シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2021>奪って叱ってそして渡して
オープニング
●天義(のごく一部)にある伝承より
とある町に、貧しい者たちがシャイネンナハトを暖かく過ごせるようにと、毛糸の下着を喜捨する風習がありました。
元々は真新しいものを喜捨するものだったらしいのですが、誰もが新品を喜捨できるほど裕福なわけではありません。
そこで、お古でもないよりはマシだろう、ということになったらしいのですが――。(ここまでがあらすじ)
「ハァーッ、ハァーッ……パンツの喜捨だって? 貧富の差もあるというのに新品ばかりが並ぶなんて経済的ななんかの陰謀では? つまりこれは……商売の気配? い、いけないぞそんなことは!」
天義の経験な神職者であり黒肌の若者、ボブはこの風習を訝しんだ。
貧富の差が少なからずあるこの国で、喜捨をする者が尊いというのなら、それは金持ちばかりが徳を積む結果になるではないか。
そしてお古が出回るということはその裏になにか別の意図があるのではないか、と。そしてボブは決意した。この悪しき風習に鉄槌をくださねばと。
「ボブ」
喜捨の管理役の司教の目がガス燈越しにひかった。
「ウワッ司教様!」
「おまえのような誤った義憤に駆られる者が現れるのは予見していた。だから私が見回っていたのだ」
司教が言うには、そもそも下着の喜捨であってぱんつとは限らず、肌着でもよかっただろうになぜかぱんつとして伝わり、しかもその新旧問わずなのはいいとして一部の出どころのぱんつをとくにありがたがる風潮ができてしまったため、場合によって争いになりかねない事態が続いているという。
「アーッいけない! そんなことでは商業主義! 神罰!」
「落ち着きなさいボブ。あなたも真実を知ったからには私に協力するのです」
「協力……?」
ボブは首を傾げた。司教の目が再びひかった。
「それもこれもぱんつの売買が儲かるなどという話が広まったのが悪いのです。是非に『原因』に協力して頂かねば」
協力とは。
ボブがそう聞くより早く、司教はいろいろ考え始めていたのだった。
協力とは。
●そしてこうだ! 悔い改めて!
「輝かんばかりの、この夜に!(メリークリスマス!)」
というわけで天義の『その伝承』が残った町では、今まさに乙女のぱんつとか大人っぽいぱんつの奪い合いが最盛期を迎え「なにこれ?」
俺が聞きたい。
「ようこそいらっしゃいました生に、じゃなかったイレギュラーズの皆様。わたくしこの教区の司教を務めております」
おい今「生贄」つったよな?
「現状見苦しく申し訳ありませんが、これも近年、喜捨されるはずのぱんつ需要の激増によるもので……もう少し正常な祭りであるべきなのですが……」
何で需要が増えたんですかねえ? そんな視線を投げかけた司教はだいたい全部お見通しである。
「……ひとまずこのような形で混乱が起きております。皆様には喜捨していただくぱんつの確保を願いたく。無論、脱げなどという破廉恥なことは申しません。手作りで毛糸の下着を作って暖かく過ごすことを願っても、原点に立ち返り肌着を作っていただいても結構です。手作りというところで評判になる可能性もありますが……」
ああ、奪い合いの調整をしていただいても大丈夫ですよ。
司教とボブは晴れやかな笑顔であなた達を見つめている。
闇市で吊り上げてしまった相場がこんなところで報いるなどと読めたイレギュラーズがどれほどいるというのか。
- <Scheinen Nacht2021>奪って叱ってそして渡して完了
- GM名ふみの
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2022年01月03日 22時40分
- 参加人数14/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 14 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(14人)
リプレイ
●理由を考えると頭痛がするので
「……は? いや何故下着? マフラーとか手袋じゃダメなのか? もっと根本から暖かくするべきだから下着じゃなきゃダメとか、そういう話?」
「……いやいやいや、何で由緒あるこの下着喜捨祭がこんなどうしようもない状態に陥ってるんスか?」
「正しいの由緒!?」
イズマは聞かされた話に対して激しく動揺していた。他のイレギュラーズが割り切り気味なのを考えると、ああ彼は割と常識人視点だな、などと思う者もいるだろう。天義の催事事情に詳しいミリヤム(もと聖女)の言葉にさらなる驚きを見せるが、ミリヤムの病み具合を見ると文句も言えない。
「みんなー! そんなぱんつの為に争わないで! 大人しく分け与えるっスよ! ほら! 可愛いボクを見て落ち着くっスよ!」
「あ、ぱんつの人」
「ぱんつのアイドルだ」
ミリヤムは己のアイドルとしての全身全霊を以て人々に語りかけるが、黒歴史が逆効果になっていてまるで意味がない。どころか、逆ギレした彼女が収奪に行っている。
「こっちで毛糸が安かったから買って……いやミリヤムさんは何してるの!?」
イズマはその混乱の裏で毛糸をあちこちから調達し、己も作成に取り掛かる。だがどうにもうまくいかない。だが、この場には編み物が趣味の者もそれなり存在する。
「……趣旨は理解した。成程、毛布よりも消耗が激しくコートよりも布を多く必要としない分、ことさらに裕福でなくとも喜捨に貢献できる。だが使用済みはまずいだろう、衛生的に」
「ああ、だから編み物を」
「大丈夫だ、弾正の下着は俺が預かろう、責任を持って保管する」
「アーマデル?」
弾正は編み物ができる幸せをアーマデルと共有しようとしたが、当のアーマデルは煩悩に塗れていた。年越しで祓えたか疑問な密度だ。結果として2人は編み物を共同作業(意味深)するわけだが。
「ところで、さっきから何を遊んでいるんだ? 毛糸が動く?」
「…………弾正」
アーマデルは腹巻きを作ろうとして毛糸に絡まり、弾正はその姿に思わず彼を抱きしめてしま、編み物はどうした?!
「……使用済みのぱんつって、普通寄付されても他人が穿いたのは抵抗があるって困るもののひとつだったような気がするけど……」
そんな2人を差し置いて、きちんと毛糸のぱんつを編んでいるのはチャロロである。本や周囲の手元をみつつ、おっかなびっくりながら着実に。
腹巻きのほうが楽そうなことに気づいてからは、そちらにも手を伸ばしていく。周囲の混乱をよそに、じっくりゆっくり、である。
「これで少しでもあったかく過ごせればいいけど……」
そんな彼の地道な行動が、ローレットでも上位のド善人の目に止まらぬ所以はなかった。
「むむむ! 毛糸のパンツを作って喜捨すればいいのかい? ふふ! クラースナヤ・ズヴェズダーの評判を上げるチャンスじゃないか!」
「既にあるものを取る! つまり、現地調達こそが最強なのでございますわーー!」
「ヴァリューシャ……?」
マリアは今こそ『クラースナヤ・ズヴェズダ―』のゲロみたいな匂いのする悪評を挽回できるものと気合を入れていた。仲間達の所作と集められた毛糸を見て、「これならできる!」と踏んでいた。いたが、当のヴァレーリヤの態度を見るに、評判を上げるより大幅に下がる方が先になる懸念が見える。
「ふふふ! 手作りの毛糸のパンツと肌着を作ったから良かったらもらっておくれ! クラースナヤ……おっとなんでもないよ、このズヴェズダー、じゃなかったヴァリューシャと私をよろしく!」
さりげなく(もなんともない)マリアの手引により、素早く編み上げられた毛糸の下着が喧嘩している者達に配られていく。彼女の働きは聖者の施しとして人々の心を満たすだろう。だが。
「さあ、早くパンツを脱ぎなさい!さもなくば、主のお怒りに遭遇することになりましてよどっせーい! ……ふう。分かればいいのでございますわ! 分かれば!」
ヴァレーリヤはといえば、余裕で人々を襲ってぱんつ収奪に動いていたのだから救いようがない。なおその一連の行動は神父様の目に届いている。
「ヴァレーリヤ様、ちょっと」
「……は、私の? いえ、私は十分貢献したのでこれで帰ろうかと。おほほ、ごきげんよう」
「なりません」
「……ええい、帰るって言っているでしょう!? 離しなさい! 聖職者のを奪おうとするだなんて、罰が当たりましてよ!」
「どうして……」
聖職者を謀る聖職者がいてたまるか。人々のヴァレーリヤ達への信心がおおきく下がった。
「この催しホントはぱんつじゃなく靴下じゃないかと思うっす」
「いくら天義でもシャイネンナハトくらいは安らかな催しかと思ったのに!」
如何に宗教に邁進する天義であろうとシャイネン・ナハトくらいはまともであってほしい。そんなアルヴァの希望的観測は、目の前で盛大に打ち砕かれることとなった。傍らのレッドが趣旨を正しく理解しようとしているのがカオスぶりを助長させている。
「なあ、これって本当に必要なことなのか?」
「アルヴァ、これは疑問に思っちゃいけないっす。やらないといけない『責任』があるっす」
アルヴァは文句をいいつつ、喜捨されたボロのぱんつのゴムを入れ替えるなどの簡易な修復を手伝わされていた。彼には『責任』があるのだ。深く語る場ではないが。なので彼も淡々とこなしているのだが……。
「手っ取り早く解決するにはこうっす!」
「レッドさん? 何してるの? 何で服を脱ごうとしてるの? ――レッドさぁん?!?!」
レッドは躊躇なく己のぱんつを脱ぎ捨て、人々に配ろうとする。ストッキングもだ。換えがあるから大丈夫みたいな口ぶりしているが、色々大丈夫じゃない。
この狂いぶりにアルヴァはぱんつを引き破ったが、修復で倍の時間がかかったのは言うまでもない。
「おまつり! ニルはおまつりすきです。でも……ええと、ぱんつがなくて困っている人がいるのですか?」
「わっはっはっー! 祭りは祭りでもぱんつの喜捨祭とかちゃんちゃらおかしいのだ!」
ニルは祭りと聞いてにぎやかな露天、楽しむ人々、大勢と食べる食事などの『おいしい』イメージを高めてここに来た。来たが、どうやら話が違うらしい。ヘルミーネのいっそ清々しい喜捨祭Disは兎も角、仲間達(の良識派)はぱんつを編んだり修理したりしているので、ニルもそれに従うことにした。
「ぱんつの色って大事なんでしょう? わざわざ聞いてくる人がいるって、どこかで聞きました」
「ニルちゃんは学ぶ相手が間違ってる気がするのだ……まあニルちゃんは有名人になってちやほやされてーのだ」
(人々の為に善行するのも偶にはいいのだ)
様々な色の毛糸を使って多彩なぱんつを作ろうとするニルは、色の概念も大事だと考えていた。その理由が最悪すぎてヘルミーネは思わず建前と本音が入れ替わってしまう。
「ヘルちゃんが夜なべをして大量に作ったこのぱんつ! これを過去の依頼通りに3分間穿いてから脱ぎを繰り返しして使用済みにするのだ。ヘルちゃんの写真付きサインも付けるのだ!」
ヘルミーネはどこから知識をつけてきたのか、3分履いて脱いでを繰り返しぱんつをバラ撒く。なお彼女が参考にした催しは今回の喜捨祭の4倍弱のイレギュラーズが参加しており、報告書を書いていて泣きたくなったなんてそんなそんな。
「ぱんつ需要についてはよーく分かるよ? ぱんつはとてもありがたいものだからねぇ……。例えばあの子が空から話してきた時、そこには青空があるんだよ」
ミリアムは手にした袋に何故か頬ずりしながら訥々と話す。周囲の者達が一種異様な状況に気付くのに時間はかからず、そしてその所作に何か思うところがあったのは明らかだ。『あの子』を思うその目に喜色が浮かぶ。
「そして、その『青空』は今まさにここにある」
そうして彼女が取り出したのは、画一化されたサイズ、デザイン、色合いのぱんつ達。そう……彼女の想い人のぱんつである。
いつの間に盗んだのかとか考えちゃいけない。すり替えたらしいけどギリギリアウトでは? とも考えちゃ駄目だ。
「価格高騰? それがどうかしましたか? ぱんつが必要なら、それを確保できるだけの資金と購買先を用意すればよろしい」
寛治の行動力はこういうときに真価を発揮する。
地元にいる『仲間』達に声をかけて回り、兎に角ぱんつを回収していた。縫製業だのいかつい野郎どものぱんつだのを小切手で回収していく彼の姿は、傍目には奇異に映……らない! 喜捨祭パワーだ!
「これは売買ではありません。ぱんつの寄進に応じていただいた心篤い方々への、私からのほんの敬意の現れです」
なるほどね! 敬意なら問題ねえや!
一方その頃。
「汚れなき純真な子供たちのぱんつはきっと尊いものなはずなのだ。この美しい祭りと気高きこの祭りの精神に相応しいのだよ。本当だぞ。聞いているのか憲兵くん。決してわたしは悪しき感情で動いているのではないのだよ。ちょっと必死になったかもしれないが本当にやましい所はないよ。本当だぞ。だから手錠を離してくれないか。何故手錠綱を引っ張るんだ。私は依頼を受けてきたイレギュラーズだぞ。ぱんつをもらうのに子供なら競争相手も居ないしあっさり渡してくれるだろうと考えたわけでは、えっ風邪を引く。子供だぞって? そういう祭りではアーッやめてくれ! 前科だけは嫌だ!」
ディアーヌは言い訳する暇もなく憲兵に連れ去られ、数日の勾留ののちに釈放されたそうです。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
っぱ酒よ。俺には酒しかねえわ。
そんな感想が生まれました。
GMコメント
構想はるうGMのものなので私は悪くねえ。
●成功条件
下着喜捨祭の穏便な成功
町の人々の心の平穏
●下着喜捨祭
経緯はOP序盤の通りなんですがご覧の有様です。
皆さんには喜捨するためにあれこれ奔走していただくのがいいかなって私おもうの。
流石に公序良俗に反することは強要できないけどそれ以外は全部要求してもいいよなァ!?
あ、奪い合いに仲介しても別に戦闘シナリオじゃないんで負傷とかはあんまないです。ぱんつはかないで天義の寒空の下でうろちょろしてたらどうなるかは別として。
●なお
裁縫系とかクラフト系非戦スキルがあると便利なのかなっていってました。
作ったものがなんか価値を持ってしまうかもしれないですがそこまで面倒は見れません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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