PandoraPartyProject

シナリオ詳細

メイドオブメイド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●人類が待っていた
「メイオドォォォォォォバトゥゥゥゥゥル!」
 高らかに叫ぶ女性がいた。
 メイド服の女性だった。
 フリルのついたカチューシャにツインテール。清らかな絹製の白い手袋をしたロングスカートのメイドは、丸形の眼鏡の奥でキラリと目を光らせる。
 突き上げた片手に突き立てるは一本指。
 おりるスポットライトは指を中心に彼女を照らし出す。
 そう、今宵ここ鉄帝ラド・バウで始まるのは世紀の戦い。

 ――人類が待っていた!
 ――世界が待っていた!
 ――全ご主人様が待っていた!

「最強最高のメイドを決める第十七回メイドタイトルスペシャルマッチ!
 全国から集められたメイドたちが己のメイド力(めいどぢから)をぶつけ合い最後の一人となった者こそが真のメイドの栄誉を得る!
 得られるのは栄誉のみ!
 そのために肉体をこのリングでぶつけることができる者こそ、まさに真のメイド!」
 暗闇から多くの声があがった。「そうだ!」「それこそメイド!」「最強に相応しい!」。メイド服の女性は頷き、そして一度目を閉じた。
 会場中のライトが灯り、観客席までもを照らし出す。
 鼓笛隊がメイドマーチを演奏し始め、舞い散る紙吹雪。観客席を埋め尽くす人々が一斉に歓声を上げた。
 目を見開くメイド服女性。彼女こそがこの大会のアナウンサー。マイクに向けて叫ぶ。
「メイドバトルの、開催です!」

●エントリー・ユア・メイド
 説明しよう! メイドバトルとは数年に一度だけ鉄帝国にて行われるスペシャルなタイトルマッチである。
 鉄帝の貴族や名のある軍人たちにとって『己のメイドが優れた武人である』というステータスは喉から手が出るほど欲しいもの(たぶんぜったい)。
 有名な武器開発会社の社長や地方の闘技場興行主、名のある将校や大手食品会社CEOたちが己のメイドをこの大会へとエントリーしたのだ。
「なるほどね、そこへわたし達がメイドとしてエントリーしたワケ」
 がっつりメイド服のレイリー=シュタイン (p3p007270)が出場番号のついた名札を胸につけ、うんうんと頷いた。
 頷いてから、地面にエントリーシートを叩きつける。
「なんで!?!?!?!?!?」
「深く考えてはいけませんよ、一行目からわかっていたじゃあありませんか」
 観音打 至東 (p3p008495)がつい最近こしらえたらしいおニューのメイド服をふりふりさせて笑った。エプロンにバーコードを印字するとかいう神がかったセンスのメイド服だ。
「フッ、これまで苦楽を共にしてきた皆様といえど……真のメイド(メイドオブメイド)の称号は譲れませんわっ」
 髪をふぁっさぁって払って堂々とした立ち姿を披露するヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)。
 スポーツものの漫画で大会前になると必ず出てくるヤツである。
「その通りだよ! 真のメイドはヴァリューシャのためにある称号だよね!」
 斜め下(実際木箱でヴァレーリヤ高さを稼いだ)から赤い花びらをぱっさぱっさまきまくるマリア・レイシス (p3p006685)。
 スポーツものの漫画で大会前になると必ず出てくるヤツその2である。
「な、なんで皆さんそんなになじんでるのでして……」
 ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)が端っこのほうでどう動こうか迷っていると、エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)がその肩にポンと手を置いた。
「一行目から、そういう話だと分かっていたからだ」
「その『一行目』ってなんのことでしてー……!」
「ご覧なさい。これが幾多の戦い(主にギャグ)をくぐり抜けたベテランの目なのです」
 フルール プリュニエ (p3p002501)が『わかるでしょう?』って感じの微笑みでエクスマリアやヴァレーリヤを指さすが、ルシアはぷるぷると首を横に振った。
 するとエクスマリアが妙に流ちょうな口調で語り出す。
「ここまでの話は、もはや前振りにすぎない。天は言っているのだ……『メイドと名がつけば何をしてもいいよ』と」
「その通り」
 ギュガオーンというなんともいえない効果音と共にメイドカチューシャを発光させたエッダ・フロールリジ (p3p006270)がなぜか地面から円形台のせり上がり方式で出現した。しかも腕組みしながら。
「メイド。それは奇跡の代名詞。
 メイド力を高めたならば、その者は最強のちからを持ったと言っても過言」
「過言!?」
「自分だけちょっとめいどの定義が違いますが、今日はあえて同じ定義でいくのであります」
 鳴り響くメイドマーチ。
 女たちは……否、メイドたちはステージへと走り出す。
 アナウンサーの声が会場にとどろいた。

「――予選を通過した栄えあるメイドたちの入場です! これより始まるのは、そう!
 『メイド・バトルロワイヤル!』」

GMコメント

 ご用命有り難うございます。
 ラドバウでメイドのナンバーワンを決めるコンテストをすると聞いたのでバトルロワイヤルを開催しました。読み間違えたのはわざとです。
 一行目からもうおわかり頂けると思いますが、今回の舞台は『メイドと名がつけば何をしても良いよ』という前振りにすぎないので深く考えないで下さい。どうしても理由が欲しかったら鉄帝の金持ちに雇われて臨時メイドとして出場したことにします。

●メイドバトルロワイヤル
 会場に出現するあまたの予選通過メイドとメイドバトルを行います。
 メイドバトルとは、会場に用意された小道具や大道具、ランダムに出現する仮ご主人様に対してご奉仕することでメイド力を爆発させ、相手メイドを『グワーッ』つって吹っ飛ばすことです。
 なんで爆発するのかなんで吹っ飛ぶのかなんでグワーなのか私もしらないしわかるつもりもない。強いて言うなら絵的に楽しいからだ。
 爆発はその量、質、勢いがメイド力によって決められます。
 メイドのご奉仕Powerが量、メイドの萌Powerが質、メイドの鉄帝ウケが勢いとなって現れるでしょう。これらの言葉は私もいま生まれて初めて聞いたので参考値なんかありません。

 プレイングに『メイドのご奉仕つったらコレだろ!』というシチュエーションや動きを書いてお送り下さい。
 常識とか最初の一行でグワーつって吹っ飛んでるので自分がただ大好きなものをぶつけて構いません。想像してみて、その子がメイドになってこんなことしてたらもう最高にグッとくるなって瞬間を。
 できれば一発。数打ってもOKですがその場合尺の問題で小出しになります。

 戦闘服もといメイド服は自由に選択し自由に着用して頂いてかまいません。
 それがメイド服だと自信を持って一行で言えるなら今日はパワードスーツだろうが棘付き肩パッドだろうがメイド服と認めます。
 あなただけのメイド服を着よう!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はMです。
 想定外の事態は絶対に起こりませんしメイドと名がつけば大体のことは許されます。

  • メイドオブメイド完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月24日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
観音打 至東(p3p008495)
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

リプレイ

●メイドと名がつけば何をやってもいい時間
 いかにも朝だよって時に流れるクラシックミュージックにのせて、チチチと小鳥が鳴く声がする。
 カーテンレールをすべる音。
 あのカーテンでシャーってなるやつの名前なんていうの。ランナー? それでほんとにわかるの?
 そんな疑問を思い浮かべるご主人様が目を開くと、黒いメイド服に身を包み振り返る『訊かぬが華』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)がいた。
「ご主人さま。朝、だ」
 ヴィクトリアンメイド服を纏ったエクスマリアはそのほっそりとした少女の体型に似合った、まっすぐな青い瞳でご主人様を見た。
 だがそれでもご主人様は再び目を閉じようとするだろう。エクスマリアはそっとベッド脇に立ち、伸ばした手をご主人様の肩に当てた。
「ご主人さま。起きる時間、だ」
 軽くゆすってみても、目を覚ます様子はない。フウ、というため息のあとで、布団を僅かにめくる感覚がした。
 冷たい外気が入り込むかと思いきや、身体に感じるのはほのかな温かさだった。
「どうしても、起きないならば……」
 ごそごそと布団の中でうごくそれは、まごうことなくエクスマリア。
 ハッと振り返れば、目を瞑って枕に頭を乗せる彼女の姿。
 このまま布団の中に入っているべきだろうか。それとも飛び起きて離れるべきだろうか。
 ほんの僅かな、メイド服の布地だけを通して伝わる熱をうけて、眠れるはずはない。
 起き上がったご主人様に、ぱちりと片目だけをあけてエクスマリアは言った。
「おはよう、だ。ご主人さま」

「「グワーーーー!?」」
 対戦相手のメイドたちが身体をくの字にして吹っ飛び、闘技場の外壁に激突しクレーターを作った。
「クッ、ニーソックス殺法のジュリエットが負けるなんて」
「あの新入り、ただ者……いやただメイドではないわ。ここは一時休戦。囲んで倒すわよ!」
 メイドたちがバッと両手にフォークとかスプーンとか大量に握って飛び上がると……。
「ご主人様、私はレイリー=シュタイン。此度、ご主人様の平穏をお護りするメイドです」
 スッとあのスカートを両方つまんでちょこんって頭下げるポーズ(カーテシーっていうらしい)の姿勢で『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)が割り込んできた。
 紺色の、丈の長いワンピース。
 そして白いエプロンドレス。
 圧倒的清楚なその姿に、メイドファイターたちは思わず身構えた。
「私が相手になりましょう」
「「ぬかせっ!」」

「それでは、ご主人様、休憩時間でございます」
 昼下がり、木漏れ日のゆれる庭。
 ガーデンテーブルにティーセットを置いたレイリーメイドは、ティーポットを手に微笑んだ。
 風と木々の香りに混じって、優しい茶葉の香りがする。
「気分がすっきりしますよ」
 レイリーが選んでくれた茶葉は、どうやら南の島から輸入されたフルーツの皮をつかったものであるらしい。
 カップに注がれた柑橘系のそれが、椅子に座るとよくわかる。
 早速メイドと優雅なひとときを……とカップに手を伸ばそうとした、その時。
 黒ずくめの暗殺者(顔にアサシンって書いた仮面を被った人)が木陰から植え込みの向こうから飛び出してきた。
「ご主人様!」
 バッと両手を広げて立ちはだかるレイリー。
 放たれる銃弾。
 胸に着弾。
 咄嗟に判断。(ここラップ)
 しかしレイリーの胸には、銃弾がめりこむことはなかった。
 まるでチップのようにつぶれた弾頭を指でつまみ、それを放り投げる。
「カップに弾が入らなくてよかった」
 小さくふりかえり言うレイリー。
 更にアサシンが増え、一斉に銃弾を浴びせてくるがスカートの下から取り出した籠手でそれらを防御。
「どうぞゆっくりとお過ごしください。些事は私が捌きますので」
 謎の反復横跳びと膝の屈伸運動で全ての銃弾をファイティングポーズみたいな構えでガードしきると……。
「それではご主人様、お時間でございます。次の目的地へ向かいましょう」
 ご主人様を抱え、そしてどこかクールに微笑みをこぼした。

「「グワーーー!?」」
 さっき『ぬかせ』て言ったメイドたちが地面に叩きつけられクレーターを作った。この台詞言ったひとって絶対直後にやられるよね。
「つ、強い……なんてメイド力……」
 周りのメイドたちがギリッて歯を食いしばる中、身の丈3mの巨大なメイドが歩み出た。
 肩んとこをジグザグに破ったワイルドなノースリーブメイド服に身を包み、屈強な胸板を晒す彼女はバイオレンスオーガメイドのあけみ。その拳から繰り出すメイド力はあらゆるものを粉砕するという。
「死ねぇぃ!」
 殴りかかるあけみ。だが、その横っ面にメイド攻撃を浴びせる『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)の姿があった。
「最強最高のメイド……それは奉仕力速さ確実さ優しさ厳しさ上品さそしてなにより――」
 構えたライフルのトリガーをひく。
「メイド力なのでして!」

「ご主人様、次のスケジュールは稽古でして」
 若干ゴスロリの雰囲気を宿したフレンチメイド服。
 かわいらしさたっぷりのミニスカート。腰のポケットからはうさぎのキーホルダーが下がっていた。
 強靱かつ剛毅なるティータイムを終えたルシアは、取り出した懐中時計をパタンと閉じてそう言った。
 鉄帝においては、どんな人でも力をつけなくてはならない。
 具体的には攻撃の威力が5000くらいないといけない。
「破式魔砲スーパーを会得出来るよう励んでもらうのですよ!」
 そして始まる特訓。
 ルシアの課したメニューは過酷なものであった。
 腕立て腹筋ランニングに素振り魔砲。なんか尖った岩の上で妙な型をとったり、両手にバケツをさげて空気椅子したり、滝にうたれながら落ちてくる丸太をよけたり、橋からぶら下がって腹筋したり、こたつにはいって寝転んだところにルシアがむいてくれた蜜柑をひとふさあーんってしてくれたりした。
「最強のメイドさんは最強のご主人様と共にあるのでしてーー!!」
 特訓の日々はいつか実を結ぶだろう。
 具体的には攻撃の威力が5000くらいになって機動力が10ある、遠くからいきなり飛んできて全員ぶちのめすっていう反則マップ兵器みたいなご主人様になれるに違いない。
 そして厳しい特訓のそばにはいつでも……。
「ルシアが一緒にいるのでして!」

「グアーーー!?」
 あけみの顔面が三日月みたいに歪んで真横に吹っ飛んでいった。
 フッと不敵に笑うルシア。
 そこへ無数のメイドたちがティーポットやアイロンや靴べらを構えて取り囲む。
 囲まれたことに対して、危機感はない。
 なぜならこれはバトルロワイヤル。自分以外の全てが敵であり、敵の敵もまた敵なのだ。
「めーいどめいど、私はメイドー♪
 メイドって『ご主人様、食事になさいますか? お風呂にさいますか? それとももうお休みになられますか?』って聞くんですよね! よくわからないですけど、大丈夫。きっとできるわ」
 スキップしながら現れた『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が優雅に構えた。
「きっとできるわ。精霊達もお手伝いしてくれますしね。私一人で八人分働きます♪」

 フルールメイドは突如として『謎肉☆プリン』を取り出した。
「このプリンさえあればどんなご主人様も美味しさに感動して声も上げられなくなるはず!
 これをちょっと適当にむしってきた雑草とか極彩色の木の実とかいかにも毒々しいけれどもきっと大丈夫キノコとかと一緒に料理しますね」
 でかい鍋にドガァって突っ込んで火にかけて混ぜて数度の爆発と謎の悲鳴が聞こえた後、フルールは屈伸運動とウサギ跳びをした。
「美味しくなぁれ、美味しくなぁれ――」
 両手をバッとあげ手首を鎌のようにまげる荒ぶるメイドポーズをとり、呪術を発動させた。
「燃え燃えキュン♪」
 ゴアァッという七色の光の柱が鍋から登ったかと思うと、スプーンでひとすくいした。虹色のなんかを。
「これできっと美味しくなったわ。ご主人様、どーぞ♪
 食べきれない?じゃあ食べさせて上げますね。ジャバウォック、クラーケン、ククルカン、三人でご主人様を押さえて口を開けさせてね?」
 押さえつけたご主人様にスプーンを近づける。
「はい、あーん♪」

「「ウヴォア!?」」
 メイドたちが泡を吹いて崩れ落ちる。
 荒ぶるメイドのポーズのまま立っていたフルールは、『ヤったわ』と見栄を切った。
「いけますわよマリィ!」
「みせてあげようヴァリューシャ!」
 同じポーズで左右からシュッて『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)と『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が現れた。
「小癪な、網タイツのジェシカが相手よ!」
「いいえ白手袋のメリージェーニアが!」
「ガーターベルトのジョアンナが!」
「ハイヒールのキキジエが!」
「羽根つき扇子のチェンハオが!」
 次から次へと名乗り上げ構えるメイドたち。
「なんでさっきからコスプレパーツみたいな二つ名がついてるのでしょう」
「こす? ぷれ?」
 マリアは左右に小首をかしげてから、一旦理解を放り出して不敵に笑う虎のポーズをとった。
「ふふ! 真のメイドか! 虎として負けられないね!」
 ポーズをとると背景にドドドという謎の効果音と共に巨大な虎……ていうかとらぁくんが浮きあがる。
「ふふ、真のメイドを決める一戦、腕が鳴りますわね」
 同じく清く正しい司祭の構えをとるヴァリューシャ。背景にドドドって飲んだくれたトラコフスカヤちゃんが浮かび上がった。虹色のなんかを口からヴェーって放射していた。
 二人の足下には『ごしゅじんさま』って書かれた札をもった男がぶっ倒れている。
「ごめんなさいマリィ、ご主人様……いえ、『元』でしたわね。この方をゴミ捨て場に捨てて来てもらえるかしら
 売れそうなものを引っ剥がすのと、燃えないゴミの袋に入れるのも忘れずにね」
「分かったよ! ヴァリューシャ! 私は賢いパーフェクトメイドだから、この元ご主人様とやらも綺麗に分別してゴミ捨て場に捨ててくるね♪
 金目の物はちゃんと保管しておくよ!」
 血塗れの酒瓶を放り捨てるヴァリューシャ。
「まったく、私達が仕えるにふさわしいご主人になると言ったくせに、後頭部への一撃だけで昏倒するとは不甲斐ない」
「本当だよ! 私達の主人になるならヴァリューシャの酒瓶の一撃は耐えて当然だし、私のMアタックでAPが0になるなんてことは決して許されないよ!!!」
「嗚呼、悲しいですわ…理想のご主人様はどこにいらっしゃるのかしら」
「悲しいね……ヴァリューシャ……」
 とりま服を脱がしてから逆さに振るマリア。
 その淡々とした(それでいて手慣れた)様子にメイドたちはジリッと下がり距離をとった。
「この子達……やはりただメイドではいわ」
「幾多のご主人様をお屠り続けた修羅メイドの目をしているアル……」
「ここは力が全てを決する鉄帝国。ご主人様たるべき者、常に警戒を怠らず、メイドの襲撃程度、笑っていなすのが当然の素養ではなくて?」
 ギラァっと目を光らせたヴァレーリヤは片手にワイン、片手にシャンパンを握り、その蓋を歯でゴッて抜いた。そして両方いっぺんに掲げ、そして中身を口の中に放り込む。
 ファミレスでドリンクバーをわたされた小学生だって、はしゃぎ散らした大学生だって、こんな激しいチャンポンはしない。
「むしろ襲撃こそがご奉仕! 常に戦場に似た緊張感を提供していることに、感謝して欲しいくらいでしてよ!」
「そうだねヴァリューシャ!」
 金目の物を詰め込んだ風呂敷を背負い、両手にハンガーをもって構えるマリア。
 対するメイドたちは恐怖にかられながらも、ヴァレーリヤたちへと襲いかかる。
「くっ、一か八か……一斉にいくわよ!」
 が、対する二人は閃光雷神のごとく駆け抜け、そして振り抜いた瓶とハンガーヌンチャクをビッと構えた。
「「グワーーーー!?」」
 爆発四散するメイドたち。
「おほほほ、口ほどにもありませんわね!」
「ひゅー! 流石はヴァリューシャ完璧なメイドだよ!!! 好き!!!」

 互いを牽制しあう幾多のメイドたち。
 だが彼女たちが得に、最初から警戒していた相手(メイド)がいた。
「理解(わか)らせてしまう時が来たようでありますな……騎士(メイド)というものをよ……」
 鋼の両手をかざし、わきわきと動かす『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)。
 サブクラス、エスプリ、付与アクティブ、非戦。その全てが騎士(メイド)。
 それを一瞥してから、相手のゴスロリメイドが目を細めた。
「やっぱり騎士にメイドとルビをふるのは不自z――」
 ボッという音と友にメイドの頬に鋼の拳がめりこみ、そしてメイドは『グワー』といって吹っ飛んでいった。
「アイ、アム、ア、騎士(メイド)」
 拳を振り抜くエッダ。そこへ鋼のガントレットがガッションとはまり、拳を覆う。
「ゴスロリのチェリーチェカがやられたわ!」
「あんの騎士(メイド)!」
「出場者のなかで一番メイドっぽいキャラ立ちしてからに!」
 メイドたちがモップやはたきを振りかざし、一斉に飛びかかる。
 エッダはファイティングポーズをあえて崩し、きおつけの姿勢をとった。
「どうぞ、ご主人様」
 その場に居たご主人様にスッとコーヒーを差し出すエッダ。まさかの缶コーヒーである。スチール缶である。
 が、その振る舞いが、視線が、心意気がまさしく騎士(メイド)のそれだった。
「自分、騎士(メイド)でありますので、貴方のことは全力で御守り致します」
 同じく缶を両手に持ち、飛びかかってくるメイドたちへとラッシュを仕掛ける。
 そしてぱっきぱきな無表情を崩し、ご主人様へと振り返った。
「片づきました、ご主人様」
 微笑。それも、普段からずっと見つめていないとわからないほどの微笑。
 だがそれが、ご主人様にだけ向ける笑顔であることを示していた。
 背景が淡く輝き、そして――。
「「グワーーーーー!?」」
 メイドたちが放射状に吹き飛び、そして闘技場の壁に頭からめり込んでいった。
 トドメの一撃にはご主人様を立てる。
 これぞ騎士(メイド)。
「どうでありますよ、これ」

 幾多の戦い。勝利するメイドたち。
 だがこれはメイドバトルロワイヤル。
 全てのメイドが戦い、そして最後の一人になるまで続くメイド力のぶつけ合いなのだ。
「流れのメイド、観音打 至東にございます」
 空中ブランコに腰掛け、ゆっくりと降りてくる『Anonym Animus』観音打 至東(p3p008495)。
 『バーコードスタイル』なる斬新なメイド服を身に纏った彼女は、優雅にブランコから飛び、羽根のようにバトルステージへと降り立った。
「メイドとは家具として管理されるべきモノ。
 ならば考えてもみましょう。果たして家具は『それ単体で機能しえますか?』
 否、否。断じて否。
 家具とは組み合わせによって真価を発揮するモノ。まな板に包丁、鍋にコンロ、ベッドにシーツ。
 つまり、私のメイド美学として――!」
 くるりと周り、そして指をスッと向ける。
「メイドに孤高はありえませんよネ、旦那様方♪」

 ――鍛えましょう。予選通過モブメイドを。
 ――示しましょう。人手の足りぬお屋敷の要所を。
 ――連れましょう。手すきに迷う新米メイドを。
 ――並びましょう。奉仕に燃えるベテランメイドに。
 ――そう、私は!

「この貧乳巨乳に老若男女金髪銀髪、黒髪緑髪ピンク髪、色白褐色百合薔薇ロリショタ、義体サムライに錬成のやべーやつにオッドアイのパワーファイターに、ポン刀ガールに知能派にぼくっ娘にと、あらゆる属性を備えたメイドレギオンにおける『メイド長』として君臨し、そのスキルと萌力を以て旦那様に色んな意味で集団ご奉仕する!」
 まるでオーケストラの指揮者のごとく指をたてた至東の背後。
 彼女の手管によって配下となったメイドたちがザッと立ち上がる。
「ねえ旦那様? 旦那様にとっての好みの女の子(男の子含む)は……ひとりとは限らないでしょう?
 つーかメイドハーレムこそが旦那様の夢でしょうYO!? ――私もだ!」
 メイドの群れが一斉にご奉仕ラッシュをぶちかます。
「なんというメイド力!」
「今年のメイドバトル……八人もの異常な猛者が紛れ込むなんて……!」
「このままじゃスタジアムが耐えられな――あっ」
 あふれ出るメイド力によってゴッていった特設スタジアムの柱。そしてスタジアムは崩れ去り、瓦礫の山の中にメイドとご主人様だけが立っていた。
 試合は中断となり、史上初、バトルロワイヤルの勝者が8人という結果に収まった。
 スタジアムごとぶっ壊れたメイドバトルロワイヤルが今後またやるかどうかすらわからないが……。

「「それではまた次の試合でお会いしましょう、ご主人様」」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――こんぐらっちれいしょん!

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