シナリオ詳細
エールリヒ森林伯の落日
オープニング
●放蕩娘の負債
「悪魔め……!」
エールリヒ森林伯カールの拳は、血も滲まんばかりに強く握り締められていた。元凶は彼の執務机にうず高く積まれた、実に63億4601万Gold分もの借用書である――大半がこれ幸いと偽造されたものだったり特殊化されて1000万Goldや5000万Goldになってたりレリックになってたり10億かと思ってよく見たら1.000000000Goldだったり借用書かと思ったら特殊化されたカルネアデスの板だったりしたものだったので、有効なものは2億8600万Goldしかないのではあるが。
「耳長どもの血がここまで穢れきっておったとは思わなんだわ! 借金は1200万+αなのではなかったのか……あの悪魔の身柄は山賊ども――恐らくは山賊に扮した特異運命座標ども――に奪われて、残るのは立て替えると約束してしまった彼奴の借金のみ……どうして……」
怒ったかと思うと今度は泣き始めた森林伯カール。だがそんな不安定な彼の情緒も、ふと向けた視線の先に揺れる闇色のドレスを見つけると、しんと静まり返ったかのように動きを止めるのだ。
「貴女は……『断罪の聖女』殿……?」
「父は、失望しております。何故このような事態になる前に我々をお頼りくださらなかったのか、と」
聖女と呼ばれたドレスの女は森林伯の質問に答えることなく、冷たい、蒼い眼差しを彼へと返すばかりであった。
しばらくの沈黙が流れた後、断罪の聖女メイヤ・ナイトメアは囁いてみせた。
「今の我が国の世情を鑑みるに、卿が放蕩娘とはいえ実の娘──それもローレットの関係者を処刑したなどと知られれば、国内での立場が危うくなることは否めぬでしょう」
そして、それを避けようと思うのであれば、その程度の支払いなど確かに安いものに見える、とも。
しかしながら、彼女はこうも付け加えたのだ……それが自らの富を不正義を尊ぶ者たちの私腹を肥やすために費やす結果につながるようでは、卿も改革の名の下に不正義に阿る者どもと同じではあるまいか? ……すると。
「失敬な!」
再び激昂する森林伯。そうして彼が憤るほどに、メイヤの視線は冷淡さを増してゆくばかりであった。
「無論、卿ほどの方が不正義を尊ぶ人物であるなどとは、父も思ってはおりません。……ですが、全てが卿の浅慮ゆえに――すなわち、“教導”中の使用人と一夜の過ちを起こした23年前とも通ずる思慮不足によって──引き起こされたものであることは、卿とて痛感しておいででありましょう。
悪意は明白なる罪なれど、悪意なき蒙昧もまた罪なり。異端の信仰を戴く幻想種らの教導に長年携わられし卿ならば、その警句の重みをご存知と承知しておりますが?」
娘よりも若いこの女に痛いところを突かれ、しばらくの間唸り続けていた森林伯の内心は、はたしていかばかりのものであっただろうか。だが彼はようやく唸るのを止めて、遂に力なく肩を落としてこう訊いた。
「私に、贖罪せよと言うのだな? 聖女殿──いや、御父上は、私に何を望んでおられる」
メイヤは、断罪の聖具である大鎌を掲げてみせた。
「卿が愚かなる小細工に駆り立てられたのは、この国を不正義に売り渡した者どもが、卿の正義の体現を嘲笑うがため」
「そ、そうだ! 私は悪くない――」
「――お黙りなさい! ひとたびその嘲笑に屈した卿もまた、本来は断罪が相応しいのです……ただ、今はまだその時ではない」
メイヤは大鎌の刃を森林伯の首筋に押し当てて。そして囁く言葉は甘美なる誘惑だ。
「もうじき、再び正義が不正義に対して立ち上がる時が参ります。この国に巣食う邪悪は全て――身内より反転者を出しながら改悛せぬローレットも、その傀儡も同然の教皇も、ミリヤお姉様、いえ、かの堕ちし大罪人も、全てが除かれることになるのです。卿が大義に恥じまいとお望みであれば……研ぐべき牙は、今の内からお研ぎなさいませ」
- エールリヒ森林伯の落日完了
- GM名るう
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年01月11日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●聳える過去
沈黙のままに聳え立つ古い城壁は、『太陽の勇者』アラン・アークライト(p3p000365)には旧態依然とした価値観による傲慢の象徴にも見えた。
かつて必要以上に厳格な“正義”という名の抑制が爆発した際に、何が起きたのか――まだ記憶に新しいはずのそれすらも、エールリヒ森林伯カールのような極度の保守派にとっては、“不正義を見逃した愚か者どもの責任”でしかないのであろう。
「ま、俺にゃ関係ねー。……と言いたいのは山々なんだが、そのせいで俺の娘が巻き込まれかねない以上は手ェ貸してやるっきゃねーな」
本来、その城壁の上方には目に見えぬ結界が、ドームのように張られて飛行する魔物や不届き者を弾き出していたはずではあるのだが。どうしてか『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は城壁の上に張り巡らされた歩廊の、さらに屋根の上に何事もなく降り立てていた。
(結界を切ってあるならさぞかし見張りに自信があるのかと思いきや……普通だな)
ザルだった、とまではモカも言わない。ただ彼女の隠密行動の腕前が、その辺の見張り役騎士の注意力を上回っただけだ。
「どうして防衛機構なんていうコストカットの一番最後に回すべきものを真っ先にお切りになったのでありましょう。さすがテレジア嬢のお父上、頭のネジが緩めなところもそっくりでいらっしゃる……」
呆れたように言いかけて、しかし『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は考えを改めて。
「おっと失敬。平気で血のつながった家族を片付けようとする外道と比べるのは、いかにテレジア嬢相手とはいえ失礼でありましたな」
前略、『砲撃配達』倉庫マン(p3p009901)のアイテム整理用ダンボールの中より。
「ダンボールまで……? いや便利なのは解ってるっスけど、どうして皆こうもノリがギャグなんスか……!?」
その時不意にダンボール内に、『不幸属性アイドル』ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)の悲鳴に似た声が響くのだった。折角、断罪の聖女――私の後を継いだメイヤちゃんに、“あの日”のことを問う機会のはずなのに。シリアス風味な依頼のはずなのに。こんな空気の中で過去と向き合わなくちゃらないなんて……いや、倉庫マン自身はただ自らの仕事――背負った倉庫をちょうど需要が高まっていたという借用書を満たし、倉庫バズーカにて一気に放出すると何故か本物借用書がレリック化されているのを繰り返したことが生み出した結果に対して責任を取ろうとしているだけなのは解っているし、このノリのせいでこの重々しい気分が多少なりとも晴れるのならば歓迎すべきことであるとも思わないではないのだが。
「……でもテレジアもカールも、なんで一部からこんなに恨まれてるんスか?」
ちらとミリヤムが後方を振り返ったならば……『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が魔種もかくやという呪詛をぶつぶつと呟きつづけている声が聞こえた。
「テレジア……! あんたのせいで私の右手首がボロボロで、依頼最後までもつかどうか……絶対にあんたをとっ捕まえて殴……」
「落ち着け、イーリン」
もしも『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が止めていなければどうなっていたことやら? 呪いがダンボールを突き抜けて、衛兵たちに接近者たちの存在を気付かせていなかったとも限らぬやもしれぬ。
はぁ、とひとつ大きな溜息を吐くと、イーリンは雑念を振り払うかのように頭を振った。
「大丈夫よマリア。私、怒ってないわ。
そう……私が考えるべきことはたったこれだけ――カール、あんたを必ずやとっ捕まえてやるわ!! ってね」
その前に一度だけ、ぎろりと100万Goldの借用書(偽)を4ケタ単位で発注してきたアランやら倉庫マンやら、私は1ケタ違うので決して負担かけてはずなのに私たちのイーリンの手首をズタズタにしただけでは飽き足らず天義に戦争の種を蒔こうとするだなんて許せませんわ、などと妄言を吐く祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)発注枚数普通に4ケタ目前の873枚(テレジア調べ。なお最後に送付されてきたものは〆切ちょうど1分前だったことから最後の発注には無茶振り極まる超特急納期が設定されていた様子が伺える)とかを睨みつけ。
「行きましょう。主は、このようなことを決して望まれてはいないでしょうから」
ヴァレーリヤ、神妙そうに祈りを捧げて誤魔化そうとした。一方でそれとは対称的に『影の女』エクレア(p3p009016)がどこ吹く風なのは、彼女が一切イーリンの手を煩わせることなく43枚もの借用書(本物)をテレジアに送付するという偉業を達成した身であるからだろう。実に、アランまであと100枚に迫る圧倒的2位という成果はしかし、その枚数を集めるためにどれほど財団の知人たちに頼み込み、人件費を支払った末に手に入れたものだったことやら?
つまるところ、エクレアも目的は同じ――テレジアの借金をきちんと森林伯に肩代わりさせることで、安心してこれまでの経費をテレジアに請求できる状況を作り上げるのだ。
「――ところで皆さん少し待って下さい……」
そんな時、顔にドキュメンタリーを貼り付けて変装と主張している『テレジアに金を貸している』アルプス・ローダー(p3p000034)が、唐突に不思議そうな声を上げた。
「ついさっき(※出発日の25時21分)気付いたんですが。ひょっとするとこのシナリオ、シリアス依頼なんじゃないでしょうか……?」
……right。その通り。よく気付いたね。
●不徳の城
(森林伯の行動は今現在の天義に反するもので、断罪の聖女は言わずもがな)
アルプスのエンジンこそその駆動音を静めれど、搭載された人工頭脳は激しく思考を明滅させて。同時、モカの姿も音もなく、先ほどまでの歩廊の屋根上より消え失せていた。
「がッ!?」
同時、地上――通常の訪問者が通る豪華な正門と比べればずっと小さな通用門の前に立っていた門番の片方が苦しげな声を上げて膝をつく。
「何者……」
誰何を兼ねた警告の声を上げようとしたもう一人。それもまた、口を金色の束――まるで腕か触手のようによく動くマリアの髪に覆われ塞がれる。
(僕たちが捕まっても森林伯を残していっても、天義の価値観を再び揺り戻す切っ掛けになる恐れがある)
アルプスの黙考が続く中、苦しげにもがいていた2人目の門番の瞳が、ぼんやりと倉庫色の輝きに覆われて大人しくなった。
「どうも。私は“山賊マン”です。金品の取引について、カール氏にお話があって参ったのですが……氏はどちらにおいでですか?」
「し……森林伯閣下は……断罪の聖女様とともに……執務室に……」
「ありがとうございます。ご協力に感謝いたします」
倉庫催眠に陥らせた門番に一礼をすると、最初の門番と同様に意識を奪う倉庫マン。その間にもモカが屋根上から確かめた門の向こう側の状況を伝え――倉庫マンが透視した範囲の外にも今は人影はないようだ――、マリアはそれを聞くと門番を手放して門の前へと立った。
そのまま足を前に出すと、足は鉄製の扉があたかも幻であったかのように、門の内部へと吸い込まれてゆく。そしてマリアの全身までも。
少しして門の向こうで閂を外す音がして、それから門はゆっくりと開かれた。その向こうには、両手で重い門を支えつつ、手招きならぬ髪招きするマリアの姿。
「外壁自体は神足の神通力で通れないほど分厚かった、が、この扉は通れた、な」
願わくば他の扉の鍵も、こうして簡単にゆくなら楽でいいのに……もっとも今マリアが考えるべきはそれよりも、どうやってカール森林伯の下まで誰にも見つからずに進むか、なのだが。
「そこは、心配には及ばないであります」
得意気に胸を張ったエッダによれば、エールリヒ城内がものものしく見えるのはあくまでも軍事教練中だからにすぎず、通常の城塞防衛戦略に照らし合わせてみれば警備体制の厳重さそのものは平時と変わらぬどころかむしろ低下しているかもとのことだった。
「それを聞いてエッダも騎士だったことを思い出しましてよ」
「騎士でなければ何でありますかヴァレーリヤ?」
「……メイド(ぼそ)」
唐突に始まる鉄帝内戦を他の人がまーた始まったと呆れて見てられるのも、このエールリヒ城において警備に充てるべき聖騎士たちが、軒並み教練に駆り出されている故であるのだろう。
「気に食わないわね」
と、イーリン。
「だって、そうでしょう? 私の手首にこれだけの攻撃を加えておきながら、自分はまだ反撃されないつもりでのうのうと生きている――ま、私のことがなかったとしても、カールだって既に宣戦布告を受けてるのは解ってるはずでしょうに」
もしも、そうであるとするのなら。
以前アルプスらが城内を訪れた時の記憶を元に描かれて、門番から聞き出した追加情報を書き加えられた城内見取り図とにらめっこしていたエクレアだけは、とある可能性だけは念頭に置いておかなければならなかった。
「執務室前を横切る廊下には、窓らしい窓もなさそうだ。全てが僕たちを挟み撃ちに誘い込むための罠──あるいは森林伯自身も期せずしてその形が整ってしまうという可能性も否定はしきれないね」
「わーってるさ」
面倒くさそうにアランは応え、しかし一行の足がしばらく周囲に物陰の途絶える辺りに差し掛かったのを受けて左右に“遠目には背景の景色がそのまま映るように見える幻影”を展開し終えるとこう続けてみせた。
「どうせ今更逃げ隠れできねー話だ。ようやく手に入った俺たちの平穏を乱そうって奴がいるなら、罠だろうと何だろうと行くだけだ。……だろ?」
●森林伯の下へ
こうして忍び込んだ館の内部は、しんと静まり返っていた。華美な装飾も見かけなければ、使用人の姿さえほとんど見ない。いかに“正義の代弁者”としての特権に目の眩んだぼんくら領主でも、来訪者の目に留まらぬ場所まで飾り立てるほど愚かではなかったのだろう……あるいは家宰か誰か常識ある者が、カールの我儘を止めといただけかもしれないが。
いずれにせよ特異運命座標たちが忍び込んだエールリヒ城は、往時の対原住幻想種戦線の最前線としての姿を今なお留めていた。華美な宮殿も然ることながら、こうした城塞もミリヤムは――断罪の聖女としてのミリヤは幾度と駆け抜けてきたのを記憶している。息を殺し、“好ましからざる輩”の喉元に迫るのはその時以来だ……けれども標的の処へ向かう時の気分がこうも重いのは、はたしてこれまであったことだっただろうか?
「向かう先に、ボクたちへの強い敵意の持ち主がいるっス……」
囁いてから、気付いたのだ。その敵意の持ち主は、“侵入者たちに”敵意を向けているのではない。“自分に”――他の誰にでもなくミリヤムのみにそれを向けている。何故ならどんなに警戒心の強い衛兵だって、侵入したことすら気付いておらぬ相手に敵意を持ったりはできないのだから。
「メイヤちゃん――」
ゴスッ。
思わず敵意の主の名をミリヤムが呟いた声は、しかし鈍い打撃音により掻き消されて誰にも届かなかった。隣では聖なる血だらけメイスを握ったヴァレーリヤが、神に懺悔の祈りを捧げている。
「たとえ相手が罪なきメイドでも、姿を見られた以上はこうする他はありませんわ……。万が一にも人を呼ばれてしまったら、主の望みを果たせずに終わってしまうのですから」
気絶したメイドを手近な部屋に放り込み、再び人目を避けながら先へと進む。このような幾つかの不幸な遭遇の他は、恐らくは全てを避けきれたはずだ。それが門番から奪った鎧で衛兵に化けたモカが、可能な限り安全そうなルートを探ってくれたお蔭であるのか。それとも単に衛兵たちが、周囲に十分に気を配っていなかったためなのか。それはまさに神のみぞ知る。
おそらくはどちらも真実であり、相乗効果により特異運命座標たちは望む成果を挙げていたに違いなかった。目的の部屋――カールの執務室と目される一室の前に佇む、2人の聖騎士たちとてそうなのだから。彼らの視線は周囲に配られてなどおらず、真っ直ぐに反対側の壁を見つめたままだ。彼らの意識は万が一の侵入者に備えるというよりもむしろ、いつ扉の奥から命令が下り、それに応えねばならぬかというほうにこそ向いている……それではアルプスが一撃を加えるよりも早くその接近に気付くことなど、到底できようはずもない!
「山賊です! 森林伯、神妙にお縄についてください!」
「今のうちに畳み掛けるといたしましょう」
扉一枚分反応の早いアルプスの降伏勧告に被せるように、倉庫マンによる号令が下った。
「勿論ですわ! 増援を呼ばれる前に倒しきりますわー!」
「手首に余計な負担をかけないように、最速で排除しないとね」
アルプスが片方の衛兵を廊下の向こうまで撥ね飛ばすのと同時、ヴァレーリヤの聖メイスは唸りを上げてもう一方の体を仰け反らせ、そこへとイーリンのおびただしい魔力が、陣を描いた右手首に甚大な反動を与えつつ突き刺さる。その勢いのまま扉を開け室内へと雪崩れ込んだなら――……。
「やっぱりいらしたのね、お姉様」
見るからにまさかもう乗り込んでくるとはと泡を食った様子の森林伯カールと、本来の館の主よりもよっぽど悠然と構えた女――断罪の聖女メイヤ・ナイトメアが特異運命座標たちを出迎える。
●邂逅
「メイヤ……。元気……だった?」
そう絞り出す声がかすれていたことくらい、ミリヤム自身だって気がついていた。
お父様は貴女を気にかけてくれる? 期待に応えるために無理はしていない? そう訊ねたはずの言葉さえ、どこまで口から出たか判らない。解っているのはただひとつ……自分が何かを口にするたびに、かつてはあんなにお姉様お姉様と自分を慕い、尊敬の眼差しを向けてくれた可愛い妹の口許が、侮蔑するように歪んで見えたことだけだ。
メイヤが大鎌を胸元に構え、一歩、こちらに踏み出そうとする。ちょうど室内の照明を受けて、刃がぎらりとした輝きを帯びる!
「おいミリヤム! お前そのまま殺される気か!」
大鎌に付与された毒と死の香りを嗅ぎつけたアランの腕が、すんでのところで刃を止めた。聖毒と聖呪がその腕を蝕まんと欲するが、同時アランの放った闘気は、それらを弾いて寄せつけぬ。
これだから聖女っつー生き物は。強く心に信じるものは、何でも願った通りになるとばかり思い込んでいる。
ああ。確かにその天真爛漫さに救われることだってあるさ……だが戦場で実際に奇跡を起こすのは、奇跡に見合う行動をする者だけだ!
「おいブス!! テメェ相手してやるが死んでも知らねぇぞ!?」
アランがメイヤへと言い放つのと同時、イーリンも災厄の宿命を解放した。立つのは、カールとメイヤの間。左手の先のカールは胸を掻き毟ってもがき、右手の先のメイヤは……まるで知らぬとでも言うように涼しい顔だ。
「随分な余裕ね。それとも痩せ我慢かしら?」
挑発にメイヤは答えなかった。代わりに返るのは再びひるがえる鎌。放たれた斬撃は縦横無尽に執務室内を跳ね返り、アランを、イーリンを……特異運命座標たちをカールと室内の調度品ごと切り刻む!
「せ、聖女殿……一体何を!?」
「山賊、などと戯れを弄してはおれども、相手は背徳の巣窟たるローレット。出し惜しみのできる相手ではないのは卿とて御承知でしょう?」
抗議するカールへとメイヤは、この程度で悲鳴をお上げになるご自分をまず顧みられては、と蔑むような声を向け。それからカールを捕縛しようとメイスを手に近付くヴァレーリヤのポケットを見て、もっとも賊であることに違いはないようですが、ともう一言追加した。ヴァレーリヤのポケットからはみ出る金銀の宝飾品の数々は、一行が人を遣り過すために隠れた部屋や、不幸な遭遇者たちを放り込むために使った部屋で、彼女が“山賊を装うために致し方なく”回収した品々だ。余談だがもっとお値打ちの品は、ポケットに無造作に突っ込むなんていういつ落としたり傷つけたりしてもおかしくない扱いなんて到底できないので倉庫マンの背負う倉庫にきちんと保管されている。
閑話休題。こうしてメイヤまで大きな物音を立てて戦うようであれば、何事かと近くの衛兵たちが飛んでくるのも時間の問題であろう。ゆえに廊下の奥にも意識を向けながら……エクレアは幾つかの想定を練る。
ひとつ。カールを捕らえるのに成功した後で、逃げるとしたらどのルートを通るのがいいか?
ひとつ。メイヤがもしもその後も追ってくるのなら、どこで戦うのが最も危険が少ないか。
どのような選択をするにせよ目下の課題は、ようやく最初の衝撃から復帰して領主の下に駆けつけようとしたはいいものの、メイヤの放つ斬撃に怯んで部屋に入れぬ近衛兵たちが、撤退ルートを塞いでいることだった。
だったら……さあ、本当にそれでいいのかな? エクレアの術式はそんな彼らへと幻影を見せる。目の前に、目も口もない真っ黒な少女がいるよ。あれは背徳の存在だ。すぐにでもあれを除かねば……人類に平穏は訪れないよ?
「ば、化け物め!!!」
一方の近衛が錯乱した様子でエクレアに斬りかかっていったのを見て、もう一方も援護のため同様に向かっていった。
が、そこに立ちはだかるのはエッダ。
「貴殿の相手は自分であります」
横合いから突き刺さった拳はしかし、一介のメイドのものにしては優雅に過ぎる、宮廷舞踊のようなステップから放たれたと近衛兵は後に述懐す。まるでダンスを申し込まれたら断れぬかのように、近衛兵の意識は全て徒手空拳の構えを取るエッダに釘付けになり離せない!
「再び鎌の斬撃が来ます。お気をつけて」
倉庫マンの警告を受けてエッダが全身を硬化させるのと同時、そんなエッダも近衛兵たちも、揃ってメイヤの斬撃が切り刻んでいった……この無差別斬撃の真意はどこに?
(本当に、効率良くマリアたちを“狩る”ためだけなのか、それとも、使いものにならないカールをもう見限っておて、口封じを兼ねた断罪をするためか、だな)
いずれにせよメイヤはその攻撃によってカールがどうなるのかなんて、ほとんど気にしていないようにマリアには見えた。そして、少なくとも今はミリヤムにご執心のようだ。
(だったら……周りを見ていない今こそが、隙を突く最大の好機、のはず、だ)
だから衛兵たちとの戦いに自身の姿を隠すように位置取って……一気に、体内の魔力を殺意へと変えた! 一度でほとばしるだけでは放たれきれず、マリアの全身を駆け巡って幾度にも分かたれ再増幅されて脈打つ力は、幾度めかで今度こそ近衛を床に伏せさせるほどのもの。
けれども……。
●断罪の聖女
それを完全に死角から浴びたにもかかわらず、やはりメイヤは顔色ひとつ変えはしなかった。まさか、そんなはずがあるものか……別の死角から蹴撃を加えるモカに対しても、彼女はまるでそれすら見透かしていたかのように平然と鎌の柄で受ける。
そのまま柄を蹴り上げて逆の脚。決して敵を逃がさぬ連撃が、メイヤのこめかみに違わず入る。さしもの断罪の聖女もぐらついて……さらに、目へ! 腕へ! 脚へ! 鳩尾へ!
「ここまでしても効いてない、なんてことはないよな……?」
「敵がどれほど卑劣であっても決して敗れることなどあってはならない。そうでなければ断罪の聖女とは言えません」
最後の蹴撃の反動で宙返りしてカールの傍に着地したモカの言葉に対し、メイヤは再び涼しい顔に戻ってそう答えてみせた。その背へと……さらにアルプスのフルスロットルの体当たり!! 特異運命座標の中でも類を見ぬ威力のその一撃に、メイヤは幾らかたたらを踏んで……やはり涼しい顔で、そうでしょう、お姉様、と平然と問いかけを発する。
だというのに今のお姉様はどうだ。メイヤがそう責めていることはミリヤムだってよく解っていた。だってそんなの、否定できない事実でしかない。迷いながらもナイトメアの役目に忠実だった頃と比べたら、全てを捨てて一からやり直した自分は弱い……それにしてもメイヤは強すぎるようには思うのだけれど。
「でも、今のボクの方が自分を好きになれてるっス……。メイヤは……無理してないっスか?」
「お姉様……いえ、姉を騙る悪魔めが!!」
それは初めてメイヤが特異運命座標たちへと見せた、あまりにも激しい情動だった。いや、特異運命座標たちだけでなく、カールですら見たことのないほどの。
「お姉様があの後どうしているのかは、大まかには報告を受けていました。断罪の聖女でありながらナイトメアを裏切る大罪を犯しておきながら、よくもまあそうもヘラヘラと……」
一際激しい鎌の斬撃が、机を、ランプを切り刻むメイヤ。溢れ出た油に炎が移り、次第に机の上を舐めてゆく。
「……でも、こうしてお姉様と会うまでは、全ては過去を偽るための演技で、心の奥底の後悔を表に出さぬための処世術なのかもしれないとばかり思っていたのです……なのに」
まさかそちらこそお姉様の本性だったとは。ぞっとする冷たい眼光が、両の瞳に強く宿る。
「私の憧れを、父の期待を返してくださいお姉様。それができぬと言うのなら……貴女は、この世には不要です」
苛烈さを増したメイヤの攻撃の前に、まず誰よりも先にカールが音を上げた。
「だ、誰か助けてくれ!」
森林伯の情けない命乞い。それがメイヤの怒りを買わないことを、イーリンは祈るほかはない。
(この際ローレットでもいい、なんて口走らなかっただけマシではあるけどね……。それを言ったら“断罪”されて、手首の治療費を請求する相手がいなくなってたわ?)
もっともこのぼんくら領主、いつその地雷を踏むか判ったもんじゃないのが頭痛の種だ。だから、紫苑の魔眼でカールを睨む。森林伯の心音へと逆位相を重ね、彼の心臓に一時の休息をもたらす。
「一刻も早く本来の目的を達成しないとね……倉庫マン! 私の手首を破壊した埋め合わせ、ちゃんとしなさいよ!?」
「勿論ですともジョーンズ様。ええ、彼が私、“山賊マン”の求めていた“金品”になってくださるのですね――……」
●撤退戦
背負った倉庫の中――はヴァレーリヤの財宝で一杯だったので倉庫の上に白目を剥いたカールを乗せると、倉庫マンは迷わず部屋の外へと飛び出した。万が一途中で目覚めてしまっても、その時は再び倉庫催眠で眠ってもらえば十分だろう。
「お待ちなさい!」
メイヤの斬撃が鎌鼬となってその後を追ったが、エッダが両者の間に割り込み斬撃を払い落とす。
「後はそのまま逃げるだけ――そうやって隙を見せた瞬間にこそ仕掛けてくるだろうことは、こそこそと敵を暗殺してばかりの陰キャならそうするだろうと解っていたであります」
少し前までの冷徹な断罪の聖女であれば効くはずのない挑発は……いわば、一種の賭けだった。もっとも、こちらの失うものは何もなく、成功すれば殿として他の者たちを先に逃がせるようになる。結果、流石にメイヤもそのような愚は犯さなかった、が……。
「挑発だと理解するまでの一瞬ながら、ようやく隙を見せてくれましたね。その一瞬があれば僕の反応速度なら十分に狙いを定められます」
アルプスの居寤清水を使って威力1万超えのデッドリースカイが、今度こそもろにメイヤを跳ね飛ばす!
「今です! 急いで撤退しましょう。メイヤさんも痛手だと思ったら引いてくださいよ!」
ドップラー効果を発生させながら脱出路を切り拓くアルプスに、逃げ足だけなら自慢のヴァレーリヤが即座に呼応した。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
神妙そうに聖句を唱えるが、ポケットの中身のせいでやっていることがようやく押っ取り刀で駆けつけてきた聖騎士たちを強盗が炎で蹴散らしているだけでしかないのは今更語るまでもない。
……が、モカがいつの間にか持っていたカールの署名の入った書類――実のところメイヤに雀蜂乱舞脚をお見舞いする時、その高速連続攻撃の勢いのまま飛び散った羊皮紙を掴み取っていたものだ――を見せてこう叫んだことで、状況は少し変化した。
「おおっと、テレジアさんの借金をいち早く払ってもらおうと訪問してみたら、クーデターの証拠を見つけてしまったぞー!」
教練の命こそ下ったが、その意図まではまだ知らされていなかったのだろう……聖騎士たちの間に動揺が走り、一瞬緩んだ包囲網の穴をこじ開けるため、今度は聖騎士たちへと蹴撃が乱舞する。
立ち上がった二代目断罪の聖女。その背で広がり床に落ちた炎が激しく燃え上がる。
再び構えを取った大鎌。その刃から逃げ出す前に――ミリヤムは一度だけ振り返ってこう訊いた。
「あの子は――桃華はあの後どうなったの?」
自分が目を背けてしまった親友の末路。それがどのようなものであったとしても覚悟していた――はずだったのに。
「お姉様は、知ったら『知れてよかった』と安心なさるのでしょう? どうして異端者を喜ばせる断罪の聖女がいるでしょう……お姉様はもう、そんなことすら解らぬように成り果ててしまったのですね」
返ってきたのは有無を言わさぬ拒絶だけだった。聞きたければこの場に留まって……恐らくは命と引き換えにでも口を割らせなくてはならぬのだろう。
それがあの時自らを囮にして“ミリヤ”を逃がしてくれた任桃華に対する裏切りであることくらい、ミリヤムだって承知していた。
だから今度も迷いながらも逃げる。
「メイヤくんのことは僕も妨害しておくよ。ミリヤムくんはメイヤくんの手の届かないところまで逃げておくといい」
エクレアの呪が放たれた。それが時間稼ぎにしかならないこともまた解っていたから、ミリヤムはもつれる足を必死に動かして。
「……さて。そう簡単には通さないよ君ぃ」
特異運命座標たちが逃げるのとは反対側から集まってきた聖騎士たちが、次々に錯乱する声が聞こえた。けれども斬撃が石製の廊下に跳ね返る音は止まずに、次第にこちらへと近寄ってくる。
だから、それに対峙して。
「いい? マリア。前方の連中に伝えて頂戴。一度しか言わないからよく聞いて」
イーリンが確信を持ってマリアに伝えた言葉は、彼女には本来なら想像するしかないはずの“恐らくは最も妨害の少ないだろう逃走ルート”を示すものだった。1日に1回しか使えないはずのギフトを今ここで使ってみせたその意味は――。
「わかった。イーリンも無事で、な」
今マリアが考えるべきは、イーリンならば必ず後から合流してくれると信じ、カールの身柄を無事に持ち帰るための算段をつけることだけだ!
「いいぜ、かかってこいよ」
アランもまた両拳を胸の前でぶつけ合わせて、殿に加わることを選んだ様子を聞き届けながら。マリアも行く先の物音を聞き分けて倉庫マンたちの居場所を推定し、壁の中を駆け抜けて合流を急ぐ。
「ムシャクシャしてんだ、相手してやる……嫌ってほどにな!!」
アランの激しい踏み込みが床材を踏み砕き、断罪の聖女の胸元に、同時に複数の刺突孔が花開く!
●森林伯の末路
道中、肝心なところでアルプスがエンストして突破力が不足して危機に陥ったり、一方で往路で仕掛けておいた自身のエンジン音を離れたところで再生したことで敵援軍を丸ごと回避して面目躍如したりしながら、特異運命座標たちはカールとともにエールリヒ森内に秘められた一角までやって来たところでようやく一息吐いた。こんなに走る羽目になるのなら肉体派とは縁遠いなんて言っていないで、少しは鍛えておけばよかった……これもテレジアに請求しようとエクレアが悪態を吐く。
森林伯が目を覚ます。こんなことをしてタダで済むと思っているのかとカールは気炎を上げて……。
「デカいバックがついてるからって大口叩いても無駄だぜ、黙ってコイツの金を払い続ければ悪いようにはしないぜ俺たちただの山賊だけど」
もっともそんなアルプスの欺瞞も、今となってはすっかり意味など持たなくなっていたわけだが。仮にカールがこの期に及んでも侵入者たちを山賊だと思い込むようなうすのろだったとしても、倉庫マンがどこかで見たことのある書類を突きつけたなら、相手が何者であるのかすぐに思い至っただろう。
「どうも、カール様。この書類をご存知でしょうか?」
「……あの悪魔の娘のせいで書かされる羽目になった債権証書だな」
「そうです。貴方にご署名頂いた『債権証書』です。カール様、確かにご自分でご署名されましたよね?」
では、何故その直後に兵など動かしたのかと倉庫マンは問い詰めた。もしも彼が国家転覆計画の片棒を担いでいなかったのだとしても、それが意味するのは軍事力を背景とした踏み倒しではないか。
「誤解だと仰るのでしたら、是非ともローレットでご弁解ください」
そう言われると森林伯はがっくりと項垂れて、彼の指摘を全て受け容れる他の道は残されていない。
「不適切な対応だったことは認めよう。だから私を釈放し、賊を装うために奪った金品は返して貰えぬか……?」
カールの視線がヴァレーリヤのポケットに向いたのを見て、他の視線も同じ場所に集まった。
「えっ……こ、これは今回の事件に対する罰金やら賠償金やらとして……ほ、ほらそれに貧しい人たちを助けたりもできますし……。で、でも事件解決の打ち上げをちょーーっと豪華にするくらいは、いいですわよね……?」
「ではどうして弁解する度に顔汗が増えていくのか、詳しく教えて貰いたいでありますな?」
冷たい声にヴァレーリヤがはっと振り向けば、アランに肩を貸し、気を失ったイーリンを乗せた漆黒の牝馬を引いたエッダがちょうど追いついてきたところだ。
「……っち。大口叩いた割に逃がしちまった」
苦々しげにアランは口許を歪め。
「だが、手傷は負わせたはずだ。それに――そいつの身柄を確保できた時点で、奴の目的は挫いたも同然だしな」
「ですので、罰としてヴィーシャが打ち上げ代を出すであります」
「一体どうしてそうなるんですの……!? 私は借用書(偽)に大枚叩いてしまったのでエッダこそ出すべきですわっ!?」
ギャーギャーと取っ組み合いを始めてしまった締まらない飲兵衛どもに唖然としつつもこれで全てを有耶無耶にできると胸を撫で下ろしたカール。その胸ぐらが、不意に乱暴に掴まれた。
「貴方だって呼吸をし、食事をし、排泄をし、喜怒哀楽の感情があり……。貴方が差別している人々と何が違う?」
モカだ。その目には憎悪にもにた強い感情が宿っているが……対するカールの答えはこうだ。我々は正しい信仰の下に生きており、彼らは誤った信仰の下に生きている、根本的に違うのだ。
今度はモカは乱暴に、その胸を突き放してみせた。そして、遣る方ない溜息を吐いて。
「呆れたね。だけどいつまでも貴方と言い争いをしていると、折角の打ち上げパーティーが不味くなりそうだ。
……よし。帰ったら私の店に集合でどう? もちろん全部私のおごりだ。テレジアさんも含めてな。
思うところはあっただろうけど、ミリヤムさんも存分に楽しんで、嫌なことは忘れてほしい」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
エールリヒ森林伯カールは捕縛され、今後天義政府の沙汰を受けることでしょう。
ですが今回逃がしたメイヤ・ナイトメアは、この後どのように動くのか……。これが天義を廻る新たな動乱の火種にならなければいいのですが。
GMコメント
ローレットが一度は打ち破ったはずの旧き価値観が、今、再び鎌首をもたげようとしています。
本シナリオの目的は、エールリヒ城に侵入し、現教皇に対するクーデターを準備中だというエールリヒ森林伯カールを捕縛すること。ただし、その背後には、同じく天義の旧価値観を信奉しそれを否定する者たちから国を取り戻そうと画策する、ナイトメア家の存在があるようでした。
今回の事件が明るみに出た裏には、『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)の借金をせっせとカールに立て替えさせまくった特異運命座標たちの尽力があったことは間違いありません。
本シナリオの優先参加者には、シナリオ『シスター・テレジア拉致計画』の結果を受けて12/25までに『100万Goldの借用書』を送付した方のうち、特筆すべき成果を出した方々が含まれております。また、その他の方々にも『エールリヒ森林伯の債権証書』を送付いたしました。お持ちの方は、通常より高い優先度で参加抽選が行なわれます。また抽選時、所持数に応じた当選率ボーナスが加算されます(なおエールリヒ森林伯の債権証書は譲渡可能です)。
●状況
高く分厚い城壁に囲まれたエールリヒ城は、今は人の出入りを拒んでいます。まずは何らかの方法で侵入しなければいけません(現状、城壁を乗り越えて侵入することを妨げている結界は、コスト削減のため起動されていないようです)。
しかし、城塞内では聖騎士団が軍事教練を行なっており、見つかれば彼らとの戦闘に突入するでしょう。もちろん、恐らくは執務室に籠もっているだろうカールの周囲にも、幾人かの近衛が控えています。また、断罪の聖女メイヤ・ナイトメアがカールに力を貸しています。
ただし、本シナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●敵
・聖騎士たち(一般)
仰々しい肩書ではありますが、早い話が森林伯と主従契約を結んだ凡庸な騎士たちです。
多少は信仰術式を使えたり、森の中で活動することも多いことから捜索や忍び歩きといった技術もある程度持っていたりはしますが、手強い者はそこまで多くないでしょう。ただし、仲間を呼ぶのを許すと厄介です。
・聖騎士たち(近衛)
カールの執務室を警護する、強力な聖騎士たちです。常時執務室前に2人いますが、これまたもちろん救援要請により増える可能性があります。
・カール・ヴァルトグラーフ・フォン・エールリヒ
あるいは訳して『エールリヒ森林伯カール』。彼自身も聖騎士の肩書は持っていますが、お坊ちゃんのまま中年まで暮らしてきた人物なので戦闘力はお察しください。
・メイヤ・ナイトメア
大鎌により不正義を断罪することを生業とする、二代目『断罪の聖女』です。そう呼ばれるにふさわしい実力を持ってはいますが、不利になっても死ぬまで戦うようなことはしないでしょう。
ただし、可能であれば姉であるミリヤ――ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)を断罪(つまり殺害)しようと試みます。
●Danger!
本シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定がありえます。
あらかじめご了承の上、ご参加いただくようにお願いいたします。
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