
 自然会話が可能なキルシェは、断片的に野菜たちの声を読み取っていた。
「先ほど確認しましたが……なるほど。どうやら、土中の栄養素や水分を、あのプラント・リザードが奪い取ってしまっているようですね」
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)が、ふむ、と頷いてそういう。
「畑を占領するだけではなく、周囲の草木にも影響を与えるのですか。
 畑に害獣が寄ってくる、とはどこの世界でも農業の悩みとしてはよくあるものですが。
 そのような害獣……有害植物? どちらかはわかりませんが、亜竜が畑の真ん中に、というのはさすがという気もしますけれど」
 苦笑を浮かべつつ、瑠璃は言った。なるほど、相手は亜竜。スケールの大きな話だが、畑の害獣退治を言われてみれば……なんとも、奇妙な感覚を覚えるのも仕方あるまい。
「いずれにせよ、畑を荒らす害獣は、駆除しなければならない」
 ぐっ、とおててを握って、『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が言った。
「デザストルは、危険な場所だ。仮での食料調達、となると危険も多いだろう。
 ならば、こうした、自給自足による食料調達は、生命線。
 それを荒らされるのを、見過ごしては置けない」
「そうだね。少しだけ、初めての覇竜領域での仕事でワクワクしてたけど」
 『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は、むっ、と口を結んで、真剣な表情で頷いた。
「エクスマリアさんの言う通り。それに、戦いの結果、畑が荒れちゃったら、元も子もないよね。
 うん。畑を取り戻して、そのまま亜竜種の皆がすぐに野菜を育てられるように……頑張ろう!」
 そう言ってから、あっ、と声をあげる。
「……僕たち、靴の裏やズボンに、草のタネとかくっつけてないかなぁ。
 変な雑草とかもちこんじゃうと、いけないよね?」
 自分の靴裏などを確認しつつ、ヨゾラが言う。ざっと確認した限りだが、そう言ったものはついていない。ここは亜竜種たちの生命線。気にしすぎることはないだろう。
「よし、種とかもついてないな。じゃあ、やるか!」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)が声をあげる。武器の槍を取り出し、小さく呪文を唱えると、靴から光の翼が飛び出して、僅かに風牙の身体を浮かせる。これは、畑の土に足をとられないための処置であり、同時に畑を過剰に踏み荒らさないための処置でもあった。
「赤、青、黄、か。オレと、瑠璃、ネーヴェで一匹ずつ抑えらえるか」
「はい。わたくしは、青の子を」
 『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)が、柔らかに微笑みながら、言った。
「では、私は黄色を請け負いましょう。畑をなるべく荒さないルートも確認しておきました。そのルートそって移動し、亜竜を畑からつり出す」
 ホバーバイクにまたがる瑠璃が、頷いた。
「OK、それでいこう。
 オレの相手は赤か。倒すのは、ネーヴェの引き付けた青から。最後に赤!」
「はい。新道様や、志屍様のご負担が大きいですが、どうか、どうか、お気をつけて……」
 心配げにいうネーヴェに、風牙と瑠璃は笑った。
「おう、ありがとうね! なるべく早く合流してくれると助かるかな」
「そのあたりは、俺たち攻撃手の手にかかっているな」
 『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が頷いた。
「プラント・リザードか。肉と野菜でバランスがいい。
 上手いこと捌いて、貯蔵用の食料にしてやるとしよう」
「……たぶん、毒が多くて食べられないと思いましてー」
 『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)が脱力したように言うのに、アーマデルは真面目な顔で、少しだけ驚いたように目を見開いた。
「……! ダメ、なのか」
「はい……というか、薔薇ってそもそも食べられるのですか?」
 むむ、とアーマデルは唸った。
「……食用バラ、というのは、再現性東京の方で聞いたことがある様な」
「でも、あれどう見ても食用バラとかかわいいものじゃないと思います」
 む、とアーマデルは唸った。それからゆっくり、プラント・リザードの方を見やる。なんかきしゃー、とか吠えてる。
「スムージーには」
「それ、ルシアも思いましたけれど、やっぱり毒があるので無理だと思います」
「むー」
 アーマデルは唸った。
「食肉……」
「毒が……」
「毒がネックか……」
「はい……」
 二人が顔を見合わせる。
「考えたのですけれど。一番いいのは」
 と、ルシアが言った。
「魔砲でぶっとばして、まとめて灰にした後、畑にまいて肥料にすることでしてー」
「なるほど」
 アーマデルが頷いた。
「それでいこう」
「はい!」
「話はまとまった?」
 ヨゾラが笑いかけた。
「戦いの後の事を考えるのは良い事です!
 わたしも、畑を直したりしたいと思っていたのです!」
 にこにこと、キルシェが言う。
「とは言え。すべては、あれを倒した後、だ」
 エクスマリアの言葉に、仲間達は頷いた。
「えーと、じゃあ。サラダだかスムージーだか有機肥料だか――」
 風牙が、こほん、と咳払い。
「とにかく、こらしめましょう」
 ネーヴェがにこやかに笑うのに頷くように、仲間達は武器を構える。それから一気に、プラント・リザードへ向けて駆けだした!
 此方の接近に気づいたプラント・リザードたちが、威嚇するように鳴き声をあげる! はたして、弦を振りかざし、さながら鞭のように振るい、此方を警戒する。だが、この程度で怯むイレギュラーズではない。衝突の時は、すぐに訪れようとしていた――!

●畑戦上のプラント・リザード
 わずかに地上より浮かぶように、地を滑る風牙。後を追うのは、ホバーバイクにのった瑠璃、そしてネーヴェだ。
「では、始めましょう」
 瑠璃の言葉に、2人は頷く。果たして唸りをあげたホバーバイクが黄色のリザードに迫る!
「穿つは魂――穿法匕首」
 鋭く突き出さされた黒の刃に滴る血液。放たれた赤の飛刃が、黄色のリザードに突き刺さった! バラの花がわずかに切り裂かれ、血液のような液体がしたたり落ちる。がぁ、とリザードが吠える。瑠璃はホバーバイクのエンジンをうならせ、挑発するように手で招いて見せる。
「追いかけっこをしましょう。それとも、地に根が生えて動けませんか? 無様なものですね」
 言葉が通じたわけではるまい。だが、リザードに付与された怒りが、リザードを突撃へと突き動かした。ずおお、と地面が盛り上がり、無数の蔦か根っこで構成された下半身があらわになる。地を薙ぎ払うように、リザードはゆっくり動き出した。
 瑠璃があたりを見やれば、残る赤、青のリザードも、イレギュラーズ達に引き寄せられて、今まさに動き出さんとしている。
「では、皆さん、手筈通りに」
「はい! さあさ、兎はこちら。貴方には、わたくしが美味しく、見えますか?」
 瑠璃の言葉に、ネーヴェが声をあげた。ネーヴェがぴょん、と飛びずさると、鞭のようにしなやかなツタが、ネーヴェがいた場所の大地を抉る。
 三つの色、三つの華が、畑から引きはがされるように、引き寄せられていく。畑を外れて、やや硬い地面へ。しかし、それを抉る様に、リザードたちはゆっくりと進んでいた。
「……これだけ、硬い地面でも、難なく進めるのですね……」
 ネーヴェが奔りながらそういう。なるほど、リザードたちがどこからやってきたのか不明だが、この力強さを見れば、地面を掘ってやってきた、というのにも納得がいく。リザードが、つるをネーヴェに向けて叩きつける。だが、ネーヴェはぴょん、と飛んで致命打を回避。
「まだ、わたくしを、食べることもできないの? 亜竜といっても、なんてこと、ないのかしら!」
 挑発を続けるように、ぴょんぴょんと飛んでみせるネーヴェ。リザードがネーヴェへかまける中、イレギュラーズ達の攻撃が始まる。
「さて、毒蛇を避けにつけて飲む文化もあるそうだが……お前はどうかな」
 アーマデルが跳ぶ。一気に接敵するや、神酒の瓶を開けた。振るってぶちまけると、蒸発したそれがリザードの喉を焼く! ぎゃあ、とリザードが悲鳴をあげた。ずぶずぶと口中がただれる。
「……此処にアイツがいなくてよかったな。毒があろうがなかろうが、確実にスムージーにされていたぞ」
 ふ、と笑うアーマデル。あいつことアーマデルの友人は、「自分を何だと思っているんだ」と怒ったかもしれないがさておき。アーマデルの神酒による一撃で、リザードは怯んだ。そこに飛び込んできたのは、
「いこう、グリンガレット」
 グリンガレットと共に大地をかける、エクスマリアだ。氷雪の如き刀身を掲げると、その先端から連続して放たれる、魔力閃光! リザードの植物の身体を貫通せんばかりの勢いで放たれる! 斬! ツタが切り裂かれ、体液のような、植物汁のような液体がまう。ばしゃ、とツタが地面に落下した。青のリザードが、怒りの雄たけびを上げる。
「青、黄色、赤、とは、再現性東京の信号機の色だ。
 青は進め。黄色は注意。赤は止まれ……だったかな。
 青は安全の色だが……おまえは、そうではないらしい」
 エクスマリアを狙うように、リザードはブレスをはくように口を開いた。同時、巻き起こるのは周囲が黄色く見えるほどの花粉の嵐だ!
「……たしか、毒物だったな……グリンガレット」
 エクスマリアが、グリンガレットに命じて、走る。巻き起こる花粉の嵐をよけ、しかしまき散らさらされるそれは、イレギュラーズ達を襲う!
「けほっ、けほっ……花粉症になっちゃうわ!」
 目の端に涙を浮かべる、キルシェ。ヨゾラが声をかける。
「花粉症にきくかはわからないけれど、毒なら中和しよう!」
 ヨゾラが竪琴を奏でる。ぽろん、と澄んだ音が響き、同時に夜空の号令が高らかに響いた。魔的なそれは癒しの力を持ち、即座に仲間達の体勢を立て直す!
「ヨゾラお兄さん、さすがね! ルシェも負けてられない!」
 キルシェが両手を掲げると、桜色の雨が降り注ぐ。それは、空中に舞う花粉をぬらして地面に落として、ゆっくりと浄化していくように桜のしずくに溶かしていった。仲間達の身体を癒す、桜色の雨と、ヨゾラの号令。二つの鉄壁の回復役が、イレギュラーズ達の背を後押しする。
「もう! これは花粉のお返しでしてーっ!」
 ルシアが対物狙撃銃を構える。ただ魔砲を撃つことだけに特化したそれから放たれるのは、言うまでもない、魔砲だ! ぶっ放された魔力の奔流が、花粉を吐くリザードの口中に突き刺さった! 吐き出した花粉をまとめて口の中に押し込むように、魔力がなだれ込む! 刹那の後に、限界を迎えた魔力は強烈に爆発した! 口中でとてつもない威力の爆発を巻き起こされたリザードは、さすが亜竜といえど、耐えきれない!
 ぐらり、と焦げた顔を晒し、リザードが倒れ伏す。ずん、と地面に横たわり、絶命した様子を見せた。
「よーし、絶好調! です!」
 ルシアが笑う。
「ネーヴェさん、大丈夫かな?」
 ヨゾラが、敵の引き付け役を担当していたネーヴェへと声をかける。ネーヴェはぽんぽん、と服の汚れを払ってから、
「はい、大丈夫です。皆様が、素早く、倒してくださった、おかげです」
「でも、やっぱり怪我してるわ! わたしに任せて、すぐに治すから!
 ヨゾラお兄さん、こっちは任せて、瑠璃お姉さんを助けに行ってあげてください!」
 キルシェが駆け寄ってきて、ネーヴェの傷をいやす。ネーヴェが柔らかく微笑んで、「ありがとう、ございます」と言った。
「わかったよ。皆、黄色を狙いに行くよ!」
 ヨゾラの声に、仲間達は頷く。かくして、戦いは続く――。

●次の実りの時に
「ふっ――」
 息を吐き出しながら、ホバーバイクのハンドルを操作する瑠璃。それを追うように、ツタが唸りをあげて追撃する。わずかに腕をかすめたそれに、瑠璃は顔をしかめた。
「どうやら、蜥蜴なりに工夫はしているようですね。ですが――」
「合流完了です!
 そして、出会い頭の一撃でしてーっ!」
 ルシアが飛び込み、問答無用の魔砲の一撃! ぶち込まれた魔力の奔流が、横合いからリザードの横面を殴り飛ばした!
「ナイスです、ルシアさん」
 瑠璃が声をあげ、一気に距離をとる。入れ替わる様に飛び込んできたのは、アーマデルだ。
「さて、シンプルに行こう」
 手にした蛇銃剣を振るう。下から、救い上げるような一撃! 強烈なそれが、巨大なリザードの身体を、僅かに浮かせる――刹那、上空へと飛んでいたアーマデルが、振り下ろす一撃を脳天に見舞った! ぎゃあ、とリザードが悲鳴をあげる――間髪入れず叩き込まれるのは、エクスマリアの魔力斬の連撃だ!
「切り裂いて、サラダにしてやろう」
 飛来する魔力の刃が、宣言通り、サラダでも作るかのように、リザードの植物部分を乱切りにしていく。そして、すっかり花が散った所で、とどめの斬撃が、リザードの額に突き刺さる。断末魔の悲鳴をあげて、リザードが倒れ伏した。
「瑠璃さん、怪我は?」
 ヨゾラが尋ねるのへ、瑠璃は頭を振った。
「何とか。それより、風牙さんが心配ですね」
「うん。さっきからずっと一人だからね。隙を見て回復術式はかけていたけれど……」
 ヨゾラの言葉に、瑠璃は頷く。視線を送ってみれば、戦いを続ける風牙と、赤のリザードの姿があった。
「急ぎましょう。あれで仕事は終わりです」
 瑠璃の言葉に、仲間達は頷く。一方、鞭のように振るわれるツタを、風牙は槍で捌きながら後退する。
「やれやれ、流石に少し辛いか……!?」
 窮地に置いて、しかしにやりと笑う風牙。一方、風牙を庇うように、ネーヴェとキルシェが、前に飛び込んでいた。
「新道様、あとは、兎たちに……」
「お任せ、です!」
 二人が、リザードの攻撃を引き受ける。
「すまない、助かる!」
 風牙は、いったんリザードから距離をとった。ここまで、一人で敵を抑えてきたせいもあり、その身体はいくつもの傷に覆われている。
「風牙殿、下がって欲しい。ルシア殿は、風牙殿を護ってやってくれ」
 アーマデルが言うのへ、ルシアが頷いた。
「はい、ルシアももーガス欠でしてー!」
 振るわれるツタと、狙撃銃でちゃんばらしていたルシアが頷き、駆けだす。風牙にかけよると、それを支えた。
 残るツタが、ネーヴェ、キルシェを狙う。ネーヴェは飛びながら、キルシェは桜のブレスレットに込められた守護の祈りによって、ツタからの攻撃を耐えて見せる。
「あの二人でも、長くはもたないくらい疲弊している……瑠璃殿、攻撃に回って欲しい。エクスマリア殿、一気に決めよう!」
「わかった」
 エクスマリアが頷く。再び氷雪の刀身を振るい、魔斬の連撃を繰り出す。連斬は次々とツタを切り裂き、赤の華をイレギュラーズ達の前へとつまびらかにする。
「いいぞ、続いて、攻撃するんだ」
 エクスマリの言葉に、瑠璃は頷いた。滑る黒刀。穿法匕首。血の刃が中空を疾駆し、リザードの顔面へと突き刺さる! ぎゃ、とリザードの悲鳴!
「アーマデルさん!」
 瑠璃が叫んだ。アーマデルが頷き、懐に飛び込む! 振るわれる、蛇鞭剣。鞭のように振るわれるそれが、リザードの首を薙ぐ! 斬! 刃が首を切り落とし、ワンテンポ遅れて、切り離された首が地に落着する。ずん、と音を立てて、からだ部分が力なくくずおれた――。
「これで終わりか……」
 傷口を撫でつつ、風牙が言った。
「あ、風牙君、だめだよ。結構傷が深いから、まだ安静にしてて」
 ヨゾラが制するのへ、風牙は頷いた。
「でも、やることはまだあるわ!」
 キルシェが、ニコニコと笑いながら言った。
「そうですね。万が一、彼らの種や根のようなものが残っていたいけませんし、死体も処理した方がいいでしょう」
 瑠璃が頷いた。
「……スムージーか?」
 アーマデルが言うのへ、
「肺にして有機肥料、でして」
 ルシアが笑った。
「うん。じゃあ、少し休んでから、とりかかろう」
 エクスマリアの言葉に、仲間達は頷いた。
「ひとまず、めでたしめでたし……ですね」
 ネーヴェの言う通り。
 まだ少しだけ仕事は残っていたが、依頼は見事に達成されたのであった――。

成否

成功

MVP

ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、プラント・リザードは撃破。
 畑も、元通りとは言いませんが被害は最小限にとどまり、農夫たちが早速作業に戻っていったそうです。

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