PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ようこそ、ふれあいもふもふぱぁくへ!

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いちもふ
 過日、神光(ヒイズル)では大きな戦いがあった。
 人々の知らぬところで驚異となった神異との戦いは、勇猛果敢なイレギュラーズの功によりその幕を降ろし、『侵食』の解けた人々は『夢から醒めた』。
「よお、雲英。忙しそうだな」
 先日顔を合わせたばかりの男を街中で見掛けた 『怪異狩り』にゃこらす(p3x007576)は、何事かを部下へ差配している『検非違使』雲英・雨雀へと気安く声を掛けた。
 高天京壱号映画館襲撃の数日後、侵食の解けた彼は同僚と映画館に直接訪れ、世話になったと頭を下げに来、和解済みである。
 それからまた数日経過し、たまたま街中で見掛けた彼は、戦後の処理に追われているのだろう。とても忙しそうであった。
「猫殿。貴殿は散歩か?」
「そうだが……アンタはもう少し休んだ方がいいんじゃねぇか?」
 『忙しい』に対して肯定も否定もされなかったが、この雲英という男、見るからに仕事人間である。
「因みにアンタ、休日は何してるんだ?」
「警邏をしている」
「仕事じゃねぇか」
「個人的に、警邏をしている」
「……それ以外は?」
「鍛錬を行っている」
「…………」
 駄目だコイツ、早く何とかしねぇと。
 にゃこらすの目がスッと細くなる。
 雲英は彼が何故その様な顔をするのかわからない、と不思議そうに首を傾げた。猫はどんな顔をしていても可愛い。
「……雲英。アンタ、『ふれあいもふもふぱぁく』ってやつに興味はないか?」
 狐口面の下で小さく零れた「……もふ」という呟きを、にゃこらすは聞き逃さなかった。

●にもふ、さんもふ
 木の葉の隙間から、穏やかに暖かな陽の光が降り注ぐ。
 今日は、雲英から聞き出した休日。移動ふれあい動物園『もふもふぱぁく』へと共に出掛けることを約束した日である。
 待ち合わせは、上埜公園の入り口。
 雲英は朝議に顔を出してから行く(休日じゃないのか、とにゃこらすが再度目を座らせたが、雲英は休日だと言っていた。)とのことで、先に着いたにゃこらすは彼を待っていた。
 しかしそこで待つのはにゃこらすだけではない。赤茶の毛並みのねこの隣には、もっこもこの茶色い毛玉――ポメラニアンが四足でキリリと立っていた。 『大樹の嘆きを知りし者』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)――ポメラニアンの姿である。
 つい先程偶然出会い本日の目的を話した所、「同行しよう」と彼は尾を振ったのだった。
「ところで――今日は何でその姿なんだ?」
「わからない。気付いたらこの姿だったんだ」
 そういうこともあるらしい。
「お。来た来た」
「先日ぶりだ――……」
 ベネディクトの語尾が消える。
 それもそのはずだ。雲英も『同行者』を連れてきたのだから。
 しかも、ベネディクトがよく知る相手だ。

「こんにちは! 僕、白太郎です!」

 石畳にチャッチャッチャッチャッと軽快に爪音を響かせて、白い大きなもふもふが駆けてくる。
「すまない、待たせたか」
「いいや、待ってねぇさ」
「……何故、白薬叉大将が?」
「それは……」
「今日はとてもいい天気ですね! 僕、いっぱい走れるって聞いて、来ちゃいました!」
 雲英が説明する前に白太郎が元気に説明をした。
 言葉が足りていないと感じたのか雲英が「朝議に参加して帰るところで出会った故、誘った」と付け足した。朝廷の庭でゴロゴロ転がって暇そうだったので、確かドッグランなる場所で動物を走らせれると猫殿が言っていたな、と思ったのだそうだ。
 走れると聞いた白太郎は二つ返事で「行きます、行きます!」と飛び跳ねながら答えて尾をブンブンと振り――今に至る。
「広いだろうし、大丈夫だろ」
「わんわん! 楽しみです! 早く行きましょう」
「他にも知己に逢えるかもしれないな」
 そうだなと顎を引いた雲英が、はたと動きを止めた。
「探偵殿」
「げ。…………こんにちは、助手の皆さん! お出掛けですか?」
 大きな白猫を連れた 『名探偵』猫屋敷・スイ(p3y000218)は雲英に嫌そうな顔をするも、にゃこらすたち三人(匹)に笑顔を向ける。
 本日の趣旨を簡潔に説明すれば、スイはなるほどと頷いて。
「でしたら僕が他の助手さんたちにも声を掛けておきますね!」
「皆で走れるとうれしいです!」
「こういった場を好む者も多いだろう。助かる」
「探偵殿は?」
「僕は猫神様の視線が痛いので……では、僕はこれで。楽しんできてくださいね!」
 ふれあいもふもふぱぁくへと向かうよっつの背中を見送って。
 スイも踵を返すと、イレギュラーズたちを見つけてはもふもふぱぁくを薦めていくのだった。

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 にゃこらすさんとベネディクトさんのアフターアクションから、もふもふをお届けします。

●成功条件
 休日を満喫しましょう

●シナリオについて
 ヒイズルでの戦いから暫く後の、とある日の出来事です。
 にゃこらすさんとベネディクトさん以外の皆さんは、偶然上埜公園に来たかスイから話を聞いてやって来た感じになるかと思います。
 慌ただしい情勢の中、ぽかりと空いた休日の羽伸ばし。
 動物をモフモフしたり、動物と走って、心と身体を癒やしましょう。
 荒事は厳禁です!

●移動ふれあい動物園『ふれあいもふもふぱぁく』
 各地を転々と移動し、人々に癒やしを与えてくれるふれあい動物園です。現在はヒイズルの上埜公園に来ています。仮設小屋と動物たちそれぞれのふれあいスペース、そして広いドッグランが併設されています。ドッグランがかなり広いので、愛犬を連れてきて走らせているひとも多く居ます。
 動物は、ひよこ・うさぎ・モルモット・猫・犬が居ます。
 動物たちが逃げたり喧嘩をしないように、それぞれの動物に合わせた柵等で場所を区切られています。猫だけ室内です。
 動物用の各種餌が売られており、餌やりもできます。囲まれて人気者になれますが、とてもグイグイこられます。

●同行者
 雲英と白太郎が同行しています。
(EXプレを開けておきますので、走り回ったりモフモフしたい関係者さんがいましたらどうぞ)

・『検非違使』雲英
 基本的に家名の『雲英』としか名乗りませんが、本名は『雲英・雨雀(きら・うじゃく)』と言います。
 刑部省麾下検非違使として帝に仕えています。根が真面目で仕事大好き人間なので、言葉数は少なめ。刀を握っている時の方がテンションが高いひと。
 猫>もっと小さい生き物>狐・犬>他……な感じで喋らない動物が好きです(喋れるだけの知性がある相手には失礼にあたる、と考えます)。あまり感情の変化を見せずにモフりますが、狐口面の下の口角は上がっています。
 参考:https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6758

・『霊犬』白太郎
 神咒曙光の守護神霊の始の一柱の眷属、霊犬…………わあ! 僕のお話をしていますか!? そうですよね、そうですよね! うれしいです! 皆さんとポカポカのお日様の下でたくさん走っていいって聞きました! とてもうれしいです! 見て下さい僕の尻尾! いつもより元気でしょう!? 朝廷内だと走りすぎると怒られてしまうので、今日はめいっぱい走ります!
 どっぐらん? 動物が走る所? 僕は霊獣で白狼ですが大丈夫ですか? あ、どっぐは狼の意味なのですね? それなら大丈夫ですね! わぁい、楽しみです! うー、わんわん!
 ……ベネディクト(p3p008160)さんの関係者ポメ太郎のR.O.Oの姿。とても大きなわんわんです。

●その他『競争』
 ドッグランにて競争が出来ます。
 参加希望者は、プレイングのどこかに「★競争」と記して下さい。壱花の方で機動力と反応+ダイスによる判定を行います。(関係者の機動力と反応もダイスを振るつもりですが「この子の能力値はコレ!」と拘りがありましたら記してください。全参加者さんの数値と照らし合わせ、おかしくない範囲で採用します。)
 白太郎は参加、雲英はめちゃくちゃ速いので不参加の予定です。(強いお誘いがあれば参加します。)

●情報精度もふもふ
 抜け毛がびっしりくっついて、なんかちょっとわかりませんねぇ。
 安全なもふもふです。

 イレギュラーズの皆様にとって素敵な休日となりますように。

  • ようこそ、ふれあいもふもふぱぁくへ!完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年11月23日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)
闇祓う一陣の風
焔迅(p3x007500)
ころころわんこ
にゃこらす(p3x007576)
怪異狩り
アカツキ(p3x008034)
100年後の姿?
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使
セレサ(p3x008486)
猫耳ファーマー
ミーティア(p3x008617)
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)
しろねこぎふと
ルゥ(p3x009805)
モフが好き

リプレイ

●もふがもふ
 空が、青い。
 絶え間なく発生する世界の危機の最中でも。
 親しい者たちが『現実』に帰らなくとも。
 それでも今日も、空は青かった。
(休みてぇ~~)
 ベンチに座って空を見上げた『闇祓う一陣の風』白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)は、もう本っ当に疲れていた。休みが欲しい。出来れば長期休暇。でもその間にも仲間のことが気がかりで心は休まらない。精神的な休みが欲しい……どこかにそんな休みは――。
「ふれあい、もふもふぱぁく?」
 助手さん、お久しぶりですと声を掛けてきた探偵が、良かったらどうですかと薦めてくれた。
(しかし、もふもふか。そんなところへ騎士が行くわけには――)
 なぁんて思った時も、ありました。
「我が名は白銀の騎士ストームナイト! 人々の心によどむ闇を祓う一陣の風! 今日は、人間だけでなく動物たちの心にも闇が淀んでいないか確認しにきた! あくまで仕事である!!」
 来ました、ふれあいもふもふぱぁく!
 ようは知り合いに会わなければいい話である!
 しかし、悲劇というものは漸うにして起きるものである。
「そこなるはストームナイトか?」
「あれ? ストームナイトさんも来たのですか? 奇遇ですね!」
「ぐぇ、アカツキにべっさんにひめにゃこ!?」
 聞き覚えのある声に『100年後の姿?』アカツキ(p3x008034)が振り返った。そこに居たのはよく知る友人。アカツキの声を聞き止めて『勧善懲悪超絶美少女姫天使』ひめにゃこ(p3x008456)が振り返れば、白太郎の足元からぴょこんっとポメ――『あのスピードの向こう側へ』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)まで顔を覗かせる。続々と振り返る面々も、知っている顔が多い。ちょっとした大ピンチである。
 何か大きな白いもふもふと中くらいの黒いもふもふと小さな茶色いもふもふがいるなぁ~早速癒やされる~! なぁんて思っていたら、知っている顔がパレードしていた。こんな事ってある?
 心が弱かったら下唇を噛んで気絶していたかもしれない。でも大丈夫。ストームナイトは騎士だから。強い子だから。瀕死でも屈したり等しないのだ!
「一緒に周らないか?」
「……すまない、仕事で来ているのだ。では!」
 後はもふもふしている所でバッタリしなければ緩んだ顔は見られないはず! ストームナイトはバサッとかっこよくマントを翻し、颯爽とその場を後にした。
「行ってしまいましたね」
「職務に忠実なのは良いことだ」
「……いや、雲英さんよ、仕事ばっかもいいがよ。趣味の一つ二つねぇと歳喰って仕事しなくなった時にボケるぜ?」
 ストームナイトを見送った『ケモ竜』焔迅(p3x007500)の呟きに雲英が頷けば、『怪異狩り』にゃこらす(p3x007576)は思わず半眼になる。
「趣味ならばあるが」
「ほう? 鍛錬、は無しだぜ?」
「……読書だ」
「兵法書っていうのも無しだぜ?」
「…………善処しよう」
「でも身体を動かすのも文字を追うのも良いことですよ!」
「そうです、そうです! ああ、早く走り回りたいですね!」
 ノスノス歩く焔迅の隣をノッシノッシ歩いていた白太郎が興奮から跳ねるように歩きだし、ベネディクトは慌ててチョロチョロと歩き回った。
 現実の『ポメ太郎』は今のベネ……ポメディクトサイズであったが、R.O.Oでは白太郎と姿も名前も在り方も違う白太郎はとても大きい。きっと白太郎の視界からはベネディクトの姿が胸毛で見えない事が多いことを理解し、ベネディクトは少し白太郎から距離を取る。その方が楽しそうな白太郎の姿をめいっぱい見る事が出来た。
 そんな小さなポメディクトの身体が、唐突にふわりと浮かぶ。
「もふもふ!」
 ご機嫌にベネディクトのお腹を抱えたひめにゃこは遠慮なく彼の身体をもふる。
「おおっとこれはベネディクトさんでした! 失礼!」
「俺は気にしないので、もふりたい人はやってくれて良いぞ」
「む……! なんと!」
 失礼、とは言ったが、ひめにゃこに離す気はない。いいんですかー! ともふり倒し、その姿にアカツキは羨ましげな顔をする。しかし今、彼女の腕は『とある荷物』でいっぱいでもふれない!
「くんくん! アカツキさん、何ですか、それ!」
「ふっふっふ、これは秘密兵器なのじゃ」
「かっこいいですね!」
「じゃろう? 後でのお楽しみじゃよ」
「わーい、楽しみですー!」
 ウキウキ、ルンルン♪ ご機嫌にチャッチャッと爪音を響かせて、一行はぱぁく内を見て回るのだった。

「……何かやたらとデカい犬やら何やら居るけれども?」
 とりあえずぐるりと一巡り。足の向くまま気の向くままの散歩道。楽しげに響く声たちに視線を向けたミーティア(p3x008617)は彼等がまだ柵の中に居ないことから自身と同じ客と知る。あんなに大きな犬をもふったら楽しそう……と思わなくもないけれど、知らない人にもふらせて! なんて唐突に声を掛けたらただの不審者だ。湧き上がるもふ欲をぐっと抑え、餌を購入する。
「ゴリラ君は、犬は好きかね?」
 犬のエリアへ、友だちのゴリラとともに向かった。道中何度も色んな人に振り向かれたが、ゴリラ君は人気だなとミーティアは全く気にしなかった。
「ちょ……! キミたち、順番に! 待て、待てだ!」
 餌にわあっと集まる犬に、ミーティアのもふもふ尻尾に集う犬。
 あっという間にもみくちゃにされて、ミーティアは慌ててゴリラの肩へと避難する。もふにもふられるのはこれはこれで天国ではあるが、多勢に無勢というものである。そして持つべきものは友ゴリラである。頼りになる得難き友であった。

「わぁ。かわいい動物がいっぱいですね」
 探偵さんの言っていた通りだったと微笑むのは『猫耳ファーマー』セレサ(p3x008486)だ。いつもは畑仕事に精を出している彼女だが、動物好きなのはR.O.O内でも変わらない。
「まずはどうしましょうか……あ、うさちゃんが近いですね」
 ウサギのイラストが描かれている看板を見つけ、セレサは弾む気持ちで爪先を向けた。
 ピンと耳が立っている子、耳を垂らした子。
 黒っぽい目の子、赤い目の子。
 少し大きなウサギの後を一生懸命ぴょんぴょん追いかける小さな子、元気に走り回っては他のウサギに怒られている子。
「わぁぁあ!」
 たくさんのウサギたちに囲まれれば、セレサの頬は緩みっぱなし。
 そして、緩んでしまっているのはセレサだけではない。
(あああ~丸い丸いふわふわぴょんぴょん~)
 ウサギに囲まれたストームナイトも顔がでれっと……でれ……ハッ!
「……うさぎ飛びは膝に悪いからあまり良い鍛錬法ではないぞ! 真似しないように!」
 いけない。頭に手を立ててぴょんぴょんするところだった。
 こほんと咳払いをして立ち去っていく騎士を見て、セレサはそうなのかぁと少し賢くなった気持ちでウサギを撫でた。
 セレサが次に向かったのはひよこゾーン。
「うむ、ひよこ達よ。たくさん食べて、大きく育つがいいぞ!」
 先程見掛けた騎士がひよこたちに餌を撒き与えていたが、しゃがんでひよこを撫でながら見上げていたら……騎士はセレサに気付いてそそくさといなくなってしまう。
(恥ずかしがり屋さんなのでしょうか?)
 ぴよぴよぴよ!
「ぴよぴよぴよ。ふふ、可愛いですね」
 声を真似て、微笑んで。餌をそぉれと撒けば、あっという間に周囲を黄色に囲まれる。
 食べざかりのひよこたちは、もっと頂戴(・◇・)! とセレサを囲んでぴよぴよ大合唱!

「いきたいところはあるか?」
「猫だな」
「猫か」
 ある程度予想していた答えが返ってきて、ベネディクトたちと別れて雲英を案内していたにゃこらすはそれじゃあこっちだなと猫ゾーンへと向かう。
「あ、こんにちは……!」
 至福の時間に浸りながらも戸の開く音に顔を上げた『しろねこぎふと』ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)は、新しく入ってきたにゃこらすたちへも笑顔を向ける。
 いつも白子猫たちを連れている彼だが、知らない猫が突然現れてはこのぱぁくの猫たちが吃驚したり喧嘩になってはいけない……と、今日はぱぁく内のねこたちを愛でるだけ。用意されているクッションに腰掛けて、膝の上に乗っかって寛いでいる猫を慣れた様子で撫でていた。うちの子が一番可愛いけれど、他の猫だってやっぱり可愛い。愛くるしい仕草とふあふあ毛並みに貴賤はないのだ。
 邪魔するぜと入ったにゃこらすと軽く顎を引いて会釈をした雲英も、思い思いの場所に腰を落ち着け、後は猫たちの自由にさせる。登りたければ登ればいいし、戯れたければ戯れればいい。戯れに振られるにゃこらすの尾には、元気の良い子猫が早速釣られにいっている。
「そういえば……お前さん、あの探偵の少年とはどういう関係なんだ?」
 げって言われていたぞ。なんかやらかしたのかよとからかい半分で告げてやれば、膝をよじ登る猫へと視線を向けていた雲英が顔を上げ、少し悩むように顎に指を掛けた。
「特には。……現場でよく目にする故、職務質問は少し。いや、度々」
 怪しきは疑ってかからねばならない職業ゆえに、会えば必ず声を掛けねばならないのだ。
「探偵と警察ってやつか」
「俺個人としては嫌いではない」
 なるほどなと口にして、にゃこらすは猫を撫でた。
 暫く猫を堪能すると、ふたりは猫ゾーンを出て次のもふの元へと向かう。
(あのふたり、猫さん好きなのかな……)
 ひとり残ったねこは、後から話してみようと決めた。
 そう、後から。
 今は目の前の猫たちと遊ぶことが優先だ。
「猫さん達、ごはんだよー」
『にゃー』
『にゃーーー!』
「……って、うわああ猫さん達可愛いすごい……!」
 我も我もと集まってくる可愛い洪水に、ねこは押し流されてしまいそうだった。

 もっもっもっ、と口と鼻をヒクヒクとさせたモルモットたちがちょこちょこ歩いては顔を上げている。
「もふもふー!もふもふがいっぱいー!!」
 そんなモルモットたちに歓声を上げ、わーっと走り寄った『モフが好き』ルゥ(p3x009805)は至福の表情でモルモットへと抱きついた。
「こっちだとリチェがいないから、ちょっと寂しかったんだよね」
 リチェ――リチェルカーレ。現実世界のルゥの愛モル、ふわもこ可愛いジャイアントモルモットのことである。通常のジャイアントモルモットよりもサイズもジャイアントだ。
 両手でそっと持ち上げて頬を寄せれば、ふかりと柔らかな感触が頬に嬉しい。
 先客は数人。その中でも目立つ騎士が涼しい顔――いや、かなりにやけた顔で餌を上げているのを見て、ルゥはあっと思い出す。そう言えば、餌を買ってきたのだった。
「……っと、このように餌を与えるのだぞ! わかったかね少年少女!」
「おいでー!」
 ストームナイトが去っていくのと同時に、いそいそと膝の上にモルモット用の餌を広げれば――。
 だだだだだだだだー!
「ぴょ!?」
 想像以上に寄ってきた小さなモルモットたちにびっくり!
「ルシェの指はご飯じゃないのよ!?」
 思わず素の口調に戻ってわたわたとモルモットたちと戯れるルゥ。
「……小さい命は、少し恐ろしいな」
「なんだ、アンタ案外繊細なのか?」
「あ! 雲英お兄さんたちもこの子たちと遊びに来たの?」
 立っていると歩くのも恐ろしい……としゃがみこんだ雲英に近付いて。
「この子なんて、なでなでしてもらうのが大好きみたいだよ! ね、よかったらなでなでしてあげて」
 両手ですくったモルモットを差し出せば、遠慮がちに手が伸ばされた。

 ――ピンポンパンポーン♪
『もうすぐドッグランにてレースを開催いたします。参加希望の方はお早めに受付までお越しください。繰り返します……』
 園内アナウンスに顔を上げたセレサは応援しにドッグランへと向かい、ストームナイトは今のうちなら見られる確率が減るのでは!? ともふもふを堪能しにドッグランとは反対方向へと向かう。
(競争……混沌に召喚される前は、めったに走れなかったっけ)
 ねこはぼんやりとだけれど召喚前の記憶を有している。
(今でも、そんなにだけれど)
 混沌の、現実世界の自分も体力がある訳ではない。けれど、R.O.Oでなら――。
 皆と全力で一緒に走る喜びを味わいに、ねこもドッグランへと向かうのだった。

●もふも走れば
 突然ですが! 雲英氏から実況を頼まれたので、此処からは実況のイチ・カーがお送りいたします! 雲英氏には偶に解説をお願いしたいと思います。
 空は皆様のランニングを応援するかのごとく快晴、芝の状態は良好。わんわんではない方もいらっしゃいますが、それはそれ!
 左から順に選手の紹介です。
 一番小さな四足歩行、茶ポメラニアンのベネディクト選手。
「やるからには全力で一位を狙いに行くぞ!」
 気合充分ですね。
 続いてサムライ少年、ルゥ選手。
「全力疾走満喫するよ! ベネディクトお兄さんとにゃこらすお兄さんも一緒に走るんだね! 一緒に頑張ろうね!」
「おう。俺も負けねぇぞ。――雲英! 一位になったやつになんか美味いもんでも奢ってやれよ」
 にゃこらす選手に雲英氏が頷きを返しております。
「僕は少し大きいですが、勝負は勝負。手加減しませんよ。むん!」
 バサリと翼を広げてみせるのは焔迅選手。やる気に満ちていますね。彼は犬……なのでしょうか?
『竜、なのだと聞いている』
 なるほど。竜、だそうです。
「ブラッシングしてもらったので、僕が勝ちます! 勝ちますよ!」
「白太郎はしにゃこと妾によって軽量化されたのでな。妾と白太郎ペアの優勝は間違いないのじゃ!」
 白い大きなもふもふ……ヒイズルでは知らぬ人は居りませんね! 白太郎選手とアカツキ選手ペア。
「まあ、勝つのはひめですけどね! ひめが勝ったら白太郎は1日ひめのタクシーです!!」
 異国の姫がお忍びで来られたのでしょうか? ひめにゃこ選手。お家(朝廷)の許可を取ってくださいねー!
 お隣、白子猫を連れているのはねこ選手。白子猫さんたちはねこ選手にぴったりくっついて走ってくれるそうです。
「白子猫さん達と、頑張るね!」
「……ゴリラ君はやはりダメだったよ」
 とても魅力的なもふもふ尻尾の持ち主、ミーティア選手。ゴリラ君も応援しているよ、頑張ってー!
 さあ、皆さん。準備は良いですか? まもなくスタートですよ。

 わんわん揃ってー、よーい、スタート!

 まず飛び出したのは茶ポメ。ベネディクト選手! 続くにゃこらす選手も速い速い! ベネディクト選手、足の長さを思わせない駆けっぷりです!
『俺より速そうだ。刑部に欲しい』
 刑部省は捕物がありますものね! ……だ、そうですよ、ベネディクト選手! その足を活かしてみませんか!?
 にゃこらす選手を追うのは、黒いもふもふ竜、焔迅選手! きっと飛ぶのが一番速いのでしょうが、ここは駆けっこの場。翼を畳みながらも、良い駆けっぷりです! 翼を広げると他の走者の邪魔になると考えているのでしょう。優しい方ですね!
「ほれ、白太郎! しにゃこを追うのじゃ!」
「うん? アカツキさん今なんか背中につけました?」
「わあ、きゅうりです! 美味しそうなきゅうりです!!」
「わはははは!! 良いぞ良いぞ!」
「うわーーーーー!」
 ……後続は一波乱ありそうですね。アカツキ選手にきゅうりをぶら下げられたひめにゃこ選手――を、口元を舐めながら追いかける白太郎選手! 10尺もの巨体が迫りくる! ひめにゃこ選手、必死の表情で走る走る走るー!
「はぁ、はぁ……すごい、皆早いね……!」
 ねこ選手、苦しそうだが楽しそう!
『巻き込まれないように頑張ってほしいところだな』
 そうですね、雲英氏。ルゥ選手もねこ選手も、安全を見極めながら全力で走っているようです。
 ……っと、後続に気を取られている間にベネディクト選手、最後の直線だ!
「ッく、追いつけねぇ!」
「此処からはラストスパートだ……!」
 ベネディクト選手、回転した!? ボールのように転がるベネディクト選手! 更に加速するのか、ベネディクト選手! にゃこらす選手とぐんぐんぐんぐん差が開く! 速い速い速い! 速い等という時限を超えている! 彼は弾丸か? それとも流星か!? 『あのスピードの向こう側へ』は伊達じゃなかった!! ベネディクト選手、今、圧巻のゴォォォォル!
 一着はベネディクト選手、ベネディクト選手です。
 続いて二着、にゃこらす選手! にゃこらす選手も良い走りを見せてくれました!
「う、う~ん……目、目が。ど、どうだ? 勝てたか?」
「っと、大丈夫か?」
 悔しさを出すよりも先に、ふらつくベネディクト選手を支えるにゃこらす選手。
「次は負けねぇぞ!!!」
「全力で走り合える相手がいたから俺も全力を出せたよ」
 うーん、和みますねぇ。
『……後続が』
 おや、後続に動きが……いや、これは……。失礼、少々言葉を失ってしまいました。
「うわー! 僕まで巻き込まれそうですー!」
 白い毛玉から必死に逃げる焔迅選手! ……ミーティア選手の姿が見えませんね。
『既に取り込まれた後だ』
 時既に遅し! その場面を見たかった!
 どうやらひめにゃこ選手を追いかけていた白太郎選手が事故を起こし、皆仲良く(?)毛玉となって転がっているようですね。恐ろしい……。ねこ選手とルゥ選手は無事なようで良かったです。
 異物を取り込んだ毛玉がコーナーを曲がりきれない! 柵にぶつかりに行っている間に焔迅選手がゴール! ねこ選手とルゥ選手も仲良くゴール!
「…………慣れない事は、するもんじゃ、ないな」
 毛玉からぽんっと吐き出されたミーティア選手も、そのままゴール! 大丈夫ですか、立てますか!?
 ひめにゃこ選手と白太郎&アカツキ選手も、今ゴォォォォル!
 ……いやぁ、大波乱の競争でしたね……。

 そうして、ドッグランでの熱い競争は終わった。
「おめでとうございます! お疲れさまでした!」
 見ている側からすればとても楽しかったようで、セレサがはしゃいだ様子で走者たちへ声援を送る。
「僕に乗りたい、ですか? 良いですよ」
 観戦していた子どもたちから人気を得た焔迅は、掛けられる声にふたつ返事で頷いた。ひとりを乗せればまた次の子どもたちが寄ってきて、いつのまにか列が出来――飛んだり駆けたり、なかなか休憩が取れない時間が続く。
「うわああん、せっかくツヤツヤになった僕の毛があ!」
「すまんのじゃ、白太郎。ちと調子に乗りすぎたのじゃ」
「お疲れ様です、白太郎! この背中にくっついたきゅうりを差し上げましょう!」
 ばりぼり。
「ほれ、白太郎。もっときゅうりがあるぞー!」
「食べてる間にブラッシングもしてあげますよ!」
「わたしも白ちゃんブラッシングしていい?」
 大きな身体の白太郎は毛量もとても多い。手の数はあるだけ助かる。
(白太郎を抱きしめて顔をうずめたい……)
 ブラッシングされるさまをジッと見つめるのはストームナイトだ。
「俺ももふもふするか?」
「えっ、いいのか!?」
 思わずベネディクト(きゅるんとした愛らしいポメ姿)へと勢いよく顔を向けてから、素が出ていた事に気付いてハッとしたストームナイトは、頬を染めながらも慌ててこほん、んんん! と咳払い。
「う、うむ。では……少しだけ」
「雲英君だったかな。君は狐が好きなのかね?」
「俺か。嫌いではない――好む類だ。屋敷内に稲荷がある」
 そうかそうかとミーティアは機嫌よく頷く。狐好きには悪人は……まぁ居るけど、眼前の男は取り締まる側の者だ。
「折角だ、ボクの尾を触らせてあげようじゃないか」
「……何、と」
 思わず雲英が聞き返す。相手は人型で、異性だ。
「なに、遠慮はいらんさ」
「雲英よ、異性に恥をかかせるのはよくねぇぜ」
「成程。では、失礼して」
 にゃこらすの助言に頷いた雲英はミーティアの尾を控えめに撫でた。猫の尾よりも毛量が多く、ふかふかだ。「ふむ」と漏れる声は、満更でもないそれであった。
「雲英さん、白子猫さんももふる……?」
 満足そうな雲英に、ねこも連れている白子猫をそっと差し出す。
 伸びた指先が少しだけ躊躇うような素振りを見せたが、柔らかく子猫の喉をくすぐった。ごろごろと響いた喉音に、僅かに瞳を和らげるように伏せがちにする様を、ねこは満たされた気持ちで見守った。
「な。たまにはこういう日も悪くねぇだろ」
「ああ、悪くない」
 慈しめる存在が近くにあり、穏やかな存在と賑やかな気配。
 これもひとつの幸せの在り方なのだろう。
 もふもふは仕事人間も神使たちをも癒やしてくれる。
 誰かが唱える「また来ようね」の声に、各々しっかりと頷いた。
 伸ばせる時に羽根を伸ばし、癒せる時に心を癒やす。
 明日やまたその先に、救える誰かの手を握るために。
 世界を護るために、確りと剣を握れるように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまです、イレギュラーズ。
明日明後日頑張るためには休息も必要なので、仕事の内です!
癒やされた皆さんはR.O.O決戦も頑張れるはずです! そうですね?

ベネディクトさんの反応値と称号を三度見くらいしました。
良いもふもふをありがとうございました!

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