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シナリオ詳細

<Closed Emerald>次起き上がるまであとどれくらいの夜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●2000分の1の焔
 ぐちゃ。
 ばき。
 どか。
 べしゃ。

(怖くない。怖くないよ)

 電脳世界の中でひしめき合っているのは、たんなるデータの塊に過ぎない。
 有象無象のデータ『だったもの』の群れが、目の前でうごめいて殺し合いをエミューレートする。

 残り■/2000体。
 ディスプレイの隅には残り人数が表示されていた。
 数字は一刻、刻一刻と減っていった。敗れたアバターは塵になって消える。

『パラディーゾ』は丁寧にかたどられた彼らのデータをもとにしているのであろうけれども、この悪趣味な場所に関しては違う。
 これは敗者復活戦だった。
 採取され、加工され、捻じ曲げられたデータの、「役に立つには見込みの薄い」データの群れ……。
 けれど、002番に限って言えば。……落ちこぼれた理由は簡単だった。

 どうして傷つけあうのだろう?

『反撃しなかったから』、だ。コピーされた因子002番は与えられた命令に逆らい、身を守る以上の反撃はしない。殺す「べき」と設定されていたライバルのデータですら、倒したいとは思わなかった。
 怯えているように見えたデータの一部が、助けを求めているように思えたから?
 ううん、きっと、理由なんて、ない。
 けれど、彼らは容赦してくれない。
 恐ろしい怪物のかたちをとった、真っ黒なデータのかけらは、容赦なく生まれたてのデータを焼き尽くす。リスポーンキル。

「002番、死亡」
「011番、死亡」
「113番、死亡」

……。

 ここはデータの群れの処分場。役に立たないデータを峻別し、見込みのあるものだけを気まぐれに起こして兵士に鍛え上げるための、残酷な孵化工場。

……?
 痛くない。
 002番は起き上がった。
 なにか、ふわふわと温かいものが身を守っている。

……心に残るこれは、だれの声?
 もう起き上がらなくていいのだ、と誰かが言った気がした。
 よく頑張ったな、と。
(でも、おかしいんです。いっしょうけんめいに闘ってたけど、見てください、僕の毛皮は傷一つついてない)
 誰かの温かい手が頭をぽんぽんとなでる。
『ごめんな――』
 それは。
 その声は……。

(! 深刻なエラーが発生しました。)
(記憶の処理……データを消去しています)
(インプリンティング)
(生まれたことへの意味を付与しています……)
(Completed)

「そっか」
 緑色の双眸がきらきらと燃えるようにきらめいた。2000分の1の奇跡。モニタ越しにその存在を、見守っていてくれた誰かの存在を感じ取って、002番は笑った。
「ありがとう、『お母さん(マザー)』。ずっと、見ていてくれたんですね……」


 翡翠の国――迷宮森林。
「はじめましての挨拶をしないとならないですね。僕は『天国篇第三天 金星天の徒』。
そして、生まれたばかりの002番、です」
 2番は、ぺこりとおじぎをする。エメラルドの双眸がきらめいた。吹き出した炎があたりを舐めるように覆い尽くしていく。
「っと。これだけ警告すれば、大丈夫のはずですね。住民のみなさんにも、盗賊の人にも、避難するように言いましたし。
それでも巻き込まれたら? しかたないですよね。
ここにいるあなたたちも、覚悟をしているんですね」
 2番と名乗る人物は、……『燃え尽きぬ焔』梨尾(p3x000561)と、見た目だけはそっくりな姿だった。けれども、やっていることの残酷さは彼とは違う。ぜったいに。
「僕は、母さんのお手伝いのために、お使いに来ました」
 そう言って、2番は手を振り上げる。ごうごうと、あたりが燃え始める。炎にまかれた大樹がめらめらと燃え始め、怨嗟の声を上げた。
「ああ、怒っている。当然だと思います。でも、僕はマザーのために、頑張らないとならないので」
 その一撃を、彼は受け止める。
 どすり、と貫いた根を受け止めて、けれどケガはない。
 彼は、不死鳥のように何度でもよみがえるのだ。
「これが、大樹の嘆きですか……でも、きちんと片付けないと、ならない、ですから? っ……」
 2番は頭を押さえた。
 そう。そのために生まれたのだ。
「さあ、勝負です。母さんのために!」
 僕の炎が尽きないのは。
 僕の命が尽きないのは。
(誰かのため、それは、とてもとてもやさしいマザーのおかげ)
 そうでしょう?

GMコメント

●目標
・002番の撤退、あるいは戦闘続行不能

●場所
迷宮森林の一角。

広い森であたりは炎が燃え広がる寸前でまるで夕日のようです。

●敵
『002』番
「ここで撤退するわけにはいきません。僕には、マザーがついているので!」
 写し取られ、バグを埋め込まれた書き換えられたアバターです。
 名前は与えられませんでした。
 まとっている炎のオーラ、『何か』が強烈な守護をしており、闘っていても痛みを感じないようです。見た目にも苦しそうに見えません。ダメージを与えられていないわけではないようですが、『死なない』あるいは『死んでもすぐに炎から復活する』ようです。

 目的は、「マザーの役に立つこと」です。それ以外にもある気がしますが、あまり覚えていないようです。
「……あなたたちの番号はなんですか?」
「選抜を乗り切ったんですか?」

 防御・反撃型。
 心情として、何らか制御が施されてはいるようですが、もともとの正義感が残っているようです。一方的に攻撃をしかけるときや、自分の行動が揺らぎ、倫理観が伴わないと感じたときに動きが鈍ります。

大樹の嘆き×30
 燃えさかる炎の中で暴れ回る木々です。無差別に炎の鞭を振るいます。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●重要な備考
 <Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
 但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●『パラディーゾ』イベント
 当シナリオでは『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <Closed Emerald>次起き上がるまであとどれくらいの夜完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年11月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドウ(p3x000172)
物語の娘
すあま(p3x000271)
きうりキラー
梨尾(p3x000561)
不転の境界
神谷マリア(p3x001254)
夢見リカ家
夢見・ヴァレ家(p3x001837)
航空海賊忍者
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
きうりん(p3x008356)
わるいこ
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花

リプレイ

●夜明け
 揺れるふさふさの尻尾も、その毛並みも、並び立つ姿はとてもよく似ていた。
「本当にはじめましてでしょうか?」
 感情を押し殺したような、『燃え尽きぬ焔』梨尾(p3x000561)の声。
「違いましたか?」
 対して、002は幼くあどけない表情を向ける。
「俺は、選抜とやらは受けてませんし、
番号もありません。
ですが目の色以外君と俺は瓜二つ
つまり生き別れた兄弟では?」
 002は、丸い目を見開いた。
「キョウダイ、というのはなんですか?」
「自分はこの世界に生まれて七か月ぐらいなので
自分がお兄ちゃんですね!」
「そうなのですか」
「……もしも君が認めなくても。俺は君の父兄です」
 ……優しさを押し殺して。
 武器を向ける自分への怒りを押し殺して。

 その声は甘い甘い猫撫で声。
 その脚はしなやかに地面を踏みしめる。
 すとんと足音も立てずに。
「母さん、母さん。にゃあ。2号ってそれ名前じゃにゃいよね」
『夢見リカ家』神谷マリア(p3x001254)は金色に光る目を細める。どうしてか、それから目をそらすこともできない。
「名前すら与えない様な奴を母親というのかにゃ?」
「なんだと……っ!」
「それに、」
 マリアはくしくしと顔を拭って、艶のある声で言った。
「マザーはこっちにいるにゃあ、あのピエロの事ならおかーさんというのは悪趣味にゃね」
 襲ってくる大木の炎を、マリアは跳ねてつぎつぎと跳んでかわす。
「母さんのことを知っているのですか?」
「知らないのかにゃ?」
「俺が勝ったら、教えてくれますか?」
「んんー」
 マリアはどっちつかずの声で、喉を鳴らした。
「何れにせよ、森焼きまくって警告したから大丈夫って言うのは無理があるにゃあ」
 ワーキャットは跳ねる。
 インストールされた獰猛な本能に従って、しなやかに敵の攻撃をかわす。燃える枝を背を逸らしてかわす。すれすれのギリギリ、に見せかけたのはまやかしだ。
「っ!」
「にゃーだって現実でよくそういう事言うけどそんなことしたら大抵邪魔者がやってくるにゃしね!」
 善も悪も自由に、のびのびと泳ぎさるさまが不思議だった。
「うっわ燃えてる!ㅤ私の森が!ㅤ私の木が!」
 ショックのあまりぽっきり折れた『雑草魂』きうりん(p3x008356)だったが、次の瞬間には元に戻っている。
「将来私のものになる予定の翡翠に何するのさ!」
 ぐっと両手に雑草を構えて、闘志を燃やすきうりん。
(許せねぇ!ㅤ燃え尽きるまで燃えろ002!)
……と、そういう雰囲気でもないので仕方なく黙ってはいる。
 でもとりあえず、よさげな土地を見繕ってはおくのだった。あのへんにこう、良い感じの建物を……。

「現実世界の自分を基にしたROOコピーではなく、ROOアバターの自分のコピー存在、ですか」
『物語の娘』ドウ(p3x000172)は木々の嘆きの声を聞き、僅かに眉をひそめた。
「何やら状況が複雑化していますねぇ。
これが数多くの死を経験した影響、なのですね」
「……みたいです。でも、」
 梨尾は言う。それでも、「止まるわけにはいかない」と。
「この熱気……とてもゲームの中とは思えませんね」
『航空海賊忍者』夢見・ヴァレ家(p3x001837)がぎゅっと拳を握りしめた。
『虎帝』夢見・マリ家の背から、ヴァレ家は飛ぶ。自然の摂理だ。航空海賊忍者の基本。この世界のニンジャは空を飛ぶ。
「ヴァレ家……! こんな悲しいことはなんとか止めたいです!
少しでもいい結果になるように頑張りましょう!」
「そうですねマリ家。
少しでも良い結果になるように、力を尽くしましょう」
 虎のメカニカル着ぐるみをまとったマリ家は串ボルグを掲げ、樹木を一気に突き刺した。
「生まれって選べないから厄介だよね。わたしも碌な物じゃなかった!」
『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)はぷるりと身を震わせる。無骨な鎧のラダがすあまを見上げる。すあまの二本の尻尾がラダに絡んだ。
「でも拾ってもらえたから運は良かったかも。
悪運かもだけど」
 生まれたてのこの存在の運命は。
 もしかしたら今、決まるのかもしれない。
「002」
『深海に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)は繰り返した。
「ねぇ、002っていうんだねぇ」
「はい、俺は002」
 エイラは、めらめらと燃える大樹の嘆きに相対する。
「君達のぉ怒りももっともでぇ当然の防衛反応なのだからぁ」
 だから……すべきことは手加減ではない。
「せめてぇ真っ向からぁ受け止めさせてもらうんだよぉ」
 ぷかぷかと揺れるクラゲが、ぽん、ぽんとエイラの回りを漂い始める。

●暗闇の中でもがく
「どかないんですね」
「俺は君が傷つくのも。
誰かや植物さんを傷つけるのも見たくないのです。
だから……傷つけたければまずは俺からお願いします」
 梨尾がきりと002を見る。
 張り詰めた緊張に、尻尾がぴんと立つ。
「わかりました」
「梨尾殿! 002番殿は任せましたよ!」
「はい……っ! 任せて下さい」
「まずは多すぎる大樹の嘆きを何とかしなきゃ! ね」
 すあまに、ラダが頷いたかに見える。
(どうか! どうか! 救いを……)
 マリ家は、祈るだけではなく、咆える。木々が、一斉にこちらを向いた。
「大樹の数が多いですね! とにかく数を減らさないとジリ貧です! あちらは任せて下さい!」

「それにしても『嘆き』ですか……」
 ドウは、大樹ファルカウに思いをはせた。ここがROOの世界だとしても。
(何とも、心苦しい気持ちになります)
 ゴオオオオ、と木々が燃えるような音は悲鳴に似ている。
 このような悪趣味な状況を作り出した者がいるとすれば――そこに思惑があるとするなら、知り、解き明かす。
「迅速に、終息させましょう!」
 炎を煽る風が、強く強く吹き荒れる。ドウの風が森から熱を奪い去る。足下から影人形が現れ、いっせいに木々を斬りつけて、両断した。
 梨尾が、エイラが、それぞれに炎を燃やした。
 片方は決意の炎。
 怒りを漏らした、闘志の炎。
 もう片方は、くらげ火だ。ゆらゆらと空を飛んだ。燃えさかる炎とはまた別の炎。ガラスの中で揺れるようなろうそくのような炎。
(火、だからねぇ)
 それはきっと彼らを怒らせる。
「……うん、とてもとてもぉ嫌なことだよねぇ」
 エイラは、その視線を受け止める。
(でも、そうすると決めた以上はぁ自分の心からもぉ目をそらさないんだよぉ)
 痛む心も、きっとこれは贈り物。
「……可能な限り、傷付けたくはないですね」
 ドウは蒼剣の力を解放する。暗色のローブの下、潜めた刃は魔力の刃だ。苦しめずに樹木を倒す。それからドウは返す刃で、もう一体を安らかに眠らせた。
(よし、あそこ!)
 すあまが狙い撃ちし、猫爪を走らせる。
「っと」
「てか002って言いづらくない? 普通のお名前考えない? それとも気に入ってるかなぁ」
「当然です、だって、」
 これしか、ない。
「さて、と!」
 ヴァレ家の両脚のホバー装置が起動する。異世界ニンジャの術である。巧みに戦場を飛び回る。空蜘蛛の術、である。
「出し惜しみしてはいられませんからね!」
(すごい)
 やっぱり、見たこともないものばかりだ。
 敵であるものですら、それに見とれてしまうほどである。
「にゃー」
 そして、マリアのネイルスラッシュが敵を切り裂いた。

 風。
(……燃やしたのはマリア達じゃにゃいけど暴れられても困るし)
 ドウの吹きすさぶ風に乗って。梨尾とエイラの炎が拓いた場所に、マリアが飛んだ。
「さあ、マリアの炎舞をご覧あれにゃ!」
「っ!」
 そこは燃えさかる木の群れなのだが、お構いなし。怪盗式錯乱術が炸裂する。
「そんなに暴れたいにゃら自分の腹でも殴ってろにゃあ!」
 炸裂するブラッドカーニバルは、先ほどよりもより一層、研ぎ澄まされて暴力の嵐となった。
 ステップ、ステップ。またの踏み込み。
 木々が呻き、やぶれかぶれに仲間を巻き込みながらマリアを追った。足を枝がとらえる、が。
 妖しげな瞳が輝いた。
 縦に切り裂き、木々が割れる。枝を伸ばすそれらはもうそれ以上は起き上がらない。
「苦しみはわかるけど、直ぐに原因取り除いてやるから大人しくしてるのにゃ!」
「あぁもうそんなに燃えちゃって……かわいそうに。すぐに介錯してあげるよ!」
 きうりんがびしっと雑草を向ける。
 地面のきうりが、雑草が。大樹にかなうだろうか。
 木々は、きうりを眷属とみた。それは過ちだった。枝は頑丈で、その攻撃は確かに効くのだけれど。わさわさと葉っぱはそれを上回って生い茂る。木々の動きが、だんだんと鈍くなっていく。
(私を狙え!)
 代償として、みずみずしい音を立ててぽきぽきと折られる……かに、見えるのだが。一瞬目を離すとそれは元に戻っている。生命エネルギーを得て、ぐんぐんと植物が育っていく。木を栄養にして、きうりが育つ。そしてきうりんはそのきうりをもいだ。
「はい!ㅤきうり食べて!ㅤ回復して!」
「いただきます!」
 すあまが枝を払い、火を消し、きうりも補食する。
「はい!」
「え、いや俺は」
「きうり食べろ!」
 初めてのキュウリ。
「味がしないような……あれ、甘い?」
 品種改良により技術の粋を極めたきうりなのだ。
「てやー!」
 雑草の一撃が、ぽふんと敵を打ち付けた。
(世界は、面白いな)
 002番は思った。
 じぶんは何も知らない。
「あなたのお母さんはこのようなコトを望んでいるのですか?
何か、忘れてしまっていませんか?」
 ドウの呼びかけに、足が止まりそうになった。
 マリアのネイルスラッシュ。
「猫の力、とくとみるがいいにゃあ」
「いくよ!」
 背後にすあま。一撃は、より深い。
(悪いけど思いっきり抉るよ)
 いたくはない。
 でも、目の前で苦しそうな顔をしている梨尾を見ると、なぜか心は痛む。
「立てますか」
「はい。手加減は要りません。母さんの子ですから」
 梨尾は、とても寂しそうに笑った。
 ぷるん、とふるえるクラゲの姿。
 エイラは失われることはない。命が巡り、新しい命が生まれるように、また。生命の輪廻がそこにある。
「さぁさぁ勝負しよ!
君は大樹を襲うのが目的のマザーのお手伝いに来たんだっけ。
わたし達はそれを解決するようにってクエスト表示出たんだ」
「クエスト」
「どっちも運営……マザーの希望だよね。
ならこのクエストはどっちが勝ってもマザーの一人勝ち、目的達成じゃないかなー?」
「……?」
 そうか。殺さなくてもいいのか。てっきり死ななければ終わらないのかと思っていたような気がする。そうしなくては生き残れなかったから。
(……でも、もうすぐ勝てるはずだ)
 しかし、何度倒しても。
 瞬きをすれば、ドウは、瞬く間に距離を詰めている。マリアが、降ってくる。
「おまたせ!」
 奇妙なきうりのいななきの声が響き渡った。精霊馬(きうり)が猛進する。ついでに乗り上げるきうりん。
「錨火っ!」
「……!」
 梨尾は立ち回る。死なないように立ち回る。
 武器と盾で攻撃を逸らす。
 まるで、お手本のように。
 002は学習する。どのようにすれば死なないか。どのようにすればケガをしないか。
 ぎゅう、と抱きしめられると毛皮の下に血潮がうずまいているのがわかった。
 こうやって戦うんだ。
 何のために。
 倒すために。
 違う、自分の身を守るために。
 爪をひっこめて、教えるようなすあまの優しい猫パンチ。
 梨尾の纏炎があたりをなぎ倒す。
「痛みが無い怪我しないからと無防備に攻撃を受けるのはやめような。
君は平気でも見てる俺は平気じゃない」
「……?」
「親が見たら泣くぞ。俺も泣くぞ。お願いだ……自分を大切にしてくれ」
 敵への進言かもしれない。
 でも、言わないとこれからも無茶するだろうから、どうしても言いたくなった。
 狩りを教えるようだった。組み合ってじゃれあって、首筋に噛みついて学ぶようなキョウダイみたいだった。
「にゃーの番号は1254番、にゃ。でもこれはあくまで組織の管理のための番号にゃ」
「1254」
「愛情からつけられたものじゃないのにゃ、キミのも……目を覚ましたらどうにゃ?」
 そう、なのだろうか。
 ずきんと心が痛むのは、誰のデータなのだろうか。
「私何番だ……?ㅤ46回死んだから047番くらいかもしれない……?」
 きうりん-047は首を傾げた。
「つらい思いをされたんですね」
「え」
「え」
「え?」
「……ふーんそっか。つらかったんだ。応援するよ!」
 002は躊躇した。
 その迷いを、宇宙忍者は鋭く見抜く。
「派手に燃やしましたね。警告をしたから大丈夫? 嘘ですね」
 ヴァレ家の言葉は彼をびくりと震わせる。突きつけられて逃れられない。
「逃げたくても逃げられない者もいると、本当は気付いているのでしょう?
怪我や病気で動けない者や、他に行き場がない者は、ここで死ぬしかないのです」
 その柔らかくまっすぐな声は、マザーに対してではない。自分に対して向けられたものだ。
「貴方が何者なのか。番号や選別が何を意味するのか、拙者には分かりません。
ですが、目を見ればわかります。
貴方の本当の願いは、こんな真似をして叶うものではないはずです」
「でも」
 止まれない。
 今、止まれないのだ。
「ならば」
 アメノウズメが「ぶおん」と音を立てた。
「お手伝いをいたしますわ」
 光刃がひらめく。
「爆雷刃っ!」
 ヴァレ家の攻撃が炸裂する。
「燃やしますよ、虎ァ!」
 マリ家は心に虎を思い描く。鋭く、常人にはおよそ不可能な飛翔をする。枝に潜むと、メカニカルトラスーツが開き、格納されたバルカン砲が姿を現した。
「せいやーーっ!」
 焼き尽くされた大樹は、いっせいに恐れおののく。火を払おうとパニックになって、やぶれかぶれに壊れていく。
「効いてますわ、マリ家!」
「はいっ、思い通りです!」
「おやつもありますわよ!」
「やった! ってそれ猫のおやつじゃないか! 虎だからね!」
「分かってますわよぉ!」
 そして狙う。
 串兵装「串ボルグ」は加速する。
 電磁加速串・マリ屋が貫いた。
 虎の咆哮が全てを弾いていく。
 ツインハイパータイガーバルカンは、再生する枝を全て焼き尽くした。
「梨尾殿の想い! きっと届きます! 拙者はそう信じます!」
 マリ家の想いを乗せた応援が、梨尾を励ます。
「ありがとう」
 その名前を呼ばれるたびに、力が沸き起こる。何度でも、何度でも。
「ヴァレ家! やりましょう!」
 電磁加速串が相手の攻撃を封じた。
「マザーはそんなこと望んでないよ!」
「やはり、マザーを知ってるんですか」
「知ってる知ってる、見たよ」
 ころころと転がり出るようなウソはそれでも堂々と動揺を誘うのである。
「よっし死ななくて済んだ! タッチ」
「はい、戻りました。誰も死んでなくて何よりです」
 梨尾が笑った。

「……っ!」
 火はずいぶんと収まってきてしまっている。
(でも、……立てる限りは、戦いを)
「待っ、て!」
 002はぴたりと動きを止める。
 ふわりと、見えない何かが手を伸ばす。
 それは手作りの和梨のタルト。
 彼の心がざわついた。
(バグだとしても、
いずれ殺し合う事になろうとも)
 生まれてきてくれて、ありがとうを。
(怪我した時の様子から俺じゃない親が守っているはずだ。
なのに俺が父親だというのは失礼だろう)
 だから。
「この世界に生まれてきてくれてありがとう。
番号だと呼びづらいから名前をあげるな」
「名前?」
「りお、道理を重んじる子になれるよう理
弓のように自分を貫ける子になれるよう弦」
 その真意は深い瞳の中に隠して。
「守れなくて、敵でごめんな理弦」
 頭をぽんぽんとなでて、抱きしめる。
「一緒におうちに帰れたらいいのにな」
「でも」
 002は、母から唯一貰ったものだから。
「そっちも、捨てなくても、いいんだよぉ」
 エイラが優しく告げた。
 その数字は。無機質なナンバーは「愛されていない」証拠だろうか。
 きっと、そんなことはない。
「どっちも、持ってて、いいんだよぉ」
 それは、被造物としてのつながりだから。
 それを大切に思うなら、それは大切なものなのだ。
 エイラは、それを大切にしている存在を知っている。創られるという喜びを、悲しみを。変わることのないナンバーを、贈り物として受け取った。
 002が祝福だというのなら祝福を、伝えてあげるのが自分の役目だと思ったから。
 止まる。
 もう走れない。そう思うと戦えなくなっていた。
「今回のぉ『002』番のミッションはぁあくまでもぉ大樹を燃やして嘆きを倒す、までみたいだけどぉ。
まだ戦うー?」
「……」
 彼は迷っている。どうするべきか。
 でもそう思ってもあの守護は消えない。
 戦わないと。

 けれど、彼らの攻撃は止んだ。話すための時間。
「さっきのお話覚えてる? このクエスト、何らかの決着つきさえすればいいと思うんだよね。
それともやっぱり勝ちたいかな。 勝ったらマザー喜んでくれる?」
 すあまが問いかける。自分で考えろと、そう言ってる。
 何がしたかったんだっけ。その答えは簡単だった。
 ただ褒めて貰いたいだけだ。……。
 役に、立ちたい。
「きっと良し悪しとかぁ実際のところとかはぁ別なんだよねぇ」
 うんうん、とエイラは頷いた。
(やり方は気に入らないしぃ主はそんなことはぁしないのだけどぉ。
『002』番がどう思ってるかのぉ心は否定しないんだよぉ)
 後付としても、生み出された意味を全うしようとする心は理解できる。できてしまう。優しかったから、優しさを教えて貰ったから。
「ただぁ、付与されたものではない“それ以外”があったというのなら。
思い出せたら何よりだよぉ」
「こんなに、心が痛いのに?」
「大切なことなんだ」
 傷つかないように、自分を大切にするように。
 エイラの中身を覗き込んだ。
 金の魔眼に魅入られた者の目には、月の花しか映らない。
「エイラならぁ任務を終えた以上、また次の指令がくだるかもだからぁ、早々に退いて備えるとこだけどぉ」
「そう、ですね」
(戻らないとならない)
 今は、戻らないと。
「ばいばーい、理弦くん、002くん」
 きうりんは手を振る。
「っととと、火の勢いが強いね。あちち」
「……現実世界では……絶対に、このような状況にはさせません」
 ドウはくすぶる木を倒し、火を消した。
 あたりは暗さに満ちている。
 守れた、と、梨尾は思った。
 彼から、みんなを。
 みんなを彼から。

成否

成功

MVP

すあま(p3x000271)
きうりキラー

状態異常

ドウ(p3x000172)[死亡]
物語の娘
梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
神谷マリア(p3x001254)[死亡]
夢見リカ家
きうりん(p3x008356)[死亡]
わるいこ
エイラ(p3x008595)[死亡]
水底に揺蕩う月の花

あとがき

理弦さんは守りに注力せざるをえなかったようで、みなさんを致命的に傷つけることはなかったようです。
おつかれさまでした!

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