シナリオ詳細
<Noise>其は虐殺機構なりや?
オープニング
●実験生活区画の危機
「……ん?」
練達の中に存在する「未来生活研究区画」。
最新の技術を使い、何処まで人の生活を便利に出来るかという実験区画に住む男は、ぽつりと垂れてきた水滴に気付く。
今日「雨天時の実験をする」などという連絡はなかったはずだが。
そう考えながらも、近くの屋根の下に移動。
すると、水滴はバケツをひっくり返したような豪雨に変わり、男はそこで初めて疑問を抱く。
何かおかしい。
こんな豪雨、事前にそういう連絡がなければするはずもない。
周囲に居た人間も同様のことを考えたのか、ざわざわとし始め……男が軒下を借りていた店舗の主人が店から顔を出す。
「皆。緊急事態かもしれん」
「え?」
「どういうことだ?」
「自動調理器具が勝手に動作し始めた。電源を無理矢理遮断したが……何かおかしい。明らかな異常が起きている」
店舗の主人の言う通りではあるだろう。
突然の豪雨。機械の不調。
此処は練達の中でも特に機械に頼る部分が多いが故に、いざという時の対処マニュアルも充実している。
「中央研究室に行こう。俺が車を出す。あそこが避難所になっているし、何か分かるかもしれん」
それは冷静に、理知的に判断した正しい対応であるだろう。
勿論、それが結果的に正しいとは限らないのだが。
この数十分後。
未来生活研究区画は、暴走ロボットの闊歩する殺人空間と化したのだから。
●虐殺機構を止めろ
「事件です」
チーサ・ナコックはそう言うと練達内の「とある区画」を示した地図を取り出した。
未来生活研究区画。
何処まで人の生活を便利に出来るかという事を目的とした小さいドーム状の実験区画だ。
あらゆるものをロボット制御で行う未来生活研究区画は、相当に便利な生活が出来る場所である……のだが。
今回、その区画で機械の大暴走が発生したのだ。
あらゆる機械は正常な動作をやめ、研究員と住人は区画ドームの中に閉じ込められている。
それだけではない。
ロボット制御の巡回バスは超高速でルートを走り回り、目の前を通るもの全てを轢きかねない暴走バスに。
巡回ドローンや警備ロボットは見つけた人間を無差別に銃撃する殺人機械と化した。
そして区画内は、常に豪雨の降り注ぎ僅か先も見えない空間になってしまっている。
「一部の住人は中央研究所に避難したみたいですが……そこは一番危険な個所です」
何しろ、一番「警備しなくてはいけない場所」なのだ。
当然警備ロボットの配置数も多く……なんとか隠れてやり過ごしている状況なのだという。
暴走バスの中に閉じ込められている人もいる。
家や店舗の中で震えている人もいるだろう。
暴走ロボットたちを排除しなければいけない。
時間がたてばたつほど、彼等の命が奪われる危険性が高まっていくのだ。
「……研究区画に入る為のIDカードは2枚用意できてるです」
なんとか解決してほしいと、チーサはそう言って頭を下げるのだった。
- <Noise>其は虐殺機構なりや?完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年10月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●未来生活研究区画への突入
「天候まで規定通りの町というのもすごい話ですが、ひとたび狂ってしまうと手間のかかるものですね。住民に被害がないのは幸いですが、それとていつまでもつかわかりません。叶うならば迅速に解決したいところですが」
区画に入る為の門。その「先」には局地的な豪雨が発生している。
よく「バケツをひっくり返したような」と称される、そんなレベルの一歩先さえ見えない豪雨を見ながら『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)はそれも簡単にはいかないだろうと感じる。
「やーだー、雨とか聞いてないんですけどー、チョベリバー」
希望ヶ浜中等部の制服を纏う『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が、そんな事を言う。
ちなみにこの姿の時には田井町・伊鈴という14歳の中学生を名乗っているようだ。
実年齢は23でも外見年齢は14だから問題ないとは本人の談だ。
いわゆるウザ後輩系のキャラで「ですかぁ~?」「ですねぇ~」とか「せーんぱい♥」とかいうタイプで通しているらしい。
そんな女子中学生になりきっている師匠を見つめるのは『善性のタンドレス』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と『無限陣』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)の2人だ。
中学生を気取ってチョベリバな師匠を見せられた2人の心境もチョベリバかもしれない。
「……憂鬱だ」
コスプレした師匠の言動に比べたらこの雨も心地良い方だ、などとマニエラが思ってしまうのも仕方ない事だろうか。
そしてココロはしっかりと現実を認識した上でこの豪雨の先の人々のことを思う。
(今ならまだ間に合う。安心を取り戻し、悲劇が起こる前に救うの。住民の皆さんの震えは寒さのせいだけじゃない。不安の雨を晴らし、笑顔を取り戻さないと)
今この瞬間にも、危険にさらされている人達がいるのだ。助けなければならない。
その気持ちは全員が一緒のはずだった。
そんな中……まあ、これも余裕の見せるためのペルソナかと考えながらイーリンは明るく振舞う。
「ココロもそうだけど、学生服って不思議な楽しさがあるわよねぇ。今度遊びに行きましょうよ」
「で、お師匠様はずいぶんと楽し気ですね。ほら、一緒に研究所に遊びにいきますよ」
「マニエラさーん、びしょ濡れになってますよぉ、タオル使います?」
「厄い、視るのも辛い。その格好で私は師匠とよばねぇからな? あとココロ。お前も全肯定せずに止めようね? 遊びに来てるわけじゃねぇからな?」
自称中学生、田井町・伊鈴(本名イーリン・ジョーンズ23歳)に師匠に向ける類じゃない目を向けているマニエラの視線を受け止めながら、イーリンは場を仕切り直す。
「女子学生ってまだ慣れないわね。まぁここで助けないとその学生姿も楽しめないわけだけど」
やるわよ、とイーリンは思考を切り替える。
「神がそれを望まれる」
弟子にウザ絡みも楽しいなどとは、断じて考えていない。
……さておき、ここからは8人をバス班と研究所突入班の二つに分かれて行動開始する予定だ。
それにあたり、瑠璃の知り合いであり手広く商品を取り扱うカール・ラメンターの取扱商品に、他国でも動作する……マザーに接続しないタイプの警備ロボットやドローンの機能制限版の取り扱いがあったため、何世代か前の品の情報ではあるものの、入手出来ていた。
自爆スイッチや緊急停止ボタンなど、そう都合のいい弱点はなかったのだが……共有した情報は、今回の仕事に活かすことができるだろう。
「よし、じゃあ後は打ち合わせ通りにいくのだわ」
そう『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が言って、全員が頷く。
「バス班はバスの暴走を抑え、また可能であれば自動装置の解除を。研究所班は研究所の鎮圧および要救助者の保護を、それぞれ目的……でしたね」
そんな瑠璃の最終確認が済み、行動を始める。
まずバス班は華蓮、瑠璃、『廻世紅皇・唯我の一刀』皇 刺幻(p3p007840)、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の4人。
研究所班がイーリン、ココロ、マニエラ、『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)の4人だ。
そして出発というそのタイミングで、大きなトランクを抱えた幻想種の少女……シィナ・マシーナが現れる。
「わんこから話は聞いているわ、『未来生活研究区画』での異常の件ね……これでも流しの修理屋よ、あの区画にも縁はあるわ」
そう、今回の突入に際してわんこは練達の各地を回る技術・修理屋であるシィナに助言を頼んだのだ。
「まずは区画の構造について知る限りの情報を伝える。少しは移動がしやすくなる筈よ。それと、区画内の避難所になりうる建物について。どこを使うかはあなた達に任せる」
テキパキと伝えられていく情報は、まさに「欲しかったもの」と言えるだろう。
「後はバスの構造、巡回バスを手動に戻す方法ね。この状況下で通じるかは分からないけど、マニュアル通りの知識なら掻い摘んで教えられるわ」
それらの情報をこの短時間で整理し伝えてくれたシィナに感謝しながら、わんこ達は未来生活研究区画への突入を開始した。
「機械の暴走には機械がケリをつける。その為にわんこは此処にいるのデス。人が死ぬのも、同族が暴れるのも、わんこはまっぴらごめんデスヨ……!」
●未来生活研究区画を救え
豪雨の中で、車のワイパーが動いている。瑠璃が近くから接収してきた車だ。
あらかじめ牽引用ロープを結ぶ場所にロープを固定して、車内に引き込んでおくという準備もしてあるが……これはいざという時の為の対策だ。
今は暴走車となっているバスは、それでも決まったルートをずっと巡回し続けている。
だからこそ、待ち伏せ作戦が機能する。
バスの進路上の高所では白き翼を広げた華蓮が待機し、刺幻は近づいてくるドローンの対処に専念していた。
「【嫉妬】の声を聞け……無機物共。豪雨だろうと、私には貴様らが見えているぞ!」
そう叫び対処していく刺幻の姿は、実に頼もしい。
「イナリは暴走AIって物語では良くある設定だけど、実際に暴走されると面倒ね」
バスの到着……つまり作戦開始時間まではまだ少しある。
だからこそファミリアーを使用、子犬を召喚して、そのうちの4匹を警戒と住民の捜索に回している。
だが……この豪雨の中では視界も聴覚も嗅覚すらも制限されてしまう。
上空で待機している華蓮も、中々辛そうだった。
バス組の作戦が成功の目途がたつまで練達式魔導三輪バイクに乗って同行するつもりのマニエラだって、この状況は中々に辛い。
だが……たとえ様々な感覚が制限されていようと分かるものがある。
それはたとえば、水をザバザバと跳ね飛ばすタイヤの音。
豪雨の中で煌くバスのライト。
異質なそれらの音は、見逃すはずもない。
「来たわね……!」
イナリは即座にルーンシールドを発動し、物質透過の力を使いバスに飛び移る。
何しろ待ち構えていたのだ。タイミングさえ間違えなければ、難しい話ではない。
「出来ればこのバスは利用したい所だから…賭ける価値はあるのだわよ! 大丈夫、バスに飛び移るくらい余裕だわよ頑張れ私! この前見た映画の主人公なんて翼も無しにやってたでしょ!」
同時に華蓮も飛び移り……というよりは屋根に貼り付く形になってしまったが、そこからイナリに窓を開けてもらい入る事に成功する。そしてほぼ同時にバスの側面に貼り付いていた刺幻も同じ窓から入っていく。
そしてもう1人……瑠璃は車を発進させバスと並行するように走らせる。
高速かつ自動制御でミスらないバスと並走させるのは中々に難しいものがあるが……ひとまずは問題ない。
更にマニエラの練達式魔導三輪バイクも追走してきている。
「視界は通らない上に相手は警備ロボット、と言うことはこの雨の中でもこちらを認識できる可能性があると言うことだしな。救助作戦中の攻撃なんて許しはしないさ……!」
仲間の成功を祈る瑠璃の車とマニエラの練達式魔導三輪バイクをチラリと見ながら、バスの中に乗り移った3人は脅える5人の乗客たちに声をかけていく。
「大丈夫、大丈夫なのだわ。皆落ち着いて避難すれば、後の危険からは私達が護るのだわよ!」
そう華蓮は語り掛けていく。
(安心して冷静に動いて貰いたいのだわ。これでも巫女さん……聖職者ですもの)
「……バスの操作権は早めに頼むぞ、この雨の中長居するのは得策ではない!」
刺幻の期待に応えるべく、イナリはすでに運転席周りに移動していた。
そう、自動運転バスであっても「いざという時」の為の手動運転装置は存在する。
そして、事前に仕入れた情報もある。あとは実際のバスと重ね合わせて対処すればいい。
「練達の技術者を信じるわよ、完全AI制御技術が確立されていたとしても、万が一、億が一に備えて人間の力、手動で操作出来るバックアップシステムを組み込んでくれている事に……」
あとは、そのシステムが排除されていなければ……そう祈りながらイナリは確認作業を続けていく。
万が一の為にファミリアーによる警戒は続けているし、刺幻がドローンの対処も続けてくれている。
だが、これは時間との勝負なのだ。
とれる手段は幾つかある。
バスの緊急停車方法を確認して使用、又はAI制御部を壊してバスの停車を試みる、またバスを手動操作が出来ないか。
そして確認したところ……「全部可能」とイナリは直感した。
まずは緊急停車、それから手動に切り替える……!
そのサポートを華蓮もしながら、上手くいくと感じていた。
「出来ればこのバスは利用したい所だから……賭ける価値はあるのだわよ!」
「……よし、緊急停止!」
止まったバスに歓声が響き、乗用車の急ブレーキをかけた瑠璃も乗り込んでくる。
あとは手動運転に切り替えれば、このバスは安全を確保できる場所へと変化するのだ。
それを確認すると同時に、マニエラも練達式魔導三輪バイクを研究所へと全力で走らせる。
そして、イナリたちが作戦を無事に成功させている、その頃。
馬の赫塊や【鋼鉄の女帝】ラムレイ、MST101 ファブニールといったものに乗り込んでイーリンたちは研究所に乗り込んでいた。
侵入口近くで暴れて警備ロボットの注意を引きつけるという作戦に出たわんこだったが、その狙いは実に的確だった。
「わんこ、こっちお願い!」
「司書サマのお願い、勿論聞いたぜ、此処は任された!」
放送設備を目指し走っていくイーリンに返しながら、わんこは叫ぶ。
「本当のお前らは、人殺しなんざ望んでねぇだろうが……!!」
暴走した警備ロボットたち。本意ではないだろうその行動に、わんこはアンドロイドとして複雑な想いを隠せない。
(研究所配備のロボは20体の筈デスガ、確実じゃない……!)
決して油断はしない。やられるつもりもわんこにはない。
そうしている間にも、イーリンが放送設備を見つけて館内放送を開始する。
「はいはーい、伊鈴ちゃんですよー。研究員の皆さん、避難民の皆さん、今から向かいますからその場を動かないでくださいねぇ?」
そんなおどけた口調で緊張感を解こうとしたイーリンだが、効果はどの程度あっただろうか?
「ではお師匠様、わんこさんのサポートはお願いします!」
そうイーリンに叫び、ココロは『温度視覚』で索敵を行う。
ドローンやロボットであれば、動力の付近だけ熱があるから赤い部分は点や四角系、人間なら大きく赤い部分が広がってるはずだ。
機械であれば警戒を促し、人間を見つけたら二人に知らせ、救いにいくつもりなのだ。
此処にはセーフルームが設置されているから、大体はそこにいるはずだが……全員がそうだとは限らない。
それを助けられるか、間に合うかは賭けに近い部分もある。
「わたしは特異運命座標。当たりくらい自分の力で引き当ててみせる!」
そんな決意と共にココロは研究所内を走って。
そして練達式魔導三輪バイクで遅れて到着したマニエラのダイヤモンドダストが警備ロボットたちに命中していき……周囲から次々集まってくる警備ロボットを破壊しながら、イーリンは「止めるには壊すしかない」と悟る。
あらゆる安全用のセキュリティがほぼ限界まで無効化されているのだ。それしか残ってはいない。
この研究所のロボットたちの思考ルーチンは本来、登録した住民や研究員を攻撃しないように……攻撃するとしても何段階もの措置を経て攻撃に至るように設定されている。
それが全て吹っ飛び「同じ機械に攻撃しない」程度にしかなっていない警備ロボットは、もはや停止など考えずに破壊するしかない。
だからこそ、破壊して、破壊して。セーフルームの扉に攻撃を加え続けていた警備ロボットもココロが見つけて破壊。
バスが辿り着く頃には研究所内の暴走ロボットを全て破壊し、避難していた研究員や住民を助け出すことが出来ていた。
「……ロボットの暴走、ね。マザーの不調とはいえここまで暴走するもんでないと思うからピエロが遊んでいるんだろうか。マザーを介して現実まで…神とピエロと偽りの原罪。なんともま、この国に似合う敵だこと。早く潰さないといけないね」
助け出した人々を順番にバスに乗せていきながら、マニエラはそう呟く。
そう、これで解決ではない。まだこの先、事件は起こっていくのだろう。
それに対処し……やがて「原因」と対決し倒す事こそが、この事態を解決する、唯一の手段なのだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
見事に住民を救出しました!
GMコメント
未来生活研究区画は小さなドーム状の実験生活区画です。
然程大きいわけではなく、住人は全部で50人。研究員が15名です。
建物は家が30軒ほどと店舗が数件、中央に研究所があります。
一軒あたりの占有量が大きめで、バスが区画内を常に1台自動で巡回しています。
ただしこのバスは暴走中で、住人を5人乗せたままノンストップで走っています。
中央研究所は今回用意されたIDカードで各扉の解放が可能です。
区画内は豪雨で、前がほとんど、見えない状況です。
何処にどれだけ人がいるか不明ですが、暴走ロボットに見つかれば即座に殺されてしまうでしょう。
見つかる前に救出し、何処かに保護する必要があります。
(区画の外が必ずしも安全とは限りません)
●敵データ
・暴走バス
20人乗りの巡回バス。現在時速90kmほどで巡回ルートを大爆走中。
中に5人乗っています。
・巡回ドローン(40機)
区画内を飛行する全長50cmほどの武装ドローン。豪雨の中でも耐えられる設計。
武装はマシンガン。耐久性はそれほどではありません。
・警備ロボット(30機)
区画内をノーパンクタイヤで走り回るドラム缶みたいな武装ロボット。
巡回ドローンよりも凶悪な威力のマシンガン装備。
研究所に20体。他に10体配備されています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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