シナリオ詳細
シスター・テレジア拉致計画
オープニング
●裏路地にて
それは『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)が今日もまた地下競ロリババア場で大敗――本人に言わせてみれば裏通りの日の目の当たらない方々に喜捨――した帰り道の出来事だった。
「!!」
不意に後ろから伸びる腕。いけませんわわたくし神に仕える身――そんな冗談を言っている場合ではないことくらい流石の彼女にも解ったし、仮に言おうと思っても無理だったろう。何故なら目立たぬよう闇色のローブに覆われた腕は、彼女を抑え込むのと同時、声を出せぬよう彼女の口を覆っていたからだ。
(物盗り……ではありませんわよね)
今の自分が素寒貧であることは、建物を出た後からのしょげた態度で誰にでも判っていたはずだ。それに、この辺りの裏社会の人間ならみんな知っている……偶に大勝ちすると調子に乗って勝った分を丸ごと婆券に突っ込む彼女は、丁重に扱うに値する上客であると。
そうなるまでに簀巻きにされるのに慣れすぎて、思わず他人事のように状況を静観してしまったテレジアだったが、相手が平気で他所様の縄張りで“仕事”するような輩だと気付いたならばそうも言ってはいられない。
(困りましたわ、これ、わたくしをピンポイントに標的にしたものですわ――正直、心当たりが多すぎて犯人に見当がつきませんけれど!)
だがその時彼方から、9,500rpmのエンジン音が轟いた!
「な、何の音だ……!?」
襲撃者が反応し、音の正体に気付くよりも圧倒的に早く、彼はくるくると回転しながら家々の屋根の彼方でお星様と化す。
「まあアルプス様! お蔭様で助かりましたわ!」
感激して投影体の手を取るテレジアに対し、衝撃に気付いて停車した『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)の投影体は、はて、と不思議そうに首を傾げてみせた。
「今、誰かを轢いてしまった感覚はありましたが……よく解りませんが、お助けできたようで何よりです」
そして、そのまま走り去ってゆこうとスロットルを吹かせば、まるでゆかないでとでも言うように、シートに、テレジアの微かに震える手が添えられる。
こういう時、見つめるべきは投影体の目なのかバイク本体のどこかなのかテレジアには判らなかった。でも、とりあえず投影体にしておけばアルプスも解ってくれるだろうと踏んで。
「あの、お助けいただいたついでで恐縮なのですけれど……アルプス様。折角ですし、わたくしを襲ったのが何者なのか、ちょっとお調べいただけませんこと?」
●幻想王都、屋根の崩れた廃屋にて
ガラガラと音を立て、闇色ローブの男は瓦礫の中から這い出した。
「おお神よ、あれほどの事故にもかかわらず命ばかりはお助けいただいたことを感謝いたします」
そして、祈りの言葉とともに自己を治癒。男は恍惚の表情を作り、こんな言葉をつい洩らす。
「我が命が助かったということは、神も私に使命を果たすよう望まれていることを意味していよう。ご息女がこれ以上森林伯の名誉を貶めることのないように、ご息女を森林伯の下に連れ帰るのだ」
- シスター・テレジア拉致計画完了
- GM名るう
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月08日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談10日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●俗物シスター、捕まる
「そんな、わたくし信じておりましたのよぉぉぉぉ!?!?!?」
薄暗い王都の裏通りのひとつに、『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)の恨みがましい悲鳴が響き渡った。
揃って目を逸らす特異運命座標たち。テレジアを縛った縄の端を握らされ、恐らくはフードの下で複雑そうな表情をしているのだろう拉致犯たち。
「うっうっ、ごめんなさいテレジア。でも、私の酒代を肩代わりしてくれない貴女が悪いんですのよ」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が押さえる目頭に、涙の一滴も流れてなどいないことは明白であろう。『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)でさえ目を伏せ視線を逸らし、こんな言葉を彼女に残す。
「テレジア様の自業自得で御座います。ええ、確かにきっかけを作ったのは僕たちでしたから、責任は果たさねばなりませんでした。……乗り掛かった船とも申しますし」
「そうです、もっと胸を張ってください!」
『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)曰く、テレジアがいろいろとトラブルを起こしたのが原因でこうして特異運命座標が動く羽目になったのだから、それはパンドラ蒐集を助け世界を救う偉大な行為なのださっき適当に思いついただけだけど。
「ご安心ください、罪鎖様も『罪に罰を。しかし贖罪後には救いを』とおっしゃっております」
つまりどんなに罪深いテレジアにも明けない刑期はないのだと、『罪鎖の使徒』夕顔(p3p010243)も説くではないか! そう……これは彼女の罰であり、来たるべき救いの約束でもあるのだ!
「は??? わたくし、他の方に罰を与えられる謂れなどございませんことよ!? かの聖なんとかだかもこう言っておりますもの……『罪を犯した時、他者に罰を与えられてはならない』と!」
それって『他者に罰を与えられる前に自らを罰せよ』の意味じゃねえの? 森林伯とやらも気に食わない輩であるようだが、とりあえずこいつはもうちょっと反省してきたほうがいいんじゃねえのと呆れる『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)だった。テレジアが今まで割と無事だった奇跡にも、いい加減終わりを告げさせねばならないのではあるまいか。
「まぁ、私も従者として森林伯のところへゆくので安心してほしい」
『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)の囁きの中に実のところ『酷い目に遭わないよう弁護してやる』の意味までは含まれていなかったことに、ぱっと表情を明るくしたテレジアは気付いていない。
「気落ちしたテレジアちゃんにピザソースたっぷりの饅頭を食べさせて、溢れたソースを『事件解決の際は一生お酒を奢ります』の契約書で拭かせて拇印を捺印させるのもできたし、準備は万端ねぇ……」
「あとはテレジア嬢の借金をネタに森林伯を強請って、酒代なんて目ではないデカい財布を確保するだけでありますなぁゲッゲッゲッ」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)と『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が何かを企んでる時のテレジアもかくやという悪どいハムスター顔で顔を突き合わせ……次に晴れやかな笑顔を作ると連行されるテレジアに向けて大きく手を振ったのだった。
●前日談~こうなるまで~
全ての計画の始まりは、テレジアが拉致犯たちに引き渡されるしばらく前に遡る。王都メフ・メフィートの裏通りの片隅に、シオンは足を踏み入れていた。無気力な浮浪者。溜まる砂埃。にもかかわらず先程から虎視眈々とこちらを窺う視線が彼女にねっとりと絡みついているのは、ここが真っ当な身の上ならば凡そ近付こうとも思わぬ輩どもの縄張りだからだろうか?
鉄帝首都スチールグラードと比べれば、荒々しさの点では随分とまろやかではあった。けれども裏路地の秩序そのものがそう変わるわけじゃない。余所者がこういう場所を訪れた際に重要なのは、自分が彼らの友人だとアピールすることだ……“尋ねる”というよりは“協力を頼む”。それが受け容れられた後ならば、情報は向こうからやって来るだろう。
「なるほどな、2つ先の通りに金をバラ撒いてる奴がいたって?」
にやり。上手く居場所が絞り込め、シオンの口許が期待につり上がった。金は払った相手に便宜を図らせるには向くが、払われなかった相手にはむしろ逆効果なものだというわけだ。ただし、それはあくまでも長期的な話……今すぐに手っ取り早く効果を得るだけでいいのなら、やっぱり払うものは払ったほうが効率がいい。
「このままであればすぐにでも、裏路地の帝王として君臨できるでありますなあ……」
だから短期的な話だって言ったでしょエッダ>< 使う相手をきっちり見極めて小切手を握らせる彼女は実に手慣れていたが、だからって継続的に一帯を影響下に置こうと思ったら定期的に払うモノを払わなけりゃいかんのである。
「……コホン。ともあれ、軍人たる自分が仮想敵国の一つたる幻想の裏社会にコネを持てたのは、鉄帝国にとっての一歩前進であります。……ですからステイでありますバカヴィーシャ」
折角身銭を切って祖国に貢献したつもりがツッパリスタイルのヴァレーリヤに「おらっ、ジャンプなさい! テレジアを狙っている方の情報も、金目の物も、隠すとためになりませんわよ!」とか住民を脅迫されて台無しにされたら堪ったものじゃない。犯人が「折角賢者と名高い私の明晰な頭脳を活かす時がやって来ましたのにー!」などと猛言を吐いていたので取り押さえれば、ほんの冗談でしたのにとぷんすかするヴァレーリヤ。
……冗談の通じる相手でよかったね。いや、単に彼女もテレジア同様この辺りでいろいろとしでかしまくって、いろいろと“理解”されてしまっているのかもしれないが。
どこぞの秘密工作員といえども、こんな場所で動く以上、特徴くらいは誰かしらに把握されているものだった。エッダはそういった情報の集まる先からまんまと秘密を抜き取ったわけで……そこまでターゲットが明確になってくれるなら、次はアーリアお姉さんの仕事の時間ねぇ。
「お姉さん、ちょっとこの子に用があって……教えてくれたらこれ以外にもイイコトあるわぁ」
拉致未遂犯たちの居場所を知ってるはずなのにどうしても教えてくれない男をそんな言葉で誘惑しても、ここまでのあれこれのお蔭で目を瞑って貰えるようになっているのは都合がいい。それに。
「げっへっへ、そいつらならあっちの廃屋にいるぜ? おっと、案内はアンタが“イイコト”をしてくれたら……だ……」
勝手に腰に手を回してきた男を痛い目に遭わせても、変装はしてあるから報復される心配もないだろう。
では、この先は……夕顔の闇稼業を受け容れるための人格、『黄昏』の仕事だ。テレジアとはシスター仲間の『リゼット』として振る舞えば、それなりの便宜と同情と警戒を得ることができる。いろいろと話を聞くうちに、思わず荒事人格用の『逢魔』がテレジアを断罪したくなったりもしたが……ひとまずは為すべきことを為すのが先決だ。
「何でもしてあげるから……僕のお願い……聞いてほしいな?」
熱い吐息とともにそう囁いてやれば、相手が直接金を握らされてようが一帯の顔役だろうがお構いなしだった。かつての悪徳貴族ギルティア家のハニートラップ要員にとって、犯人が天義のエールリヒ森林伯なる貴族の手の神殿騎士だと名乗ったことを聞き出すくらいは容易い仕事! それに、どうしても相手が口を割ってくれないのなら……二人きりになった後、逢魔が罪鎖の牢獄に囚えて拷問にかければいいだけなのだから。
「俺は加減を知らねぇからよぉ? 死にたくなけりゃ情報吐きな!」
「……なるほど。その森林伯の話を聞く限り、私が大嫌いな人物のようだ」
恐らくはこうモカが漏らした辺りが、テレジアの運命を反転させた契機になったのだろう。モカとしては正直、テレジア自身も一度は痛い目に遭ったほうがいい御人だとしか思えない……ならば拉致犯たちに彼女を攫わせて、森林伯が借金を預かったところで奪還してやればいいのではあるまいか?
「そうと決まれば、その借金を如何に増やしてみせるかが奇術師の腕の見せ所で御座います」
不埒な輩は懲らしめて、人々に夢を与えることこそ幻の本懐。テレジアの借用書の貸主欄を眺め――幻は、敢えて生き馬の目を抜く借金取りの巣窟へと乗り込んでゆく。
「此度は、朗報で御座います」
何故ならそれはテレジアの不良債権を回収するのみならず、溜まりに溜まった利子に熨斗つけて返させる絶好の機会なのだから!
つまり幻が語ってみせたのは、こんな甘い囁きだった。
「なんとテレジア様のお父様は天義の貴族エールリヒ深林伯ことカール・ヴァルトグラーフ・フォン・エールリヒ様。取立て先として、このお方ほどふさわしい方はいらっしゃらないでしょう?
ですから、テレジア様には内緒でこのお方宛で借金を増額して借用書を新たに作るのです。偽造でもなんでも構やしません。そうすれば、倍どころではない借金が取り立てられるということで御座います。どうです? 皆様? この案に乗りませんか? 腐っても貴族。身体中の毛を全て毟り取ってしまうので御座います」
それをカールが支払えぬのならば、元通りテレジアに責任を負わせればいいわけだ。娘の罪は親の罪。親の罪は娘の罪。
自分たちの任務の裏でそんな謀略が進んでいるなんて、神殿騎士たちはこれっぽっちも思ってはいなかった。彼らが理解していることは、自分たちの任務を標的に勘付かれ、どうやら邪魔者がこちらを嗅ぎ回っているらしいことくらい。
「……のはずが、ご息女は今も遊び呆けているように見えるのはどうしたことか……」
「これは我々を誘き寄せるための罠ではないかと思われます閣下」
密かに囁き合う神殿騎士ら。テレジアは今も裏通りを遊び歩いていたが、まさか自分が襲われて特異運命座標を雇った直後に本気で遊んでいるなどとは神殿騎士たちも信じまい。
「だが――」
それでも……ひょっとしたらあのご息女ならと考えてしまう。
「どうも、明らかに偽物が別口でも動いているようだ。貴君らも耳にしていよう、明らかに声色の違う人物が、『普段ショップで300Goldで売られている私のパンツが、今ならなんと30Gold! 30Goldでのご奉仕価格!』などと、いかにもご息女の好みそうな背徳の宣伝文句を告げて回っていることを。あんな雑な手が、我々を誘き出すためのものであるはずがない。にわかには信じられぬことではあるが……あれはむしろ我々に向けたものでなく、この期に及んでどこかをほっつき歩いているご息女を呼び戻すためのものであるに違いないのだ……」
結論から言えば閣下と呼ばれた騎士隊長の消去法による自身でも信じきれない推論は、偽物――ヴァレーリヤのぱんつ行商に関しては全くの的外れではあれど、テレジアに関しては困ったことに正解だったのである。
「流石はテレジアさんですね」
アルプスのそんな台詞は感心しているようでいて、実際には呆れが大半だろうことは言うまでもあるまい。拉致未遂事件がテレジアに多分のストレスを与えているだろうことくらい、アルプスとて想像に難くない。……が、だからってどうしてカネを貸したら本当に遊びにいってしまうのか。
まあ、それならそれで好都合。
「これで神殿騎士たちはテレジアさんに食いつくはずですし、僕が貸しつけたポケットマネーはどうせテレジアさんから回収できずとも森林伯に押しつける結果になるのですから全てが丸く収まりますね」
そんなわけでテレジアのところに現れる、神殿騎士のご一行様。今日は手を上げて右左右、十分に安全確認してから標的を確保……したはずが、不意に鳴り響くスロットル!
「来るぞ気をつけろ!」
「慌てるな! たとえ誰かが轢かれようとも、燃料切れまで耐えきれば我々の勝……ま、待て話せば解る!!!」
●森林伯の頭痛
かくして自身の存在が完全に神殿騎士たちのトラウマになっていたのをいいことに、彼女を連れていくつもりならその前に彼女が返すはずだった借金を代わりに返せと迫ったアルプスだったというわけだ。
「い、幾らだ!」
「ええと……この証書の通りですが?」
「そんな額、すぐに用意できるわけがなかろ……待て無言で居寤清水を使おうとするんじゃない必ずやこの方の“身元引受人”にその旨取り計らうことにする!」
そんな遣り取りを経て彼らが森林伯の手の者であることが彼ら自身の口からも明かされて、無事にテレジアの引き渡しは行なわれた……というのが此度の顛末だ。
……そして、森林伯を襲う一連の災難の始まりでもある。
(何故私がこんな不肖の妾腹のために、これほどの大金を立て替えねばならんのだ……)
朝早くに“テレジア方の使者”を連れた早馬による報告を受けた森林伯カールは、大いに頭を抱えたらしい。
(こんなことになると解っておれば、最初から連れ戻すことなど考えずに“断罪”に舵を切っておくべきだった……だが、今更方向修正など効かん。私とあの娘の関係を各所に知られた今、安易に断罪すれば、実の娘を死に追い遣ったとして私の立場が危うくなるだろう……)
「……それで、娘の借金はそれだけで間違いないのかね?」
キリキリと痛む胃を押して面会に現れたカール。対して使者(身元を隠したモカだ)は……ちょっとこれは「はい」とは答えられないかもしれない。
「解っているだけでたったの1200万Gold(※註:アルプスが貸しつけた分含む)。本人が忘れた分を含めれば多少は増えるかもしれませんが、いずれにせよその程度、エールリヒ森林伯カール様ともあろう方にとっては端金でございましょう」
そんなわけあるか、そんな契約無効だ無効――そうあしらうのは森林伯には簡単だったろう。だがモカの言葉はそれを許さない。
「それでは彼女に金を貸している者どもが、ひっきりなしに押し寄せて騒ぎになる恐れがある。森林伯も静穏な日常を失いたくはないでしょう――」
……はぁ。
ローレット所属なので取りっぱぐれないとアピールし、手当たり次第に金を借りていたらしい娘の存在に、森林伯は深い溜め息を吐かざるを得なかった。
(ローレット相手に取り立てろ、そう突っ撥ねることも私にはできる。……が、そのことがもしも騒ぎ立てられでもし、身内の汚点すら雪げぬと見做されるようになれば。エールリヒ森林伯家の社交界での立場は完全に失墜するであろうな。
テレジアめ……我が娘ながら、悪魔の子よ! 私にできることがあるのだとすれば、立て替えを所定の日時までに区切り、“客観的にも十分な猶予を与えたにもかかわらず申し込まなかった”者が少しでも多く出るよう祈るくらいか――)
●奪還!
モカが持ち帰った森林伯の布告はローレットに貼り出され、貸主はシャイネンナハトまでに森林伯に借用書を持ち込むべしとされた。それを過ぎたものは森林伯には支払い義務はなく、借用書としての効力は失効する――と言いたいところだが、それは今後もテレジアが森林伯の庇護下に置かれるならば、の話であろう。
「いけません、何故そのように罪を犯されるのですか――!」
夕顔のどことなく棒読みな叱咤の声が、人気のない山道に響く。ガッシ、ボカッ。
「はっ! 貴族が大した護衛もつけずにこんなとこにいちゃ、どうなっても文句は言えねえぜ!」
テレジア護送中の馬車を横倒しにし、出てきた聖騎士を薙ぎ倒して高笑いする山賊の声がシオンのものに聞こえたのはきっと気のせいじゃない。
「おほほほほ、中々の上玉ではありませんの!(※口調変えてないヴァレーリヤ)」
「そこの女はいただいてゆきますわ!(※一応は変えたアーリア)」
「金目のものはいただいて……この馬車の宝石入れ、借用書しか入ってないであります戻し戻し(※口調は変えなかったけどわざわざ戻すついでに『我鉄帝赤星喧嘩上等』の書き置きを滑り込ませてクラースナヤ・ズヴェズダーに責任転嫁したエッダ)」
あと超高反応交通事故バイク。
――そして。
「いいことテレジアちゃん。テレジアちゃんは借金のカタに売られた先で、森林伯も手を出したらまずい裏社会のドンに気に入られたってことにしておくわぁ……」
電撃的なテレジア奪還作戦が無事終わり、きっちりとテレジアに言い含めていたアーリアが……そこまで説いたところでふと救出したはずのテレジアがいないことに気がついた。
「……あら? どこかしらぁ?」
きょろきょろと辺りを見回せば、離れたところの木の枝に、伸びた神殿騎士たちと一緒に下着姿で吊るされていたテレジアが一人。
「テ、テレジア嬢ー!! 誰がこんなことを!!」
エッダが慌てて駆け寄るけれども……実は全部シオンが見てたんだ。神殿騎士たちを吊るしていたエッダが、勢い余ってテレジアまで吊るしてたのを。
「あたしら、山賊よりもひでえことしてるんじゃねえか……?」
「私含め皆さん……悪人ばかりでは?」
シオンと夕顔は顔を見合わせて……とりあえず気にしないことにした。
さあ、あとはテレジアを回収し、意気揚々と帰路に就くだけだ!
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
なるほどー両方とも組み合わせちゃったのかー。
森林伯、布告出しちゃったらテレジアを手元に置いてなくても借金支払わないといけないよね。特異運命座標の皆様の中にアイテム『100万Goldの借用書』をお持ちの方がいらっしゃいましたら、2021/12/25 23:59までに『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)宛にご送付ください。送られた枚数次第で何か起こるかも……? 誰が何枚送ってきたのかちゃんとチェックしておきますね。
ちなみに今回参加者の一部に差し上げている『100万Goldの借用書』は、「あなたは借金しました」ではなく各自の称号が理由ですのでよろしく!
2021/12/09追記:
なんかこんなアイテム作った奴がいたので、その発想に免じてこいつの枚数も多少は考慮してやることにしてやろう……。だが二番煎じはないし、適当なアイテムを特殊化して5000兆Goldの借用書とかにするのも無効な?
https://rev1.reversion.jp/guild/520/shop/detail/2523
GMコメント
冒険『幻想種“教導”所』のパーフェクトエンドが発見されたため、本シナリオがトリガーされました。反応足りてる。
●シナリオの目的
・『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)を襲った犯人を探し出し、対処する
具体的には、犯人探しパートと、戦闘または交渉パートの2つをクリアする必要があります。
●犯人探し
犯人は、幻想王都メフ・メフィートの裏路地のどこかに潜んでいます。非戦スキル等を駆使して犯人を探し出してください。
犯人は余所者ですので、裏路地の住民の多くは皆様の調査に協力してくれるでしょうが、中には犯人に買収されて協力する住民もいるかもしれません。時には、暴力も役に立つことでしょう。
●犯人の対処
クエストをご確認くださった方はお察しでしょうが、犯人は天義のエールリヒ森林伯、カール・ヴァルトグラーフ・フォン・エールリヒの密命を帯びた神殿騎士たちです。神殿騎士といても暗部で動くタイプのようですが。
基本的には彼らを倒して森林伯に送り返すのが本シナリオの目的となりますが、彼らの話を聞いたうえで「そりゃあ森林伯からすれば、いくらテレジアが妾腹に過ぎないといっても自分の娘が破廉恥なことをしまくるのは沽券に関わるだろう」と判断してテレジアを突き出すことで皆様が一致した場合にもシナリオは成功となります。
カールは人間種優位を掲げる差別的かつ原理主義的な貴族で、これからの天義に相応しくない人物であることは確かです。ですので今回彼の思惑を挫くことが有意義であるのは当たり前なのですが、平和裏に交渉を進めれば彼はテレジアの借金(オープニング執筆時現在1100万Goldの借用書)ごと彼女の身柄を引き受ける羽目になるので、やはり彼の勢力を削ぐことに繋がります。
●注意
本シナリオの成功時に獲得できる名声は、『幻想』となります。ご注意ください。
Tweet