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シナリオ詳細

第2次不凍港防衛戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●不凍港に現れるもの
 シルヴァンス。大森林地帯の北部に住み、永久氷樹と共に生きる者達である。
 常冬のその台地では当然のように普通の手段では作物は育たないが……いろんな方法で生き延びる、逞しい者達の住み家でもあった。
 そして、今。そんな彼等の住む場所で1つの争いが継続中であった。
 不凍港。まあ、港と呼ぶには少しお粗末だが……それでもかなり貴重なその場所は、こっそりやってくる商人達との取引の場所でもあった。
 しかし、そこに今いるのは商人ではない。
 ましてや以前戦ったノルダインでもない。
 何やら黒いヌメッとした物体が、そこを占拠していたのだ。
「たいちょー、どうするんですか!?」
「ぼくらの船も占拠されちゃってますよ!」
「下手に攻撃したらドカーンってなっちゃいますし!」
「うーむむ……」
 防衛隊ゴーラビッツの隊長モーガンは、近づいてくるヌメヌメをパワードスーツの武装で撃滅しながらも唸っていた。
 ヌメヌメ。便宜上そう呼称しているが、詳細は不明。
 黒い泥のような生物の類と思われるが、その実態は不明。
 一定以上のダメージを与えると倒せるのは分かっているが……。
「何処かに母体がいるかもな、これ」
「えー!? そんな無理ですよたいちょー!」
「こいつらだけでも面倒なのに!」
「うーん……」
 ただでさえ長距離取引用の武装船グレートラビッツが占拠されており、取り戻さなければいけないというのに、ゴーラビッツの武装ではグレートラビッツを沈めかねない。
 だからといって放っておくとこいつらは陸を進んでラビッツの村に迫ろうとしてくるのだ。
 それがどういう意味かは、あまり考えたくはない。
「……仕方ないな。またあいつらに頼むしかない」

●ゴーラビッツからの依頼
「ラビッツの村から依頼があったです」
 チーサ・ナコックはそう言うと、依頼書を取り出した。
 可愛らしい文字で書かれたソレは、防衛隊ゴーラビッツの隊長であるモーガンのものだと分かる。
 シルヴァンスの部族の1つである彼等はイレギュラーズにも比較的好意的で、やることも穏当……故に、この繋がりはあまり切りたくはないものではある。
「具体的な仕事についてなのですが、不凍港と彼等の船グレートラビッツを占拠するヌメヌメの排除……となってるですね」
 ヌメヌメ。そう可愛らしく呼称されたモンスターではあるが、この生態は全く可愛くない。
 全長2Mほどの黒いヌメヌメした泥のような身体を持ち、人が頭から布を被ったらこんな感じになるのでは……といった形をしている。
 ゴーラビッツが戦って確かめた限りではコアのようなものは存在せず、しかし一定以上のダメージを与えると形を保てなくなりドロドロの半液体状のモノになり果てるのだという。
「死んでも迷惑だ、と書いてあるですね。同意です」
 どうやら生き物を取り込み溶かすことで栄養を得ているように見えるが、こんなおかしな生き物の集団が今まで海底に大人しく潜んでいたとも思えない。
 恐らく海洋方面から漂ってきた何かがモンスター化したんじゃないか……と、モーガンはそう考えているらしい。
「まあ、妥当な意見だと思うですが……大事なのはこの一点です」
 ひとまず、その正体についてはどうでもいい。
 母体が存在するのであれば、倒さねば永遠に危機は訪れる。
 ヌメヌメに占拠されたグレートラビッツを取り戻し、潜んでいる母体をおびき出し倒してほしい。
「グレートラビッツを占拠してる理由は不明ですが……でっかい獲物と思っているか、船には生き物がいる、を前提にしている可能性はあるです。その辺を前提にすれば、母体をおびき出す方策も掴めそうです」
 よろしくお願いするです、と。チーサはそう言って頭を下げるのだった。

GMコメント

ヌメヌメを倒し、武装船グレートラビッツと不凍港を取り戻しましょう。
ひとまず、ラビッツの村で防衛隊ゴーラビッツ、ならびにモーガンと情報交換が出来ます。
手に入る情報はこんな感じです。
・ヌメヌメはタフだが、動きはそんなに速くない
・デカい奴に執着する傾向がある。栄養価的な問題?
・近づかなくても寄ってくるが、近づくと海の中からザバザバ出てくる
・たぶん海底に母体がいて分裂か何かしてるんじゃないだろうか
・力を貸せるなら貸す。でもメイン武装がパワードスーツなので、グレートラビッツに取り付いてるのには攻撃できない。
・人参とか持ってない? 最近取引してる海洋商人、ボるんだよね。代わりに干した魚あげるよ
・グレートラビッツ動かしたい時は言ってね。下手に触ると主砲発射されちゃうから。あと航行エネルギーは人力だぞ

●グレートラビッツ号
大きさ:大型船レベル
武装:正面のラビッツブラスト(光線砲)
なお、ラビッツブラストはエネルギー全開でないと撃てません。
甲板、船長室、地下1階が船室と食堂。地下2階が倉庫と機械室。人力エネルギー発生器(自転車みたいなアレ)があります。
現在、そのあちこちにヌメヌメが取りついています。

●防衛隊ゴーラビッツ
・防衛部隊長モーガン
両手が巨大な拳になっているパワードスーツに乗っています。
可愛らしい兎の獣種です。結構口は悪いです。
・ゴーラビッツ隊員×10
全員兎の獣種。
アサルトライフル持ちのパワードスーツが3,アサルトライフルとコンバットナイフ装備が7です。
基本的にラビッツの村を防衛しています。

●ヌメヌメ
ヌメヌメした1.5M程の大きさの泥の黒い泥の塊にも似た何か。
泥の触手攻撃、ぶわっと広がって相手を呑み込み消化液を出す「呑み込み」攻撃があります。
呑み込み攻撃はそれでまだ殺せないと分かるとすぐに離れるようです。

●マザーヌメヌメ
海洋から流れてきたと思われるモンスター。全長10Mほどの黒い泥の塊。
基本的にヌメヌメと同じ性質を持っていますが、ほぼ無限にヌメヌメを生成できます。
ヌメヌメ含め海中での戦いに強い適性があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 第2次不凍港防衛戦完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)
天空の魔王
シオン・シズリー(p3p010236)
餓狼

リプレイ

●グレートラビッツを奪還せよ
「うんうん、いいニンジンだ。で、何が欲しいって?」
「とりあえず船の使用許可と……あ、あと干したお魚の中で一番大きいのを1匹だけ貰ってもいい?」
『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)はモーガンにお土産のニンジンを渡しながら、そんな交渉をしていた。
「別にいいけど、1匹だけとか。何かに使うのかい?」
「何に使うかって? ……うーん『餌やり』かな? あ、あとグレートラビッツの主砲発射用に一人お借りしてもいい?」
「いいよ。好きなの連れて行きなよ」
 アリアの交渉はアッサリと纏まり、ゴーラビッツから1人借りることに成功したわけだが……目的は彼等の船グレートラビッツ号の解放であった。
 ヌメヌメした1.5M程の大きさの泥の黒い泥の塊にも似た何か……その特徴そのままに「ヌメヌメ」と名付けられたモンスターは、グレートラビッツ号を占拠してしまっているのだ。
 そして、はぐれなのか何なのか……ラビッツの村に向かってきた1体をゴーラビッツが総攻撃で倒していた。
「えぇ……なにこれっ……ヌメヌメ? スライムみたいなもの、なの……? よくわからないけど、わかった!」
「わかったんですか?」
『マスターファミリアー』リトル・リリー(p3p000955)にリトル・ライがそんな疑問を呈しているが……実際、今回の問題は単純だ。
「とにかく片づけないと、グレートラビッツがまずいよ! あっ。あとニンジンは持ってないけど海洋には伝手があるし、相談してみるねっ!」
「そうですね。その為に手伝いに来ました」
「伝手かー。ま、期待してるよ」
 何やら興味津々の視線を向けてくるライから視線を逸らしつつ、モーガンはリリーに笑う。
「あのヌメヌメどもをどうにかしないと、こっちもどうしようもないしね」
「ヌメヌメ……なんかそのまんまのネーミングだね……とにかく! ヌメヌメをまずなんとかしなきゃだね! まかせて!」
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は「何か文句あるのか」とばかりにガンをつけてくるモーガンから視線を逸らしながらもそう叫ぶ。
「別にいいじゃんよ。僕らヌメヌメと近所づきあいしたいわけじゃないんだしさー」
「うん分かりやすくていいと思うよ?」
「ほんとかなー?」
 モーガンに絡まれているマリアをそのままに、『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)は撃破後のヌメヌメ……泥の塊のようなソレを観察する。
「しかしまあ、ヌメヌメ……確かにヌメヌメとしか形容のしようがない存在ですね。しかも倒しても消滅せず残留するとは……新手の環境汚染兵器か何かですかねえ」
「分からねえが…………どうにも手応えがなくてやり辛そうな相手だな。しかも親がいる限り無限に出てくるんだろ? さっさと倒して終わりにしちまいてえな」
 ハンナに『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)がそう答え、ハンナも同意する。
 確かに生き物かすら分からない敵相手では手ごたえなんてものはないだろう。
 ないだろうが……ハンナにはそれとは別に気合を入れる理由があった。
「さて、こちらの世界に召喚されての初依頼です。集中していきましょう」
「ヌメヌメ……触りたくない外見のモンスターだわね……とりあえず……食べられるのかしらね? これ?」
 ヌメヌメを突いていた『狐です』長月・イナリ(p3p008096)がそんな恐ろしいことを言うが……ヘドロみたいな匂いがするので、食べるのはちょっとそのままでは無理そうである。
「どのみち、このまま放っておけば港も集落も襲われそうだ。気合い入れていかなけりゃよ」
 気合を入れる『“侠”の一念』亘理 義弘(p3p000398)に、『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)も同意する。
「まぁ、詳しい事情は分からないけれど。困っているみたいだし、頑張って助けてあげましょうね。それにしても、混沌の海は不思議がいっぱいね……」
 海には陸の何倍もの不思議があるという。あるいはこれもその1つなのかもしれないが……ヴァイスたちはグレートラビッツ号へ向けて進撃を開始した。
「……最近、ノーザンキングス周りで色々あったけど、この関係は大事にしたいなあ……この依頼頑張らないとねっ」
 そんなリリーの意気込みは、ある意味で全員に共通の意見であっただろう。

●放て、ラビッツブラスト!
 グレートラビッツ号奪還作戦。
 それはまずは外部に取り付いたヌメヌメの排除と内部に入り込んだヌメヌメの駆除の二面作戦だった。
「こっちは船体に取りついたヌメヌメを排除しよう!」
「ええ、私はこちらから行きます!
 リニアドライブで飛行するマリアと、同じように飛行しているハンナが、互いにハンドサインで手分けしながら船体に取り付いたヌメヌメの排除に回る。
「船はよっぽどの攻撃でもない限り傷つかないでしょうが、念には念を。慎重にいくとしましょう……!」
 アルテマ・ルナティックを構えたハンナの攻撃がヌメヌメに突き刺さり、マリアも次から次へとヌメヌメを剥がしている。
 これが船に寄生しているようならかなり手間がかかっただろうが、所詮張り付いているだけだ。剥がすのは然程難しい作業でもない。
「じゃあ、私たちはエネルギー発生器がある周辺の確保に向かうわ」
「そこまでの通路はクリアにしとく。頼んだぜ」
「よーし、じゃあ船のお掃除を始めようか!」
 船内へ突入していくヴァイスと義弘、アリア、そして3人について行くゴーラビッツ隊員の4人にハンナも「よろしくお願いします」と返す。
 海中のマザーヌメヌメを刺激しないようにマリアもハンナも海面に近づかないようにはしているが、何があるか分からない以上は一刻も早くグレートラビッツ号を動かすしかない。
「こっちも船体を破損されない様に十分注意、距離を確認して攻撃を加えないといけないわね……なるほど、呼ばれた理由が分かるわ」
 イナリの狐雨斬・改が剥がれたヌメヌメを切り裂けば、泥と化したヌメヌメがドパッと海中に落ちて沈んでいく。
「あまり時間もかけたくないし、どんどん倒していかないとねっ!」
 リリーのショウ・ザ・インパクトがヌメヌメを引き剥がし、ライの狙撃がヌメヌメを泥に変える。
 リリーは海鳥のファミリアーを放ち剥がし忘れがないように注意もしているが、見えにくいところに張り付いているヌメヌメはとりあえずいないようであった。
「そんなに数も多くない! こいつらを排除したら私たちも早く中に向かおう!」
「ああ、片っ端からいくとしようぜ!」
 シオンの飛翔斬がヌメヌメを排除し、どんどん外側のヌメヌメは排除されていき……そうしている間にも、内部に突入した義弘たちの大暴れも始まっていた。
「天井や扉の隙間にも気を付けろよ! 何処に潜んでるか知れたもんじゃねえ!」
 言いながら義弘は超聴力で天井から落ちてくるヌメヌメを素早く感知してバスタースマイトVで吹っ飛ばす。
 ドパアン、と凄まじい音をたてて飛び散るヌメヌメは確かに迷惑極まりないが、今は気にしている暇はない。
「そうね、まずはエネルギー発生器を確保するところからかしら? そこから船内の安全地帯を広げていって、最終的には船体外部にまとわりつくヌメヌメを叩き落しつつ船内には入れないようにする……という風にしたいわね」
「ま、そいつが理想だな!」
「エネミーサーチには結構な数が引っかかってるよ! 正面に5匹!」
 ヴァイスに義弘が応え、アリアが真正面に来たヌメヌメをフルルーンブラスターで破壊する。
(うーん、ここに蠢いている小さなぬめぬめを駆除すれば、母体の方も何かしらのアクションを起こすと思うんだけど……エネルギーチャージする部屋を開放したら、お借りしたゴーラビッツのメンバーにエネルギーチャージをお願いしておこうっと!)
「なんかチャージ器のペダルを漕がされる予感がした!」
「合ってるぜ」
「げえー!」
 義弘にゴーラビッツ隊員が嫌そうな声をあげるが、そんなに嫌なら何故そんなシステムにしたのか。
 はなはだ疑問だが……とにかく、人力エネルギー発生器のある機械室に辿り着き扉を開けると、そこにもヌメヌメが数体いるのがアリアには分かった。
「此処は……4体!」
「了解だ!」
「やりましょう!」
 義弘とヴァイスが飛び出し、ゴーラビッツ隊員が「こんな所にまで入り込んでたかあ……」と嫌そうな顔になる。
 だが、すぐにヌメヌメは駆除され、マリアたちが突入してくる音も聞こえてくる。
 そうしてマリアたちが機械室に辿り着いた時には、漕ぎつかれたゴーラビッツ隊員がぜえぜえと倒れていた。
「よし、交代だ! 私はそう! 毎度お馴染みの人力エネルギー充填作業に入るよ!!! ふふ! 最早慣れたものさ! うおおおお!!! 雷装深紅!!! いつでもラビッツブラストを撃てるエネルギーを充填しておかねば!」
 人間発電機の如き動きを見せるマリアの様子に頷きあうと、義弘とシオンは海中に潜る準備を整える。
 その間にもラビッツの村からモーガンたちが応援に来て、慌ただしく発進していく。
 マザーヌメヌメと至近距離で相対するのが一番まずい。それが分かっているからだ。
 そして義弘とシオンが動き出すグレートラビッツ号から海中に潜っていくと……海底に「何か」がいるのが分かる。
 それから剥がれるように生まれ出るのは……先程倒していたヌメヌメだ。
「マザーを倒さなけりゃ、敵はいくらでもわいてくる。何としてでも仕留めてやらねえとな……!」
「ああ。見た感じアレがマザーってことで良さそうだな」
「よし、一撃入れたら連絡に行ってくれ。俺はアイツを引きつけながら誘導する」
「了解! それじゃ一発……!」
 焦燥破刃を構えたシオンが飛翔斬を放てば、マザーヌメヌメの巨体が海底の砂を噴き上げるような動作を開始する。
「浮いてくるか……! シオン!」
「任せろ!」
 即座に海上へとシオンは離脱し、船へと戻る。
 ゴーラビッツ隊員の投げた縄梯子を手早く登り、操船している仲間たちへと向かう。
「来るぞ! 手筈通りに!」
「マリアさん、エネルギーは!」
 イナリが伝声管で機械室に呼びかければ、伝声管からはマリアの気合の入った声が返ってくる。
「任せて! もしかすると二射、三射と必要になるかもしれない! 気合を入れるよ! 発射は操船している皆に任せる! ここからじゃマザー見えないしね……めちゃくちゃ揺れてるけど皆大丈夫かなぁ……」
 なんか切ないマリアの台詞と「頑張れねーちゃんすげー!」というゴーラビッツ隊員の声が聞こえてくるが……どうやらあっちは大丈夫そうである。
「行動指針に変化なし! 皆よろしくね!」
「了解です!」
 再びグレートラビッツ号にヌメヌメが取りつかないように警戒していたハンナもそう叫ぶ。
 念のため、いつでも魔砲を放てる準備は完了している。
「こっちも準備完了だよ!」
 船の穂先に近い場所……丁度主砲ラビッツブラストの発射口の上の辺りにいたアリアも叫ぶ。
 すでにグレートラビッツ号は反転し、いつでも迎え撃つ準備が出来ている。
「いつでもいいわ」
 甲板にヌメヌメが上がってきたらいつでも吹き飛ばせるように「薔薇に茨の棘遂げる」の準備をしているヴァイスも、そう答える。
「いよいよマザー相手! 気を抜かないでいくよーっ!」
 リリーとライの視線の先。
 そこでは義弘とマザーヌメヌメが浮上して、義弘が見事なバタフライでマザーヌメヌメと引き離しながらも引き付けている。
 リリーの放つカースドバレットがマザーヌメヌメに命中するが、それは援護射撃。
 マザーヌメヌメの、その巨大な姿。それを見据えながら、ヴァイスは困った子を見るように溜息をつく。
「もう、人に迷惑をかけてはいけないのよ? あなたたちの言い分は何かあるのかしら?」
 答えがあるはずもない。それは、そういう生き物であるが故に。
「全くもう、よ! お仕置きよ、痛くっても恨まないで頂戴ね!」
 義弘がグレートラビッツ号に乗り込み、いよいよ「その時」が来る。
 アリアが斜線上に投げた干し魚。それに反応するように、マザーヌメヌメの動きが一瞬止まって。
「さーて、準備万端、はっしゃー!」
 そんなアリアの声を合図に、ラビッツブラストが轟音をたてて放たれる。
 続けて第2射、第3射。アリアが頑張ってため込んでいるエネルギーを全部使う勢いで発射したラビッツブラストは……マザーヌメヌメを消し飛ばし、残ったヌメヌメも泥のようなものに変わって海底に沈んでいく。
「やった、倒したよ!」
 リリーの喜びの声があがり、ゴーラビッツ隊員たちも大盛り上がりの声をあげる。
「いざとなりゃあ、殴り倒すしかねえと思ってたがな」
「じゃあな、もう二度と流れてくるんじゃねえぞ!」
 義弘も太い笑みを浮かべ、シオンと拳を打ち合わせる。
「さて、船の掃除でも手伝ってやるか」
 シオンはそう言って、掃除用具を手に取る。
「倒した後も残るとかめんどくさすぎるだろ。強い弱いじゃなくて、あんまり戦いたくねえ相手だったな」
「うええ、終わったのはいいけど、なんだかぬめぬめでべとべと……お風呂入りたいよう!ねえどこかに温泉とかないの? いや、普通にお風呂でもいいけど!」
「村にあるぞ、ラビッツの湯。効能は美肌」
 モーガンがそんな事を言っているが……その横で、イナリがじっとヌメヌメの死骸を見ていた。
 どうやらまだ食べる事を諦めていないらしい。
「食べれない?先人たちを見習い、一度は挑戦してみないと駄目だと思うのよね……発酵して異臭がして、ネバネバの食材(納豆)、蛆虫が沸いたチーズ(カース・マルツゥ)、それらを生み出した人達は最初の恐怖に打ち勝って、口に含み、食材としてのこの世に生み出したのよ?無理と言う前に、一度は挑戦してみないと……」
 食材適正を付与してまで口にパクリと入れたイナリに全員が「げっ」と声をあげる。
 大丈夫だろうか。見守る皆に、イナリはくるりと振り向く。
「……岩海苔の味がするわ」
 ヌメヌメは岩海苔味であったらしい。
 こうして食の歴史にまた1ページが刻まれた。
 どのみち、ゲテモノではあるだろうが……それもまた、今日の成果であるだろう。

成否

成功

MVP

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
もう! 変なもの食べちゃダメでしょ!
でも面白ければ全部オッケーです。

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