シナリオ詳細
骸に寄る蠅のごとくに
オープニング
●呪いの村
幻想西のはずれに、ある小さな村がありました。
村の人々はごく普通に平和で、ごく普通に閉鎖的で、ごく普通に暮らしていました。
けれどある日、事件が起きました。
村人が惨殺死体で見つかったのです。
村でも最も若い男が、村の中央にある井戸の上で無残に吊るされていたのでした。
村人たちは殺人鬼の到来を噂し、家々に鍵をかけて過ごしました。
普通の平和も、普通の閉鎖感も、普通の暮らしも無くなりました。
彼らは来る日も来る日も閉じこもり、やがておかしくなりました。
ある村人は隣人を疑い、隣人はそのまた隣人を疑い、疑心暗鬼は広まり、深まり、止まらなくなり、誰の言葉も信じなくなり、ついには些細なきっかけから殺し合いが始まりました。
全員が全員を疑い、憎み、裏切り、恐れ、渦を巻いた狂気のような事件はひとつの呪いとして村に残ることになりました。
村を渦巻く怨霊の群れ。
危険さと土地の不毛さから、土地を管理する貴族も長らく手をつけていなかったこの村ですが……。
「ついに開拓が決まったんだってさ。
そのための清掃業が必要になる。ここまで言えばわかるよね?
貴族サマからのご依頼は、村の『清掃』ってわけさ」
ワイングラスの端を指で弾いて、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は片眉を上げた。
背景には薄暗い酒場。カクテルシェイカーを降るバーテンと、雑多に語らう男女の影。
ここは幻想王都のバーである。
ショウは身を乗り出し、話を続けた。
「ローレットが頼まれたのは『第一次清掃作業』。
害獣や害虫、その他害のあるものを駆除しできるだけセーフティな状態にすること。
ゴミを片付けたり土地をならしたりっていう第二次第三次清掃作業は別の業者がやってくれる。だから、まあ、必要なのは戦闘力ってコトだね」
村に存在するのは怨念が発酵する形で発生した悪霊系モンスター。
「専門家はこれを『アンキ』って呼んでる。怨念発酵型悪霊系モンスターだと長いから、そっちで呼ぶといいかもね。
それでアンキの特徴だけど……そうだね、一般的な人間を想像してもらって、それが半透明になったやつを想像できるかな?
ついでに目や舌を無くしたりやせ細ったり鬼気迫る表情にしたりすればより実物に近いよ。
村のあちこちをうろついてる連中はさして強くない筈だけど、村中央の奴は……なんて言うのかな、畏れの元凶みたいなものだったろうからね、かなり手強い筈だ。
村の周りを四つくらいにブロック分けして、一箇所に集まらないように駆除していって、それが済んだら合流して中央のアンキに取りかかるっていう流れが妥当かな」
最後にグラスの中身を飲み干すと、ショウはウィンクをして席を立った。
「それじゃあ、後は任せたよ」
- 骸に寄る蠅のごとくに完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年07月19日 20時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●『幽霊が実在するなら、その分解法も実在すべきである』――異界の科学者
長らく使われなかった通商路は、硬く残った轍跡だけを残してあちこちに草が生えていた。
モノクルの位置を直して、『信風の』ラデリ・マグノリア(p3p001706)はつきでた獣鼻をつんとあげた。
「惨い滅び方をしたんだな、この村は」
道は荒れるどころか殆ど自然に還っており、村のゲートらしきものはツタがのび植物に半分ほど覆われてしまっていた。
人の手が入った場所がこれまで放置されるというのは、そう起こることではない。誰かが流れてくるなり奪われるなりして、もっと人工的な荒れ方をするものだ。
このあたりだけ、人類が滅びてしまったかのようではないか。
「アンキと言ったか、中央にはそれの集合体がいると聞いたが。それを束ねるのは、さて、最初に殺された若者だろうか。または最後まで残った者か……それとも、最初の殺人を行った犯人か」
ラデリは目を閉じて過去の陰惨な事件を思い描いた。
『任侠』亘理 義弘(p3p000398)も同じ気持ちであるようで、渋い顔であたりの景色を眺めている。
「疑心暗鬼のアンキって事だな。お互いを信じられず、憎み、殺しあった村か」
第一の事件。それにおびえ正気を失った人々。そして起こる狂気のパンデミック。
もはや誰も責められぬ。もはやどこへも宛てられぬ。
そんな恨み辛みが発酵し……。
「犠牲者の無念を分かってやれるとは言わねぇ。だが、恨み辛みをキレイサッパリ消してやるのが今の俺達の役目だぜ」
生まれいずるは――。
『カエレ……カエレ……』
ゲートの下、半透明な老人が立っている。
血の付いた草刈り鎌を手にこちらによびかけていた。
『カエレ!』
怨念発酵型悪霊系モンスター、アンキ。
ラデリは手を翳し、義弘は拳を固め、飛びかかる老人を一瞬で粉砕した。
「このモンスターは死者の念にはえたキノコのようなもの。なら」
「キッチリ、仕留めてやらなきゃな」
当初の予定通り、村への侵入は東西南北それぞれからかけることになった。
西側の谷を回り、虫だらけの茂みを抜ける『迷い込んだ狼と時計』ウェール=ナイトボート(p3p000561)。
獣耳にひっかかった蜘蛛の巣をうっとうしそうに払うと、開けた景色に目を細めた。
不思議なもので、まだ日も暮れていないというのに村の風景は薄暗い。
光が入りにくい地形なのか、それとも何かが光を遮っているのか。
この場に渦巻く念を考えて、ウェールは息をついた。
「他者を信じるのはとても勇気がいるよな。元から閉鎖的なうえに疑心暗鬼になったのなら外に助けを求めても無駄だと思い、動くことができなくなるしな」
茂みをかき分けて入っていくと、彼の後ろからルア=フォス=ニア(p3p004868)が顔を出した。
ウェールの体格に助けられたというか、彼を盾にして虫や蜘蛛の巣をよけたというか、比較的さっぱりした状態のニアである。
『ヨソモノ』
『コワイ』
雑草で埋まった畑から、まるでミミズが這い出るかのような動作でアンキが現われる。
ニアは背後に展開したホルスターからガンウォンドを一丁抜くと、そちらを見もせずに二連射した。
額を打ち抜かれ、のけぞるアンキ。すぐに塩や灰のごとく崩れ、ごく僅かな銀色の灰となって畑に散った。
「怨念だろうが悪霊だろうが、やる事は大して変わらん。何時も通りにぶっとばしてやるだけじゃのぅ」
「次に人として生きる時はローレットや外部に助けを求める勇気を持てる事を祈る」
クールにこなすニアの一方で、ウェールは祈るように片手を翳した。
「さて、感傷に浸たりすぎずに、今日も混沌と風下に位置する息子の世界を守る為に頑張らねば」
「ところで。発酵型という話じゃが、納豆臭かったりせんじゃろうな?」
「納豆?」
「疑心暗鬼のまま殺し合い、死んでいった人々の無念、悲哀、慚愧は如何ほどだったでしょう」
コンパスの蓋を閉じ、『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はシルクハットの中へ落とした。
「そして、そのまま土地に縛られるなんて、二度殺されているようなものではありませんか。哀れな憐れなお客様」
シルクハットを逆さにして振ると、花の種があちこちにばらまかれた。
幻は幻術で無数の花を咲かせるさまを描くと、目を閉じた。
こちらは村の北側。
回り込むのに一番手間のかかる場所だったが、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)が枝や草を次々払ったおかげで随分と早く到着した。
「人間の持つ負の感情が引き起こした悲劇の連鎖って所か。疑心暗鬼……死んだ人間の恨みや辛み。怨嗟の声が聞こえて来そうだ。いや」
目を細めるジェイク。
『タスケテ』
『シニタクナイ』
近くの木から何かが落ちてきた。
首を吊った半透明な母子たちだ。それが両手を文字通り伸ばしてくる。
が、ジェイクはそれを拳銃の一発で、幻は杖のひとふりで破壊した。
「もう終わりにしよう。こいつらの魂を俺達で開放してやろうぜ。俺達なら上手くやれるさ」
「ええ……僕ら幻狼が最後の死を飾りましょう」
シルクハットを被り直す幻。
獣のような腕で拳銃をそれぞれ両手に握り、歩き出すジェイク。
生臭い風が、吹き抜けてゆく。
廃墟。幻想という国でもそう珍しいものではない。
けれどここまで腐りはてた廃墟もまた珍しい。
「悪霊か。まぁ奴らの過去にも怨念にも興味がないな」
枯れた道を進む『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)。
足下をごくごく小さなアンキの種のようなものが灰色の煙となって薄く這っているが、ハロルドが足を踏み出すたびに嫌がるように離れていった。
が、全ての魔が離れるわけではない。強い光に群がる虫のごとく、寄りつくものもある。
道ばたから起き上がった複数のアンキがこちらを向き、唸りながら全力疾走で向かってくる。
剣に手をかける。鞘から漏れ出た光が抜刀と共に解き放たれ、それだけで近くのアンキはかき消された。
「俺の興味は『相手が強いかどうか』それだけだ。それに人に仇なす『魔』の存在は皆殺しにすると決めているんでな」
「ひゃあ、こりゃえげつねェ……」
『同胞殺し』猟兵(p3p005103)がバラバラにねじれた白骨死体を銃剣の先端でつついていた。
ただの白骨死体ならそう珍しくもないが、頭蓋骨にあたる部分に複数の火かき棒が突き刺さり、一部はそのまま喉を抜けあばらの内側に入っていた。
「殺しのド素人が半狂乱になってヤったパターンだ。それも何人ものやつが殆ど無抵抗になったやつを取り囲んでってカンジか……この村、こんなのばっかだぜ」
興味を無くして立ち去ろうとした途端、白骨死体に被るようにアンキが現われた。頭に無数の火かき棒が刺さり、手にも同じものを持っている。
『ヤメテ』
「そういうのは決まってこうだ」
振り向く、と同時に銃剣を派手にスイング。相手を肩口から切断する。
アンキは炎天下の路上で溶けるバニラアイスの如く崩れると、ごくわずかな銀色の灰だけを残して消えた。
「発端の下手人やらがハッキリしてねェのが何ともキナ臭ェが……」
ある意味、それも終わったこと。
この場がここまで放置されたのであれば、追う必要のないことだ。
「これもお仕事だ。キリキリ働かせて貰うとすッかね」
●『死亡によって当人が終了するのであれば、幽霊はセルに新規入植した別データと考えるべきでは?』――異界のプログラマー。
崩れた馬小屋。
生暖かい風が吹く。
地面を覆う灰色の煙が、歩くたびに生き物のごとく蠢いていた。
「チッ……存在を隠しもしねえな」
義弘は舌打ちをして、拳を今一度握り尚した。
「ああ、俺にもわかる。この先に?」
ラデリは懐から花の種をいくらか取り出すと、手のひらに握り込む。
二人の眼前には民家。
今すぐにでも暮らせそうなほど立派な作りの家だが、壁にはツタがはり庭は背の高い雑草が広がっている。だが最も注意すべきはその屋内から聞こえる無数の声だった。
『ヤメテヤメテ』
『ハイッテコナイデ』
『コロシテヤルコロシテヤル』
「――悪いな」
義弘は助走をつけて跳躍。
扉をドロップキックで蹴り抜けると、その裏にいたであろうアンキを扉もろとも吹き飛ばした。
開いたライン。箒の柄に包丁をつけたものを持って義弘を取り囲もうとするアンキたち――に先んじて、ラデリは花の種を投げた。ビロードの袋に包まれた種が宙を舞い、アンキたちの間ではじけるように炸裂する。
たった一瞬だけ悪意の霧を咲かせるとアンキたちをむしばみ、食い尽くしていく。
かろうじて生き残ったアンキが起き上がるが、それよりも早く義弘はすぐ近くの椅子を掴み上げ、アンキの頭へと叩き付けた。
砕け、崩れ、溶けるように消えてゆく。
「いくらでも来い。簡単には潰れてやらねえからよ」
「なるほど。これは酷いな」
ウェールは路上に倒れた馬車に身を隠し、そっと向こう側を覗き込んだ。
血まみれの包丁を手にして歩く主婦。
額に大量の釘が刺さったまま歩く子供。
クワを手に『コロセコロセ』とわめきながら歩き回る男。
アンキが路上に出て、いもしない殺人鬼を捜し回っているのだろう。
『先に飛び込めるか。できる限り一直前上に並べてくれれば一気に撃てる』
ニアがハイテレパスでメッセージを送ってくる。
両手にはそれぞれガンウォンドを持ち、いつでも撃てる状態にしていた。
彼女の強みはなんと言ってもリソースの豊富さである。豊富なHPと豊富なAP。強力な『ライトニング』を惜しげも無く連発できる。
必然、ウェールの役目は防御を固めて前に出て戦闘を引き延ばすことになる。
『いいだろう。合図をしたら撃て』
ウェールはあえて馬車から飛び出すと、声をあげてアンキたちに突撃した。
一方のアンキたちは『イタゾ!』『コロセ!』と叫んで立ち向かってくる。
盾を構え、まずはクワの男に突進。
腕に掴みかかる女が、血まみれの包丁をウェールの顔面めがけて振り上げる。
一方で大量の釘が刺さった子供が足にしがみついてきた。
『今だ――!』
ニアが馬車から身を乗り出す。
丁度、ウェールをよけつつアンキを二人ほどほぼ最高威力距離で巻き込める位置取りがなされていた。
「でかした!」
構えた二丁のガンウォンドの現象発動トリガーを同時に引いた。
激しいスパークが二丁の間で巻き起こり、発光と共に光線が放たれる。
女と子供がそれぞれ巻き込まれ、『ギャッ』と叫んでかき消えた。
好機。ウェールは盾の裏に収納していた剣を抜くと、クワの男の喉元に差し込んだ。
襖で区切られた畳部屋を、二丁拳銃をそれぞれの側へ向けてクリアしていくジェイク。
「こういう家は幻想じゃ珍しいのか?」
「まあ、あまり見ませんね」
シルクハットを被ったままジェイクの背を守るように立つ幻。
「こんだけ生活感があるのに誰も居ねえとは……不思議とゾッとするぜ」
丸いちゃぶ台。放置された食器と、腐り果てた料理。
たかる虫すらいないのか、あたりはしんと静かだった。
「……気になりませんか」
「ああ、敵の気配がビンビンしやがる。なのに物音ひとつしねえとは」
「いえ、そうでは、なく」
噛み砕くように区切って言う幻。
「路上や村の外には白骨死体がありましたよね」
「ん? ああ……」
「けれど、料理は『まだ』腐敗状態なのですね」
「……ん、ん?」
ピンときていないジェイクに、幻は指を立てて見せた。
指の上に現われた幻術は、死体が徐々に朽ち肉やその他のあれこれが自然にそぎ落とされ白骨になるまでが早回しで描かれた。
「大人が白骨化するまで約七年と言われております。しかしあちこちの様子を見るに、『人間以外のもの』はほ一年……いやそれ以下の時間しか経っていないように見えます。そのうえ、不自然なまでに虫がついておりません」
「……ああ、わかったぜ。きっとアイツのせいだろう」
ジェイクは振り返り、部屋の天井の、その片隅に銃を乱射した。
粘液のように溶けてはりついたアンキが、奇声をあげて落ちていく。
舌を伸ばし、その先端をミミズのように変形させた。
シルクハットを脱ぎ、幻術の水を浴びせる幻。
アンキは攻撃の間もなく溶け落ちていった。
「無残な……」
「もう十分すぎるほど、虫がついてたってわけだ」
「はははっ! どこを狙ってやがるんだ? おら、俺と戦いやがれ!」
金槌を持った男を切り捨て、ハロルドは目をギラリと光らせて笑った。笑って見せた。
押し入れの襖を開き這い出てくる老婆。
ハロルドは足にかじりつく老婆に剣を突き立てると、背後から飛びかかる乳幼児を掴んで壁に投げつけた。
「――チッ!」
何を思っての舌打ちか。それは余人にはわかり得ぬことではあるが……。
もしかしたら、『不幸な弱者』を更に攻撃しているように思えて苛立ったのかもしれない。
もしくは、彼らをこんなにしてしまった悲劇とその上にたかったアンキという黴菌に対しての怒りか。
「よ、っと!」
ハロルドが目立ったおかげで物陰から安全に攻撃できていた猟兵。
ブリッジ姿勢のまま高速で這い寄る女のアンキを切り倒すと、額の汗をぬぐった。
「人とか獣なら探し易いンだがなァ……怨念だとかは流石に専門外だ。二階も見てみるか?」
「ああ……だったら下がれ、俺が先に行く」
猟兵の後ろ襟を引っ張り、階段を先行するハロルド。
二階には敵の気配は無かった。
代わりに、畳部屋が二つ。
片方は何も無い部屋。天井にわたされた棒からは不自然にロープがさがっていた。
もう一方の部屋へと入る。そこには敷き布団がひとつ。
奇妙に盛り上がった掛け布団を慎重にはがしてみると。
「…………」
大量の髪の毛とひとつの封書が置いてあった。
封を解いて中を見たハロルドが、再び強く舌打ちをした。
●集合アンキ
無数の顔が集まった球体に見えた。
「こいつが『集合アンキ』か」
村の北側からやってきたジェイクが、二丁拳銃をここぞとばかりに乱射しながら走る。
集合アンキから無数の腕が伸びて迫るが、割り込んだウェールがその腕を切り払っていく。それでも払いきれない腕が彼に掴みかかり、腕や首をもぎとろうとしてきた。
『■■■■■■■■■■!』
大量の顔が一斉に何かを喋る。バラバラに、しかし何かの恨み言を放った。
それにラデリがハイ・ヒールの治癒魔術を唱えて対抗。
幻も駆けつけ、ハイ・ヒールの治癒魔術を重ねて詠唱し始めた。
苦しみもがく集合アンキ。
その苦しみがそのまま呪詛となり、幻たちへと降り注ぐ。
「怨念はすぐに群れたがるのぅ。ほれ、さっさと燃え尽きるがよい!」
それを振り払うかのようにガンウォンドで霊的チャフをばらまくニア。
呪いが散った所で、猟兵が一気に距離を詰めた。
「こりゃ相当怨み積ってンな、懐疑心って奴ァ恐ろしいぜ。悪ィが、さっさと成仏してくれや!」
義手で殴りつける。直後、内蔵した杭打ち機が炸裂。集合アンキを穿った。
直後跳躍し、拳を握り込む義弘。
彼のパンチが集合アンキの無数にある顔面の一つをとらえ、そして爆殺した。
よろめく集合アンキ。
しかし呪詛の声は消えることなく、大量の矢となって降り注いだ。
「はははっ! そうこなくちゃ面白くねぇ!」
ハロルドは獰猛に笑い、今使える聖剣の力をリミットまで解き放った。
光が彼の剣を、そして腕を包み込む。
やがては剣が集合アンキを貫き、無数の顔もまた溶けるようにして消えていった。
井戸。それも汚れた井戸だ。
ニアやウェールはそれぞれ思うことはあれど、口にせず立っている。
「葬式とは言わねぇが、碑や墓を建ててやりたい気分だぜ」
「だが、後日ここは開拓される。清掃業者が来るだろう」
顔を落とす義弘とラデリ。
「では、こういうのはいかがでしょう」
幻はシルクハットを脱ぐと、幻術で作った風船灯籠をいくつも空に飛ばし始めた。
死者を弔うような光が、空へと登っていく。見上げるジェイクたち。
「これで奴らの魂が、救われるといいよな」
ハロルドもまた、黙ってそれを見上げていた。
彼の手の中でぐしゃりと潰れた封書が、地面に落ちる。
猟兵がそれを拾って開いてみると、こうあった。
『サーカスがやってきた』
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――good end!
GMコメント
フィールドは一般的な古い集落を想像してください。
木造建築一階建ての小さな家が点々とあり、枯れた田畑があり、雑草が生え放題になり、妙に動物がいない。そんな場所です。
東西南北にブロック分けするとしても、大体同じ雰囲気の場所になるでしょう。
道ばたで遭遇するアンキと戦い、屋内に侵入してアンキと戦い……といった探索プレイになるはずです。
中央の『集合アンキ』は沢山の怨念が凝縮された宙に浮く球状のなにかです。
呪いを直接飛ばしたり、長く伸びた無数の腕で掴みかかったりといった具合です。
攻撃にはそれぞれ【呪い】、【毒】、【呪殺】といったBSや追加効果がついているものがあり、確率の高いBS回復手段があるととっても素敵です。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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