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シナリオ詳細

<オンネリネン>天馬は幻想を駆ける

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 それらは空を駆けてやってくる。
 立派な2体の軍馬を引き連れてやってきたのは、瘴気纏う黒い馬。
「実に心地の良い風だ」
 黒い病原菌を燻らせながら、それらはかなりのスピードで上空を走っていた。
 3体の馬が迫っていたのは、幻想国レガド・イルシオン。
「力があふれる……今の吾は止められぬぞ」
 魔種ディジィズは眼窩に見えてきたその国目掛けて駆け下りてくる。

 幻想西部の街、街道沿いに発展した住宅街アユラには、天義にある独立都市アドラステイアから派遣されてきた子供ばかりで編成されたオンネリネン部隊が駐留していた。
「今度こそ、成果をあげてみせるぞ」
「「おー」」
 その中でも年長であるバイロンが両手を握って意気込みを見せると、部隊員達も拳を突き上げて気合を入れる。
 見た目は可愛らしさも感じる子供達だが、大人顔負けの戦闘力を持っており、彼らは傭兵部隊として各地に派遣されている。バイロンの部隊もその一つだ。
 先の依頼の後、一度アドラステイアへと戻った彼らは改めて、白い毛並みで翼を持つ馬の姿をした聖獣を与えられていた。その聖獣もまたかなりの強さを持っていることもあり、オンネリネンの実力はこの街の人々にも周知されている。
 丁度依頼を一つ終えたバイロン達は、新たに空から飛来してくる魔物達から街を守るようアユラの民から依頼を受けていたのだが……。
「な、なんだアレは……」
 見た目は3体の空駆ける馬。後方両サイドに従える軍馬はいかつさを備えており、見た目だけでも強者といった佇まい。
 だが、それ以上に、中央の1体……黒い瘴気を発する暗紫色の馬を見ただけで、子供達は身体を震わせる。
 その瘴気は生あるもの全てを侵す病原菌。
 遠くからその姿を見ただけでも危険さが感じられるのは、実力あってこそだが、やはり子供。恐怖を感じて身を竦ませるのは致し方のないことだろう。
 バイロンとて、明らかに格上だと知りながらも、飛来してくる敵を目にして己を奮い立たせて。
「や、やるぞ……!」
「「う、うん……」」
 負けを確信しながらも、子供達は銘々に武器を手にし、降下してくる敵を迎え撃つべく身構えるのである。


 幻想、ローレット。
 現状、練達、ROO関連事件に注目が集まっているが、他所が平穏無事といかないのが無辜なる混沌という世界である。
「幻想の街を狙い、謎の魔種が向かってきているって話さ」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が集まったイレギュラーズ達へと話す。
 暗紫色の馬の姿をした魔種が幻想西部の街アユラを目指しているという情報があった。
 たまたま、アユラにはオンネリネンの一隊……バイロン隊が詰めていた。白い毛並みをした翼を持つ馬の聖獣を連れていることもあり、街の人々は彼らに魔種の討伐を依頼したのだが……。
「戦力比を考えれば、ほぼ間違いなくオンネリネン部隊が敗北するだそうさ」
 オリヴィアは真顔でそう告げる。弱いながらも、未来視の力がある彼女は子供達が倒れる姿が視えたのだろう。
「その前に、バイロンちゃんをなんとかしないといけないわね」
 そこで、雨宮 利香(p3p001254)が笑みを浮かべて呟く。
 先日の依頼、利香は敵対勢力に与するバイロン達と対する形となり、彼らの連れていた聖獣を討伐、バイロン達を撃退している。
 その際、オンネリネンの子供達がローレットに対して、並々ならぬ敵意を抱いていることが分かった。
 なんでも、子供達はアドラステイアで「家族を殺したのはローレットだ」と教育を受けていたらしい。
 加えて、彼らは仲間や兄弟を、アドラステイアに残して……いや、人質の様な扱いとされて捕らわれているというべきか。
「だから、彼らとも交戦する可能性は否めない。たとえ、魔種がいたとしてもさ」
 全身に黒い瘴気を纏う暗紫色の馬の姿をした魔種は、ディジィズという名であることが分かっている。
 元々獣種だったと思われるが、現状は馬の姿のままで活動しているらしいその魔種は、8本の脚を持つ2体の馬……スレイプニルを連れて、比較的守りが手薄な幻想に目を付けたらしい。
「ディジィズは行商人がつけたあだ名だそうっすね」
 紅い髪、小柄なオッドアイの旅人、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)としても、その魔種についてはよくわからないことも多いそうだが……。
 行商人曰く、体が病原菌でできたディジィズは周囲に瘴気を振りまき、通った跡は草木が枯れ、大地が汚染されてしまうとのこと。
 また、その身体に触れれば命を蝕む流行り病にかかってしまうのだとか……。
「血肉求める行けるしかばねになってしまう、なんて話もあるっす」
 いくら戦闘経験を積んだオンネリネンの子供達とはいえ、さすがに相手が悪すぎる。
 なんとか、オンネリネンの子供達と共闘し、この恐るべき魔種と対したいところではある。
「何はともあれ、街へ入れたらそれだけでおしまいだよ」
 相手はある災害レベルの魔種。近づくだけで人々は危機にさらされる。
 アユラの街の入り口付近で撃退には追いやらねば、この街は終わってしまう。
 オンネリネンの子供達の説得、共闘の上で、ディジィズとスレイプニル2体との交戦と、やることはかなり多い……が。
「最悪、今回は撃退するだけでもいい。相手が悪すぎるからね」
 その上で、オンネリネンの子供達と交流し、少しでも誤解が解ければ違った関係を築くこともできる。アドラステイアの糸口になるかもしれない。
「どうか、よろしく頼んだよ」
 かなり厳しい状況ではあるが、イレギュラーズはこの難局を打破すべく、現地へと急行していくのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは雨宮 利香(p3p001254)さんのアフターアクションによるシナリオです。天義アドラステイア関連シナリオ、<オンネリネン>のシナリオをお届けいたします。
 天馬……幻想……ペガサ……それ以上はいけない。

●概要
 幻想へと現れた魔種とその配下の討伐を願います。
 このシナリオは、天義と幻想の名声が付与されます。
 
●敵……魔種、モンスター
○魔種、ディジィズ
 黒い瘴気の様なものを纏った暗紫色の馬。通った場所は草木が彼、大地が汚染されるといいます。
 空を駆け、あらゆる者に致命傷をもたらす病原菌を振りまく恐ろしい魔種です。迂闊に触れるだけでも手痛いダメージを負うことは必至でしょう。
 
○スレイプニル×2体
 8本の脚を持つ異世界における神話にも登場する軍馬。魔種の呼び声にあてられて強力なモンスターとなり果てています。
 同じく飛翔が可能で、駿馬として有名です。その素早さを活かした突撃や踏み付け、風を操る術も持ち合わせています。

●不明
◎オンネリネン・部隊
 傭兵として各地へと派遣された部隊の一つです。
「<オンネリネン>海に羽ばたくアルバトロス」にも登場。
 ローレット・イレギュラーズは敵だという教えを受けており、前述のシナリオでは敵対勢力となっていました。
 前回の説得でローレットへの認識が揺らぐバイロン達でしたが、一度アドラステイアに戻り、隊を編成し直して今度は幻想へと出稼ぎに訪れたようです。
 敵を同じくする状況ですが、必ずしも味方とは限りませんので、共闘の際は気を回すことも多くなるでしょう。

〇リーダー・バイロン
 部隊を率い、部隊員からの信頼も厚い14歳の少年。
 槍使いであり、竜巻状の衝撃波、旋風を巻き起こす薙ぎ払いなど、卓越した技術で高い戦闘力を持ちます。

〇聖獣・ウイングホース
 全長4mほど。翼を持つ白馬です。
 嘶きと合わせて急降下による踏みつけや突撃、天雷を使ってきます。

〇構成員×12体
 いずれも10~14歳の子供の男女。
 半数がハルバードや鉾といった長物を。半数が長杖、錫杖といった杖を用いて魔法を行使します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <オンネリネン>天馬は幻想を駆けるLv:15以上完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年11月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
レッド(p3p000395)
赤々靴
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ


 幻想西部アユラを守るべく急行するメンバー達。
「アドラスティアの傭兵、ですか……」
 従前の天義の信仰が嫌いではないという『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)は、この地に在留しているオンネリネンの子供達について複雑な思いを抱く。
「彼らの家族を本当に私達が殺したなら恨まれて当然。しかし、私達が恨まれたとして助けない理由にはならないわ」
 真偽はさておき、『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)は自らの信念のまま彼らを助けるとのこと。
「あの子供たちの考えを改めさせたい。でも、それがすぐにはできないのは知っている」
 『善性のタンドレス』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は、オンネリネンの子供達が自分達を憎むようアドラステイアにて教育を受けていたことを知った。
 だが、ココロは諦めず、間違いに自ら気が付いてくれるまで、いくらでも助ける所存だ。
 さて、そのオンネリネンの子供らは街に向かってくる魔種と対する構えだという。
「正気かよ、あのガキ共じゃどう考えても勝ち目無いだろ」
 アドラステイアは子供達を見殺しにする気かと、『隻腕の射手』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は声を荒げる。敵陣営だとしても、子供が殺られる様など、黙っていられるはずもないのだ。
「今は目の前の厄災を倒しましょう」
 クーアが仲間達へと告げると、すでにアユラ付近にまで魔種らしき霧纏う馬が8本足の馬2頭を連れて飛来していた。
「あらゆるものを侵し、殺す瘴気……」
 旅人である『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は、故郷の神話時代の終わり、天より降った兇星が吐いたという、数多の神と精霊、ヒトを屠った厄災を思い出す。
「瘴気といい精気溢れそうな見た目と良いい、いかにもって感じ」
 一方、その見た目に惹かれた『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は魔種でなければと残念がる。
「私も天馬が欲し……って、何よラムレイ、その顔」
 司書の偽名を持つ『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は漆黒の牝馬の視線を感じて。
「冗談よ、私は見下ろすより見上げるほうが好きだから降ろしてやるわ」
「ともあれ、幻想の街に噂の魔種が入ってきたらピンチっす」
 魔種の天馬が街に入れば、人々が瘴気に飲まれかねないと、『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)はそいつを追い払って街の安全を守ろうと皆に促す。
「神がそれを望まれる」
 皆頷く中、イーリンもまた首肯し、跨るラムレイで駆け出すのだった。


 暗紫色の馬、ディジィズと呼ばれる魔種は人々に汚れた瘴気を振りまくべく、アユラを襲う。
 立ち向かうオンネリネンの子供達は圧倒的な強さに身を竦めるが、その間にイレギュラーズ達が割り込む。
「白騎士ヴァイスドラッヘ只今見参! 助けに来たわよ!」
「はいはい、お馬さんストップっす。此処から先行き止まり引き返すっす!」
 高らかに名乗りを上げたレイリーに続き、レッドが天馬らへと呼び掛けた。
「『騎戦』である!」
 訝しむような表情を見せたディジィズに、イーリンも一喝する。
「名のある馬と見受けるが、幻想に仇を為すなら見過ごすわけにはいかないわね?」
「ローレット……!」
 魔種勢はもちろん、オンネリネンの子供達のリーダー、バイロンもまた警戒心を強める。
「あら、奇遇ねぇ♪ 顔赤くしちゃってまたハグが欲しいのかしら、ふふ」
 いつの間にか夢魔の姿となっていた利香が近くへと迫り、鎧の上からたわわな胸を主張すると、バイロンは顔を真っ赤にしてしまう。
「……で、リカは何しれっとバイロン君達を篭絡しようとしてるのです?」
 そこに近づくクーアがそういうつもりならばと、ギフトで夢魔の姿へと変貌して。
「リカに付いてくるのなら、私からもご褒美、差し上げるのですよ? にひひ♪」
「終わったらクーアと一緒にたっぷりしてアゲル♪ だから良い子にしなさいよね?」
 少年も少女も例外なく夢魔の色気に惑わされかける。
「…………!」
「だめだだめだ……」
 ただ、そこでアドラステイアに残した仲間を想い、一線を超えぬよう自制する辺りはさすがというべきだろう。
「また会ったな。だが、積もる話はアレを倒してからでもいいか?」
「なにが言いたい」
 そこで、改造された加速装置で飛行するアルヴァが子供達へと呼びかけると、バイロンは仲間に警戒態勢を維持させて問いかける。
 聡明な子供達と評価するアルヴァ。初めて噂の子供達に出会うレッドも同じ印象を受けたようだ。
「獲物を横取りしに来たわけじゃあないっす。手柄はそちら持ちでいいっす」
 ローレットを敵と認識する彼らだが、レッドはそう思っていない。
「なんなら魔種相手にする無防備なボクを討っても良いっす。でも、後ろの街の人達を守る約束があるならそんな暇ないっすよ?」
 魔種どもは力あるローレットの登場を受け、迂闊に手を出さぬよう静観してこちらの強さを探っていたようだ。
「今だけでもいい、わたし達を信じて。共に戦いましょう」
 街を守る依頼を受けているのは、ローレットもオンネリネンも一緒だと、ココロは説く。
 それでも、子供達はローレットとの共闘に難色を示していたことで、ココロは空にいる魔種を指さしてから、その指をバイロンへと向けて。
「圧倒的能力差は見ただけで理解できているでしょう。あなたは仲間を無駄死させたいの? 此処に遺体を埋めたくないなら力を合わせるしかないのよ」
「家族がいるのだろう? 生きて帰るためにお願いだ! 協力してほしい」
 レイリーもまた、命の危険すらある戦いであるがゆえに、助力を求める。
「生きてさえいれば……生き方を選ぶ事が出来るんだ」
 命あっての物種。子供達の様子を注視していたアーマデルが重ねて諭せば、バイロンは頭を大きくかいて。
「仕方ない、今だけだからな!」
 子供達も今はやむなしと翼持つ白馬、聖獣ウイングホースと共に、空からくる魔種の対処を開始するのだった。


 ブルルル…………。
 小さく喉を鳴らした魔種ディジィズが怪しく目を光らせる。
 病原菌でできたともいわれるその体から発せられる大量の瘴気。
 一般人であれば、それらに触れるだけで病気を発症してしまうそうで、最悪行ける屍になってしまうという噂も……。
 そんな魔種を、アーマデルは睨みつける。
「俺に加護をくれた守神は毒と病を司るもの、だがあのように見境なく振りまくものと同じであるものか」
 なお、アーマデルの言う主神はどちらかといえば、『司り、それを抑制するもの』であり、ディジィズとは似て大きく非なる存在である。
 ヒヒイィィィーーン!
 空から駆け下りてきた敵はまず、イーリンに目を付けていた。
(早いうちに相手の間合いが知りたいわね)
 イーリンへと張り付いてくるディジィズは周囲を走り回って瘴気を拡散しようとする。
 それに触れるだけで体力が奪われる感覚。イーリンはその瘴気の範囲を図りつつ、闇の月でディジィズを照らして相手の運気を低下させてしまう。
 ディジィズの存在感に、体を震わす子供達は長物を手に攻撃を仕掛けていく。
「う、うう……」
「あぁ、いやああっ……」
 瘴気に蝕まれる感覚に、子供達が身をよじらせる。
 さらに、ディジィズが爛々と目を輝かせて彼らを敵視すれば、イーリンがすぐさまその射線へと割り込む。
「しっかりなさい、守るためにあなた達は戦うんでしょう?」
「あ、ああ……」
 触れるだけでも危険な相手とあって、攻めあぐねていたバイロン達は、イーリンの喝もあって子供達は距離をとりながらも白馬の天雷に合わせて中遠距離からの刺突、斬撃スキルで応戦していた。
「君達に私は生きて欲しいんだ!」
 一直線に駆けてくるディジィズの突進を、レイリーが受け止める。
 そうして、彼女は誠意と自身の意志を伝えようとしていたのだ。
(彼らが脅されて戦わされてるなら、何とかしたいわ)
 アドラステイアにおいて、仲間が捕らわれているのは、脅されているからだとレイリーは疑わない。ならば、ヒーローとして子供達は守るべきだと彼女は背中で子供達へと語る。
(私も負けてはいられないわね)
 利香も現状フリーとなったままのスレイプニルの引付をと、ウインクと魔眼を使う。
 ヒヒイイイイイイン!!
 8脚もある馬が暴れる図は実に騒々しい。
 それでいて、安定感ある走りと風を操る術によって並みの馬が到達できぬトップスピードで戦場を駆け回らんとする。
 レッドがそれらに神聖なる光を浴びせかけて迎え撃っていたが、利香はそれらを引きつけることで、スレイプニルが風に乗るのを防ごうとしていた。
 まず、倒すべきはスレイプニル2体。
 クーアは共闘する子供達を視界に捉える。今は彼らの邪魔をせず、その危機に備えるのみだ。
 その上で宙に浮遊する馬達に注意して接敵し、燃える術式で通常攻撃。一度攻撃すれば、クーアはすぐに距離をとることを徹底する。
 相手の高度が一定なら戦いようもあるが、クーアは現状、相手の動きを見定めながら攻める形だ。
 前線の仲間を中心に、ココロは福音をもたらして癒しに当たるが、やはり彼女も子供達が気になる様子。
 彼らにも癒し手はいるが、ココロは天使の歌も響かせて子供達にも癒しをもたらす。
「大怪我をしたら敵から離れるのよ!」
 相手の瘴気がもたらす病気についてはまだ情報が乏しいが、明らかに子供達に異変があれば、ココロは号令も発して態勢の立て直しも促していた。
 そんな中、ディジィズの抑えにと、アルヴァが当たっていた。
 禍々しさをも感じさせる敵へ、彼は一直線に向かって。
「空を翔けるのは得意分野でさ、俺と勝負しようぜ?」
 ブルルル……。
 望むところとばかりに鼻を鳴らした魔種は己の周囲に集めた瘴気を伴って突撃してくる。
 そいつに、アルヴァは反撃をと狙撃中で相手の鼻先をかすめるように銃弾を撃ち込む。
 ただ、その傷からも発せられる瘴気がアルヴァを襲う。
 攻撃の度にダメージも返してくる面倒な相手に、アルヴァも舌を巻く。
「だが、俺が立ってる限り、そっちには絶対行かせないさ」
 そっちというのは、スレイプニルメインに攻撃を行う仲間達のことだ。幸い、こちらには子供達の援護もあり、比較的アルヴァも楽に立ち回れてはいる。
 もっとも、その傷からも瘴気が子供達を襲っていたのは気がかりだったが……。
 今はいち早く取り巻きのスレイプニルを討伐したいところ。
 アーマデルは攻撃が子供らに向かぬよう身構え、機動力を削ぐべく英霊が残す音を聞かせていく。
 時に規則正しく、時に不協和音を奏でるアーマデル。
 多くの脚を持つスレイプニルは足並みを見出し、動きを止めてしまっていた。
「捉えたっすよ」
 レッドも足がもつれるスレイプニル1体へと近づき、そっと触れることでその体を蝕む術を与える。
 苦しみ悶え、暴れるスレイプニルへ、今度は利香が魔鞭を手にして。
「悪い獣には鞭で躾をするものよね?」
 強くその鞭でスレイプニルを打ち据える利香。
 それでも、鼻息荒く踏みつけてくる相手へ、利香は防御の構えから飛び上がり、雷を纏わせた鞭による3連撃を見舞っていく。
 ヒィィ……ン。
 見た目軍用場を思わせるほどに厳つさを感じるスレイプニルだったが、倒れるときは力なく、思った以上にあっけないものだった。


 魔種ディジィズの発する瘴気は恐ろしいが、それでもイレギュラーズは冷静にその間合いを図りつつ抑え、その取り巻きへと攻撃を加える。
 もう1体のスレイプニルもフラフラになっていた。
 皆攻撃を繰り返す中、アーマデルは相手を感電させ、足を狙って動きを執拗に止めていたのだ。
「逃がしはしない」
 飛び上がろうとするスレイプニル。
 ただ、アーマデルの一撃は空を飛ぶ敵にこそ効力を高める。
 蛇鞭剣によるアーマデルの一撃は、空高く巻き上げたスレイプニルの体を衝撃によって破裂させていた。
 一息つくアーマデルだが、残る魔種と対してさらに気合を入れる。
「ディジィズ、呼び声もあるのだろうか……?」
 少なからずその影響を及ぼす敵にも翼持つ白馬が、果敢に空から攻めていく。
「馬の背に乗るのは飾りではなくてよ」
 騎乗するイーリンは相手の降下を見計らい、しばし力を溜めてから魔力塊を剣として暗紫色の体を突き刺す。
 ブルルル……!
 だが、ディジィズはその傷を意にも介さずに襲い来る。
 周囲を汚染しながら迫りくる敵は、イレギュラーズだけでなく、後方から攻撃を飛ばすオンネリネンの子供達にも向いていた。
 それを察し、レッドが決死の盾で彼らを庇う。
「戦士といえど、子供が苦しむ姿は見たくないっす」
 風に乗るディジィズはその体でレッドへとのしかかる。
 押し潰されんばかりの衝撃だが、レッドはポーカーフェイスで苦痛に耐える。それでも、レッドは少しばかりパンドラが自身から漏れ出したのを実感していたようだ。
(この魔種の産まれも気になるけど、無差別に被害を及ぼすのなら……)
 レッドの代わりとなり、レイリーがどんな攻撃をも引きつけようと身構える。
「さぁ、来なさい誇りを失った天馬よ。私が倒してあげる」
 相手の攻撃をできる限り盾で受け流し、レイリーは屈せぬと立ちはだかった。
「あ……」
 オンネリネンの子供達は、そんなイレギュラーズに何とも言えぬ表情をする。一部はそれでも敵なんだと呟いており、識別によって範囲回復から弾かれた子供がいたことをココロは見逃さない。
「目の前に敵に集中しなさい!」
「「は、はい……」」
 雑念を振り払う子供達が回復を受け入れたのを確認し、ココロは合間を縫ってディジィズに悲しき亡霊の慟哭を聞かせ、呪いも与えていた。
「癒し手として負けないっす」
 ココロの癒しによって持ち直すレッドもまた、回復にと忙しなく動く。
「危ないと思ったら逃げろ。無茶はするな、無駄死には絶対するな」
 子供達の消耗が大きくなってきていたのに気づいたアルヴァがそう呼びかけ、しばし子供達へと遠距離からの援護に専念するよう願う。
 それだけでも、仲間の攻撃が当たりやすくなるはずだ。
「子供じゃあないっすけど、アルヴァも庇わせて守らせろっす」
 なお、そのアルヴァもレッドはしっかりと庇いに当たると、アルヴァはじっとレッドを見つめ、全力で子供達を守っていた。
「今の吾は止まらぬ……」
 突如、言葉を発する魔種。
 しばらくその猛攻に耐えていたレイリーだったが、不意の一撃に視界が暗転する。
「レイリー、気合い入れなさい、ここからよ!」
 そこで、射程ギリギリから魔力塊の剣を放つイーリンの声を耳にし、レイリーはパンドラを使って覚醒する。
「えぇ、司書殿! 貴女こそ、しっかり気合入れなさいよ!」
 私は盾だと自らを奮い立たせ、レイリーはなおもディジィズを押し留めようとする。
(侵攻……その意図は……)
 立ち回り続けるイーリンは、イレギュラーズが現状練達へと意識が向いていることもあり、幻想を襲ったのだと直感で察する。
「お空はダメよ? 悪魔に魂食われるか地獄の底か、アンタの選択肢は二つだけ」
 再び飛び上がろうとする魔種へ言い放つ利香はしっかりと自身に注意を引きつけつつ、クーアに視線をやって。
「ねえ? クーア……やっちゃいなさい」
「リカが盾なら私は矛。二人一緒なら百人力なのです!」
 硬直した敵の落下に合わせ、クーアは一呼吸の後に電流と炎熱の術式を相手にぶつけ、さらに跳躍してドロップキックを食らわせた。
「これほどとは……!」
 嗚咽を漏らしたディジィズは敢えて浮遊せず、今度は低空飛行したままその場から素早く抜け出し、南西の方角へと逃げて行ったのだった。


 逃した魔種ディジィズだが、幻想の守りが堅いことを知ったことで、しばらくは近づいては来ないだろうとメンバー達は考える。
「大丈夫そうね」
 アウラの街も、オンネリネンの子供達も守り切り、安堵するレイリーは皆と喜びを分かち合う。
「あんたら……なにが目的なんだ」
 問いかけてくるバイロンを始め、オンネリネンの子供達はメンバー達の真意を測りかねていたらしい。
「前に言ったのと変わらないわ。あなた達みーんな領地で面倒みてアゲル」
 最悪、偵察でもなんでもして帰ればいい、騙されたと思って、と利香は自分達の潔白を主張する。
「良かったら、私の領地に来ない?」
 レイリーもまた、子供達を受け入れると誘いかけるが、やはりバイロンらはアドラステイアに残した子供達が気になるようで。
「なら、もしも、困ったことあったら呼びなさい! いつでもどこでも助けにいくわ!」
「…………」
 首を縦には振らない彼らは仲間想いであるがゆえに、自分達だけが幸せになる状況を是とはできない。
「助けてくれたことは、感謝する」
 また、ローレットを全面的に許容できないといった態度が子供達からは感じられた。
「引き留める気は無いっすけど」
 最後に、レッドが去り行く子供達の背に呼びかける。
「まだこれからもこういう戦いを続ける気でいるっすか?」
 小さく頷くバイロン。彼らは仲間達を解放する為に傭兵業を続け、混沌をさまようのだろう。
 また会えることを信じ、イレギュラーズ達もこの地を去るのである。

成否

成功

MVP

クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 討伐目標のシナリオでしたが、オンネリネンの子供達との共闘もあって成功とさせていただきました。
 MVPは魔種を撤退まで追い込んだ一撃を繰り出した貴方へ。他にも数名の方に称号をお送りさせていただきました。
 今回はご参加、ありがとうございました。続編は少々お待ちくださいませ。

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